以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。図1は本実施形態に係るコンバインの右側面図、図2はコンバインの平面図である。なお、以下の説明において、「右」「左」と言った場合には、コンバイン10の機体の右左を基準として言うものとする。
本実施形態のコンバイン10は、いわゆる自脱型コンバインとして構成されている。図1に示すように、本実施形態のコンバイン10は、稲、麦等の穀稈の株元を刈り取るための刈取部12を機体本体の前方に備えている。また、コンバイン10の機体下部には、機体を走行させるためのクローラ部13が設けられている。
刈取部12の後方であって、コンバイン10の左側には、脱穀装置14が設けられている。刈取部12によって刈り取られた穀稈は、図略の搬送機構によって脱穀装置14まで搬送され、脱穀される。脱穀装置14の下方には、当該脱穀装置14で脱穀された穀粒を選別して取り出す選別装置15が設けられている。
選別装置15で選別された穀粒を貯留するためのグレンタンク16が、脱穀装置14及び選別装置15に並設してコンバイン10の上部右側に備えられている。選別装置15で選別された穀粒は、図略のコンベア機構により、グレンタンク16まで搬送され、当該グレンタンク16に貯留される。
グレンタンク16の前方には、オペレータが搭乗するためのキャビン18が配置されている。このキャビン18の内部には、コンバイン10の機体を操向操作するためのステアリングハンドル19、オペレータが坐るための運転座席20等が設けられている。
図3に示すように、ステアリングハンドル19の近傍には、表示装置23が設けられている。表示装置23は、例えば液晶ディスプレイなどのドットマトリクス式のディスプレイ装置であり、各種の計器情報(例えば、コンバイン10の走行速度やエンジンの回転数、燃料の残量など)をグラフィカルに表示可能に構成されている。また、この表示装置23は、コンバイン10の各部の動作を管理/設定するための管理画面を表示できるように構成されている。表示装置23は、管理画面において各種操作を行うための操作ボタン(被操作部)24を有している。オペレータは、表示装置23に管理画面を表示させた状態で操作ボタン24を操作することにより、コンバイン10の各部に関する各種の設定を確認/変更できる。これにより、オペレータは、コンバイン10の各部の動作を容易に管理できる。
また、コンバイン10は、当該コンバイン10が備えている各構成を制御する制御部11を備えている。制御部11は、CPU、ROM、RAMなどのハードウェアと、当該ROMなどに記憶されたプログラムなどのソフトウェアと、から成るコンピュータとして構成されている。そして、制御部11は、前記ハードウェア及びソフトウェアが協働することで、コンバイン10の各部を制御するための機能を発揮できるように構成されている。
コンバイン10は、グレンタンク16内の穀粒を外部に排出するための排出オーガ17を備えている。この排出オーガ17は、細長い筒状の部材として構成されている。排出オーガ17の先端部17bには排出口22が形成されている。
コンバイン10は、グレンタンク16内の穀粒を、排出オーガ17の基端部17aまで搬送する縦コンベア33を備えている。縦コンベア33は、略鉛直方向に沿って配置されたスクリューコンベアとして構成されている。一方、排出オーガ17内には、スクリューコンベアとして構成された横コンベア34が設けられている。前記縦コンベア33によって搬送された穀粒は、横コンベア34に受け渡される。以上の構成で、縦コンベア33及び横コンベア34を駆動することにより、グレンタンク16内の穀粒を排出オーガ17の排出口22まで搬送し、当該排出口22から排出することができる。
また、コンバイン10は、排出オーガ17を所定の姿勢で支持するオーガレスト41(オーガ支持部材)を備えている。排出オーガ17をオーガレスト41に支持させた状態(図1に示す状態)を、排出オーガ17の「格納状態」と呼ぶ。排出オーガ17からの穀粒の排出を行わないとき(路上を走行するときなど)は、排出オーガ17を格納状態としておく。
オーガレスト41は、図9に示すように、上方が開放された略U字状に形成されており、排出オーガ17を下から支えることができるように構成されている。また、オーガレスト41の下部には、棒状の支柱部42が固定されている。
コンバイン10の機体本体には、図1及び図9に示すように、オーガレストを固定するためのレストステー(オーガレスト取付部)43が固定されている。レストステー43は、オーガレスト41の支柱部42を上方から挿入可能な支柱挿入部44を有している。図9に示すように、支柱挿入部44に支柱部42を挿入して、ネジ45によって適宜ネジ止めすることにより、オーガレスト41をレストステー43に固定できるように構成されている。以上により、オーガレスト41が、コンバイン10の機体本体に固定されている。
図1に示すように、コンバイン10は、グレンタンク16の上部に立設された円筒部35を備えている。円筒部35の内部には、前記縦コンベア33が軸線を一致させて配置されている。
図4に示すように、コンバイン10は、前記円筒部35の上端と、排出オーガ17の基端部17aと、を接続する接続部材36を備えている。図4に示すように、接続部材36には、排出オーガ17を支持するための昇降軸38が設けられている。当該昇降軸38は、水平面に対して略平行となるように配置されている。排出オーガ17は、昇降軸38を介して、接続部材36に接続されている。
排出オーガ17は、昇降軸38まわりで回動可能となっている。排出オーガ17を、昇降軸38まわりで回動させることにより、当該排出オーガ17の先端の排出口22を上昇又は下降させることができる。なお、以下の説明において、排出口22が上向きに移動する方向に排出オーガ17を昇降軸38まわりで回動させることを、単に「排出オーガを上昇させる」等と表現することがある。また、排出口22が下向きに移動する方向に排出オーガ17を昇降軸38まわりで回動させることを、単に「排出オーガを下降させる」等と表現することがある。また、以下の説明では、排出オーガ17のうち、オーガレスト41に支持される部分の上下の位置(鉛直方向での位置)を、「排出オーガの鉛直方向の位置」又は単に「排出オーガの位置」と表現することがある。
また、上記接続部材36は、前記円筒部35の軸線(略鉛直方向)まわりで、当該円筒部35に対して相対回転可能となっている。これにより、排出オーガ17を、円筒部35の軸線まわりで回動させることができるので、排出口22を水平面内で移動させることができる。なお、以下の説明において、円筒部35の軸線まわりで排出オーガ17を回動させることにより、排出口22を水平面内で移動させることを、単に「排出オーガを旋回させる」等と表現することがある。また、以下の説明では、排出オーガの長手方向と、コンバインの機体本体に固定された所定の軸(例えばコンバインの機体の前後軸)と、が水平面内において成す角度を、排出オーガ17の「旋回角度」とする。
また、以下の説明において、排出オーガ17を「格納状態」としたとき(排出オーガ17をオーガレスト41に支持させたとき)の、当該排出オーガ17の旋回角度を、「格納角度」と呼ぶことにする。また、排出オーガ17を「格納状態」としたときの、当該排出オーガ17の鉛直方向の位置を、「格納位置」と呼ぶことにする。
また、コンバイン10は、排出オーガ17を旋回駆動するための旋回駆動部と、当該排出オーガ17を昇降駆動させるための昇降駆動部と、を備えている。
本実施形態の旋回駆動部は、図4に示すように、電動モータ39から構成されている。電動モータ39の出力軸には、出力ギア46が設けられている。一方、接続部材36の周囲には、入力ギア47が固定的に設けられており、当該入力ギア47が出力ギア46に噛み合っている。以上の構成で、電動モータ39を駆動することにより、接続部材36を、円筒部35の軸線まわりで回動させることができる。これにより、当該接続部材36に接続されている排出オーガ17を旋回駆動できる。
本実施形態の昇降駆動部は、油圧シリンダ40、及び当該油圧シリンダ40に圧油を供給する圧油回路から構成されている。圧油回路を図5に示す。なお、図5に示したのは、油圧シリンダ40の説明に必要な部分のみを抜粋して示した概略的な圧油回路図である。図5に示すように、本実施形態の油圧シリンダ40は、単動式のシリンダとして構成されている。油圧回路は、圧油を供給するポンプ48、油圧シリンダ40からのオイルの吐出を阻止するパイロットチェック弁49、油圧シリンダ40に対する圧油の供給の有無を切り換える電磁弁50、等を備えている。また、油圧回路は、油圧が過度に上昇することを防止するためにリリーフバルブ51を備えている。
電磁弁50は、油圧シリンダ40とポンプ48の間を接続又は遮断できるように構成されている。油圧シリンダ40とポンプ48を接続することで、油圧シリンダ40に圧油を供給し、当該油圧シリンダ40のロッドを伸長させることができる。また、油圧シリンダ40とポンプ48の間を遮断することにより、当該油圧シリンダ40のロッドの位置を保持することができる。また、電磁弁50は、前記パイロットチェック弁49にパイロット圧を供給し、当該パイロットチェック弁49を開くことができるように構成されている。これにより、油圧シリンダ40のオイルを吐出させることができるので、当該油圧シリンダ40のロッドを縮退させることができる。
図4に示すように、昇降軸38には、昇降アーム54が固設されている。油圧シリンダ40は、昇降アーム54と接続部材36の間に設けられている。油圧シリンダ40のロッドを伸長させることで、昇降アーム54を介して昇降軸38を回動させ、これにより排出オーガ17を上昇させることができるように構成されている。また、油圧シリンダ40を縮退させることにより、排出オーガ17を下降させることができるように構成されている。
旋回駆動部の電動モータ39と、昇降駆動部の電磁弁50は、それぞれ制御部11によって制御される。制御部11は、電動モータ39及び電磁弁50を適宜制御することにより、排出オーガ17を、旋回駆動及び昇降駆動することができる。
キャビン18内において、運転座席20の近傍には、オペレータが操作するためのオーガ操作具(図略)が設けられている。このオーガ操作具は、排出オーガ17を旋回及び昇降させるように指示を入力するための手段(例えばボタンやレバーなど)が設けられている。当該オーガ操作具に入力された内容は、制御部11に送信される。制御部11は、オーガ操作具に入力された内容に基づいて、排出オーガ17を旋回駆動部の電動モータ39、及び昇降駆動部の電磁弁50を制御する。これにより、オペレータは、オーガ操作具を操作することにより、排出オーガ17を任意の姿勢とすることができる。
また、コンバイン10は、排出オーガ17の姿勢を検出するための旋回角度検出部52と、昇降位置検出部53と、を備えている。
旋回角度検出部52は、ロータリ式のポテンショメータとして構成されており、排出オーガ17の旋回角度を検出するように構成されている。旋回角度検出部52の検出結果は、制御部11に出力される。
昇降位置検出部53は、リニア式のポテンショメータとして構成されている。図4に示すように、昇降位置検出部53は、本体部53aと、当該本体部53aに対してスライド可能に設けられたロッド53bと、を備えている。昇降位置検出部53は、本体部53aに対するロッド53bのスライド量を検出結果として出力するように構成されている。
昇降位置検出部53の本体部53aは、接続部材36に支持されている。また、図4に示すように、昇降位置検出部53のロッド53bの先端は、昇降アーム54に接触するように配置されている。当該ロッド53bは、図略の付勢部材(バネなど)によって、昇降アーム54に向けて付勢されている。これにより、昇降アーム54が昇降軸38まわりで回動することにより、前記ロッド53bが本体部53aに対してスライドするように構成されている。
排出オーガ17が昇降軸38まわりで回動して鉛直方向の位置が変化すれば、これに応じて昇降アーム54も回動するので、当該昇降アーム54に接触している前記ロッド53bがスライドする。そして、当該ロッド53bのスライド量が、昇降位置検出部53の検出結果として出力される。従って、昇降位置検出部53の検出結果は、排出オーガ17の鉛直方向の位置に対応している、と言うことができる。昇降位置検出部53の検出結果は、制御部11に出力される。
続いて、排出オーガ17の自動格納(オートリターン)制御について、図7のフローチャートを参照しながら説明する。
自動格納制御とは、格納されていない状態(オーガレスト41に支持されていない状態)の排出オーガ17を、格納状態(オーガレスト41に支持された状態)まで自動的に回動させる制御のことを言う。
前述のオーガ操作具には、自動格納制御の開始を指示する操作を行うための手段(例えばボタン)が設けられている。オペレータは、オーガ操作具を適宜操作することで、自動格納制御の開始を指示できる。
制御部11は、オペレータによって自動格納制御の開始を指示する操作が行われた場合、自動格納制御を開始する。
まず、制御部11は、排出オーガ17を、所定の「上限位置」まで上昇させる(ステップS101)。
より具体的には、以下のとおりである。まず、制御部11は、電磁弁50を制御し、油圧シリンダ40に対してポンプ48からの圧油を供給する。これにより、当該油圧シリンダ40のロッドが伸長し、排出オーガ17が上昇する。
制御部11は、排出オーガ17を上昇させている間、昇降位置検出部53の検出結果を監視することにより、当該排出オーガ17の位置が前述の「上限位置」に一致したか否かを判定する。排出オーガ17の位置が前述の「上限位置」に一致したと判定した場合、制御部11は、電磁弁50を制御し、油圧シリンダ40とポンプ48との間を遮断する。これにより、排出オーガ17が、前記上限位置で停止する。以上により、排出オーガ17を、所定の「上限位置」まで上昇させることができる。
続いて、制御部11は、排出オーガ17の旋回角度が前述の「格納角度」となるまで、当該排出オーガ17を旋回させる(ステップS102)。
より具体的には、以下のとおりである。まず、制御部11は、電動モータ39を制御することで、排出オーガ17の旋回を開始する。制御部11は、排出オーガ17を旋回させている間、旋回角度検出部52の検出結果を監視することにより、当該排出オーガ17の旋回角度が前述の「格納角度」に一致したか否かを判定する。排出オーガ17の旋回角度が前述の「格納角度」に一致したと判定した場合、制御部11は、電動モータ39を制御して排出オーガ17の旋回を停止させる。
これにより、排出オーガ17を、オーガレスト41のほぼ真上の位置まで旋回させて停止させることができる。オーガレスト41の真上に位置している排出オーガ17の様子を、図8に点線で模式的に示す。なお、図8に示すように、排出オーガ17の「上限位置」は、オーガレスト41よりも高い位置に設定されている。従って、ステップS102で排出オーガ17を旋回させたときに、当該排出オーガ17がオーガレスト41に衝突することはない。
続いて、制御部11は、排出オーガ17を下降させる制御(下降制御)を開始する(ステップS103)。
より具体的には以下のとおりである。まず、制御部11は、電磁弁50を制御することで、パイロットチェック弁49に対してパイロット圧を供給する(下降制御)。これにより、パイロットチェック弁49が開き、油圧シリンダ40からのオイルの吐出が可能となるので、当該油圧シリンダ40のロッドが排出オーガ17の自重によって縮退を開始する。これにより、排出オーガ17が下降を開始する。
前述のように、ステップS102が終了した時点において、排出オーガ17は、オーガレスト41のほぼ真上に位置している。従って、ステップS103で下降制御を開始させることにより、排出オーガ17を、オーガレスト41に向けて下降させていくことができる(図8に太線の矢印で示す)。
続いて、制御部11は、昇降位置検出部53の検出結果を取得する(ステップS104)。なお、以下の説明では、昇降位置検出部53の検出結果を、単に「検出結果」と呼ぶことがある。
前述のように、昇降位置検出部53の検出結果は、排出オーガ17の鉛直方向の位置に対応している。なお、昇降位置検出部53の検出精度には限界があり、不感帯もあるうえ、ロッド53bの固着(後述)などの問題がある。このため、昇降位置検出部53の検出結果が、「排出オーガ17の実際の位置」に正確に対応しているとは限らないことを、ここで指摘しておく。
制御部11は、ステップS104で新しく取得した検出結果が、所定の制御実行範囲内に含まれているか否かを判定する(ステップS105)。
ここで、図8に示すように、排出オーガ17の格納位置を中心とした上下の所定の範囲を、「制御実行範囲」とする。より具体的には、排出オーガ17の格納位置を中心として、上方に第1距離L1(本実施形態の場合は120mm)、下方に第2距離L2(本実施形態の場合は120mm)の範囲を、停止制御実行範囲とする。なお、本実施形態ではL1とL2を同じ値としているが、これに限らず、L1とL2が異なっていても良い。図8に示すように、制御実行範囲の上端は、前記「上限位置」よりも低い位置とする。つまり、上限位置は、制御実行範囲の外となっている。
制御部11は、昇降位置検出部53が、制御実行範囲内に対応した検出結果を示している場合(ステップS105でYES)、ステップS106の処理に進む。また、制御部11は、昇降位置検出部53が、制御実行範囲の外に対応した検出結果を示している場合(ステップS105でNO)、ステップS108の処理に進む。
ステップS106において、制御部11は、ステップS104で新しく取得した検出結果と、直前に取得した検出結果と、を比較し、検出結果が変化しているか否かを判定する。制御部11は、検出結果が変化していないと判定した場合(ステップS106でNO)、ステップS107に進む。なお、「検出結果が変化しない」とは、当該検出結果が全く変化しない場合を含むのはもちろんであるが、検出結果の変化幅が十分に小さくて事実上変化していないとみなせる場合を含んでも良い。
ステップS107において、制御部11は、検出結果が変化していない状態(不変状態)が、どれくらいの期間のあいだ継続しているかを判定する。なお、制御部11は、当該期間を計時するためのタイマを有している。制御部11は、不変状態が、所定の格納判定時間(本実施形態の場合は1秒間)のあいだ継続していると判定した場合(ステップS107でYES)、ステップS109に進む。
ステップS109において、制御部11は、下降制御(ステップS103で開始した制御)を停止させる(下降停止制御)。より具体的には、制御部11は、電磁弁50を制御することにより、パイロットチェック弁49へのパイロット圧の供給を停止させる。これにより、パイロットチェック弁49が閉じた状態となる。これにより、自動格納制御が終了する。
一方、制御部11は、ステップS106でYES、またはステップS107でNOと判定した場合には、ステップS108に進む。即ち、検出結果の不変状態が、格納判定時間のあいだ継続していない場合(検出結果が変化しているとみなせる場合)は、ステップS108に進む。
ステップS108において、制御部11は、下降制御を開始してから(ステップS103の処理を行ってから)、どれくらいの時間が経過しているかを判定する。なお、制御部11は、当該時間を計時するためのタイマを有している。制御部11は、下降制御を開始してからの経過時間(ステップS103の処理を行ってからの経過時間)が所定の強制終了時間(本実施形態の場合は10秒間)を超過していると判定した場合(ステップS108でYES)、ステップS109に進み、下降制御を停止させて、自動格納制御を終了させる。
一方、下降制御を開始してからの経過時間が強制終了時間を超えていないと判定した場合(ステップS108でNO)、制御部11は、ステップS104に戻って上記の処理を繰り返す。
続いて、上記自動格納制御の特徴について詳しく説明する。
以上で説明したように、本実施形態の自動格納制御において、制御部11は、排出オーガ17の下降を開始(ステップS103)させた後、昇降位置検出部53の検出結果が不変状態となり(ステップS106の判定)、かつ、当該不変状態が所定の格納判定時間(本実施形態の場合は1秒間)のあいだ継続した場合(ステップS107の判定)に、下降制御を停止させている(ステップS109)。
即ち、ステップS103で下降制御を開始すれば、排出オーガ17は、いずれ、オーガレスト41に支持された状態(格納状態)となる(図8に実線で示す状態)。格納状態の排出オーガ17は、オーガレスト41によって下から支えられるので、当該排出オーガ17がそれよりも下降することはない。このため、排出オーガ17が格納状態になれば、昇降位置検出部53の検出結果は変化しなくなる。
従って、昇降位置検出部53の検出結果が変化しない状態になれば(ステップS106でNO)、排出オーガ17は格納状態になっていると考えて良い。
そこで本実施形態では、昇降位置検出部53の検出結果が不変状態になった場合に(ステップS106でNO)、下降制御を停止させる(ステップS109)ように構成されているのである。これにより、排出オーガ17がオーガレスト41に支持された状態(格納状態)で、当該排出オーガ17の下降を停止させることができる。
しかし、昇降位置検出部53の検出精度には限界があり、不感帯もあるから、排出オーガ17が実際には下降を続けているにもかかわらず、検出結果が一時的に不変状態になる場合がある。言い換えると、検出結果が一時的に不変状態になったとしても、実際に排出オーガ17が格納状態になっているとは限らない。従って、ステップS106において検出結果が不変状態になったと判定したときに、下降制御を直ちに停止してしまうと、排出オーガ17の下降が不適切な位置で停止してしまい、当該排出オーガ17がオーガレスト41から浮いた状態(オーガレスト41に支持されていない状態)になってしまう可能性がある。
そこで本実施形態の制御部11は、昇降位置検出部53の検出結果の不変状態が、所定の格納判定時間のあいだ継続したことを確認(ステップS107の判定でYES)したうえで、下降制御を停止させる(ステップS109)ように構成されている。言い換えれば、昇降位置検出部53の検出結果が、何らかの理由によって一時的に不変状態になったとしても、格納判定時間が経過する前に検出結果が再び変化した場合は、下降制御を停止させない。
これにより、排出オーガ17の下降が不適切な位置で停止することを防ぎ、当該排出オーガ17がオーガレスト41から浮いた状態(オーガレスト41に支持されていない状態)になることを防止できる。
このように、上記の自動格納制御によれば、排出オーガ17を、オーガレスト41に支持された状態まで確実に下降させることができる。
また、上記の自動格納制御では、昇降位置検出部53の検出結果が変化しない状態が格納判定時間のあいだ継続した場合は、前記下降制御を停止する(パイロットチェック弁49へのパイロット圧の供給を停止する)。このように、排出オーガ17が格納状態になったあとは、パイロットチェック弁49へのパイロット圧の供給が速やかに停止されるので、油圧回路の圧油が無駄に消費されることを防止できる。
ところで、前述のように、本実施形態の昇降位置検出部53は、リニア式のポテンショメータとして構成されている。この種のポテンショメータでは、ロッド53bが、本体部53aに一時的に固着してしまうことが考えられる。ロッド53bが固着していると、排出オーガ17の昇降にかかわらず、昇降位置検出部53の検出結果は変化しない。このため、仮にこの状態でステップS106の判定を行うと、当該判定の結果がNOとなる。この場合はステップS107の判定に進むが、ロッド53bが固着した状態が継続していると、ステップS107の判定結果がYESになって、下降制御を停止(ステップS109)させてしまう可能性がある。このように、昇降位置検出部53のロッド53bに固着が生じていると、ステップS106及びS107の判定において、排出オーガ17の実際の状態とは異なる判定結果が得られてしまうため、結果として、排出オーガ17を不適切な位置で停止させてしまうおそれがある。
そこで本実施形態では、昇降位置検出部53の検出結果が、所定の制御実行範囲内にある場合(ステップS105でYES)のみ、ステップS106に進むようにしているのである。なお前述のように、制御実行範囲は、格納位置を中心とした上下の所定の範囲となっている(図8参照)。
仮に昇降位置検出部53のロッド53bが本体部53aに固着しているとすれば、ステップS103で排出オーガ17の下降を開始したとしても、昇降位置検出部53の検出結果は変化しない。従って、この場合、排出オーガ17の実際の位置が「制御実行範囲」内に入ったとしても、昇降位置検出部53の検出結果は依然として「制御実行範囲」の外を示している可能性が高い。
逆に、昇降位置検出部53が正常であれば(ロッド53bが本体部53aに固着していない状態であれば)、昇降位置検出部53は排出オーガ17の実際の位置に対応した検出結果を示す。従って、排出オーガ17の実際の位置が「制御実行範囲」内に入ることで、昇降位置検出部53も「制御実行範囲」内に対応した検出結果を示すと考えられる。
以上の点を鑑みれば、昇降位置検出部53が、「制御実行範囲」の内に対応した検出結果を示していれば、当該昇降位置検出部53は正常(ロッド53bが本体部53aに固着していない状態)である可能性が高いと考えられる。
そこで上記のように、本実施形態では、検出結果が「制御実行範囲」内にあるときのみ(ステップS105でYES)、ステップS106に進むように構成しているのである。逆に言えば、昇降位置検出部の検出結果が「制御実行範囲」の外にあるとき(ステップS105でNO)には、ステップS106には進まないようにしている。即ち、昇降位置検出部53のロッド53bが固着している可能性があるときには、ステップS106及びステップS107の判定を行わない。これにより、昇降位置検出部53が正常である場合のみ、ステップS106及びステップS107の判定を行うことができる。
このように、本実施形態では、昇降位置検出部53の検出結果が、「制御実行範囲」内にあることを確認したうえで、当該検出結果が不変状態になったか否かを判定し(ステップS106及びS107)、これに基づいて下降停止制御(ステップS109)を行う。これにより、排出オーガ17の下降制御が不適切な状態で停止されてしまうことを防止できる。
続いて、ステップS108の判定について説明する。
排出オーガ17関連の構成に何らかの異常(ロッド53bの固着など)が発生した場合には、ステップS106、ステップS107の判定が正常に行われない可能性がある。従って、ステップS107の判定がいつまでもYESにならず、下降制御が延々と続いてしまう(下降制御が停止できない)可能性がある。そこで本実施形態では、下降制御を開始(ステップS103)してから、所定の強制終了時間が経過した場合には(ステップS108でYES)、下降制御を強制的に停止させる(ステップS109)。
これによれば、何らかの異常により、ステップS106、ステップS107の判定が正常に行われない場合であっても、所定の強制終了時間が経過した場合には、下降制御を強制的に停止させることができる。これにより、下降制御が延々と続いてしまうことを防止できる。なお、このようにして下降制御を強制的に停止させる際には、警報音を発生させるなど、オペレータに対して何らかの報知を行っても良い。
次に、本実施形態のオーガレスト41の鉛直方向での位置の調整について説明する。
本実施形態のコンバイン10では、オーガレスト41の鉛直方向での位置を、オペレータの好みに応じて適宜変更できるように構成されている。
具体的には以下のとおりである。図9に示すように、レストステー43の支柱挿入部44には、ネジ45を挿入するためのネジ孔46a,46bが、鉛直方向に複数並んで形成されている。また、オーガレスト41の支柱部42は、支柱挿入部44に挿入された状態で、鉛直方向に沿ってスライド可能である。従って、オーガレスト41をネジ45によってネジ止めする際に、当該ネジ45を挿入するネジ孔を変更することにより、オーガレスト41を固定する位置を鉛直方向で変更できる。
本実施形態のコンバイン10では、オーガレスト41を固定する位置を、鉛直方向で2種類選択できるように構成している。即ち、レストステー43の支柱挿入部44には、低い方のネジ孔46aと、高い方のネジ孔46bが、鉛直方向に並べて形成されている。低い方のネジ孔46aにネジ45を挿通させてオーガレスト41を固定すれば、当該オーガレスト41を「低い位置」に固定できる。一方、高い方のネジ孔46bにネジ45を挿通させてオーガレスト41を固定すれば、当該オーガレスト41を、「高い位置」に固定できる。
以上の構成により、本実施形態のコンバイン10は、オーガレスト41の位置を鉛直方向で2段階に変更できる。これにより、当該オーガレスト41に支持させた状態(格納状態)の排出オーガ17の鉛直方向での位置(格納位置)を、2段階で変更することができる。
例えば、オーガレスト41の位置を「低い位置」とすれば、当該オーガレスト41に支持させた状態(格納状態)の排出オーガ17の位置も比較的低くなる。これにより、格納状態の排出オーガ17が周囲の障害物に衝突したりすることを防止できる。一方、このように排出オーガ17が低い位置で保持されていると、当該排出オーガ17の先端がキャビン18の真横に位置するため(図1等参照)、当該排出オーガ17が運転座席20から見て邪魔に感じられることがある。このような場合は、オーガレスト41の位置を「高い位置」に変更すれば良い。これによれば、当該オーガレスト41に支持させた状態(格納状態)の排出オーガ17の位置を、比較的高くすることができる。これにより、オペレータは、運転座席20から見える排出オーガ17を邪魔に感じにくくなる。
本実施形態のコンバイン10では、オーガレスト41の位置を、制御部11に対して設定できるように構成されている。具体的には、オペレータが適宜の操作を行うことにより、図10のようなオーガレスト位置設定メニューを表示装置23に表示できるように構成されている。オペレータは、オーガレスト41の位置を変更した場合には、図10のオーガレスト位置設定メニューを表示装置23に表示させ、操作ボタン24を適宜操作することにより、変更後のオーガレスト41の位置を設定する。
なお、本実施形態の場合、オーガレスト41の位置は、「高い位置」と「低い位置」の2種類が有り得るので、図10のオーガレスト位置設定メニューでは、オーガレスト41の位置を「高」と「低」の2つのなかから選択できるようになっている。また、オペレータは、オーガレスト位置設定メニューにおいて、オーガレスト41の位置の現在の設定値が「高」「低」の何れであるかを確認することができる。
ところで、図8を参照して説明したように、本実施形態において、「制御実行範囲」は、排出オーガ17の格納位置を中心として、上下の所定の範囲として定義されている。ここで、排出オーガ17の格納位置は、オーガレスト41の上下の位置によって異なる。従って、ステップS105の判定を正確に行うためには、オーガレスト41の位置に応じて、「制御実行範囲」を異ならせる必要があるのである。
そこで、本実施形態の制御部11は、オペレータが設定したオーガレスト41の位置に応じて、ステップS105の判定で用いる「制御実行範囲」を異ならせるように構成されている。
具体的には以下のとおりである。本実施形態の制御部11には、オーガレスト41の位置が「高い位置」に設定されているときに対応した「制御実行範囲」と、オーガレスト41の位置が「低い位置」に設定されているときに対応した「制御実行範囲」と、がそれぞれ予め設定(プリセット)されている。そして、制御部11は、図10のオーガレスト位置設定メニューによってオペレータが設定したオーガレスト41の位置の設定に応じて、ステップS105の判定で用いる「制御実行範囲」を異ならせる。
これによれば、オーガレスト41の位置を変更した場合であっても、ステップS105の判定を正確に行うことができる。
以上で説明したように、本実施形態のコンバインは、穀粒を排出する排出オーガ17と、排出オーガ17を昇降駆動する昇降駆動部と、排出オーガ17の鉛直方向の位置に対応した情報を検出する昇降位置検出部53と、排出オーガ17を下から支持するオーガレスト41と、昇降駆動部の電磁弁50を制御する制御部11と、を備えている。制御部11は、排出オーガ17をオーガレスト41に向けて下降させるように電磁弁50を制御する下降制御(ステップS103)と、前記下降制御を行っている間に、前記昇降位置検出部53の検出結果が、所定の格納判定時間のあいだ変化しない状態が継続した場合(ステップS106及びS107の判定)、当該下降制御を停止させる下降停止制御(ステップS109)と、を含む自動格納制御を実行する。
これによれば、排出オーガ17を、オーガレスト41に支持される位置まで確実に下降させることができる。また、所定の格納判定時間のあいだは下降制御が継続されるから、排出オーガ17がオーガレスト41から浮いた位置で停止してしまうことを防止できる。そして、上記格納判定時間が経過した後は、下降制御を停止させるので、無駄な下降制御が行われることがない。これにより、自動格納制御を、確実かつ効率良く行うことができる。
また、上記で説明したように、本実施形態のコンバイン10において、制御部11は、昇降位置検出部53の検出結果が所定の制御実行範囲内にある場合に(ステップS105の判定)、下降停止制御を行っている。
このように、昇降位置検出部53の検出結果が所定の範囲内にあることを確認したうえで、下降停止制御を行うようにしたことで、誤った位置でオーガ17の下降が停止されてしまうことを防止できる。
また、上記で説明したように、本実施形態のコンバイン10において、オーガレスト41は、鉛直方向の位置を変更可能に構成されている。そして、制御部11は、オーガレスト41の位置に応じて制御実行範囲を異ならせている。
オーガレスト41の上下位置を変更することにより、排出オーガ17の格納姿勢を変更できる。そして、当該オーガレスト41の上下位置に応じて、制御実行範囲を異ならせることにより、オーガレスト41の位置を変更した場合であっても適切な制御を行うことができる。
また、上記で説明したように、本実施形態のコンバイン10は、当該コンバインの機体に関する情報を表示可能な表示装置23と、表示装置23に表示される情報に関する操作を受け付ける操作ボタン24と、を運転座席の近傍に備える。オーガレスト41の鉛直方向の位置の設定値を、表示装置23に表示可能である。また、前記鉛直方向の位置の設定値を操作ボタン24によって変更可能である。制御部11は、前記鉛直方向の位置の設定値の変更に応じて、制御実行範囲を異ならせる。
このように、オーガレスト41の位置の設定値を表示装置23で簡単に確認できるとともに、操作ボタン24を操作することで前記設定値を簡単に変更できる。そして、当該設定値の変更に応じて判定範囲を異ならせることにより、オーガレスト41の現在の位置に応じて適切に制御することができる。
以上に本発明の好適な実施の形態を説明したが、上記の構成は例えば以下のように変更することができる。
昇降駆動部、旋回駆動部、昇降位置検出部、旋回角度検出部等は、上記実施形態で説明した構成に限らず、適宜変更できる。
上記実施形態では、オーガレスト41の位置を上下2段階で変更可能としたが、この構成は省略できる。もっとも、オーガレスト41の位置を、上下3段階以上で変更可能であっても良い。