JP6201914B2 - 溶銑の予備処理方法 - Google Patents

溶銑の予備処理方法 Download PDF

Info

Publication number
JP6201914B2
JP6201914B2 JP2014133492A JP2014133492A JP6201914B2 JP 6201914 B2 JP6201914 B2 JP 6201914B2 JP 2014133492 A JP2014133492 A JP 2014133492A JP 2014133492 A JP2014133492 A JP 2014133492A JP 6201914 B2 JP6201914 B2 JP 6201914B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
dephosphorization
hot metal
basicity
agent
treatment
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Active
Application number
JP2014133492A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2016011441A (ja
Inventor
憲治 中瀬
憲治 中瀬
内田 祐一
祐一 内田
奥山 悟郎
悟郎 奥山
壮平 高垣
壮平 高垣
上野 智之
智之 上野
横山 英樹
英樹 横山
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
JFE Steel Corp
Original Assignee
JFE Steel Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by JFE Steel Corp filed Critical JFE Steel Corp
Priority to JP2014133492A priority Critical patent/JP6201914B2/ja
Publication of JP2016011441A publication Critical patent/JP2016011441A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP6201914B2 publication Critical patent/JP6201914B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Images

Landscapes

  • Refinement Of Pig-Iron, Manufacture Of Cast Iron, And Steel Manufacture Other Than In Revolving Furnaces (AREA)

Description

本発明は、混銑車(トピードカー)または溶銑鍋に収容された溶銑に、インジェクションランスを介して、酸素源(酸化鉄など)及び石灰源(生石灰など)を含有する脱燐剤を吹き込んで、溶銑の脱燐処理を行う溶銑の予備処理方法に関する。
鉄鋼材料の精錬プロセスにおいて、転炉での負荷低減、製鋼スラグ発生量の低減、製鋼コストの削減の観点から、溶銑の転炉での脱炭処理の前工程として、溶銑に脱燐処理を施す溶銑予備処理が行われている。この溶銑予備処理は、転炉、溶銑鍋、混銑車に収容された溶銑に、酸化鉄や酸素ガスなどの酸素源と、生石灰や転炉スラグなどの石灰源とを供給して行われる。具体的には、酸素源によって溶銑中の燐(P)を酸化し、生成する燐酸化物(P25)を石灰源中に吸収することによって行われている。溶銑が珪素(Si)を含有する場合には、この珪素も酸素源によって酸化され、脱珪反応が脱燐反応に先行して起こる。溶銑予備処理で使用される酸化鉄や鉄鉱石などの固体の酸素源を固体酸素源と呼び、酸素ガスや空気などの気体の酸素源を気体酸素源と呼んでいる。
混銑車や溶銑鍋で行われる溶銑予備処理では、固体酸素源や石灰源は、一般的に、溶銑中に浸漬させたインジェクションランスを介して搬送用ガスとともに溶銑中に吹き込み添加されている。その際、搬送用ガスとして、空気や酸素ガスなどの気体酸素源を使用することもある。
この溶銑予備処理において、酸素源や石灰源の組成、配合、吹き込み量を調整することによって、溶銑予備処理の効率を向上させる多数の方法が提案されている。
例えば、特許文献1には、混銑車内の溶銑に先ず脱硫処理を施して混銑車内にスラグを形成させ、次いで、前記スラグの塩基度(質量%CaO/質量%SiO2)を1.8以上に維持しつつ、「吹き込み塩基度=(吹き込み時石灰系フラックス中のCaO)/[(吹き込み時石灰系フラックス中のSiO2)+(吹き込み時溶銑中珪素の酸化によって生じたSiO2)]」なる式で定義される吹き込み塩基度を2.5以下として、酸素源及び石灰系フラックスを溶銑中に吹き込んで脱燐処理する溶銑の予備処理方法が提案されている。特許文献1の表1には、鉄鉱石の焼結鉱と生石灰とからなる脱燐剤が記載されており、脱燐剤中の生石灰の配合比率は、9.5質量%〜23.0質量%となっている。
特許文献2には、溶銑トンあたり6〜150kgの転炉スラグ(溶銑の脱炭処理時に生成するスラグ)と、溶銑トンあたり10〜40kgの酸素相当分の酸化鉄または酸化性ガスもしくはその両方と、溶銑トンあたり0〜15kgの蛍石またはソーダ灰の1種以上とを、溶銑に供給し、溶銑を攪拌して脱燐処理する方法が提案されている。特許文献2によれば、脱燐処理の石灰源として転炉スラグを利用することで、転炉スラグの処理と生石灰の削減を両立することができるとしている。
また、特許文献3には、CaO及び酸化鉄を含有する原料を脱燐剤として利用して溶銑を脱燐処理する方法において、前記原料におけるカルシウム・フェライトの比率が15質量%以上である原料を用いる溶銑の予備処理方法が提案されている。
特開2003−160807号公報 特開昭50−153712号公報 特開2003−3207号公報
しかしながら、上記従来技術には以下の問題がある。
即ち、特許文献1では、脱燐処理中に、溶銑上に存在するスラグの塩基度を1.8以上に維持する必要があることから、石灰源の添加量が多くなり、脱燐処理コストが増大するという問題がある。実際、特許文献1に記載される脱燐剤はSiO2源を含有しておらず、脱燐剤の生石灰の配合比率は上記のように9.5質量%以上の高配合比率である。
特許文献2では、転炉スラグを石灰源として利用しており、転炉スラグにはCaO分以外にMgO、Al23などの脈石分が含まれていることから脱燐処理中のスラグ生成量が多くなり、これにより、スラグのスロッピング(スラグ噴出)が助長され、操業トラブルの原因となる。また、必要な量のCaO分を添加するのに要する時間が長くなり、これによって処理時間が長くなるという問題もある。
特許文献3では、脱燐剤としてカルシウム・フェライトを用いており、カルシウム・フェライトは高価であることから、脱燐処理コストが増加するという問題がある。また、カルシウム・フェライトを貯蔵するための設備が必要となるという問題もある。
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、従来技術に比べて脱燐効率を向上させ、酸素源及び石灰源の使用量を抑制することができ、安価に脱燐処理を行うと同時に、スラグ生成量を抑制することのできる、溶銑の予備処理方法を提供することである。
上記課題を解決するための本発明の要旨は以下のとおりである。
[1]溶銑中に浸漬したインジェクションランスを介して酸素源と石灰源とを含有する脱燐剤を搬送ガスとともに溶銑中に吹き込んで溶銑に脱燐処理を施す溶銑の予備処理方法において、脱燐剤中のCaO濃度とSiO2濃度との比(質量%CaO/質量%SiO2)で定義される塩基度の異なる2種類以上の脱燐剤を準備し、脱燐処理の進行に伴って塩基度の低い脱燐剤が添加されるように、投入する脱燐剤を脱燐処理の途中で切り替えることを特徴とする、溶銑の予備処理方法。
[2]塩基度が3.5〜5.0の脱燐剤を使用して脱燐処理を開始し、その後、塩基度が2.0〜2.5の脱燐剤に切り替えることを特徴とする、上記[1]に記載の溶銑の予備処理方法。
[3]塩基度が異なる2種類の脱燐剤を使用し、脱燐処理の開始から予定される処理終了までの処理時間を0%から100%で表示したとき、処理開始から20%ないし80%経過した時点で、使用する脱燐剤を切り替えることを特徴とする、上記[1]または上記[2]に記載の溶銑の予備処理方法。
本発明によれば、溶銑の脱燐処理において、塩基度の異なる2種類以上の脱燐剤を準備し、投入する脱燐剤を溶銑の温度に応じて脱燐処理の途中で切り替えるので、添加した脱燐剤をそれぞれ高い滓化率で滓化することが可能となり、これにより、スラグの塩基度を高位に保つことが可能となり、脱燐効率を従来よりも向上させることが実現される。
混銑車における溶銑予備処理の概略図である。 脱珪外酸素と脱珪外脱燐酸素効率との関係を本発明例と比較例とで対比して示す図である。 2種類の脱燐剤を切り替える時期と脱燐量との関係を示す図である。
以下、本発明を具体的に説明する。先ず、本発明に到った経緯について説明する。
溶銑中の燐(P)は石灰(CaO)と反応し、下記の(1)式の脱燐反応によって脱燐が進行することが知られている。ここで、(1)式の[P]は溶銑中の燐である。下記の脱燐反応は発熱反応であり、石灰と酸素とが十分に供給され、低温であるほど脱燐反応が進行する。
3CaO+2[P]+5/2O2=3CaO・P25・・・(1)
図1に、混銑車における溶銑予備処理の概略図を示す。図1において、符号1は混銑車、2は混銑車炉体、3は混銑車炉体の炉口、4はインジェクションランス、5は溶銑、6は脱燐剤である。炉口3を通してインジェクションランス4を、混銑車炉体2に収容された溶銑5に浸漬させ、インジェクションランス4の先端から脱燐剤6を搬送用ガスとともに溶銑中に吹き込んで、脱燐処理を実施する。ここで、脱燐剤6としては、鉄鉱石の焼結鉱粉や転炉ダストなどの固体酸素源と、生石灰や転炉スラグなどの石灰源の単体または混合物とが用いられ、搬送用ガスとしては窒素ガスまたは酸素ガス(気体酸素源)が用いられている。
溶銑中に吹き込まれた脱燐剤6は、浮上中に溶銑中の珪素(Si)や燐と反応し(トランジトリー反応)、溶銑5の脱珪反応及び脱燐反応に寄与する。また、浮上し終わった脱燐剤6は、溶銑表面にスラグ(以下、「トップスラグ」とも記す)を生成し、このスラグは溶銑5との界面で、脱珪反応及び脱燐反応に寄与する。このスラグは、「脱燐スラグ」とも呼ばれている。当然ではあるが、溶銑5が珪素を含有しない場合には脱珪反応は起こらない。
トップスラグの塩基度(スラグ中のCaO濃度とSiO2濃度との比(質量%CaO/質量%SiO2))が低い(例えば0.8以下)と、スラグの粘性が上昇し、溶銑中の炭素と酸素源との反応により生じたCOガスなどの気泡により、スラグはフォーミング(泡立ち現象)する。フォーミングしたスラグの上端位置が混銑車炉体2の炉口3の位置を上回ると、スラグは混銑車炉体2の外部へ流出(流滓)し、操業トラブルの原因となる。一方、トップスラグの塩基度が例えば3.0よりも高く、且つ、溶銑温度が低い場合には、予備処理終了後にスラグが凝固し、溶銑5を排出することができなくなることがある。
そのため、一般的には、脱燐処理終了時のトップスラグの塩基度が1.0〜2.5の範囲、望ましくは1.5〜2.0の範囲となり、脱燐処理終了時の溶銑温度が1200℃以上、望ましくは1250℃以上の範囲となるように、投入する脱燐剤6の組成・添加量の制御が行われている。
前述したように、投入する脱燐剤6には、固体酸素源として、高炉で用いられる焼結鉱を粉砕した焼結鉱粉や製鉄所内で発生するダストなどが含有され、且つ、石灰源として、生石灰や転炉スラグなどが含有されている。従って、これらの配合比率を調整し、投入する脱燐剤6の塩基度を2.0〜5.0の範囲、望ましくは2.5〜4.0の範囲に制御し、溶鋼と比較して温度の低い溶銑5の温度範囲(1250〜1450℃)においても脱燐剤6を溶融させ、且つ、1.5〜2.0の高い塩基度のトップスラグを得ている。尚、脱燐剤6とは別に、生石灰や転炉スラグを添加し、脱燐処理終了時のトップスラグの塩基度を上記の範囲に調整することも行われている。
脱燐処理前の溶銑5の珪素濃度は高炉の操業状態及び予備脱珪処理の有無に応じて変化し、およそ0.10〜0.80質量%程度の幅を有する。ここで、予備脱珪処理とは、脱燐処理の前に、脱燐処理を効率的に行うべく溶銑中の珪素を除去する処理のことである。溶銑中の珪素は溶銑中の燐よりも酸化しやすく、脱燐処理であっても、溶銑中の珪素濃度が或る程度低くなるまで、具体的には溶銑中の珪素濃度がおよそ0.15質量%以下になるまでは脱燐反応は進行しない。そこで、脱燐処理において、主に珪素が除去される期間を脱珪期と呼び、その後の脱燐反応が起こる期間を脱燐期と呼んでいる。尚、脱燐期においても脱珪反応は引き続き起こる。
脱燐処理開始前の溶銑5の珪素濃度が0.50質量%以下、望ましくは0.30質量%以下であれば、脱珪期が短縮され、且つ、少ない脱燐剤の使用量で、脱燐処理後の溶銑中燐濃度を低下させることができる。予備脱珪処理によって溶銑5の珪素濃度を予め0.15質量%以下、望ましくは0.10質量%以下に低減しておけば、脱珪期は存在せず、脱燐処理開始から脱燐反応が起こる。
溶銑5の高炉からの出銑温度、予備脱珪処理の有無、鉄スクラップの配合比率、運搬に要する時間などにより、脱燐処理を開始する時点での溶銑温度は1300〜1450℃程度で変動する。前述したように、高温では脱燐反応が進行しにくく、一方、低温では処理時間が確保できないという問題がある。そこで、溶銑温度が1320〜1400℃、望ましくは1340〜1380℃の範囲で脱燐処理を開始している。
また、酸素源として酸化鉄などの固体酸素源を用いると、固体酸素源中のFeOやFe23の還元により溶銑5の温度が低下し、鉄スクラップ配合量の低下や昇熱剤使用量の増加に繋がり、製造コストの増加の原因となる。そこで、酸素源として気体酸素源を用いる脱燐処理も行われており、上吹きランス(図示せず)を用いて溶銑5の上部から酸素ガスを供給する方法、或いは、溶銑5に浸漬したインジェクションランス4から酸素ガスを溶銑中に供給する方法が行われており、この場合には、約15〜30Nm3/minの酸素ガスが供給されている。
本発明者らは、このようにして行われる混銑車1における脱燐処理において、脱燐効率を向上させることにより、酸素源及び石灰源の使用量を抑制することを検討した。そのためには、添加した脱燐剤6を早期に滓化させ、脱燐能の高いトップスラグを安定して生成させることが重要であることを見出した。
また、脱燐剤6の早期滓化について検討した結果、脱燐剤6として添加した酸化鉄の還元によって溶銑5の温度が低下し、特に、酸化鉄の累積添加量が増加する脱燐処理の後半や末期では、溶銑温度が低下して脱燐剤6の滓化を妨げていることを確認した。
これらの事象から、脱燐処理する溶銑5の温度に応じて溶融温度の異なる脱燐剤6を使い分けることで、脱燐剤6の早期滓化が可能になるとの知見を得た。即ち、固体酸素源中のFeOやFe23の還元が少なく、溶銑5の温度が高い脱燐処理の前半や、中期から後半の半ばにおいては、溶融温度の高い脱燐剤、つまり塩基度の高い脱燐剤を添加する。
脱燐処理の前半や、中期から後半の半ばでは、溶銑5の温度が高いことから、塩基度の高い脱燐剤を添加しても添加した脱燐剤は滓化して高い滓化率が得られ、トランジトリー反応における脱燐効率の向上、及び、トップスラグの早期高塩基度化が達成される。一方、固体酸素源中のFeOやFe23の還元によって溶銑5の温度が低下した脱燐処理の後半や末期においては、溶融温度の低い脱燐剤、つまり塩基度が低い脱燐剤を投入することで、溶銑温度が低くても高い滓化率を維持することができ、脱燐効率を向上させることが可能となる。
本発明は、上記知見に基づくものであり、本発明の溶銑の予備処理方法は、溶銑中に浸漬したインジェクションランスを介して酸素源と石灰源とを含有する脱燐剤を搬送ガスとともに溶銑中に吹き込んで溶銑に脱燐処理を施す溶銑の予備処理方法において、脱燐剤中のCaO濃度とSiO2濃度との比(質量%CaO/質量%SiO2)で定義される塩基度の異なる2種類以上の脱燐剤を準備し、脱燐処理の進行に伴って塩基度の低い脱燐剤が添加されるように、投入する脱燐剤を脱燐処理の途中で切り替えることを必須とする。
脱燐剤6の溶融温度と処理中の溶銑温度との関係から、溶銑温度の高い時期に添加する塩基度の高い脱燐剤としては、その塩基度が3.5〜5.0であり、一方、それ以降に添加する塩基度の低い脱燐剤としては、その塩基度が2.0〜2.5であることが好ましい。この場合に、塩基度が3.5〜5.0の範囲内の脱燐剤として2種類以上の脱燐剤を使用する場合には、塩基度の高い方の脱燐剤から使用することとする。塩基度が2.0〜2.5の範囲内の脱燐剤として2種類以上使用する場合も、塩基度の高い方の脱燐剤から使用することとする。そして、脱燐処理終了時のトップスラグの塩基度が1.0〜2.5の範囲、望ましくは1.5〜2.0の範囲となるように脱燐剤6の組成及び添加量を調整する。尚、脱燐処理終了時のトップスラグの塩基度が1.0未満では、効率的な脱燐反応は得られない。
本発明において、塩基度の高い脱燐剤から塩基度の低い脱燐剤への切り替えの時期は、脱燐処理の開始から予定される処理終了までの処理時間を0%から100%で表示したとき、処理開始(0%)から20%ないし80%経過した時点とすることが好ましい。つまり、処理開始(0%)から20%ないし80%経過する時点まで、塩基度の高い脱燐剤を使用し、その後、塩基度の低い脱燐剤に切り替えることが好ましい。
このようにして脱燐処理することで、前述した、トップスラグの塩基度が低いことによるスラグの外部への流出や、トップスラグの塩基度が高いことによるスラグの凝固などの操業トラブルを生じることなく、脱燐処理することが実現される。
ところで、脱燐処理の初期には、前述したように、処理対象の溶銑5の珪素濃度に応じて脱珪期が起こる場合がある。脱珪期には、生成するSiO2によりトップスラグの塩基度が低下し、フォーミングによってスラグの外部への流出が起こりやすい。この脱珪期に塩基度の高い脱燐剤を投入してトップスラグの塩基度をフォーミングの起こらない範囲に高めることは可能であるが、塩基度の高い脱燐剤の添加量を多くする必要がある。また、スラグの外部への流出が起こった場合には、添加した脱燐剤も排出されてしまい、脱燐剤の原単位が大きくなり、処理コストの増加を招く。
従って、脱珪期の場合には、脱燐剤を添加しない或いは塩基度の低い脱燐剤を添加し、トップスラグを敢えてフォーミングさせ、フォーミングしたスラグを混銑車炉体2の外部に流出させ、脱珪期が終了した以降、塩基度の高い脱燐剤の投入を開始し、その後、塩基度の低い脱燐剤を投入するようにすることが好ましい。このようにすることで、石灰源の使用量を削減することが可能となる。
以上説明したように、本発明によれば、溶銑5の脱燐処理において、塩基度の異なる2種類以上の脱燐剤6を準備し、投入する脱燐剤6を溶銑5の温度に応じて脱燐処理の途中で切り替えるので、添加した脱燐剤6をそれぞれ高い滓化率で滓化することが可能となり、これにより、脱燐スラグの塩基度を高位に保つことが可能となり、脱燐効率を従来よりも向上させることが実現される。
尚、上記説明は混銑車1を用いた溶銑5の脱燐処理について説明したが、溶銑鍋を用いた溶銑5の脱燐処理にも、上記に沿って本発明を適用することができる。また、上記説明では、脱燐剤6をインジェクションランス4を介して溶銑5に吹き込み添加しているが、脱燐剤6を上吹きランスを介して溶銑5に吹き付け添加する方法や、シュートを介して溶銑5に上置き添加する方法であっても、上記に沿って本発明を適用することができる。
300トン容量の混銑車に収容された約300トンの溶銑に、図1に示すインジェクションランスから、約3Nm3/minの窒素ガスを搬送用ガスとして、約400kg/minの供給速度で、脱燐剤を溶銑中に供給し、処理後の溶銑中燐濃度が0.030〜0.070質量%程度となるように、溶銑の脱燐処理試験を行った。使用した脱燐剤A〜Eの組成、塩基度、及び、固体酸素源の原単位を表1に示す。試験では、インジェクションランスの浸漬深さは、溶銑の湯面から約1mとした。また、塩基度調整用の生石灰を、シュートを介して溶銑に上置き添加した。ここで、脱燐剤A〜Eは、鉄鉱石の焼結鉱粉、転炉ダスト、転炉スラグ、生石灰を混合して作成したものである。
Figure 0006201914
本発明例として、2種類の脱燐剤を使用し、予定した脱燐処理時間(=100%)の50%が経過する時点を境とし、脱燐処理時間が50%になるまでの期間(処理前半)で塩基度の高い脱燐剤を添加し、その後の脱燐処理時間の50%を超えた以降の期間(処理後半)で塩基度の低い脱燐剤を添加する試験(本発明例1〜5)を実施した。また、比較のために、脱燐剤を切り替えず、常に、脱燐剤Cを添加する試験(比較例1〜5)も実施した。
脱燐処理前後の溶銑中の珪素濃度、燐濃度の分析及び溶銑温度の測定を行い、脱燐処理後の脱燐スラグを採取し、組成分析を行った。表2に、各試験で使用した脱燐剤の種類及び各試験での測定結果を示す。
Figure 0006201914
また、下記の(2)式で算出される脱珪外酸素、及び、下記の(3)式で算出される脱珪外脱燐酸素効率を各試験で求めた。
脱珪外酸素(Nm3/t)=固体酸素源原単位(Nm3/t)−ΔSi×10÷28×22.4・・・(2)
脱珪外脱燐酸素効率(%)=ΔP÷100÷62×22.4×2.5÷脱珪外酸素(Nm3/t)・・・(3)
但し、(2)式におけるΔSiは、脱燐処理前と脱燐処理後とでの溶銑中珪素濃度(質量%)の差、(3)式におけるΔPは、脱燐処理前と脱燐処理後とでの溶銑中燐濃度(質量%)の差である。
本発明例1〜5及び比較例1〜5について、脱珪外酸素と脱珪外脱燐酸素効率との関係を図2に示す。図2から明らかなように、脱燐処理前半に相対的に塩基度の高い脱燐剤を添加し、脱燐処理後半に相対的に塩基度の低い脱燐剤を加えることで、脱珪外脱燐酸素効率が約1.5%向上することがわかった。
また、表1及び表2から算出されるように、本発明例における脱燐剤中の平均CaO含有量(本発明例1、2では23.6質量%、本発明例3〜5では21.9質量%)は、比較例1〜5の脱燐剤CにおけるCaO含有量(24.6質量%)に比べて同等以下となっている。即ち、本発明によれば、同等のCaO消費量でより多くの溶銑中の燐を除去することができ、従来と同等の処理時間で、より安価に脱燐処理を行うことが実現される。
尚、本発明例における脱燐剤中の平均SiO2含有量は、本発明例1、2では7.6質量%、本発明例3〜5では6.9質量%となっており、処理全体での脱燐剤塩基度はそれぞれ3.1、3.2となっている。この値は、先述した従来方法での塩基度2.5〜4.0の範囲内であり、処理後のスラグ塩基度が高くなり過ぎることはなく、スラグ凝固による操業トラブルなどの原因とはならない。
ここで、本発明例1〜5から明らかなように、処理前の溶銑中珪素濃度や溶銑温度が変動しても、本発明を適用することにより高い脱珪外酸素効率が得られることがわかる。即ち、処理前の溶銑中珪素濃度や溶銑温度、及び、目標とする処理後の溶銑中燐濃度や溶銑温度に応じて、脱燐剤の使用量や追加生石灰の量を調整することにより脱燐効率向上させることが実現される。
実施例1と同じ設備を用い、2種類の脱燐剤の切り替え時期を、予定した脱燐処理時間(=100%)の10〜90%経過した時点として、溶銑の脱燐処理試験を行った(本発明例6〜14)。
脱燐処理前の溶銑温度、珪素濃度、燐濃度が同等の約300tの溶銑に対し、約400kg/minで脱燐剤を約50分供給した。比較のために、1種類の脱燐剤を処理全体で投入する試験(比較例6、7、8)を行った。表3に、各試験で使用した脱燐剤の種類及び測定結果を示す。表3では、便宜上、塩基度の高い脱燐剤を添加する時期を「処理前半」と記し、塩基度の低い脱燐剤を添加する時期を「処理後半」と記している。
Figure 0006201914
本発明例6〜14及び比較例6〜8について、2種類の脱燐剤を切り替える時期と脱燐量との関係を図3に示す。図3から明らかなように、2種類の脱燐剤の切り替え時期が処理時間の10〜90%経過した時点となる場合に、従来の1種類の脱燐剤を使用した条件(比較例6)よりも脱燐量が多くなることがわかった。
即ち、本発明によれば、2種類の脱燐剤を処理時間の10〜90%、望ましくは20〜80%、更に望ましくは30〜70%経過した時点で切り替えることにより、同等のCaO消費量でより多くの溶銑中の燐を除去することができ、従来と同等の処理時間で、より安価に脱燐処理を行うことが実現される。
尚、比較例7、8において、従来の1種類の脱燐剤を使用した場合(比較例6)よりも脱燐量が低位となっている理由は、それぞれ、脱燐剤の塩基度が低すぎたこと(比較例7)及び供給される固酸原単位が小さかったこと(比較例8)が原因である。
1 混銑車
2 混銑車炉体
3 炉口
4 インジェクションランス
5 溶銑
6 脱燐剤

Claims (2)

  1. 溶銑中に浸漬したインジェクションランスを介して酸素源と石灰源とを含有する脱燐剤を搬送ガスとともに溶銑中に吹き込んで溶銑に脱燐処理を施す溶銑の予備処理方法において、脱燐剤中のCaO濃度とSiO2濃度との比(質量%CaO/質量%SiO2)で定義される塩基度が3.5〜5.0である脱燐剤と、塩基度が2.0〜2.5である脱燐剤との、塩基度の異なる2種類の脱燐剤を準備し、脱燐処理の進行に伴って塩基度の低い脱燐剤が添加されるように、塩基度が3.5〜5.0の脱燐剤を使用して脱燐処理を開始し、その後、塩基度が2.0〜2.5の脱燐剤へと、投入する脱燐剤を脱燐処理の途中で切り替えることを特徴とする、溶銑の予備処理方法。
  2. 塩基度が異なる2種類の脱燐剤を使用し、脱燐処理の開始から予定される処理終了までの処理時間を0%から100%で表示したとき、処理開始から20%ないし80%経過した時点で、使用する脱燐剤を切り替えることを特徴とする、請求項に記載の溶銑の予備処理方法。
JP2014133492A 2014-06-30 2014-06-30 溶銑の予備処理方法 Active JP6201914B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2014133492A JP6201914B2 (ja) 2014-06-30 2014-06-30 溶銑の予備処理方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2014133492A JP6201914B2 (ja) 2014-06-30 2014-06-30 溶銑の予備処理方法

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2016011441A JP2016011441A (ja) 2016-01-21
JP6201914B2 true JP6201914B2 (ja) 2017-09-27

Family

ID=55228348

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2014133492A Active JP6201914B2 (ja) 2014-06-30 2014-06-30 溶銑の予備処理方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP6201914B2 (ja)

Family Cites Families (6)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPS56108813A (en) * 1980-01-29 1981-08-28 Kobe Steel Ltd Pretreating method of molten iron
JP2000212622A (ja) * 1999-01-14 2000-08-02 Nippon Steel Corp 反応効率の高い溶銑脱燐方法
JP5332769B2 (ja) * 2009-03-17 2013-11-06 新日鐵住金株式会社 電気炉スラグの利用方法
JP5602047B2 (ja) * 2010-02-22 2014-10-08 株式会社神戸製鋼所 混銑車における溶銑の脱りん処理方法
JP5655345B2 (ja) * 2010-03-31 2015-01-21 Jfeスチール株式会社 溶銑の脱燐方法
JP5689024B2 (ja) * 2010-06-07 2015-03-25 株式会社神戸製鋼所 ダストを使用した溶銑の脱りん方法

Also Published As

Publication number Publication date
JP2016011441A (ja) 2016-01-21

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP5408369B2 (ja) 溶銑の予備処理方法
JP5440733B2 (ja) 溶銑の精錬方法
JPWO2018135344A1 (ja) 溶鋼の脱硫処理方法及び脱硫剤
JP2015218338A (ja) 転炉型精錬炉による溶鉄の精錬方法
JP6011728B2 (ja) 溶銑の脱燐処理方法
WO2019172195A1 (ja) 溶銑の脱りん方法
JP6222490B2 (ja) 溶銑の脱燐方法
JP5983492B2 (ja) 溶銑の予備処理方法
JP5408379B2 (ja) 溶銑の予備処理方法
JP2018178260A (ja) 転炉製鋼方法
JP5999157B2 (ja) 転炉での溶銑の精錬方法
JP2014189838A (ja) 溶鋼の脱硫処理方法
JP6201914B2 (ja) 溶銑の予備処理方法
JP5915711B2 (ja) 製鋼スラグからの鉄及び燐の回収方法
JPH0141681B2 (ja)
JP2001107124A (ja) 溶銑の脱燐方法
JP5447554B2 (ja) 溶銑の脱りん処理方法
JP2019151535A (ja) リン酸スラグ肥料の製造方法
JP2011058046A (ja) 溶銑の脱燐処理方法
JP5803837B2 (ja) 溶銑の脱珪脱りん処理方法
JP6665654B2 (ja) 脱珪処理方法
KR100496566B1 (ko) 탈황능이 향상된 무연탄을 이용한 용선용 탈황제
JPH08260015A (ja) 溶銑の予備処理方法
JP2022185789A (ja) 転炉吹錬方法及び転炉設備
KR100436652B1 (ko) 전로 정련용 슬래그 진정효과 및 탈린능을 가진저융점매용제 조성물

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20160122

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20161219

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20170131

A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20170327

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20170801

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20170814

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 6201914

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250