以下では、図中の矢印U、矢印D、矢印F及び矢印Bで示した方向を、それぞれ上方向、下方向、前方向及び後方向と定義して説明を行う。
以下では、本発明の一実施形態に係るバルブ装置100について説明する。
まず、図1を参照してバルブ装置100が設けられるエンジン1の構成の概要及びエンジン1におけるオイルの流れについて説明する。
エンジン1は、4つの気筒を具備する直列4気筒型である。エンジン1は、オイルポンプ11、オイルフィルタ12、メインギャラリ13、メインメタル/コンロッドメタル14、オイル通路15、ピストンジェット16、チェーンジェット17、チェーンテンショナー18、可変バルブタイミング機構(VVT)19、ラッシュアジャスタ(HLA)20、カムジャーナル21及びカムシャワー22を具備する。
オイルポンプ11は、オイルパン(不図示)に貯溜されたオイルを吸入して当該オイルを下流へ圧送するものである。オイルポンプ11は前記エンジン1によって駆動されると共に、当該エンジン1の回転数に応じた回転数で駆動される。オイルポンプ11の下流には、オイルから異物等を取り除くためのオイルフィルタ12が配置される。
オイルフィルタ12を流通したオイルは、メインギャラリ13及びクランク軸(不図示)を支持するメインメタルとコンロッド(不図示)を支持するコンロッドメタル(メインメタル/コンロッドメタル14)へと送られる。
また、オイルフィルタ12を流通したオイルは、ピストン(不図示)にオイルを噴射するピストンジェット16にオイルを供給するためのオイル通路15を流通してピストンジェット16へと送られる。
また、オイルフィルタ12を流通したオイルは、チェーンジェット17、チェーンテンショナー18、可変バルブタイミング機構19、ラッシュアジャスタ20、カムジャーナル21及びカムシャワー22へと送られる。
次に、バルブ装置100の構成について説明する。
バルブ装置100は、ピストンジェット16へのオイルの供給を制御するためのものである。バルブ装置100は、オイル通路15の中途部に配置される。図2に示すように、バルブ装置100は、ハウジング110、弁座120、ポペットバルブ130、スプリング140、ソレノイド150及び連通路160を具備する。
ハウジング110は、略円筒状に形成される部材である。ハウジング110は、軸線方向を前後方向に向けて配置される。ハウジング110の前部の外径は、後部の外径よりも小さくなるように形成される。ハウジング110は、流入孔111、流出孔112、連通部113、挿通部114及び収納部115を具備する。
流入孔111は、ハウジング110の外周面における前部(外径が小さい部分の前後中途部)に形成される開口部である。流入孔111は、ハウジング110の外周面からハウジング110の中心に向かって径方向に延びるように形成される。流入孔111は、略円状に形成される。流入孔111は、周方向に略同一の間隔を空けて複数形成される。流入孔111は、オイルの流通方向における上流側でオイルポンプ11(図1参照)及びオイルフィルタ12(図1参照)と接続される。
流出孔112は、ハウジング110の前側面に形成される開口部である。流出孔112は、正面視略円状に形成される。流出孔112は、オイルの流通方向における下流側でピストンジェット16(図1参照)と接続される。
連通部113は、流入孔111と流出孔112とを連通するための部分(内部空間)である。連通部113は、正面視略円状に形成される。連通部113は、流出孔112の後方に配置され、流出孔112から後方向に延びるように形成される。連通部113は、流出孔112と同心上に配置される。連通部113には、大径部113a及び小径部113bが形成される。
大径部113aは、連通部113の前端部に形成される。大径部113aの内径は、流出孔112の内径よりも小さくなるように形成される。
小径部113bは、連通部113の大径部113aを除く部分に形成される。小径部113bは、大径部113aから後方向に延びるように形成される。小径部113bの内径は、大径部113aの内径よりも小さくなるように形成される。小径部113bと大径部113aとの間には、板面を前方向に向けて配置される段差面が形成される。小径部113bの前端部は、流入孔111と連通する。
挿通部114は、ハウジング110に形成される孔である。挿通部114は、連通部113の小径部113bの内径よりも小さい内径を有する正面視略円状に形成される。挿通部114は、連通部113の後方に配置され、小径部113bから後方向に延びるように形成される。挿通部114は、連通部113と同心上に配置される。
収納部115は、ハウジング110の外径が大きい部分に形成される開口部である。収納部115は、挿通部114よりも大きな内径を有する正面視略円状に形成される。収納部115は、挿通部114と同心上に配置される。収納部115は、後述するソレノイド150を収納可能に形成される。収納部115は、挿通部114を形成する壁部によって連通部113に対して区画される。収納部115の前端部は、挿通部114の径方向外側方に配置される。収納部115には、テーパ部115aが形成される。
テーパ部115aは、挿通部114の後方に配置され、挿通部114から後方向に延びるように形成される。テーパ部115aは、後方向に向かうにつれて内径が徐々に大きくなるように形成される。
このように構成されるハウジング110には、オイルポンプ11(図1参照)によって吐出されるオイルが流入孔111から流入する。当該流入したオイルは、連通部113を流通した後で流出孔112を流通し、ピストンジェット16(図1参照)に供給される。このように、流入孔111、流出孔112及び連通部113は、オイル通路15の一部として形成される。
なお、以下においては、このような流入孔111内の空間、流出孔112内の空間及び連通部113内の空間を「第一の空間S10」と称する。
弁座120は、略円環状に形成される部材である。弁座120の外径は、連通部113の大径部113aの内径と略同一の大きさとなるように形成される。弁座120の前後方向幅は、大径部113aの前後方向幅と略同一となるように形成される。弁座120は、軸線方向を前後方向に向けて配置される。弁座120は、連通部113の大径部113aに圧入される等してハウジング110に固定される。これにより、弁座120は、オイル通路15(流出孔112の後方)に配置され、オイル通路15の中途部を形成する。弁座120は、貫通孔121を具備する。
貫通孔121は、弁座120を前後方向に貫通する孔である。貫通孔121は、流出孔112と連通部113の小径部113bとを連通する。貫通孔121には、入口部121a及び出口部121bが形成される。
入口部121aは、貫通孔121の後部に形成される。入口部121aは、正面視略円形状に形成される。入口部121aの内径は、挿通部114の内径よりも小さくなるように形成される。入口部121aの後端部は、弁座120の後側面で開口する。
出口部121bは、入口部121aの前方に配置され、入口部121aから前方向に延びるように形成される。出口部121bは、前方向に向かうにつれて内径が徐々に大きくなるようなテーパ状に形成される。出口部121bの前端部は、弁座120の前側面で開口する。
第一の空間S10は、このような弁座120によって前後に区画される。以下においては、このような第一の空間S10における弁座120の前側(オイルの流通方向における下流側)の空間、すなわち貫通孔121内の空間及び流出孔112内の空間を「前側空間S11」と称する。
ポペットバルブ130は、オイル通路15(弁座120)を開閉するためのものである。ポペットバルブ130は、略円柱状に形成される。ポペットバルブ130は、軸線方向を前後方向に向けて配置される。ポペットバルブ130は、弁座120の後方、すなわちオイルの流通方向における上流側に配置される。ポペットバルブ130は、軸部131、フランジ部132及び当接部133を具備する。
軸部131は、ポペットバルブ130の前端部から後端部に亘って形成される。軸部131の前端部は、第一の空間S10に配置される。軸部131の後端部は、ハウジング110の収納部115内に配置される。すなわち、軸部131は、第一の空間S10から収納部115内の空間に亘って形成される。軸部131には、大径部131a及び小径部131bが形成される。
大径部131aは、軸部131の後端部を除く部分に形成される。大径部131aの外径は、ハウジング110の挿通部114の内径と略同一の大きさとなるように形成される。大径部131aの後端部は、挿通部114に挿通され、挿通部114を前後方向に摺動可能に構成される。すなわち、大径部131aと挿通部114との間には微小なクリアランスが形成される。大径部131aの前部は、挿通部114から前方向に突出し、連通部113内に配置される。大径部131aは、連通部113に対して径方向にある程度(摺動しない程度に)大きな隙間を空けて配置される。
小径部131bは、軸部131の後端部に形成される。小径部131bの外径は、大径部131aの外径よりも小さくなるように形成される。小径部131bは、ハウジング110の挿通部114から後方向に突出するように形成され、テーパ部115a内に配置される。
フランジ部132は、軸部131の前後中途部に形成される。フランジ部132は、軸部131から径方向外側に延びるような略円板状に形成される。フランジ部132は、弁座120の後側面と対向する。フランジ部132は、連通部113に対して径方向にある程度(摺動しない程度に)大きな隙間を空けて配置される。
当接部133は、軸部131(大径部131a)の前端部に形成される。当接部133は、前方向に向かうにつれて外径が徐々に小さくなるようなテーパ状に形成される。当接部133の前端部(外径が最も小さい部分)の外径は、弁座120の貫通孔121の入口部121aの内径よりも小さくなるように形成される。当接部133の後端部(外径が最も大きい部分)の外径は、貫通孔121の入口部121aの内径よりも大きくなるように形成される。
このようなポペットバルブ130は、後述するソレノイド150によって駆動されてオイル通路15を直接的に開閉する(後述するプランジャ154と一体的に移動することで弁座120に対して近接離間する)直動式のバルブとして構成される。
スプリング140は、金属によって形成された線状の部材(線材)を螺旋状(コイル状)に成形したねじりコイルスプリングである。スプリング140は、弁座120とポペットバルブ130のフランジ部132との間に圧縮された状態で配置される。スプリング140は、ポペットバルブ130を後方向、すなわち弁座120に対して離間する方向に付勢する。
ソレノイド150は、ポペットバルブ130を駆動させるためのものである。ソレノイド150は、ケース151、ボビン152、コイル153及びプランジャ154を具備する。
ケース151は、略筒状に形成される部材である。ケース151は、軸線方向を前後方向に向けて配置される。ケース151は、収納部115内に配置される。ケース151は、プランジャ収納部151a及びコイル収納部151bを具備する。
プランジャ収納部151aは、ケース151の径方向内側に形成される。プランジャ収納部151aは、後端部が閉塞する有底略筒状に形成される。プランジャ収納部151aは、ハウジング110のテーパ部115aの後方に配置される。
コイル収納部151bは、ケース151の径方向外側に形成される。コイル収納部151bは、後述するボビン152及びコイル153を収納可能に形成される。
ボビン152は、略筒状に形成される部材である。ボビン152には、前端部及び後端部にフランジ部が形成される。ボビン152は、軸線方向を前後方向に向けて配置され、後端部を除いてケース151のコイル収納部151bに収納される。ボビン152の後端部は、ケース151から上方向に突出する。
コイル153は、ボビン152に巻回される銅線によって構成される。コイル153は、コイル収納部151bに収納される。コイル153は、図示せぬ電源と接続される。コイル153には、前記電源からコイル153に電流が流されることによって磁力が発生する。
プランジャ154は、ケース151のプランジャ収納部151aの内径と略同一の外径を有する略円柱状に形成される。プランジャ154は、軸線方向を前後方向に向けて配置される。プランジャ154は、後部がプランジャ収納部151aに収納され、ポペットバルブ130と同心上に配置される。プランジャ154の前部は、プランジャ収納部151aから前方向に突出する。プランジャ154は、ポペットバルブ130の後方に配置される。プランジャ154の前端部は、ポペットバルブ130の後端部と連結される。これにより、プランジャ154は、ポペットバルブ130と共に移動可能に構成される。このようなプランジャ154には、テーパ部154aが形成される。
テーパ部154aは、プランジャ154の前端部に形成される。テーパ部154aは、前方向に向かうにつれて内径が徐々に小さくなるように形成される。テーパ部154aは、ハウジング110のテーパ部115aと略同一形状に形成される。
このように構成されるソレノイド150は、雰囲気温度がオイル通路15を流通するオイルの温度よりも高い場所、例えばターボチャージャー(不図示)の近傍等に設けられる。
このようなソレノイド150が設けられるハウジング110には、収納部115、ソレノイド150のケース151及びプランジャ154の間に空間が形成される。以下においては、このような空間を「第二の空間S20」と称する。
第二の空間S20は、挿通部114を形成する壁部によって第一の空間S10に対して区画される。また、第二の空間S20内にはポペットバルブ130の後端部が配置される。第二の空間S20の圧力P20は、オイルポンプ11(図1参照)から吐出されるオイルの圧力(吐出圧)よりも低い圧力(例えば、大気圧)となっている。
連通路160は、前側空間S11(第一の空間S10)と第二の空間S20とを連通するためのものである。連通路160は、ポペットバルブ130に形成される。連通路160は、前側開口部161、後側開口部162及び接続部163を具備する。
前側開口部161は、ポペットバルブ130の前側面(当接部133の前側面)に形成される開口部である。前側開口部161は、弁座120の貫通孔121の入口部121aの内径よりも小さい内径を有する正面視略円状に形成される。
後側開口部162は、ポペットバルブ130の後端部(軸部131の小径部131b)に形成される開口部である。後側開口部162は、小径部131bの外周面から中心に向かって径方向に延びるように形成される。後側開口部162は、周方向に略同一の間隔を空けて複数形成される。後側開口部162は、第二の空間S20で開口する。
接続部163は、前側開口部161と後側開口部162とを接続する孔である。接続部163は、前側開口部161と略同一の内径を有する正面視略円状に形成される。接続部163は、ポペットバルブ130の軸部131の大径部131aの前端部から後端部に亘って前後方向に延びるように形成される。接続部163の後端部は、後側開口部162と連通する。
次に、バルブ装置100の動作について説明する。
バルブ装置100の動作としては、閉塞された状態のオイル通路15を開放する動作及び開放された状態のオイル通路15を閉塞する動作がある。
まず、図2に示す開放された状態のオイル通路15を閉塞する動作について説明する。
なお、図2に示す状態において、ソレノイド150のコイル153には、電流が流されていないものとする。
まず、バルブ装置100は、前記電源を動作させてコイル153に電流を流し、コイル153に磁力を発生させる。プランジャ154は、前記磁力によって前方向に吸引される。これにより、図3に示すように、プランジャ154及びポペットバルブ130は、スプリング140の付勢力Fsprに抗して前方向に移動される。このとき、ポペットバルブ130は、挿通部114に対して摺動すると共に、連通部113に対して摺動することなく前方向に移動される。なお、図3に黒塗りで示す矢印は、ポペットバルブ130及びプランジャ154に作用する荷重の方向を示している。また、図3に白塗りで示す矢印はオイルの流れを示している。これは、図4から図8までにおいても同様である。
ポペットバルブ130は、前方向に移動されることによって弁座120に接近される。そして、ポペットバルブ130の当接部133は、弁座120の貫通孔121の入口部121aと当接される。これにより、ポペットバルブ130は、弁座120に着座して流出孔112(貫通孔121)と連通部113との連通状態を解除し、オイル通路15を閉塞する。このとき、ポペットバルブ130の後端部(連通路160の後側開口部162)は、挿通部114の後端部(第二の空間S20の前方)に配置される。
ここで、ポペットバルブ130は、弁座120よりも上流側に配置されているため、オイルポンプ11(図1参照)から吐出されたオイルによる後方向(オイル通路15を開放する方向)への荷重が当接部133に作用しない。このため、バルブ装置100は、オイルの吐出圧を考慮することなくソレノイド150の推力Fsolを設定することができる。
これによれば、ソレノイド150は、スプリング140の付勢力Fsprよりも大きな力をポペットバルブ130に加えるだけで、オイル通路15を閉塞した状態を維持することができる。すなわち、ソレノイド150の推力Fsolは、スプリング140の付勢力Fsprよりも大きければ良い。以上のように、バルブ装置100は、ポペットバルブ130を弁座120よりも上流側に配置することで、ソレノイド150の推力Fsolを小さくすることができる。
次に、閉塞された状態のオイル通路15を開放する動作について説明する。
まず、図3に示すバルブ装置100は、前記電源の動作を停止させ、コイル153に電流が流れないようにする。これにより、コイル153に発生していた磁力がなくなって、プランジャ154は、前記磁力による吸引が解除される。このため、図4に示すように、プランジャ154及びポペットバルブ130は、スプリング140の付勢力Fsprによって後方向に移動される。このとき、ポペットバルブ130は、挿通部114に対して摺動すると共に、連通部113に対して摺動することなく後方向に移動される。
これにより、ポペットバルブ130は、弁座120から離座して流出孔112(貫通孔121)と連通部113とを連通させ、オイル通路15を開放する。このとき、ポペットバルブ130の後端部(連通路160の後側開口部162)は、挿通部114の後方(第二の空間S20内)に配置される。
本実施形態に係るバルブ装置100は、ポペットバルブ130を用いているため、短いストロークでオイルの供給流量を増大させることができる(図4に示す符号A1参照)。また、バルブ装置100は、短いストロークでオイルの供給流量を減少させることができる。すなわち、バルブ装置100は、短いストロークでオイルの供給流量を調節することができる(図4に示す符号A1参照)。このため、バルブ装置100は、ハウジング110等を小型化することができる。
また、バルブ装置100は、コイル153に電流を流していないとき(非通電時)にオイル通路15を開放することで、前記電源が故障する等してコイル153に電流を流すことができない場合でも、オイル通路15を常に開放することができる。これによれば、バルブ装置100は、ソレノイド150に不具合が発生してプランジャ154を移動させることができなくなった場合でも、ピストンジェット16(図1参照)にオイルを供給することができる。このため、バルブ装置100は、ピストン(不図示)が焼き付いてしまうことを防止できる。
また、本実施形態に係るバルブ装置100は、ポペットバルブ130を連通部113に対して摺動させることなくオイル通路15を開閉することができる。これによれば、バルブ装置100は、ハウジング110とポペットバルブ130との摺動部分を減らすことができるため、オイルに含まれる異物が前記摺動部分に噛み込むことを抑制できる。このため、バルブ装置100は、前記異物が噛み込むことに起因するスティックの発生を抑制することができる。
また、バルブ装置100は、前記異物が噛み込むことに起因するスティックの発生を抑制できるため、オイルから前記異物を取り除く必要がなくなる。すなわち、バルブ装置100によれば、オイルフィルタ12(図1参照)を用いなくても、スティック等の不具合の発生を抑制することができる。これにより、前記不具合の発生を抑制する目的でオイルフィルタ12(図1参照)を設ける必要がなくなるため、エンジン1の部品点数を削減することができる。
また、バルブ装置100は、ポペットバルブ130を連通部113に対して摺動させないようにすることで、連通部113等を高精度に加工する必要がなくなる。このため、バルブ装置100は、ハウジング110等の各部材を簡単に製造することができる。
また、図1に示すバルブ装置100は、スティックの発生を抑制しつつピストンジェット16にオイルを供給することで、ピストンジェット16に確実にオイルを供給することができる。このため、バルブ装置100は、前記ピストンが焼き付いてしまうことを抑制できる。
ここで、図5(a)に示すように、オイル通路15を閉塞した状態において、連通部113には、流入孔111から流入したオイルが充満する。当該充満したオイルの一部は、挿通部114とポペットバルブ130の軸部131とのクリアランスを通って第二の空間S20に侵入する。これにより、第二の空間S20の圧力P20は上昇する。一方、ポペットバルブ130よりも下流側に配置される前側空間S11にはオイルが充満しない。このため、第二の空間S20は、オイルが侵入することでその圧力P20が前側空間S11の圧力P11よりも高くなる。こうして、前側空間S11と第二の空間S20との間に差圧が生じる場合がある。
このような差圧が生じた場合、ポペットバルブ130には、圧力が高い側(第二の空間S20)から低い側(前側空間S11)への荷重、すなわち、前方向への荷重Fpが作用する可能性がある。
このような前方向への荷重Fpの大きさは、以下の数式1によって求められる。
(数1)
Fp=A×(P20−P11)
前記数式1において、Aは、弁座120の貫通孔121の入口部121a(弁座120とポペットバルブ130の当接部133との当接部分)の面積である。
前記数式1に示すように、前方向への荷重Fpは、第二の空間S20の圧力P20が上昇するにつれて(第二の空間S20に侵入するオイルの量が増えるにつれて)大きくなる。スプリング140は、このような前方向への荷重Fpが発生している場合、当該荷重Fpに打ち勝つ程度に強い力でポペットバルブ130を付勢する必要がある。
そこで、本実施形態に係るバルブ装置100は、連通路160によって前方向への荷重Fpが発生しないようにしている。
すなわち、オイル通路15を閉塞した状態において、連通路160は、内部にオイルが充満しないため、その圧力が前側空間S11の圧力P11と略同一の圧力となっている。このため、図5(b)に示すように、第二の空間S20に侵入したオイルは、第二の空間S20よりも圧力が低い連通路160に流入する。このとき、オイルは、ハウジング110のテーパ部115aとプランジャ154のテーパ部154aとの間を通って後側開口部162(連通路160)に流入する。
また、オイル通路15を閉塞した状態において、連通路160の後側開口部162は、挿通部114の後端部(第二の空間S20の前方)に配置されているため、第二の空間S20に侵入しようとするオイルは、ポペットバルブ130の軸部131とハウジング110の挿通部114とのクリアランスから後側開口部162に流入する。これによって、バルブ装置100は、オイルが第二の空間S20に侵入する前に後側開口部162にオイルを流入させることができるため、前方向への荷重Fpをより発生し難くすることができる。
このような後側開口部162に流入したオイルは、接続部163を前方向に流通し、前側開口部161から前側空間S11に流出する。
これによれば、本実施形態に係るバルブ装置100は、第二の空間S20に侵入したオイル及び侵入しようとするオイルをオイル通路15に戻す(第二の空間S20よりも圧力が低い空間に排出する)ことができる。従って、バルブ装置100は、第二の空間S20にオイルが侵入することに起因する第二の空間S20の圧力P20の上昇を抑制できる。
バルブ装置100は、第二の空間S20の圧力上昇を抑制することで、第二の空間S20の圧力P20を前側空間S11の圧力P11と同程度の大きさに保つことができる。このため、バルブ装置100は、前方向への荷重Fpを小さくすることができる。特に、本実施形態に係る連通路160は、第二の空間S20と前側空間S11とを連通することで、第二の空間S20の圧力P20と前側空間S11の圧力P11とを釣り合わせる(同一の圧力にする)ことができる。これによって、バルブ装置100は、前方向への荷重Fpの発生を防止することができる。
これによれば、スプリング140は、小さい力で(前方向への荷重Fpを考慮することなく)ポペットバルブ130を後方向に移動させることができる。このため、バルブ装置100は、スプリング140の付勢力Fsprを小さくすることができる。
また、ソレノイド150は、このような小さいスプリング140の付勢力Fsprに打ち勝って、ポペットバルブ130を駆動することができればよい(図3参照)。このため、ソレノイド150は、小さい力でポペットバルブ130を駆動することができる。すなわち、バルブ装置100は、ソレノイド150の推力Fsolを小さくすることができる。
以上のように、本実施形態に係るバルブ装置100は、スプリング140の付勢力Fspr及びソレノイド150の推力Fsolを小さくすることができるため、スプリング140及びソレノイド150を小型化することができる。これによって、バルブ装置100は、小型化することができる。
また、バルブ装置100は、第二の空間S20と前側空間S11との差圧を小さくすることで、オイルの吐出圧等が変わっても前方向への荷重Fpが発生することを防止(又は荷重Fpの大きさを変動し難くする)ことができる。このため、バルブ装置100は、オイルの供給条件が変わってもソレノイド150の推力Fsolを変更する必要がなくなる。これによれば、バルブ装置100は、設計変更の影響を受け難くすることができる。
また、バルブ装置100は、第二の空間S20と前側空間S11とを連通することで、第二の空間S20に侵入したオイルをオイル通路15に戻すことができるため、オイルを無駄にすることなく前方向への荷重Fpを小さくすることができる。
また、バルブ装置100は、ポペットバルブ130の軸部131だけに連通路160が形成されている。これにより、バルブ装置100は、ハウジング110やプランジャ154等に連通路160を形成するための加工を施す必要がなくなるため、簡単に連通路160を形成することができる。
また、図6に示すように、オイル通路15を開放した状態において、連通部113に流入したオイルは、一部が前側空間S11を流通してハウジング110から流出し、残りが連通路160の前側開口部161から連通路160に流入する。当該連通路160に流入したオイルは、接続部163を後方向に流通し、後側開口部162から第二の空間S20に流入する。
このような第二の空間S20に流入したオイルは、オイル通路15を閉塞したときに、連通路160から前側空間S11に排出される(図5(b)参照)。
以上のように、本実施形態に係る連通路160は、第二の空間S20と前側空間S11とを連通することで、オイル通路15の開閉時に第二の空間S20にオイルを循環させることができる。
ソレノイド150は、オイル通路15を流通する(連通路160から第二の空間S20に流入する)オイルの温度よりも雰囲気温度が高い場所に配置されている。このため、連通路160は、第二の空間S20にオイルを循環させることで、ソレノイド150を冷却することができる。
以上の如く、本実施形態に係るバルブ装置100は、オイル(流体)が流通するオイル通路15(流体通路)として形成される第一の空間S10及び当該第一の空間S10に対して区画される第二の空間S20が形成されるハウジング110と、前記第一の空間S10に設けられ、前記オイル通路15の中途部を形成する弁座120と、前記弁座120よりも上流側の側方(前記オイルの流通方向における一側方)に配置されると共に前記弁座120に対して近接離間可能であり、前記弁座120を開閉するポペットバルブ130(弁体)と、前方向(前記弁座120に対して近接する方向)又は後方向(離間する方向)のいずれか一方向に前記ポペットバルブ130を付勢するスプリング140(付勢部材)と、前記第二の空間S20に設けられ、前記スプリング140が付勢する方向の反対方向に前記ポペットバルブ130を駆動するソレノイド150(駆動部)と、前記第二の空間S20に前記オイルを供給する又は前記第二の空間S20から前記オイルを排出することで、前記第二の空間S20と前側空間S11(前記弁座120の前記流通方向における他側方の空間)との差圧を小さくする連通路160と、を具備するものである。
このように構成することにより、スプリング140の付勢力Fspr及びソレノイド150の推力Fsolを小さくすることができる。
また、前記連通路160は、前記第二の空間S20と前記前側空間S11とを連通するものである。
このように構成することにより、スプリング140の付勢力Fspr及びソレノイド150の推力Fsolを効果的に小さくすることができる。
また、前記ポペットバルブ130は、前記第一の空間S10から前記第二の空間S20に亘って形成されると共に、内部に前記連通路160が形成されるものである。
このように構成することにより、簡単に連通路160を形成することができる。
また、前記ソレノイド150は、前記オイル通路15を流通する前記オイルの温度よりも雰囲気温度が高い場所に配置されるものである。
このように構成することにより、オイルによってソレノイド150を冷却することができる。
また、前記スプリング140は、後方向に前記ポペットバルブ130を付勢するものである。
このように構成することにより、ソレノイド150に不具合が発生した場合でもオイル通路15を開放することができる。
また、前記オイルは、前記流通方向における前記一側方(ポペットバルブ130が設けられる側の側方)から前記他側方(ポペットバルブ130が設けられていない側の側方)に流通するものである。
このように構成することにより、スプリング140の付勢力Fspr及びソレノイド150の推力Fsolを効果的に小さくすることができる。
なお、本実施形態に係るオイルは、本発明に係る流体の実施の一形態である。
また、本実施形態に係るオイル通路15は、本発明に係る流体通路の実施の一形態である。
また、本実施形態に係るポペットバルブ130は、本発明に係る弁体の実施の一形態である。
また、本実施形態に係るスプリング140は、本発明に係る付勢部材の実施の一形態である。
また、本実施形態に係るソレノイド150は、本発明に係る駆動部の実施の一形態である。
また、本実施形態に係る前側空間S11は、本発明に係る弁座の流通方向における他側方の空間の実施の一形態である。
また、本実施形態における前方向は、本発明に係る弁座に対して近接する方向に対応する。
また、本実施形態における後方向は、本発明に係る弁座に対して離間する方向に対応する。
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は上記構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内で種々の変更が可能である。
例えば、本実施形態に係るバルブ装置100は、ピストンジェット16にオイルを供給するための通路(オイル通路15)に設けられるものとしたが、本発明に係るバルブ装置が設けられる場所はこれに限定されるものでない。すなわち、本発明に係るバルブ装置は、エンジン1のピストンジェット16以外の部分にオイルを供給するための通路に設けられていても良い。
また、本実施形態に係るバルブ装置100は、エンジン1のオイルの供給を制御するものとしたが、本発明に係るバルブ装置100が制御する流体の種類は、これに限定されるものでなく、例えば、水等であっても良い。
また、本実施形態に係る連通路160は、第二の空間S20と前側空間S11とを連通するものとしたが、本発明に係る連通路が連通する空間は、これに限定されるものでない。例えば、本発明に係る連通路は、図7に示す第一変形例に係るバルブ装置200の連通路260のように、第二の空間S20とハウジング110の外部空間とを連通しても良い。
また、本実施形態に係る連通路160は、ポペットバルブ130に形成されるものとしたが、本発明に係る連通路が形成される部材はこれに限定されるものでない。すなわち、図7に示す第一変形例に係るバルブ装置200の連通路260のように、ソレノイド250のケース251及びプランジャ254に形成されるものであっても良い。また、本発明に係る連通路は、ハウジング110の壁部の内部を通る孔によって形成され、前側空間S11と第二の空間S20とを連通するものであっても良い。
また、本発明に係るポペットバルブの形状は、本実施形態に限定されるものでない。例えば、本発明に係るポペットバルブは、略円柱状に形成される軸部と略半球状の頭部とを有するような形状であっても良い。
また、本発明に係るポペットバルブは、パイロット式のバルブのように、オイル通路を開閉するバルブ(メインバルブ)の背面の空間(圧力室)へのオイルの供給を制御するものであっても良い。この場合、本発明に係るポペットバルブは、前記圧力室にオイルを供給するための所定の通路に設けられるものであっても良い。
また、本実施形態に係るバルブ装置100は、コイル153に電流を流したとき(通電時)にオイル通路15を閉塞すると共に、コイル153に電流を流していないとき(非通電時)にオイル通路15を開放するものとしたが、本発明に係るバルブ装置は、これに限定されるものでない。例えば、本発明に係るバルブ装置は、図8(a)に示す第二変形例に係るバルブ装置300のような、通電時にオイル通路15を開放すると共に非通電時にオイル通路15を閉塞するものであっても良い。
第二変形例に係るバルブ装置300は、ポペットバルブ130のフランジ部132とハウジング110の連通部113との間にスプリング340が設けられる。スプリング340は、ポペットバルブ130を前方向に付勢する。スプリング340は、非通電時にポペットバルブ130を前方向に移動させる。また、ソレノイド350は、通電時にポペットバルブ130を後方向に移動させる。
また、本実施形態に係るポペットバルブ130は、弁座120よりも上流側に配置されるものとしたが、本発明に係る弁座とポペットバルブとの位置関係はこれに限定されるものでない。例えば、本発明に係るポペットバルブは、図8(b)に示す第三変形例に係るバルブ装置400のように、弁座120よりも下流側に配置されるものであっても良い。第三変形例に係るバルブ装置400は、ハウジング410の流入孔411及び流出孔412の位置を、第二変形例に係るハウジング110の流入孔111及び流出孔112に対して入れ替えたものである。
このような構成においては、オイル通路15を閉塞したときに前側空間S11にオイルが充満して前側空間S11の圧力P11が上昇する。このとき、連通路160には、前側空間S11からオイルが流入する。当該流入したオイルは、後方向に流れて第二の空間S20に流入する。これによって、第三変形例に係るバルブ装置400は、第二の空間S20にオイルを供給して第二の空間S20の圧力P20を上昇させることができるため、前側空間S11と第二の空間S20との差圧を小さくすることができる。
また、本実施形態に係るバルブ装置100は、螺旋状のねじりコイルスプリングによってポペットバルブ130を付勢するものとしたが、本発明に係る付勢部材の構成は、これに限定されるものでなく、例えば、略円錐状のねじりコイルスプリング等であっても良い。また、本発明に係る付勢部材は、ポペットバルブ130を付勢するものであればスプリングに限定されるものでなく、例えば、弾性体等であっても良い。
また、本実施形態に係るバルブ装置100は、ソレノイド150によってポペットバルブ130を駆動させるものとしたが、本発明に係る駆動部の構成はこれに限定されるものでない。