JPWO2019003719A1 - 高圧燃料供給ポンプ - Google Patents

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Abstract

本発明の目的は、アンカーの移動速度を調整可能な構造を有する高圧燃料供給ポンプを提供することにある。そのため、本発明の高圧燃料供給ポンプは、固定コア39の固定コア対向面39bにアンカー36側に突き出した突起部39aが設けられる。突起部39aは、非通電時でアンカー36が静止した状態において、中心軸線300aに沿う方向において固定コア対向面39bとアンカー対向面36gとの間に構成される軸方向隙間寸法36eに対し、突起部39aとアンカー対向面36gとの間の最小距離L1が小さくなるように構成される。

Description

本発明は、内燃機関の燃料噴射弁に燃料を圧送する高圧燃料供給ポンプに係わり、特には、吐出する燃料の量を調節する電磁吸入弁を備えた高圧燃料供給ポンプに関する。
自動車等の内燃機関のうち、燃料を燃焼室内部へ噴射する直接噴射タイプの内燃機関において、燃料を高圧化し所望の燃料流量を吐出するために電磁吸入弁を備えた高圧燃料供給ポンプが広く用いられている。
このような高圧燃料供給ポンプとして、特開2015−218675号公報(特許文献1)に記載された高圧燃料供給ポンプが知られている。特許文献1の高圧燃料供給ポンプでは、アンカーと固定コアとの衝突面に傾斜部を設け、この傾斜部でアンカーと固定コアとが衝突するように構成されている(段落0064,0065及び図5(B)参照)。また特許文献1には、アンカーと固定コアとのそれぞれの傾斜部の内周側にアンカーの可動方向に垂直な面を設け、これらの垂直な面でアンカーと固定コアとが当接し、アンカーと固定コアとの当接時に傾斜部ではアンカーと固定コアとの間に隙間が形成される高圧燃料供給ポンプが記載されている(段落0068及び図6参照)。なお特許文献1の高圧燃料供給ポンプでは、アンカーと固定コアとの磁気空隙を横切る閉磁路は傾斜部に構成されており、この閉磁路においてアンカーと固定コアとの間に磁気吸引力を作用させることによりアンカーを固定コアに引き付けるように構成されている(段落0032,0057及び図3(A)参照)。
また特開2017−014920号公報(特許文献2)には、磁気力により駆動される可動子とこの可動子が衝突するストッパとを備えた電磁弁を有する高圧燃料供給ポンプが記載されている。ストッパと対向する可動子の対向面には、磁気吸引面となる平坦部が形成され、外周側において曲面部が形成されている。可動子と対向するストッパの対向面には、磁気吸引面となる平坦部が形成され、外周側において曲面部が形成されている。ストッパ側の曲面部は、可動子側の曲面部と対応する位置に形成され、かつ、可動子側の曲面部と同じ向きに傾斜している(段落0040参照)。
特開2015−218675号公報 特開2017−014920号公報
特許文献1の高圧燃料供給ポンプでは、アンカーと固定コアとの衝突面に傾斜部を設けている。また特許文献2の高圧燃料供給ポンプでは、可動子とストッパとの各対向面に、磁気吸引面となる平坦部が形成され、外周側において曲面部が形成れている。しかし、特許文献1及び特許文献2の高圧燃料供給ポンプでは、衝突面又は対向面に形成された傾斜部又は曲面部をアンカー又は可動子の移動速度を調整する手段として利用することについて、配慮していない。
アンカーと固定コアとの対向面、又は可動子とストッパとの対向面が単純な平坦面で構成される場合、アンカー又は可動子(以下、アンカーという)の速度は、固定コア又はストッパ(以下、固定コアという)との距離が短くなるに従って非線形的に大きくなる。そのため、アンカー又は可動子が固定コア又はストッパに衝突する速度が大きくなり、アンカーと固定コアとの衝突に伴って生じる噴流によりキャビテーションエロージョンが発生し易いことや、アンカーが固定コアへ与える衝突力が大きいため、発生する衝突音と衝突部へのダメージが大きいことが課題となる。
本発明の目的は、アンカーの移動速度を調整可能な構造を有する高圧燃料供給ポンプを提供することにある。
上記目的を達成するために、本発明の高圧燃料供給ポンプは、
固定コアと、前記固定コアに対して中心軸線に沿う方向に対向して前記固定コアから離れる側に付勢されたアンカーと、電磁コイルとを有する電磁吸入弁を備え、前記電磁コイルに通電することにより前記固定コアの前記アンカーに対向する固定コア対向面と前記アンカーの前記固定コアに対向するアンカー対向面との間に磁気吸引力を作用させて前記アンカーを前記固定コアの側に駆動して燃料の吐出量を変化させる高圧燃料供給ポンプにおいて、
前記固定コアは、前記固定コア対向面に前記アンカーの側に突き出した突起部を有し、
前記電磁コイルの非通電時で前記アンカーが静止した状態において、中心軸線に沿う方向において前記固定コア対向面と前記アンカー対向面との間に構成される軸方向隙間寸法に対し、前記固定コアの前記突起部と前記アンカー対向面との間の最小距離が小さくなるように構成され、
前記突起部は、前記電磁コイルの通電時で前記アンカーが前記固定コアに当接した状態において、前記アンカーと接触することなく、前記アンカーの外周面に対して径方向外側又は前記アンカーの内周面に対して径方向内側に位置するように構成される。
本発明によれば、アンカーの移動速度を調整可能な構造を有する高圧燃料供給ポンプを提供することができる。上記した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
本発明の一実施例(第一実施例)に係る高圧燃料供給ポンプについて、プランジの中心軸方向に平行で、且つプランジの中心軸を含む断面を示す断面図である。 本発明の第一実施例に係る高圧燃料供給ポンプを含む燃料供給システムの一例を示す図である。 本発明の第一実施例に係る高圧燃料供給ポンプの図1とは異なる方向から見た断面図であり、エンジンへの取付け状態についても示した断面図である。 図1の電磁吸入弁の近傍を拡大した断面図であり、電磁吸入弁が開弁状態にある状態を示す。 本発明の第一実施例に係る高圧燃料供給ポンプの電磁吸入弁を拡大した断面図であり、電磁吸入弁が閉弁初期の状態であり、電磁吸入弁に通電中の状態を示す。 本発明の第一実施例に係る高圧燃料供給ポンプの電磁吸入弁を拡大した断面図であり、電磁吸入弁が閉弁後期の状態であり、電磁吸入弁への通電を解除した状態を示す。 本発明の第一実施例に係る高圧燃料供給ポンプのプランジャ及び電磁吸入弁の動作を示すタイミングチャートである。 本発明の第一実施例に係る高圧燃料供給ポンプの電磁吸入弁の分解斜視図である。 本発明の第一実施例に係る電磁吸入弁の第二コアとアンカーとの衝突部を示す断面図であり、電磁吸入弁への通電が解除された開弁時の状態を示す。 本発明の比較例における電磁吸入弁の第二コアとアンカーとの衝突部を示す断面図であり、電磁吸入弁への通電が解除された開弁時の状態を示す。 本発明の第一実施例に係る電磁吸入弁の第二コアとアンカーとの衝突部を示す断面図であり、電磁吸入弁に通電され第二コアとアンカーとが衝突する直前の状態を示す。 本発明の第二実施例に係る電磁吸入弁の第二コアとアンカーとの衝突部を示す断面図であり、電磁吸入弁への通電が解除された開弁時の状態を示す。 本発明の第二実施例に係る電磁吸入弁のアンカーの変位および速度の解析結果を示す図である。 本発明の第三実施例に係る電磁吸入弁の第二コアとアンカーとの衝突部を示す断面図であり、電磁吸入弁への通電が解除された開弁時の状態を示す。
以下、図面を用いて本発明の実施例について詳細に説明する。なお、各実施例において同様な構成には同じ符号を付し、後に続く実施例での説明を省略する。
[実施例1]
図1及び図2用いてシステムの構成と動作を説明する。図1は、本発明の一実施例(第一実施例)に係る高圧燃料供給ポンプについて、プランジの中心軸方向に平行で、且つプランジの中心軸を含む断面を示す断面図である。図2は、本発明の第一実施例に係る高圧燃料供給ポンプを含む燃料供給システムの一例を示す図である。図2において、破線で囲まれた部分が高圧燃料供給ポンプ1の本体を示し、この破線の中に示されている機構及び部品は、高圧燃料供給ポンプ1の本体1cに一体に組み込まれていることを示す。以下、高圧燃料供給ポンプ1は高圧ポンプと呼んで説明する。
燃料タンク20の燃料は、エンジンコントロールユニット27(以下ECUと称す)からの信号に基づきフィードポンプ21によって汲み上げられ、適切なフィード圧力に加圧されて吸入配管28を通して高圧ポンプ1の低圧燃料吸入口10aに送られる。
吸入ジョイント10aを通過した燃料は、圧力脈動低減機構9及び吸入通路10dを介して容量可変機構を構成する電磁吸入弁(電磁吸入弁機構)300の吸入ポート31bに至る。
電磁吸入弁300に流入した燃料は、吸入弁30を通過して加圧室11に流入する。エンジンのカム機構によりプランジャ2に往復運動する動力が与えられ、プランジャ2の往復運動により、プランジャ2の下降行程には吸入弁30から燃料を吸入する。また、プランジャ2の上昇行程には、燃料が加圧される。この上昇行程において加圧室11の燃料圧力が吐出通路12の燃料圧力より高くなると、吐出弁8が開く。すると吐出弁8を介し、圧力センサ26が装着されているコモンレール23へ燃料が圧送される。コモンレール23の高圧燃料は、ECU27からの信号に基づきインジェクタ24によりエンジンへ噴射される。
高圧ポンプ1は、ECU27から送られてくる信号により電磁吸入弁300が駆動制御され、所望の供給燃料流量となるようにコモンレール23に燃料を吐出する。
異常な高圧を防止するためにリリーフバルブ100が構成され、コモンレール23、又は吐出通路12の燃料圧力がリリーフバルブ100の設定圧力以上の異常高圧に上昇すると、リリーフバルブ100が開弁する。これによりコモンレール23、又は吐出通路12の燃料が高圧ポンプ1の加圧室11内に戻されることでコモンレール23内の異常な高圧状態を防止する。
ポンプ本体1cにはさらに、吐出弁8bの下流側の吐出通路12と加圧室11とを連通するリリーフ通路110が吐出弁8をバイパスして設けられている。リリーフ通路110には燃料の流れを吐出通路12から加圧室11への一方向のみに制限するリリーフ弁102が設けられている。リリーフ弁102は、押付力を発生するリリーフばね105によりリリーフ弁シート101に押付けられており、加圧室11内とリリーフ通路110内との間の圧力差が予め設定された設定圧力以上になるとリリーフ弁102がリリーフ弁シート101から離れ、開弁するように設定されている。
高圧ポンプ1の電磁吸入弁300の故障等によりコモンレール23が異常な高圧となった場合、吐出通路12に連通するリリーフ通路110と加圧室11との差圧がリリーフ弁102の開弁圧力以上になると、リリーフ弁102が開弁する。これにより、吐出通路12の異常高圧となった燃料はリリーフ通路110から加圧室11へと戻され、コモンレール23等の高圧側の配管が保護される。
図1、図2及び図3を用いて、高圧ポンプ1の構成及び動作について説明する。図3は、本発明の第一実施例に係る高圧燃料供給ポンプの図1とは異なる方向から見た断面図であり、エンジンへの取付け状態についても示した断面図である。
一般に高圧ポンプ1は、ポンプ本体1cに設けられたフランジ1eが内燃機関のシリンダヘッド90の平面に密着し、複数のボルト91で固定される。取付けフランジ1eは溶接部1fにてポンプ本体1cに全周を溶接結合されて環状固定部を形成している。本実施例では、レーザー溶接を用いている。
シリンダヘッド90とポンプ本体1cとの間のシールのためにOリング61がポンプ本体1cに嵌め込まれ、エンジンオイルが外部に漏れるのを防止する。
ポンプ本体1cにはプランジャ2の往復運動をガイドし、かつ内部に加圧室11を形成するように、端部が有底筒型状に形成されたシリンダ6が取り付けられている。さらにシリンダ6には、加圧室11が燃料を供給するための電磁吸入弁300と加圧室11から吐出通路12に燃料を吐出するための吐出弁機構8とに連通するように、外周側に環状に形成された環状溝6aと、環状溝6aと加圧室11とを連通する複数個の連通穴(連通孔)6bとが設けられている。
シリンダ6は、その外周面がポンプ本体1cのシリンダ嵌装孔1gに圧入固定され、ポンプ本体1cとの隙間から加圧した燃料が低圧側に漏れないように圧入部円筒面(外周面)でシールしている。また、シリンダ6は加圧室11側の外径に小径部6cを有し、小径部6cはポンプ本体1cのシリンダ嵌装孔1gの上端部(低圧燃料室10側の端部)に形成された小径部1aに嵌入されている。加圧室11の燃料が加圧されることによりシリンダ6には低圧燃料室10側に向かう力が作用するが、ポンプ本体1cに小径部1aを設けることで、シリンダ6が低圧燃料室10側に抜けることを防止している。シリンダ6は、小径部6cが形成された上端部を軸方向にポンプ本体1cの小径部1aに形成された平面に接触させることで、ポンプ本体1cとシリンダ6との圧入部円筒面(外周面)のシールに加え、二重のシール構造を構成する。
プランジャ2の下端には、内燃機関のカムシャフトに取り付けられたカムの回転運動を上下運動に変換し、プランジャ2に伝達するタペット92が設けられている。プランジャ2はリテーナ15を介してばね4にてタペット92に圧着されている。これによりカム93の回転運動に伴い、プランジャ2を上下に往復運動させることができる。
また、シールホルダ7の内周下端部に保持されたプランジャシール13がシリンダ6の図中下方部においてプランジャ2の外周に摺動可能に接触する状態で設置されている。これにより、低圧室7aの燃料をプランジャ2が摺動した場合でもシール可能な構造とし、外部に燃料が漏れることを防止する。同時にプランジャシール13は、内燃機関内の摺動部を潤滑する潤滑油(エンジンオイルも含む)がポンプ本体1cの内部に流入するのを防止する。
ポンプ本体1cの頭部にはダンパカバー14が固定されている。ダンパカバー14には吸入ジョイント51が設けられており、吸入ジョイント51は低圧燃料吸入口10aを形成している。低圧燃料吸入口10aを通過した燃料は、吸入ジョイント51の内側に固定されたフィルタ52を通過し、圧力脈動低減機構9及び低圧燃料流路10dを介して電磁吸入弁300の吸入ポート31bに至る。
吸入ジョイント51内の吸入フィルタ52は、燃料タンク20から低圧燃料吸入口10aまでの間に存在する異物が燃料の流れによって高圧ポンプ1内に流入することを防ぐ。
プランジャ2は、大径部2aと小径部2bを有する。大径部2aと小径部2bとにより、プランジャ2が往復運動すると、環状低圧燃料室7aの体積を増減させる。環状低圧燃料室7aが燃料通路1dにより低圧燃料室10と連通していることにより、プランジャ2の下降時は、環状低圧燃料室7aから低圧燃料室10へ、上昇時は、低圧燃料室10から環状低圧燃料室7aへと燃料の流れが発生する。
このことにより、高圧ポンプ1の吸入工程もしくは、戻し工程におけるポンプ内外への燃料流量を低減することができ、脈動を低減する機能を有している。
低圧燃料室10には高圧ポンプ1内で発生した圧力脈動が燃料配管28へ波及するのを低減させる圧力脈動低減機構9が設置されている。また、圧力脈動低減機構9の上下には、それぞれ間隔を持って配置されたダンパ上部10b及びダンパ下部10cが設けられている。一度加圧室11に流入した燃料が、容量制御のため再び開弁状態の吸入弁体30を通して吸入通路10d(吸入ポート31b)へと戻される場合、吸入通路10d(吸入ポート31b)へ戻された燃料により低圧燃料室10には圧力脈動が発生する。しかし、低圧燃料室10に設けた圧力脈動低減機構9は、波板状の円盤型金属板2枚をその外周で張り合わせ、内部にアルゴンのような不活性ガスを注入した金属ダンパで形成されており、圧力脈動はこの金属ダンパが膨張・収縮することで吸収低減される。9bは金属ダンパをポンプ本体1の内周部に固定するための取付金具である。取付金具9bは、燃料通路上に設置されるために複数の穴が設けられており、取付金具9bの表裏に流体が自由に行き来できるようにしている。
加圧室11の出口には吐出弁機構8が設けられている。吐出弁機構8は吐出弁シート8a、吐出弁シート8aと接離する吐出弁8b、吐出弁8bを吐出弁シート8aに向かって付勢する吐出弁ばね8c、及び吐出弁8bと吐出弁シート8aとを収容する吐出弁ホルダ8dから構成され、吐出弁シート8aと吐出弁ホルダ8dとは当接部8eで溶接により接合されて一体の吐出弁機構8を形成している。
なお、吐出弁ホルダ8dの内部には、吐出弁8bのストロークを規制するストッパを形成する段付部8fが設けられている。
加圧室11と燃料吐出口12との間に燃料差圧が無い状態では、吐出弁8bは吐出弁ばね8cによる付勢力で吐出弁シート8aに圧着され、閉弁状態となっている。加圧室11の燃料圧力が、燃料吐出口12の燃料圧力よりも大きくなった時に始めて、吐出弁8bは吐出弁ばね8cの付勢力に逆らって開弁し、加圧室11内の燃料は燃料吐出口12を経てコモンレール23へと高い圧力で吐出される。吐出弁8bは開弁した際、吐出弁ストッパ8fと接触し、ストロークが制限される。したがって、吐出弁8bのストロークは吐出弁ストッパ8dによって適切に決定される。これによりストロークが大きすぎて、吐出弁8bの閉じ遅れにより、燃料吐出口12へ高圧吐出された燃料が、再び加圧室11内に逆流してしまうのを防止でき、高圧ポンプ1の効率低下が抑制できる。また、吐出弁8bが開弁および閉弁運動を繰り返す時に、吐出弁8bがストローク方向にのみ運動するように、吐出弁ホルダ8dの内周面にてガイドしている。以上のようにすることで、吐出弁機構8は燃料の流通方向を一方向に制限する逆止弁となる。
これらの構成により、加圧室11は、ポンプハウジング1、電磁吸入弁300、プランジャ2、シリンダ6、及び吐出弁機構8にて構成される。
カム93の回転により、プランジャ2がカム93方向に移動して吸入行程状態にある時は、加圧室11の容積は増加して加圧室11内の燃料圧力が低下する。この行程で加圧室11内の燃料圧力が吸入通路10dの圧力よりも低くなると、燃料は、開口状態にある吸入弁30を通り、ポンプ本体1cに設けられた連通穴1bと、シリンダ外周通路6aを通過し、加圧室11に流入する。
プランジャ2は、吸入行程を終了した後、圧縮行程に移る。ここで電磁コイル43は、無通電状態を維持したままであり、アンカー36に対して固定コア39からの磁気付勢力は作用しない。よって吸入弁30は、ロッド付勢ばね40の付勢力により開弁したままである。加圧室11の容積は、プランジャ2の圧縮運動に伴い減少するが、この状態では、一度加圧室11に吸入された燃料が、再び開弁状態の吸入弁30を通して吸入通路10dへと戻されるので、加圧室11の圧力が上昇することは無い。この行程を戻し行程と称する。
この状態で、ECU27からの制御信号が電磁吸入弁300に印加されると、電磁コイル43には電流が流れ、磁気付勢力によりアンカー36及びロッド35が吸入弁30から離れる方向に移動し、吸入弁付勢ばね33による付勢力と燃料が吸入通路10dに流れ込むことによる流体力とにより、吸入弁30が閉弁する。閉弁後、加圧室11の燃料圧力はプランジャ2の上昇運動と共に上昇する。加圧室11の燃料圧力が燃料吐出口12の圧力以上になると、吐出弁機構8を介して燃料の高圧吐出が行われ、高圧燃料はコモンレール23へと供給される。この行程を吐出行程と称する。
すなわち、プランジャ2の圧縮行程(下死点から上死点までの間の上昇行程)は、戻し行程と吐出行程とからなる。そして、電磁コイル43への通電タイミングを制御することで、吐出される高圧燃料の量を制御することができる。圧縮行程において、電磁コイル43へ通電するタイミングを早くすれば、戻し行程の割合が小さくなり、吐出行程の割合が大きくなる。すなわち、吸入通路10dに戻される燃料量が少なくなり、高圧吐出される燃料量は多くなる。一方、通電するタイミングを遅くすれば、戻し行程の割合が大きくなり、吐出行程の割合が小さくなる。すなわち、吸入通路10dに戻される燃料量が多くなり、高圧吐出される燃料量は少なくなる。電磁コイル43への通電タイミングは、ECU27からの指令によって制御される。
以上のように構成することで、電磁コイル43への通電タイミングを制御することで、高圧吐出される燃料の量を内燃機関が必要とする量に制御することが出来る。
ここで、電磁吸入弁300について、図4から図6を用いて、詳細に説明する。
図4は、図1の電磁吸入弁の近傍を拡大した断面図であり、電磁吸入弁が開弁状態にある状態を示す。図4の状態は、電磁コイル43に通電されていない無通電の状態であり、加圧室11の圧力はフィードポンプ21で圧送される低い圧力状態にある。この状態で、吸入行程と戻し行程とが行われる。また、アンカー36の固定コア39と対向する対向面(アンカー対向面、アンカー衝突面、又はアンカー当接面という)36gと、固定コア39のアンカー36と対向する対向面(固定コア対向面、固定コア衝突面、又は固定コア当接面という)39bとの間には、所定の大きさに設定されたギャップGpが存在する。なお、アンカー36と固定コア39とにおける対向面、衝突面、又は当接面は、対向部、衝突部、又は当接部と呼ぶ場合もある。
図5は、本発明の第一実施例に係る高圧燃料供給ポンプの電磁吸入弁を拡大した断面図であり、電磁吸入弁が閉弁初期の状態であり、電磁吸入弁に通電中の状態を示す。図4の状態は、電磁コイル43に通電されることにより、可動部であるアンカー36が電磁吸引力により固定コア39に接触し、吸入弁30が閉弁した状態にある。
図6は、本発明の第一実施例に係る高圧燃料供給ポンプの電磁吸入弁を拡大した断面図であり、電磁吸入弁が閉弁後期の状態であり、電磁吸入弁への通電を解除した状態を示す。図5の状態は、加圧室(ポンプ室)11の圧力が十分増加した後、吸入弁30が閉まった状態であり、電磁コイル43は通電が解除されて無通電の状態にある。
吸入弁部は、吸入弁30、吸入弁シート31、吸入弁ストッパ32、吸入弁付勢ばね33、及び吸入弁ホルダ34からなる。
吸入弁シート部材31は円筒型で、内周側軸方向に設けられたシート部31aと、円筒の軸を中心に放射状に設けられた2つ以上の吸入通路部31bとを有する。吸入弁シート部材31は、外周円筒面がポンプ本体1cの嵌入凹部1hの内周面に圧入され、ポンプ本体1cに保持される。
吸入弁ホルダ34は、放射状に2方向以上の爪を有し、爪外周側が吸入弁シート部材31の内周側に同軸に嵌合され、吸入弁シート部材31に保持される。さらに円筒型で一端部につば形状を持つ吸入ストッパ32が吸入弁ホルダ34の内周円筒面に圧入保持される。
吸入弁付勢ばね33は、吸入弁ストッパ32の内周側に配置される。吸入弁ストッパ32には吸入弁付勢ばね33の一端部を同軸に安定して保持するための細径部が形成されており、吸入弁付勢ばね33の一端部はこの細径部に配置されている。吸入弁30は、吸入弁シート部31aと吸入弁ストッパ32との間に、配置されている。吸入弁30は、吸入弁シート部31aと対向する側とは反対側の面に、弁ガイド部30bが突出するように形成されている。吸入弁付勢ばね33は、一端部が吸入弁ストッパ32の底部に当接し、他端部が弁ガイド部30bに嵌合する形で配置される。吸入弁付勢ばね33は圧縮コイルばねであり、吸入弁30が吸入弁シート部31aに押し付けられる方向に付勢力が働く様に設置される。吸入弁付勢ばね33は、圧縮コイルばねに限らず、付勢力を得られるものであれば形態を問わないし、吸入弁30と一体になった付勢力を持つ板ばねの様なものでも良い。
この様に吸入弁部を構成することで、高圧ポンプ1の吸入行程においては、吸入通路31bを通過して内部に入った燃料が、吸入弁30とシート部31aとの間に開いた燃料通路30pを通過し、吸入弁30の外周側及び吸入弁ホルダ34の爪の間を通り、ポンプ本体1c及びシリンダ6の通路6a,6bを通過し、加圧室(ポンプ室)11へ燃料を流入させる。また、高圧ポンプ1の吐出行程においては、吸入弁30が吸入弁シート部31aと接触シールすることで、燃料の入口側への逆流を防ぐ逆止弁の機能を果たす。
吸入弁30の動きを滑らかにするために、吸入弁ストッパ32の内周側の液圧を吸入弁30の動きに応じて逃がすために、通路32aが設けられている。
吸入弁30の軸方向の移動量30eは吸入弁ストッパ32によって有限に規制されている。移動量が大きすぎると吸入弁30の閉じる時の応答遅れにより燃料の逆流量が多くなり、ポンプとしての性能が低下するためである。この移動量の規制は、吸入弁シート31a、吸入弁30、及び吸入弁ストッパ32の軸方向の形状寸法及び、圧入位置で規定することが可能である。
吸入弁ストッパ32には、環状突起32bが設けられ、吸入弁32が開弁している状態において、吸入弁ストッパ32との接触面積を小さくしている。これは、開弁状態から閉弁状態への遷移時、吸入弁32が吸入弁ストッパ32から離れやすい様にするため、すなわち閉弁応答性を向上させるためである。環状突起32bが無い場合、すなわち吸入弁32と吸入弁ストッパ32との接触面積が大きい場合、吸入弁30と吸入弁ストッパ32の間に大きなスクイーズ力が働き、吸入弁30が吸入弁32から離れ難くなる。
吸入弁30、吸入弁シート31a、及び吸入弁ストッパ32は、お互い作動時に衝突を繰返すため、高強度、高硬度で耐食性にも優れるマルテンサイト系ステンレスに熱処理を施した材料を使用する。吸入弁付勢ばね33及び吸入弁ホルダ34には耐食性を考慮しオーステナイト系ステンレス材を用いる。
次にソレノイド機構部について説明する。ソレノイド機構部は、可動部であるロッド35、アンカー36、固定部であるロッドガイド部材37、第一コア38、固定コア39、ロッド付勢ばね40、及びアンカー付勢ばね41からなる。
可動部であるロッド35とアンカー36は別部材に構成している。ロッド35はロッドガイド部材37の内周側で軸方向に摺動自在に保持され、アンカー36の内周側は、ロッド35の外周側で摺動自在に保持される。すなわち、ロッド35及びアンカー36共に幾何学的に規制される範囲で軸方向に摺動可能に構成されている。
ロッド35はフランジ部35aを有することにより、アンカー36を係止することができる。このため、アンカー36が固定コア39側に移動する際に、アンカー36とともに移動することが可能となる。よってロッド35は、アンカー36に磁気吸引力が働いたときに閉弁方向に移動することができる。
アンカー36は、燃料中でロッド35の軸方向(吸入弁30の開閉弁方向)に自在に滑らかに動くために、部品軸方向に貫通する貫通穴36aを1つ以上有し、アンカー前後の圧力差による動きの制限を極力排除している。アンカー36は可動コア又は可動鉄心と呼ぶ場合もある。
アンカー36と吸入弁30との間には、アンカー36を閉弁方向に付勢する閉弁付勢ばね41と、ロッド35を開閉弁方向にガイドするロッドガイド部材37と、が配置される。ロッドガイド部材37は、ロッド35を開閉弁方向にガイドするガイド部37bを有し、アンカー付勢ばね41のばね座37cを構成する。
ロッドガイド部材37は、ポンプ本体1cの吸入弁30が挿入される穴1iの内周側に挿入され、吸入弁シート部材31の一端部に軸方向に突き当てられる。ロッドガイド部材37は、ポンプ本体1cに溶接固定される第一コア38とポンプ本体1cとの間に挟み込まれる形で配置される。ロッドガイド部材37にもアンカー36と同様に軸方向に貫通する貫通穴37aが設けられ、アンカー36が自在に滑らかに動くことができる様、アンカー36側の燃料室の圧力がアンカー36の動きを妨げない様に構成している。
アンカー36、アンカー付勢ばね41、及びロッド35等は、ポンプ本体1cに固定された電磁吸入弁ハウジング38の内周側に配置されている。また、固定コア39、ロッド付勢ばね40、及び電磁コイル43等は、電吸入弁ハウジング38に保持されている。なおロッドガイド部材37は、電磁吸入弁ハウジング38に対して、固定コア39及び電磁コイル43とは反対側に配置されている。
図4では、ロッドガイド部材37と吸入弁シート部材31とを別部材で構成した例を示しているが、図5及び図6に示すように一部材で構成することも可能である。
電磁吸入弁ハウジング38は、ポンプ本体1cに溶接により固定される。電磁吸入弁ハウジング38は、ポンプ本体1cと溶接される部位との反対側の形状を薄肉円筒形状としており、この薄肉円筒形状部の先端部に固定コア39が固定される。電磁吸入弁ハウジング38の薄肉円筒形状部の外周面と固定コア39の外周面とに跨って環状部材49が配設され、薄肉円筒形状部と環状部材49との間、及び固定コア39と環状部材49との間でそれぞれ溶接等が行われ、固定コア39が環状部材49を介して電磁吸入弁ハウジング38に固定される。
電磁吸入弁ハウジング38及び固定コア39は磁性材料とし、環状部材49は非磁性材で構成することが好ましい。環状部材49を電磁吸入弁ハウジング38の一部分で構成し、電磁吸入弁ハウジング38の環状部材49に相当する部分を非磁性化処理してもよい。
電磁吸入弁ハウジング38は電磁コイル43の鉄心の一部とみなすことができる。このため本実施例では、電磁吸入弁ハウジング38を第一コアと呼び、固定コア39を第二コアと呼んで説明する。また、固定コア39は固定鉄心と呼ぶ場合もある。
第二コア39の内周側にはばね空間48が形成されており、ばね空間48にロッド付勢ばね40が配置されている。ロッド付勢ばね40は、一端部が第二コア39の底面に当接し、他端部がロッド35の細径部35bをガイドとしてロッドつば部35aに当接するようにして配置されている。これによりロッド付勢ばね40は、ロッド35の先端部(吸入弁30側の端部)が吸入弁30と接触し、吸入弁30を吸入弁シート部31aから引き離す方向、すなわち吸入弁30の開弁方向に付勢力を与える。
アンカー付勢ばね41は、ロッドガイド部材37の中心側に設けた円筒径のガイド部37bに一方端を挿入してガイド部37bとの同軸を保ちながら、アンカー36にロッドつば部35a方向に付勢力を与える配置としている。
アンカー36の移動量36eは、吸入弁30の移動量30eよりも大きく設定される。
これは、確実に吸入弁30が閉弁できるようにするためである。
ロッド35とロッドガイド部材37とは相互に摺動するため、またロッド35は吸入弁30と衝突を繰返すため、硬度と耐食性とを考慮してマルテンサイト系ステンレスに熱処理を施したものを使用する。アンカー36と第二コア39とは磁気回路を形成するため磁性ステンレスを用い、さらにアンカー36の衝突面と第二コア39の衝突面とには、硬度を向上させるための表面処理を施している。この表面処理は硬質Crめっき等を用いることができるがその限りでは無い。ロッド付勢ばね40、アンカー付勢ばね41には耐食性を考慮してオーステナイト系ステンレスを用いる。
吸入弁部とソレノイド機構部には、3つのばねが構成されることになる。吸入弁部に構成される吸入弁付勢ばね33と、ソレノイド機構部に構成されるロッド付勢ばね40及びアンカー付勢ばね41とである。本実施例ではいずれのばねもコイルばねを使用しているが付勢力を得られる形態であればいかなるものでも構成可能である。
この3つのばね33,40,41のばね力は、下記の式を満たすように設定される。
FS40>FS41+FS33+FF …(1)
ここで、FS40:ロッド付勢ばね40の力
FS41:アンカー付勢ばね41の力
FS33:吸入弁付勢ばね33の力
FF:流体により吸入弁30が閉じようとする力である。
この関係により、無通電時では、各ばね力により、ロッド35は吸入弁30を吸入弁シート部31aから引き離す方向、すなわち弁が開弁する方向に力f1が作用する。
(1)式より、f1は、
f1=FS40 −(FS41+FS33+FF)…(2)により求められる。
次にコイル部の構成について説明する。
コイル部は、第一ヨーク42、電磁コイル43、第2ヨーク44、ボビン45、端子46、及びコネクタ47から成る。ボビン45に銅線が複数回巻かれた電磁コイル43が、第一ヨーク42と第二ヨーク44とにより取り囲まれる形で配置され、樹脂部材であるコネクタ47と一体にモールドされ固定される。二つの端子46のそれぞれの一端は電磁コイル43の銅線の両端にそれぞれ通電可能に接続される。端子46はコネクタ47と一体にモールドされ、モールド樹脂から露出した他端がECU27側と接続可能に構成される。
コイル部は第一ヨーク42の中心部の穴部が、第一コア38に圧入され固定される。その時、第二ヨーク44の内径側は、第二コア39と接触もしくは僅かなクリアランスで近接する構成となる。
第一ヨーク42及び第二ヨーク44は共に、磁気回路を構成するために、また耐食性を考慮して磁性ステンレス材料とし、ボビン45及びコネクタ47は強度特性及び耐熱特性を考慮して、高強度耐熱樹脂を用いる。コイル43は銅、端子46には真鍮に金属めっきを施した物を使用する。
上述の様にソレノイド機構部とコイル部とを構成することで、図4の矢印部に示す様に、第一コア38、第一ヨーク42、第二ヨーク44、第二コア39、及びアンカー36で磁気回路を形成する。電磁コイル43に電流を与えると、第二コア(固定コア)39とアンカー(可動コア)36との間に電磁力が発生し、互いに引き寄せ合う力が発生する。第一コア38と第二コア39とは、第二コア39とアンカー36とが対向して磁気吸引力が発生する軸方向部位の近傍で切り離されてg1(図10参照)が形成されていることで、磁束のほぼ全てが第二コア39とアンカー36との間を通過する。このため、本実施例の電磁吸入弁300は、効率良く電磁力を得ることができる。
上記電磁力が上述したf1を上回った時に、可動部であるアンカー36がロッド35と共に第二コア39に引き寄せられて接触する運動を行うこと、また第二コア39とアンカー36とが接触を継続することが可能になる。
以下、図4〜6、及び図7を用いて、電磁吸入弁300の動作と効果について詳細に説明する。図7は、本発明の第一実施例に係る高圧燃料供給ポンプのプランジャ及び電磁吸入弁の動作を示すタイミングチャートである。
≪吸入工程≫
プランジャ2が上死点から下降を始めると、加圧室11内の圧力が例えば20MPaレベルの高圧の状態から急激に小さくなり、前述の力f1によりロッド35、アンカー36、及び吸入弁30が、吸入弁30の開弁方向に移動を始める。吸入弁30が開弁することで、吸入弁シート部材31の通路31bから吸入弁シート部材31の内径側に流入した燃料は、加圧室11内に吸入され始める。
吸入弁30が吸入弁ストッパ32に衝突し、吸入弁30はその位置で停止する。同じくロッド35も先端が吸入弁30に接触する位置(図7におけるロッドの開弁位置)で停止する。
アンカー36もロッド35と同速度で吸入弁30の開弁方向に移動する。しかし、図7のAに示すように、ロッド35が吸入弁30に接触して停止した後でも、アンカー36は慣性力で開弁方向への移動を続けようとする。ところが、アンカー付勢ばね41がその慣性力に打ち勝ち、アンカー36は再び第二コア39に近付く方向に移動し、ロッドつば部35aに接触する位置(図7におけるアンカー開弁位置)で停止することができる。この時点におけるアンカー36、ロッド35、及び吸入弁30の位置は、図3に図示された位置である。
図7においては、Aに示す部分で、ロッド35とアンカー36とが完全に離れる説明としているが、ロッド35とアンカー36とが接触したままの状態でも良い。言い換えると、ロッドつば部35aとアンカー36との接触部に作用する荷重は、ロッド35の運動停止後に減少し、0になるとアンカー36がロッド35に対して分離を開始するが、0にならず僅かの荷重を残すようにアンカー付勢ばね41の付勢力を設定しても良い。
吸入弁30が吸入弁ストッパ32に衝突する時には、製品としての重要な特性となる異音の問題が発生する。異音の大きさは衝突時のエネルギーの大きさに関係する。本実施例では、ロッド35とアンカー36とを別体に構成しているために、吸入弁30が吸入弁ストッパ32に衝突するエネルギーは、吸入弁30の質量とロッド35の質量のみが関係することとなる。すなわちアンカー36の質量は衝突エネルギーに寄与しないため、ロッド35とアンカー36とを別体に構成することで、異音を低減している。
ロッド35とアンカー36とを別体に構成したとしても、アンカー付勢ばね41が無い構成の場合、慣性力でアンカー36は吸入弁30の開弁方向に移動を続け、ロッドガイド37のガイド部(中央軸受部)37bに衝突し、前記衝突部とは相違する部分で異音が発生する問題が起こる。異音の問題に加え、衝突することでアンカー36とロッドガイド37の摩耗や変形等が起こるばかりでなく、摩耗による金属異物が発生する。その金属異物が摺動部やシート部に挟まることで、又、ロッドガイド37のガイド部37bが変形して軸受機能を損なうことで、電磁吸入弁(吸入弁ソレノイド機構)300の機能を損なう恐れがある。
また、アンカー付勢ばね41が無い構成の場合、アンカー36が慣性力で第二コア39から離れ過ぎてしまう(図7のA部)ため、動作時刻として後行程である、戻し行程から吐出行程に遷移させるために電磁コイル43に電流を加えた時に、必要な電磁吸引力が得られない問題が発生する。必要な電磁吸引力が得られない場合、高圧ポンプ1から吐出する燃料を所望の流量に制御出来なくなり、大きな問題となる。このため、アンカー付勢ばね41は上述した問題を発生させないための重要な機能を持っている。
吸入弁30が開弁した後、さらにプランジャ2が降下を行い下死点に到達する。この間、加圧室11には燃料が流入し続ける。この行程が吸入行程である。
≪戻し工程≫
下死点まで降下したプランジャ2は、上昇行程に入る。吸入弁30は前記f1の力で開弁状態に停止したままであり、吸入弁30を通過する流体の方向が真逆になる。すなわち吸入行程では、燃料が吸入弁シート通路31bから加圧室11に流入していたのに対し、上昇行程となった時点で、加圧室11から吸入弁シート通路31b方向に戻される。この工行を戻し行程と呼ぶ。
この戻し行程において、エンジン高回転時すなわちプランジャ2の上昇速度が大きい条件において、戻される流体による吸入弁30の閉弁力が増大し、前記力f1が小さくなる。この条件において、各ばね力の設定力を誤り、f1が負の値になった場合、吸入弁30は意図せず閉弁してしまう。所望の吐出流量よりも大きな流量が吐出されてしまうため、燃料配管内の圧力が所望の圧力以上に上昇し、エンジンの燃焼制御に悪影響を及ぼすことになる。そのため、プランジャ2の上昇速度が最も大きい条件で、前記力f1が正の値を保つように各ばね力を設定する必要がある。
≪戻し行程〜吐出行程への遷移状態≫
所望の吐出時刻よりも、電磁力の発生遅れ及び吸入弁30の閉弁遅れを考慮した早い時刻において、電磁コイル43に電流が与えられ、アンカー36と第二コア39との間に磁気吸引力が働く。電流は前記力f1に打ち勝つのに必要な大きさの電流を与える必要がある。この磁気吸引力が前記力f1に打ち勝った時点で、アンカー36が第二コア39方向へ移動を開始する。アンカー36が移動することで、軸方向につば部35aで接触しているロッド35も同じく移動し、吸入弁30が吸入弁付勢ばね33の力と、流体力、主には、加圧室11側から吸入弁シート部31aを通過する流速による静圧の低下により閉弁を開始する。
電磁コイル43に電流が与えられた時、アンカー36と第二コア39とが規定の距離より離れすぎている場合、すなわちアンカー36が図7の「開弁位置」を越えて、Aの状態が継続した場合、前記磁気吸引力が弱いために前記力f1に打ち勝つことができず、アンカー36が第二コア39側に移動することに時間を要したり、移動できなかったりする問題が発生する。
この問題を起こさない為にアンカー付勢ばね41を設けている。アンカー36が所望のタイミングで第二コア39側に移動できない場合、吐出したいタイミングにおいても吸入弁30が開いた状態を維持するため、吐出行程が開始できない。つまり、必要な吐出量が得られないため所望のエンジン燃焼ができない懸念がある。
このため、アンカー付勢ばね41は、吸入行程で発生が懸念される異音問題を防止するため、また吐出行程が開始できない問題を防止するための重要な機能を持っている。
移動を始めた吸入弁30は、吸入弁シート部31aに衝突し停止することで、閉弁状態となる。閉弁すると、筒内圧が急速に増大するため、吸入弁30は筒内圧により閉弁方向に前記力f1よりも遥かに大きい力で強固に押し付けられ、閉弁状態の維持を開始する。
ここで、本実施例で課題とするソレノイド機構部内に発生する虞のある壊食の問題について説明する。
電磁コイル43に電流が与えられアンカー36が第二コア39に引き寄せられる際、二物体の間にある空間体積(図4のギャップGp)が急速に縮小することで、その空間にある流体(燃料)は行き場を失う。よって流体は、大きな速度を持ってアンカー36の外周側へ押し流され、第二コア39の薄肉部(すなわち、アンカー36と第二コア39とのギャップGpを取り囲む部材の薄肉部)に衝突する。ギャップGpを取り囲む部材の薄肉部は、衝突する流体のエネルギーにより、壊食の発生が懸念される。また、押し流された流体がアンカー36の外周を通過しロッドガイド37側に流れるが、アンカー36の外周側の通路が狭いために流速が大きくなる。すると静圧が急速に低下することによるキャビテーションが発生し、第一コア38の薄肉部においてキャビテーション壊食が発生する懸念がある。
これらの問題を回避するためにアンカー36の中心側に軸方向の貫通穴36aを1つ以上設置している。アンカー36が第二コア39側に引き寄せられる際、その空間の流体が、極力、アンカー外周側の狭い通路を通過しない様、貫通穴36aを通過させるためである。
さらに本実施例では、このキャビテーション壊食の原因となるキャビテーションの発生を低減するために、その他の手段を講じている。燃料通路が狭く、燃料の流速が速くなる箇所では流れは直線的であるため、急な角度をもった流路形状では剥離が発生しやすくなり圧力が低下して、キャビテーションが発生し易くなる。そこで、燃料通路が狭いところから流路を緩やかに広げることで流速が徐々に低下し、圧力降下を抑えることが出来るようにする。これにより上記壊食の問題を解決することができる。
アンカー36とロッド35とを一体で構成している場合、上記問題がさらに懸念される事象が発生する。エンジン高回転時すなわちプランジャ2の上昇速度が大きい条件においては、電磁コイル43に電流が付与されアンカー36が第二コア39に移動しようとする力に、さらに非常に速度の大きい流体による吸入弁30を閉じる力が追加付与力として増加される。この場合、ロッド35及びアンカー36が第二コア39へ急速に接近するため、その空間の流体が押し出される速度がさらに大きくなり、前記壊食の問題がさらに大きなものになる。アンカー36の貫通穴36aの容量が不足する場合、壊食の問題を解決できなくなる可能性がある。
本実施例ではアンカー36とロッド35とが別体で構成されているため、吸入弁30を閉じる力がロッド35に与えられた場合においても、ロッド35のみが第二コア39側に押し出され、アンカー36は取り残されながら、通常の電磁吸引力のみの力で第二コア39側に移動を行う。すなわち急速な空間の減少は起こらず、壊食の問題の発生を防ぐことができる。
アンカー36とロッド35とを別体で構成する弊害は前述した通り、所望の磁気吸引力を得られない問題、異音、及び機能低下があるが、アンカー付勢ばね41を設置することで、この弊害を取り払うことが可能となる。
≪吐出工程≫
プランジャ2が下死点から上昇行程に転じ、所望のタイミングで電磁コイル43に電流が与えられると、吸入弁30が閉じて戻し行程は終了する。戻し行程が終了した直後、加圧室11内の圧力は急速に増大し、吐出工程となる。吐出工程に移行した後、省電力の観点から電磁コイル43に与える電力を削減することが望ましいため、電磁コイル43に与える電流を遮断する。電磁力が付加されなくなりアンカー36及びロッド35は、ロッド付勢ばね40とアンカー付勢ばね41との合力(FS40−FS41)により、第二コア39から離れる方向へ移動する。ところが、吸入弁30が強固な閉弁力で閉弁位置にあるためロッド35は閉弁状態の吸入弁30に衝突した位置で停止する。すなわちこの時のロッドの移動量は36e−30eとなる。
この様に、燃料が吐出される吐出行程が行われ、次の吸入行程の直前においては、吸入弁30、ロッド35、及びアンカー36は図6の状態となっている。
プランジャが上死点に達した時点で、吐出行程は終了し、再び吸入行程が開始される。
かくして、低圧燃料吸入口10aに導かれた燃料は、ポンプ本体1の加圧室11にてプランジャ2の往復動によって必要な量が高圧に加圧され、燃料吐出口12からコモンレール23に圧送される。
図8は、本発明の第一実施例に係る高圧燃料供給ポンプの電磁吸入弁の分解斜視図である。
本実施例の高圧ポンプ1は、上述した各構成部品が図8に示すように組み付けられて、構成される。
図9は、本発明の第一実施例に係る電磁吸入弁の第二コアとアンカーとの衝突部を示す断面図であり、電磁吸入弁への通電が解除された開弁時の状態を示す。
本実施例の高圧ポンプ1では、図9に示すように、第二コア39は突起部39aを有している。突起部39aは、アンカー対向面36gの外周よりも径方向外側に位置し、且つ第二コア対向面39bから電磁吸入弁300の中心軸線300aに沿ってアンカー36の側に凸となるように突き出している。また突起部39aは、第二コア対向面39bの周方向に環状に形成されている。
本実施例では、突起部39aは、図9の示す断面における形状が台形形状を成している。すなわち突起部39aは、突き出し方向の先端部39aaの幅(厚み)寸法に対して第二コア対向面39bとの接続部(根元側端部)39acの幅(厚み)寸法が大きく、内周面39abは中心軸線300aに対して傾斜している。内周面39abは根元側端部39ac側から先端部39aa側に向かって拡径するような傾斜面(テーパー面)として構成されている。言い換えると、内周面39abは先端部39aa側から根元側端部39ac側に向かって縮径するような傾斜面(テーパー面)として構成されている。
特に本実施例では、突起部39aの先端部39aaはアンカー対向面36gに対して吸入弁30側に位置しており、内周面39abはアンカー36の外周面36hのアンカー対向面36g側の一部の外周側を覆っている。すなわち突起部39aは、中心軸線300aに沿う方向においてはアンカー対向面36gから吸入弁30側に向かってOR1に示す範囲でアンカー36の外周面36hとオーバーラップする範囲に設けられ、且つ径方向においてはアンカー36の外周面36hから離間した位置(径方向外側)に設けられている。
突起部39aは、電磁コイル43の非通電時にアンカー36が静止している状態において、第二コア対向面39bとアンカー対向面36gとの軸方向隙間寸法36eに対し、突起部39aとアンカー対向面36gとの間に構成される最小距離(最短距離)L1が小さくなるような構成を特徴とする。また本実施例では、最小距離L1となる第二コア39側の点(位置)P39とアンカー36側の点(位置)P36とは、中心軸線300aに沿う方向において、第二コア39側の点P39がアンカー36側の点P36よりも第二コア対向面39b側に位置するように構成されている。
本実施例では、アンカー対向面36gは中心軸線300aに対して垂直に形成されており、突起部39aとアンカー対向面36gとの間の距離が最短となるアンカー36側の点P36は、アンカー対向面36gの外周に位置する。なお中心軸線300aは、吸入弁30の開閉弁方向に沿う軸線であり、ロッド35、アンカー36、及び第二コア39の中心軸線と一致する軸線である。
図10は、本発明の比較例における電磁吸入弁の第二コアとアンカーとの衝突部を示す断面図であり、電磁吸入弁への通電が解除された開弁時の状態を示す。
図10の比較例では、本実施例に比べるとキャビテーションが発生し易い。この理由を説明する。図10にアンカー36内の燃料通路を示すが、電磁コイル43に通電することによってアンカー36と第二コア39との間に磁気吸引力が発生し、アンカー36とロッド35が第二コア39側に移動することによって流体は押し出され、燃焼通路36aを通って吸入弁30側へ向かって流れる。その際、アンカー36の外周部のサイドギャップ部36fからも吸入弁30側へ向かって流れが発生するが、第二コア39とアンカー36との衝突に伴う噴流による急激な圧力降下により、キャビテーションが発生しやすい。
図10の比較例では、磁束の通り道は、MP1(第一磁束通路)及びMP2(第二磁束通路)で示すように、アンカー対向面36gの内周側と外周側とで変わりがなく、第二コア対向面39bとアンカー対向面36gとの軸方向隙間寸法36eを通過する通り道だけである。
一方本実施例では、図9に示すように、アンカー対向面36gの内周側を通る磁束の通り道MP1は第二コア対向面39bとアンカー対向面36gとの軸方向隙間寸法36eを通過するが、アンカー対向面36gの外周側には突起部39aとアンカー対向面36gとの最小距離L1を通る磁束の通り道MP2が構成される。
すなわち、比較例における磁束の通り道は1方向であるのに対して、本実施例の磁束の通り道は2方向になる。このため、第二コア39とアンカー36との衝突時に、軸方向に生じる磁気吸引力が低減されることになる。これにより、第二コア39に対するアンカー36の衝突速度が低減され、キャビテーションエロージョンを抑制することができる。
図11は、本発明の第一実施例に係る電磁吸入弁の第二コアとアンカーとの衝突部を示す断面図であり、電磁吸入弁に通電され第二コアとアンカーとが衝突する直前の状態を示す。なお図11では、非通電時の静止状態におけるアンカー36の位置(図9のアンカー36の位置)を点線で示す。
本実施例では、図11に示すように、アンカー36が第二コア39に近づくに従って、中心軸線300aに沿う方向において、突起部39aの内周面39abがアンカー36の外周面36hとオーバーラップする範囲がOR1からOR2に広がる。これにより、アンカー36が第二コア39に近づくに従って、アンカー36から突起部39aに流れる磁束(MP2側を通る磁束)が益々増加する。また、突起部39aの内周面39abは傾斜面で構成され、アンカー36が第二コア39に近づくに従って、アンカー36と突起部39aとの距離が短くなる。これにより、アンカー36が第二コア39に近づくに従って、アンカー36から突起部39aに流れる磁束(MP2側を通る磁束)が益々増加する。このため、第二コア39とアンカー36との衝突時に、軸方向に生じる磁気吸引力が益々低減されることになる。
また本実施例では、図9に示す状態から電磁コイル43に通電を行うと、磁束の通り道MP2の空隙距離L1は空隙距離36eに比べて短いため、MP2を通る磁束の立ち上がりは速い。さらに、MP2が通る第二コア39側の点P39がアンカー36側の点P36よりも第二コア対向面39b側に位置するように構成されている。これにより、MP2を通る磁束はアンカー36に対して第二コア39側に引き付ける磁気吸引力を作用させる。このため本実施例では、アンカー36の移動開始速度を早め、閉弁応答性を向上することができる。
また、第二コア39の突起部39aは第二コア対向面39bの径方向外側に位置するように構成している。これにより、第二コア39とアンカー36との衝突によって生じたキャビテーションの発生位置から第二コア39とアンカー36との衝突に伴う噴流による高圧部を遠ざけることができる。これにより、キャビテーションの急激な圧力回復を避け、エロージョンを低減することができる。
また、第二コア39の突起部39aの内周面39abは、第二コア対向面39b側から先端部39aa側に向かうほど、径方向外側(外周面側)に近づくように傾斜している。すなわち、第二コア39の突起部39aは、テーパー形状となるように構成している。これにより、吸入弁30側に向かって流路面積が徐々に拡大されるため、第二コア39とアンカー36との衝突に伴う噴流の流速を低減できる。そのため、キャビテーションの急激な圧力回復を避け、エロージョンを低減することができる。
また、電磁コイル43が非通電の状態において、アンカー36は第二コア39から大きく離れた位置(軸方向隙間寸法36eだけ離れた位置)にいるように構成される。これにより、非通電時に閉弁し、通電すると開弁する構造に比べて、消費電力を低減することができる。
また、電磁コイル43が非通電の状態において、アンカー36はロッド付勢ばね40により開弁方向に付勢されることで、第二コア39から大きく離れた位置(軸方向隙間寸法36eだけ離れた位置)にいるように構成される。これにより、非通電時に閉弁し、通電すると開弁する構造に比べて、消費電力を低減することができる。
[実施例2]
図12は、本発明の第二実施例に係る電磁吸入弁の第二コアとアンカーとの衝突部を示す断面図であり、電磁吸入弁への通電が解除された開弁時の状態を示す。すなわち、図12は図9と同様な状態を示す図である。
本実施例では、突起部39aの先端部39aaは、中心軸線300aに沿う方向において、アンカー対向面36gと同じ位置か、アンカー対向面36gよりも第二コア対向面39a側に位置する構成である。すなわち、突起部39aの内周面39abは、軸方向隙間寸法36eを構成するギャップGpの外周側に設けられ、アンカー36の外周面36hの付側には設けられていない構成である。
本実施例においても磁束の通り道MP1(第一磁束通路)の他に、実施例1と同様な磁束の通り道MP2(第二磁束通路)が構成され、実施例1と同様な効果が得られる。
図13は、本発明の第二実施例に係る電磁吸入弁のアンカーの変位および速度の解析結果を示す図である。
図13では、第二コア39に突起部39aがあるアンカー36の場合と第二コア39に突起部39aがないアンカー36の場合について、アンカー36の変位とアンカー36の移動速度(以下、速度という)に関するそれぞれの解析結果を示している。なお、この解析結果は、実施例2の突起部39aについて解析を行った結果である。これによると突起部39aがない場合に比べて突起部39aがある場合は、通電を開始してからのアンカー36の速度の立ち上がりが速く、アンカー36が第二コア39に衝突するタイミングも早くなっており、アンカー36の応答性が向上することが分かる。これは、磁束の通り道をMP1及びMP2の2つにすることによって、空隙長さの短い磁路MP2を流れる磁束が速く立ち上がり、この磁束がアンカー36に対して第二コア39側に引き付ける磁気吸引力を作用させているためと考えられる。
また、突起部39aがない場合に比べて突起部39aがある場合は、移動速度の最大値が小さくなっており、アンカー36の第二コア39への衝突速度が低減されていることが分かる。これは、磁束の通り道をMP1及びMP2の2つにすることによって、アンカー36に対して中心軸線300aに沿う方向(軸線方向)に働く磁気吸引力が分散され、アンカー36の最大速度が低減されるためと考えられる。
[実施例3]
図14は、本発明の第三実施例に係る電磁吸入弁の第二コアとアンカーとの衝突部を示す断面図であり、電磁吸入弁への通電が解除された開弁時の状態を示す。
本実施例では、第二コア39の突起部39aは、第二コア39の第二コア対向面39bの径方向内側(内周側)に位置するように構成され、突起部39aの内周面39abはロッド付勢ばね40が配置される第二コア39の貫通孔39cの一部を構成している。また突起部39aはロッド35の細径部35bが挿入されたアンカー36の軸方向凹部36jに挿入され、突起部39aの外周面39adはアンカー36の内周面36iと対向している。
外周面39adは根元側端部39ac側から先端部39aa側に向かって縮径するような傾斜面(テーパー面)として構成されている。言い換えると、外周面39adは先端部39aa側から根元側端部39ac側に向かって拡径するような傾斜面(テーパー面)として構成されている。
本実施例では、突起部39aが第二コア対向面39bの内周側に配置されることにより、突起部39aの内周面39abと外周面39adとのアンカー36に対する配置が、突起部39aが第二コア対向面39bの外周側に配置された実施例1及び実施例2に対して入れ替わる。磁束の通り道MP2は磁束の通り道MP1に対して第二コア対向面39bの内周側に構成され、突起部39aの外周面39adを通過する。
これにより、通電時に第二コア39とアンカー36との間に発生する磁束の通り道を2つにし、第二コア39に対するアンカー36の衝突速度を低減することによって、キャビテーションエロージョンを低減することができる。その他に、本実施例では実施例1及び実施例2で説明したのと同様な効果が得られる。
また、本実施例の突起部39aは、第二コア対向面39bに対する径方向における配置が実施例1と異なっており、その他の構成は実施例と同様である。本実施例の構成に、実施例2の特徴となる構成を適用し、突起部39aの突出高さを低くしてもよい。すなわち、突起部39aの外周面39adを、軸方向隙間寸法36eを構成するギャップGpの軸方向範囲に設け、アンカー36の内周面36iの内周側には設けない構成にしてもよい。
実施例1及び実施例2の突起部39aの内周面39ab、及び実施例3の突起部39aの外周面39adは、突起部39aにおける中心軸線300aに沿って延設される面であり、突起部39aの先端部39aaと第二コア対向面39b(先端部39aaの根元側端部39ac)との段差面を構成する。
上述した各実施例では、第二コア39の第二コア対向面39bとアンカー36のアンカー対向面36gとが当接する構成について説明した。しかし、第二コア対向面39b又はアンカー対向面36gのいずれか一方に凸部を設け、この凸部とこの凸部に対向する第二コア対向面39b又はアンカー対向面36gとが当接するように構成することができる。この場合、第二コア対向面39bとアンカー対向面36gとの軸方向隙間寸法(アンカー36の移動量)36eは、凸部の先端とこの凸部に対向する第二コア対向面39b又はアンカー対向面36gとの間の隙間寸法になる。
この凸部が設けられた第二コア対向面39b又はアンカー対向面36gは、凸部に対向する第二コア対向面39b又はアンカー対向面36gに当接する当接部を構成する対向面である。また、第二コア対向面39bとアンカー対向面36gとが直接当接する構成においては、第二コア対向面39b及びアンカー対向面36gは、相互に当接する当接部を構成する対向面である。第二コア39及びアンカー36の各当接部が当接した状態において、第二コア対向面39bの外周部又は内周部に形成される突起部39aは、アンカー36とは接触することなく、アンカー36の外周面36hに対して径方向外方又はアンカー36の内周面36iに対して径方向内方に位置する。
本発明に係る各実施例によれば、アンカー移動開始速度を大きくして応答性を向上させることや、アンカー最大移動速度の低減によるキャビテーションエロージョンの抑制、さらに固定コア39とアンカー36との間の衝突エネルギーを低減するといった効果をもたらすことができる。
なお、本発明は上記した各実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
1…ポンプ本体、2…プランジャ、6…シリンダ、7…シールホルダ、8…吐出弁機構、9…圧力脈動低減機構、10a…低圧燃料吸入口、11…加圧室、12…燃料吐出口、13…プランジャシール、30…吸入弁、31…吸入弁シート部材、33…吸入弁ばね、35…ロッド、36…アンカー(可動コア)、36a…燃料通路、36b…アンカー突出部、36c…アンカー内周部、36d…流路面積最小部、36f…燃料通路(サイドギャップ部)、36g…アンカー対向面、38…第一コア(電磁吸入弁ハウジング)、39…第二コア(固定コア)、39a…突起部(第二コア台形突起部)、39b…第二コア対向面、40…ロッド付勢ばね、41…アンカー付勢ばね、43…電磁コイル、48…バネ空間、300…電磁吸入弁。

Claims (7)

  1. 固定コアと、前記固定コアに対して中心軸線に沿う方向に対向して前記固定コアから離れる側に付勢されたアンカーと、電磁コイルとを有する電磁吸入弁を備え、前記電磁コイルに通電することにより前記固定コアの前記アンカーに対向する固定コア対向面と前記アンカーの前記固定コアに対向するアンカー対向面との間に磁気吸引力を作用させて前記アンカーを前記固定コアの側に駆動して燃料の吐出量を変化させる高圧燃料供給ポンプにおいて、
    前記固定コアは、前記固定コア対向面に前記アンカーの側に突き出した突起部を有し、
    前記電磁コイルの非通電時で前記アンカーが静止した状態において、中心軸線に沿う方向において前記固定コア対向面と前記アンカー対向面との間に構成される軸方向隙間寸法に対し、前記固定コアの前記突起部と前記アンカー対向面との間の最小距離が小さくなるように構成され、
    前記突起部は、前記電磁コイルの通電時で前記アンカーが前記固定コアに当接した状態において、前記アンカーと接触することなく、前記アンカーの外周面に対して径方向外側又は前記アンカーの内周面に対して径方向内側に位置することを特徴とする高圧燃料供給ポンプ。
  2. 請求項1に記載の高圧燃料供給ポンプにおいて、
    前記突起部は、前記固定コア対向面の外周側に位置するように形成されたことを特徴とする高圧燃料供給ポンプ。
  3. 請求項2に記載の高圧燃料供給ポンプにおいて、
    前記アンカー対向面は中心軸線に対して垂直に形成され、
    前記最小距離は、前記アンカー対向面の外周と前記突起部と間に構成されることを特徴とする高圧燃料供給ポンプ。
  4. 請求項3に記載の高圧燃料供給ポンプにおいて、
    前記突起部は、外周面が突き出し方向の先端部側から前記固定コア対向面の側に向かって縮径するテーパー面として形成されたことを特徴とする高圧燃料供給ポンプ。
  5. 請求項4に記載の高圧燃料供給ポンプにおいて、
    前記突起部は、前記電磁コイルの非通電時で前記アンカーが静止した状態において、前記アンカーの外周面に対して径方向外側から対向するように設けられていることを特徴とする高圧燃料供給ポンプ。
  6. 請求項1に記載の高圧燃料供給ポンプにおいて、
    前記突起部は、前記固定コア対向面の内周側に位置するように形成されたことを特徴とする高圧燃料供給ポンプ。
  7. 請求項1に記載の高圧燃料供給ポンプにおいて、
    前記アンカーに対して中心軸線に沿う方向に相対変位可能に構成され、前記アンカーが前記固定コアに向かって移動する際に前記アンカーと係合して前記固定コアに向かって移動するロッドと、
    前記ロッドを前記固定コアから離れる側に付勢するロッド付勢ばねと、
    前記アンカーを前記ロッド付勢ばねの付勢力よりも小さい付勢力で前記固定コアの側に向かって付勢するアンカー付勢ばねと、を備え、
    前記アンカーは、前記ロッド付勢ばねの付勢力と前記アンカー付勢ばねの付勢力との差分の付勢力により、前記ロッドを介して前記固定コアから離れる側に付勢されることを特徴とする高圧燃料供給ポンプ。
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