JP2014018092A - ケトミウム・グロボーサム関連種群の検出方法 - Google Patents

ケトミウム・グロボーサム関連種群の検出方法 Download PDF

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Abstract

【課題】ケトミウム・グロボーサム関連種群(Chaetomium globosum species group)を迅速かつ正確に検出する方法を提供する。
【解決手段】下記(a)及び(b)のオリゴヌクレオチドからなるオリゴヌクレオチド対を用いてケトミウム・グロボーサム関連種群の検出を行う、ケトミウム・グロボーサム関連種群の検出方法。(a)特定の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド、又は特定の塩基配列において1若しくは数個の塩基が欠失、置換、挿入若しくは付加されておりかつケトミウム・グロボーサム関連種群の検出に使用できるオリゴヌクレオチド。(b)特定の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド、又は特定の塩基配列において1若しくは数個の塩基が欠失、置換、挿入若しくは付加されておりかつケトミウム・グロボーサム関連種群の検出に使用できるオリゴヌクレオチド。
【選択図】なし

Description

本発明は、ケトミウム・グロボーサム関連種群(Chaetomium globosum species group)の検出方法に関する。
糸状菌の一種であるケトミウム(Chaetomium)属の菌類は、自然界に広く分布し、食品や飲料の変敗に関与することが知られている。このうち、ケトミウム属菌類の1種であるケトミウム・グロボーサム(Chaetomium globosum)は飲食品事故の原因菌として知られている。また、ケトミウム・クルエンタム(Chaetomium cruentum)は、ケトミウム・グロボーサムとは最低生育温度やコロニーの色調が異なるが、子のう胞子の形態を比較すると極めて類似性が高く、かつ分子系統的に単一の分岐を形成するため、容易に識別できないことが知られている。これら近縁性の極めて高い2種を含め、分子系統的にケトミウム・グロボーサムと非常に近縁にある種を纏めてケトミウム・グロボーサム関連種群と呼ばれることが知られている。
飲食品製造において、内容物(飲食品自体)やその原材料だけではなく、製造装置、製造環境、包装容器等に関しても殺菌処理が行われる。内容物やその原材料に関しては加熱殺菌を行うが、製造環境、製造設備、包装容器等に関しては薬剤による殺菌等種々の殺菌法が提案されている。その1つである無菌充填方式は、製造環境、製造設備、包装容器等を過酢酸等を用いて殺菌し、加熱殺菌を行った内容物を充填し製品の商業的無菌性を担保するものである。
ここで、ケトミウム・グロボーサムは、無菌充填方式で用いられる殺菌剤の1種である過酢酸に対し耐性を有することが知られており、過酢酸を用いて滅菌、殺菌を行う飲食品製造においてケトミウム・グロボーサムは最重要危害菌に位置付けられている。上記のように、ケトミウム・グロボーサム、及びケトミウム・グロボーサムの子のう胞子の形態との類似性が極めて高く分子系統的に極めて近縁なケトミウム・クルエンタムなど、ケトミウム・グロボーサム及びその近縁種(本明細書において、「ケトミウム・グロボーサム関連種群」ともいう)は遺伝的な類縁性が高く、かつ加工食品の重要な原料であるオオムギやコムギ、さらにはキュウリ、ヨモギなどの食用植物からの検出報告があるため、ケトミウム・グロボーサム関連種群の漏れのない検出が食品の微生物制御の観点では極めて重要である。
ケトミウム・グロボーサム関連種群の検出方法、及び他の種との識別方法は、培養を用いた形態学的な分類が主となっている。この方法は形態学的な特徴が確認できるまで培養を続ける必要があるため、最短でも14日以上の長期間を必要とする。また、形態学的な同定には極めて高い専門性を必要とするため、判定者によって同定結果が異なる危険性が否定できない。さらには加熱や薬剤などにより損傷菌体等は形態形成能を失うケースが存在し、それら菌体は長期間培養を行っても特徴的な形態を形成しないことから、検出・識別結果の正確性に問題があった。
このように真菌の検出に長期間を要し、さらには他の種群との識別結果の正確性に問題がある形態学的な方法は、飲食品の衛生管理、原材料の鮮度確保、流通上の制約など観点から、必ずしも満足できるとは言いがたい。従って、こうした従来の迅速性と正確性の問題を解決した検出方法の確立が求められてきた。
特許文献1には、ケトミウム属の菌類のゲノムDNA中の18S rRNA遺伝子の特定領域を増幅することにより、ケトミウム属の菌類を検出する方法が記載されている。しかし、特許文献1記載の方法はケトミウム属の菌類を属レベルで検出することはできるが、ケトミウム・グロボーサム関連種群のみを検出することができない。
特開2007−174903号公報
飲食品の無菌充填方式はホットパック充填方式と異なり、包装容器を加熱しないため、包装容器には耐熱性が求められない。したがって、過酢酸や過酸化水素を用いて製造環境、製造設備、包装容器等を殺菌する無菌充填方式を導入することにより、包装容器の肉薄化が可能になり、生産コストの減少や、包装容器運搬に係るコストの低減及びCO2排出量の低下が実現できる。したがって、過酢酸耐性を有し、無菌充填方式における危害菌であるケトミウム・グロボーサム及びその近縁種の迅速かつ正確な検出が、特に飲食品業界において強く望まれている。
さらに、ケトミウム・グロボーサムを始めとする真菌の過酢酸耐性は、菌種により強さ、すなわち無菌充填方式における危害性が大きく異なる。したがって、飲食品業界などにおいて危害菌の迅速かつ正確なリスク評価を行うには、ケトミウム・グロボーサム及びその近縁種を迅速かつ正確に検出することが重要となる。
本発明は、飲食品業界などにおいて危害菌とされているケトミウム・グロボーサム関連種群を迅速かつ正確に検出する方法を提供することを課題とする。また、本発明はこの方法に適用可能なオリゴヌクレオチド、オリゴヌクレオチド対及び検出キットを提供することを課題とする。
上述のようにケトミウム・グロボーサム関連種群の検出を困難にしている一因として、従来の公知のプライマーを用いたPCR法ではケトミウム・グロボーサム関連種群に対する特異性が低く、擬陽性や擬陰性の結果となる可能性が高い点が挙げられる。これは、ケトミウム・グロボーサム関連種群の遺伝子のデータベースが現在のところ脆弱であり、ケトミウム・グロボーサム関連種群に保存されている遺伝子領域が正確に解析されていないために、ケトミウム・グロボーサム関連種群を迅速かつ正確に検出するための高感度のプライマーの設計等が困難となっていることなどが原因であると考えた。
このような課題に鑑み、本発明者等は、ケトミウム・グロボーサム関連種群を迅速かつ正確に検出しうる新たなDNA領域を探索すべく、鋭意検討を行った。具体的には、本発明者らは、ケトミウム・グロボーサム関連種群の18S rDNAと28S rDNAとの間に存在する内部転写スペーサー(Internal Transcribed Spacer、以下、本明細書において「ITS」ともいう)領域の塩基配列に基づく分子系統分類学的手法を用いて、鋭意検討を行った。その結果、ケトミウム・グロボーサム関連種群のITS領域の中に、他の菌類のものとは明確に区別しうる、特異的な塩基配列を有する部位(以下、「可変部位」ともいう)が存在することを見出した。また、これらの可変部位をターゲットとすることでケトミウム・グロボーサム関連種群を迅速かつ正確に検出できることを見出した。本発明はこれらの知見に基づき完成するに至った。
本発明は、下記(a)及び(b)のオリゴヌクレオチドからなるオリゴヌクレオチド対を用いてケトミウム・グロボーサム関連種群の検出を行う、ケトミウム・グロボーサム関連種群の検出方法に関する。
(a)配列番号1に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド、又は配列番号1に記載の塩基配列において1若しくは数個の塩基が欠失、置換、挿入若しくは付加されておりかつケトミウム・グロボーサム関連種群の検出に使用できるオリゴヌクレオチド
(b)配列番号2に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド、又は配列番号2に記載の塩基配列において1若しくは数個の塩基が欠失、置換、挿入若しくは付加されておりかつケトミウム・グロボーサム関連種群の検出に使用できるオリゴヌクレオチド
また、本発明は、前記(a)及び(b)のオリゴヌクレオチドからなる群より選ばれるオリゴヌクレオチド、又は前記(a)及び(b)のオリゴヌクレオチドからなるオリゴヌクレオチド対に関する。
また、本発明は、前記オリゴヌクレオチド又はオリゴヌクレオチド対を含むケトミウム・グロボーサム関連種群検出キットに関する。
本発明の検出方法は、飲食品の汚染事故の原因菌の1種であるケトミウム・グロボーサム、及びケトミウム・グロボーサムとITS領域の塩基配列に基づき作成した系統樹では分子系統的に単一の分岐を形成するケトミウム・グロボーサムの関連種を漏れなく迅速かつ正確に検出することができる。また、本発明のオリゴヌクレオチド、オリゴヌクレオチド対及び検出キットは、前記方法に好適に適用することができる。
ケトミウム属真菌のITS領域の塩基配列に基づいて作成した、ケトミウム属真菌の分子系統樹を示す図である。 実施例における、前記(a)及び(b)のオリゴヌクレオチドを用いて増幅したPCR産物の電気泳動図である。 実施例における、前記(a)及び(b)のオリゴヌクレオチドを用いて増幅したPCR産物の電気泳動図である。
本発明は、ケトミウム・グロボーサム関連種群の18S rDNAと28S rDNAとの間に存在するITS領域の特定の部分塩基配列、すなわち本領域に存在するケトミウム・グロボーサム関連種群に特異的な塩基配列部位(可変部位)にストリンジェントな条件でハイブリダイズ可能なオリゴヌクレオチド対を用いてケトミウム・グロボーサム関連種群の検出を行い、ケトミウム・グロボーサム関連種群を迅速かつ正確に検出する方法である。ここで、「可変部位」とは、ITS領域の塩基配列中で塩基変異が蓄積しやすい部位であり、この部位の塩基配列は他菌種との間で大きく異なる。
本発明における「ケトミウム・グロボーサム関連種群」とは、ケトミウム・グロボーサムの他、ケトミウム・グロボーサムのタイプストレインと子のう胞子の形態や発芽孔の構造など、形態学的に多くの共通点を有し、分子系統分類学的手法を用いて作成した分子系統樹においてケトミウム・グロボーサムを含む単系統の分岐群を形成する菌種群を意味する。ケトミウム・グロボーサム関連種群は、子のう胞子が楕円形であり、発芽孔が片方に存在する、という構造的な共通点を有する。
前記分子系統樹の作成方法としては特に制限はなく、通常の方法により作成することができる。例えば、近隣結合法(neighbor-joining method)、最大節約法(Maximum parsimony)、最尤法(Maximum likelihood estimation)、ベイズ法、非加重結合法(Unweighted Pair Group Method with Arithmetic mean)等を用いて作成することができる。本発明においては、近隣結合法を用いて分子系統樹を作成することが好ましい。また、本発明において、ケトミウム属真菌のITS領域の塩基配列に基づいて分子系統樹を作成することが好ましい。
本発明において、「ケトミウム・グロボーサム関連種群」には、前記ケトミウム・グロボーサム及びケトミウム・クルエンタムの他、ケトミウム・アンデュラチュラム(Chaetomium undulatulum)、ケトミウム・スバフィン(Chaetomium subaffine)、ケトミウム・レクタングラー(Chaetomium rectangulare)、ケトミウム・エラタム(Chaetomium elatum)、ケトミウム・インターラプタム(Chaetomium interruptum)、ケトミウム・メガロカルパム(Chaetomium megalocarpum)及びケトミウム・グランデ(Chaetomium grande)が含まれる。
本明細書において、「ストリンジェントな条件」としては、例えばMolecular Cloning−A LABORATORY MANUAL THIRD EDITION[Joseph Sambrook,David W.Russell.,Cold Spring Harbor Laboratory Press]記載の方法が挙げられ、例えば、6×SSC(1×SSCの組成:0.15M塩化ナトリウム、0.015Mクエン酸ナトリウム、pH7.0)、0.5%SDS、5×デンハート及び100mg/mLニシン精子DNAを含む溶液にプローブとともに65℃で8〜16時間恒温し、ハイブリダイズさせる条件が挙げられる。
本発明の検出方法は、ケトミウム・グロボーサム関連種群のITS領域の塩基配列中の可変部位に対応する核酸で表されるオリゴヌクレオチド対を用いることを特徴とする。
発明者等は、ケトミウム・グロボーサム関連種群のITS領域の部分塩基配列を決定し、種間での遺伝的距離と塩基配列の相同性の解析を行った。すなわち、シークエンシング法によりITS領域の塩基配列を決定し、アライメント解析により一致する塩基領域の検討を行った。その結果、ITS領域の塩基配列中に同一のグループ内では保存性が高いが異なるグループ間で塩基配列の保存性が低く、グループによって固有の塩基配列を有する可変部位を見い出した。この可変部位においてケトミウム・グロボーサム関連種群はグループ固有の塩基配列を有している。そのため、当該領域はケトミウム・グロボーサム関連種群を迅速かつ正確に検出するための遺伝学的な指標として有用である。
本発明の検出方法は、下記(a)及び(b)のオリゴヌクレオチドからなるオリゴヌクレオチド対を用いる。

(a)配列番号1に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド、又は配列番号1に記載の塩基配列において1若しくは数個の塩基が欠失、置換、挿入若しくは付加されておりかつケトミウム・グロボーサム関連種群の検出に使用できるオリゴヌクレオチド
(b)配列番号2に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド、又は配列番号2に記載の塩基配列において1若しくは数個の塩基が欠失、置換、挿入若しくは付加されておりかつケトミウム・グロボーサム関連種群の検出に使用できるオリゴヌクレオチド

前記オリゴヌクレオチド対を使用してケトミウム・グロボーサム関連種群を検出し、他の菌種群と識別することが可能となる。
ケトミウム・グロボーサム関連種群のITS領域の塩基配列中の可変部位を配列番号3に記載の塩基配列に基づき説明する。なお、配列番号3に記載の塩基配列は、ケトミウム・グロボーサムNBRC6310株の18S rDNAと28S rDNAとの間に存在するITS領域の部分塩基配列を示す。
前記(a)のオリゴヌクレオチド(本明細書において、Chae3Fともいう)及び前記(b)のオリゴヌクレオチド(本明細書において、Chae3Rともいう)はそれぞれ、配列番号3に記載の塩基配列のうち19位〜38位までの領域及び157位〜176位までの領域にストリンジェントな条件でハイブリダイズ可能なオリゴヌクレオチドである。これらの領域は種間での塩基配列の保存性が低い可変領域であり、これらの領域の塩基配列はケトミウム・グロボーサム関連種群が固有に有する塩基配列であることを本発明者らが見出した。
したがって、前記(a)及び(b)のオリゴヌクレオチドを用いて、ケトミウム・グロボーサム関連種群を迅速かつ正確に検出することができる。具体的には、本領域にポリメラーゼによるDNAの伸長方向であるプライマーの3’末端5塩基以上がハイブリダイズするように設計すればケトミウム・グロボーサム関連種群に特異的なプライマーとして用いることが可能であり、それらのプライマーを用いたPCR法による検出が可能となる。また、本領域を10塩基以上ハイブリダイズするように設計したプローブは、ケトミウム・グロボーサム関連種群のITS領域の部分塩基配列と特異的にハイブリダイズするため、ハイブリダイズの有無によりケトミウム・グロボーサム関連種群を検出することが可能となる。
本発明において、前記(a)及び(b)のオリゴヌクレオチドを用いて、下記(c)及び(d)の塩基配列のいずれかで表される核酸(好ましくは、前記可変部位)の存在を確認することが好ましい。
(c)配列番号3に記載のITS領域の塩基配列又はその相補配列
(d)配列番号3に記載の塩基配列において1若しくは数個(好ましくは1〜25個、より好ましくは1〜20個、さらに好ましくは1〜15個、特に好ましくは1〜10個、最も好ましくは1〜5個)の塩基が欠失、置換、挿入若しくは付加されておりかつケトミウム・グロボーサム関連種群の検出に使用できる塩基配列、配列番号3に記載の塩基配列に対して70%以上(好ましくは80%以上、より好ましくは85%以上、さらに好ましくは90%以上、なお好ましくは95%以上、特に好ましくは97%以上)の相同性を有しかつケトミウム・グロボーサム関連種群の検出に使用できる塩基配列、又はこれらの相補配列
本発明の検出方法に用いる前記(a)及び(b)のオリゴヌクレオチドは、配列番号1又は2に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチドが好ましい。また、本発明の検出方法に用いるオリゴヌクレオチドは、ケトミウム・グロボーサム関連種群の検出に使用できれば、配列番号1又は2に記載の塩基配列に対して70%以上の相同性を有する塩基配列又はその相補配列で表されるオリゴヌクレオチドであってもよく、相同性が80%以上であることがさらに好ましく、相同性が85%以上であることがさらに好ましく、相同性が90%以上であることがさらに好ましく、相同性が95%以上であることが特に好ましい。また、本発明で用いることができるオリゴヌクレオチドには、配列番号1又は2に記載の塩基配列において1又は数個、好ましくは1〜5個、より好ましくは1〜4個、さらに好ましくは1〜3個、よりさらに好ましくは1又は2個、特に好ましくは1個の塩基の欠失、置換又は挿入されており、かつケトミウム・グロボーサム関連種群の検出に使用できるオリゴヌクレオチドも包含される。また、配列番号1又は2に記載の塩基配列に、適当な塩基配列を付加してもよい。
塩基配列の相同性については、Lipman-Pearson法(Science,1985,227,p.1435)等によって計算される。具体的には、遺伝情報処理ソフトウェアGenetyx-Win(ソフトウェア開発製)のホモロジー解析(Search homology)プログラムを用いて、パラメーターであるUnit size to compare(ktup)を2として解析を行うことにより算出することができる。
前記オリゴヌクレオチドの結合様式は、天然の核酸に存在するホスホジエステル結合だけでなく、例えばホスホロアミデート結合、ホスホロチオエート結合等であってもよい。
前記オリゴヌクレオチドは、例えばDNA自動合成機等を用いた化学合成等の通常の合成方法により調製することができる。また、ケトミウム・グロボーサム関連種群の遺伝子から制限酵素等を用いて直接切り出したり、また遺伝子をクローニングして単離精製した後、制限酵素などを用いて切り出して調製することも可能である。操作の容易さ、大量かつ安価に一定品質のオリゴヌクレオチドを得られる点から化学合成により調製するのが好ましい。
前記オリゴヌクレオチド対を用いてケトミウム・グロボーサム関連種群のITS領域の部分塩基配列で表される核酸の存在を確認し、ケトミウム・グロボーサム関連種群を検出する方法として特に制限はなく、シークエンシング法、ハイブリダイゼンション法、PCR法、リアルタイムPCR法、LAMP法など通常用いられる遺伝子工学的手法で行うことができる。
本発明の検出用オリゴヌクレオチドは、核酸プローブ及び/又は核酸プライマーとして用いることができる。
核酸プローブは、前記オリゴヌクレオチドを標識物によって標識化することで調製することができる。前記標識物としては特に制限されず、放射性物質や酵素、蛍光物質、発光物質、抗原、ハプテン、酵素基質、不溶性担体などの通常の標識物を用いることができる。標識方法は、末端標識でも、配列の途中に標識してもよく、また、糖、リン酸基、塩基部分への標識であってもよい。かかる標識の検出手段としては、例えば核酸プローブが放射性同位元素で標識されている場合にはオートラジオグラフィー等、蛍光物質で標識されている場合には蛍光顕微鏡等、化学発光物質で標識されている場合には感光フィルムを用いた解析やCCDカメラを用いたデジタル解析等が挙げられる。このようにして標識化されたオリゴヌクレオチドを、通常の方法により検査対象物から抽出された核酸とストリンジェントな条件下でハイブリダイズさせた後、ハイブリダイズした検出用オリゴヌクレオチドの標識を測定することでケトミウム・グロボーサム関連種群を検出することができる。核酸とハイブリダイズした核酸プローブの標識を測定する方法としては、通常の方法(FISH法、ドットブロット法、サザンブロット法、ノーザンブロット法等)を用いることができる。
また、前記オリゴヌクレオチドは、固相担体に結合させて捕捉プローブとして用いることもできる。この場合、捕捉プローブと、標識核酸プローブの組み合わせでサンドイッチアッセイを行うこともできるし、標識を目示として標的核酸を捕捉することもできる。
本発明の検出方法において、ケトミウム・グロボーサム関連種群を検出するために、前記(a)及び(b)のオリゴヌクレオチドからなるオリゴヌクレオチド対を核酸プローブとして用いたハイブリダイゼーションを行うことが好ましい。
被検体中のケトミウム・グロボーサム関連種群を検出するためには、前記(a)及び(b)のオリゴヌクレオチドからなるオリゴヌクレオチド対を標識化して核酸プローブとし、得られた核酸プローブをDNA又はRNAとハイブリダイズさせ、ハイブリダイズしたプローブの標識を適当な検出方法により検出すればよい。上記核酸プローブはケトミウム・グロボーサム関連種群のITS領域の塩基配列中の可変部位と特異的にハイブリダイズするので、被検体中のケトミウム・グロボーサム関連種群を迅速かつ正確に単分岐内の菌種を漏れなく検出することが出来る。DNA又はRNAとハイブリダイズした核酸プローブの標識を測定する方法としては、通常の方法(FISH法、ドットブロット法、サザンブロット法、ノーザンブロット法等)を用いることができる。
本発明の検出方法において、ケトミウム・グロボーサム関連種群の検出を行うため、前記オリゴヌクレオチド対を用いてケトミウム・グロボーサム関連種群のITS領域の塩基配列で表される核酸の一部を増幅し、増幅産物の有無を確認することが好ましい。DNA断片を増幅する方法として特に制限はなく、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)法、リアルタイムPCR法、LCR(Ligase Chain Reaction)法、SDA(Strand Displacement Amplification)法、NASBA(Nucleic Acid Sequence-based Amplification)法、RCA(Rolling-circle amplification)法、LAMP(Loop mediated isothermal amplification)法など通常の方法を用いることができる。本発明においては、PCR法を用いるのが好ましい。
本発明において、PCR法により増幅反応を行いケトミウム・グロボーサム関連種群の検出を行う場合について詳しく説明する。しかし、本発明はこれらに制限するものではない。
本発明において、前記(a)及び(b)のオリゴヌクレオチド(好ましくは、配列番号1に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド及び配列番号2に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド)からなるオリゴヌクレオチド対を核酸プライマーとして用いてPCRを行い、ケトミウム・グロボーサム関連種群のITS領域の部分塩基配列(好ましくは、前記(c)及び(d)の塩基配列のいずれか)で表される核酸の一部を増幅し、増幅産物の有無を確認し、ケトミウム・グロボーサム関連種群の検出を行うのが好ましい。ここで、本発明における「ケトミウム・グロボーサム関連種群」は、分類学上の分類に関わらず、配列番号3に記載のITS領域の部分塩基配列を有するものの他、配列番号3に記載の塩基配列との相同性が70%以上(好ましくは80%以上、より好ましくは85%以上、さらに好ましくは90%以上、さらに好ましくは95%以上、特に好ましくは97%以上)の塩基配列、又は、配列番号3に記載の塩基配列において1若しくは数個(好ましくは1〜25個、より好ましくは1〜20個、さらに好ましくは1〜15個、特に好ましくは1〜10個、最も好ましくは1〜5個)の塩基が欠失、置換、挿入若しくは付加されている塩基配列、をITS領域に含むものも包含する。なお、塩基配列の相同性については、Lipman-Pearson法(Science,1985,227,p.1435)等によって計算される。具体的には、遺伝情報処理ソフトウェアGenetyx-Win(ソフトウェア開発製)のホモロジー解析(Search homology)プログラムを用いて、パラメーターであるUnit size to compare(ktup)を2として解析を行うことにより算出することができる。
前記(a)及び(b)のオリゴヌクレオチドは、PCRによって前記(c)及び(d)の塩基配列のいずれかで表される核酸又はその一部を増幅でき、ケトミウム・グロボーサム関連種群を迅速かつ正確に検出するための核酸プライマーとして機能し得る。したがって、前記(a)及び(b)のオリゴヌクレオチドからなるオリゴヌクレオチド対をケトミウム・グロボーサム関連種群検出用オリゴヌクレオチド対とすることができる。
PCRの条件は、目的のDNA断片を検出可能な程度に増幅することができれば特に制限されない。
例えば、前記(a)及び(b)のオリゴヌクレオチドからなるオリゴヌクレオチド対を核酸プライマーとして用いてPCRを行う場合、好ましいPCR条件としては、2本鎖DNAを1本鎖にする熱変性反応を95℃以上98℃以下で10秒以上60秒以下行い、プライマー対を1本鎖DNAにハイブリダイズさせるアニーリング反応を50℃以上(好ましくは52℃以上、より好ましくは55℃以上)60℃以下(好ましくは58℃以下、より好ましくは56℃以下)で5秒以上(好ましくは10秒以上)120秒以下(好ましくは60秒以下)行い、DNAポリメラーゼを作用させる伸長反応を約72℃で10秒以上60秒以下行い、これらを1サイクルとしたものを30サイクル以上35サイクル以下行う。
本発明において、遺伝子断片の確認は通常の方法で行うことができる。例えば増幅産物について電気泳動を行い増幅した遺伝子の大きさに対応するバンドの有無を確認する方法、増幅産物量を経時的に計測する方法、増幅産物の塩基配列を解読する方法等が挙げられるが、本発明はこれらの方法に限定されるものではない。本発明においては、遺伝子増幅処理後に電気泳動を行い、増幅した遺伝子の大きさに対応するバンドの有無を確認する方法が好ましい。また、本発明において、増幅産物の検出は通常の方法で行うことができる。例えば増幅反応時に放射性物質などで標識されたヌクレオチドを取り込ませる方法、蛍光物質などで標識されたプライマーを用いる方法、増幅したDNA2本鎖の間にエチジウムブロマイドなどのDNAと結合することにより蛍光強度が強くなる蛍光物質を入れ込む方法等が挙げられるが、本発明はこれらの方法に限定されるものではない。本発明においては、増幅したDNA2本鎖の間にDNAと結合することにより蛍光強度が強くなる蛍光物質を入り込ませる方法が好ましい。
検体に検出対象真菌が含まれる場合、本発明のオリゴヌクレオチド対をプライマーセットとして使用してPCRを行い、得られたPCR産物について電気泳動を行うと、特定のサイズでDNA断片が確認される。具体的には、検体にケトミウム・グロボーサム関連種群が含まれる場合、前記(a)及び(b)のオリゴヌクレオチドからなるオリゴヌクレオチド対を核酸プライマーとして用いて得られたPCR産物の電気泳動を行うと、約150bpのサイズでDNA断片が確認される。このような操作を行うことにより、検体に検出対象真菌が含まれているかを確認することができる。
本発明において、前記オリゴヌクレオチド対を用いて被検体のITS領域の部分塩基配列を決定し、該部分塩基配列が前記(c)及び(d)の塩基配列のいずれかに含まれるか否かを確認することで、前記(c)及び(d)の塩基配列のいずれかで表される核酸の存在を確認しケトミウム・グロボーサム関連種群を検出することもできる。すなわち、本発明の検出方法は、被検体の有するITS領域の部分塩基配列を解析・決定し、決定した塩基配列と前記(c)及び(d)の塩基配列のいずれかとを比較し、その一致又は相違に基づいて前記(c)及び(d)の塩基配列のいずれかで表される核酸の存在を確認しケトミウム・グロボーサム関連種群の検出を行うものである。例えば、前記(a)及び(b)のオリゴヌクレオチドからなるオリゴヌクレオチド対をプライマーとして用いてPCRを行い前記(c)及び(d)の塩基配列のいずれかで表される核酸の一部を増幅して増幅産物の有無を確認し、得られる増幅産物の塩基配列と前記(c)及び(d)の塩基配列のいずれかとを比較し、前記(c)及び(d)の塩基配列のいずれかで表される核酸の存在を確認する。増幅産物の塩基配列が、前記(c)及び(d)の塩基配列のいずれかで表される核酸の一部として含まれていれば検体に含まれる微生物をケトミウム・グロボーサム関連種群と同定することができる。このようにして、ケトミウム・グロボーサム関連種群を迅速かつ正確に検出することができる。
塩基配列を解析・決定する方法としては特に限定されず、通常行われているRNA又はDNAシークエンシングの手法を用いることができる。
具体的には、マクサム−ギルバート法、サンガー法等の電気泳動法、質量分析法、ハイブリダイゼーション法等が挙げられる。サンガー法においては、放射線標識法、蛍光標識法等により、プライマー又は、ターミネーターを標識する方法が挙げられる。
本発明において、増幅反応に用いられるプライマーは、設計した配列を基にして化学合成したり、試薬メーカーから購入することができる。具体的には、オリゴヌクレオチド合成装置等を用いて合成することができる。また、合成後、吸着カラム、高速液体クロマトグラフィーや電気泳動法を用いて精製したものを用いることもできる。また、1ないし数個の塩基が置換、欠失、挿入若しくは付加された塩基配列を有するオリゴヌクレオチドについても、通常の方法を使用して合成できる。
本発明において使用される検体としては特に制限はなく、飲食品自体、飲食品の原材料、単離菌体、培養菌体、飲食品又はその原材料の包装容器等を用いることができる。
検体からゲノムDNAを調製する方法としては、ケトミウム・グロボーサム関連種群の検出を行うのに未精製の状態でも十分な精製度及び量のDNAが得られるのであれば特に制限されず、さらに分離、抽出、濃縮、精製等の前処理をして使用することもできる。例えば、フェノール及びクロロホルムで処理したり、市販の抽出キットを用いて精製して、核酸の純度を高めて使用することができる。また、被検体中のRNAを逆転写して得られるDNAを用いることもできる。
本発明のケトミウム・グロボーサム関連種群検出キットは、前記本発明のオリゴヌクレオチド及び/又はオリゴヌクレオチド対を核酸プローブ又は核酸プライマーとして含有するものである。本発明のキットは、前記核酸プローブ及び核酸プライマーの他に、目的に応じ、標識検出物質、緩衝液、核酸合成酵素(DNAポリメラーゼ、RNAポリメラーゼ、逆転写酵素等)、酵素基質(dNTP,rNTP等)等、菌類の検出に通常用いられる物質を含有する。本発明のキットには、本発明のオリゴヌクレオチド又はオリゴヌクレオチド対によって検出反応が可能であることを確認するための陽性対照(ポジティブコントロール)を含んでいてもよい。陽性対照としては、例えば、本発明の方法により増幅される領域を含んだゲノムDNAが挙げられる。
本発明の方法により、迅速かつ正確にケトミウム・グロボーサム関連種群を一括して検出することができる。前述の通り、ケトミウム・グロボーサム関連種群は形態学的に多くの共通点を有する。従って、分子系統的に安定した単系統の分岐群を形成する群に属する菌類を一括して検出できることは、系統分類学の分野において非常に有用である。
また、本発明の方法により、ケトミウム・グロボーサム、ケトミウム・クルエンタム、ケトミウム・アンデュラチュラム、ケトミウム・スバフィン、ケトミウム・レクタングラー、ケトミウム・エラタム、ケトミウム・インターラプタム、ケトミウム・メガロカルパム及びケトミウム・グランデからなる群より選ばれる少なくとも1種を検出することもできる。
ケトミウム・グロボーサム関連種群のうち、ケトミウム・グロボーサムは、酸性食品、乳製品、甘味食品からの検出例の報告の多い過酢酸耐性菌類である。ここで、「過酢酸耐性菌類」とは、無菌充填飲食品の事故報告がある菌種又は無菌充填飲食品の事故を起こし得る菌種であり、かつ1000ppmの過酢酸殺菌(40℃、1分間)処理でも生残する菌類を指す。具体的には、前記条件下の過酢酸殺菌によっても、日本の食品業界において広く用いられる、商業的無菌を意味する殺菌である6D殺菌(初発菌数を1/1000000に低減する殺菌)を確保することが出来ない菌類を指す。なお、ケトミウム・グロボーサム関連種群のうち、食品又は飲料の生産現場で危害菌として検出されたとの報告があるのはケトミウム・グロボーサムだけである。従って、例えば、製造環境の殺菌に過酢酸殺菌を用いる食品や飲料においてカビによる事故が起こった場合、本発明を実施することで、危害菌すなわちケトミウム・グロボーサムの検出を迅速かつ正確に行うことが可能となる。
上述した実施形態に関し、本発明はさらに以下のケトミウム・グロボーサム関連種群の検出方法、オリゴヌクレオチド又はオリゴヌクレオチド対、ケトミウム・グロボーサム関連種群検出キット、使用、並びに方法を開示する。
<1>下記(a)及び(b)のオリゴヌクレオチドからなるオリゴヌクレオチド対を用いてケトミウム・グロボーサム関連種群の検出を行う、ケトミウム・グロボーサム関連種群の検出方法。
(a)配列番号1に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド、又は配列番号1に記載の塩基配列において1若しくは数個(好ましくは1〜5個、より好ましくは1〜4個、さらに好ましくは1〜3個、よりさらに好ましくは1又は2個、特に好ましくは1個)の塩基が欠失、置換、挿入若しくは付加されておりかつケトミウム・グロボーサム関連種群の検出に使用できるオリゴヌクレオチド、若しくは配列番号1に記載の塩基配列との相同性が70%以上(好ましくは80%以上、より好ましくは85%以上、さらに好ましくは90%以上、特に好ましくは95%以上)でありかつケトミウム・グロボーサム関連種群の検出に使用できるオリゴヌクレオチド
(b)配列番号2に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド、又は配列番号2に記載の塩基配列において1若しくは数個(好ましくは1〜5個、より好ましくは1〜4個、さらに好ましくは1〜3個、よりさらに好ましくは1又は2個、特に好ましくは1個)の塩基が欠失、置換、挿入若しくは付加されておりかつケトミウム・グロボーサム関連種群の検出に使用できるオリゴヌクレオチド、若しくは配列番号2に記載の塩基配列との相同性が70%以上(好ましくは80%以上、より好ましくは85%以上、さらに好ましくは90%以上、特に好ましくは95%以上)でありかつケトミウム・グロボーサム関連種群の検出に使用できるオリゴヌクレオチド
<2>検出を行うために、前記オリゴヌクレオチド対を用いてケトミウム・グロボーサム関連種群の18S rDNAと28S rDNAとの間に存在するITS領域の部分塩基配列で表される核酸の一部を増幅し、増幅産物の有無を確認し、ケトミウム・グロボーサム関連種群の検出を行う、前記<1>項記載の検出方法。
<3>前記(a)及び(b)のオリゴヌクレオチドからなるオリゴヌクレオチド対を核酸プライマーとして用いてポリメラーゼ連鎖反応法を行い、ケトミウム・グロボーサム関連種群のITS領域の部分塩基配列で表される核酸の一部を増幅し、増幅産物の有無を確認し、ケトミウム・グロボーサム関連種群の検出を行う、前記<2>項記載の検出方法。
<4>前記ケトミウム・グロボーサム関連種群に、ケトミウム・グロボーサム、ケトミウム・クルエンタム、ケトミウム・アンデュラチュラム、ケトミウム・スバフィン、ケトミウム・レクタングラー、ケトミウム・エラタム、ケトミウム・インターラプタム、ケトミウム・メガロカルパム及びケトミウム・グランデが含まれる、前記<1>〜<3>のいずれか1項記載の検出方法。
<5>ケトミウム・グロボーサム、ケトミウム・クルエンタム、ケトミウム・アンデュラチュラム、ケトミウム・スバフィン、ケトミウム・レクタングラー、ケトミウム・エラタム、ケトミウム・インターラプタム、ケトミウム・メガロカルパム及びケトミウム・グランデからなる群より選ばれる少なくとも1種を検出する、前記<1>〜<4>のいずれか1項記載の検出方法。
<6>前記ケトミウム・グロボーサム関連種群のITS領域の部分塩基配列が下記(c)及び(d)の塩基配列のいずれかである、前記<1>〜<5>のいずれか1項記載の検出方法。
(c)配列番号3に記載のITS領域の部分塩基配列又はその相補配列
(d)配列番号3に記載の塩基配列において1若しくは数個(好ましくは1〜25個、より好ましくは1〜20個、さらに好ましくは1〜15個、特に好ましくは1〜10個、最も好ましくは1〜5個)の塩基が欠失、置換、挿入若しくは付加されておりかつケトミウム・グロボーサム関連種群の検出に使用できる塩基配列、配列番号3に記載の塩基配列に対して70%以上(好ましくは80%以上、より好ましくは85%以上、さらに好ましくは90%以上、なお好ましくは95%以上、特に好ましくは97%以上)の相同性を有しかつケトミウム・グロボーサム関連種群の検出に使用できる塩基配列、又はこれらの相補配列
<7>前記(a)及び(b)のオリゴヌクレオチドからなる群より選ばれるオリゴヌクレオチド、又は前記(a)及び(b)のオリゴヌクレオチドからなるオリゴヌクレオチド対。
<8>前記オリゴヌクレオチドが核酸プローブ又は核酸プライマーである、前記<7>項記載のオリゴヌクレオチド又はオリゴヌクレオチド対。
<9>前記(a)及び(b)のオリゴヌクレオチドがそれぞれ、前記(c)及び(d)の塩基配列のいずれかで表される核酸にハイブリダイズすることができ、ケトミウム・グロボーサム関連種群を検出するための核酸プローブ又は核酸プライマーとして機能し得る、前記<7>又は<8>項記載のオリゴヌクレオチド又はオリゴヌクレオチド対。
<10>前記(a)及び(b)のオリゴヌクレオチドが、ポリメラーゼ連鎖反応法によって前記(c)及び(d)の塩基配列のいずれかで表される核酸の一部を増幅でき、ケトミウム・グロボーサム関連種群を検出するための核酸プライマーとして機能し得るものである、前記<9>項記載のオリゴヌクレオチド又はオリゴヌクレオチド対。
<11>前記<7>〜<10>のいずれか1項記載のオリゴヌクレオチド又はオリゴヌクレオチド対を含むケトミウム・グロボーサム関連種群検出キット。
<12>ケトミウム・グロボーサム関連種群検出用核酸プライマーとしての、前記(a)及び(b)のオリゴヌクレオチドの使用。
<13>ケトミウム・グロボーサム関連種群検出用核酸プライマーの製造のための、前記(a)及び(b)のオリゴヌクレオチドの使用。
<14>前記(a)及び(b)のオリゴヌクレオチドをケトミウム・グロボーサム関連種群検出用核酸プライマーとして使用する方法。
以下、本発明を実施例に基づきさらに詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
試験例1 ケトミウム属に属する菌類の分子系統樹の作成
下記の方法により、ケトミウム属に属する菌類各種(ケトミウム・グロボーサム、ケトミウム・クルエンタム、ケトミウム・アンデュラチュラム、ケトミウム・スバフィン、ケトミウム・レクタングラー、ケトミウム・エラタム、ケトミウム・インターラプタム、ケトミウム・メガロカルパム、ケトミウム・グランデ、ケトミウム・ヒスパリカム(Chaetomium hispanicum)、ケトミウム・フニコラ(Chaetomium funicola)、ケトミウム・インディカム(Chaetomium indicum)、ケトミウム・アトロブランネウム(Chaetomium atrobrunneum)、ケトミウム・ニグリコーラ(Chaetomium nigricolor)、ケトミウム・ムロラム(Chaetomium murorum)、ケトミウム・クリスパタム(Chaetomium crispatum)、ケトミウム・サーモフィルス(Chaetomium thermophilum)など)のITS領域の塩基配列を決定した。
ポテトデキストロース(PDA培地、Difco社製)寒天斜面培地を用いて、The Centraalbureau voor Schimmelculturesが保管しCBSナンバーにより管理されている株、独立行政法人製品評価技術基盤機構が保管しNBRCナンバーにより管理されている株、及びThe CABI Bioscience Fungal Reference Collectionが保管しIMIナンバーにより管理されている株などを25℃で7日間暗所培養し、各種菌体から、Genとるくん(商品名、タカラバイオ社製)を使用し、DNAを抽出した。
目的とする部位のPCR増幅は、PuRe TaqTM Ready-To-Go PCR Beads(GE Health Care UK LTD)を用いて、プライマーとして、ITS4(5'-tcctccgcttattgatatg-3':配列番号4)、及びITS1(5'-tccgtaggtgaacctgcgg-3':配列番号5)又はITS5(5'-ggaagtaaaagtaacaagg-3':配列番号6)(White T.J.,Bruns T.D.,Lee S.B.,Taylor J.W.,Amplification and direct sequencing of fungal ribosomal DNA for phylogenetics;Innis M.A.,Gelfan D.H.,Sninsky J.J.,White T.J.(eds),PCR Protocols:A Guide to the Methods and Application,San Diego:Academic Press,p.315-322,1990)を使用した。増幅条件は、熱変性:95℃1分、アニーリング55℃1分、伸長反応72℃1分、35サイクルで実施した。PCR産物は、Auto SegTM G-50(Amersham Pharmacia Biotech社製)を使用し精製し、ラベル化は、BigDye terminator Ver.3.1(商品名、Applied Biosystems社製)を使用し、ABI PRISM 3130 Genetic Analyzer(Applied Biosystems社製)で電気泳動を実施した。電気泳動時の蛍光シグナルからの塩基配列の決定には、ソフトウエア‘ATGC Ver.4’(Genetyx社製)を使用した。
シークエンシング法により決定したケトミウム属菌類各種や、DNA data bank of Japan(DDBJ:http://www.ddbj.nig.ac.jp/Welcome-j.html)から入手した各種ケトミウム属菌類及び類縁菌(チーラビア・アウランティアカ(Thielavia aurantiaca)、チーラビア・アレナリア(Thielavia arenaria)、チーラビア・クワイテンシス(Thielavia kuwaitensis)、チーラビア・ミヌタ(Thielavia minuta)、チーラビア・テレストリス(Thielavia terrestris)、チーラビア・テリコラ(Thielavia terricola)及びチーラビア・トルトウス(Thielavia tortuosa)等)のITS領域の部分塩基配列情報をもとに、Clustal W(http://clustalw.ddbj.nig.ac.jp/top-j.html)を用いてアライメント解析を行い、NJ-Protを用いて近隣結合法による解析を行い、分子系統樹を作成した。作成した分子系統樹を図1に示す。
図1に示すように、分子系統樹の各分岐の安定性やケトミウム・グロボーサムのITS領域の塩基配列の相同性から、薬剤耐性の高いケトミウム・グロボーサムと、これと類縁性が極めて高いグループ(ケトミウム・グロボーサム関連種群)の菌種を特定した。その結果、ケトミウム・グロボーサム関連種群には、ケトミウム・グロボーサムだけではなく、ケトミウム・クルエンタム、ケトミウム・アンデュラチュラム、ケトミウム・スバフィン、ケトミウム・レクタングラー、ケトミウム・エラタム、ケトミウム・インターラプタム、ケトミウム・メガロカルパム、ケトミウム・グランデが含まれることが明らかとなった。
試験例2 ケトミウム・グロボーサム関連種群に特異的なITS領域の部分塩基配列の解析
上記の方法により決定したケトミウム属真菌各種や、各種菌類の公知のITS領域の塩基配列情報をもとに、Clustal W(http://clustalw.ddbj.nig.ac.jp/top-j.html)を用いてアライメント解析を行い、ケトミウム・グロボーサム関連種群に特異的な塩基配列(Chae3F:aaccagcggagggatcatta(配列番号1)、Chae3R:aattatcaagagtttggtga(配列番号2))を決定した。
実施例
(1)プライマーの設計
上記で決定したケトミウム・グロボーサム関連種群に特異的な塩基配列部位をもとに、配列番号1に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチドからなるプライマー(Chae3Fプライマー)及び配列番号2に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチドからなるプライマー(Chae3Rプライマー)を設計し、シグマアルドリッチジャパン社に合成依頼し(脱塩精製品、0.02μmolスケール)、購入した。
(2)検体の調製
設計したプライマーの有効性の評価に用いる菌類、すなわちケトミウム・グロボーサム関連種群とその他のケトミウム属菌類、並びに飲食品での事故事例で報告されている真菌等としては、表1及び2に記載した菌株を使用した。これらの菌株に関しては、千葉大学真菌医学研究センターが保管しIFMナンバーにより管理されている株、独立行政法人製品評価技術基盤機構が保管しNBRCナンバーにより管理されている株、及びThe Centraalbureau voor Schimmelculturesが保管しCBSナンバーにより管理されている株を入手し、使用した。
各菌株を至適条件下で培養した。培養条件についてはポテトデキストロース培地(商品名:パールコア ポテトデキストロース寒天培地、栄研化学株式会社製)を用いて各菌の至適温度で7日間培養した。
培養した各菌体を白金耳を用いて回収し、ゲノムDNA調製用キット(アプライドバイオシステムズ社製PrepMan ultra(商品名))を用いて、ゲノムDNA溶液を調製した。DNA溶液の濃度は5ng/μLに調製した。
(3)ケトミウム・グロボーサム関連種群の検出
DNAテンプレートとして上記で調製したゲノムDNA溶液1μL、Pre Mix Taq(商品名、タカラバイオ社製)13μL及び無菌蒸留水10μLを混合し、Chae3Fプライマー(20pmol/μL)0.5μL及びChae3Rプライマー(20pmol/μL)0.5μLを加え、25μLのPCR溶液を調製した。
PCR反応液について、自動遺伝子増幅装置サーマルサイクラーDICE(タカラバイオ)を用いて遺伝子増幅処理を行った。PCR反応条件は、(i)95℃、1分間の熱変性反応、(ii)55℃、1分間のアニーリング反応、および(iii)72℃、1分間の伸長反応を1サイクルとしたものを35サイクル行った。
PCR後、PCR溶液から2μLを分取してローディングバッファー(Nucleic Acid sample loading buffer 5×(BIO RAD社製))0.5μLと十分に混和し、2%アガロースゲルを用いて電気泳動(135V、20分間)を行った。電気泳動終了後、アガロースゲルをSYBR Safe DNA gel stain in 1×TAE(インビトロジェン)でDNAを染色後、増幅されたDNA断片の有無を確認した。その結果を図2及び3に示す。図中の番号は表記載の対応する試料番号の試料から抽出したDNAを用いて反応を行ったサンプルであることを示している。なお、図2は表1に示す菌類の試料についての電気泳動図を示し、図3は表2に示す菌類の試料についての電気泳動図を示す。なお、分子量マーカーとして、EZ Load 100bp molecular Ruler(商品名、BIO RAD社製)を用いた。
その結果、ケトミウム・グロボーサム関連種群のゲノムDNAを含む試料では、約150bpのサイズで遺伝子断片が確認された。一方、ケトミウム・グロボーサム関連種群以外のケトミウム属真菌のゲノムDNAを含む試料では、遺伝子断片は確認されなかった。したがって、本発明によれば、ケトミウム・グロボーサム関連種群を特異的に検出することができる。
上記の結果から、本発明のオリゴヌクレオチドを用いることによって、ケトミウム・グロボーサム関連種群のITS領域の部分塩基配列の存在を確認することができケトミウム・グロボーサム関連種群を特異的に検出できることがわかる。したがって、本発明の方法によれば、従来の方法と比較して、より迅速かつより正確にケトミウム・グロボーサム関連種群を一括して検出することが可能である。

Claims (11)

  1. 下記(a)及び(b)のオリゴヌクレオチドからなるオリゴヌクレオチド対を用いてケトミウム・グロボーサム関連種群(Chaetomium globosum species group)の検出を行う、ケトミウム・グロボーサム関連種群の検出方法。
    (a)配列番号1に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド、又は配列番号1に記載の塩基配列において1若しくは数個の塩基が欠失、置換、挿入若しくは付加されておりかつケトミウム・グロボーサム関連種群の検出に使用できるオリゴヌクレオチド
    (b)配列番号2に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド、又は配列番号2に記載の塩基配列において1若しくは数個の塩基が欠失、置換、挿入若しくは付加されておりかつケトミウム・グロボーサム関連種群の検出に使用できるオリゴヌクレオチド
  2. 検出を行うために、前記オリゴヌクレオチド対を用いてケトミウム・グロボーサム関連種群の18S rDNAと28S rDNAとの間に存在するInternal Transcribed Spacer領域の部分塩基配列で表される核酸の一部を増幅し、増幅産物の有無を確認し、ケトミウム・グロボーサム関連種群の検出を行う、請求項1記載の検出方法。
  3. 前記(a)及び(b)のオリゴヌクレオチドからなるオリゴヌクレオチド対を核酸プライマーとして用いてポリメラーゼ連鎖反応法を行い、ケトミウム・グロボーサム関連種群のInternal Transcribed Spacer領域の部分塩基配列で表される核酸の一部を増幅し、増幅産物の有無を確認し、ケトミウム・グロボーサム関連種群の検出を行う、請求項2記載の検出方法。
  4. 前記ケトミウム・グロボーサム関連種群に、ケトミウム・グロボーサム(Chaetomium globosum)、ケトミウム・クルエンタム(Chaetomium cruentum)、ケトミウム・アンデュラチュラム(Chaetomium undulatulum)、ケトミウム・スバフィン(Chaetomium subaffine)、ケトミウム・レクタングラー(Chaetomium rectangulare)、ケトミウム・エラタム(Chaetomium elatum)、ケトミウム・インターラプタム(Chaetomium interruptum)、ケトミウム・メガロカルパム(Chaetomium megalocarpum)及びケトミウム・グランデ(Chaetomium grande)が含まれる、請求項1〜3のいずれか1項記載の検出方法。
  5. ケトミウム・グロボーサム(Chaetomium globosum)、ケトミウム・クルエンタム(Chaetomium cruentum)、ケトミウム・アンデュラチュラム(Chaetomium undulatulum)、ケトミウム・スバフィン(Chaetomium subaffine)、ケトミウム・レクタングラー(Chaetomium rectangulare)、ケトミウム・エラタム(Chaetomium elatum)、ケトミウム・インターラプタム(Chaetomium interruptum)、ケトミウム・メガロカルパム(Chaetomium megalocarpum)及びケトミウム・グランデ(Chaetomium grande)からなる群より選ばれる少なくとも1種を検出する、請求項1〜4のいずれか1項記載の検出方法。
  6. 前記ケトミウム・グロボーサム関連種群のInternal Transcribed Spacer領域の部分塩基配列が下記(c)及び(d)の塩基配列のいずれかである、請求項1〜5のいずれか1項記載の検出方法。
    (c)配列番号3に記載のInternal Transcribed Spacer領域の部分塩基配列又はその相補配列
    (d)配列番号3に記載の塩基配列において1若しくは数個の塩基が欠失、置換、挿入若しくは付加されておりかつケトミウム・グロボーサム関連種群の検出に使用できる塩基配列、又はその相補配列
  7. 下記(a)及び(b)のオリゴヌクレオチドからなる群より選ばれるオリゴヌクレオチド、又は下記(a)及び(b)のオリゴヌクレオチドからなるオリゴヌクレオチド対。
    (a)配列番号1に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド、又は配列番号1に記載の塩基配列において1若しくは数個の塩基が欠失、置換、挿入若しくは付加されておりかつケトミウム・グロボーサム関連種群(Chaetomium globosum species group)の検出に使用できるオリゴヌクレオチド
    (b)配列番号2に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド、又は配列番号2に記載の塩基配列において1若しくは数個の塩基が欠失、置換、挿入若しくは付加されておりかつつケトミウム・グロボーサム関連種群(Chaetomium globosum species group)の検出に使用できるオリゴヌクレオチド
  8. 前記オリゴヌクレオチドが核酸プローブ又は核酸プライマーである、請求項7記載のオリゴヌクレオチド又はオリゴヌクレオチド対。
  9. 前記(a)及び(b)のオリゴヌクレオチドがそれぞれ、下記(c)及び(d)の塩基配列のいずれかで表される核酸にハイブリダイズすることができ、ケトミウム・グロボーサム関連種群を検出するための核酸プローブ又は核酸プライマーとして機能し得る、請求項7又は8記載のオリゴヌクレオチド又はオリゴヌクレオチド対。
    (c)配列番号3に記載のInternal Transcribed Spacer領域の部分塩基配列又はその相補配列
    (d)配列番号3に記載の塩基配列において1若しくは数個の塩基が欠失、置換、挿入若しくは付加されておりかつケトミウム・グロボーサム関連種群の検出に使用できる塩基配列、又はその相補配列
  10. 前記(a)及び(b)のオリゴヌクレオチドが、ポリメラーゼ連鎖反応法によって前記(c)及び(d)の塩基配列のいずれかで表される核酸の一部を増幅でき、ケトミウム・グロボーサム関連種群を検出するための核酸プライマーとして機能し得るものである、請求項9記載のオリゴヌクレオチド又はオリゴヌクレオチド対。
  11. 請求項7〜10のいずれか1項記載のオリゴヌクレオチド又はオリゴヌクレオチド対を含むケトミウム・グロボーサム関連種群(Chaetomium globosum species group)検出キット。



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