以下、この発明につき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。また、この実施の形態の構成要素には、発明の同一性を維持しつつ置換可能かつ置換自明なものが含まれる。また、この実施の形態に記載された複数の変形例は、当業者自明の範囲内にて任意に組み合わせが可能である。
[空気入りタイヤ]
図1は、この発明の実施の形態にかかる空気入りタイヤを示すタイヤ子午線方向の断面図である。同図は、タイヤ径方向の片側領域を示している。また、同図は、空気入りタイヤの一例として、乗用車用ラジアルタイヤを示している。
なお、同図において、タイヤ子午線方向の断面とは、タイヤ回転軸(図示省略)を含む平面でタイヤを切断したときの断面をいう。また、符号CLは、タイヤ赤道面であり、タイヤ回転軸方向にかかるタイヤの中心点を通りタイヤ回転軸に垂直な平面をいう。また、タイヤ幅方向とは、タイヤ回転軸に平行な方向をいい、タイヤ径方向とは、タイヤ回転軸に垂直な方向をいう。
この空気入りタイヤ1は、タイヤ回転軸を中心とする環状構造を有し、一対のビードコア11、11と、一対のビードフィラー12、12と、カーカス層13と、ベルト層14と、トレッドゴム15と、一対のサイドウォールゴム16、16と、一対のリムクッションゴム17、17とを備える(図1参照)。
一対のビードコア11、11は、複数のビードワイヤを束ねて成る環状部材であり、左右のビード部のコアを構成する。一対のビードフィラー12、12は、一対のビードコア11、11のタイヤ径方向外周にそれぞれ配置されてビード部を補強する。
カーカス層13は、左右のビードコア11、11間にトロイダル状に架け渡されてタイヤの骨格を構成する。また、カーカス層13の両端部は、ビードコア11およびビードフィラー12を包み込むようにタイヤ幅方向外側に巻き返されて係止される。また、カーカス層13は、スチールあるいは有機繊維材(例えば、アラミド、ナイロン、ポリエステル、レーヨンなど)から成る複数のカーカスコードをコートゴムで被覆して圧延加工して構成され、絶対値で80[deg]以上95[deg]以下のカーカス角度(タイヤ周方向に対するカーカスコードの繊維方向の傾斜角)を有する。
ベルト層14は、一対の交差ベルト141、142と、ベルトカバー143とを積層して成り、カーカス層13の外周に掛け廻されて配置される。一対の交差ベルト141、142は、スチールあるいは有機繊維材から成る複数のベルトコードをコートゴムで被覆して圧延加工して構成され、絶対値で20[deg]以上40[deg]以下のベルト角度を有する。また、一対の交差ベルト141、142は、相互に異符号のベルト角度(タイヤ周方向に対するベルトコードの繊維方向の傾斜角)を有し、ベルトコードの繊維方向を相互に交差させて積層される(クロスプライ構造)。ベルトカバー143は、コートゴムで被覆されたスチールあるいは有機繊維材から成る複数のベルトコードを圧延加工して構成され、タイヤ周方向に対して略平行(±5度の範囲内)に配置される。また、ベルトカバー143は、交差ベルト141、142のタイヤ径方向外側に積層されて配置される。
トレッドゴム15は、カーカス層13およびベルト層14のタイヤ径方向外周に配置されてタイヤのトレッド部を構成する。一対のサイドウォールゴム16、16は、カーカス層13のタイヤ幅方向外側にそれぞれ配置されて左右のサイドウォール部を構成する。一対のリムクッションゴム17、17は、左右のビードコア11、11およびカーカス層13の巻き返し部のタイヤ径方向内側にそれぞれ配置されて、リムフランジに対する左右のビード部の接触面を構成する。
[タイヤサイド部]
ここで、タイヤ接地端TLからリムチェックラインLCまでの領域を、タイヤサイド部Sと呼ぶ(図1参照)。このタイヤサイド部Sには、タイヤのサイドウォール部、ショルダー部の一部およびビード部の一部が含まれる。
タイヤ接地端TLとは、タイヤが規定リムに装着されて規定内圧を付与されると共に静止状態にて平板に対して垂直に置かれて規定荷重に対応する負荷を加えられたときのタイヤと平板との接触面におけるタイヤ軸方向の最大幅位置をいう。
リムチェックラインLCとは、タイヤのリム組み状態を確認するためのラインであり、一般に、ビード部の表側面に表示される。
なお、規定リムとは、JATMAに規定される「適用リム」、TRAに規定される「Design Rim」、あるいはETRTOに規定される「Measuring Rim」をいう。また、規定内圧とは、JATMAに規定される「最高空気圧」、TRAに規定される「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」の最大値、あるいはETRTOに規定される「INFLATION PRESSURES」をいう。また、規定荷重とは、JATMAに規定される「最大負荷能力」、TRAに規定される「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」の最大値、あるいはETRTOに規定される「LOAD CAPACITY」をいう。ただし、JATMAにおいて、乗用車用タイヤの場合には、規定内圧が空気圧180[kPa]であり、規定荷重が最大負荷能力の88[%]である。
[タイヤサイド部の凸部列]
図2は、図1に記載した空気入りタイヤを示す側面図である。図3は、図1に記載した空気入りタイヤの凸部を示す拡大図である。図4は、図3に記載した凸部を示す平面図である。図5は、図4に記載した凸部を示すA−A視断面図である。これらの図において、図2は、タイヤサイド部Sの全体構成を示している。また、図3は、1つのタイヤ周方向視における凸部6の図を示している。また、図4は、タイヤサイド部Sの平面視における凸部6の図を示している。また、図5は、凸部6の長手方向に垂直な断面図を示している。
この空気入りタイヤ1は、乱流発生用の凸部6をタイヤサイド部Sの表面に備える(図1および図2参照)。かかる構成では、車両走行中のタイヤ転動時にて、凸部6がタイヤサイド部Sの表面に乱流を発生させる。これにより、タイヤの空気抵抗が減少して、車両の空気抵抗が減少する。
図1に示すように、凸部6は、タイヤサイド部Sの基準面から突出する凸部である。この凸部6は、タイヤ加硫成形工程にて、タイヤ成形金型(図示省略)によりタイヤサイド部Sに一体形成される。また、凸部6は、左右のタイヤサイド部S、Sにそれぞれ配置されても良いし(図1参照)、一方のタイヤサイド部Sにのみ配置されても良い(図示省略)。
タイヤサイド部Sの基準面とは、タイヤサイド部Sの模様、文字、凹凸などを除いた面をいい、JATMA規定のタイヤ断面幅の測定に用いられる。
図2に示すように、複数の凸部6が、タイヤサイド部Sに沿ってタイヤ周方向に所定間隔で配列される。したがって、複数の凸部6が、タイヤ回転軸を中心として放射状に配列される。このとき、凸部6の枚数は、タイヤ周方向の総数で10枚から80枚程度であることが好ましい。
図1および図3に示すように、凸部6は、タイヤ径方向に所定の長さLHで延在する。このとき、凸部6のタイヤ径方向の長さLHと、タイヤ断面高さSHとが、0.10≦LH/SHの関係を有することが好ましい。これにより、凸部6の径方向長さLHが適正化されて、タイヤ回転時における凸部6の乱流発生効果が向上する。LH/SHの上限は、特に限定がないが、タイヤ重量との関係で制約を受ける。
凸部6の長さLHは、図3に示すように、タイヤサイド部Sの基準面に対する凸部6の側面61の立ち上がり部を基準として測定される。
タイヤ断面高さSHは、図1に示すように、タイヤ外径とリム径との差の1/2をいい、タイヤを規定リムに装着して規定内圧を付与すると共に無負荷状態として測定される。
図3および図4に示すように、凸部6は、タイヤサイド部Sに沿ってタイヤ径方向に延在する長尺なブロック形状を有する。かかる長尺形状により、凸部6の乱流発生作用が向上する。凸部6の形状は、かかる長尺形状を有することを条件として、特に限定がない。
例えば、図4の構成では、タイヤサイド部Sの平面視にて、凸部6が、タイヤ径方向に長尺な矩形状を有している。しかし、これに限らず、凸部6が、タイヤサイド部Sの平面視にて、例えば、V字状、円弧状、S字状、波状などの屈曲した形状を有しても良い(図示省略)。また、凸部6が、長手方向をタイヤ径方向に対して45[deg]以下の角度で傾斜して配置されても良い(図示省略)。
また、図5の構成では、凸部6の長手方向に垂直な断面視にて、凸部6が、タイヤサイド部Sの基準面に底辺を置いた矩形の断面形状を有している。また、凸部6がタイヤ周方向の左右の側面61、61に平面を有し、これらの側面61、61が平面をタイヤサイド部Sの基準面に対して立てて(平面の法線方向をタイヤサイド部Sの基準面に略平行にして)配置されることにより、凸部6の乱流発生作用が高められている。また、凸部6のエッジ部(側面61と頂面62との境界部)が、ラウンド形状を有することにより、凸部6の加硫成形工程が容易化されている。
また、図3〜図5に示すように、凸部6が、後述する細リブ63の部分を除いて、一様な高さHfおよび幅Wf(図5参照)を有している。凸部6の高さHfは、2[mm]≦Hf≦10[mm]の範囲にあることが好ましく、4[mm]≦Hf≦8[mm]の範囲にあることがより好ましい。また、凸部6の幅Wfは、0.5[mm]≦Wf≦20[mm]の範囲内にあることが好ましく、1.0[mm]≦Wf≦5.0[mm]の範囲内にあることがより好ましい。
凸部6の高さHfは、タイヤサイド部Sの基準面から凸部6の頂面62までの距離の最大値として測定される。したがって、後述する細リブ63の高さHは、凸部6の高さHfの計測から除外される。
凸部6の幅Wfは、凸部6の長手方向に垂直な断面視における左右の側面61、61間の距離の最大値として測定される。このとき、凸部6とタイヤサイド部Sとの接続部は、幅Wfの測定位置から除外される。
[エア溜まりを抑制するための細リブ]
上記のように、凸部は、その乱流発生作用を高めるために、タイヤ径方向に長尺な形状を有する。かかる長尺形状の凸部では、タイヤ加硫成形時にて、凸部を成形する金型部と未加硫タイヤとの間にエア溜まりが生じて、凸部に外観不良が発生するという課題がある。
そこで、この空気入りタイヤ1は、エア溜まりによる凸部の外観不良の発生を抑制するために、以下の構成を採用する。
図3〜図5に示すように、凸部6は、細リブ63を有する。この細リブ63は、凸部6の頂面62に配置されて、凸部6の長手方向に延在する。
凸部6の頂面62とは、凸部6の尾根となる部分をいう。凸部6の頂面62は、タイヤサイド部Sの基準面に対して略平行であり、タイヤサイド部Sの基準面に対してタイヤ周方向の左右の側面61、61およびタイヤ径方向の上下の側面61、61により区画される。
かかる構成では、タイヤ加硫成形時にて、凸部6を成形する金型部と未加硫タイヤとの間にある残留エアが、細リブ63に流入する(図示省略)。これにより、細リブ63の容積が残留エアの逃げ場となり、残留エアが分散して、凸部6の頂面62におけるエア溜まりが低減される。これにより、凸部6の頂面62におけるエア溜まりが抑制されて、凸部6の外観不良の発生が抑制される。
ここで、図3に示すように、凸部6のタイヤ径方向の長さLHを基準として、凸部6のタイヤ径方向の端部における距離Leの領域を定義する。この領域は、凸部6のタイヤ径方向外側の端部およびタイヤ径方向内側の端部のそれぞれについて定義できる。
このとき、細リブ63は、凸部6のタイヤ径方向の端部から距離Le=0.10×LHまでの領域に対して連通することが好ましく、距離Le=0.05×LHまでの領域に対して連通することがより好ましい。すなわち、細リブ63が、凸部6のタイヤ径方向の端部に連通することが好ましく、その連通する位置が、凸部6のタイヤ径方向の端部に近いほど好ましい。
また、細リブ63は、距離Leの領域の全域に渡って延在する必要はなく、凸部6の頂面62から距離Leの領域の一部に連通すれば足りる。また、細リブ63の一方の端部が、距離Leの領域内にあれば良い。一方で、凸部6の頂面62が距離Leの領域にあり、細リブ63が、この距離Leの領域にある凸部6の頂面62に連通することを要する。
凸部6の端部には、タイヤ加硫成形時にてエア溜まりが生じ易い。したがって、細リブ63が凸部6の端部まで延在することにより、凸部6の頂面62におけるエア溜まりが効果的に低減される。
また、図5に示すように、細リブ63は、凸部6の頂面62から突出する形状を有する。このため、凸部6の頂部には、頂面62と細リブ63とによって段差が形成される。
また、細リブ63の高さHと、凸部6の高さHfとが、0.01≦H/Hf≦0.25の関係を有することが好ましく、0.050≦H/Hf≦0.125の関係を有することがより好ましい。また、細リブ63の幅Wと、凸部6の幅Wfとが、0.075≦W/Wf≦0.750の関係を有することが好ましく、0.125≦W/Wf≦0.500の関係を有することがより好ましく、W/Wf≦0.250の関係を有することさらに好ましい。
さらに、細リブ63の幅Wが、W≦1.5[mm]の範囲にあることが好ましい。これにより、細リブ63の幅Wが狭く設定されるので、細リブ63自身の外観不良を抑制できる。なお、かかる狭い幅Wをもつ細リブ63を備える凸部6は、凸部自身が段付き形状を有する構成(図示省略)と比較して、明らかな構成上の相異点を有する。
細リブ63の高さHは、凸部6の頂面62を基準として測定される。具体的には、細リブ63の高さHが、凸部6の頂面62と細リブ63とによって形成された段差部の高さとして測定される。
細リブ63の幅Wは、凸部6の長手方向に垂直な断面視における細リブ63の最大幅として測定される。具体的には、細リブ63の幅Wが、凸部6の頂面62と細リブ63とによって形成された段差部の最大幅として測定される。
例えば、図3〜図5の構成では、図4に示すように、1本の細リブ63が、凸部6の頂面62の中央部を凸部6の長手方向に沿って直線的に延在して、凸部6を縦断している。また、図3に示すように、細リブ63が、凸部6のタイヤ径方向の両端部にある距離Leの領域に対して、それぞれ連通している。また、細リブ63が、凸部6のタイヤ径方向のエッジ部(タイヤ径方向の側面61と頂面62との接続部)を越えて、凸部6のタイヤ径方向の側面61まで延在している。また、細リブ63が、一様な高さHおよび幅Wをもってタイヤ径方向に延在している。
なお、図5の構成では、凸部6の長手方向に垂直な断面視にて、細リブ63が略円弧形状を有している。しかし、これに限らず、細リブ63が、例えば、矩形状、三角形状、台形状、楕円形状などの任意の形状を有し得る。
[変形例]
図6および図7は、図1に記載した空気入りタイヤの変形例を示す説明図である。これらの図において、図6および図8は、タイヤサイド部Sの平面視における凸部6の図をそれぞれ示し、図7および図9は、図6および図8に記載した凸部6のタイヤ径方向の端部の拡大図をそれぞれ示している。
図3および図4の構成では、上記のように、細リブ63が、凸部6のタイヤ径方向のエッジ部(側面61と頂面62との境界部)を越えて、凸部6のタイヤ径方向の側面61まで延在している。かかる構成は、(残留エアの生じ易い)凸部6の端部におけるエア溜まりを効果的に抑制できる点で好ましい。
しかしこれに限らず、図6および図7のように、細リブ63が、凸部6の頂面62にのみ配置されて、凸部6のタイヤ径方向のエッジ部で終端しても良い。また、図8および図9に示すように、細リブ63が、凸部6の頂面62にのみ配置されて、凸部6のタイヤ径方向のエッジ部の手前で終端しても良い。
図10〜図15は、図1に記載した空気入りタイヤの変形例を示す説明図である。これらの図において、図10、図12および図14は、タイヤサイド部Sの平面視における凸部6の図を示し、図11、図13および図15は、図10、図12および図14におけるB−B視断面図、C−C視断面図およびD−D視断面図をそれぞれ示している。
図4および図5の構成では、凸部6が、1本の細リブ63を有している。また、細リブ63が、凸部6の頂面62を凸部6の長手方向に直線状に縦断して、凸部6の両エッジ部に至っている。
しかし、これに限らず、図10〜図13に示すように、凸部6が、複数本の細リブ63を有しても良い。このとき、図10および図11に示すように、複数本の細リブ63が同一幅を有しても良いし、図12および図13に示すように、複数本の細リブ63が相互に異なる幅を有しても良い。これにより、細リブ63によるデザインのバリエーションが拡大する。
また、図14および図15に示すように、細リブ63が、凸部6の頂面62を囲む環状構造を有することが好ましい。例えば、図14の構成では、タイヤサイド部Sの平面視にて、凸部6が矩形状の頂面62を有している。また、細リブ63が、矩形状の環状構造を有し、凸部6の頂面62の中央部を囲むように、凸部6の四方のエッジ部に沿って延在している。これにより、凸部の頂面62が、環状の細リブ63により縁取られている。なお、細リブ63の環状構造は、上記の矩形状に限らず、凸部6の外形に沿う、あるいは、凸部6の外形とは独立する任意の形状を有し得る。また、後述する図18の変形例として、凸部6のタイヤ径方向の両端部に配置された一対の細リブ63、63が、凸部6の頂面62を囲む環状構造をそれじれ有しても良い(図示省略)。
図16および図17は、図1に記載した空気入りタイヤの変形例を示す説明図である。これらの図において、図16および図18は、タイヤ周方向視における凸部6の図を示し、図17および図19は、図16および図18に記載した凸部6の平面図を示している。
図3および図4の構成では、図2に示すように、複数の凸部6がタイヤ周方向に一列に配置されている。このため、タイヤ径方向には、1つの凸部6のみが延在している。
しかし、これに限らず、図16および図17に示すように、複数の凸部6がタイヤ周方向に複数列で配置されても良い。例えば、図16および図17の構成では、複数の凸部6がタイヤ周方向に2列で配列され、また、一対を一組とする凸部6がタイヤ径方向に所定間隔をあけつつ相互にタイヤ周方向の同位置に配置されている。
なお、図16および図17の構成においても、細リブ63が、各凸部6のタイヤ径方向の端部から距離Le=0.10×LHまでの領域に対して連通することが好ましい。このとき、凸部6の長さLHおよび距離Leは、タイヤ径方向に並ぶ各凸部6、6について、それぞれ定義される。
図18〜図22は、図1に記載した空気入りタイヤの変形例を示す説明図である。これらの図において、図18は、タイヤ周方向視における凸部6の図を示し、図19〜図22は、タイヤサイド部Sの平面視における凸部6の図を示している。
図3および図4の構成では、1本の細リブ63が、凸部6の頂面62の中央部を凸部6の長手方向に沿って直線的に延在して、凸部6をタイヤ径方向に縦断している。かかる構成では、細リブ63の体積を確保できるので、凸部6の頂面62におけるエア溜まりを効果的に抑制できる点で好ましい。
しかし、これに限らず、図18〜図22に示すように、複数の細リブ63、63が、タイヤ径方向に相互に分離して配置されても良い。このとき、図18に示すように、細リブ63が、各凸部6のタイヤ径方向の端部から距離Le=0.10×LHまでの領域に対して連通することが好ましく、距離Le=0.05×LHまでの領域に対して連通することがより好ましい。
例えば、図18の構成では、一対の細リブ63、63が、1つの凸部6のタイヤ径方向外側の端部およびタイヤ径方向内側の端部にそれぞれ配置されている。また、これらの細リブ63、63が、一方の端部にて、凸部6のタイヤ径方向のエッジ部を越えて凸部6の側面61まで延在し、他方の端部にて、凸部6の頂面62上で終端している。このため、凸部6のタイヤ径方向の中央部には、細リブ63が配置されていない。かかる構成としても、凸部6の頂面62におけるエア溜まりを抑制できる。
また、図18の構成では、細リブ63の長さL(図示省略)と、凸部6のタイヤ径方向の長さLHとが、0.1≦L/LHの関係を有することが好ましい。これにより、凸部6の頂面62におけるエア溜まりを効果的に抑制できる。比L/LHの上限は、特に限定がないが、凸部6における細リブ63の延在可能長さとの関係で制約を受ける。
細リブ63の長さLは、細リブ63の延在長さ(道のり)として測定される。また、図18のように、細リブ63が凸部6のタイヤ径方向の側面61まで延在する構成では、この側面61における細リブ63の長さも測定値に加算される。また、図18のように、凸部6が一対の細リブ63を有する構成では、一対の細リブ63、63の長さL、Lが、それぞれ上記の範囲内にあることが好ましい。また、上記した図14のように、細リブ63が環状構造を有する構成では、連続する細リブ63の全長が細リブ63の長さLとして測定される。
また、図19の構成では、1本の細リブ63が、1つの凸部6のタイヤ径方向の両端部にそれぞれ配置されている。しかし、これに限らず、図20に示すように、複数本の細リブ63が、1つの凸部6のタイヤ径方向の両端部にそれぞれ配置されても良い。また、図21に示すように、図20の構成において、凸部6の各端部に配置された複数の細リブ63が、相互に異なる幅を有しても良い。また、図22に示すように、細リブ63の両端部が、凸部6の頂面62内で終端(図示省略。図8参照。)しても良い。また、細リブ63の一方の端部が、凸部6の頂面62内で終端し、他方の端部が、凸部6のタイヤ径方向のエッジ部で終端(図示省略。図7参照。)しても良い。
図23および図24は、図1に記載した空気入りタイヤの変形例を示す説明図である。これらの図は、タイヤサイド部Sの平面視における凸部6の図を示している。
図4および図19の構成では、細リブ63が直線形状を有し、凸部6の長手方向に延在している。かかる構成では、細リブ63の成形が容易な点で好ましい。
しかし、これに限らず、図23に示すように、細リブ63が、凸部6のタイヤ径方向の端部にて分岐した形状を有しても良い。また、図24に示すように、細リブ63が、V字ないしはU字形状を有し、凸部6のタイヤ径方向の端部付近にて、開先部を凸部6のタイヤ径方向の端部に向けて配置されても良い。
図25および図26は、図1に記載した空気入りタイヤの変形例を示す説明図である。これらの図は、タイヤ周方向視における1つの凸部6を示している。
図3の構成では、細リブ63が、凸部6のタイヤ径方向内側の端部からタイヤ径方向外側の端部まで延在し、且つ、凸部6の全域に渡って一様な高さH(図5参照)を有している。また、図18の構成では、一対の細リブ63、63が、1つの凸部6のタイヤ径方向外側の端部およびタイヤ径方向内側の端部にそれぞれ配置され、且つ、凸部6の全域に渡って一様な高さH(図5参照)を有している。
これに対して、図25および図26の構成では、細リブの高さHが、凸部6のタイヤ径方向の端部から中央部に向かって漸増する。これにより、細リブ63による残留エアの拡散作用が向上して、エア溜まりが抑制される。
例えば、図25の構成では、細リブ63が、凸部6のタイヤ径方向内側の端部からタイヤ径方向外側の端部まで延在し、且つ、細リブ63の高さHが、凸部6のタイヤ径方向の端部から中央部に向かって漸増している。このため、凸部6のタイヤ径方向の両端部では、細リブ63の高さHが低く、凸部6の中央部にて、細リブ63の高さHが最大となっている。
また、図26の構成では、一対の細リブ63、63が、1つの凸部6のタイヤ径方向外側の端部およびタイヤ径方向内側の端部にそれぞれ配置されて、且つ、凸部6の両端部に配置された各細リブ63の高さHが、凸部6のタイヤ径方向の端部から中央部に向かってそれぞれ漸増している。また、凸部6の中央部には、細リブ63が配置されていない。
なお、細リブ63の高さHは、上記のように、凸部の高さHfに対して0.01≦H/Hf≦0.25の関係を有することが好ましい。したがって、細リブ63の高さHの最大値は、この比H/Hfの範囲内で適宜調整される。
図27〜図30は、図1に記載した空気入りタイヤの変形例を示す説明図である。これらの図は、凸部6の長手方向に垂直な断面図を示している。
図5の構成では、細リブ63が、凸部6の幅方向の中央部に配置され、また、凸部6の幅方向の左右のエッジ部が、ラウンド形状をそれぞれ有している。かかる構成では、細リブ63が凸部6の幅方向の中央部に配置されることにより、細リブ63による残留エアの拡散作用が向上してエア溜まりが抑制される点で好ましく、また、凸部6の幅方向のエッジ部がラウンド形状を有することにより、凸部6の加硫成形が容易となる点で好ましい。
しかし、これに限らず、図27に示すように、細リブ63が、凸部6の幅方向のエッジ部に配置されても良い。また、図28に示すように、凸部6の幅方向の左右のエッジ部が、スクエア形状を有しても良い。
また、図5の構成では、凸部6が、矩形断面形状を有している。また、凸部6の幅方向の側面61、61が、平面形状を有し、その平面を凸部6の幅方向に対して垂直に立てて配置されている。かかる構成では、凸部6の乱流発生作用が向上する点で好ましい。
しかし、これに限らず、図29に示すように、凸部6が台形断面形状を有し、凸部6の幅方向の側面61、61が傾斜して配置されても良い。また、図30に示すように、凸部6が、凸部6の幅方向に凸となる円弧状の側面61、61をもつ断面形状を有しても良い。これらの構成では、凸部6の構造強度が増加する点で好ましい。
[効果]
以上説明したように、この空気入りタイヤ1は、タイヤサイド部Sの表面に配置されると共にタイヤ径方向に延在する長尺形状を有する乱流発生用の凸部6を備える(図1参照)。また、凸部6が、凸部6の頂面62に配置されて凸部6の長手方向に延在する細リブ63を有する(図3、図4、図18および図19参照)。
かかる構成では、タイヤ加硫成形時にて、凸部6を成形する金型部と未加硫タイヤとの間にある残留エアが、細リブ63に流入する(図示省略)。すると、残留エアが分散して、凸部6の頂面62におけるエア溜まりが低減される。これにより、凸部6の頂面62におけるエア溜まりが抑制されて、凸部6の外観不良の発生が抑制される。
また、この空気入りタイヤ1では、細リブ63が、凸部6を縦断して凸部6のタイヤ径方向の両端部を連結する(図3および図4参照)。かかる構成では、細リブ63の容積が確保されて、凸部6の頂面62におけるエア溜まりが効果的に低減される利点がある。
また、この空気入りタイヤ1では、一対の細リブ63、63が、1つの凸部6のタイヤ径方向外側の端部およびタイヤ径方向内側の端部にそれぞれ配置される(図18および図19参照)。凸部6の頂面62のタイヤ径方向の端部には、残留エアが溜まり易い。したがって、かかる構成により、凸部6の頂面62の端部におけるエア溜まりが低減されて、凸部6の外観不良の発生が効果的に抑制される利点がある。
また、この空気入りタイヤ1では、細リブ63が、凸部6のタイヤ径方向の長さLHを基準とする凸部6のタイヤ径方向の端部から距離Le=0.10×LHまでの領域に対して、連通する(図3および図18参照)。凸部6の頂面62のタイヤ径方向の端部には、残留エアが溜まり易い。したがって、かかる構成により、凸部6の頂面62の端部におけるエア溜まりが低減されて、凸部6の外観不良の発生が効果的に抑制される利点がある。
また、この空気入りタイヤ1では、細リブ63の高さHが、凸部6のタイヤ径方向の端部から中央部に向かって漸増する(図25および図26参照)。これにより、細リブ63による残留エアの拡散作用が向上して、エア溜まりが抑制される利点がある。
また、この空気入りタイヤ1では、細リブ63が、凸部6のタイヤ径方向の側面まで延在する(図3参照)。これにより、細リブ63の体積が増加して、細リブ63による残留エアの拡散作用が向上する利点がある。
また、この空気入りタイヤ1では、細リブ63が、凸部6の頂面62のタイヤ径方向の端部で終端する(図6および図7参照)。これにより、凸部6の頂面62の端部におけるエア溜まりが効果的に低減される利点がある。
また、この空気入りタイヤ1では、細リブ63が、凸部6の幅方向の両端部に沿って延在して凸部6の頂面62を囲む環状構造を有する(図14および図15参照)。かかる構成では、細リブ63が凸部6の頂面62を囲むので、直線状の細リブ63が凸部6を縦断する構成(図4参照)と比較して、残留エアが凸部6の頂面62にて均一に拡散する。これにより、エア溜まりが効果的に抑制される利点がある。
また、この空気入りタイヤ1では、凸部6の長手方向に垂直な断面視にて、凸部6の幅方向のエッジ部が、ラウンド形状を有する(図5参照)。これにより、凸部6の幅方向のエッジ部がスクエア形状を有する構成(図28参照)と比較して、凸部6の加硫成形が容易となる利点がある。
また、この空気入りタイヤ1では、細リブ63の幅Wと、凸部6の幅Wfとが、0.075≦W/Wf≦0.750の関係を有する(図5参照)。これにより、細リブ63の幅Wが適正化される利点がある。すなわち、0.075≦W/Wfであることにより、細リブ63の幅Wが確保されて、細リブ63による残留エアの拡散作用が確保される。また、W/Wf≦0.750であることにより、細リブ63自身における加硫成形不良の発生(細リブ63の頂面の外観不良が目立つ事態)が抑制される。
また、この空気入りタイヤ1では、細リブ63の高さHと、凸部6の高さHfとが、0.01≦H/Hf≦0.25の関係を有する(図5参照)。これにより、細リブ63の高さHが適正化される利点がある。すなわち、0.01≦H/Hfであることにより、細リブ63の高さHが確保されて、細リブ63による残留エアの拡散作用が確保される。また、H/Hf≦0.25であることにより、細リブ63自身における加硫成形不良の発生(細リブ63の頂面の外観不良が目立つ事態)が抑制される。
また、この空気入りタイヤ1では、細リブ63のタイヤ径方向の長さLと、凸部6のタイヤ径方向の長さLHとが、0.1≦L/LHの関係を有する(図3および図18参照)。これにより、細リブ63の長さLが確保されて、細リブ63による残留エアの拡散作用が向上する利点がある。
また、この空気入りタイヤ1では、凸部6の高さHfが、2[mm]≦Hf≦10[mm]の範囲にある(図5参照)。これにより、凸部6の高さHfが適正化される利点がある。すなわち、2[mm]≦Hfであることにより、凸部6の高さHfが確保されて、凸部6の乱流発生作用が適正に確保される。また、Hf≦10[mm]であることにより、残留エアに起因する凸部6の外観不良の発生を抑制できる。
図31は、この発明の実施の形態にかかる空気入りタイヤの性能試験の結果を示す図表である。
この性能試験では、相互に異なる複数の試験タイヤについて、凸部の加硫成形不良に関する評価が行われた。この評価では、タイヤサイズ195/65R15の試験タイヤが、仕様ごとに10本ずつ試作されて、凸部の外観が観察される。そして、加硫成形不良が発生した凸部の本数と凸部の総数との比が外観不良率[%]として算出される。この数値は、小さいほど好ましい。
実施例1〜8の試験タイヤは、図1および図2の構成において、いずれも凸部6が細リブ63を有している。また、凸部6の枚数が、サイドウォール部の片側面で48枚であり、凸部6が、図2に示すようにタイヤ周方向に一列に配列される。また、凸部6のタイヤ径方向の長さLHがLH=50[mm]であり、凸部6の幅WfがWf=2.0[mm]である。
また、実施例1〜3では、図3〜図5に示すように、細リブ63が、凸部6をタイヤ径方向に縦断して凸部6の両端部を連結している。実施例4〜7では、図18および図19に示すように、一対の細リブ63が、凸部6のタイヤ径方向の両端部にそれぞれ配置されている。実施例8では、図14および図15に示すように、細リブ63が環状構造を有している。
従来例の試験タイヤは、実施例1において、凸部6が細リブ63を有していない。
試験結果に示すように、実施例1〜8の試験タイヤでは、凸部の外観不良率が低下することが分かる。