(第1実施形態)
図1と図2とを参照して、本発明の一実施形態として、コンバイン1について説明する。なお、図1には、コンバイン1の前後方向及び上下方向を表す。図2には、コンバイン1の前後方向及び左右方向を表す。
コンバイン1は、走行部2、刈取部3、脱穀部4、選別部5、貯留部6、排藁処理部7、動力部8、及び、操縦部9を備える。コンバイン1は、走行部2によって走行しつつ、刈取部3によって刈り取った穀稈を脱穀部4で脱穀し、選別部5で穀粒を選別して貯留部6に貯える。また、脱穀後の排藁は排藁処理部7によって処理される。動力部8は、これらの走行部2、刈取部3、脱穀部4、選別部5、貯留部6、排藁処理部7に動力を供給する。
走行部2は、機体フレーム20の下方に設けられる左右一対の走行装置(以降「クローラ式走行装置」とする)21と、トランスミッション(不図示)とを備える。トランスミッションは、エンジン8aの動力を変速してクローラ式走行装置21へ伝達する。
刈取部3は、走行部2の前方に設けられている。刈取部3は、デバイダ31、引起装置32、切断装置33、及び、搬送装置34を備える。デバイダ31は、圃場の穀稈を引起装置32へ案内する。引起装置32は、デバイダ31によって案内された穀稈を引き起こす。切断装置33は、引起装置32によって引き起こされた穀稈を切断する。搬送装置34は、切断装置33によって切断された穀稈を脱穀部4へ搬送する。
脱穀部4は、刈取部3の後方に設けられている。脱穀部4は、フィードチェーン41と扱胴42とを備える。フィードチェーン41は、搬送装置34から穀稈を受け継いで排藁処理部7へ搬送する。扱胴42は、フィードチェーン41によって搬送されている穀稈を脱穀する。
選別部5は、脱穀部4の下方に設けられている。選別部5は、揺動選別装置51と、風選別装置52と、図示せぬ穀粒搬送装置及び藁屑排出装置とを備える。揺動選別装置51は、脱穀部4から落下した脱穀物を穀粒と藁屑等に選別する。風選別装置52は、揺動選別装置51によって選別された脱穀物を更に穀粒と藁屑等に選別する。穀粒搬送装置は、揺動選別装置51及び風選別装置52によって選別された穀粒を貯留部6へ搬送する。藁屑排出装置は、揺動選別装置51及び風選別装置52によって選別された藁屑等を排出する。
貯留部6は、脱穀部4の右側方に設けられている。貯留部6は、グレンタンク61と排出オーガ62とを備える。グレンタンク61は、選別部5から搬送されてきた穀粒を貯留する。排出オーガ62は、グレンタンク61に貯留されている穀粒を任意の場所に排出できる。また、排出オーガ62を収納する際に、その中途部を支持するオーガレスト63が機体に設けられている。
排藁処理部7は、脱穀部4の後方に設けられている。排藁処理部7は、図示せぬ排藁搬送装置及び排藁切断装置を備える。排藁搬送装置は、フィードチェーン41から穀稈を受け継いで排藁切断装置へ搬送する。排藁切断装置は、排藁搬送装置によって搬送された穀稈を切断して排出する。
操縦部9は、機体右側に設けられている。操縦部9は、キャビン91と、運転席92と、ハンドル93等の操作具とを備える。キャビン91は、運転席92及びハンドル93等の各種操作具を内装している。運転席92は、オペレータが座る座席であり、操縦部9の左右方向中央に配置されている。ハンドル93は、コンバイン1の進行方向を変更する操向ハンドルである。オペレータは、ハンドル93を含む各操作具を適宜操作することによってコンバイン1を稼動させる。このような構成により、オペレータは、運転席92に着座した状態でコンバイン1を操縦できる。
次に、排出オーガ62について説明する。
排出オーガ62は、縦排出オーガ62aと、横排出オーガ62bと、排出筒体64と、旋回用アクチュエータ65と、旋回角度検出手段となる旋回角度ポテンショメータ66と、昇降用アクチュエータ67と、昇降角度検出手段となる昇降角度ポテンショメータ68とを備える。排出オーガ62は、使用時には、旋回用アクチュエータ65と昇降用アクチュエータ67とが駆動されて、グレンタンク61や脱穀部4等の上方を旋回及び/又は昇降することによって移動できる。
排出オーガ62は、非作業時(不使用時)には脱穀部4の前上部付近に設けられたオーガレスト63に載置される。排出オーガ62の上方にはこれを遮蔽する構造物がなく、また、排出オーガ62の周囲にはこれを取り囲む構造物がないので、排出オーガ62は、上方を始め周囲に露出し、コンバイン1の他の構造物に対して露出する。
縦排出オーガ62aは、機体上下方向に延在して、グレンタンク61からの穀粒を揚送するものである。縦排出オーガ62aは、縦排出オーガ筒62cと縦排出コンベア62dとを備える。縦排出オーガ筒62cは、その軸心を中心として回転自在に機体フレーム20に支持されている。
横排出オーガ62bは、縦排出オーガ62aからの穀粒を搬送し、その先端部から外部に排出するものである。横排出オーガ62bは、コンバイン1の前後方向に沿って設置され、その基端部が縦排出オーガ62aの上部にスイング自在に支持されている。横排出オーガ62bは、横排出オーガ筒62eと、横排出コンベア62fとを備える。
横排出オーガ筒62eの先端部には、排出筒体64が設けられている。排出筒体64は、四角形断面を有しており、側面視で略L形に形成されている。排出筒体64の開口された一側は、横排出オーガ筒62eの先端部と連通するように接続され、且つ、開口された他側が下方に向かって開放されている。この他側は、排出口64aとなっている。横排出オーガ筒62eの先端部から排出筒体64に流入する穀粒は、排出口64aを通じて外部へ排出される。
旋回用アクチュエータ65は、縦排出オーガ筒62cを左右方向(水平方向)へ回転させる部材である。排出オーガ62は、旋回用アクチュエータ65の駆動に応じて縦排出オーガ筒62cがその軸心回りに回転するように構成される。回転式ポテンショメータ等によって構成される旋回角度ポテンショメータ66は、排出オーガ62の旋回角度として縦排出オーガ筒62cの回転角度を検出する。
昇降用アクチュエータ67は、横排出オーガ筒62eを上下方向へスイングさせる部材である。昇降用アクチュエータ67の両端部には、横排出オーガ筒62eに固定されたブラケット67aと、縦排出オーガ筒62cに固定されたブラケット67bとが接続される。排出オーガ62は、昇降用アクチュエータ67の駆動に応じて、横排出オーガ筒62eがその基端部を中心として上下方向へスイングするように構成される。昇降用アクチュエータ67の各端部は、ブラケット67a・67bに回転自在に支持されている。伸縮式ポテンショメータ等によって構成される昇降角度ポテンショメータ68は、昇降用アクチュエータ67のストロークを検出して、横排出オーガ筒62eの昇降角度を検出する。
次に、図3、図4、図5を用いて、排出オーガ62に装着される測位ユニット100について説明する。
図3に示すように、測位ユニット100は、排出オーガ62の先端部の上面側に装着されている。測位ユニット100は、測位衛星からの電波を受信して、コンバイン1の位置を測定するためのものである。
図4に示すように、排出オーガ62の先端、即ち、排出筒体64の先端と測位ユニット100の前端とが一致するように、排出筒体64及び横排出オーガ筒62eの上方に測位ユニット100が配置されている。測位ユニット100は、受信装置101と、慣性航法装置102と、無線通信装置103と、これらを一体的に収容するケース104とを備えている。
受信装置101は、測位衛星からの電波を受信し、受信した電波を信号に変換して慣性航法装置102に送信する。受信装置101としては、GNSS衛星群からの電波を受信するGNSS受信機や、GPS衛星からの電波を受信するGPS受信機等が挙げられる。
慣性航法装置102は、3軸のジャイロと3方向の加速度を測定し、姿勢方位データを算出する。また、慣性航法装置102は、受信装置101から送信される信号に基づいて位置データを算出する。つまり、慣性航法装置102は、受信装置101からの位置情報に基づいて位置データを算出する演算部として機能する。さらに、本実施形態では、慣性航法装置102にGNSS受信機105を搭載することで、慣性航法装置102による姿勢方位データの信頼性を向上している。
測位ユニット100は、慣性航法装置102を備えることで、悪天候、電波障害等で測位衛星からの電波を受信できない状況においても、慣性航法装置102によって検出した3方向の加速度に基づいて、移動速度や移動距離等を算出して測位する慣性航法を利用することも可能である。
無線通信装置103は、慣性航法装置102によって算出された位置データと姿勢方位データとを無線通信によって外部に送信する。無線通信装置103は、例えば無線LANやモバイル通信を用いたデータ通信装置である。無線通信装置103から送信されるデータは、例えばオペレータが所持する携帯端末やコンバイン1のECU等で受信され、圃場内での位置確認やコンバイン1の姿勢(前後左右への傾き等)の確認等、コンバイン1の稼働に活用される。
このように、測位ユニット100は、ケース104内に受信部としての受信装置101と、演算部としての慣性航法装置102と、通信部としての無線通信装置103を一体的に収容している。つまり、ケース104内に、測位に必要な構成をユニット化して全て収めている。このように構成することで、測位ユニット100の機体への取り付け性を向上できる。また、測位ユニット100を異なる機種に適用する際は、ケース104を適宜取り付けるだけで搭載することが可能であり、高い汎用性を実現している。
図5に示すように、ケース104は、横排出オーガ筒62eの長手方向に沿って延びる形状を有する。ケース104内では、固定板106上に、前方から受信装置101、慣性航法装置102、無線通信装置103の順にこれらが所定間隔を空けて載置されている。このように、測位衛星からの信号を受信する受信装置101をケース104の最前に配置することで、コンバイン1の前部(つまり進行方向側)に受信装置101を配置することとなり、位置測位精度を向上できる。コンバイン1においては、受信装置101の位置が測位点として測位ユニット100の位置P0に相当する。
図4に示すように、固定板106の底面には、固定板106の長手方向に沿ってそれぞれ間隔をあけて複数のクランプ160が固定されている。各クランプ160は、横排出オーガ筒62eの外周面に沿って取り付けられるとともに、溶接等によって固定されている。クランプ160を介して排出オーガ62に固定板106を載置し、クランプ160を横排出オーガ筒62eに固定した後に、筐体としてケース104を被せることによってケース104内を密閉している。このようにして、測位ユニット100は、剛体としての排出オーガ62に固定されている。なお、好ましくは、ケース104は、固定板106に対して着脱自在となっている。
排出オーガ62の先端部の上面側に測位ユニット100が装着されると、受信装置101は、排出口64aの上方に位置する(図4参照)。排出オーガ62がオーガレスト63に載置された状態において、排出口64aは、刈取部3のデバイダ31の上方に位置しており、デバイダ31は、刈取部3の前端部を形成している。また、刈取部3は、コンバイン1の機体前端部を形成している。
測位ユニット100がコンバイン1の機体前端部に配置されることにより、走行中のコンバイン1の位置情報及び姿勢方位情報を取得する際の精度を高めることができる。つまり、刈取部3に対する受信装置101及び慣性航法装置102の機体前後方向の補正の必要がなくなることで、信頼性のあるデータを利用することができるとともに、演算時の計算負荷も低減できる。
また、測位ユニット100がキャビン91のルーフ94と略同一高さに配置され、窓ガラス96よりも高い位置に配置されることにより、測位ユニット100はキャビン91内からの視野に影響しない。これにより、運転席92に座るオペレータの視認性を確保することができる。更に、上方を始め周囲に露出している排出オーガ62に測位ユニット100を装着することにより、測位ユニット100も周囲に露出するので、受信感度を維持して位置測位精度を向上できる。
第1実施形態のコンバイン1によれば、測位ユニット100として独立して機能できる構成を一体的に収めたケース104を排出オーガ62に装着するだけで測位ユニット100をコンバイン1に設置できる。このように、測位ユニット100は、機体への取り付け性の向上が図られている。また、測位ユニット100が排出オーガ62に装着されていることによってコンバイン1の他の構造物に対して露出して、測位ユニット100の受信感度を維持できる。従って、機体への取り付け性の向上が図られた測位ユニット100を備え、受信感度を維持できるコンバイン1を提供することができる。
また、コンバイン1の機体前端部として刈取部3の上方に測位ユニット100を配置できるので、設定経路に対する刈取部3の位置の補正量を小さく抑えることができ、コンバイン1の直進応答性を良好にすることができる。
更に、測位ユニット100が排出オーガ62の上面側に装着されていることによってコンバイン1の他の構造物に対して上方に露出するので、測位ユニット100の受信感度を顕著に維持できる。また、排出オーガ62の先端のシュータ機能が妨げられることを防止できる。
次に、図6を用いて、コンバイン1の制御システムについて説明する。
図6に示すように、制御装置80は、CPU等のマイクロコンピュータからなる処理部81と、ROM、RAM、ハードディスクドライブ、フラッシュメモリ等の記憶部82とを有している。処理部81は、ROMに格納されているプログラム等をRAM上に読み出したうえで、これを実行することができる。更に、制御装置80は、制御プログラムを処理部81が実行することにより、各種構成要素の作動制御を行う。具体的には、通信時における情報の送受信、各種の入出力制御及び演算処理の制御等を行う。
記憶部82には、コンバイン1の走行と排出作業とに必要なプログラムに加え、排出オーガ62の長さ及び幅等の諸元のデータと、コンバイン1の全長、全幅及び全高等の諸元のデータが格納されている。
慣性航法装置102によって算出された位置データと姿勢方位データとは、無線通信装置103を介して制御装置80に送信される。また、排出オーガ62の旋回角度のデータ及び昇降角度のデータが、制御装置80に送信される。
また、制御装置80は、所望の基準点となるコンバイン1の位置を、測位ユニット100の位置P0から算出する。制御装置80は、排出オーガ62の諸元のデータとコンバイン1の諸元のデータとから、測位ユニット100の位置P0に対する基準点の位置を算出して、コンバイン1の位置データを取得する。図4及び図5には、一例として、コンバイン1のトレッドの中心CLに、且つ、高さ位置と前後方向における位置とがデバイダ31の位置となるコンバイン1の前端部の位置に設定された基準点Pを示す。
測位ユニット100によって取得される測位データ(位置データ及び姿勢方位データ)は、予め経路を定め、その経路上を自律的に走行し、作業を行う自律型コンバインを稼働する際の制御に用いることができる。例えば、位置データを用いて自律型コンバインが経路に沿って走行しているか否かを判定することができ、姿勢方位データを用いて自律型コンバインの傾斜を認識して走行状態や圃場の状態を確認することができる。また、オペレータが測位ユニット100に含まれる無線通信装置103からのデータ送信を受け取ることで、自律型コンバインに対してリアルタイムの指示を送ることも可能である。
次に、図7(A)及び(B)を用いて、排出オーガ62から穀粒を排出するコンバイン1の制御について説明する。
例えば、GNSS受信機が搭載された運搬車Wは、運搬車Wの位置を測位することができる。コンバイン1は、運搬車Wとの間の通信によって、運搬車Wの位置データを取得して運搬車Wの位置を認識している。ここでは、排出の目標位置Ptは、測位される運搬車Wの位置であって、荷台Cの中心に設定されているとする。或いは、目標位置Ptは、GNSS受信機に接続される制御装置又はコンバイン1の制御装置80が、運搬車Wの位置の座標値から所定距離を離れた別の座標値に設定した位置であってもよい。
上述のように、測位ユニット100は、排出オーガ62の先端部に位置している。従って、測位ユニット100の位置P0(図5参照)は、排出オーガ62の先端部の位置となる。コンバイン1は、穀粒を排出する場合に、位置データが示す測位ユニット100の位置から目標位置Ptまでの測位ユニット100の移動に対応する旋回角度及び昇降角度を算出して、算出した旋回角度及び昇降角度で排出オーガ62を作動させることによって排出オーガ62を目標位置Ptに近付ける。
図7(A)に示すように、コンバイン1は、運搬車Wに近付いたうえで、算出した旋回角度及び昇降角度で排出オーガ62を昇降及び旋回させて、排出オーガ62の先端部の位置、即ち、測位ユニット100の位置P0を運搬車Wの荷台Cに近付けることができる。このとき、コンバイン1は、測位ユニット100の位置P0とともに、目標位置Ptを認識している。そのため、図7(B)に示すように、目標位置Ptの上方に測位ユニット100の位置P0が重複するように排出オーガ62を作動させることができる。
或いは、オペレータが操作具又はリモートコントローラを用いて排出オーガ62の作動を操作する場合に、これらの詳細な操作量によらずに、操作方向のみを検知して、測位ユニット100の位置P0を目標位置Ptに一致させ、又は、目標位置Ptの上方に重複させるように、排出オーガ62を作動させる。
測位ユニット100の位置P0を測位することは、排出オーガ62の先端部の位置を測位することになるので、コンバイン1は、カメラ等、作業領域の状況を観察する機器を備えていなくても、排出オーガ62の位置を穀粒の排出先に逸早く的確に調整でき、効率よく排出作業を実施することができる。
第1実施形態のコンバイン1によれば、測位ユニット100の位置データを用いることによって、穀粒の排出先の位置として目標位置Ptに排出オーガ62を正確に近付けることができる。
なお、本実施形態では、位置データを算出する演算部として慣性航法装置102を利用しているが、受信部となる受信装置101によって受信した位置情報から位置データを算出する演算部としての機能を有する演算装置を別途設けてもよいし、その機能を受信装置101に持たせてもよい。また、姿勢方位データを位置データと複合して高精度の測位を実現するために慣性航法装置102を設けているが、測位の際に既知の位置情報を有する基準局との通信を行う場合等、受信装置101による位置データの利用で足りる場合は、慣性航法装置102を省いて、上述のように受信装置101自体に演算部としての機能を持たせるか、別途演算装置を設けてもよい。
図8(A)、(B)、(C)及び(D)に示すように、排出オーガ62に対する測位ユニット100の位置は、排出オーガ62の先端部の上面側だけでなく、排出オーガ62の長手方向に沿って変更することも可能である。
図8(A)に示すように、排出オーガ62の前半部の前側として、排出筒体64の後方において排出オーガ62の上面側に測位ユニット100を装着することができる。このような配置によれば、排出オーガ62の排出筒体64との干渉を避けて測位ユニット100を排出オーガ62に装着することができる。また、上述の例とともに、キャビン91の左方にある空間を利用して測位ユニット100を配置できるので、測位ユニット100の形状と大きさとが制約されずに、所望の形状と大きさとを有する測位ユニット100を利用することができる。
図8(B)に示すように、排出オーガ62の前半部の後側において排出オーガ62の上面側に測位ユニット100を装着することができる。このような配置によれば、コンバイン1の前後方向に沿って、測位ユニット100の位置P0(図5参照)をキャビン91の位置に揃えることができ、運転席92に座るオペレータの位置に測位ユニット100の位置P0を適用できる。これにより、運転席92に座るオペレータの位置を基準にする場合に、測位ユニット100の位置P0から前後方向の補正の必要がなくなる。
図8(C)に示すように、排出オーガ62の後半部の前側において排出オーガ62の上面側に測位ユニット100を装着することができる。このような配置によれば、測位ユニット100の位置P0(図5参照)をトレッドの中心CLに合致させることができる。これにより、測位ユニット100の位置P0から機体左右方向の補正の必要がなくなる。
図8(D)に示すように、排出オーガ62の後半部の後側において排出オーガ62の上面側に測位ユニット100を装着することができる。このような配置によれば、排出オーガ62の昇降による高さの変化量が小さい範囲に測位ユニット100を排出オーガ62に装着することができる。
また、図9(A)、(B)、(C)及び(D)に示すように、排出オーガ62に対する測位ユニット100の位置は、排出オーガ62の先端部の上面側だけでなく、排出オーガ62の側面側に変更することも可能である。
図9(A)に示すように、排出オーガ62の前半部の前側として、排出筒体64の後方において排出オーガ62の右側に測位ユニット100を装着することができる。また、二点鎖線で示すように、排出オーガ62の左側に測位ユニット100を装着することができる。このような配置によれば、上述の図8(A)の例と同様の効果を得ることができる。また、オペレータは、排出オーガ62の上方を覗き込むことなく排出オーガ62を側面から覗く視線で作業できるため、測位ユニット100の各部品の交換等、測位ユニット100のメンテナンスを容易に実施することができる。
図9(B)に示すように、排出オーガ62の前半部の後側において排出オーガ62の左側に測位ユニット100を装着することができる。また、二点鎖線で示すように、排出オーガ62の右側に測位ユニット100を装着することができる。このような配置によれば、上述の図8(B)の例と同様の効果を得ることができるとともに、上述の図9(A)の例と同様の効果を得ることができる。
図9(C)に示すように、排出オーガ62の後半部の前側において排出オーガ62の右側に測位ユニット100を装着することができる。また、二点鎖線で示すように、排出オーガ62の左側に測位ユニット100を装着することができる。このような配置によれば、上述の図8(C)の例と同様の効果を得ることができるとともに、上述の図9(A)の例と同様の効果を得ることができる。
図9(D)に示すように、排出オーガ62の後半部の後側において排出オーガ62の左側に測位ユニット100を装着することができる。また、二点鎖線で示すように、排出オーガ62の右側に測位ユニット100を装着することができる。このような配置によれば、上述の図8(D)の例と同様の効果を得ることができるとともに、上述の図9(A)の例と同様の効果を得ることができる。
また、図示していないが、これらの例の他に、測位ユニット100を排出オーガ62の下面側に装着することも可能である。
これらの各例における測位ユニット100の位置の場合も、基準点となるコンバイン1の位置から測位ユニット100の位置P0までの距離を算出することで、測位ユニット100の高い設置性の利点を活かしつつ、十分な精度の測位を実現することが可能である。
また、コンバイン1は、排出オーガ62に対する測位ユニット100の位置が変わることによって排出口64aの上方から測位ユニット100の位置P0が変わるとしても、排出口64aの位置を算出できる。この場合に、コンバイン1は、排出オーガ62の諸元のデータを利用することによって、測位ユニット100の位置P0に対して排出口64aの位置を算出することができる。つまり、コンバイン1は、排出オーガ62の旋回角度のデータと、排出オーガ62の昇降角度のデータと、排出オーガ62の長さのデータと、算出される位置データとから測位ユニット100の位置P0を算出することができる。これにより、排出口64aの上方から測位ユニット100の位置P0が変わるとしても、穀粒を排出する場合に、算出した排出口64aの位置が排出の目標位置Ptに近付くように排出オーガ62を作動させることができる。
(第2実施形態)
次に、別の測位ユニット10Aを備えた、本発明の第2実施形態としてのコンバイン1について、図10(A)及び図10(B)を用いて説明する。なお、以下において、第1実施形態のコンバイン1の構成と同一の構成については、同符号を付し、説明を省略する。
図10(A)に示すように、別の測位ユニット10Aにおいては、ケース104内の中央に受信装置101が配置され、後端部に無線通信装置103が配置されている。図10(B)に示すように、慣性航法装置102が受信装置101の下方に配置されている。即ち、ケース104内では、固定板106上に、前方から慣性航法装置102と無線通信装置103との順にこれらが所定間隔を空けて載置されている。慣性航法装置102の上方には受信装置101が配置され、受信装置101と慣性航法装置102とがケース104内の中央に配置されている。
排出オーガ62の先端部の上面側に測位ユニット10Aが装着されると、排出オーガ62がオーガレスト63(図2参照)に載置された状態において、受信装置101は、引起装置32の上方に位置しており、引起装置32は、刈取部3の前部を形成している。即ち、測位ユニット10Aは、コンバイン1の機体前端部に配置されている。
第2実施形態のコンバイン1においても、制御装置80は、排出オーガ62の諸元のデータとコンバイン1の諸元のデータとから、測位ユニット10Aの位置P0に対する基準点の位置を算出して、コンバイン1の位置データを取得する。測位ユニット10Aによって取得される測位データは、予め経路を定め、その経路上を自律的に走行し、作業を行う自律型コンバインを稼働する際の制御に用いることができる。
第2実施形態のコンバイン1は、排出オーガ62の諸元のデータ及び測位ユニット10Aの寸法等のデータを利用することによって、測位ユニット10Aの位置P0に対して排出口64aの位置を算出することができる。コンバイン1は、排出オーガ62の旋回角度のデータと、排出オーガ62の昇降角度のデータと、排出オーガ62の長さのデータと、算出される位置データとから排出口64aの位置を算出するとともに、排出口64aの位置に対する測位ユニット10Aの位置P0を算出することができる。これにより、排出口64aの上方から測位ユニット10Aの位置P0がずれているとしても、穀粒を排出する場合に、算出した排出口64aの位置が排出の目標位置Ptに近付くように排出オーガ62を作動させることができる。
第2実施形態のコンバイン1によれば、機体への取り付け性の向上が図られた測位ユニット10Aが排出オーガ62に装着されていることによって、コンバイン1の他の構造物に対して測位ユニット10Aが露出して、測位ユニット10Aの受信感度を維持できる。
また、コンバイン1の機体前端部として刈取部3の上方に測位ユニット10Aを配置できるので、設定経路に対する刈取部3の位置の補正量を小さく抑えることができ、コンバイン1の直進応答性を良好にすることができる。
更に、測位ユニット10Aが排出オーガ62の上面側に装着されていることによってコンバイン1の他の構造物に対して上方に露出するので、測位ユニット10Aの受信感度を顕著に維持できる。また、排出オーガ62の先端のシュータ機能が妨げられることを防止できる。
その他、第2実施形態のコンバイン1は、第1実施形態のコンバイン1と同様である。即ち、第2実施形態のコンバイン1において、排出オーガ62に対する測位ユニット10Aの位置は、図8(A)、(B)、(C)及び(D)に示す測位ユニット100の位置と、図9(A)、(B)、(C)及び(D)に示す測位ユニット100の位置とのうちの何れかに変更することも可能である。測位ユニット10Aを排出オーガ62の下面側に装着することも可能である。
なお、測位ユニット10Aは、運転席92の左側方として、キャビン91のルーフ94の左側方に配置されたものであってもよい。図11に示すように、この例において、ケース104の固定板106は、支持フレーム107に支持されている。固定板106を支持フレーム107に取り付けて固定した後に、ケース104を被せることで、ケース104内を密閉している。支持フレーム107は、機体前後方向に延びる部材であり、キャビン91の左側壁95に固定されている。
或いは、測位ユニット10Aは、ルーフ94の左側方だけでなく、機体幅方向に沿ってルーフ94の前部、後部又は後方に配置することも可能である(不図示)。
また或いは、図示しないフロア型のコンバインについても同様の思想を持って、測位ユニット10Aを配置することが可能である。即ち、キャビンを有さないコンバインの運転席の機体中心側の側方に測位ユニット10Aを配置する。フロア型のコンバインでは、運転席の左側方に測位ユニット10Aを設置するための支持フレームが、運転席の左側方のサイドコラム上に立設されている。
上述のように、測位ユニット10Aは、機体への取り付け性の向上が図られたものである。従って、測位ユニット10Aは、コンバイン1の機体に対して所望の位置に配置することが可能である。そして、測位ユニット10Aによればケース104内の中央に受信装置101が配置されているので、装着位置の周囲の空間上の制約、コンバイン1の位置情報の取得及び位置データの算出、位置データの座標値から基準点までの補正量、直進応答性、排出作業の効率性等を考慮して、同一の構造を有する測位ユニット10Aを、コンバイン1が所望の機能を発揮できる位置であって、コンバイン1の機種ごと及び機体上の異なる位置に適宜配置することが可能である。このように、測位ユニット10Aは、汎用性の向上が図られたものである。
なお、図12(A)に示すように、測位ユニット100のケース104内において、受信装置101、慣性航法装置102、無線通信装置103、及び、GNSS受信機105は、前後方向に沿って、受信装置101と慣性航法装置102及びGNSS受信機105と無線通信装置103との順に並んでいればよく、ケース104内でのこれらの位置は特に限定されない。受信装置101、慣性航法装置102、無線通信装置103、及び、GNSS受信機105の各位置は、ケース104の左右方向の中心からずれていてもよく、当該左右方向の中心に対しての各位置が一致していなくてもよい。例えば、測位ユニット100は、受信装置101がケース104内の中央に配置され、慣性航法装置102と無線通信装置103とが順に受信装置101の後方に配置され且つGNSS受信機105が慣性航法装置102の上方に配置されたものであればよい。
図12(B)に示すように、測位ユニット10Aのケース104内において、受信装置101、慣性航法装置102、及び、無線通信装置103は、前後方向に沿って、受信装置101及び慣性航法装置102と無線通信装置103との順に並んでいればよく、ケース104内でのこれらの位置は特に限定されない。受信装置101、慣性航法装置102、及び、無線通信装置103の各位置は、ケース104の左右方向の中心からずれていてもよく、当該左右方向の中心に対しての各位置が一致していなくてもよい。測位ユニット10Aは、ケース104の前方から後方に向かって慣性航法装置102と無線通信装置103とが順に配置され且つ受信装置101が慣性航法装置102の上方に配置されたものであればよい。