JP6200133B2 - ケトミウム・グロボーサム関連種群の検出方法 - Google Patents
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Description
飲食品製造において、内容物(飲食品自体)やその原材料だけではなく、製造装置、製造環境、包装容器等に関しても殺菌処理が行われる。内容物やその原材料に関しては加熱殺菌を行うが、製造環境、製造設備、包装容器等に関しては薬剤による殺菌等種々の殺菌法が提案されている。その1つである無菌充填方式は、製造環境、製造設備、包装容器等を過酢酸等を用いて殺菌し、加熱殺菌を行った内容物を充填し製品の商業的無菌性を担保するものである。
ここで、ケトミウム・グロボーサムは、無菌充填方式で用いられる殺菌剤の1種である過酢酸に対し耐性を有することが知られており、過酢酸を用いて滅菌、殺菌を行う飲食品製造においてケトミウム・グロボーサムは最重要危害菌に位置付けられている。上記のように、ケトミウム・グロボーサム、及びケトミウム・グロボーサムの子のう胞子の形態との類似性が極めて高く分子系統的に極めて近縁なケトミウム・クルエンタムなど、ケトミウム・グロボーサム及びその近縁種(本明細書において、「ケトミウム・グロボーサム関連種群」ともいう)は遺伝的な類縁性が高く、かつ加工食品の重要な原料であるオオムギやコムギ、さらにはキュウリ、ヨモギなどの食用植物からの検出報告があるため、ケトミウム・グロボーサム関連種群の漏れのない検出が食品の微生物制御の観点では極めて重要である。
このように真菌の検出に長期間を要し、さらには他の種群との識別結果の正確性に問題がある形態学的な方法は、飲食品の衛生管理、原材料の鮮度確保、流通上の制約など観点から、必ずしも満足できるとは言いがたい。従って、こうした従来の迅速性と正確性の問題を解決した検出方法の確立が求められてきた。
さらに、ケトミウム・グロボーサムを始めとする真菌の過酢酸耐性は、菌種により強さ、すなわち無菌充填方式における危害性が大きく異なる。したがって、飲食品業界などにおいて危害菌の迅速かつ正確なリスク評価を行うには、ケトミウム・グロボーサム及びその近縁種を迅速かつ正確に検出することが重要となる。
(a)配列番号1に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド、又は配列番号1に記載の塩基配列において1若しくは数個の塩基が欠失、置換、挿入若しくは付加されておりかつケトミウム・グロボーサム関連種群の検出に使用できるオリゴヌクレオチド
(b)配列番号2に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド、又は配列番号2に記載の塩基配列において1若しくは数個の塩基が欠失、置換、挿入若しくは付加されておりかつケトミウム・グロボーサム関連種群の検出に使用できるオリゴヌクレオチド
また、本発明は、前記オリゴヌクレオチド又はオリゴヌクレオチド対を含むケトミウム・グロボーサム関連種群検出キットに関する。
前記分子系統樹の作成方法としては特に制限はなく、通常の方法により作成することができる。例えば、近隣結合法(neighbor-joining method)、最大節約法(Maximum parsimony)、最尤法(Maximum likelihood estimation)、ベイズ法、非加重結合法(Unweighted Pair Group Method with Arithmetic mean)等を用いて作成することができる。本発明においては、近隣結合法を用いて分子系統樹を作成することが好ましい。また、本発明において、ケトミウム属真菌のITS領域の塩基配列に基づいて分子系統樹を作成することが好ましい。
本発明において、「ケトミウム・グロボーサム関連種群」には、前記ケトミウム・グロボーサム及びケトミウム・クルエンタムの他、ケトミウム・アンデュラチュラム(Chaetomium undulatulum)、ケトミウム・スバフィン(Chaetomium subaffine)、ケトミウム・レクタングラー(Chaetomium rectangulare)、ケトミウム・エラタム(Chaetomium elatum)、ケトミウム・インターラプタム(Chaetomium interruptum)、ケトミウム・メガロカルパム(Chaetomium megalocarpum)及びケトミウム・グランデ(Chaetomium grande)が含まれる。
発明者等は、ケトミウム・グロボーサム関連種群のITS領域の部分塩基配列を決定し、種間での遺伝的距離と塩基配列の相同性の解析を行った。すなわち、シークエンシング法によりITS領域の塩基配列を決定し、アライメント解析により一致する塩基領域の検討を行った。その結果、ITS領域の塩基配列中に同一のグループ内では保存性が高いが異なるグループ間で塩基配列の保存性が低く、グループによって固有の塩基配列を有する可変部位を見い出した。この可変部位においてケトミウム・グロボーサム関連種群はグループ固有の塩基配列を有している。そのため、当該領域はケトミウム・グロボーサム関連種群を迅速かつ正確に検出するための遺伝学的な指標として有用である。
(a)配列番号1に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド、又は配列番号1に記載の塩基配列において1若しくは数個の塩基が欠失、置換、挿入若しくは付加されておりかつケトミウム・グロボーサム関連種群の検出に使用できるオリゴヌクレオチド
(b)配列番号2に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド、又は配列番号2に記載の塩基配列において1若しくは数個の塩基が欠失、置換、挿入若しくは付加されておりかつケトミウム・グロボーサム関連種群の検出に使用できるオリゴヌクレオチド
前記オリゴヌクレオチド対を使用してケトミウム・グロボーサム関連種群を検出し、他の菌種群と識別することが可能となる。
前記(a)のオリゴヌクレオチド(本明細書において、Chae3Fともいう)及び前記(b)のオリゴヌクレオチド(本明細書において、Chae3Rともいう)はそれぞれ、配列番号3に記載の塩基配列のうち19位〜38位までの領域及び157位〜176位までの領域にストリンジェントな条件でハイブリダイズ可能なオリゴヌクレオチドである。これらの領域は種間での塩基配列の保存性が低い可変領域であり、これらの領域の塩基配列はケトミウム・グロボーサム関連種群が固有に有する塩基配列であることを本発明者らが見出した。
したがって、前記(a)及び(b)のオリゴヌクレオチドを用いて、ケトミウム・グロボーサム関連種群を迅速かつ正確に検出することができる。具体的には、本領域にポリメラーゼによるDNAの伸長方向であるプライマーの3’末端5塩基以上がハイブリダイズするように設計すればケトミウム・グロボーサム関連種群に特異的なプライマーとして用いることが可能であり、それらのプライマーを用いたPCR法による検出が可能となる。また、本領域を10塩基以上ハイブリダイズするように設計したプローブは、ケトミウム・グロボーサム関連種群のITS領域の部分塩基配列と特異的にハイブリダイズするため、ハイブリダイズの有無によりケトミウム・グロボーサム関連種群を検出することが可能となる。
(c)配列番号3に記載のITS領域の塩基配列又はその相補配列
(d)配列番号3に記載の塩基配列において1若しくは数個(好ましくは1〜25個、より好ましくは1〜20個、さらに好ましくは1〜15個、特に好ましくは1〜10個、最も好ましくは1〜5個)の塩基が欠失、置換、挿入若しくは付加されておりかつケトミウム・グロボーサム関連種群の検出に使用できる塩基配列、配列番号3に記載の塩基配列に対して70%以上(好ましくは80%以上、より好ましくは85%以上、さらに好ましくは90%以上、なお好ましくは95%以上、特に好ましくは97%以上)の相同性を有しかつケトミウム・グロボーサム関連種群の検出に使用できる塩基配列、又はこれらの相補配列
塩基配列の相同性については、Lipman-Pearson法(Science,1985,227,p.1435)等によって計算される。具体的には、遺伝情報処理ソフトウェアGenetyx-Win(ソフトウェア開発製)のホモロジー解析(Search homology)プログラムを用いて、パラメーターであるUnit size to compare(ktup)を2として解析を行うことにより算出することができる。
また、前記オリゴヌクレオチドは、固相担体に結合させて捕捉プローブとして用いることもできる。この場合、捕捉プローブと、標識核酸プローブの組み合わせでサンドイッチアッセイを行うこともできるし、標識を目示として標的核酸を捕捉することもできる。
被検体中のケトミウム・グロボーサム関連種群を検出するためには、前記(a)及び(b)のオリゴヌクレオチドからなるオリゴヌクレオチド対を標識化して核酸プローブとし、得られた核酸プローブをDNA又はRNAとハイブリダイズさせ、ハイブリダイズしたプローブの標識を適当な検出方法により検出すればよい。上記核酸プローブはケトミウム・グロボーサム関連種群のITS領域の塩基配列中の可変部位と特異的にハイブリダイズするので、被検体中のケトミウム・グロボーサム関連種群を迅速かつ正確に単分岐内の菌種を漏れなく検出することが出来る。DNA又はRNAとハイブリダイズした核酸プローブの標識を測定する方法としては、通常の方法(FISH法、ドットブロット法、サザンブロット法、ノーザンブロット法等)を用いることができる。
本発明において、PCR法により増幅反応を行いケトミウム・グロボーサム関連種群の検出を行う場合について詳しく説明する。しかし、本発明はこれらに制限するものではない。
前記(a)及び(b)のオリゴヌクレオチドは、PCRによって前記(c)及び(d)の塩基配列のいずれかで表される核酸又はその一部を増幅でき、ケトミウム・グロボーサム関連種群を迅速かつ正確に検出するための核酸プライマーとして機能し得る。したがって、前記(a)及び(b)のオリゴヌクレオチドからなるオリゴヌクレオチド対をケトミウム・グロボーサム関連種群検出用オリゴヌクレオチド対とすることができる。
例えば、前記(a)及び(b)のオリゴヌクレオチドからなるオリゴヌクレオチド対を核酸プライマーとして用いてPCRを行う場合、好ましいPCR条件としては、2本鎖DNAを1本鎖にする熱変性反応を95℃以上98℃以下で10秒以上60秒以下行い、プライマー対を1本鎖DNAにハイブリダイズさせるアニーリング反応を50℃以上(好ましくは52℃以上、より好ましくは55℃以上)60℃以下(好ましくは58℃以下、より好ましくは56℃以下)で5秒以上(好ましくは10秒以上)120秒以下(好ましくは60秒以下)行い、DNAポリメラーゼを作用させる伸長反応を約72℃で10秒以上60秒以下行い、これらを1サイクルとしたものを30サイクル以上35サイクル以下行う。
検体に検出対象真菌が含まれる場合、本発明のオリゴヌクレオチド対をプライマーセットとして使用してPCRを行い、得られたPCR産物について電気泳動を行うと、特定のサイズでDNA断片が確認される。具体的には、検体にケトミウム・グロボーサム関連種群が含まれる場合、前記(a)及び(b)のオリゴヌクレオチドからなるオリゴヌクレオチド対を核酸プライマーとして用いて得られたPCR産物の電気泳動を行うと、約150bpのサイズでDNA断片が確認される。このような操作を行うことにより、検体に検出対象真菌が含まれているかを確認することができる。
塩基配列を解析・決定する方法としては特に限定されず、通常行われているRNA又はDNAシークエンシングの手法を用いることができる。
具体的には、マクサム−ギルバート法、サンガー法等の電気泳動法、質量分析法、ハイブリダイゼーション法等が挙げられる。サンガー法においては、放射線標識法、蛍光標識法等により、プライマー又は、ターミネーターを標識する方法が挙げられる。
検体からゲノムDNAを調製する方法としては、ケトミウム・グロボーサム関連種群の検出を行うのに未精製の状態でも十分な精製度及び量のDNAが得られるのであれば特に制限されず、さらに分離、抽出、濃縮、精製等の前処理をして使用することもできる。例えば、フェノール及びクロロホルムで処理したり、市販の抽出キットを用いて精製して、核酸の純度を高めて使用することができる。また、被検体中のRNAを逆転写して得られるDNAを用いることもできる。
ケトミウム・グロボーサム関連種群のうち、ケトミウム・グロボーサムは、酸性食品、乳製品、甘味食品からの検出例の報告の多い過酢酸耐性菌類である。ここで、「過酢酸耐性菌類」とは、無菌充填飲食品の事故報告がある菌種又は無菌充填飲食品の事故を起こし得る菌種であり、かつ1000ppmの過酢酸殺菌(40℃、1分間)処理でも生残する菌類を指す。具体的には、前記条件下の過酢酸殺菌によっても、日本の食品業界において広く用いられる、商業的無菌を意味する殺菌である6D殺菌(初発菌数を1/1000000に低減する殺菌)を確保することが出来ない菌類を指す。なお、ケトミウム・グロボーサム関連種群のうち、食品又は飲料の生産現場で危害菌として検出されたとの報告があるのはケトミウム・グロボーサムだけである。従って、例えば、製造環境の殺菌に過酢酸殺菌を用いる食品や飲料においてカビによる事故が起こった場合、本発明を実施することで、危害菌すなわちケトミウム・グロボーサムの検出を迅速かつ正確に行うことが可能となる。
(a)配列番号1に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド、又は配列番号1に記載の塩基配列において1若しくは数個(好ましくは1〜5個、より好ましくは1〜4個、さらに好ましくは1〜3個、よりさらに好ましくは1又は2個、特に好ましくは1個)の塩基が欠失、置換、挿入若しくは付加されておりかつケトミウム・グロボーサム関連種群の検出に使用できるオリゴヌクレオチド、若しくは配列番号1に記載の塩基配列との相同性が70%以上(好ましくは80%以上、より好ましくは85%以上、さらに好ましくは90%以上、特に好ましくは95%以上)でありかつケトミウム・グロボーサム関連種群の検出に使用できるオリゴヌクレオチド
(b)配列番号2に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド、又は配列番号2に記載の塩基配列において1若しくは数個(好ましくは1〜5個、より好ましくは1〜4個、さらに好ましくは1〜3個、よりさらに好ましくは1又は2個、特に好ましくは1個)の塩基が欠失、置換、挿入若しくは付加されておりかつケトミウム・グロボーサム関連種群の検出に使用できるオリゴヌクレオチド、若しくは配列番号2に記載の塩基配列との相同性が70%以上(好ましくは80%以上、より好ましくは85%以上、さらに好ましくは90%以上、特に好ましくは95%以上)でありかつケトミウム・グロボーサム関連種群の検出に使用できるオリゴヌクレオチド
<3>前記(a)及び(b)のオリゴヌクレオチドからなるオリゴヌクレオチド対を核酸プライマーとして用いてポリメラーゼ連鎖反応法を行い、ケトミウム・グロボーサム関連種群のITS領域の部分塩基配列で表される核酸の一部を増幅し、増幅産物の有無を確認し、ケトミウム・グロボーサム関連種群の検出を行う、前記<2>項記載の検出方法。
<4>前記ケトミウム・グロボーサム関連種群に、ケトミウム・グロボーサム、ケトミウム・クルエンタム、ケトミウム・アンデュラチュラム、ケトミウム・スバフィン、ケトミウム・レクタングラー、ケトミウム・エラタム、ケトミウム・インターラプタム、ケトミウム・メガロカルパム及びケトミウム・グランデが含まれる、前記<1>〜<3>のいずれか1項記載の検出方法。
<5>ケトミウム・グロボーサム、ケトミウム・クルエンタム、ケトミウム・アンデュラチュラム、ケトミウム・スバフィン、ケトミウム・レクタングラー、ケトミウム・エラタム、ケトミウム・インターラプタム、ケトミウム・メガロカルパム及びケトミウム・グランデからなる群より選ばれる少なくとも1種を検出する、前記<1>〜<4>のいずれか1項記載の検出方法。
<6>前記ケトミウム・グロボーサム関連種群のITS領域の部分塩基配列が下記(c)及び(d)の塩基配列のいずれかである、前記<1>〜<5>のいずれか1項記載の検出方法。
(c)配列番号3に記載のITS領域の部分塩基配列又はその相補配列
(d)配列番号3に記載の塩基配列において1若しくは数個(好ましくは1〜25個、より好ましくは1〜20個、さらに好ましくは1〜15個、特に好ましくは1〜10個、最も好ましくは1〜5個)の塩基が欠失、置換、挿入若しくは付加されておりかつケトミウム・グロボーサム関連種群の検出に使用できる塩基配列、配列番号3に記載の塩基配列に対して70%以上(好ましくは80%以上、より好ましくは85%以上、さらに好ましくは90%以上、なお好ましくは95%以上、特に好ましくは97%以上)の相同性を有しかつケトミウム・グロボーサム関連種群の検出に使用できる塩基配列、又はこれらの相補配列
<9>前記(a)及び(b)のオリゴヌクレオチドがそれぞれ、前記(c)及び(d)の塩基配列のいずれかで表される核酸にハイブリダイズすることができ、ケトミウム・グロボーサム関連種群を検出するための核酸プローブ又は核酸プライマーとして機能し得る、前記<7>又は<8>項記載のオリゴヌクレオチド又はオリゴヌクレオチド対。
<10>前記(a)及び(b)のオリゴヌクレオチドが、ポリメラーゼ連鎖反応法によって前記(c)及び(d)の塩基配列のいずれかで表される核酸の一部を増幅でき、ケトミウム・グロボーサム関連種群を検出するための核酸プライマーとして機能し得るものである、前記<9>項記載のオリゴヌクレオチド又はオリゴヌクレオチド対。
<13>ケトミウム・グロボーサム関連種群検出用核酸プライマーの製造のための、前記(a)及び(b)のオリゴヌクレオチドの使用。
<14>前記(a)及び(b)のオリゴヌクレオチドをケトミウム・グロボーサム関連種群検出用核酸プライマーとして使用する方法。
下記の方法により、ケトミウム属に属する菌類各種(ケトミウム・グロボーサム、ケトミウム・クルエンタム、ケトミウム・アンデュラチュラム、ケトミウム・スバフィン、ケトミウム・レクタングラー、ケトミウム・エラタム、ケトミウム・インターラプタム、ケトミウム・メガロカルパム、ケトミウム・グランデ、ケトミウム・ヒスパリカム(Chaetomium hispanicum)、ケトミウム・フニコラ(Chaetomium funicola)、ケトミウム・インディカム(Chaetomium indicum)、ケトミウム・アトロブランネウム(Chaetomium atrobrunneum)、ケトミウム・ニグリコーラ(Chaetomium nigricolor)、ケトミウム・ムロラム(Chaetomium murorum)、ケトミウム・クリスパタム(Chaetomium crispatum)、ケトミウム・サーモフィルス(Chaetomium thermophilum)など)のITS領域の塩基配列を決定した。
目的とする部位のPCR増幅は、PuRe TaqTM Ready-To-Go PCR Beads(GE Health Care UK LTD)を用いて、プライマーとして、ITS4(5'-tcctccgcttattgatatg-3':配列番号4)、及びITS1(5'-tccgtaggtgaacctgcgg-3':配列番号5)又はITS5(5'-ggaagtaaaagtaacaagg-3':配列番号6)(White T.J.,Bruns T.D.,Lee S.B.,Taylor J.W.,Amplification and direct sequencing of fungal ribosomal DNA for phylogenetics;Innis M.A.,Gelfan D.H.,Sninsky J.J.,White T.J.(eds),PCR Protocols:A Guide to the Methods and Application,San Diego:Academic Press,p.315-322,1990)を使用した。増幅条件は、熱変性:95℃1分、アニーリング55℃1分、伸長反応72℃1分、35サイクルで実施した。PCR産物は、Auto SegTM G-50(Amersham Pharmacia Biotech社製)を使用し精製し、ラベル化は、BigDye terminator Ver.3.1(商品名、Applied Biosystems社製)を使用し、ABI PRISM 3130 Genetic Analyzer(Applied Biosystems社製)で電気泳動を実施した。電気泳動時の蛍光シグナルからの塩基配列の決定には、ソフトウエア‘ATGC Ver.4’(Genetyx社製)を使用した。
シークエンシング法により決定したケトミウム属菌類各種や、DNA data bank of Japan(DDBJ:http://www.ddbj.nig.ac.jp/Welcome-j.html)から入手した各種ケトミウム属菌類及び類縁菌(チーラビア・アウランティアカ(Thielavia aurantiaca)、チーラビア・アレナリア(Thielavia arenaria)、チーラビア・クワイテンシス(Thielavia kuwaitensis)、チーラビア・ミヌタ(Thielavia minuta)、チーラビア・テレストリス(Thielavia terrestris)、チーラビア・テリコラ(Thielavia terricola)及びチーラビア・トルトウス(Thielavia tortuosa)等)のITS領域の部分塩基配列情報をもとに、Clustal W(http://clustalw.ddbj.nig.ac.jp/top-j.html)を用いてアライメント解析を行い、NJ-Protを用いて近隣結合法による解析を行い、分子系統樹を作成した。作成した分子系統樹を図1に示す。
上記の方法により決定したケトミウム属真菌各種や、各種菌類の公知のITS領域の塩基配列情報をもとに、Clustal W(http://clustalw.ddbj.nig.ac.jp/top-j.html)を用いてアライメント解析を行い、ケトミウム・グロボーサム関連種群に特異的な塩基配列(Chae3F:aaccagcggagggatcatta(配列番号1)、Chae3R:aattatcaagagtttggtga(配列番号2))を決定した。
(1)プライマーの設計
上記で決定したケトミウム・グロボーサム関連種群に特異的な塩基配列部位をもとに、配列番号1に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチドからなるプライマー(Chae3Fプライマー)及び配列番号2に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチドからなるプライマー(Chae3Rプライマー)を設計し、シグマアルドリッチジャパン社に合成依頼し(脱塩精製品、0.02μmolスケール)、購入した。
設計したプライマーの有効性の評価に用いる菌類、すなわちケトミウム・グロボーサム関連種群とその他のケトミウム属菌類、並びに飲食品での事故事例で報告されている真菌等としては、表1及び2に記載した菌株を使用した。これらの菌株に関しては、千葉大学真菌医学研究センターが保管しIFMナンバーにより管理されている株、独立行政法人製品評価技術基盤機構が保管しNBRCナンバーにより管理されている株、及びThe Centraalbureau voor Schimmelculturesが保管しCBSナンバーにより管理されている株を入手し、使用した。
各菌株を至適条件下で培養した。培養条件についてはポテトデキストロース培地(商品名:パールコア ポテトデキストロース寒天培地、栄研化学株式会社製)を用いて各菌の至適温度で7日間培養した。
DNAテンプレートとして上記で調製したゲノムDNA溶液1μL、Pre Mix Taq(商品名、タカラバイオ社製)13μL及び無菌蒸留水10μLを混合し、Chae3Fプライマー(20pmol/μL)0.5μL及びChae3Rプライマー(20pmol/μL)0.5μLを加え、25μLのPCR溶液を調製した。
PCR反応液について、自動遺伝子増幅装置サーマルサイクラーDICE(タカラバイオ)を用いて遺伝子増幅処理を行った。PCR反応条件は、(i)95℃、1分間の熱変性反応、(ii)55℃、1分間のアニーリング反応、および(iii)72℃、1分間の伸長反応を1サイクルとしたものを35サイクル行った。
Claims (10)
- 下記(a)及び(b)のオリゴヌクレオチドからなるオリゴヌクレオチド対を用いてケトミウム・グロボーサム関連種群(Chaetomium globosum species group)の検出を行う、ケトミウム・グロボーサム関連種群の検出方法であって、ケトミウム・グロボーサム関連種群の検出を行うために、前記オリゴヌクレオチド対を用いてケトミウム・グロボーサム関連種群の18S rDNAと28S rDNAとの間に存在するInternal Transcribed Spacer領域の部分塩基配列で表される核酸の一部を増幅し、増幅産物の有無を確認し、ケトミウム・グロボーサム関連種群を検出する方法。
(a)配列番号1に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド、又は配列番号1に記載の塩基配列において1個の塩基が欠失、置換、挿入若しくは付加されておりかつケトミウム・グロボーサム関連種群の検出に使用できるオリゴヌクレオチド
(b)配列番号2に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド、又は配列番号2に記載の塩基配列において1個の塩基が欠失、置換、挿入若しくは付加されておりかつケトミウム・グロボーサム関連種群の検出に使用できるオリゴヌクレオチド - 前記(a)及び(b)のオリゴヌクレオチドからなるオリゴヌクレオチド対を核酸プライマーとして用いてポリメラーゼ連鎖反応法を行い、ケトミウム・グロボーサム関連種群のInternal Transcribed Spacer領域の部分塩基配列で表される核酸の一部を増幅し、増幅産物の有無を確認し、ケトミウム・グロボーサム関連種群の検出を行う、請求項1記載の検出方法。
- 前記ケトミウム・グロボーサム関連種群に、ケトミウム・グロボーサム(Chaetomium globosum)、ケトミウム・クルエンタム(Chaetomium cruentum)、ケトミウム・アンデュラチュラム(Chaetomium undulatulum)、ケトミウム・スバフィン(Chaetomium subaffine)、ケトミウム・レクタングラー(Chaetomium rectangulare)、ケトミウム・エラタム(Chaetomium elatum)、ケトミウム・インターラプタム(Chaetomium interruptum)、ケトミウム・メガロカルパム(Chaetomium megalocarpum)及びケトミウム・グランデ(Chaetomium grande)が含まれる、請求項1又は2記載の検出方法。
- ケトミウム・グロボーサム(Chaetomium globosum)、ケトミウム・クルエンタム(Chaetomium cruentum)、ケトミウム・アンデュラチュラム(Chaetomium undulatulum)、ケトミウム・スバフィン(Chaetomium subaffine)、ケトミウム・レクタングラー(Chaetomium rectangulare)、ケトミウム・エラタム(Chaetomium elatum)、ケトミウム・インターラプタム(Chaetomium interruptum)、ケトミウム・メガロカルパム(Chaetomium megalocarpum)及びケトミウム・グランデ(Chaetomium grande)からなる群より選ばれる少なくとも1種を検出する、請求項1〜3のいずれか1項記載の検出方法。
- 前記ケトミウム・グロボーサム関連種群のInternal Transcribed Spacer領域の部分塩基配列が下記(c)及び(d)の塩基配列のいずれかである、請求項1〜4のいずれか1項記載の検出方法。
(c)配列番号3に記載のInternal Transcribed Spacer領域の部分塩基配列又はその相補配列
(d)配列番号3に記載の塩基配列において1若しくは数個の塩基が欠失、置換、挿入若しくは付加されておりかつケトミウム・グロボーサム関連種群の検出に使用できる塩基配列、又はその相補配列 - 下記(a)及び(b)のオリゴヌクレオチドからなるオリゴヌクレオチド対。
(a)配列番号1に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド、又は配列番号1に記載の塩基配列において1個の塩基が欠失、置換、挿入若しくは付加されておりかつケトミウム・グロボーサム関連種群(Chaetomium globosum species group)の検出に使用できるオリゴヌクレオチド
(b)配列番号2に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド、又は配列番号2に記載の塩基配列において1個の塩基が欠失、置換、挿入若しくは付加されておりかつケトミウム・グロボーサム関連種群(Chaetomium globosum species group)の検出に使用できるオリゴヌクレオチド - 前記オリゴヌクレオチドが核酸プライマーである、請求項6記載のオリゴヌクレオチド対。
- 前記(a)及び(b)のオリゴヌクレオチドがそれぞれ、下記(c)及び(d)の塩基配列のいずれかで表される核酸にハイブリダイズすることができ、ケトミウム・グロボーサム関連種群を検出するための核酸プライマーとして機能し得る、請求項6又は7記載のオリゴヌクレオチド対。
(c)配列番号3に記載のInternal Transcribed Spacer領域の部分塩基配列又はその相補配列
(d)配列番号3に記載の塩基配列において1若しくは数個の塩基が欠失、置換、挿入若しくは付加されておりかつケトミウム・グロボーサム関連種群の検出に使用できる塩基配列、又はその相補配列 - 前記(a)及び(b)のオリゴヌクレオチドが、ポリメラーゼ連鎖反応法によって前記(c)及び(d)の塩基配列のいずれかで表される核酸の一部を増幅でき、ケトミウム・グロボーサム関連種群を検出するための核酸プライマーとして機能し得るものである、請求項8記載のオリゴヌクレオチド対。
- 請求項6〜9のいずれか1項記載のオリゴヌクレオチド対を含むケトミウム・グロボーサム関連種群(Chaetomium globosum species group)検出キット。
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