以下、本発明を適用した実施の形態を図に基づいて説明する。
図1は、本発明を適用した一実施形態のインジェクタ10を示す断面図である。また、図2は、インジェクタ10の要部構造を示す断面図であり、図3は、インジェクタ10の要部の一部を拡大した断面図である。また、図4は、インジェクタ10の可動コアの構造を示す上面図である。
図1に示すインジェクタ10は、燃料噴射弁であって、たとえば直噴式のガソリンエンジンに適用される。直噴式のガソリンエンジンにインジェクタ10を適用する場合、インジェクタ10はエンジンヘッド(図示せず)に搭載される。
インジェクタ10は、予め定める軸方向Z(開閉方向)に延びる筒部材11、筒部材11の軸方向Z一端部に設けられる入口部材12、筒部材11の軸方向Z他端部に設けられるノズルホルダ13、インジェクタ10内部を軸方向Zへ往復移動可能に収容されるニードル14、およびニードル14を駆動する駆動部15を有している。
以下、インジェクタ10の方向として、筒部材11が延びる方向を軸方向Z(図1における上下方向)と称し、軸方向Zの一方を開弁方向Z1(図1における上方、反噴孔側)と称し、軸方向Zの他方を閉弁方向Z2(図1における下方、噴孔側)と称することがある。
筒部材11は、軸方向Zへ概ね内径が同一の筒状に形成されている。筒部材11は、磁性を有する磁性部16および磁性を有しない非磁性部17を有している。磁性部16は、非磁性部17よりも開弁方向Z1に位置する。したがって閉弁方向Z2に位置する筒部材11の端部は、非磁性部17となる。このような非磁性部17は、磁性部16とノズルホルダ13との磁気的な短絡を防止する。磁性部16および非磁性部17は、たとえばレーザ溶接などにより一体に接続されている。また、筒部材11は、たとえば一体に成形した後、熱加工などにより一部を磁性化または非磁性化してもよい。また、非磁性部は、磁性部に対し板厚を薄くした磁気の絞りを設けた形状としてもよい。
入口部材12は、開弁方向Z1に位置する筒部材11の端部に設けられる。入口部材12は、筒部材11の内周側に圧入されている。入口部材12は軸方向Zに貫通する燃料入口18を有する。燃料入口18には、燃料ポンプ(図示せず)から燃料が供給される。燃料入口18には、燃料フィルタ19が設けられる。燃料フィルタ19は、燃料に含まれる異物を除去する。したがって燃料入口18に供給された燃料は、燃料フィルタ19を経由して筒部材11の内周側に流入する。
ノズルホルダ13は、閉弁方向Z2に位置する筒部材11の端部に設けられる。したがって筒部材11とノズルホルダ13とは、協働して筒状のハウジングを構成する。またノズルホルダ13は、磁性を有する。したがって筒部材11の非磁性部17は、軸方向Zに関して、磁性部16と磁性を有するノズルホルダ13との間に位置する。ノズルホルダ13は、筒状に形成される。
ノズルホルダ13は、略同軸であり内径が互いに異なる大径部20、中径部21、小径部22および取付部23を有している。3つの径部20〜22のうち、大径部20は、最も内径が大きく、次に中径部21の内径が大きく、小径部22は最も内径が小さい。また3つの径部20〜22の位置関係は、大径部20が開弁方向Z1の端部に位置し、小径部22が閉弁方向Z2の端部に位置し、中径部21が軸方向Zの中央、すなわち大径部20と小径部22との間に位置する。大径部20の内径は、筒部材11の内径と略等しく、筒部材11と略同軸となるように配置される。取付部23は、閉弁方向Z2に位置する小径部22の端部に設けられる。したがってノズルホルダ13の閉弁方向Z2の端部は、取付部23となる。取付部23には、ノズルボディ24が設けられる。
ノズルボディ24は、筒状に形成され、例えば圧入あるいは溶接などによりノズルホルダ13の取付部23に固定されている。ノズルボディ24の内壁面は、閉弁方向Z2に向かうにつれて内径が小さくなるように傾斜し、いわゆる尖鋭状に形成される。このようなノズルボディ24の先端部には、ノズルボディ24を軸方向Zに貫いて内壁面と外壁面とを連通する噴孔25が形成される。また噴孔25の周囲の内壁面は、弁座29として機能する。
ここで、筒部材11、ノズルホルダ13、およびノズルボディ24からなる構成が、筒状部を有し一端側に噴孔が形成された本発明で言うところのハウジングに相当する。
ニードル14は、弁部材であって、筒部材11、ノズルホルダ13およびノズルボディ24の内周側に軸方向Zへ往復移動可能に収容されている。ニードル14は、軸方向Zへ往復変位することによって噴孔25を開閉して、噴孔25からの燃料の噴射を断続する。ニードル14は、ノズルボディ24と概ね同軸上に配置されている。ニードル14は、軸部26、ストッパ27およびシール部28を有している。ニードル14は、軸部26の一方の端部側すなわち燃料入口18側(反噴孔側)の端部において径外方向に全周に亘って鍔状に(フランジ状に)突出するように設けられたストッパ27を有している。また、ニードル14は、軸部26の他方の端部側すなわち燃料入口18とは反対側(噴孔側)の端部にシール部28を有している。シール部28は、ノズルボディ24に形成されている弁座29に着座可能である。
また、ニードル14には、内部に燃料が流通する流入孔30および連通孔31が形成される。具体的には、ニードル14には、上流側通路である流入孔30と、流入孔30の下流側に接続する下流側通路である連通孔31とが形成される。流入孔30および連通孔31からなる構成が、噴孔25へ向かう燃料通路322に供給される燃料の供給通路である。
流入孔30は、ニードル14のストッパ27形成位置から軸方向Zに沿って延びるように形成される。したがって開弁方向Z1に位置する流入孔30の上端部、すなわち供給通路の上流端は、開弁方向Z1に開口する。また閉弁方向Z2に位置する流入孔30の下端部は、閉塞している。流入孔30の下端部に臨む内壁には、ニードル14の径方向に延び、流入孔30と外方空間とを連通する連通孔31が形成される。
ハウジングをなす筒部材11およびノズルホルダ13の内側では、後述する固定コア35の内側の空間である燃料通路321、弁部材であるニードル14の内部に形成された通路空間である流入孔30および連通孔31、および可動コア36よりも噴孔側においてノズルホルダ13とニードル14との間に形成された空間である燃料通路322、を含む空間が、燃料入口18から噴孔25に向かう燃料の通路である燃料通路32となっている。
これにより、燃料フィルタ19を経由して筒部材11の内周側に流下した燃料は、固定コア35内側の燃料通路321を介してニードル14に形成される流入孔30に流入し、さらに流入孔30の下端部に形成される連通孔31から、ニードル14の外方に導かれる。その後、燃料は、ニードル14とノズルホルダ13との間に形成される燃料通路322を流下し、噴孔25側へ流入する。流入孔30および連通孔31からなる供給通路の構成については後述する。
次に、ニードル14を駆動する駆動部15に関して説明する。図2は、ニードル14が着座している閉弁状態にあるインジェクタ10の一部を拡大している断面図である。駆動部15は、ニードル14を軸方向Zに沿って駆動する。駆動部15は、スプール33、コイル34、固定コア35、磁性プレート50、上部磁性プレート50A、可動コア36、コネクタ37、第1スプリング39、第2スプリング46、ノズルホルダ13、および筒部材11を有している。
スプール33は、筒部材11の外周側に設置されている。スプール33は、樹脂で筒状に形成され、外周側にコイル34が巻かれている。コイル34は、通電されることによって固定コア35に可動コア36を吸引する磁力を発生する。コイル34は、コネクタ37の端子部38に電気的に接続している。端子部38は、コネクタ37に装着される外部電気回路(図示せず)と電気的に接続され、外部電気回路によってコイル34への通電状態が制御される。
固定コア35は、筒部材11を挟んでコイル34の内周側であって、予め定める設置位置に固定される。固定コア35は、例えば鉄などの磁性材料により筒状に形成され、筒部材11の内周側に例えば圧入などにより固定されている。磁性プレート50は、磁性材料から形成され、コイル34の外周側を覆っている。また、上部磁性プレート50Aは、磁性材料から構成され、コイル34の反噴孔側(開弁方向Z1側)を覆っている。
可動コア36は、筒部材11の内周側、およびノズルホルダ13の大径部20の内周側に軸方向Zへ往復移動可能に設置されている。可動コア36は、例えば鉄などの磁性材料から筒状に形成されている。固定コア35内には第1スプリング39(付勢手段の相当)が配置されている。第1スプリング39は、一方の端部がニードル14に接しており、他方の端部がアジャスティングパイプ40と接している。第1スプリング39は、軸方向Zへ伸長する力を有している。そのため、可動コア36およびニードル14からなる可動子は、第1スプリング39により弁座29に着座する閉弁方向Z2へ押し付けられる。アジャスティングパイプ40は、固定コア35の内周側に圧入されている。これにより、第1スプリング39の荷重は、アジャスティングパイプ40の圧入量を調整することにより調整される。コイル34に通電していないとき、可動コア36およびニードル14は、閉弁方向Z2へ押し付けられ、シール部28は弁座29に着座する。
このように、駆動部15は、固定コア35および可動コア36を有している。可動コア36には、ニードル14の軸部26が挿入されている。すなわち、可動コア36は、弁部材であるニードル14の周囲に筒状に設けられている。可動コア36は、径方向の中央部に軸方向Zへ貫く挿通孔が形成されて筒状をなしている。挿通孔に臨む内周面部(以下、「穴部」ということがある)41は、内径がニードル14の軸部26の外径よりもやや大きく形成されている。そのため、ニードル14は、穴部41の内周側を軸方向Zへ移動可能である。
また、ニードル14の軸部26の外周面部42は、可動コア36の穴部41と接触する。したがってニードル14は、可動コア36と接触した状態で軸方向Zに変位するので、ニードル14と可動コア36とは摺動する。これにより、ニードル14は、可動コア36との接触によって常に摺動抵抗(摩擦力)が生じた状態で、可動コア36によって軸方向Zの移動が案内される。
また、可動コア36の径方向外側の外周面部43は、筒部材11の内周面部44と接触している。本実施の形態では、筒部材11の内周面部44と接触する可動コア36の外周面部43は、残余の面部より径方向外方に突出する凸部43である。凸部43は、開弁方向Z1に位置する可動コア36の端部に設けられる。また凸部43が筒部材11と接触部分は、非磁性部17から成る部位である。
したがって、可動コア36の凸部43は、非磁性部17の内周面部44と接触した状態で軸方向Zに変位するので、可動コア36と非磁性部17とは摺動する。これにより、可動コア36は、常に摺動抵抗(摩擦力)が生じた状態で、非磁性部17によって軸方向Zの移動が案内される。
ニードル14に設けられるストッパ27は、開弁方向Z1への可動コア36の変位を規制する。ストッパ27の外径は、穴部41の内径よりも大きい。そのため、ニードル14のストッパ27は、開弁方向Z1に位置する可動コア36の端面部45(以下、「可動コア36の上端面部45」ということがある)と接する。ストッパ27と可動コア36の上端面部45とが接することにより、可動コア36とニードル14との間におけるニードル14の弁座29側(閉弁方向Z2)への移動および可動コア36の固定コア35側への相対的な移動は制限される。これにより、ニードル14のストッパ27は、可動子を構成する可動コア36とニードル14との過剰な相対移動を制限する。
また、ストッパ27は、筒状の固定コア35の内方側にて軸方向Zに沿って往復変位する。したがってストッパ27の外径は、固定コア35の内径よりも若干小さい。したがって、固定コア35の内周面部とストッパ27の外周面部との間には、円筒形状の隙間部が形成されている。
図3に示すように、可動コア36の反噴孔側の面である上端面部45には、軸方向Zにおいて固定コア35の下端面部49(噴孔側の端面)に対向する領域内となる、径方向における中央やや内方側の部分に、軸方向Zの開弁方向Z1に突出した凸部51が環状に(本例では円周状に)設けられている。そして、この凸部51には、幅方向(可動コア36の径方向)におけるほぼ中央に、環状に(本例では円周状に)延びるとともに軸方向Zの閉弁方向Z2に凹んだ溝部60(凹部に相当)が形成されている。
凸部51は、断面形状が矩形状であって、例えば高さが約50μmとなっている。溝部60は、断面形状が凸部51よりも幅(径方向寸法)が小さい矩形状であって、その深さ(凸部51先端面511から溝部60底面までの軸方向Zの距離、凸部51先端面511と溝部60底面との段差寸法)は約50μmとしている。
可動コア36の上端面部45の外周線(固定コア35の下端面部49と可動コア36の上端面部45とが対向する一対の対向面のうち可動コア36側の対向面の外周線)よりも内側(中心軸側)に、固定コア35側に突出した凸部51が設けられることによって、凸部51の外周側には、固定コア35の下端面部49と可動コア36の上端面部45との間に、可動コア36の変位位置に係わらずコア間空間52が形成される。凸部51を設けることによって固定コア35と可動コア36とが当接する際の当接面積を低減し、当接部に挟まれる流体の力である所謂スクイズ力を、全面で当接する場合よりも低減するようになっている。両コア35、36対向面積と凸部51の先端面511の面積および溝部60の上端開口面積との関係等については、後述する。
そして、可動コア36には、コア間空間53と燃料通路322(ノズルホルダ13とニードル14との間の空間)とを連通する通路断面が円形状の連通路53が形成されている。連通路53は、可動コア36に複数(本例では6つ)設けられており、それぞれの連通路53は、可動コア36を軸方向Zに貫通している。図4に上面図(図2、図3図示上方から見た図)を示すように、複数の連通路53は、可動コア36の軸を中心とする円周上に均等に配置されている。連通路は4〜8個設けることが好ましい。
そして、連通路53の通路断面積(軸方向Zに直交する断面の面積、本例では、複数の連通路53の通路断面積の総和、例えば7.3mm2)が、固定コア35の内周面部351とストッパ27の外周面部271との間に形成される隙間部54の断面積(軸方向Zに直交する断面の面積、例えば2.2mm2)よりも大きくなっている。
可動コア36は、閉弁方向Z2に位置する端部48(以下、「可動コア36の下端面部48」ということがある)が弾性部材である第2スプリング46と接している。第2スプリング46は、軸方向Zへ伸長する力を有している。第2スプリング46は、開弁方向Z1に位置する端部が可動コア36と接し、閉弁方向Z2に位置する端部がノズルホルダ13と接している。第2スプリング46は、ノズルホルダ13の大径部20および中径部21に収容されている。中径部21と小径部22との接続部分には、内径が互いに異なるので段差があり、閉弁方向Z2に位置する第2スプリング46の端部が当接する段差面部47が形成される。中径部21の内径は、第2スプリング46の外径よりもやや大きくなるように選択される。このような中径部21によって、第2スプリング46の傾きおよび曲がりが低減される。したがって、第2スプリング46の押し付け力を精密に維持することができる。
第2スプリング46は、軸方向Zへ伸長する力を有している。そのため、可動コア36は、第2スプリング46によって応力を付勢され固定コア35側(開弁方向Z1)へ押し付けられている。可動コア36には、第1スプリング39からニードル14を経由して閉弁方向Z2への閉弁力f1が加わり、第2スプリング46から開弁方向Z1への開弁力f2が加わる。図2では、理解を容易にするため、実際に閉弁力f1および開弁力f2が作用する部位には図示せず、閉弁力f1および開弁力f2が作用する方向を図示する。
第1スプリング39の押し付け力である閉弁力f1は、第2スプリング46の押し付け力である開弁力f2よりも大きく設定される。そのため、コイル34への通電が停止されている閉弁状態では、第1スプリング39に接するニードル14は、ストッパ27に接する可動コア36とともに第2スプリング46の開弁力f2に抗して噴孔25側(閉弁方向Z2)へ移動している。その結果、コイル34への通電が停止されている閉弁状態では、ニードル14のシール部28は弁座29に着座している。
前述したように、本実施形態のインジェクタ10において、図2に示すように、ハウジングの一部をなすノズルホルダ13は、大径部20、中径部21、小径部22を有しており、大径部20の内側に可動コア36が配設されている。また、第2スプリング46は、ノズルホルダ13の大径部20および中径部21の内側に配設され、反噴孔側(開弁方向Z1側)の端部が可動コア36の下端面部48に接して支持され、噴孔側(閉弁方向Z2側)の端部がノズルホルダ13の中径部21と小径部22との間の段差面部47に接して支持されている。
ここで、大径部20および中径部21が大内径部であり、小径部22が小内径部である。したがって、ハウジングの一部をなすノズルホルダ13は、小内径部である小径部22と、この小径部22より反噴孔側に小径部22よりも内径が大きい大内径部である中径部21および大径部20とを有し、小径部22と弁部材であるニードル14との間に噴孔25に向かう燃料通路322が形成されるとともに、大内径部の一部である中径部21と小内径部である小径部22との間の段差面部47が弾性部材である第2スプリング46の噴孔側の端部を支持する座面となっている。
ニードル14には、内部に燃料の供給通路である流入孔30および連通孔31が形成されている。上流側通路である流入孔30は軸方向Zに延びており、流入孔30の下流側に接続する下流側通路である連通孔31は流入孔30に対して交差する方向(本例では直交する方向)に延びている。連通孔31は複数設けられており、本例ではニードル14に連通孔31を軸対称位置に2つ設けている。ニードル14には、図2に図示した連通孔31と、この連通孔31に対して紙面表側に配設された図2では図示を省略した連通孔(図示した連通孔31と同一形状の連通孔)とが形成されている。
図2から明らかなように、断面円形状の連通孔31の直径(例えば1.4mm)は断面円形状の流入孔30の直径(例えば1.6mm)より小さいものの、連通孔31を複数設けることにより、流入孔30断面積よりも連通孔31の総断面積の方が大きくなっている。すなわち、供給通路は下流側通路の断面積が上流側通路の断面積よりも大きくなっている。
そして、複数の連通孔31の下流端は、いずれも、軸方向Zにおけるノズルホルダ13の段差面部47と可動コア36の噴孔25側の端面(下端面部48)との間となる部位に開口している。ニードル14の連通孔31は、弁開閉のための軸方向Zの往復変位に伴うニードル14の変位位置に係わらず、下流端開口位置が、ノズルホルダ13の段差面部47と可動コア36の噴孔25側の端面(下端面部48)との間となるように形成されている。
次に、上記の構成によりインジェクタ10の作動について説明する。
先ず、開弁時の動作に関して説明する。コイル34への通電が停止されているとき、固定コア35と可動コア36との間には磁気吸引力は発生しない。したがって、ニードル14は、第1スプリング39の押し付け力である閉弁力f1によって閉弁方向Z2に押圧されている。このとき、ニードル14のストッパ27は、可動コア36の上端面部45(本例では凸部51のうち内周側の部分)に接している。そのため、可動コア36は、第1スプリング39の閉弁力f1と第2スプリング46の押し付け力である開弁力f2との差によってニードル14とともに開弁状態のときよりも閉弁方向Z2へ移動して、可動コア36は固定コア35と離れている。このようにニードル14が開弁状態のときよりも閉弁方向Z2へ移動することにより、ニードル14のシール部28は弁座29に着座している。したがって、燃料は噴孔25から噴射されない。この閉弁状態でも、可動コア36の下端面部48は、段差面部47とは離間した位置に停止している。
閉弁状態からコイル34に通電すると、コイル34に発生した磁界により磁性プレート50、上部磁性プレート50A、磁性部16、可動コア36、固定コア35およびノズルホルダ13には磁束が流れ、磁気回路が形成される。これにより、固定コア35と可動コア36との間には磁気吸引力が発生する。固定コア35と可動コア36との間に発生する磁気吸引力と第2スプリング46の開弁力f2との和が第1スプリング39の閉弁力f1よりも大きくなると、可動コア36は開弁方向Z1への移動を開始する。このとき、可動コア36の上端面部45にストッパ27が接しているニードル14は、可動コア36とともに開弁方向Z1へ移動する。その結果、ニードル14のシール部28は、弁座29から離れる。
燃料入口18からインジェクタ10の内部へ流入した燃料は、前述したように燃料フィルタ19、入口部材12の内周側、アジャスティングパイプ40の内周側、固定コア35の内周側(燃料通路321)、流入孔30、連通孔31、中径部21の内周側(燃料通路322)、小径部22の内周側(燃料通路322)を順次経由して、ノズルボディ24の内周側に流入する。ノズルボディ24に流入した燃料は、弁座29から離れたニードル14とノズルボディ24との間を経由して噴孔25へ流入する。これにより、噴孔25から燃料が噴射される。
このように、可動コア36には、磁気吸引力だけでなく第2スプリング46の開弁力f2も加わっている。そのため、コイル34へ通電すると、発生した磁気吸引力により可動コア36およびニードル14は迅速に開弁方向Z1へ移動する。
可動コア36およびニードル14が開弁方向Z1へ移動しているとき、コア間空間52の容積は徐々に減少していくが、可動コア36よりも噴孔側の燃料通路322の容積が徐々に増大していくので、隙間部54よりも通路断面積が大きい連通路53を介して、コア間空間52の燃料を燃料通路322に容易に流出させることができる。
したがって、コイル34の通電に対するニードル14の作動応答性を高めることができる。また、可動コア36およびニードル14を駆動するために必要な電磁吸引力は低減される。したがって、コイル34など駆動部15の小型化を図ることができる。
上述したように、閉弁状態から磁気吸引力が作用すると、可動コア36およびニードル14は、可動コア36の上端面部45の内周縁部とストッパ27とが接することによって一体となって開弁方向Z1へ移動する。可動コア36およびニードル14は、可動コア36の上端面部45(本例では凸部51の先端面511)が固定コア35の下端面部49と衝突して噴孔25を全開(最大開度)とするまで開弁方向Z1へ移動する。可動コア36が固定コア35に衝突すると、可動コア36とニードル14とは軸方向Zへ相対移動可能であるので、ニードル14は開弁方向Z1への慣性力によって、ストッパ27が可動コア36の上端面部45から離間して、さらに開弁方向Z1への移動を継続する。このようにストッパ27が離間しても、ストッパ27は第1スプリング39と接触している状態が維持されるので、なんら他の部材にストッパ27が衝突することはない。したがってニードル14がバウンドすることなく、噴孔25からの不規則な燃料の噴射は低減される。
また、ニードル14は開弁方向Z1への慣性力によって開弁方向Z1への移動を継続して、可動コア36とストッパ27とが離れると、ニードル14には可動コア36を経由した第2スプリング46の開弁力f2が加わらない。そのため、ニードル14には、第1スプリング39の押し付け閉弁力f1のみが加わる。すなわち可動コア36とニードル14とが離れると、ニードル14に対し閉弁方向Z2へ加わる力が大きくなる。したがって、ニードル14の開弁方向Z1への過剰な移動が制限され、いわゆるオーバーシュートは低減される。
同様に、ニードル14が開弁方向Z1への慣性力によって開弁方向Z1への移動を継続して、可動コア36とニードル14とが離れると、可動コア36には第2スプリング46の開弁力f2および磁気吸引力が加わり、第1スプリング39の閉弁力f1が加わらない。すなわち可動コア36とストッパ27とが離れると、可動コア36に対し開弁方向Z1へ加わる力が大きくなる。したがって、可動コア36が固定コア35に衝突すると、その衝撃により可動コア36は閉弁方向Z2へ跳ね返る(バウンスする)ことなく、少なくともコイル34が通電されている期間は固定コア35に接触した状態が維持される。
可動コア36の凸部51が固定コア35に衝突すると、凸部51の先端面511と固定コア35の下端面部49の先端面511に対向する領域との間に挟まれて隙間から流出しようとする燃料流体の流動抵抗力(所謂スクイズ力)により、跳ね返りが抑制される。
凸部51には先端面511から凹んだ溝部60が形成されているが、可動コア36の凸部51が固定コア35に衝突する際には、この溝部60内にある燃料流体は圧縮され難く、上記隙間から流出する流量は溝部がない場合と変わらないため、溝部60の上方開口面より上方(開弁方向Z1側)にある燃料流体が、凸部51に溝部60が形成されていないときと同様のスクイズ力を発生する。すなわち、溝部60の有無は、可動コア36と固定コア35との衝突時のスクイズ力には影響し難い。
これに加えて、可動コア36が固定コア35に衝突する時の衝撃力は、衝撃力に寄与する重量が低減されるため(可動コア36分の重量のみとなるため)小さくなる。このように衝撃力が小さいために、可動コア36は極めて跳ね返り難い。
さらに、ニードル14がオーバーシュートして、ニードル14に加わる力が第1スプリング39の閉弁力f1のみとなると、ニードル14は開弁方向Z1への移動速度が減少し、オーバーシュート量が最大となった後、閉弁力f1によって閉弁方向Z2へ移動を開始する。一方、可動コア36は、磁気吸引力および第2スプリング46の開弁力f2によって固定コア35に接触した状態であるので、ニードル14が閉弁方向Z2へ移動するとき、固定コア35と接触している可動コア36によって閉弁方向Z2への移動が規制される。その結果、ニードル14には再び磁気吸引力および第2スプリング46の開弁力f2が加わるので、ニードル14は開弁状態を維持することができる。このように、可動コア36とニードル14とは相対的に移動可能であるため、ニードル14のバウンスにともなう噴孔25からの不規則な燃料の噴射は低減される。したがって、コイル34への通電時間が短期間でも、噴孔25から噴射される燃料の噴射量を精密に制御することができる。
次に、閉弁時の動作に関して説明する。開弁状態(全開状態)からコイル34への通電を停止すると、固定コア35と可動コア36との間の磁気吸引力は消滅していく。そして、残留磁束による磁気吸引力と第2スプリング46の開弁力f2との和が第1スプリング39の閉弁力f1よりも小さくなると、ニードル14は、第1スプリング39の閉弁力f1によって可動コア36とともに閉弁方向Z2へ移動を開始する。したがってニードル14のシール部28は再び弁座29に着座し、燃料通路32と噴孔25との間の燃料の流れは遮断される。したがって、燃料の噴射は終了する。
コイル34への通電を停止したときの磁気切れ(残留磁束の減少度合)は、固定コア35と可動コア36との当接面積により影響される。当接面積が小さいほど、磁気通路のギャップ部が増大して磁気集中部が減少し、磁気切れが良好となる。可動コア36の凸部51には先端面511から凹んだ溝部60が形成されており、溝部60の上方開口面積の分だけ当接面積が小さくなっている。
これにより、コイル34への通電を停止したとき、可動コア36およびニードル14は第1スプリング39の閉弁力f1によって第2スプリング46の開弁力f2に抗して閉弁方向Z2へ迅速に移動する。
可動コア36およびニードル14が閉弁方向Z2へ移動しているとき、コア間空間52の容積は徐々に増大していくが、可動コア36よりも噴孔側の燃料通路322の容積が徐々に減少していくので、隙間部54よりも通路断面積が大きい連通路53を介して、燃料通路332の燃料をコア間空間52に容易に流入させることができる。
ニードル14のシール部28が弁座29に着座すると、ニードル14は衝突の衝撃によって開弁方向Z1へ跳ね返ろうとする。ここで、可動コア36とニードル14とは相対移動可能であるため、ニードル14のシール部28が弁座29に着座しても、可動コア36は閉弁方向Z2へ向かう慣性力によって、そのまま閉弁方向Z2への移動を継続し、可動コア36とニードル14とは離れる。
そのため、ニードル14には第1スプリング39の閉弁力f1のみが加わり、可動コア36には第2スプリング46の開弁力f2のみが加わる。したがって可動コア36とニードル14とが離れることによって、ニードル14に作用する合力が閉弁力f1のみになり、ニードル14の開弁方向Z1への跳ね返りが防止される。これにより、コイル34への通電を停止すると、噴孔25からの燃料の噴射は迅速に停止される。したがって、不規則な燃料の噴射が低減され、噴孔25から噴射される燃料の噴射量を精密に制御することができる。
ニードル14が弁座29に衝突する時の衝撃力は、衝撃力に寄与する重量が低減されるため(ニードル14分の重量のみとなるため)小さくなる。このように衝撃力が小さいために、ニードル14は極めて跳ね返り難い。
また、ニードル14が着座すると、ニードル14に対して相対変位可能な可動コア36は、閉弁方向Z2への慣性力によって、可動コア36を開弁方向Z1に付勢する第2スプリング46の開弁力f2に打ち勝ち、さらに閉弁方向Z2に過剰に変位、いわゆるアンダーシュートする。
可動コア36がアンダーシュートして、可動コア36に加わる力が第2スプリング46の開弁力f2のみとなると、可動コア36は閉弁方向Z2への移動速度が減少し、アンダーシュート量が最大となった後、開弁力f2によって開弁方向Z1へ移動を開始する。一方、ニードル14は、第1スプリング39の閉弁力f1によってシール部28が弁座29に着座した状態である。開弁力f2によって開弁方向Z1へ移動する可動コア36は、ニードル14のストッパ27により移動が規制されて停止し、次の開弁動作が開始可能な閉弁状態となる。
上述の構成および作動によれば、固定コア35の下端面部49と可動コア36の上端面部45とが軸方向Zにおいて互いに対向する一対の対向面を形成しており、可動コア36上端面部45の固定コア35下端面部49に対向する領域の一部に、軸方向Zに突出した円周状の凸部51を設け、この凸部51に、先端面511から軸方向Zに凹んだ円周状の溝部60を形成し、溝部60の両側にそれぞれ固定コア35との当接面となる先端面511が残るようにしている。
これによって、磁気通路のギャップ部となる溝部60が形成されていても、溝部60内の燃料流体は圧縮し難く、溝部60を含む可動コア36凸部51と固定コア35との当接部のスクイズ力が低減し難いので、溝部60の上方開口面積を含む凸部51先端面511の面積で決まるスクイズ力を確保して、可動コア36が固定コア35に衝突したときのバウンスを抑制することができる。
一方、凸部51に形成した溝部60は磁気ギャップ部となるので、溝部60を形成することにより磁気集中部となる凸部51先端面511の面積を減少させて、コイル通電停止時の磁気切れ特性を向上することができる。このようにして、スクイズ力によるバウンスの抑制と磁気切れ特性の向上を両立させることができる。
本実施形態では、可動コア36の固定コア対向面の一部に設けた凸部51のみが固定コア35との当接部となるため、当接する面積は可動コア36の径に左右されず、容易に調整することが可能である。
また、可動コア36の固定コア対向面の一部に設けた凸部51は、固定コア35との対向面の外周線(本例では、可動コア36の外周面)よりも内側に設けられて、一対の対向面の間の凸部51よりも外周側に、可動コア36の軸方向の変位に係わらずコア間空間52が形成されている。これによると、可動コア36および固定コア35の外周部に磁気集中することを防止できる。したがって、可動コア36がその側面部においてハウジングの一部をなすノズルホルダ13に磁気吸引されること(所謂サイドフォースが発生すること)を抑制することができ、可動コア36を安定して変位させることができる。換言すれば、本実施形態では、固定コア35との当接部となる凸部51は、サイドフォース(磁気吸引力のうち径方向の力)を低減するために、可動コア36上端面部45の最外周部を避けて形成されている。
また、上記したように、最外周部を避けて凸部51を形成しているので、凸部51より外周側で固定コア35、可動コア36、およびハウジングに囲まれたコア間空間52と燃料通路とを連通する連通路53を、可動コア36の凸部51よりも外周側に容易に形成することができる。この連通路53により、可動コア36が変位した際のコア間空間52の圧力変動を抑制することができ、可動コア36の一層安定して変位させることができる。
ここで、図5(a)に示す可動コア36の固定コア35と対向する面積S1、図5(b)に示す可動コア36の溝部60を含む凸部51先端面511面積S2、図5(c)に示す可動コア36の凸部51先端面511面積S3の好ましい関係、および、溝部60の深さL(先端面511との段差)の好ましい値について、本発明者らが本実施形態のインジェクタ10において検討を行った結果を示す。
図6(a)に示すように、インジェクタ10の要求特性に基づいて定まる閉弁時間(コイル通電を停止してから閉弁を完了するまでの時間)の目標値より、S2/S1は、0.4以下が好ましい。一方、図6(b)に示すように、要求特性に基づいて定まるバウンス量の目標値より、S2/S1は0.1以上であることが好ましい。すなわち、0.1≦S2/S1≦0.4であることが好ましい。
また、図7に示すように、インジェクタ10の要求特性に基づいて定まる閉弁時間の目標値より、S3/S1は、0.2以下が好ましい。また、図8に示すように、要求特性に基づいて定まる閉弁時間の目標値より、溝部60の深さLは、0.01mm以上であることが好ましい。
次に、図9(a)に、コイル34に印加される駆動パルス信号を示し、図9(b)に可動子(ニードル14および可動コア36)のリフト(変位)波形を示す。本実施形態のインジェクタ10によれば、凸部51に溝部60を設けずに溝部60の上部開口面積の分も凸部の先端面とした比較例1に対し、磁気切れを良好にして、コイル通電オフ時から可動子閉弁完了時までの閉弁時間を短縮することができる。また、本実施形態のインジェクタ10によれば、凸部51に溝部60を設けずに凸部先端面積を本実施形態と同一とした比較例2に対し、可動子のバウンスを抑制して、コイル通電オン後、可動子を噴孔全開位置に速やかに安定させることができる。
近年、内燃機関の燃費向上要求等よりインジェクタの最小噴射量をより小さくすることが求められているが、インジェクタの最小噴射量は、駆動パルス信号の通電時間(駆動時間)と燃料噴射量との関係が安定した範囲(例えば、図9(c)に示す直線性のある範囲)における最小噴射量の値により決まる。換言すれば、噴射量が通電時間に対して比例関係にある範囲における最小値により決まる(図9(c)参照)。
本実施形態によれば、可動子が固定コアに衝突する際のバウンスを抑制できること、および、コイル通電オフ時から可動子閉弁完了までの時間を短縮できることで、図9(c)に示すように、比較例1および比較例2よりもインジェクタの最小噴射量を確実に小さくすることができる。
また、本実施形態のインジェクタ10では、溝部60は可動コア36の凸部51に形成されている。すなわち、凸部51と溝部60とは同一コアに形成されている。したがって、凸部51と溝部60とを同時に加工できるので、溝部60の形成加工が容易であり、加工時間を短縮することも可能である。
また、凸部51および溝部60は、いずれも軸線を中心とした円周状に形成しているので、凸部51および溝部60の形成加工が極めて容易である。
また、可動コア36に連通路53を形成することで、可動コア36の軸方向Zから見た投影面積を減少することができる。したがって、燃料油中で可動コア36が軸方向Zに移動する際の抵抗を低減することができる。
また、連通路53を複数設け、複数の連通路53を可動コア36の軸を中心に均等に配置している。したがって、連通路の1つあたりの直径を低減することによって可動コア36の外径を小さくすることが可能であり、均等配置された複数の連通路53を介してコア間空間52と燃料通路322との間での燃料の移動を速やかに行うことができるとともに、可動コア36の磁気特性を均一にすることが可能である。
(他の実施形態)
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に何ら制限されることなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲において種々変形して実施することが可能である。
上記一実施形態では、凸部51を断面矩形状の円周状の突起とし、溝部60を断面矩形状の円周状の凹部としていたが、これに限定されるものではない。例えば、図10に示すように、凸部51を断面台形状の円周状の突起とし、溝部60を断面台形状の円周状の凹部としてもよい。これによると、凸部51および溝部60の形成加工がより容易となる。特に、溝部の形状は、上記一実施形態で説明したように深さLを所定値以上(例えば0.01mm以上)とすれば、形状は特性に大きく影響しない。したがって、溝を追加することによる加工コストの上昇を抑制することが容易である。
また、凸部や凹部は、いずれも円周状に形成したものでなくてもかまわない。例えば、凸部を円周状もしくは円周状以外の環状に形成し、凹部を周方向に延びていない複数の凹部で構成してもよい。また、例えば、凸部も円周状もしくは円周状以外の環状に形成するものでなくてもよい。
また、上記一実施形態では、凸部51よび溝部60を、いずれも可動コア36に設けていたが、固定コア35の噴孔側の面と可動コア36の反噴孔側の面とが軸方向Zにおいて互いに対向する一対の対向面の少なくともいずれかの一部に、軸方向に突出した凸部51を設け、一対の対向面のうち一方の対向面に設けられた凸部51の先端面511もしくは他方の対向面のうち凸部51先端面511に対向する領域の少なくともいずれかに、軸方向に凹んだ溝部60(凹部)を形成したものであればよい。例えば、図11に示すように、可動コア36の上端面部45に凸部51を設け、固定コア35の下端面部49のうち凸部51の先端面511に対向する領域内に溝部160を形成するものであってもよい。
また、上記一実施形態では、凸部51の先端面511から軸方向Zに凹んだ溝部60を形成しており、詳細な説明は省略したが、溝部60の径方向両側の先端面511の軸方向Zの位置(溝部60両側に残された凸部の高さ)は同一であり、可動コア36が固定コア35に当接した場合には、溝部60は燃料通路とは隔絶された閉塞空間を形成するようになっていた。しかしながら、凸部形状はこれに限定されるものではなく、例えば、溝部(凹部)が閉塞空間とならない構成であってもかまわない。
例えば、図12に示すように、凸部51の先端面511のうち、溝部60よりも外周側の先端面511aの方が内周側の先端面511bよりも固定コア35側にあってもよい。すなわち、凸部51の先端面511aが固定コア35に当接したときに、先端面511bは固定コア35に当接しておらず、当接している場合とほぼ同等のスクイズ力を発現できるクリアランス(例えば20μm以下の隙間)を形成するものであってもよい。これによれば、磁気切れ特性を更に向上することが可能である。
また、上記一実施形態では、連通路53を可動コア36に設けていたが、固定コア35に設けるものであってもよいし、両コアに設けるものであってもよい。連通路は、コア間空間52と燃料通路32とを連通するものであればよい。例えば、固定コア35に連通路を設ける場合には、連通路はコア間空間52と燃料通路321とを連通するものであってもよいし、コア間空間52と燃料通路321よりも上流側の燃料通路32とを連通するものであってもよい。
また、上記一実施形態では、連通路53は、可動コア36に複数設けられて、軸中心に均等配置されていたが、これに限定されるものではなく、例えば、コア外径寸法、燃料流通性、磁気特性等を満足するものであれば、単数であってもよいし、複数を不均等に配置するものであってもかまわない。
また、上記一実施形態では、連通路は、可動コア36に軸に平行に延びる貫通孔をなすように設けられていたが、これに限定されるものではない。例えば、軸に傾斜して設けられるものであってもよい。また、貫通孔構造ではなく、例えば、コアの外周面に溝構造として形成されるものであってもよい。また、連通路を設けないものであってもよい。
また、上記一実施形態では、ニードル14と可動コア36とが相対移動可能な可動子を採用していたが、これに限定されるものではなく、例えば、ニードル14が可動コア36に固定された可動子を採用してもかまわない。
また、上記一実施形態では、筒部材11とノズルホルダ13とノズルボディ24とでハウジングを構成するものとしていたが、これに限定されるものではなく、例えば2部材以下もしくは4部材以上でハウジングを構成するものであってもよい。
また、上記一実施形態では、インジェクタ10は、直噴式のガソリンエンジンに適用されるものとしていたが、直噴式のガソリンエンジンに限るものではなく、ポート噴射式のガソリンエンジン、またはディーゼルエンジンなどに適用してもよい。