以下、図面を用いて、本発明に係る同芯巻コイルの成形方法及び成形装置の具体的な実施の形態について説明する。
図1は、本発明の一実施例である同芯巻コイルからなるコイルアッシーが搭載されるステータの構成図を示す。尚、図1(A)にはステータの組付完了前の状態を、また、図1(B)にはステータの組付完了後の状態を、それぞれ示す。図2は、本実施例の同芯巻コイルを複数個用いてコイルアッシーを構成する手法を説明するための図を示す。尚、図2(A)には2つの同芯巻コイルの組付完了前の状態を、また、図2(B)には2つの同芯巻コイルの組付完了後の状態を、それぞれ示す。図3は、本実施例の同芯巻コイルの成形完了前の構成図を示す。また、図4は、本実施例の同芯巻コイルの成形完了後の構成図を示す。尚、図3(A)及び(B)並びに図4(A)及び(B)には斜視図を、また、図3(C)及び図4(C)には平面図を、それぞれ示す。
本実施例において、ステータ10は、例えば三相交流モータなどの回転電機に用いられ、回転子であるロータに対して径方向外側に所定のエアギャップを介して配置される固定子である。ステータ10は、通電によってロータを回転させる磁界を発生する。ステータ10は、ステータコア12と、ステータコイル14と、を備えている。ステータコア12は、中空円筒状に形成された部材であって、絶縁コーティングされた複数の電磁鋼板を軸方向に積層して形成されている。尚、ステータコア12の径方向外側面には、絶縁コーティングされた軟磁性体粉末を圧縮成型した材料で形成された円筒状のヨークが取り付けられてもよい。
ステータコア12は、円環状に形成されるヨーク16と、ヨーク16の径方向内側面から径方向内側(軸中心側)に向けて突出するティース18と、を有している。ティース18は、ヨーク16の径方向内側面において周方向に複数(例えば、図1に示す如く96個)設けられており、周方向に沿って等間隔で設けられている。周方向に隣接する2つのティース18の間には、スロット20が形成されている。
各ティース18にはそれぞれ、上記のステータコイル14が巻回される。ステータコイル14は、ステータコア12の径方向内側において周方向に複数(例えば、図1に示す如く96個)配設される。ステータコイル14は、周方向に複数配設されることによりコイルアッシー22を構成する。コイルアッシー22は、複数のステータコイル14により周方向に沿って円環状に形成される。コイルアッシー22は、複数のステータコイル14が収容されるスロット20を周方向に一つずつずらしながら配置されると共に、周方向に隣り合うステータコイル14同士が各ステータコイル14の導線が周回する積層方向において重なり合うことにより構成される。
尚、各ステータコイル14はそれぞれ、回転電機が例えば三相交流モータに適用される場合は、U相コイル、V相コイル、及びW相コイルの何れかを構成する。この場合、ステータコイル14であるU相コイル、V相コイル、及びW相コイルは、周方向にその順でティース18に巻回される。
ステータコア12は、周方向に分割される複数(例えば、図1に示す如く48個)の分割コア24からなる。すなわち、ステータコア12は、周方向に複数の分割コア24に分割されている。すべての分割コア24は、互いに同じ形状を有しており、具体的には、互いに同じ周方向角度分のヨーク16と、2つのティース18と、を含む形状を有している。
ステータ10は、また、ステータコア12とステータコイル14との絶縁性を確保する絶縁部材26を備えている。絶縁部材26は、ステータコア12の有する分割コア24ごとに設けられている。絶縁部材26は、分割コア24の形状に合致した形状を有している。絶縁部材26は、紙や樹脂(例えば、熱硬化性樹脂や熱可塑性樹脂など)などにより構成されており、分割コア24とステータコイル14との間に薄膜の絶縁層を形成する。
絶縁部材26が装着された分割コア24は、2つのティース18の間のスロット20にコイルアッシー22の有するステータコイル14が配置されるように、コイルアッシー22に対して径方向外側から挿入される。そして、すべての分割コア24がコイルアッシー22に対して組み付けられると、ステータコア12とステータコイル14とが組み付けられたステータ10が構成される。
ステータコイル14は、断面が矩形状(具体的には、長方形)に形成された平角導線により構成されている。周方向に複数配設される各ステータコイル14はそれぞれ、所定複数巻数(例えば5周)だけ周回された平角導線が曲げ加工されることにより成形される同芯巻コイルである。以下、ステータコイル14の成形完了前の平角導線を平角導線28と、また、成形完了後のステータコイル14を同芯巻コイル14と、それぞれ称す。
平角導線28は、一本の直線状の素線が巻線装置の有する略六角形状の金型に巻き付けられることにより、図3に示す如く、所定複数巻数に周回された略六角形状に形成される。尚、平角導線28の断面矩形状の角部はR加工されているのがよい。平角導線28は、導電性の高い例えば銅やアルミニウム等の金属により構成されている。また、同芯巻コイル14は、略六角形状の平角導線28が後に詳述する成形装置を用いて曲げ加工されることにより、図4に示す如く、所定複数巻数に周回されつつ両側(後述のコイルエンド部)において凸状の先端を有する略六角形状に形成される。
同芯巻コイル14は、ステータコア12のスロット20内に収容されるスロット部30,32と、ステータコア12の軸方向両端部から軸方向外側に向けて突出するコイルエンド部34,36と、を有している。スロット部30,32は、ステータコア12のスロット20を軸方向に貫くように略直線状に延びている。コイルエンド部34,36は、ステータコア12の軸方向両端部に対して軸方向外側においてスロット部30,32同士を繋ぐように湾曲している。
成形完了前の平角導線28は、同芯巻コイル14のスロット部30,32に対応するスロット対応部位が略直線状に形成され、かつ、同芯巻コイル14のコイルエンド部34,36に対応するコイルエンド対応部位が両側のスロット対応部位同士を繋いでそのコイルエンド対応部位の積層方向に並んだ導線同士が平行に並ぶように構成されている。平角導線28の積層方向に並んだ導線のうち各段の、スロット対応部位及びコイルエンド部36に対応するコイルエンド対応部位は、同じ平面上に形成されている。一方、平角導線28の積層方向に並んだ導線のうち各段のコイルエンド部34に対応するコイルエンド対応部位は、両側のスロット対応部位間を斜めに繋いで渡ることで平角導線28の積層方向に並んだすべての導線についてそれぞれ一段のレーン変更を行うように形成されている。
同芯巻コイル14の両端部はそれぞれ、ステータコア12の軸方向一方側の端面から軸方向に向けて突出し、互いに、他の同芯巻コイル14又は外部接続端子などのリード線と接続するために同じ軸方向側(以下、軸方向リード側と称す。)に突出する。コイルエンド部34は軸方向リード側に設けられ、また、コイルエンド部36は軸方向リード側とは反対の軸方向反リード側に設けられる。以下、コイルエンド部34をリード側コイルエンド部34と、また、コイルエンド部36を反リード側コイルエンド部36と、それぞれ称す。スロット部30は周方向一方側に設けられ、また、スロット部32は周方向他方側に設けられる。以下、スロット部30を一方側スロット部30と、また、スロット部32を他方側スロット部32と、それぞれ称す。
スロット部30,32同士は、所定角度距離分だけ、軸回りの周方向に離間している。また、同芯巻コイル14は、平角導線28の断面短辺方向に複数本の導線が積層されるように構成されている。同芯巻コイル14は、積層方向に隣り合う導線間に所定の隙間が形成されるように構成されている。同芯巻コイル14は、スロット部30,32間の距離が積層方向位置に応じて変化するように断面台形状に形成されている。この断面台形状の形成は、同芯巻コイル14のスロット部30,32をそれぞれ適切にスロット20に収容するために行われる。同芯巻コイル14は、導線の積層方向がステータコア12の軸方向に直交する径方向に一致するようにステータコア12に組み付けられる。
上記した同芯巻コイル14において、平角導線28の周回巻数が例えば“5”であるとき、反リード側コイルエンド部36、一方側スロット部30、及び他方側スロット部32ではそれぞれ導線の積層数が5段となる一方、リード側コイルエンド部34では導線の積層数が4段となる。
同芯巻コイル14のコイルエンド部34,36はそれぞれ、複数の相異なる非直線形状に形成される。具体的には、コイルエンド部34,36はそれぞれ、3種類の非直線形状に形成されるものであって、平角導線28の断面短辺方向に屈曲してステータコア12の径方向に向けて階段状に屈曲するクランク形状に成形され(クランク成形)、円環状のステータコア12の円弧に合わせて湾曲する円弧形状に成形されると共に(円弧成形)、平角導線28の断面長辺方向に屈曲する屈曲状に成形される(エッジワイズ成形)。
上記のクランク成形及び円弧成形は、平角導線28の周回の積層方向に向けた曲げ加工であり、また、上記のエッジワイズ成形は、平角導線28の周回の積層方向に直交する直交方向に向けた曲げ加工である。上記のクランク成形は、平角導線28の周回の積層方向への導線間のレーンチェンジのために行われる曲げ加工である。上記の円弧成形は、同芯巻コイル14をスロット20内に効率的に収容するために行われる曲げ加工である。また、エッジワイズ成形は、コイルアッシー22が構成される際に複数の同芯巻コイル14を効率的に配置するために行われる曲げ加工である。
次に、図5〜図11を参照して、本実施例の同芯巻コイル14の成形について説明する。
図5は、本実施例の同芯巻コイル14の成形装置40の斜視図を示す。尚、図5には同芯巻コイル14の成形完了前の状態を示す。図6は、本実施例の同芯巻コイル14の成形装置40の平面図を示す。図7は、本実施例の同芯巻コイル14の成形装置40が備える金型としての内型の構成図を示す。図8は、本実施例の同芯巻コイル14の成形装置40が備える金型としての外型の構成図を示す。図9は、本実施例の同芯巻コイル14の成形装置40が備えるフィンの構成図を示す。尚、図7(A)、図8(A)、及び図9(A)には斜視図を、また、図7(B)、図8(B)、及び図9(B)には平面図を、それぞれ示す。図10は、本実施例の同芯巻コイル14の成形装置40による成形開始前の斜視図を示す。また、図11は、本実施例の同芯巻コイル14の成形装置40による成形完了後の斜視図を示す。
本実施例において、同芯巻コイル14は、所定複数巻数に周回された略六角形状の平角導線28を成形装置40が曲げ加工することにより成形される。成形装置40は、内型である内側金型42と、外型である外側金型44と、を備えている。内側金型42は、セットされる平角導線28の周回内に配置される金型であって、外周面側にセットされた平角導線28を保持することが可能な金型である。また、外側金型44は、セットされる平角導線28の周回外に配置される金型である。
以下、成形装置40において、内側金型42にセットされた平角導線28の、両側のコイルエンド対応部位を結ぶ方向(軸方向)を第一方向Xと、内側金型42にセットされた平角導線28の、両側のスロット対応部位の離間する方向を第二方向Yと、内側金型42にセットされた平角導線28の、周回の積層方向を第三方向Zと、それぞれ称す。尚、第一方向Xと第二方向Yと第三方向Zとは互いに直交する。
内側金型42は、第1内側金型42−1と、第2内側金型42−2と、からなる。第1内側金型42−1と第2内側金型42−2とは、第一方向Xに離間して配置される。第1内側金型42−1及び第2内側金型42−2はそれぞれ、第三方向Zから見て略五角形状の山型に形成されている。第1内側金型42−1は、セットされる平角導線28の軸方向リード側に設けられる金型であり、また、第2内側金型42−2は、セットされる平角導線28の軸方向反リード側に設けられる金型である。
第1内側金型42−1は、凸状に形成された凸型である。第1内側金型42−1は、成形完了後の同芯巻コイル14のリード側コイルエンド部34の内周側の形状を模して形成された加工面46、及び、その同芯巻コイル14のスロット部30,32のリード側コイルエンド部34との境界(肩部)付近の内周側の形状を模して形成された加工面47を有している。
加工面46は、第三方向Zに略直交する方向(略第一方向Xや第二方向Y)に向いた面であって、第1内側金型42−1の、同芯巻コイル14のリード側コイルエンド部34と対向する凸面48に形成されている。加工面46は、同芯巻コイル14のリード側コイルエンド部34すなわち平角導線28の、リード側コイルエンド部34に対応するリード側コイルエンド対応部位の断面短辺側の内周面が接する面である。加工面46は、同芯巻コイル14のリード側コイルエンド部34の断面短辺側の内周面に沿った外形を有している。
加工面47は、第三方向Zに略直交する方向(略第二方向Y)に向いた加工面であって、第1内側金型42−1の、同芯巻コイル14のスロット部30,32と対向するように形成されている。加工面47は、同芯巻コイル14のスロット部30,32すなわち平角導線28の、スロット部30,32に対応するスロット対応部位の断面短辺側の内周面が接する面である。加工面47は、同芯巻コイル14のスロット部30,32の断面短辺側の内周面に沿った外形を有している。
また、第2内側金型42−2は、凸状に形成された凸型である。第2内側金型42−2は、成形完了後の同芯巻コイル14の反リード側コイルエンド部36の内周側の形状を模して形成された加工面50、及び、その同芯巻コイル14のスロット部30,32の反リード側コイルエンド部36との境界(肩部)付近の内周側の形状を模して形成された加工面51を有している。
加工面50は、第三方向Zに略直交する方向(略第一方向Xや第二方向Y)に向いた面であって、第2内側金型42−2の、同芯巻コイル14の反リード側コイルエンド部36と対向する凸面52に形成されている。加工面50は、同芯巻コイル14の反リード側コイルエンド部36すなわち平角導線28の、反リード側コイルエンド部36に対応する反リード側コイルエンド対応部位の断面短辺側の内周面が接する面である。加工面50は、同芯巻コイル14の反リード側コイルエンド部36の断面短辺側の内周面に沿った外形を有している。
加工面51は、第三方向Zに略直交する方向(略第二方向Y)に向いた加工面であって、第2内側金型42−2の、同芯巻コイル14のスロット部30,32と対向するように形成されている。加工面51は、同芯巻コイル14のスロット部30,32すなわち平角導線28の、スロット部30,32に対応するスロット対応部位の断面短辺側の内周面が接する面である。加工面51は、同芯巻コイル14のスロット部30,32の断面短辺側の内周面に沿った外形を有している。
外側金型44は、第1外側金型44−1と、第2外側金型44−2、からなる。第1外側金型44−1と第2外側金型44−2とは、第一方向Xに離間して配置される。第1外側金型44−1は、セットされる平角導線28の軸方向リード側に設けられる金型であり、また、第2外側金型44−2は、セットされる平角導線28の軸方向反リード側に設けられる金型である。
第1外側金型44−1と第2外側金型44−2との第一方向Xの間には、上記の第1内側金型42−1と第2内側金型42−2とが並んで配置される。すなわち、第1外側金型44−1と第1内側金型42−1と第2内側金型42−2と第2外側金型44−2とは、第一方向Xにおいてその順で直列に配置される。第1外側金型44−1と第1内側金型42−1とは第一方向Xに離間して配置され、また、第2外側金型44−2と第2内側金型42−2とは第一方向Xに離間して配置される。
第1外側金型44−1は、第1内側金型42−1と対をなす凹状に形成された凹型である。第1外側金型44−1は、成形完了後の同芯巻コイル14のリード側コイルエンド部34の外周側の形状を模して形成された加工面54、及び、その同芯巻コイル14のスロット部30,32のリード側コイルエンド部34との境界(肩部)付近の外周側の形状を模して形成された加工面55を有している。
加工面54は、第三方向Zに略直交する方向(略第一方向Xや第二方向Y)に向いた面であって、第1外側金型44−1の、同芯巻コイル14のリード側コイルエンド部34と対向する凹面56に形成されている。加工面54は、同芯巻コイル14のリード側コイルエンド部34すなわち平角導線28のリード側コイルエンド対応部位の断面短辺側の外周面が接する面である。加工面54は、同芯巻コイル14のリード側コイルエンド部34の断面短辺側の外周面に沿った外形を有している。
加工面55は、第三方向Zに略直交する方向(略第二方向Y)に向いた加工面であって、第1外側金型44−1の、同芯巻コイル14のスロット部30,32と対向するように形成されている。加工面55は、同芯巻コイル14のスロット部30,32すなわち平角導線28のスロット対応部位の断面短辺側の外周面が接する面である。加工面55は、同芯巻コイル14のスロット部30,32の断面短辺側の外周面に沿った外形を有している。
また、第2外側金型44−2は、第2内側金型42−2と対をなす凹状に形成された凹型である。第2外側金型44−2は、成形完了後の同芯巻コイル14の反リード側コイルエンド部36の外周側の形状を模して形成された加工面58、及び、その同芯巻コイル14のスロット部30,32の反リード側コイルエンド部36との境界(肩部)付近の外周側の形状を模して形成された加工面59を有している。
加工面58は、第三方向Zに略直交する方向(略第一方向Xや第二方向Y)に向いた面であって、第2外側金型44−2の、同芯巻コイル14の反リード側コイルエンド部36と対向する凹面60に形成されている。加工面58は、同芯巻コイル14の反リード側コイルエンド部36すなわち平角導線28の反リード側コイルエンド対応部位の断面短辺側の外周面が接する面である。加工面58は、同芯巻コイル14の反リード側コイルエンド部36の断面短辺側の外周面に沿った外形を有している。
加工面59は、第三方向Zに略直交する方向(略第二方向Y)に向いた加工面であって、第2外側金型44−2の、同芯巻コイル14のスロット部30,32と対向するように形成されている。加工面59は、同芯巻コイル14のスロット部30,32すなわち平角導線28のスロット対応部位の断面短辺側の外周面が接する面である。加工面59は、同芯巻コイル14のスロット部30,32の断面短辺側の外周面に沿った外形を有している。
第1内側金型42−1の加工面46と第1外側金型44−1の加工面54とは、平角導線28のリード側コイルエンド対応部位をエッジワイズ成形するのに適した形状に形成されている。第1内側金型42−1と第1外側金型44−1とは、平角導線28のリード側コイルエンド対応部位をエッジワイズ成形する金型である。また、第2内側金型42−2の加工面50と第2外側金型44−2の加工面58とは、平角導線28の反リード側コイルエンド対応部位をエッジワイズ成形するのに適した形状に形成されている。第2内側金型42−2と第2外側金型44−2とは、平角導線28の反リード側コイルエンド対応部位をエッジワイズ成形する金型である。
第1外側金型44−1は、複数のフィン62を有している。複数のフィン62を有する第1外側金型44−1は、平角導線28のリード側コイルエンド対応部位をクランク成形すると共に円弧成形する金型である。フィン62は、第三方向Zに並んで複数配置されると共に、第二方向Yに二分されている。フィン62は、第二方向Yに分割された第1フィン62−1と第2フィン62−2とからなる。第1フィン62−1と第2フィン62−2との間には、第二方向Yに隙間64が形成されている。第1フィン62−1と第2フィン62−2とは、同数だけ設けられている。
第三方向Zに並んで配置されるフィン62の数(すなわち、第1フィン62−1の数及び第2フィン62−2の数の各々)は、平角導線28のリード側コイルエンド対応部位での導線の積層数よりも“1”だけ多い。例えば、平角導線28の周回巻数が“5”であるとき、すなわち、平角導線28のリード側コイルエンド対応部位での導線の積層数が“4”であるときは、第三方向Zに並んで配置されるフィン62の数、第1フィン62−1の数、及び第2フィン62−2の数はそれぞれ、“5”である。
各第1フィン62−1及び各第2フィン62−2はそれぞれ、略矩形板状に形成されていると共に、円環状のステータコア12の円弧に合わせてその板面に直交する方向(すなわち、第三方向Z)に向けて円弧状に湾曲している。すべての第1フィン62−1は、湾曲する板面が第三方向Zにおいて互いに対向するように配置される。また、すべての第2フィン62−2は、湾曲する板面が第三方向Zにおいて互いに対向するように配置される。
第1外側金型44−1のすべての第1フィン62−1及びすべての第2フィン62−2は、それらの第1フィン62−1同士の隙間及び第2フィン62−2同士の隙間が同芯巻コイル14のリード側コイルエンド部34の積層方向に積層される複数の導線を転写した形状(すなわち、クランク形状)に形成されるように、互いに同芯上に配置される。この第1フィン62−1及び第2フィン62−2の同芯配置は、それらの第1フィン62−1同士の隙間及び第2フィン62−2同士の隙間によって、平角導線28のリード側コイルエンド対応部位を円弧成形するのに適した形状が形成されるように行われる。
また、すべての第1フィン62−1とすべての第2フィン62−2とは、隙間64を介して第二方向Yにおいて互いに斜に対向するように配置される。この第1フィン62−1と第2フィン62−2との斜め配置は、それらの第1フィン62−1と第2フィン62−2との隙間64によって、平角導線28のリード側コイルエンド対応部位をクランク成形するのに適した形状が形成されるように行われる。具体的には、第1フィン62−1と第2フィン62−2との隙間64によって、同芯巻コイル14のリード側コイルエンド部34の第二方向Yの略中央をクランク形状に成形することで両側のスロット部30,32間で0.5段のレーン変更を実施できるように行われる。
各第1フィン62−1及び各第2フィン62−2はそれぞれ、第1外側金型44−1の本体66に取り付け固定される。第1外側金型44−1の本体66には、フィン62を取り付けるためのフィン穴68が形成されている。フィン穴68は、第1フィン62−1及び第2フィン62−2を外部から挿入するための第一方向Xに貫通する挿入穴であり、加工面54が形成される第一方向Xに向いた凹面56に開口している。
フィン穴68は、第1フィン62−1ごと及び第2フィン62−2ごとにそれぞれ設けられている。各フィン穴68はそれぞれ、本体66の、すべての第1フィン62−1及びすべての第2フィン62−2が上記の如く適切に配置される位置に適切な形状で開けられている。例えば、第三方向Zにおいて湾曲するように開けられている。第1外側金型44−1の凹面56において、上記の加工面54は、フィン穴68の間に形成される。
第1外側金型44−1の本体66には、取出穴70,72が形成されている。取出穴70,72は、内側金型42にセットされた平角導線28の両端部28a,28bを挿入可能な第一方向Xに貫通する挿入穴である。平角導線28の両端部28a,28bはそれぞれ、コイルエンド対応部位から略直線状に延びるスロット対応部位と類似形状に形成された、コイルエンド対応部位の位置から略直線状に延びる部位であって、成形完了後は他の同芯巻コイル14又は外部接続端子などのリード線と接続する部位である。尚、これらの両端部28a,8bは、若干だけ湾曲した形状を有するものとしてもよい。
取出穴70,72は、本体66の、平角導線28が内側金型42に適切にセットされている状態でその平角導線28の端部28a,28bの先端を外部に適切に取り出すことが可能な位置に適切な形状(具体的には、平角導線28の断面面積よりも僅かに大きな面積を有する矩形状)に開けられている。取出穴70は、平角導線28の一方側スロット部30側の端部28aを取り出すための穴であり、また、取出穴72は、平角導線28の他方側スロット部32側の端部28bを取り出すための穴である。
第1外側金型44−1の本体66には、また、第1フィン62−1をボルト固定するためのボルト穴74、及び、第2フィン62−2をボルト固定するためのボルト穴76が形成されている。各第1フィン62−1にはそれぞれ、ボルト固定するためのボルト穴78が形成されている。また、各第2フィン62−2にはそれぞれ、ボルト固定するためのボルト穴80が形成されている。
各第1フィン62−1はそれぞれ、第1外側金型44−1の本体66のフィン穴68に挿入された後、その本体66のボルト穴74及び自第1フィン62−1のボルト穴78に挿入されたボルトによって締結されることにより、第1外側金型44−1の本体66に取り付け固定される。また、各第2フィン62−2はそれぞれ、第1外側金型44−1の本体66のフィン穴68に挿入された後、その本体66のボルト穴76及び自第2フィン62−2のボルト穴80に挿入されたボルトによって締結されることにより、第1外側金型44−1の本体66に取り付け固定される。
各第1フィン62−1及び各第2フィン62−2はそれぞれ、第1外側金型44−1の本体66に取り付け固定された場合に、本体66の凹面56すなわち加工面54から第1内側金型42−1側へ向けて突出する。かかる本体66への取り付け固定がなされた場合、各第1フィン62−1及び各第2フィン62−2それぞれの第一方向X側の先端は、第1外側金型44−1の第1内側金型42−1側の端部(すなわち、凹面56及び加工面54の全体の、第1内側金型42−1側の端部)よりもその第1内側金型42−1寄りの前方に位置する。
尚、上記した第1及び第2フィン62−1,62−2の、本体66の凹面56すなわち加工面54からの突出量すなわちその先端の位置は、それらのフィン62の存在によって、エッジワイズ成形の開始時における平角導線28のコイルエンド対応部位の形状を所望のクランク形状及び円弧形状に近づけることができるものであればよい。
各第1フィン62−1それぞれの、第2フィン62−2と隙間64を介して対向する第二方向Y側の先端部、及び、第1内側金型42−1側に面する第一方向X側の先端部はそれぞれ、テーパ状に形成されている。また、各第2フィン62−2それぞれの、第1フィン62−1と隙間64を介して対向する第二方向Y側の先端部、及び、第1内側金型42−1側に面する第一方向X側の先端部はそれぞれ、テーパ状に形成されている。このフィン62のテーパ形状は、平角導線28のリード側コイルエンド対応部位について第三方向Zに向けたクランク成形及び円弧成形を行ううえでその平角導線28の積層方向の各導線をフィン62間の隙間に挿入し易くする機能を有する。
また、第1内側金型42−1には、第一方向Xに貫通する貫通穴82が形成されている。貫通穴82は、第一方向Xと共に第二方向Yにも開口している。貫通穴82は、平角導線28から同芯巻コイル14が成形される過程で、第1外側金型44−1の凹面56から第1内側金型42−1側に向けて突出するフィン62が挿入される逃げ穴である。貫通穴82は、フィン62ごと(第1フィン62−1ごと及び第2フィン62−2ごと)にそれぞれ設けられている。各貫通穴82はそれぞれ、第1内側金型42−1の、第1外側金型44−1に設けられたすべてのフィン62が適切に挿入される位置に適切な形状で開けられている。
第1内側金型42−1は、複数の貫通穴82の存在により、フィン状に形成されたフィン状部83を有している。フィン状部83は、平角導線28の積層方向の段数と同じ数だけ設けられている。第1内側金型42−1の凸面48において、上記の加工面46は、貫通穴82の間に形成される。この加工面46は、第1内側金型42−1に形成されるフィン状部83の、第一方向Xに向いた面である。
更に、第2外側金型44−2は、複数のフィン84を有している。複数のフィン84を有する第2外側金型44−2は、平角導線28の反リード側コイルエンド対応部位をクランク成形すると共に円弧成形する金型である。フィン84は、第三方向Zに並んで複数配置されると共に、第二方向Yに二分されている。フィン84は、第二方向Yに分割された第3フィン84−1と第4フィン84−2とからなる。第3フィン84−1と第4フィン84−2との間には、第二方向Yに隙間86が形成されている。第3フィン84−1と第4フィン84−2とは、同数だけ設けられている。
第三方向Zに並んで配置されるフィン84の数(すなわち、第3フィン84−1の数及び第4フィン84−2の数の各々)は、平角導線28の反リード側コイルエンド対応部位での導線の積層数よりも“1”だけ多い。例えば、平角導線28の周回巻数が“5”であるとき、すなわち、平角導線28の反リード側コイルエンド対応部位での導線の積層数が“5”であるときは、第三方向Zに並んで配置されるフィン84の数、第3フィン84−1の数、及び第4フィン84−2の数はそれぞれ、“6”である。
各第3フィン84−1及び各第4フィン84−2はそれぞれ、略矩形板状に形成されていると共に、円環状のステータコア12の円弧に合わせてその板面に直交する方向(すなわち、第三方向Z)に向けて円弧状に湾曲している。すべての第3フィン84−1は、湾曲する板面が第三方向Zにおいて互いに対向するように配置される。また、すべての第4フィン84−2は、湾曲する板面が第三方向Zにおいて互いに対向するように配置される。
第2外側金型44−2のすべての第3フィン84−1及びすべての第4フィン84−2は、それらの第3フィン84−1同士の隙間及び第4フィン84−2同士の隙間が同芯巻コイル14の反リード側コイルエンド部36の積層方向に積層される複数の導線を転写した形状(すなわち、クランク形状)に形成されるように、互いに同芯上に配置される。この第3フィン84−1及び第4フィン84−2の同芯配置は、それらの第3フィン84−1同士の隙間及び第4フィン84−2同士の隙間によって、平角導線28の反リード側コイルエンド対応部位を円弧成形するのに適した形状が形成されるように行われる。
また、すべての第3フィン84−1とすべての第4フィン84−2とは、隙間86を介して第二方向Yにおいて互いに斜に対向するように配置される。この第3フィン84−1と第4フィン84−2との斜め配置は、それらの第3フィン84−1と第4フィン84−2との隙間86によって、平角導線28の反リード側コイルエンド対応部位をクランク成形するのに適した形状が形成されるように行われる。具体的には、第3フィン84−1と第4フィン84−2との隙間86によって、同芯巻コイル14の反リード側コイルエンド部36の第二方向Yの略中央をクランク形状に成形することで両側のスロット部30,32間で0.5段のレーン変更を実施できるように行われる。
各第3フィン84−1及び各第4フィン84−2はそれぞれ、第2外側金型44−2の本体88に取り付け固定される。第2外側金型44−2の本体88には、フィン84を取り付けるためのフィン穴90が形成されている。フィン穴90は、第3フィン84−1及び第4フィン84−2を外部から挿入するための第一方向Xに貫通する挿入穴であり、加工面58が形成される第一方向Xに向いた凹面60に開口している。
フィン穴90は、第3フィン84−1ごと及び第4フィン84−2ごとにそれぞれ設けられている。各フィン穴90はそれぞれ、本体88の、すべての第3フィン84−1及びすべての第4フィン84−2が上記の如く適切に配置される位置に適切な形状で開けられている。例えば、第三方向Zにおいて湾曲するように開けられている。第2外側金型44−2の凹面60において、上記の加工面58は、フィン穴90の間に形成される。
第2外側金型44−2の本体88には、また、第3フィン84−1をボルト固定するためのボルト穴92、及び、第4フィン84−2をボルト固定するためのボルト穴94が形成されている。各第3フィン84−1にはそれぞれ、ボルト固定するためのボルト穴(図示せず)が形成されている。また、各第4フィン84−2にはそれぞれ、ボルト固定するためのボルト穴(図示せず)が形成されている。
各第3フィン84−1はそれぞれ、第2外側金型44−2の本体88のフィン穴90に挿入された後、その本体88のボルト穴92及び自第3フィン84−1のボルト穴に挿入されたボルトによって締結されることにより、第2外側金型44−2の本体88に取り付け固定される。また、各第4フィン84−2はそれぞれ、第2外側金型44−2の本体88のフィン穴90に挿入された後、その本体88のボルト穴94及び自第4フィン84−2のボルト穴に挿入されたボルトによって締結されることにより、第2外側金型44−2の本体88に取り付け固定される。
各第3フィン84−1及び各第4フィン84−2はそれぞれ、第2外側金型44−2の本体88に取り付け固定された場合に、本体88の凹面60すなわち加工面58から第2内側金型42−2側へ向けて突出する。かかる本体88への取り付け固定がなされた場合、各第3フィン84−1及び各第4フィン84−2それぞれの第一方向X側の先端は、第2外側金型44−2の第2内側金型42−2側の端部(すなわち、凹面60及び加工面58の全体の、第2内側金型42−2側の端部)よりもその第2内側金型42−2寄りの前方に位置する。
尚、上記した第3及び第4フィン84−1,84−2の、本体88の凹面60すなわち加工面58からの突出量すなわちその先端の位置は、それらのフィン84の存在によって、エッジワイズ成形の開始時における平角導線28のコイルエンド対応部位の形状を所望のクランク形状及び円弧形状に近づけることができるものであればよい。
各第3フィン84−1それぞれの、第4フィン84−2と隙間86を介して対向する第二方向Y側の先端部、及び、第2内側金型42−2側に面する第一方向X側の先端部はそれぞれ、テーパ状に形成されている。また、各第4フィン84−2それぞれの、第3フィン84−1と隙間86を介して対向する第二方向Y側の先端部、及び、第2内側金型42−2側に面する第一方向X側の先端部はそれぞれ、テーパ状に形成されている。このフィン84のテーパ形状は、平角導線28の反リード側コイルエンド対応部位について第三方向Zに向けたクランク成形及び円弧成形を行ううえでその平角導線28の積層方向の各導線をフィン84間に挿入し易くする機能を有する。
また、第2内側金型42−2には、第一方向Xに貫通する貫通穴96が形成されている。貫通穴96は、第一方向Xと共に第二方向Yにも開口している。貫通穴96は、平角導線28から同芯巻コイル14が成形される過程で、第2外側金型44−2の凹面60から第2内側金型42−2側に向けて突出するフィン84が挿入される逃げ穴である。貫通穴96は、フィン84ごと(第3フィン84−1ごと及び第4フィン84−2ごと)にそれぞれ設けられている。各貫通穴96はそれぞれ、第2内側金型42−2の、第2外側金型44−2に設けられたすべてのフィン84が適切に挿入される位置に適切な形状で開けられている。
第2内側金型42−2は、複数の貫通穴96の存在により、フィン状に形成されたフィン状部97を有している。フィン状部97は、平角導線28の積層方向の段数と同じ数だけ設けられている。第2内側金型42−2の凸面52において、上記の加工面50は、貫通穴96の間に形成される。この加工面50は、第2内側金型42−2に形成されるフィン状部97の、第一方向Xに向いた面である。
上記の成形装置40において、上記の如く、第1外側金型44−1と第1内側金型42−1と第2内側金型42−2と第2外側金型44−2とは、第一方向Xにおいてその順で直列に配置される。これらの第1外側金型44−1、第1内側金型42−1、第2内側金型42−2、及び第2外側金型44−2はそれぞれ、基台98に対して第一方向Xに向けてストローク移動可能に取り付けられる。
第1外側金型44−1は移動機構100により、第1内側金型42−1は移動機構102により、第2内側金型42−2は移動機構104により、また、第2外側金型44−2は移動機構106により、それぞれ基台98に対して第一方向Xに向けてストローク移動される。各移動機構100,102,104,106はそれぞれ、自己の台座を基台98に対して第一方向Xに向けてスライドさせる機構である。移動機構100,102,104,106にはそれぞれ、マイクロコンピュータを主体に構成されたコントローラ110が電気的に接続されている。
コントローラ110は、成形装置40にセットされた平角導線28を曲げ加工して同芯巻コイル14を成形するうえで必要な動作を成形装置40に実行させる制御装置であって、かかる動作指令を移動機構100,102,104,106に対して行う。尚、かかる動作指令は、平角導線28が成形装置40にセットされた後に所定のスイッチ操作が行われた場合に行われるものとすればよい。各移動機構100,102,104,106はそれぞれ、コントローラ110からの指令に従って金型44−1,42−1,42−2,44−2を基台98に対して第一方向Xに向けてストローク移動させる。
尚、本実施例においては、第1内側金型42−1、第2内側金型42−2、第1外側金型44−1、及び第2外側金型44−2のすべてが移動機構100,102,104,106により第一方向Xに移動されるが、何れかの金型42−1,42−2,44−1,44−2が基台98に対して固定されるものとしてもよい。
成形装置40は、また、基台98に取り付けられる把持部材112,114を備えている。把持部材112,114はそれぞれ、上記の取出穴70,72が形成された第1外側金型44−1に対して第一方向Xの外側に配置されている。把持部材112は、平角導線28の曲げ加工が行われる成形時に、内側金型42にセットされている平角導線28の端部28aの、第1外側金型44−1の取出穴70から突出している先端を把持する部材である。また、把持部材114は、平角導線28の曲げ加工を行う成形時に、内側金型42にセットされている平角導線28の端部28bの、第1外側金型44−1の取出穴72から突出している先端を把持する部材である。
把持部材112,114はそれぞれ、2つの平板112a,112b,114a,114bの面同士を合わせた構造を有している。把持部材112,114それぞれの2つの平板112a,112b,114a,114bは、互いにボルト116,118により締結される。把持部材112,114はそれぞれ、平角導線28の断面長辺側に接触して、平角導線28の両端部28a,28bの先端をその断面長辺側で把持する。各把持部材112,114が平角導線28を把持する把持力は、少なくとも、平角導線28の成形時にその端部28a,28bを基台98又はその把持部材112,114に対して固定できるものであれば十分である。
把持部材112,114はそれぞれ、基台98に、第一方向Xを軸中心として揺動可能に取り付けられている。把持部材112,114はそれぞれ、平角導線28の曲げ加工が行われる成形時、その平角導線28が変形に伴って第一方向Xを軸中心にして回動する際にその回動に追従して揺動する。尚、平板112a,112b,114a,114bの内面には、平角導線28をガイドするガイド溝が設けられてもよい。
本実施例において、平角導線28が成形装置40にセットされる前、第1外側金型44−1及び第2外側金型44−2は、両金型44−1,44−2が互いに第一方向Xに所定の最大距離離間するように位置されると共に、第1内側金型42−1及び第2内側金型42−2は、両金型42−1,42−2が互いに第一方向Xに所定の最小距離離間するように位置される。この際、第1外側金型44−1と第1内側金型42−1との間、及び、第2外側金型44−2と第2内側金型42−2との間にはそれぞれ、第一方向Xに平角導線28をセットするのに必要十分な隙間が形成される。
かかる状態で、まず、略六角形状の平角導線28が内側金型42にセットされる。この際、平角導線28は、第1内側金型42−1及び第2内側金型42−2の外周面側に保持される。また、この際、平角導線28は、第三方向Zの位置が、その平角導線28を内側金型42と外側金型44とで曲げ加工するのに最適なものとなるように保持される。また、この際、平角導線28は、その両端部28a,28bが第1外側金型44−1の取出穴70,72に進入してその取出穴70,72から外部に突出するように保持される。更にこの際、平角導線28は、その取出穴70,72から外部に突出した両端部28a,28bの端が把持部材112,114に把持されることで基台98に対して固定される。
上記の如く平角導線28が内側金型42にセットされると、次に、第1内側金型42−1と第2内側金型42−2とが互いに離間するように第一方向Xに向けてストローク移動されると共に、第1外側金型44−1が第1内側金型42−1に接近するように第一方向Xに向けてストローク移動され、かつ、第2外側金型44−2が第2内側金型42−2に接近するように第一方向Xに向けてストローク移動される。
すなわち、平角導線28のセット後、第1内側金型42−1と第1外側金型44−1とが互いに接近してその平角導線28のリード側コイルエンド対応部位を挟むように第一方向Xに向けてストローク移動され、かつ、第2内側金型42−2と第2外側金型44−2とが互いに接近してその平角導線28の反リード側コイルエンド対応部位を挟むように第一方向Xに向けてストローク移動される。
尚、第1内側金型42−1のストローク移動と第2内側金型42−2のストローク移動とは略同時に行われ、また、第1外側金型44−1のストローク移動と第2外側金型44−2のストローク移動とは略同時に行われる。更に、第1内側金型42−1のストローク移動と第1外側金型44−1のストローク移動とは同期して行われ、また、第2内側金型42−2のストローク移動と第2外側金型44−2のストローク移動とは同期して行われる。
第1外側金型44−1が第1内側金型42−1に接近するように第一方向Xに向けてストローク移動される過程では、内側金型42に保持された平角導線28のリード側コイルエンド対応部位での第三方向Zに並んだ各段の導線が、第1外側金型44−1のフィン62間の隙間に進入する。尚、かかるストローク移動の過程で、第1外側金型44−1のフィン62は、第1内側金型42−1の貫通穴82に挿入される。
上記の如く、各第1及び第2フィン62−1,62−2それぞれの、第2又は第1フィン62−2,62−1と隙間64を介して対向する第二方向Y側の先端部、及び、第1内側金型42−1側に面する第一方向X側の先端部はそれぞれ、テーパ状に形成されている。このため、平角導線28のリード側コイルエンド対応部位での各段の導線は、第1外側金型44−1のフィン62の先端テーパ面によりフィン62間の隙間に滑らかに進入するので、かかる隙間に挿入され易くなっている。
平角導線28のリード側コイルエンド対応部位での各段の導線の、第1外側金型44−1のフィン62間の隙間への進入は、まず、その各段の導線の第二方向Yの略中央が第1フィン62−1と第2フィン62−2との隙間64に進入することにより開始される。そしてその後、その進入は、各段の導線が第二方向Yの略中央から両外側にかけて順にフィン62間の隙間に進入するように行われる。
平角導線28のリード側コイルエンド対応部位での各段の導線は、両側のスロット対応部位間を斜めに繋いで渡ることで一段のレーン変更を行うように形成されている。一方、第1外側金型44−1において、フィン62の配置は、第1フィン62−1と第2フィン62−2との隙間64により、同芯巻コイル14のリード側コイルエンド部34の第二方向Yの略中央をクランク形状に成形することで両側のスロット部30,32間で0.5段のレーン変更を実施できるように行われている。
このため、上記の進入が行われると、まず、平角導線28のリード側コイルエンド対応部位での各段の導線の第二方向Yの略中央が、第1フィン62−1の先端角部と第2フィン62−2の先端角部とにより払いのけられ、第三方向Zに隣り合う第1フィン62−1間の隙間と、第三方向Zに隣り合う第2フィン62−2間の隙間と、を互いに繋ぐように嵌る。この場合、平角導線28のリード側コイルエンド対応部位での各段の導線の第二方向Yの略中央は、第三方向Zに向けて段差が生じるようにクランク形状に曲げ加工される(クランク成形)。
また、各フィン62はそれぞれ、第三方向Zにおいて湾曲しつつ互いに同芯上に配置されるように第1外側金型44−1に取り付け固定される。このため、第1外側金型44−1が第1内側金型42−1に接近するように第一方向Xに向けてストローク移動されることで上記の進入が進行すると、平角導線28のリード側コイルエンド対応部位の全体が、第三方向Zに隣り合う第1フィン62−1間の隙間、及び、第三方向Zに隣り合う第2フィン62−2間の隙間に嵌ることで、円環状のステータコア12の円弧に合わせて湾曲するように円弧形状に曲げ加工される(円弧成形)。
更に、第1内側金型42−1の加工面46と第1外側金型44−1の加工面54とは、平角導線28のリード側コイルエンド対応部位をエッジワイズ成形するのに適した形状に形成されている。このため、上記の進入が、平角導線28のリード側コイルエンド対応部位が第1内側金型42−1の凸面48及び第1外側金型44−1の凹面56の双方に接する状態まで進行した後に更に進行すると、その平角導線28のリード側コイルエンド対応部位の断面短辺側が第1内側金型42−1の加工面46と第1外側金型44−1の加工面54とにより第一方向Xに押圧されて挟持される(図10)。この場合、平角導線28のリード側コイルエンド対応部位の全体は、第三方向Zに直交するXY面内において屈曲形状に曲げ加工される(エッジワイズ成形)。
また同様に、第2外側金型44−2が第2内側金型42−2に接近するように第一方向Xに向けてストローク移動される過程では、内側金型42に保持された平角導線28の反リード側コイルエンド対応部位での第三方向Zに並んだ各段の導線が、第2外側金型44−2のフィン84間の隙間に進入する。尚、かかるストローク移動の過程で、第2外側金型44−2のフィン84は、第2内側金型42−2の貫通穴96に挿入される。
上記の如く、各第3及び第4フィン84−1,84−2それぞれの、第4又は第3フィン84−2,84−1と隙間86を介して対向する第二方向Y側の先端部、及び、第2内側金型42−2側に面する第一方向X側の先端部はそれぞれ、テーパ状に形成されている。このため、平角導線28の反リード側コイルエンド対応部位での各段の導線は、第2外側金型44−2のフィン84の先端テーパ面によりフィン84間の隙間に滑らかに進入するので、かかる隙間に挿入され易くなっている。
平角導線28の反リード側コイルエンド対応部位での各段の導線の、第2外側金型44−2のフィン84間の隙間への進入は、まず、その各段の導線の第二方向Yの略中央が第3フィン84−1と第4フィン84−2との隙間86に進入することにより開始される。そしてその後、その進入は、各段の導線が第二方向Yの略中央から両外側にかけて順にフィン84間の隙間に進入するように行われる。
平角導線28の反リード側コイルエンド対応部位での各段の導線は、両側のスロット対応部位間と同じ平面上に形成されている。一方、第2外側金型44−2において、フィン84の配置は、第3フィン84−1と第4フィン84−2との隙間86により、同芯巻コイル14の反リード側コイルエンド部36の第二方向Yの略中央をクランク形状に成形することで両側のスロット部30,32間で0.5段のレーン変更を実施できるように行われている。
このため、上記の進入が行われると、まず、平角導線28の反リード側コイルエンド対応部位での各段の導線の第二方向Yの略中央が、第3フィン84−1の先端角部と第4フィン84−2の先端角部とにより払いのけられ、第三方向Zに隣り合う第3フィン84−1間の隙間と、第三方向Zに隣り合う第4フィン84−2間の隙間と、を互いに繋ぐように嵌る。この場合、平角導線28の反リード側コイルエンド対応部位での各段の導線の第二方向Yの略中央は、第三方向Zに向けて段差が生じるようにクランク形状に曲げ加工される(クランク成形)。
また、各フィン84はそれぞれ、第三方向Zにおいて湾曲しつつ互いに同芯上に配置されるように第2外側金型44−2に取り付け固定される。このため、第2外側金型44−2が第2内側金型42−2に接近するように第一方向Xに向けてストローク移動されることで上記の進入が進行すると、平角導線28の反リード側コイルエンド対応部位の全体が、第三方向Zに隣り合う第3フィン84−1間の隙間、及び、第三方向Zに隣り合う第4フィン84−2間の隙間に嵌ることで、円環状のステータコア12の円弧に合わせて湾曲するように円弧形状に曲げ加工される(円弧成形)。
更に、第2内側金型42−2の加工面50と第2外側金型44−2の加工面58とは、平角導線28の反リード側コイルエンド対応部位をエッジワイズ成形するのに適した形状に形成されている。このため、上記の進入が、平角導線28の反リード側コイルエンド対応部位が第2内側金型42−2の凸面52及び第2外側金型44−2の凹面60の双方に接する状態まで進行した後に更に進行すると、その平角導線28の反リード側コイルエンド対応部位の断面短辺側が第2内側金型42−2の加工面50と第2外側金型44−2の加工面58とにより第一方向Xに押圧されて挟持される(図10)。この場合、平角導線28の反リード側コイルエンド対応部位の全体は、第三方向Zに直交するXY面内において屈曲形状に曲げ加工される(エッジワイズ成形)。
上記の如き平角導線28のリード側コイルエンド対応部位及び反リード側コイルエンド対応部位のエッジワイズ成形が共に完了すると、次に、第1外側金型44−1が第1内側金型42−1から離間するように第一方向Xに向けてストローク移動され、かつ、第2外側金型44−2が第2内側金型42−2から離間するように第一方向Xに向けてストローク移動されると共に、第1内側金型42−1と第2内側金型42−2とが互いに接近するように第一方向Xに向けてストローク移動される。尚、第1外側金型44−1のストローク移動と第2外側金型44−2のストローク移動とは、略同時に行われるものとすればよい。
かかるストローク移動がなされると、コイルエンド対応部位に、第三方向Zへのクランク形状の曲げ加工、第三方向Zへの円弧形状の曲げ加工、及び、第三方向Zに直交するXY平面内における屈曲形状の曲げ加工がそれぞれ施された平角導線28に対する、第1外側金型44−1及び第2外側金型44−2の内周面側への保持が解除されると共に、第1内側金型42−1及び第2内側金型42−2の外周面側への保持が解除される。
そして、第1及び第2外側金型44−1,44−2並びに第1及び第2内側金型42−1,42−2のストローク移動が完了した後、把持部材112,114による平角導線28の両端部28a,28bの先端への把持が解除される。ここで、把持部材112,114による把持を、第1及び第2外側金型44−1,44−2による保持が解除されるまで維持することにより、第1及び第2外側金型44−1,44−2による保持解除時にフィン62,84との摩擦により成形後の平角導線28が金型42,44に引っ張られることに起因した成形後の平角導線28の変形を防止することができる。その後、成形完了後の同芯巻コイル14の取り出しが可能となる。
このように、本実施例においては、成形装置40を構成する内側金型42と外側金型44とをストローク移動させることで、複数の導線が積層された略六角形状の平角導線28のコイルエンド対応部位に対してクランク成形、円弧成形、及びエッジワイズ成形を実施することができ、その結果として、複数の導線が積層された、コイルエンド部34,36が複数の相異なる非直線形状に形成された略六角形状の同芯巻コイル14を成形することができる。
かかる構成においては、略六角形状の平角導線28から略六角形状の同芯巻コイル14のコイルエンド部34,36を複数の相異なる非直線形状に成形するうえで、成形装置40の内側金型42及び外側金型44を第一方向Xに向けて一ストローク移動させることとすれば十分である。また、同芯巻コイル14のコイルエンド部34,36の積層方向各段それぞれの導線を略同時に複数の相異なる非直線形状に成形することができると共に、それらの各導線それぞれを複数の相異なる非直線形状に成形するうえで、成形装置40の内側金型42及び外側金型44を第一方向Xに向けて一ストローク移動させることとすれば十分である。
すなわち、成形装置40の内側金型42及び外側金型44を第一方向Xに向けて一ストローク移動させる一工程で、略六角形状の平角導線28のコイルエンド対応部位の積層方向各段それぞれの導線を一括して曲げ加工することで、複数の導線が積層された略六角形状の同芯巻コイル14のコイルエンド部34,36の複数の相異なる非直線形状の成形を実現することができる。
この点、本実施例の成形装置40による成形手法によれば、略六角形状の平角導線28からコイルエンド部34,36が複数の相異なる非直線形状に形成された略六角形状の同芯巻コイル14を成形するのに、それら各非直線形状(具体的には、クランク状、円弧状、及び屈曲状)それぞれを成形するための金型や治具を別個独立して用意することは不要であり、複数の工程を設けること及び工程間の搬送設備などを別個設けることは不要である。
このため、本実施例によれば、同芯巻コイル14のコイルエンド部34,36を複数の相異なる非直線形状に成形するうえで、金型や治具などの設備の数や費用が増大するのを防止することができ、設備の設置スペースが増大するのを防止することができる。従って、本実施例によれば、コイルエンド部34,36が複数の相異なる非直線形状に形成される同芯巻コイル14の成形を簡易な構成で実現することができる。
また、本実施例によれば、同芯巻コイル14のコイルエンド部34,36の、複数の相異なる非直線形状それぞれへの成形を略同時に行うことができるので、略六角形状の平角導線28からコイルエンド部34,36が複数の相異なる非直線形状に形成される同芯巻コイル14を成形するうえで、成形対象の平角導線28の加工時間を短縮することができる。
また、本実施例の成形装置40による成形手法によれば、複数巻数周回された略六角形状の平角導線28から、複数の導線が積層された、コイルエンド部34,36が複数の相異なる非直線形状に形成された略六角形状の同芯巻コイル14を成形するのに、積層方向各段の導線を一つずつ曲げ加工することは不要である。このため、複数の導線が積層される同芯巻コイル14を成形するうえで、成形対象の平角導線28の加工時間を短縮することができる。
更に、本実施例の成形装置40による成形手法によれば、同芯巻コイル14の両コイルエンド部34,36それぞれの、複数の相異なる非直線形状への成形を略同時に行うことができる。このため、同芯巻コイル14の両コイルエンド部34,36それぞれを複数の相異なる非直線形状に成形するうえで、成形対象の平角導線28の加工時間を短縮することができると共に、両コイルエンド部34,36の成形が別々のタイミングで行われることに伴う両コイルエンド部34,36を結ぶスロット部30,32などの変形を抑えることができる。
このように、本実施例によれば、複数の導線が積層されかつコイルエンド部34,36が複数の相異なる非直線形状に形成される略六角形状の同芯巻コイル14を成形するうえで、成形対象の平角導線28の加工時間を大幅に短縮することができる。従って、かかる同芯巻コイル14の成形を短時間で行うことができ、同芯巻コイル14の生産性を向上させることができる。
また、本実施例によれば、略六角形状の平角導線28からコイルエンド部34,36が複数の相異なる非直線形状に形成された略六角形状の同芯巻コイル14を成形する過程において、成形対象である平角導線28の、金型や治具からの着脱を、複数の相異なる非直線形状それぞれの成形工程間で繰り返すことは不要である。このため、成形対象の平角導線28に、金型や治具からの着脱の繰り返しに起因して傷が付き易くなるのを防止することができ、その結果として、同芯巻コイル14の品質低下を抑止することができる。
また、本実施例においては、平角導線28のコイルエンド対応部位での各段の導線の、外側金型44のフィン62間及びフィン84間への進入は、まず、その各段の導線の第二方向Yの略中央がフィン62の隙間64及びフィン84の隙間86に進入することにより開始される。そしてその後、その進入は、第二方向Yの略中央から両外側にかけて順にフィン62間の隙間及びフィン84間の隙間に進入するように行われる。
かかる構成においては、平角導線28のコイルエンド対応部位の曲げ加工が、そのコイルエンド対応部位の第二方向Yの中央側から両外側に向けて進行する。このため、本実施例によれば、上記した平角導線28の曲げ加工がコイルエンド対応部位の第二方向Yの両外側から中央側に向けて進行する構成と異なり、平角導線28のコイルエンド対応部位の第二方向Yの略中央に所望のクランク形状を形成するうえで余分な導線が集まるのを防止することができる。従って、同芯巻コイル14のコイルエンド部34,36を複数の相異なる非直線形状に成形するうえでその成形精度を向上させることができる。
また、本実施例において、同芯巻コイル14のコイルエンド部34,36のエッジワイズ成形は、クランク成形及び円弧成形が行われた後に行われ、積層方向各段の平角導線28がフィン62,84間に挟まれた状態で行われる。この点、エッジワイズ成形時に、特にクランク成形及び円弧成形が完了したコイル部位が変形するのを抑えることができるので、同芯巻コイル14の成形を精度良く行うことができる。
また、本実施例においては、成形装置40の内側金型42及び外側金型44が一ストローク移動されることで略六角形状の平角導線28から略六角形状の同芯巻コイル14が成形される過程で、まず、平角導線28のコイルエンド対応部位での各段の導線の第二方向Yの略中央が外側金型44のフィン62−1とフィン62−2との隙間64及びフィン84−1とフィン84−2との隙間86に嵌ることにより、そのコイルエンド対応部位の第二方向Yの略中央が第三方向Zに向けて段差が生じるようにクランク形状に曲げ加工されるクランク成形が行われる。
そして、上記のクランク成形が開始された後、内側金型42及び外側金型44のストローク移動の進行によってコイルエンド対応部位の各段の導線が第二方向Yの略中央から両外側にかけて順にフィン62間の隙間及びフィン84間の隙間に進入して嵌ることにより、そのコイルエンド対応部位の全体が円環状のステータコア12の円弧に合わせて第三方向Zに向けて湾曲するように円弧形状に曲げ加工される円弧成形が行われる。
次に、その円弧成形が開始された後、内側金型42及び外側金型44のストローク移動の進行によってコイルエンド対応部位の断面短辺側が内側金型42及び外側金型44の加工面46,50,54,58により挟持されることにより、そのコイルエンド対応部位の全体が第三方向Zに直交するXY平面内において屈曲形状に曲げ加工されるエッジワイズ成形が行われる。
本実施例において、外側金型44に取り付け固定されたフィン62,84それぞれの第一方向X側の先端は、その外側金型44の、内側金型42側の端部(すなわち、凹面56,60及び加工面54,58の全体の内側金型42側の端部)よりもその内側金型42寄りの前方に位置する。かかる構造によれば、同芯巻コイル14のコイルエンド部34,36のクランク成形及び円弧成形それぞれの開始タイミングとエッジワイズ成形の開始タイミングとの差を広げること、すなわち、クランク成形及び円弧成形それぞれの開始からエッジワイズ成形の開始までの時間を稼ぐことができる。このため、本実施例によれば、エッジワイズ成形の開始までにクランク成形及び円弧成形の工程をより進行させることができ、エッジワイズ成形の開始時における平角導線28のコイルエンド対応部位の形状を所望のクランク形状及び円弧形状により近づけることができる。
また、本実施例において、同芯巻コイル14のコイルエンド部34,36のエッジワイズ成形は、クランク成形及び円弧成形それぞれが開始された後かつそれらのクランク成形及び円弧成形が共に完了した以後に開始される。具体的には、平角導線28のコイルエンド対応部位のクランク成形及び円弧成形によってその平角導線28の両側のスロット対応部位間の距離(幅)が成形完了後の同芯巻コイル14の両側のスロット部30,32間の距離(幅)に略一致した以後に、その平角導線28のコイルエンド対応部位が外側金型44の凹面56,60の加工面54,58に接触されて両加工面54,58の挟持によるエッジワイズ成形が開始される。
かかる構成によれば、平角導線28のコイルエンド対応部位が外側金型44の凹面56,60の加工面54,58に接触されてエッジワイズ成形が開始されるときの平角導線28の両側のスロット対応部位間の距離(幅)を、成形開始前の平角導線28の両側のスロット対応部位間の距離(幅)に対してできるだけ小さくすること、具体的には、成形完了後の同芯巻コイル14の両側のスロット部30,32間の距離(幅)に略一致させることができる。
外側金型44の凹部は、成形完了後の同芯巻コイル14のコイルエンド部34,36及びステータスロットに収容される両側のスロット部30,32の形状を模した横幅を有するように(すなわち、凹面56,60の第二方向Yの両側壁間の距離が成形完了後の両側のスロット部30,32の外側端同士の離間する距離に略等しくなるように)形成されている。
従って、本実施例によれば、略六角形状の平角導線28から略六角形状の同芯巻コイル14が成形される過程で、平角導線28が外側金型44の凹部に嵌るときに、その平角導線28のコイルエンド対応部位と両側のスロット部との境界付近の肩部の外周側の断面短辺側が、外側金型44の凹面56,60の側壁や角部に接触し易くなるのを防止することができ、その平角導線28の肩部の外周側と外側金型44とのが過大な力で接触するのを抑制することができる。このため、本実施例によれば、平角導線28から同芯巻コイル14への成形中に、外側金型44との接触に起因した平角導線28の肩部の皮膜剥がれや損傷を防止することができる。
更に、本実施例においては、平角導線28が外側金型44及び内側金型42を用いて曲げ加工される成形時、その平角導線28の両端部28a,28bそれぞれの先端が把持部材112,114により把持されることで、その両端部28a,28bが基台98に対して固定される。この際、平角導線28の両端部28a,28bはそれぞれ、成形中にストローク移動される外側金型44及び内側金型42から独立して把持・固定される。
かかる構造においては、平角導線28のコイルエンド対応部位から両端までの両端部28a,28bがその平角導線28の成形中にコイルエンド対応部位の曲げ加工に伴ってその曲げ変形部を基点にして連れ動くことは防止される。このため、本実施例によれば、平角導線28の両端部28a,28bの上記連れ動きに起因するその両端部28a,28bと金型42,44との接触を回避することができるので、その両端部28a,28bの被膜剥がれや損傷を防止することができる。
また、本実施例において、平角導線28は、成形時、第1外側金型44−1の取出穴70,72から外部に突出した両端部28a,28bの端が把持部材112,114に把持されることで基台98に対して固定される。把持部材112,114は、平角導線28を把持した状態で基台98に対して第一方向Xを軸中心にして揺動可能であり、その平角導線28がその曲げ加工が行われる成形時(特に、クランク成形後に円弧成形及びエッジワイズ成形の曲げ加工が進行する際)にその曲げ変形に伴って第一方向Xを軸中心にして回動する際にその回動に追従して揺動する。
このため、本実施例によれば、同芯巻コイル14の成形が完了したときにその各スロット部30,32の成形形状が所望形状に比較して第一方向Xを軸中心にして捻じれたものとなるのを防止することができ、平角導線28から同芯巻コイル14への成形を精度よく行うことができる。
また、本実施例において、把持部材112,114による平角導線28の両端部28a,28bの把持は、その両端部28a,28bをそれぞれ断面長辺側で把持することにより実現される。かかる構造においては、把持部材112,114による平角導線28の両端部28a,28bの単位長さ当たりの把持面積を、断面短辺側で把持する構成と比較して大きくすることができる。従って、本実施例によれば、把持部材112,114による平角導線28の両端部28a,28bの把持を、断面短辺側で把持する構成と比較して安定して行うことができ、平角導線28から同芯巻コイル14への成形時におけるその両端部28a,28bの上記した連れ動きの防止を確実に確保することができる。
尚、上記の実施例においては、内側金型42及び外側金型44が特許請求の範囲に記載した「金型」に、平角導線28の、同芯巻コイル14のコイルエンド部34,36に対応するコイルエンド対応部位が特許請求の範囲に記載した「対応部位」に、移動機構100,102,104,106が特許請求の範囲に記載した「金型移動機構」に、それぞれ相当している。
ところで、上記の実施例においては、略六角形状の平角導線28からコイルエンド部34,36が複数の相異なる非直線形状に形成された略六角形状の同芯巻コイル14を成形する過程で、第1内側金型42−1と第1外側金型44−1とをそれぞれ、互いに接近させてその平角導線28のリード側コイルエンド対応部位を第一方向Xにおいて(内外で)挟むように第一方向X(通常方向)に向けてストローク移動させ、かつ、第2内側金型42−2と第2外側金型44−2とをそれぞれ、互いに接近させてその平角導線28の反リード側コイルエンド対応部位を第一方向Xにおいて(内外で)挟むように第一方向X(通常方向)に向けてストローク移動させる。また、第1外側金型44−1と第2外側金型44−2とを略同時にストローク移動させる。
上記の過程において、第1外側金型44−1と第2外側金型44−2とは、移動機構100,106により、互いに接近するように第一方向Xの通常方向にストローク移動される。かかるストローク移動がなされると、平角導線28の両側のコイルエンド対応部位が、第1外側金型44−1に取り付けられたフィン62間及び第2外側金型44−2に取り付けられたフィン84間に嵌って曲げ加工されることで、平角導線28の両側のコイルエンド対応部位それぞれに対して、各段の導線の第二方向Yの略中央のクランク成形が行われると共に、円弧成形が行われる。
上記の如くフィン62,84を用いたクランク成形及び円弧成形の際、平角導線28の両側のコイルエンド対応部位は、外側のフィンとの摩擦により、互いに接近するように第一方向Xの内側に向けて押圧される。このように平角導線28の両側のコイルエンド対応部位の押圧がなされると、その平角導線28の両側のコイルエンド対応部位に挟まれたスロット対応部位が第二方向Yに変形して膨らむおそれがある。
これに対して、上記の実施例においては、移動機構100,106により第1外側金型44−1と第2外側金型44−2とが互いに接近するように第一方向Xの内側に向けてストローク移動されると共に、略同時に、移動機構102,104により第1内側金型42−1と第2内側金型42−2とが互いに離間するように第一方向Xの外側に向けてストローク移動される。
外側金型44−1,44−2同士が接近するようにストローク移動される際に内側金型42−1,42−2同士が離間するようにストローク移動されれば、その平角導線28の両側のコイルエンド対応部位(特に、その第二方向Yの略中央)やスロット対応部位(特に、コイルエンド対応部位との境界付近)が内側金型42−1,42−2の加工面46,47,50,51に接触しながらその平角導線28の両側のコイルエンド対応部位が互いに離間するように第一方向Xの外側に引き伸ばされる。このため、かかる構成によれば、クランク成形時や円弧成形時に平角導線28の両側のコイルエンド対応部位に挟まれたスロット対応部位が第二方向Yに変形して膨らむのを防止することができる。
ここで、断面矩形状の平角導線28は、円弧成形開始前は、各段導線の積層方向に向けて湾曲していないので、両側のスロット対応部位の各段の導線が第二方向Yに対して水平に保たれたものであるが、円弧成形開始後は、各段導線の積層方向に向けて湾曲するので、両側のスロット対応部位の各段の導線が第二方向Yに対して傾いたものとなる。すなわち、断面矩形状の平角導線28が円弧成形されると、その平角導線28は、両側のスロット対応部位の各段の導線が第二方向Yに対して水平に保たれた状態から、第三方向Zに若干移動すると共に傾いた状態へ変形する。
しかし、平角導線28の円弧成形の過程で、その開始から完了まで、内側金型42−1,42−2が互いに離間するようにすなわち対をなす外側金型44−1,44−2に接近するように外側に向けてストローク移動されることが継続するものとすると、以下の不都合が生ずる。具体的には、平角導線28の上記した円弧成形による変形が、平角導線28の両側のコイルエンド対応部位及びスロット対応部位が内側金型42−1,42−2の加工面46,47,50,51に接触しながら第一方向Xの外側に引き伸ばされつつ進行する。このため、その変形中に平角導線28の内周側が、内側金型42−1,42−2の加工面46,47,50,51(特に、平角導線28のコイルエンド対応部位とスロット対応部位との境界)付近に形成された角部(すなわち、フィン状部83,97の角部)に対して、第三方向Zに相対移動して擦ることで、平角導線28の損傷や皮膜剥がれが発生するおそれがある。
そこで、本変形例の成形装置40においては、内側金型42−1,42−2が互いに離間するようなすなわち対をなす外側金型44−1,44−2に接近するようなストローク移動が開始されて平角導線28の円弧成形が開始されてから完了するまでの間の中途タイミングで、それらの内側金型42−1,42−2が互いに接近するようなすなわち対をなす外側金型44−1,44−2から離間するような、通常方向とは反対方向のストローク移動(後退移動)が行われる。尚、上記の如き内側金型42−1,42−2の通常方向とは反対方向のストローク移動が行われるときにも、外側金型44−1,44−2の互いに接近するような第一方向Xへのストローク移動は通常どおり継続されるものとすればよい。
上記した反対方向のストローク移動の移動量は、少なくとも内側金型42−1,42−2と平角導線28との接触が解消されるものであれば十分である。また、上記した反対方向のストローク移動が開始される中途タイミングは、平角導線28の両側のコイルエンド対応部位に挟まれたスロット対応部位が第二方向Yに変形して膨らむのを防止した後、平角導線28が両側のスロット対応部位の各段の導線が第二方向Yに対して水平に保たれた状態から傾いた状態へ変形するタイミングであればよく、更に好ましくは、その平角導線28の変形が最も生じ易いタイミングであるのがよい。
かかる変形例の構成においては、円弧成形時、平角導線28が両側のスロット対応部位の各段の導線が第二方向Yに対して水平に保たれた状態から第三方向Zに移動して傾いた状態へ変形する直前に、その平角導線28の内周側が内側金型42−1,42−2の加工面46,47,50,51付近の角部に対して接触していても、その変形(円弧成形)が行われるときに、平角導線28の内周側と内側金型42−1,42−2の加工面46,47,50,51とを互いに離すことができ、平角導線28の内周側が内側金型42−1,42−2の加工面46,47,50,51付近の角部に対して接触して擦るのを回避させることができる。従って、この変形例の構成によれば、平角導線28の円弧成形時に、内側金型42−1,42−2の角部に擦ることに起因した平角導線28の損傷や皮膜剥がれを防止することができる。
尚、上記した反対方向のストローク移動は一時的なものであればよい。この場合は、その反対方向のストローク移動が終了した後に、再度、内側金型42−1,42−2が互いに離間するようなすなわち対をなす外側金型44−1,44−2に接近するような通常方向のストローク移動が行われるものとすればよい。円弧成形において平角導線28が両側のスロット対応部位の各段の導線が第二方向Yに対して水平に保たれた状態から傾いた状態へ変形した後或いはその変形が略完了した後、内側金型42−1,42−2の互いに離間するようなすなわち対をなす外側金型44−1,44−2に接近するような通常方向のストローク移動が再開されれば、平角導線28と内側金型42−1,42−2とが接触することとなるが、その後はその平角導線28に円弧成形に伴う変形はほとんど発生しないので、平角導線28の損傷や皮膜剥がれを防止しつつ、その後のエッジワイズ成形などを適切に行うことが可能となる。
また、上記の実施例においては、成形対象としての平角導線28を把持する把持部材112,114をそれぞれ第1外側金型44−1の第一方向Xの外側に配置し、それらの把持部材112,114による平角導線28の把持をその平角導線28の両端部28a,28bの先端で行うこととしている。しかし、本発明はこれに限定されるものではなく、図12に示す如く、成形対象としての平角導線28を把持する把持部材120,122をそれぞれ第1内側金型42−1と第2内側金型42−2との間に配置し、それらの把持部材120,122により平角導線28のコイルエンド対応部位から略直線状に延びるスロット対応部位を把持することとしてもよい。この場合も、把持部材120,122はそれぞれ、平角導線28の端部28a,28bを、成形中にストローク移動される外側金型44及び内側金型42から独立して把持・固定する。
尚、把持部材120,122による平角導線28の端部28a,28bの把持は、第1及び第2外側金型44−1,44−2による保持が解除されるまで維持されるものとし、その保持解除後に解除されるものとすればよい。かかる構成によれば、成形後の平角導線28の第1及び第2外側金型44−1,44−2による保持解除時にフィン62,84との摩擦によりその成形後の平角導線28が金型42,44に引っ張られることに起因した成形後の平角導線28の変形を防止することができる。
尚、上記の変形例において、把持部材120,122はそれぞれ、平角導線28の各段のスロット対応部位を纏めて把持するものとしてもよいし、また、平角導線28の両端に繋がるスロット対応部位のみを把持するものとしてもよい。また、把持部材120,122がそれぞれ平角導線28の各段のスロット対応部位を纏めて把持する構造では、把持部材120,122を、2つの板部材120a,120b,122a,122bの第二方向Yに向いた面同士を合わせて構成されるものとし、各把持部材120,122の2つの板部材120a,120b,122a,122bのうちの一方の第二方向Yに向いた面に、平角導線28の各段のスロット対応部位を収容可能な溝を複数形成するものとしてもよい。尚、この各溝はそれぞれ、平角導線28の断面面積よりも僅かに大きな断面面積を有する矩形状に形成されるものとしてもよい。また、各把持部材120,122の2つの板部材120a,120b,122a,122bを互いにボルト124,126により締結することとしてもよい。
更に、上記の実施例においては、把持部材112,114それぞれを、2つの平板112a,112b,114a,114bの面同士を合わせて互いにボルト締結することにより、平角導線28を把持することとしている。しかし、本発明はこれに限定されるものではなく、2つの平板112a,112b,114a,114bを油圧やエア圧,電気モータなどで変位させることにより、平角導線28を把持することとしてもよい。尚、この変形例においては、少なくとも平角導線28から同芯巻コイル14への成形開始から成形完了までの間継続して平角導線28を把持することとすればよい。