以下、実施形態につき図面を参照して説明する。この説明に際し、全図にわたり、共通する部分には共通する参照符号を付す。
1.第1実施形態
第1実施形態に係る半導体記憶装置及びデータ消去方法について説明する。以下では半導体記憶装置として、メモリセルトランジスタが半導体基板上に積層された三次元積層型NAND型フラッシュメモリを例に挙げて説明する。
1.1 構成について
1.1.1 メモリシステムの構成について
まず、本実施形態に係る半導体記憶装置を含むメモリシステムの構成について、図1を用いて説明する。図1は、本実施形態に係るメモリシステムのブロック図である。
図示するようにメモリシステム1は、NAND型フラッシュメモリ100及びコントローラ200を備えている。コントローラ200とNAND型フラッシュメモリ100は、例えばそれらの組み合わせにより一つの半導体記憶装置を構成しても良く、その例としてはSDTMカードのようなメモリカードや、SSD(solid state drive)等が挙げられる。
NAND型フラッシュメモリ100は、複数のメモリセルトランジスタを備え、データを不揮発に記憶する。NAND型フラッシュメモリ100の構成の詳細は後述する。
コントローラ200は、外部のホスト機器からの命令に応答して、NAND型フラッシュメモリ100に対して読み出し、書き込み、消去等を命令する。また、NAND型フラッシュメモリ100のメモリ空間を管理する。
コントローラ200は、ホストインターフェイス回路210、内蔵メモリ(RAM)220、プロセッサ(CPU)230、バッファメモリ240、NANDインターフェイス回路250、及びECC回路260を備えている。
ホストインターフェイス回路210は、コントローラバスを介してホスト機器と接続され、ホスト機器との通信を司る。そして、ホスト機器から受信した命令及びデータを、それぞれCPU230及びバッファメモリ240に転送する。またCPU230の命令に応答して、バッファメモリ240内のデータをホスト機器へ転送する。
NANDインターフェイス回路250は、NANDバスを介してNAND型フラッシュメモリ100と接続され、NAND型フラッシュメモリ100との通信を司る。そして、CPU230から受信した命令をNAND型フラッシュメモリ100に転送し、また書き込み時にはバッファメモリ240内の書き込みデータをNAND型フラッシュメモリ100へ転送する。更に読み出し時には、NAND型フラッシュメモリ100から読み出されたデータをバッファメモリ240へ転送する。
CPU230は、コントローラ200全体の動作を制御する。例えば、ホスト機器から書き込み命令を受信した際には、それに応答して、NANDインターフェイスに基づく書き込み命令を発行する。読み出し及び消去の際も同様である。またCPU230は、ウェアレベリング等、NAND型フラッシュメモリ100を管理するための様々な処理を実行する。更にCPU230は、各種の演算を実行する。例えば、データの暗号化処理やランダマイズ処理等を実行する。
ECC回路260は、データの誤り訂正(ECC:Error Checking and Correcting)処理を実行する。すなわちECC回路260は、データの書き込み時には書き込みデータに基づいてパリティを生成し、読み出し時にはパリティからシンドロームを生成して誤りを検出し、この誤りを訂正する。なお、CPU230がECC回路260の機能を有していても良い。
内蔵メモリ220は、例えばDRAM等の半導体メモリであり、CPU230の作業領域として使用される。そして内蔵メモリ220は、NAND型フラッシュメモリ100を管理するためのファームウェアや、各種の管理テーブル等を保持する。また、本実施形態に係る内蔵メモリ220は、例えば消去動作時に使用される管理テーブルを保持する。
1.1.2 半導体記憶装置の構成について
次にNAND型フラッシュメモリ100の構成について説明する。
1.1.2.1 半導体記憶装置の全体構成について
図2は、本実施形態に係るNAND型フラッシュメモリ100のブロック図である。図示するようにNAND型フラッシュメモリ100は、大まかにはコア部110及び周辺回路120を備えている。
コア部110は、メモリセルアレイ111、ロウデコーダ112、センスアンプ113、及びソース線ドライバ114を備えている。
メモリセルアレイ111は、複数の不揮発性メモリセルトランジスタMTの集合である複数のブロックBLK(BLK1、BLK2、…)を備えている。同一ブロックBLK内のデータは一括して消去される。ブロックBLKの各々は、それぞれがワード線及びビット線に関連付けられたメモリセルトランジスタMTの集合である複数のメモリユニットMU(MU1、MU2、…)を備えている。メモリユニットMUの各々は、メモリセルトランジスタが直列接続されたNANDストリングSR(SR1、SR2、SR3、…)の集合である複数のストリンググループGR(GR1、GR2、GR3、GR4、…)を備えている。もちろん、メモリセルアレイ111内のメモリユニットMU数や、1メモリユニットMU内のストリンググループGR数、1ストリンググループ内のNANDストリングSR数は任意である。メモリセルアレイ111の詳細については後述する。
ロウデコーダ112は、メモリユニットMUのアドレスや後述するページのアドレスをデコードして、対応するメモリユニットMUのいずれかのワード線WLを選択する。そしてロウデコーダ112は、選択ワード線WL及び非選択ワード線WLに、適切な電圧を印加する。
センスアンプ113は、ビット線BL毎に設けられたセンス回路を備える。センス回路の各々は、データの読み出し時には、メモリセルトランジスタMTからビット線BLに読み出されたデータをセンス・増幅する。またデータの書き込み時には、書き込みデータをメモリセルトランジスタMTに転送する。メモリセルアレイ111へのデータの読み出し及び書き込みは、複数のメモリセルトランジスタMT単位で行われ、この単位がページとなる。
周辺回路120は、制御部121、電圧発生回路122、レジスタ123、及びドライバ124、カウンタ125を備える。
制御部121は、NAND型フラッシュメモリ100全体の動作を制御する。
電圧発生回路122は、データの書き込み、読み出し、及び消去に必要な電圧を発生させ、ドライバ124に供給する。
ドライバ124は、データの書き込み、読み出し、及び消去に必要な電圧を、ロウデコーダ112、センスアンプ113、及びソース線ドライバ114などに供給する。この電圧が、ロウデコーダ112、センスアンプ113、及びソース線ドライバ114によってメモリセルトランジスタMTに印加される。
レジスタ123は、種々の信号を保持する。例えば、データの書き込みや消去動作のステータスを保持し、これによってコントローラに動作が正常に完了したか否かを通知する。あるいは、レジスタ123は、種々のテーブルを保持することも可能である。
カウンタ125は、種々のデータをカウントする。例えば、データの消去動作の際、消去を失敗したビット数をカウントし、記録する。
1.1.2.2 メモリセルアレイの構成について
図3は、本実施形態に係るメモリセルアレイ111の回路図である。図示するようにメモリセルアレイ111は、各ブロックBLK内に複数のメモリユニットMU(MU1、MU2)を備えている。図3では2つのメモリユニットMUのみが図示されているが、3つ以上であっても良く、その数は限定されるものではない。
メモリユニットMUの各々は、例えば4つのストリンググループGR(GR1〜GR4)を備えている。もちろん、ストリンググループGRの数は4つに限らず、3つ以下でもあっても良いし、5つ以上であっても良い。なお、メモリユニットMU1及びMU2間で区別する際には、メモリユニットMU1のストリンググループGRをそれぞれGR1−1〜GR4−1と呼び、メモリユニットMU2のストリンググループGRをそれぞれGR1−2〜GR4−2と呼ぶ。
ストリンググループGRの各々は、例えば3つのNANDストリングSR(SR1〜SR3)を備えている。もちろん、NANDストリングSRの数は3つに限らず、4つ以上であっても良い。NANDストリングSRの各々は、選択トランジスタST1及びST2、並びに4つのメモリセルトランジスタMT(MT1〜MT4)を備えている。メモリセルトランジスタMTの数は4つに限らず、5つ以上であっても良いし、3つ以下であっても良い。メモリセルトランジスタMTは、制御ゲートと電荷蓄積層とを含む積層ゲートを備えるトランジスタを形成し、データを不揮発に保持する。そしてメモリセルトランジスタMTは、選択トランジスタST1のソースと選択トランジスタST2のドレインとの間に直列接続されている。メモリセルトランジスタMTは、電荷蓄積層に絶縁膜を用いたMONOS型であっても良いし、電荷蓄積層に導電膜を用いたFG型であっても良い。MONOS型の場合、隣接するメモリセルトランジスタ間で電荷蓄積層が連続していても良いが、FG型の場合、電荷蓄積層はメモリセルトランジスタ毎に分離される。以下では一例として、メモリセルトランジスタMTがMONOS型である場合を例に説明する。
ストリンググループGR内において、3つのNANDストリングSR1〜SR3は、半導体基板上方に順次積層されており、NANDストリングSR1が最下層に形成され、NANDストリングSR2が中間層に形成され、NANDストリングSR3が最上層に形成される。そして、同一のストリンググループGRに含まれる選択トランジスタST1及びST2のゲートは、それぞれ同一のセレクトゲート線GSL1及びGSL2に接続され、同一列に位置するメモリセルトランジスタMTの制御ゲートは同一のワード線WLに接続されている。更に、あるストリンググループGR内の3つの選択トランジスタST1のドレインは、選択トランジスタCSGを介して、互いに異なるビット線BLに接続され、選択トランジスタST2のソースは同一のソース線SLに接続されている。
具体的には、奇数番目のストリンググループGR1及びGR3の選択トランジスタST1のドレインは、カラム選択トランジスタCSG1及びCSG3のソースにそれぞれ接続され、選択トランジスタST2のソースは、ソース線SL1に共通に接続される。一方、偶数番目のストリンググループGR2及びGR4の選択トランジスタST1のドレインは、カラム選択トランジスタCSG2及びCSG4のソースにそれぞれ接続され、選択トランジスタST2のソースは、ソース線SL2に共通に接続される。
そして、ストリンググループGR1及びGR3の選択トランジスタST1のゲート、並びにストリンググループGR2及びGR4の選択トランジスタST2のゲートは、同一のセレクトゲート線GSL1に共通に接続される。また、ストリンググループGR1及びGR3の選択トランジスタST2のゲート、並びにストリンググループGR2及びGR4の選択トランジスタST1のゲートは、同一のセレクトゲート線GSL2に共通に接続されている。
またストリンググループGR1及びGR3では、メモリセルトランジスタMT1、MT2、MT3、及びMT4の制御ゲートはワード線WL1、WL2、WL3、及びWL4にそれぞれ接続される。これに対し、ストリンググループGR2及びGR4では、メモリセルトランジスタMT4、MT3、MT2、及びMT1の制御ゲートは、ワード線WL1、WL2、WL3、及びWL4にそれぞれ接続される。
また、あるメモリユニットMUに含まれる4つのストリンググループGR1〜GR4のNANDストリングSR1〜SR3は互いに同一のビット線BLに接続され、異なるメモリユニットMUは互いに異なるビット線BLに接続されている。より具体的には、メモリユニットMU1において、ストリンググループGR1〜GR4におけるNANDストリングSR1〜SR3の選択トランジスタST1のドレインはそれぞれ、カラム選択トランジスタCSG(CSG1〜CSG4)を介してビット線BL1〜BL3に接続されている。カラム選択トランジスタCSGは、例えばメモリセルトランジスタMTや選択トランジスタST1及びST2等と同様の構成を有しており、各メモリユニットMUにおいて、ビット線BLに選択する1つのストリンググループGRを選択する。従って、各ストリンググループGRに対応付けられたカラム選択トランジスタCSG1〜CSG4のゲートは、それぞれ異なる制御信号線SSL1〜SSL4によって制御される。
以上説明した構成を有するメモリユニットMUが、図3を記載した紙面において上下方向に複数配列される。これらの複数のメモリユニットMUは、メモリユニットMU1とワード線WL及びセレクトゲート線GSL1及びGSL2を共有する。他方で、ビット線BLはメモリユニット毎に独立しており、例えばメモリユニットMU2に対しては、メモリユニットMU1と異なる3本のビット線BL4〜BL6が対応付けられる。同様にして、メモリユニットMU3にはビット線BL7〜BL9が対応付けられる。つまり、各メモリユニットMUに対応付けられるビット線BLの本数は、1つのストリンググループGRに含まれるNANDストリングSRの総数に対応する。従って、NANDストリングSRが4層あれば、1つのメモリユニットMUに対応するビット線数も4本であり、その他の数の場合も同様である。また、制御信号線SSL1〜SSL4は、メモリユニットMU間で共通にされる。
上記構成において、各メモリユニットMUから1つずつ選択されたストリンググループGRにおける同一ワード線WLに接続された複数のメモリセルトランジスタMTの集合が、「ページ」と呼ばれる単位となる。そして、データの書き込み及び読み出しはページ単位で行われる。例えば図3では、一例として、信号SSL1及びワード線WL1が選択された場合、メモリユニットMU1のストリンググループGR1−1とメモリユニットMU2のストリンググループGR1−2において、ワード線WL1に接続されたメモリセルトランジスタMTによって、1ページが形成される。そして、このページに含まれる6つのメモリセルトランジスタMT1は、ビット線BL1〜BL6にそれぞれ接続される。メモリユニットMUが3つ設けられる場合には、更にメモリユニットMU3のストリンググループGR1−3におけるメモリセルトランジスタMT1が、上記ページに含まれる。その他の信号線SSLまたはワード線WLが選択された場合も同様である。
図4はメモリセルアレイ111の斜視図であり、図5はメモリセルアレイ111の平面図であり、図6は図5における6−6線に沿った断面図であり、図7は図5における7−7線に沿った断面図であり、図8は図5における8−8線に沿った断面図である。図4、図6、及び図8では1つのメモリユニットMUを図示しており、図5及び図7は2つのメモリユニットMU1及びMU2を図示している。
図示するように、半導体基板20上には絶縁膜21が形成され、絶縁膜21上にメモリセルアレイ111が形成される。
絶縁膜21上には、半導体基板20表面に対する垂直方向である第1方向に直交する第2方向に沿ったストライプ形状の、例えば4つのフィン型構造24(24−1〜24−4)が形成されることで、1つのメモリユニットMUが形成されている。フィン型構造24の各々は、交互に積層された絶縁膜22(22−1〜22−4)及び半導体層23(23−1〜23−3)を含む。このフィン型構造24の各々が、図3で説明したストリンググループGRに相当する。そして、最下層の半導体層23−1がNANDストリングSR1の電流経路(チャネルが形成される領域)に相当し、最上層の半導体層23−3がNANDストリングSR3の電流経路に相当し、その間に位置する半導体層23−2がNANDストリングSR2の電流経路に相当する。
フィン型構造24の上面及び側面には、トンネル絶縁膜25、電荷蓄積層26、ブロック絶縁膜27、及び導電膜28が順次形成されている(図6参照)。電荷蓄積層26は例えば絶縁膜により形成される。また導電膜28は例えば金属で形成され、ワード線WLまたはセレクトゲート線GSL1及びGSL2として機能する。ワード線WL及びセレクトゲート線GSL1及びGSL2は、複数のメモリユニットMU間で、複数のフィン型構造24を跨ぐようにして形成される。他方で制御信号線SSL1〜SSL4は、個々のフィン型構造24毎に独立している。
フィン型構造24は、その一端部がメモリセルアレイ111の端部に引き出されて、引き出された領域においてビット線BLと接続される。すなわち、一例としてメモリユニットMU1に着目すると、奇数番目のフィン型構造24−1及び24−3の一端部は、第2方向に沿ってある領域まで引き出されて共通に接続され、この領域にコンタクトプラグBC1〜BC3が形成される。この領域に形成されたコンタクトプラグBC1は、ストリンググループGR1及びGR3の半導体層23−1とビット線BL1とを接続され、半導体層23−2及び23−3とは絶縁されている。コンタクトプラグBC2は、ストリンググループGR1及びGR3の半導体層23−2とビット線BL2とを接続され、半導体層23−1及び23−3とは絶縁されている。コンタクトプラグBC3は、ストリンググループGR1及びGR3の半導体層23−3とビット線BL3とを接続され、半導体層23−1及び23−2とは絶縁されている。
他方で、偶数番目のフィン型構造24−2及び24−4の一端部は、フィン型構造24−1及び24−3の一端部と第2方向で対向する領域まで引き出されて共通に接続され、この領域にコンタクトプラグBC1〜BC3が形成される。この領域に形成されたコンタクトプラグBC1は、ストリンググループGR2及びGR4の半導体層23−1とビット線BL1とを接続され、半導体層23−2及び23−3とは絶縁されている。コンタクトプラグBC2は、ストリンググループGR2及びGR4の半導体層23−2とビット線BL2とを接続され、半導体層23−1及び23−3とは絶縁されている。コンタクトプラグBC3は、ストリンググループGR2及びGR4の半導体層23−3とビット線BL3とを接続され、半導体層23−1及び23−2とは絶縁されている。
上記のように、奇数番目のフィン型構造24−1及び24−3(すなわちストリンググループGR1及びGR3)と、偶数番目のフィン型構造24−2及び24−4(すなわちストリンググループGR2及びGR4)とは、NANDストリングSRの配列が互いに逆になるように配置されている。例えば図5では、奇数番目のフィン型構造24−1及び24−3は、図面左側のビット線BLに接続され、制御信号線SSL1及びSSL3が、図面左側に配置される。従って選択トランジスタST1は、図面左側に位置し、選択トランジスタST2に図面右側に位置する。また、メモリセルトランジスタMT1〜MT4は、図面左側からMT1〜MT4の順に位置する。これに対して、偶数番目のフィン型構造24−2及び24−4は、図面右側のビット線BLに接続され、制御信号線SSL2及びSSL4が、図面右側に配置される。従って選択トランジスタST1は、図面右側に位置し、選択トランジスタST2に図面左側に位置する。また、メモリセルトランジスタMT1〜MT4は、図面右側からMT1〜MT4の順に位置する。
もちろん、上記の説明はメモリユニットMU1の場合のものであり、例えばメモリユニットMU2の場合には、コンタクトプラグBC4〜BC6が形成され、これらが半導体層23−1〜23−3をそれぞれビット線BL4〜BL6に接続する(図7参照)。
また、フィン型構造24の他端上にはコンタクトプラグSCが形成される。コンタクトプラグSCは、半導体層23−1〜23−3をソース線SLに接続する。
上記構成において、NANDストリングSR1〜SR3に含まれるメモリセルトランジスタMTは、その製造過程におけるドライエッチングの加工特性等により、形状が互いに異なる場合がある。例えば、交互に積層された絶縁膜22(22−1〜22−4)と半導体層23(23−1〜23−3)を一括して加工する場合、図6に示すように加工後の形状は上層ほど幅が狭く、また、側面は曲線形状となることがある。このとき、第1方向と第3方向で形成される平面で見た半導体層23側面の長さ、すなわちメモリセルトランジスタMTのゲート長は、半導体層23−1に形成されるメモリセルトランジスタMTが最も短い。次いで半導体層23−2に形成されるメモリセルトランジスタMTが短い。そして、半導体層23−3に形成されるメモリセルトランジスタMTが最も長い。つまりゲート長は、上層に位置するメモリセルトランジスタMTほど長く、下層に位置するメモリセルトランジスタMTほど短くなる。また、第3方向に沿った半導体層23の幅は、半導体層23−1が最も広く、次いで半導体層23−2が広く、半導体層23−1が最も狭くなる。つまり半導体層23の幅は、上層に位置するものほど狭く、下層に位置するものほど広くなる。
またワード線WL(導電膜28)は、図8に示すように、上方ほど狭い形状となることがある。図示するように第2方向に沿ったワード線WLの幅、すなわち、メモリセルトランジスタMTのゲート幅は、半導体層23−1に形成されるメモリセルトランジスタMTが最も広い。次いで半導体層23−2に形成されるメモリセルトランジスタMTが広い。そして、半導体層23−3に形成されるメモリセルトランジスタMTが最も狭い。つまり、ゲート幅は、上層に位置するものほど狭く、下層に位置するものほど広くなる。
このように、製造ばらつきによって、各レイヤのメモリセルトランジスタMTは互いに異なる形状を有することがある。この結果、メモリセルトランジスタMTの特性は、レイヤ毎にばらつく。なお、図6及び図8の例では被加工層が上方ほど細くなる場合を例に挙げて説明したが、ドライエッチングの特性により、例えば、下方ほど細い場合、あるいは中間部が細くなる場合がある。従って、レイヤ間におけるメモリセルトランジスタMTの特性のばらつきは一定ではない。しかし、本実施形態は、いずれの場合においても適用可能である。
なおメモリセルアレイ111の構成については、例えば、“三次元積層不揮発性半導体メモリ”という2009年3月19日に出願された米国特許出願12/407,403号に記載されている。また、“三次元積層不揮発性半導体メモリ”という2009年3月18日に出願された米国特許出願12/406,524号、“不揮発性半導体記憶装置及びその製造方法”という2010年3月25日に出願された米国特許出願12/679,991号、“半導体メモリ及びその製造方法”という2009年3月23日に出願された米国特許出願12/532,030号に記載されている。これらの特許出願は、その全体が本願明細書において参照により援用されている。
1.2 データの消去動作について
次に本実施形態に係るデータの消去動作について説明する。データの消去動作は、データの消去(電荷蓄積層から電荷を抜く動作)と、後述するベリファイ動作(消去ベリファイ及びリトライ判定)を含む。そしてデータの消去とベリファイ動作のセットを繰り返すことにより、消去対象の全メモリセルトランジスタMTの閾値電圧が消去レベルに設定される。以下では、このデータの消去とベリファイ動作のセットのことを、「消去ループ」と呼ぶことがある。また以下では、消去対象ブロックBLK内に、図3に示すメモリユニットMU1、MU2がある場合を例に説明する。なお、1つのブロックBLKを構成するメモリユニットMU数は1つでも良く、3つ以上であっても良い。
1.2.1 データの消去動作の全体的な流れについて
図9は、データの消去動作の流れを示すフローチャートである。図示するように、まず制御部121は、コントローラ200から消去命令を受信する(ステップS10)。
この受信命令を受信することにより、NAND型フラッシュメモリ100の制御部121は消去動作を開始する。すなわちドライバ124は、制御部121の命令に従って、消去対象であるメモリユニットMU1、MU2に共通に接続されている制御信号線SSL1〜SSL4に“H”レベルを与え、これによりカラム選択トランジスタCSG1〜CSG4をオン状態とする。その結果、ストリンググループGR1−1〜GR4−1、GR1−2〜GR4−2が消去対象として選択される。他方でドライバ124は、消去対象ではないメモリユニットMUの制御信号線SSLを“L”レベルとすることで、これらのメモリユニットMUを非選択状態とする。
なお、制御信号線SSL1〜SSL4は、メモリユニットMU1、MU2に共通に接続されていても良いし、あるいは独立していても良い。制御信号線SSLがメモリユニットMU毎に独立している場合、メモリユニットMU2は、制御信号線SSL5〜SSL8に接続される。そして、ドライバ124は、制御信号線SSL5〜SSL8にも“H”レベルを与える。
次にロウデコータ112は、全ワード線WL1〜WL4及びセレクトゲート線GSL1、GSL2に消去に必要な電圧を印加する。またソース線ドライバ114は、ソース線SL1、SL2に消去に必要な電圧を印加する。センスアンプ113あるいはドライバ124は、ビット線BL1〜BL6に消去に必要な電圧を印加する(電圧の詳細については1.2.3で後述する)。これによりメモリユニットMU1、MU2のメモリセルトランジスタMTの保持するデータが消去される(ステップS11)。
次に制御部121は、消去ベリファイを実行する(ステップS12)。消去ベリファイとは、消去の後、メモリセルトランジスタMTからデータを読み出して、データが消去されているか否か、言い換えればメモリセルトランジスタMTの閾値が十分に低下しているか否かを判定する処理である。以下、メモリセルトランジスタMTのデータが消去されていると判定された状態を「消去ベリファイにパスした」と呼び、未だデータの消去が完了していないと判定された状態を「消去ベリファイにフェイルした」と呼ぶことにする。
制御部121は、ストリンググループGR(列)単位で消去ベリファイを行う。本実施形態では、まず制御部121は、ストリンググループGR1−1、GR1−2の消去ベリファイを行う。すなわちドライバ124は、制御部121の命令に従って、制御信号線SSL1に“H”レベルを与え、制御信号線SSL2〜SSL4に“L”レベルを与える。これにより、カラム選択トランジスタCSG1は、オン状態となり、ストリンググループGR1−1、GR1−2のNANDストリングSR1〜SR3は、ビット線BL1〜BL6にそれぞれ電気的に接続される。他方でカラム選択トランジスタCSG2〜CSG4はオフ状態となり、ストリンググループGR2−1〜GR4−1、GR2−2〜GR4−2のNANDストリングSR1〜SR3は、ビット線BL1〜BL6から電気的に分離される。
次にロウデコーダ112は、ワード線WL1〜WL4に消去ベリファイ用の電圧を印加する。またロウデコーダ112は、セレクトゲート線GSL1及びGSL2に“H”レベルを与え、選択トランジスタST1及びST2をオン状態にする。
次にセンスアンプ113は、ビット線BL1〜BL6にプリチャージ電圧を印加する。そしてセンスアンプ113は、ビット線BL1〜BL6の電流または電圧をセンス・増幅する。これにより、センスアンプ113は、ビット線BL1〜BL6にそれぞれ接続されるストリンググループGR1−1、GR1−2のNANDストリングSR1〜SR3の全てのメモリセルトランジスタMTからデータを読み出す。
消去ベリファイでは、センスアンプ113は、カラム選択ゲートCSGによってビット線BLに接続されたNANDストリングSRに含まれる全てのメモリセルトランジスタMTから、データを同時に読み出している。従って、いずれかのNANDストリングSRの全てのメモリセルトランジスタMTのデータの消去が完了していれば、このNANDストリングSRに対応するビット線BLからソース線SLに電流が流れる。その結果、当該NANDストリングSRは、消去ベリファイにパスする。他方で、いずれかのNANDストリングSR内に消去未了なメモリセルトランジスタMTが少なくとも1つ以上存在すれば、対応するビット線BLからソース線SLに電流は流れない。よって、当該NANDストリングSRは、消去ベリファイにフェイルする。
次に消去ベリファイの結果は、フェイルビットとしてカウントされる。すなわち、あるビット線BLに接続されたNANDストリングSRについて、消去ベリファイをパスすればフェイルビットは0、消去ベリファイをフェイルすればフェイルビットは1とカウントされる。そして、フェイルビット数は、レイヤ毎にカウンタ125がカウントする。すなわち、カウンタ125は、ビット線BL1、BL4、BL7、…BL(3i+1)のフェイルビット数(但し、i=0、1、2、3、…)を、最下層に位置するNANDストリングSR1の消去ベリファイ結果としてカウントする。またカウンタ125は、ビット線BL2、BL5、BL8、…BL(3i+2)のフェイルビット数を、中間層に位置するNANDストリングSR2の消去ベリファイ結果としてカウントする。更にカウンタ125は、ビット線BL3、BL6、BL9、…BL(3i+3)のフェイルビット数を、最上層に位置するNANDストリングSR3の消去ベリファイ結果としてカウントする。
但し、カウント対象となるビット線BLは、消去対象メモリユニットMUに接続されたビット線BLだけで十分であり、本実施形態の場合には、ビット線BL1〜BL6に存在するフェイルビットがカウント対象となる。
引き続き制御部121は、ストリンググループGR2−1、GR2−2のNANDストリングSR1〜SR3につき消去ベリファイを行う。次に制御部121は、ストリンググループGR3−1、3−2のNANDストリングSR1〜SR3につき消去ベリファイを行う。最後に制御部121は、ストリンググループGR4−1、GR4−2のNANDストリングSR1〜SR3につき消去ベリファイを行う。つまり、1つのメモリユニットMUに含まれるストリンググループGR数と同じ回数の消去ベリファイが行われる。そしてカウンタ125は、フェイルビット数をレイヤ毎にカウントする。
次に制御部121は、レイヤ毎に消去ベリファイ結果のリトライ判定を行う(ステップS13)。以下では、消去ベリファイの結果からレイヤ毎に“消去完了”か、あるいは“消去未了で再度消去が必要(消去のリトライが必要)”かを判定するための動作を「リトライ判定」と呼ぶ。
リトライ判定において、制御部121は、カウンタ125でカウントされたレイヤ毎のフェイルビット数を合計し、その合計数と判定基準ビット数とを比較する。なお、判定基準ビット数はリトライ判定のために任意に設定される数値であり、例えば、ECC回路260で救済可能なフェイルビット数であっても良い。また、判定基準ビット数は各レイヤ共通であってもよく、あるいはレイヤ毎に異なっていても良く、判定基準ビット数は任意に設定され得る。
制御部121は、いずれかのレイヤに関するフェイルビット数の合計が判定基準ビット数よりも少なければ、そのレイヤの消去が完了したと判定する。他方で、制御部121は、いずれかのレイヤに関するフェイルビット数の合計が判定基準ビット数よりも多ければ、そのレイヤの消去が未了であると判定する。
全てのレイヤがリトライ判定をパスしていれば(ステップS14、Yes)、制御部121は、データの消去動作を終了する。他方で、あるレイヤでリトライ判定をフェイルした場合(ステップS14、No)、制御部121は、カウンタ125をリセットした後、そのレイヤに対してデータの消去を行う(ステップS15)。この際、制御部121は、リトライ判定をパスしたレイヤに対しては、データの消去を行わない(消去電圧を印加しない)。
次にステップS12に戻り、制御部121は、前回のリトライ判定にフェイルしたレイヤに対して、消去ベリファイを行う。そしてカウンタ125は、フェイルビット数をカウントする(ステップS12)。さらに制御部121は、前回のリトライ判定にフェイルしたレイヤにつき、消去ベリファイ結果のリトライ判定を行う(ステップS13)。なお、制御部121は、前回のリトライ判定にパスしたレイヤに関しては、消去ベリファイとリトライ判定を行わない。
制御部121は、上記データの消去、消去ベリファイ及びリトライ判定を含む消去ループを、全てのレイヤのリトライ判定がパスするまで(ステップS14、Yes)、あるいは予め設定された消去ループの上限回数まで、繰り返し実施する。
1.2.2 消去動作の具体例について
上記1.2.1で説明した消去動作を、具体例を挙げて、以下説明する。図10は、具体例として図9に示すフローチャートにおいて、2回の消去ループでリトライ判定がパスした場合のフローを示す。
図示するように、まず1回目の消去ループでは、制御部121は、全レイヤ(最上層、中間層、最下層)のNANDストリングSRを消去対象とし、これらのNANDストリングSRが保持するデータを消去する(図9のステップS11に対応)。
次に制御部121は、消去ベリファイをストリンググループGR(列)単位で行う(図9のステップS12に対応)。すなわち制御部121は、まず各メモリユニットMUにおける例えばストリンググループGR1に対して、消去ベリファイを実行する(図10の“Evfy1”)。そしてカウンタ125は、各レイヤに対応するNANDストリングSR毎に、フェイルビット数をカウントする。すなわちカウンタ125は、最下層のNANDストリングSR1に対応するビット線BL1、BL4、BL7、…BL(3i+1)に含まれるフェイルビット数をカウントする。この際、本例では、a1個のフェイルビットが見つかったと仮定する(カウント数=a1)。するとカウンタ125は、このカウント数a1を、いずれかのラッチ回路に保持させる。
同様にしてカウンタ125は、中間層のNANDストリングSR2に対応するビット線BL2、BL5、BL8、…BL(3i+2)に含まれるフェイルビット数をカウントする。この際、本例では、b1個のフェイルビットが見つかったと仮定する(カウント数=b1)。するとカウンタ125は、このカウント数b1を、いずれかのラッチ回路に保持させる。最上層のNANDストリングSR3に対応するビット線BL3、BL6、BL9、…BL(3i+3)に関しても同様である。この際、c1個のフェイルビットが見つかったと仮定する(カウント数=c1)。するとカウンタ125は、このカウント数c1を、いずれかのラッチ回路に保持させる。
次に制御部121は、ストリンググループGR2に対して、消去ベリファイを実行する(図10の“Evfy2”)。この結果、最下層のNANDストリングSR1に対応するビット線BLに関してa2個のフェイルビットが見つかったと仮定する(カウント数=a2)。また、中間層のNANDストリングSR2に対応するビット線BLに関してb2個のフェイルビットが見つかり(カウント数=b2)、最上層に関してはc2個のフェイルビットが見つかったと仮定する(カウント数=c2)。するとカウンタ125は、このカウント数a2、b2、c2を、いずれかのラッチ回路に保持させる。
以下、制御部121は同様にして、ストリンググループGR3及びGR4に対して消去ベリファイを実行する(図10の“Evfy3”及び“Evfy4”)。その結果、ストリンググループGR3では、最下層、中間層、及び最上層のビット線BLにつき、a3、b3、及びc3個のフェイルビットが見つかり、ストリンググループGR4ではa4、b4、及びc4個のフェイルビットが見つかったとする。
次に制御部121は、リトライ判定(Evfy判定)を行う(図9のステップS13に対応)。すなわち制御部121は、カウンタ125に保持されるa4と、ラッチ回路に退避されたa1、a2、及びa3を合計する。この合計結果は、最下層に位置するNANDストリングSR1の不良数であり、言い換えればビット線BL1、BL4、BL7、…BL(3i+1)に存在するフェイルビットの総数である。そして制御部121は、a1〜a4の総計と判定基準ビット数とを比較する。この結果、(a1+a2+a3+a4)>判定基準ビット数だったと仮定する。すると制御部121は、最下層に位置するNANDストリングSR1はリトライ判定にフェイルした、と判断する。
同様に制御部121は、b1〜b4の総計と判定基準ビット数とを比較する。この結果、(b1+b2+b3+b4)<判定基準ビット数だったと仮定する。すると制御部121は、中間層に位置するNANDストリングSR2はリトライ判定にパスした、と判断する。また、制御部121は、c1〜c4の総計と判定基準ビット数とを比較する。この結果、(c1+c2+c3+c4)>判定基準ビット数だったと仮定する。すると制御部121は、最上層に位置するNANDストリングSR3はリトライ判定にフェイルした、と判断する(ステップS14、No)。従って、制御部121は、リトライ判定をフェイルした最下層と最上層に位置するNANDストリングSR1、SR3の2回目の消去を行う(図9のステップS15に対応)。
次に制御部121は、上記説明したようにして、最下層と最上層に位置するNANDストリングSR1、SR3の消去ベリファイ(図9のステップS12に対応)とリトライ判定(図9のステップS13に対応)を行う。2回目の消去ループにおける、NANDストリングSR1に対応するフェイルビット数がa1’〜a4’個、NANDストリングSR3に対応するフェイルビット数がc1’〜c4’個だったとする。そして、その結果、(a1’+a2’+a3’+a4’)<判定基準ビット数、及び(c1’+c2’+c3’+c4’)<判定基準ビット数だったと仮定する。すると制御部121は、最下層と最上層に位置するNANDストリングSR1、SR3は、2回目のリトライ判定をパスした、と判断して(図9のステップS14、Yesに対応)、データの消去動作を終了する。
なお、ここでカウンタ125は、各消去ベリファイ(Evfy1〜Evfy4)のフェイルビット数をラッチ回路に移動し、別々にカウントしたが、各消去ベリファイ(Evfy1〜Evfy4)でカウントしたフェイルビット数をレイヤ毎に順次加算しても良い。
具体例として、最下層に位置するNANDストリングSR1のフェイルビット数a1〜a4について説明する。
例えば、フェイルビット数を順次加算する場合、カウンタ125は、消去ベリファイ(Evfy1)のフェイルビット数a1を保持した状態で、消去ベリファイ(Evfy2)のフェイルビット数a2を加算する。従って、消去ベリファイ(Evfy2)後、カウンタ125に保持されているのは、フェイルビット数a1とa2の合計(a1+a2)となる。次にカウンタ125は、消去ベリファイ(Evfy3)において、フェイルビット数a3を加算することにより、合計数(a1+a2+a3)を保持する。次にカウンタ125は、消去ベリファイ(Evfy4)において、フェイルビット数a4を加算することにより、合計数(a1+a2+a3+a4)を保持する。同様に、カウンタ125は、フェイルビット数b1〜b4を加算し、フェイルビット数c1〜c4を加算する。その結果、消去ベリファイ終了後、カウンタ125は、各レイヤのフェイルビット数の合計数(a1+a2+a3+a4)、(b1+b2+b3+b4)、及び(c1+c2+c3+c4)をそれぞれ保持する。
1.2.3 消去電圧について
次にデータの消去動作時における配線の電圧関係について説明する。図11は、図10に示すフローチャートにおいて、1回目の消去と、その消去ベリファイ(Evfy1〜Evfy4)と、2回目の消去とにおける配線の電位を示すタイミングチャートである。なお、ここではメモリユニットMU1に関する配線についてのみ説明するが、その他の消去対象メモリユニットMUに関しても同様である。例えばメモリユニットMU2についての配線の電圧に関しては、下記の説明において、ビット線BL1〜BL3をビット線BL4〜BL6と読み替えれば良い。
まず1回目の消去(時刻t1〜t2)において、ドライバ124は、ビット線BL1〜BL3に電圧VERA(例えば20V)を印加し、制御信号線SSL1〜SSL4に電圧VERA_GIDL(例えば12V)を印加する。ここでVERAとVERA_GIDLは、消去の際にトランジスタでGIDL(Gate Induced Drain leakage)を発生させるための電圧である。VERAは、トランジスタのソースあるいはドレインに印加される高電圧であり、VERA_GIDLは、トランジスタのゲートに印加される電圧である。また、VERAはVERA_GIDLよりも高い電圧である。
これにより、カラム選択トランジスタCSG1〜CSG4のゲート端でGIDLが発生する。このように本実施形態では、ビット線側のカラム選択トランジスタCSGでGIDLを発生させ、ソース線側のカラム選択トランジスタCSGでは発生させない場合を例に挙げている。
この状態でロウデコーダ112は、セレクトゲート線GSL1、GSL2に電圧VERA_GSL(例えば10V程度)を印加する。ここでVERA_GSLは、選択トランジスタST1、ST2をオン状態とするための電圧である。また、VERA_GSLは、選択トランジスタST1、ST2に対して、GIDLにより発生したホールの転送を可能とさせる電圧であり、例えば(VERA−Vt)以下であれば良い。但し、Vtはカラム選択トランジスタCSGの閾値電圧である。さらに、より好ましくは、VERA_GSLは、10V程度の電圧であれば良い。
またソース線ドライバ114は、GIDLを発生させない電圧、例えばVERA_GSLと同電位(例えば10V程度)をソース線SL1、SL2に印加する。さらにロウデコーダ112は、ワード線WL1〜WL4に電圧VERA_WL(例えば0V)を印加する。ここでVERA_WLは、消去の際、ワード線WLに印加される電圧である。また、VERA_WLは、GIDLで発生したホールがメモリセルトランジスタMTの電荷蓄積層26に注入されるように、半導体層23の電圧(すなわちVERA)よりも十分に低い電圧とする。これにより、ワード線WL1〜WL4に接続されたメモリセルトランジスタMT1〜MT4の電荷蓄積層26には、GIDLで発生したホールが供給され、データが消去される。なお、非選択のメモリユニットMUでは、ビット線BLを、GIDLを発生させない電位とし、制御信号線SSLを“L”レベルとすることにより、消去対象から除外出来る。
次に制御部121は、ストリンググループGR1−1の消去ベリファイ(Evfy1)を行う(時刻t3〜t4)。すなわちセンスアンプ113は、ビット線BL1〜BL3にプリチャージ電圧(例えば0.5V)を印加する。また、ソース線ドライバ114は、ソース線SL1、SL2にビット線BLよりも低い電圧(例えば0V)を印加する。そしてドライバ124は、カラム選択トランジスタCSG1をオン状態とするため、ビット線BLより高い電圧(例えば5V程度)を制御信号線SSL1に印加する。さらにドライバ124は、カラム選択トランジスタCSG2〜CSG4をオフ状態とするため、例えばソース線SLと同電位の0Vを制御信号線SSL2〜SSL4に印加する。またロウデコーダ112は、選択トランジスタST1、ST2をオン状態とするため、セレクトゲート線GSL1、GSL2にビット線BLよりも高い電圧(例えば5V程度)を印加する。この結果、ストリンググループGR1−1が選択される。
この状態において、さらにロウデコーダ112は、全ワード線WL1〜WL4にベリファイ電圧(例えば0〜1V)を印加する。これにより、例えば、NANDストリングSR1〜SR3において、それぞれに含まれる全てのメモリセルトランジスタMT1〜MT4がオン状態(データの消去が完了している状態)であれば、ビット線BL1〜BL3から、それぞれNANDストリングSR1〜SR3の電流経路を介してソース線SL1に電流が流れる。逆に、各NANDストリングSRにおいて、少なくとも1つ以上のメモリセルトランジスタMTがオフ状態(データの消去が完了していない状態)であれば、電流は流れない。
引き続き、制御部121は、ストリンググループSR2−1、SR3−1、及びSR4−1の消去ベリファイ(Evfy2〜Evfy4)を順次行う(時刻t5〜t6、t7〜t8、t9〜t10)。ストリンググループGR2−1を選択する場合、ドライバ124は、制御信号線SSL2に例えば5V程度を印加し、制御信号線SSL1、SSL3、SSL4に例えば0Vを印加する。これにより、ドライバ124は、カラム選択トランジスタCSG2をオン状態とし、カラム選択トランジスタCSG1、CSG3、CSG4をオフ状態とする。ストリンググループGR3−1を選択する場合、ドライバ124は、制御信号線SSL3に例えば5V程度を印加し、制御信号線SSL1、SSL2、SSL4に例えば0Vを印加する。これにより、ドライバ124は、カラム選択トランジスタCSG3をオン状態とし、カラム選択トランジスタCSG1、CSG2、CSG4をオフ状態とする。ストリンググループGR4−1を選択する場合、ドライバ124は、制御信号線SSL4に例えば5V程度を印加し、制御信号線SSL1〜SSL3に例えば0Vを印加する。これにより、ドライバ124は、カラム選択トランジスタCSG4をオン状態とし、カラム選択トランジスタCSG1〜CSG3をオフ状態とする。このようにストリンググループGRは、制御信号線SSLによって選択される。
そして制御部121はリトライ判定後、2回目の消去を行う(時刻t11〜t12)。1回目の消去との違いは、例えばセンスアンプ113が、リトライ判定をパスした中間層に対応するビット線BL2に、VERAよりも低くGIDLを発生させない電圧、例えばVERA_GSLと同電位の電圧(10V程度)を印加している点である。これにより、ビット線BL2に接続されたカラム選択トランジスタCSGでは、GIDLが発生しない。
なお、本実施形態では、ストリンググループGR1−1からベリファイを行ったが、どのストリンググループGRからベリファイを行っても良い。
更に、本実施形態ではセンスアンプ113がビット線BL2にGIDLを発生させない電圧を印加しているが、ドライバ124がGIDLを発生させない電圧を印加しても良い。また、ビット線BL2に印加する電圧は、GIDLを発生させない電圧であれば特に限定されない。
図12は、消去ループ回数とVERAの関係を示すグラフである。図示するように、例えばVERAの値は、消去ループを繰り返す毎にステップアップされる。これに対してリトライ判定をパスしたレイヤのNANDストリングSRは、次の消去ループからは、VERAの代わりに、GIDLを発生させないための電圧(例えば10V程度)が印加される。この電圧は、例えばVERAと異なり常に一定であっても良いし、あるいはVERAと同様にステップアップされても良い。
1.3 本実施形態に係る効果について
本実施形態に係る構成であると、データの消去動作の信頼性を向上出来る。本効果につき、以下説明する。
半導体基板上方にメモリセルトランジスタMTが積層された三次元積層メモリが知られている。このようなメモリでは、形成されるレイヤによってメモリセルトランジスタMTのサイズが異なる場合がある。例えば、フィン型構造24が図6に示す形状をしている場合、上層に位置するメモリセルトランジスタMTほどゲート長が長くなる。また、例えば図8に示すようにワード線WLがテーパー形状をしている場合、上層に位置するメモリセルトランジスタMTほどゲート幅が短くなる。このようにサイズが異なると、それに伴って消去特性がレイヤ間で異なる場合がある。
その理由は次の通りである。メモリセルトランジスタMTの消去においては、ゲートの角の部分で電界集中が起こる。この時、ゲート長またはゲート幅が短くなると、ゲートの両端、すなわち電界集中しやすい場所が近くなり、データの消去がしやすくなる傾向がある。従って、例えばフィン型構造24が図6に示す形状をしている場合、上層に位置するメモリセルトランジスタMTほどゲート長が長いため、消去しにくく(消去速度が遅く)なる。また、例えば図8に示すようにワード線WLがテーパー形状をしている場合、上層に位置するメモリセルトランジスタMTほどゲート幅が短くなるため、消去しやすく(消去速度が速く)なる。
そこで本実施形態に係る構成では、この消去特性の違いに着目して、レイヤ毎にリトライ判定を実行する。より具体的には、消去ベリファイのフェイルビット数をレイヤ毎にカウントする。そして、消去ベリファイのフェイルビット数と判定基準ビット数との比較を、レイヤ毎に行っている。これにより、消去しやすいレイヤと消去しにくいレイヤを判別することが出来る。そして、リトライ判定をパスしたレイヤに対しては、その後の消去ループにおいて消去電圧を印加させない。
従って、消去速度にバラツキがあっても、早くにリトライ判定にパスしたレイヤが再度、消去電圧のストレスにさらされることが無い。よってメモリセルトランジスタMTにダメージが加わることを抑制し、消去動作の信頼性を向上出来る。
2.第2実施形態
次に、第2実施形態に係る半導体記憶装置及びデータ消去方法について説明する。本実施形態は、上記第1実施形態において、ソース線側の選択トランジスタST2でGIDLを発生させることにより、データを消去するものである。以下では、第1実施形態と異なる点についてのみ説明する。
2.1 メモリセルアレイの構成について
図13は、第2実施形態に係るメモリセルアレイ111の回路図であり、いずれか1個のブロック内の構成を示している。図示するように、本実施形態に係るメモリセルアレイ111は、第1実施形態で説明した図3において、同一ストリンググループGR内のNANDストリングSR1〜SR3がビット線BLを共通にし、他方でソース線SLを独立させたものである。
例えばメモリユニットMU1に着目すると、ストリンググループGR1−1のNANDストリングSR1〜SR3のドレイン端はビット線BL1に共通に接続され、ソース端はそれぞれソース線SL1〜SL3に接続されている。またストリンググループGR2−1のNANDストリングSR1〜SR3のドレイン端はビット線BL2に共通に接続され、ソース端はそれぞれソース線SL1〜SL3に接続されている。更にストリンググループGR3−1のNANDストリングSR1〜SR3のドレイン端はビット線BL3に共通に接続され、ソース端はそれぞれソース線SL1〜SL3に接続されている。同様に、ストリンググループGR4−1のNANDストリングSR1〜SR3のドレイン端はビット線BL4に共通に接続され、ソース端はそれぞれソース線SL1〜SL3に接続されている。
メモリユニットMU2についても同様であり、ストリンググループGR1−2〜GR4−2のドレイン端は、ビット線BL5〜BL8にそれぞれ接続されている。他方で、ストリンググループGR1−2〜GR4−2のNANDストリングSR1〜SR3のソース端は、ソース線SL1〜SL3にそれぞれ接続されている。
従って本実施形態では、ソース線SL1〜SL3によりNANDストリングSR1〜SR3を選択出来る。また、各メモリユニットMUに対応しているビット線BLの本数は、1つのメモリユニットMUに含まれるストリンググループGRの総数に対応する。
さらに、本実施形態では、選択トランジスタST1のゲートは、セレクトゲート線GSL2に共通に接続され、選択トランジスタST2のゲートは、セレクトゲート線GSL1に共通に接続されている。
上記構成において、各メモリユニットMUの各ストリンググループGRから1つずつ選択されたNANDストリングSRにおける同一ワード線WLに接続された複数のメモリセルトランジスタMTの集合が、「ページ」と呼ばれる単位となる。例えば図13では、一例として、ソース線SL1及びワード線WL1が選択された場合、メモリユニットMU1の4つのストリンググループGR1−1〜GR4−1と、メモリユニットMU2の4つのストリンググループGR1−2〜GR4−2の各NANDストリングSR1において、ワード線WL1に接続されたメモリセルトランジスタMT1によって、1ページが形成される。そして、このページに含まれる8つのメモリセルトランジスタMT1は、ビット線BL1〜BL8にそれぞれ接続される。メモリユニットMUが3つ設けられる場合には、更にメモリユニットMU3の4つのストリンググループGR1−3〜GR4−3の各NANDストリングSR1におけるメモリセルトランジスタMT1が、上記ページに含まれる。その他のソース線SLまたはワード線WLが選択された場合も同様である。
図14は、メモリユニットMUの斜視図であり、また、図15は、メモリユニットMUの平面図であり、図16は、図15における16−16線に沿った断面図であり、図17は、図15における17−17線に沿った断面図である。
図14及び図15に示すように本実施形態に係る構成は、第1実施形態で説明した構成において、複数のフィン型構造24の一端部がメモリセルアレイ111の端部に引き出され、引き出された領域においてビット線BLとそれぞれ接続され、他端部が共通に接続されて、且つソース線SLに接続されたものである。
より具体的には、フィン型構造24−1〜24−4の各々では、その一端側において、各半導体層23−1〜23−3を貫通し、これらの半導体層23−1〜23−3に接するコンタクトプラグBC1〜BC4が形成される。そしてビット線BL1〜BL4は、これらのビット線コンタクトプラグBC1〜BC4にそれぞれ接続されている(図17参照)。
他方で、フィン型構造24−1〜24−4の各々は、その他端部において、半導体層23−1〜23−3が階段状に引き出されている。そして、各半導体層23−1〜23−3の上面に、それぞれソース線コンタクトプラグSC1〜SC3が形成され、これらはそれぞれソース線SL1〜SL3に接続されている(図16参照)。
すなわち本例に係る構成では、ビット線BLは各レイヤを共通に接続し、ソース線SLはレイヤ毎に独立に設けられる。また本例では、第1実施形態における制御信号線SSLが廃されている。
2.2 データの消去動作について
次に本実施形態に係るデータの消去動作について説明する。以下では、第1実施形態と異なる点についてのみ説明する。
2.2.1 データの消去動作の全体的な流れについて
本実施形態に係る消去動作の大まかな流れは、第1実施形態の図9と同じである。本実施形態が第1実施形態と異なる点は、ソース線SLに印加する電圧により、消去ベリファイを行うレイヤ(NANDストリングSR)を選択する点にある。従って、第1実施形態と異なり、制御部121は、消去ベリファイ(ステップS12、S16)をレイヤ(NANDストリングSR)単位で行う。
図18は、具体例として2回の消去でリトライ判定がパスした場合のフローを示す。図示するように、まず1回目の消去ループでは、全レイヤ(最下層、中間層、最上層)のNANDストリングSR1〜SR3を消去対象とし、これらのNANDストリングSRが保持するデータが消去される(ステップS11)。
次に制御部121は、消去ベリファイをNANDストリングSR(レイヤ)単位で行う(ステップS12)。すなわち制御部121は、各メモリユニットMUにおける各NANDストリングSR1〜SR3に対して、それぞれ消去ベリファイを実行する。
まず制御部121は、各メモリユニットMUにおけるNANDストリングSR1に対して、消去ベリファイを実行する(Evfy1)。この際、消去対象ブロックBLKにおける全ビット線BLが選択される。但し、ソース線ドライバがソース線SL1を選択し、ソース線SL2及びSL3を非選択とすることで、各ストリンググループGRにおいては、最下層のNANDストリングSR1が選択状態となり、その他のNANDストリングSR2及びSR3は非選択状態とされる。そしてカウンタ125は、フェイルビット数をカウントする。具体的には、ストリンググループGR1に対応するビット線BL1、BL5、BL9、…BL(4i+1)に関しては、a1個のフェイルビット数が見つかったと仮定する(カウント数=a1)。ストリンググループGR2に対応するビット線BL2、BL6、BL10、…BL(4i+2)に関しては、a2個のフェイルビット数が見つかったと仮定する(カウント数=a2)。ストリンググループGR3に対応するビット線BL3、BL7、BL11、…BL(4i+3)に関しては、a3個のフェイルビット数が見つかったと仮定する(カウント数=a3)。ストリンググループGR4に対応するビット線BL4、BL8、BL12、…BL(4i+4)に関しては、a4個のフェイルビット数が見つかったと仮定する(カウント数=a4)。
ここで、フェイルビット数a1〜a4を合計すると、その結果は、全てのストリンググループGRの最下層に位置するNANDストリングSR1のフェイルビット数の合計となる。従って、カウンタ125は、カウント数a1〜a4を加算し、その合計(a1+a2+a3+a4)を例えばいずれかのラッチ回路に保持させる。
引き続き制御部121は、NANDストリングSR2に対して、消去ベリファイを実行する(Evfy2)。この際には、ソース線SL2が選択され、ソース線SL1及びSL3が非選択とされる。そして、ストリンググループGR1〜GR4の中間層に位置するNANDストリングSR2に対応するフェイルビット数がb1〜b4個であったとする。するとカウンタ125は、カウント数b1〜b4を加算し、その合計(b1+b2+b3+b4)を例えばいずれかのラッチ回路に保持させる。
次に制御部121は、NANDストリングSR3に対して、消去ベリファイを実行する(Evfy3)。この際には、ソース線SL3が選択され、ソース線SL1及びSL2が非選択とされる。そして、ストリンググループGR1〜GR4の最上層に位置するNANDストリングSR3に対応するフェイルビット数がc1〜c4個であったとする。するとカウンタ125は、カウント数c1〜c4を加算し、その合計(c1+c2+c3+c4)を例えばいずれかのラッチ回路に保持させる。
次に制御部121は、リトライ判定(Evfy判定)を行う(ステップS13)。制御部121は、各レイヤのフェイルビット数の合計と判定基準ビット数を比較する。その結果、(a1+a2+a3+a4)>判定基準ビット数であり、(b1+b2+b3+b4)<判定基準ビット数、(c1+c2+c3+c4)>判定基準ビット数であったと仮定する。すると制御部121は、中間層に位置するNANDストリングSR2はリトライ判定にパスし、最下層と最上層に位置するNANDストリングSR1、SR3はリトライ判定にフェイルした、と判断する(ステップS14、No)。従って、制御部121は、リトライ判定にフェイルしたNANDストリングSR1、SR3を対象にして、2回目の消去を行う(ステップS15)。この際、NANDストリングSR2は消去非対象とされる。
次に制御部121は、NANDストリングSR1、SR3の消去ベリファイ(ステップS12)を行う。2回目以降の消去ループでは、リトライ判定をフェイルしたレイヤのみ消去ベリファイを実行するため、消去ベリファイの回数は、リトライ判定をフェイルしたレイヤ数に依存する。具体的には、図18に示すフローチャートにおいて、制御部121は、1回目の消去ループでは、最下層、中間層、最上層に対応する3回の消去ベリファイ(Evfy1〜Evfy3)を行っていたが、2回目の消去ループでは、最下層と最上層に対応する2回の消去ベリファイ(Evfy1、Evfy2)を行っている。
次に制御部121は、最下層と最上層に位置するNANDストリングSR1、SR3のリトライ判定(ステップS13)を行う。2回目の消去ループにおける、NANDストリングSR1に対応するフェイルビット数がa1’〜a4’個、NANDストリングSR3に対応するフェイルビット数がc1’〜c4’個だったとする。すると制御部121は、最下層と最上層のフェイルビット数の合計と判定基準ビット数を比較する。その結果、(a1’+a2’+a3’+a4’)<判定基準ビット数、(c1’+c2’+c3’+c4’)<判定基準ビット数だったと仮定する。すると制御部121は、最下層と最上層に位置するNANDストリングSR1、SR3は、2回目のリトライ判定をパスした、と判断してデータの消去動作を終了する。
なお、本実施形態では、全レイヤの消去ベリファイ終了後にそれぞれのレイヤのリトライ判定を行ったが、1つのレイヤの消去ベリファイが終了する度にそのレイヤのリトライ判定を行っても良い。すなわち、制御部121は最下層の消去ベリファイ後に最下層のリトライ判定を行い、中間層の消去ベリファイ後に中間層のリトライ判定を行い、最上層の消去ベリファイ後に最上層のリトライ判定を行っても良い。
2.2.2 消去電圧について
次に、データの消去動作時における配線の電圧関係について説明する。図19は、図18に示すフローチャートにおいて、1回目の消去と、その消去ベリファイ(Evfy1〜Evfy3)と、2回目の消去とにおける配線の電位を示すタイミングチャートである。なお、ここではメモリユニットMU1に関する配線のみ説明するが、その他の消去対象のメモリユニットMUに関しても同様である。例えばメモリユニットMU2についての配線の電圧に関しては、下記の説明において、ビット線BL1〜BL4を、ビット線BL5〜BL8と読み替えれば良い。
まず1回目の消去(時刻t1〜t2)において、ドライバ124は、ソース線SL1〜SL3にVERA(例えば20V)を印加する。そして、ロウデコーダ112は、セレクトゲート線GSL1に電圧VERA_GIDL(例えば12V)を印加する。これにより、選択トランジスタST2では、トランジスタのゲート端でGIDLが発生する。
またロウデコーダ112は、セレクトゲート線GSL2に電圧VERA_GSL(例えば10V程度)を印加する。センスアンプ113は、ビット線BL1〜BL4に、GIDLを発生させない電圧、例えばセレクトゲート線GSL2と同電位(例えば10V程度)を印加する。従って、本実施形態では、ソース線側の選択トランジスタST2でGIDLを発生させ、ビット線側の選択トランジスタST1ではGIDLを発生させていない。
さらにロウデコーダ112は、ワード線WL1〜WL4に電圧VERA_WL(例えば0V)を印加する。これにより、選択トランジスタST2でGIDLにより発生したホールは、ワード線WL1〜WL4に接続されたメモリセルトランジスタMT1〜MT4に供給され、これによりデータが消去される。
なお、本実施形態ではドライバ124がソース線SLにVERAを印加したが、ソース線ドライバ114がVERAを印加しても良い。また、センスアンプ113がビット線BL1〜BL4にGIDLを発生させない電圧を印加したが、ドライバ124が印加しても良い。また、非選択のメモリユニットMUでは、ソース線SLをフローティングあるいはGIDLを発生させない電圧とすることにより、当該メモリユニットMUを消去対象から除外出来る。
次に制御部121は、ストリンググループGR1−1〜GR4−1の最下層に位置するNANDストリングSR1の消去ベリファイ(Evfy1)を行う(時刻t3〜t4)。すなわちセンスアンプ113は、ビット線BL1〜BL4に例えば0.5Vを印加する。また、ソース線ドライバ114は、消去ベリファイ対象である最下層に位置するNANDストリングSR1に対応するソース線SL1に、ビット線BLよりも低い電圧(例えば0V)を印加する(選択状態とする)。ロウデコーダ112は、選択トランジスタST1、ST2をオン状態とするため、ビット線BLより高い電圧(例えば5V)をセレクトゲート線GSL1、GSLに印加する。また、ソース線ドライバ114は、消去ベリファイ対象ではない中間層と最上層に位置するNANDストリングSR2、SR3に対応するソース線SL2、SL3にビット線BLと同電位(例えば0.5V)を印加する(非選択状態とする)。
さらにロウデコーダ112は、全ワード線WL1〜WL4にベリファイ電圧(例えば0〜1V)を印加する。これにより、例えばストリンググループGR1−1〜GR4−1のNANDストリングSR1において、それぞれに含まれる全てのメモリセルトランジスタMT1〜MT4がオン状態であれば、ビット線BL1〜BL4から各NANDストリングSR1の電流経路を介してソース線SL1に電流が流れる。逆に、各NANDストリングSR1において、少なくとも1つ以上のメモリセルトランジスタMTがオフ状態であれば、電流は流れない。この際、非選択状態のソース線SL2、SL3はビット線BLと同電位にあるため、メモリセルトランジスタMTのオン、オフ状態に関わらず電流は流れない。
引き続き制御部121は、NANDストリングSR2、SR3の消去ベリファイ(Evfy2、Evfy3)を順次行う(時刻t5〜t6、t7〜t8)。NANDストリングSR2を選択する場合、ソース線ドライバ114は、ソース線SL2にビット線BLよりも低い電圧(例えば0V)を印加し、ソース線SL1、SL3にビット線BLと同電位(例えば0.5V)を印加する。また、NANDストリングSR3を選択する場合、ソース線ドライバ114は、ソース線SL3にビット線BLよりも低い電圧(例えば0V)を印加し、ソース線SL1、SL2にビット線BLと同電位(例えば0.5V)を印加する。このように、NANDストリングSRの選択は、ソース線SLの電圧により行う。なお、本実施形態では、NANDストリングSR1から消去ベリファイを行ったが、どのNANDストリングSRから消去ベリファイを行っても良い。
リトライ判定後、2回目の消去を行う(時刻t9〜t10)。1回目の消去との違いは、例えば、ソース線ドライバ114が、リトライ判定をパスした中間層に対応するソース線SL2に、GIDLを発生させない電圧(例えば、VERA_GSLと同電位の電圧(例えば10V程度))を印加している点である。これにより、ソース線SL2に接続された選択トランジスタST2ではGIDLが発生しない。なお、ここでは、ソース線SL2に、ビット線BLと同電位の電圧を印加したが、印加する電圧は、GIDLを発生させない電圧であれば良い。
2.3 本実施形態に係る効果
本実施形態に係る構成では、ソース線SLからVERAを印加することによりメモリセルトランジスタMTのデータを消去することが出来る。また、ソース線SLを選択することにより、消去対象とするNANDストリングSRをレイヤ毎に選択出来る。従って、本実施形態に係る構成であると、上記第1実施形態と同様の効果が得られる。
更に、本実施形態に係る構成では、消去ベリファイをレイヤ毎に行っているため、2回目以降の消去ループでは、リトライ判定をパスしたレイヤの消去ベリファイを省略することが出来る。従って、2回目以降の消去ループでは、リトライ判定をパスしたレイヤ数に応じて、消去ベリファイの回数を削減することが出来る。従って、消去動作時の処理時間を短縮することが出来る。
更に、本実施形態に係る構成では、消去ベリファイをレイヤ毎に行っているため、レイヤ数がストリンググループ数より少ない場合は、ストリンググループ毎に行う場合よりも、消去ベリファイの回数を少なくすることが出来る。従って消去動作時の処理時間を短縮することが出来る。
更に、本実施形態では、1回の消去ベリファイで、各レイヤにおける全てのフェイルビット数をカウントすることが出来る。従って、1回の消去ベリファイを1つのカウンタで処理することが出来るため、必要なカウンタ数を低減することが出来る。
更に、本実施形態に係る構成では、カラム選択トランジスタを廃することができる。これにより、回路素子数を低減し、チップ面積を削減することが出来る。
3. 第3実施形態
次に、第3実施形態に係る半導体記憶装置及びデータ消去方法について説明する。本実施形態は、第2実施形態において、GIDLを用いる代わりにFNトンネル効果を用いてデータを消去するものである。以下では、第2実施形態と異なる点についてのみ説明する。
3.1 メモリセルアレイの構成について
本実施形態に係るメモリセルアレイの構成は、第2実施形態と同様にソース線SLによりレイヤを選択する構成となっており、回路図は図13、斜視図は図14、平面図は図15と同じである。
図20は、本実施形態に係るメモリセルアレイ111の第2方向に沿った(図15の17−17線に沿った)断面図である。図示するように本実施形態に係るメモリセルアレイ111の構成は、第2実施形態で説明した図17において、半導体層23−1〜23−3内にN+型拡散層29及びP+型拡散層30が形成されたものである。より具体的には、N+型拡散層29は、選択トランジスタST1のドレイン領域として機能する。そしてビット線コンタクトBCは、N+型拡散層29を貫通し、N+型拡散層29に接するようにして設けられる。他方で、P+型拡散層30は、選択トランジスタST2のソース領域として機能する。そしてソース線コンタクトSCは、半導体層23−1〜23−3内の各P+型拡散層30上にそれぞれ設けられる。
3.2 データの消去動作について
次に本実施形態に係るデータの消去動作について説明する。以下では、第2実施形態と異なる点についてのみ説明する。本実施形態に係る消去動作の全体の流れは、第2実施形態と同じであり、消去ベリファイをレイヤ毎に行う。そのフローチャートは図9及び図18に示す通りである。
図21は、図18に示すフローチャートにおいて、1回目の消去と、その消去ベリファイ(Evfy1〜Evfy3)と、2回目の消去とにおける配線の電位を示すタイミングチャートである。なお、本実施形態では第2実施形態と同様に、メモリユニットMU1に関する配線のみ説明するが、その他の消去対象のメモリユニットMUに関しても同様である。
まず、1回目の消去(時刻t1〜t3)においてセンスアンプ113は、ビット線BL1〜BL4に例えば0Vを印加する。ソース線ドライバ114は、ソース線SL1〜SL3に例えば0Vを印加する。また、ロウデコーダ112は、セレクトゲート線GSL1にソース線SL1〜SL3より低い電圧(例えば−3.3V)を印加し、セレクトゲート線GSL2にビット線BL1〜BL4と同じ電圧(例えば0V)を印加する。これにより、ビット線BL1〜BL4に接続された選択トランジスタST1は、オフ状態となる。他方で、ソース線SL1〜SL3に接続された選択トランジスタST2は、ソース線側の領域に形成されたP+型拡散層30よりホールが供給され、Pチャネルトランジスタとして動作するので、オン状態となる。
この状態において、ロウデコータ112は、時刻t1〜t2の間、ワード線WL1〜WL4に、ソース線SLより低い電圧(例えば−7V)を印加する。この電圧は、半導体23にソース線側からホールを供給するため、ソース線SLよりも低い電圧である。ワード線WL1〜WL4に−7Vが印加されると、メモリセルトランジスタMT1〜MT4は、容量カップリングによりゲート下の半導体層23の電位を−7Vに下げようとする。しかし、選択トランジスタST2がオン状態のため、半導体層23の電位は、ソース線SLと同じ0Vを維持する。そして、P+型拡散層30からホールが供給されることにより、半導体層23は、P型半導体として働く。この結果、メモリセルトランジスタMT1〜MT4はPチャネルトランジスタとして動作する。
次にロウデコータ112は、時刻t2〜t3の間、ワード線WL1〜WL4に更に低い電圧を印加する。この電圧は、FNトンネル電流を流すための負電圧(例えば−18V)である。この結果、半導体層23とメモリセルトランジスタMT1〜MT4のゲートとの間の電位差が大きくなり、メモリセルトランジスタMT1〜MT4にFNトンネル電流が流れる。これにより、電荷蓄積層26の電子が消失するためデータが消去される。なお、非選択のメモリユニットMUでは、対応するソース線SLをセレクトゲート線GSL1と同じ電圧(例えば−3.3V)とすることで、選択トランジスタST2がオフ状態となり消去対象から除外出来る。
次に制御部121は、ストリンググループGR1−1〜GR4−1の最下層に位置するNANDストリングSR1の消去ベリファイ(Evfy1)を行う(時刻t4〜t5)。すなわちセンスアンプ113は、ビット線BL1〜BL4に例えば0Vを印加する。ソース線ドライバ114は、消去ベリファイ対象の最下層に対応するソース線SL1に、ビット線BLより高い電圧(例えば2V)を印加する。他方でソース線ドライバ114は、消去ベリファイ対象ではない中間層と最上層に対応するソース線SL2、SL3に、ビット線BLと同電位(例えば0V)を印加する。
これにより、例えばストリンググループGR1−1〜GR4−1のNANDストリングSR1において、それぞれに含まれる全てのメモリセルトランジスタMT1〜MT4がオン状態であれば、ソース線SL1から各NANDストリングSR1の電流経路を介してビット線BL1〜BL4に電流が流れる。
本実施形態においては、ソース線側の領域にP+型拡散層30が形成され、ビット線側の領域にN+型拡散層29がそれぞれ形成されている。このため、ビット線BLとソース線SLとを接続する半導体層23に電流を流す場合は、ビット線BLの電位よりもソース線SLの電位を高くする。
引き続き制御部121は、NANDストリングSR2、SR3の消去ベリファイ(Evfy2、Evfy3)を順次行う(時刻t5〜t6、t7〜t8)。NANDストリングSR2を選択する場合、ソース線ドライバ114は、ソース線SL2にビット線BLより高い電圧(例えば2V)を印加し、ソース線SL1、SL3にビット線BLと同電位(例えば0V)を印加する。また、NANDストリングSR3を選択する場合、ソース線ドライバ114は、ソース線SL3にビット線BLより高い電圧(例えば2V)を印加し、ソース線SL2、SL3にビット線BLと同電位(例えば0V)を印加する。このように、NANDストリングSR1〜SR3の選択は、ソース線SL1〜SL3の電圧により行う。
次に制御部121は、リトライ判定後、リトライ判定をフェイルしたレイヤの2回目の消去を行う(時刻t10〜t12)。1回目の消去との違いは、ソース線ドライバ114が、リトライ判定にパスした中間層に対応するソース線SL2にセレクトゲート線GSL1と同じ電圧(例えば−3.3V)を印加している点である。これにより、ソース線SL2に接続された選択トランジスタST2は、オフ状態となる。この結果、NANDストリングSR2では、選択トランジスタST1及びST2の両方がオフ状態となり電流が流れない。すなわち、NANDストリングSR2の半導体層23はフローティング状態となる。よって、ワード線WLに−18Vが印加されると、容量カップリングにより、半導体層23の電位も−18Vに下がり、メモリセルトランジスタMTのゲートと半導体層23間で電位差が生じないため、FNトンネル電流が流れない。
3.3 本実施形態に係る効果
本実施形態に係る構成では、ソース線SLを選択することによりレイヤ毎の消去、非消去を選択することが出来る。従って、本実施形態に係る構成であると、上記第1及び第2実施形態と同様の効果が得られる。
更に、本構成では、FNトンネル効果により電荷蓄積層26にホールを供給することによって、メモリセルトランジスタMTのデータを消去することが出来る。従って、GIDLによりデータを消去する場合に比べて、選択トランジスタSTへの印加電圧を低くすることが出来る。
更に、本実施形態に係る構成であると、上記第2実施形態と同様に、2回目以降の消去において、消去ベリファイの回数をフェイルしたレイヤ数に削減することが出来る。従って、消去動作時の処理時間を短縮することが出来る。
なお、本実施形態ではNANDストリングSR1から消去ベリファイを行ったが、どのNANDストリングSRから消去ベリファイを行っても良い。
更に、本実施形態では、リトライ判定をフェイルして消去を繰り返す毎にワード線WLの電圧をステップダウンしても良く、FNトンネル電流を流すためにワード線WLに電圧を印加する時間をステップアップしても良い。
更に本実施形態では、消去ベリファイ時に、ロウデコーダ112が、選択トランジスタST1、ST2に、ビット線BL及びソース線SLより高い電圧(例えば5V)を印加し、選択トランジスタST1、ST2をNチャネルトランジスタとして動作させた場合(これを「Nチャネル読み出し」と呼ぶ)について説明した。しかし、ロウデコーダ112が、選択トランジスタST1、ST2に、ビット線BL及びソース線SLより低い電圧例えば−5Vを印加し、Pチャネルトランジスタとして動作させても良い(これを「Pチャネル読み出し」と呼ぶ)。Nチャネル読み出しの場合、ビット線側のN+型拡散層29からNANDストリングSRの半導体層23に電子が供給されると、半導体層23はN+型拡散層として働く。このため、選択トランジスタST1、ST2はNチャネルトランジスタとして動作することが出来る。一方、Pチャネル読み出しの場合、ソース線側のP+型拡散層30からNANDストリングSRの半導体層23にホールが供給されると、半導体層23はP+型拡散層として働く。このため、選択トランジスタST1、ST2はPチャネルトランジスタとして動作することが出来る。
4.第4実施形態
次に第4実施形態に係る半導体記憶装置及びデータ消去方法について説明する。本実施形態は、上記第1及び第2実施形態においてビット線側とソース線側の両方でGIDLを発生させるものである。以下では、第1及び第2実施形態と異なる点についてのみ説明する。
4.1 メモリセルアレイの構成について
図22は、本実施形態に係るメモリセルアレイ111におけるいずれかのブロックBLKの回路図である。図示するように、本実施形態に係るメモリセルアレイ111は、第1実施形態で説明した図3において、NANDストリングSR1〜SR3がソース線SL1〜SL3にそれぞれ接続されたものである。
例えばメモリユニットMU1に着目すると、各ストリンググループGR1−1〜GR4−1のNANDストリングSR1〜SR3は、それぞれ異なるビット線BL1〜BL3とソース線SL1〜SL3とに共通に接続されている。具体的には、ストリンググループGR1−1〜GR4−1のNANDストリングSR1は、ドレイン端がカラム選択トランジスタCSGを介してビット線BL1に共通に接続され、ソース端がソース線SL1に共通に接続されている。ストリンググループGR1−1〜GR4−1のNANDストリングSR2は、ドレイン端がカラム選択トランジスタCSGを介してビット線BL2に共通に接続され、ソース端がソース線SL2に共通に接続されている。ストリンググループGR1−1〜GR4−1のNANDストリングSR3は、ドレイン端がカラム選択トランジスタCSGを介してビット線BL3に共通に接続され、ソース端がソース線SL3に共通に接続されている。
従って、本実施形態では、ビット線BL1〜BL3、及びソース線SL1〜SL3により、NANDストリングSR1〜SR3を選択出来る。
4.2 データの消去動作について
次に本実施形態に係るデータの消去動作について説明する。以下では、第1及び第2実施形態と異なる点についてのみ説明する。本実施形態に係る消去動作の大まかな流れは、第1及び第2実施形態と同じである。また、消去ベリファイは、第1実施形態と同じくストリンググループGR(列)単位で行い、消去動作の具体例は、図10と同じである。
図23は、図10に示すフローチャートにおいて、1回目の消去と、その消去ベリファイ(Evfy1〜Evfy4)と、2回目の消去とにおける配線の電位を示すタイミングチャートである。
図示するように、本実施形態が第1実施形態で説明した図11と異なる点は、下記の点である。すなわち、
・消去時において、ビット線BLだけでなくソース線SLにも電圧VERAが印加され、制御信号線SSL1〜SSL4だけでなくセレクトゲート線GSL1、GSL2にも電圧VERA_GIDLが印加される。これにより、カラム選択トランジスタCSG1〜CSG4だけではなく、選択トランジスタST1及びST2でもGIDLが発生する。
・2回目以降の消去時において、消去ベリファイにパスしたレイヤに対応するビット線BL及びソース線SLには、GIDLを発生させない電圧(例えば0V)が印加される。
4.3 本実施形態に係る効果
本実施形態に係る構成では、ビット線BLとソース線SLを選択することによりレイヤ毎の消去、非消去を選択することが出来る。従って、本実施形態に係る構成であると、上記第1乃至第3実施形態と同様の効果が得られる。
更に、本実施形態に係る構成では、カラム選択トランジスタCSGと選択トランジスタST1、ST2でGIDLが発生しているため、NANDストリングSRにビット線側とソース線側の両方からホールを供給出来る。これにより、NANDストリングSRの全体に十分なホールを供給しやすくなるため、消去動作の信頼性を向上することが出来る。
5.第5実施形態
次に第5実施形態に係る半導体記憶装置及びデータ消去方法について説明する。本実施形態は、上記第1乃至第4実施形態において、消去パルス幅(消去時間)にレイヤ依存性を持たせたものである。以下では、第1乃至第4実施形態と異なる点についてのみ説明する。なお、本実施形態では、最上層に位置するメモリセルトランジスタMTのデータが最も消去しにくく(消去が遅い)、最下層に位置するメモリセルトランジスタMTのデータが最も消去しやすい(消去が速い)場合を例として説明する。
なお異なる消去パルス幅の適用については、例えば、“不揮発性半導体メモリデバイス”という2012年3月14日に出願された米国特許8,767,466号明細書に記載されている。この米国特許は、その全体が本願明細書において参照により援用されている。
5.1 第1例
本実施形態の第1例について説明する。本例は、第1実施形態に係る半導体記憶装置に対し、消去時にレイヤ毎に異なる消去パルス幅条件を適用したものである。以下では、第1実施形態と異なる点についてのみ説明する。
図24は、第1実施形態の図11における1回目の消去に、本例を適用した場合の配線の電位を示すタイミングチャートである(図11における時刻t1〜t2の期間に相当する)。図に示すように、本例では、ドライバ124は、ビット線BL1〜BL3にVERAを印加する期間に、レイヤ依存性を持たせている。
まず時刻t1で、ドライバ124は、最上層に対応するビット線BL3にVERAを印加する。次に時刻t2で、ドライバ124は、中間層に対応するビット線BL2にVERAを印加する。次に時刻t3で、ドライバ124は、最下層に対応するビット線BL1にVERAを印加する。次に時刻t4で、ドライバ124は、ビット線BL1〜BL3に0Vを印加する。
従って、最上層では、時刻t1〜t4の間、GIDLが発生し、中間層では、時刻t2〜t4の間、GIDLが発生し、最下層では、時刻t3〜t4の間、GIDLが発生する。すなわち、データが消去しにくい最上層の消去パルス幅が最も長い。次いで中間層の消去パルス幅が長い。そして、データが消去しやすい最下層の消去パルス幅が最も短い。また、この間(時刻t1〜t4)、ソース線SL1、SL2、制御信号線SSL1〜SSL4、セレクトゲート線GSL1、GSL2、及びワード線WL1〜WL4には、図11の時刻t1〜t2で説明した電圧がそれぞれ印加されている。
5.2 第2例
本実施形態の第2例について説明する。本例は、第2実施形態に係る半導体記憶装置に対し、消去時にレイヤ毎に異なる消去パルス幅条件を適用したものである。以下では、第2実施形態と異なる点についてのみ説明する。
図25は、第2実施形態の図19における1回目の消去に、本例を適用した場合の配線の電位を示すタイミングチャートである。図示するように本例では、図24で説明したVERAがソース線SL1〜SL3に異なる期間、印加される。すなわち、ドライバ124は、時刻t1〜t4の間、最上層に対応するソース線SL3にVERAを印加し、時刻t2〜t4の間、中間層に対応するソース線SL2にVERAを印加し、時刻t3〜t4の間、最下層に対応するソース線SL1にVERAを印加する。その他のビット線BL1〜BL4、セレクトゲート線GSL1、GSL2、及びワード線WL1〜WL4には、図19の時刻t1〜t2で説明した電圧がそれぞれ印加される。
5.3 第3例
本実施形態の第3例について説明する。本例は、第3実施形態に係る半導体記憶装置において、消去時にレイヤ毎に異なる消去パルス幅条件を適用したものである。以下では、第3実施形態と異なる点についてのみ説明する。
図26は、第3実施形態の図21における1回目の消去に、本例を適用した場合の配線の電位を示すタイミングチャートである(図21における時刻t1〜t3の期間に相当する)。図示するように、本例では、ソース線ドライバ124がソース線SL1〜SL3に0Vを印加する期間、すなわち、選択トランジスタST2がオン状態となる期間に、レイヤ依存性を持たせている。
まず時刻t1で、ソース線ドライバ114は、最上層に対応するSL3に0Vを印加する。また、ソース線ドライバ114は、最下層に対応するソース線SL1及び中間層に対応するソース線SL2に、例えば−3.3Vを印加する。これにより、最上層に形成される選択トランジスタST2は、オン状態に、最下層と中間層に形成される選択トランジスタST2は、オフ状態となる。またロウデコータ112は、ワード線WL1〜WL4に例えば−7Vを印加する。
次に時刻t2で、ロウデコータ112は、ワード線WL1〜WL4への印加電圧を−7Vから−18Vにする。これにより、最上層に形成されるメモリセルトランジスタMTでは、選択トランジスタST2がオン状態のため、FNトンネル電流が流れる。
次に時刻t3で、ロウデコータ112は、中間層に対応するソース線SL2の電圧を−3.3Vから0Vにする。これにより、中間層に形成される選択トランジスタST2は、オン状態となる。従って、中間層に形成されるメモリセルトランジスタMTでは、FNトンネル電流が流れる。
次に時刻t4で、ロウデコータ112は、最下層に対応するソース線SL1の電圧を−3.3Vから0Vにする。これにより、最下層に形成される選択トランジスタST2は、オン状態となる。従って、最下層に形成されるメモリセルトランジスタMTでは、FNトンネル電流が流れる。
最後に時刻t5で、ロウデコータ112は、セレクトゲート線GSL1とワード線WL1〜WL4の電圧を0Vにする。これにより消去が完了する。
従って、最上層では時刻t2〜t5の間、メモリトランジスタMTにFNトンネル電流が流れ、データが消去される。また、中間層では時刻t3〜t5の間、メモリトランジスタMTにFNトンネル電流が流れ、データが消去される。さらに、最下層では時刻t4〜t5の間、メモリトランジスタMTにFNトンネル電流が流れ、データが消去される。すなわち、データが消去しにくい最上層は消去パルス幅が最も長い。次いで中間層の消去パルス幅が長い。そして、データが消去しやすい最下層の消去パルス幅が最も短い。また、この間(時刻t1〜t5)、セレクトゲート線GSL2、ビット線BL1〜BL4、及びセレクトゲート線GSL1、GSL2には、図21の時刻t1〜t3で説明した電圧がそれぞれ印加されている。
5.4 第4例
本実施形態の第4例について説明する。本例は、第4実施形態に係る半導体記憶装置において、消去時にレイヤ毎に異なる消去パルス幅条件を適用したものである。以下では、第4実施形態と異なる点についてのみ説明する。
図27は、第4実施形態の図23における1回目の消去に、本例を適用した場合の配線の電位を示すタイミングチャートである。図示するように、本例では、ビット線BL及びソース線SLへの印加電圧を、前述の図24及び図25の通りにしたものである。その他の制御信号線SSL1〜4、セレクトゲート線GSL1、GSL2、及びワード線WL1〜WL4には、図23のt1〜t2で説明した電圧が印加される。
5.5 本実施形態に係る効果
本実施形態に係る構成では、レイヤ毎に消去、非消去の選択をすることが出来る。従って、上記第1乃至第4実施形態と同様の効果が得られる。
更に、本実施形態では、消去動作の処理時間を短縮することが出来る。
例えば、第1実施形態で説明したように、メモリセルトランジスタMTは、レイヤ毎に形状と消去特性が異なる。このため、最適な消去パルス幅は、レイヤにより異なる。そこで本実施形態では、レイヤ毎に消去パルス幅を変えることにより、それぞれのレイヤに応じた最適な消去パルス幅でデータの消去を行っている。従って、各レイヤはリトライ判定にパスしやすくなるため、消去ループ回数を低減出来、消去動作の処理時間を短縮することが出来る。
なお、ここでは、最上層に位置するメモリセルトランジスタMTのデータが最も消去しにくく(消去が遅い)、最下層に位置するメモリセルトランジスタMTのデータが最も消去しやすい(消去が速い)場合を例として説明した。しかし、中間層が最も消去しにくい場合があっても、最下層が最も消去しにくい場合があっても本実施形態を適用することが出来る。例えば、中間層が最も消去しにくい場合には、この中間層に対する消去パルス幅を長くすれば良く、また最下層が最も消去しにくい場合には、この最下層に対する消去パルス幅を長くすれば良い。
更に、第1例〜第4例では、レイヤにより消去電圧の印加開始時刻を変えることで消去パルス幅を変更したが、消去電圧の印加開始時刻を同じにして消去電圧の印加終了時刻をレイヤにより変更しても良く、消去パルス幅が変更できれば、印加の開始と終了のタイミングは任意に変更出来る。
6.第6実施形態
次に、第6実施形態に係る半導体記憶装置及びデータ消去方法について説明する。本実施形態は、上記第1乃至第5実施形態において消去電圧にレイヤ依存性を持たせたものである。以下では、第1乃至第5実施形態と異なる点についてのみ説明する。また、本実施形態では、最上層に位置するメモリセルトランジスタMTのデータが最も消去しにくく(消去が遅い)、最下層に位置するメモリセルトランジスタMTのデータが最も消去しやすい(消去が速い)場合を例として説明する。
6.1 第1例
本実施形態の第1例について説明する。図28は、第1実施形態の図11における1回目の消去に、本例を適用した場合の配線の電位を示すタイミングチャートである。
図示するように、本例では、ドライバ124が、ビット線BL1〜BL3にそれぞれ異なる値のVERA1〜VERA3を印加している。具体的には、最上層に対応するビット線BL3に印加されるVERA3が最も高い。次いで中間層に対応するビット線BL2に印加されるVERA2が高い。そして、最下層に対応するビット線BL1に印加されるVERA1が最も低い。従って、ドライバ124がビット線BL1〜BL3に印加する電圧値の高さは、VERA1<VERA2<VERA3の関係となる。すなわち、消去しにくいレイヤに対応するビット線BLほど、VERAの値が高い。このように、VERAを高くすると、NANDストリングSRの半導体層23とワード線WLとの電位差が大きくなるため、メモリセルトランジスタMTにホールを注入しやすく(消去しやすく)なる。また、この間、ソース線SL1、SL2、制御信号線SSL1〜SSL4、セレクトゲート線GSL1、GSL2、及びワード線WL1〜WL4には、図11のt1〜t2で説明した電圧が印加されている。
6.2 第2例
本実施形態の第2例について説明する。図29は、第2実施形態の図19における1回目の消去に、本例を適用した場合の配線の電位を示すタイミングチャートである。
図示するように本例では、図28で説明したVERA1〜VERA3が、それぞれソース線SL1〜SL3に印加される。
6.3 第3例
本実施形態の第3例について説明する。図30は、第3実施形態の図21における1回目の消去に、本例を適用した場合の配線の電位を示すタイミングチャートである。
図示するように、本例では、ソース線ドライバ114が、ソース線SL1〜SL3にそれぞれ異なる電圧値を印加している。具体的には、最上層に対応するソース線SL3に印加される電圧(例えば0V)が最も高い。次いで、中間層に対応するソース線SL2に印加される電圧(例えば−1V)が高い。そして、最下層に対応するソース線SL1に印加される電圧(例えば−2V)が最も低い。すなわち、消去しにくいレイヤに対応するソース線SLほど電圧値が高い。このように、ソース線SLの電圧値を高くすると、NANDストリングSRの半導体層23とワード線WLとの電位差が大きくなるため、メモリセルトランジスタMTにFNトンネル電流が流れやすく(消去しやすく)なる。
なお、ここでソース線SL3に印加される電圧は、選択トランジスタST2をオン状態にするため、(セレクトゲート線GSL1の電圧)+(選択トランジスタST2の閾値電圧Vt)以上であれば良い。また、この間、ビット線BL1〜BL4、セレクトゲート線GSL1、GSL2、及びワード線WL1〜WL4には、図21のt1〜t3で説明した電圧が印加されている。
6.4 第4例
本実施形態の第4例について説明する。図31は、第4実施形態の図23における1回目の消去に、本例を適用した場合の配線の電位を示すタイミングチャートである。
図示するように、本例は上記第1例と第2例とを組み合わせたものであり、ビット線BL1〜BL3のそれぞれ、及びソース線SL1〜SL3のそれぞれに電圧VERA1〜VERA3が印加される。
6.5 本実施形態に係る効果
本実施形態に係る構成では、レイヤ毎に消去、非消去の選択をすることが出来る。従って、上記第1乃至第5実施形態と同様の効果が得られる。
更に、本実施形態では、レイヤ毎に消去電圧を変えることにより、それぞれのレイヤに応じた最適な消去電圧でデータの消去を行うことが出来る。従って、第5実施形態と同様に、各レイヤがリトライ判定にパスしやすくなるため、消去ループ回数を低減出来、消去動作の処理時間を短縮することが出来る。
なお、ここでは、最上層に位置するメモリセルトランジスタMTのデータが最も消去しにくく(消去が遅い)、最下層に位置するメモリセルトランジスタMTのデータが最も消去しやすい(消去が速い)場合を例として説明した。しかし、中間層が最も消去しにくい場合があっても、最下層が最も消去しにくい場合があっても本実施形態を適用することが出来る。例えば中間層が最も消去しにくい場合には、この中間層に印加する消去電圧を高くすれば良く、また最下層が最も消去しにくい場合には、この最下層に印加する消去電圧を高くすれば良い。
7.第7実施形態
次に、第7実施形態に係る半導体記憶装置及びデータ消去方法について説明する。本実施形態は、上記第1、第2、第4乃至第6実施形態に係る半導体記憶装置において、VERAを出力するドライバ124と、ビット線BLあるいはソース線SLとを接続する回路部の構成に関するものである。ここではドライバ124とビット線BLとを接続する回路部を「ビット線接続部」、ドライバ124とソース線SLとを接続する回路部を「ソース線接続部」と呼ぶ。
7.1 第1例
7.1.1 第1例に係る構成について
本実施形態の第1例に係るビット線接続部の構成について説明する。本例は、第1及び第4実施形態で説明したメモリセルアレイ111に適用可能なビット線接続部に関するものである。すなわち、データの消去時にVERAをビット線BLに印加する構成に適用可能なものである。図32は、本例に係るビット線接続部の回路図である。
図示するように、ビット線接続部116は、高耐圧のNチャネルMOSトランジスタ40−1〜40−3、41−1〜41−3を備えている。以下で述べる高耐圧のMOSトランジスタは、例えばメモリセルトランジスタMTよりも耐圧が高く、一例としてゲート絶縁膜がメモリセルトランジスタMTのそれよりも大きいMOSトランジスタである。
トランジスタ40−1の電流経路の一端は、対応するビット線BL1、BL4、BL7、…BL(3i+1)のいずれかに接続され、他端が配線BLBIASに共通に接続される。配線BLBIASはドライバ124とトランジスタ40を接続する配線である。また、トランジスタ40−1のゲートは、信号線TCSL1に接続されている。
トランジスタ40−2の電流経路の一端は、対応するビット線BL2、BL5、BL8、…BL(3i+2)のいずれかに接続され、他端が配線BLBIASに共通に接続される。また、トランジスタ40−2のゲートは、信号線TCSL2に接続されている。
トランジスタ40−3の電流経路の一端は、対応するビット線BL3、BL6、BL9、…BL(3i+3)のいずれかに接続され、他端が配線BLBIASに共通に接続される。また、トランジスタ40−3のゲートは、信号線TCSL3に接続されている。
ここで信号線TCSL1〜TCSL3は、制御部121からの信号をトランジスタ40に転送して、トランジスタ40のオン/オフ状態を制御するための信号線である。
トランジスタ41−1は、ゲートが信号線BLS1に共通に接続され、電流経路の一端が対応するビット線BL1、BL4、BL7、…BL(3i+1)のいずれかに接続され、他端がセンスアンプ113に接続されている。
トランジスタ41−2は、ゲートが信号線BLS2に共通に接続され、電流経路の一端が対応するビット線BL2、BL5、BL8、…、BL(3i+2)のいずれかに接続され、他端がセンスアンプ113に接続されている。
トランジスタ41−3は、ゲートが信号線BLS3に共通に接続され、電流経路の一端が対応するビット線BL3、BL6、BL9、…、BL(3i+3)のいずれかに接続され、他端がセンスアンプ113に接続されている。
ここで信号線BLS1〜BLS3は、制御部121からの信号をトランジスタ41に転送して、トランジスタ41のオン/オフ状態、すなわちセンスアンプ113との電気的な接続を制御する信号線である。なお、ここで、信号線BLS1〜BLS3は、メモリセルユニットMU毎で共通にされる。
7.1.2 消去時の動作について
次に、消去時における本例に係るビット線接続部116の動作について説明する。
まずドライバ124は、配線BLBIASにVERAを印加する。そして制御部121は、消去対象のレイヤに対応する信号線TCSLにVERAHを印加し、対応するトランジスタ40をオン状態とする。これによりオン状態のトランジスタ40は、対応するビット線BLにVERAを転送する。ここでVERAHは、VERAよりも大きい電圧で、トランジスタ40をオン状態にし、VERAを転送可能にするための電圧である。また、VERAHの電圧値は、VERAH>VERA+(トランジスタ40の閾値電圧Vt)であれば良い。
また、制御部121は、消去対象ではないレイヤに対応する信号線TCSLに例えば0Vを印加して、トランジスタ40をオフ状態とする。
更に制御部121は、消去対象のレイヤに対応する信号線BLSに例えば0Vを印加して、トランジスタ41をオフ状態とする。
更に制御部121は、消去対象ではないレイヤに対応する信号線BLSに、トランジスタ41をオン状態とする電圧を印加する。そして、センスアンプ113は、オン状態のトランジスタ41を介して、GIDLを発生させない電圧(例えば10V程度)をビット線BLに印加する。なお、トランジスタ41をオン状態にする電圧は、センスアンプ113から転送される電圧にトランジスタ41の閾値電圧Vtを加えた値以上であれば良い。
その結果、消去対象のレイヤに対応するビット線BLには、トランジスタ40よりVERAが転送され、消去対象ではないレイヤに対応するビット線BLには、トランジスタ41よりGIDLを発生させない電圧(例えば10V程度)が転送される。
なお本例では、制御部121が消去対象ではないレイヤに対応するトランジスタ41をオン状態として、センスアンプ113から転送された電圧をビット線BLに印加したが、トランジスタ41をオフ状態としても良い。この場合、消去対象ではないレイヤに対応するビット線BLにはVERAは転送されず、電気的にフローティングの状態となる。よって、当該ビット線BLに対応するNANDストリングは消去されない。なお、信号線TCSLは、メモリユニットMU間で共通にされる。
7.1.3 レイヤ毎の消去パルス幅の変更について
次に本例に係る回路構成を用いて、各レイヤに対応するビット線BLにそれぞれ異なる期間、VERAを印加する方法について説明する。すなわち、図32に示す構成により第5実施形態を実現する場合の動作について説明する。
図33は、本例に係るビット線接続部116の配線の電位を示すタイミングチャートである。図示するように、まず時刻t1で、ドライバ124は、配線BLBIASにVERAを印加する。また、制御部121は、最上層に対応する信号線TCSL3にVERAHを印加し、トランジスタ40−3をオン状態とする。これにより、トランジスタ40−3は、最上層に対応するビット線BL3、BL6にVERAを転送する。
次に時刻t2で、制御部121は、中間層に対応する信号線TCSL2にVERAHを印加し、トランジスタ40−2をオン状態とする。これにより、トランジスタ40−2は、中間層に対応するビット線BL2、BL5にVERAを転送する。
次に時刻t3で、制御部121は、最下層に対応する信号線TCSL1にVERAHを印加し、トランジスタ40−1をオン状態とする。これにより、トランジスタ40−1は、最下層に接続されているビット線BL1、BL4にVERAを転送する。
最後に時刻t4で、制御部121は、信号線TCSL1〜TCSL3に例えば0Vを印加し、トランジスタ40をオフ状態とする。そして、ドライバ124は、配線BLBIASに例えば0Vを印加する。これにより、ビット線BLへのVERAの転送が終了する。
また、この間(時刻t1〜t4)、制御部121は、信号線BLS1〜BLS3に例えば0Vを印加し、トランジスタ41を全てオフ状態としている。
従って、トランジスタ40−3は、時刻t1〜t4の間、ビット線BL3、BL6にVERAを転送する。またトランジスタ40−2は、時刻t2〜t4の間、ビット線BL2、BL5にVERAを転送する。そして、トランジスタ40−1は、時刻t3〜t4の間、ビット線BL1、BL4にVERAを転送する。
このように、本例では信号線TCSL1〜TCSL3にVERAHを印加する期間を変えることにより、各レイヤに対応するビット線BLに異なる消去パルス幅のVERAを印加する。
7.1.4 レイヤ毎の消去電圧の変更について
次に、本例に係る回路構成を用いて、各レイヤに対応するビット線BLにそれぞれ異なる値のVERA1〜VERA3を印加する方法について説明する。すなわち、図32に示す構成により第6実施形態を実現する場合について説明する。
図34は、本例に係るビット線接続部116の配線の電位を示すタイミングチャートである。図示するように、ドライバ124は、配線BLBIASにVERAを印加する。そして、制御部121は、信号線BLS1〜BLS3に例えば0Vを印加しトランジスタ41を全てオフ状態とする。また制御部121は、最下層に対応する信号線TCSL1にVERAH1を印加し、中間層に対応する信号線TCSL2にVERAH2を印加し、最上層に対応する信号線TCSL3にVERAH3を印加する。ここで、VERAH1〜VERAH3の電圧値の高さは、消去しにくいレイヤに対応するものほど高く、VERAH1<VERAH2<VERAH3の関係となる。
ここで、トランジスタ40がビット線BLに転送可能な最大電圧は、ゲート電圧からトランジスタ40の閾値電圧Vtを引いた値となる。従って最下層に対応するビット線BL1、BL4に転送されるVERA1の最大電圧は、VERAH1−Vtとなる。同様に中間層に対応するビット線BL2、BL5に転送されるVERA2の最大電圧は、VERAH2−Vtとなり、最上層に対応するビット線BL3、BL6に転送されるVERA3の最大電圧は、VERAH3−Vtとなる。従ってビット線BLに転送されるVERA1〜VERA3の最大電圧値の高さは、VERA1<VERA2<VERA3の関係となる。
このように、本例では信号線TCSL1〜TCSL3の電圧を変えることにより、各レイヤに対応するビット線BLに異なる電圧値のVERA1〜VERA3を印加する。
7.2 第2例
7.2.1 第2例に係る構成について
次に、本実施形態の第2例に係るビット線接続部116の構成について説明する。本例は、第1例と異なり、トランジスタ40−1〜40−3のゲートが信号線TCSLに共通に接続され、電流経路の一端がレイヤ毎に異なる配線BLBIAS1〜BLBIAS3に接続されたものである。よって本例に係る構成は、ドライバ124の制御により、トランジスタ40−1〜40−3に異なる条件で電圧を供給可能な構造となっている。図35は、本例に係るビット線接続部116の回路図である。なお、ここでは第1例と異なる点についてのみ説明する。
図示するように、トランジスタ40−1〜40−3は、ゲートが信号線TCSLに共通に接続される。そして、トランジスタ40−1は、電流経路の一端が配線BLBIAS1に接続され、電流経路の他端が対応するビット線BL1、BL4、BL7、…BL(3i+1)のいずれかに接続される。トランジスタ40−2は、電流経路の一端が配線BLBIAS2に接続され、電流経路の他端が対応する対応するビット線BL2、BL5、BL8、…BL(3i+2)のいずれかに接続される。トランジスタ40−3は、電流経路の一端が配線BLBIAS3に接続され、電流経路の他端が対応するビット線BL3、BL6、BL9、…BL(3i+3)のいずれかに接続される。
7.2.2 消去時の動作について
次に、消去時における本例に係るビット線接続部116の動作について説明する。
まず制御部121は、信号線TCSLにVERAHを印加し、トランジスタ40−1〜40−3を全てオン状態とする。また、制御部121は、信号線BLS1〜BLS3に例えば0Vを印加し、トランジスタ41−1〜41−3を全てオフ状態とする。そして、ドライバ124は、消去対象のレイヤに対応する配線BLBIASにVERAを印加し、消去対象ではない配線BLBIASにGIDLを発生させない電圧(例えば10V)を印加する。これにより、トランジスタ40は、消去対象のレイヤに対応するビット線BLにVERAを転送し、消去対象ではないレイヤに対応するビット線BLにGIDLを発生させない電圧を転送する。なお、GIDLを発生させない電圧は、トランジスタ41を介してセンスアンプ113によって供給されても良い。この場合、制御部121は、ドライバ124と消去対象ではないレイヤに対応する配線BLBIASとを電気的に切断する。更に、制御部121は、消去対象ではないレイヤに対応するトランジスタ41をオン状態とする。この状態において、センスアンプ113は、トランジスタ41を介して消去対象ではないレイヤに対応するビット線BLに、GIDLを発生させない電圧(例えば10V程度)を印加する。
また本例では、消去対象ではないレイヤに対応するビット線BLにGIDLを発生させない電圧を印加したが、ドライバ124とセンスアンプ113をビット線から電気的に分離し、ビット線BLをフローティング状態としても良い。また、配線BLBIAS1〜BLBIAS3は、メモリユニットMU間で共通にされる。
7.2.3 レイヤ毎の消去パルス幅の変更について
次に本例に係る回路構成を用いて、各レイヤに対応するビット線BLにそれぞれ異なる期間、VERAを印加する方法について説明する。すなわち、図35に示す構成により第5実施形態を実現する場合の動作について説明する。
図36は、本例に係るビット線接続部116の配線の電位を示すタイミングチャートである。図示するように、まず時刻t1で、制御部121は、信号線TCSLにVERAHを印加し、トランジスタ40を全てオン状態とする。また、ドライバ124は、最上層に対応する配線BLBIAS3にVERAを印加する。これによりトランジスタ40−3は、最上層に対応するビット線BL3、BL6にVERAを転送する。
次に時刻t2で、ドライバ124は、中間層に対応する配線BLBIAS2にVERAを印加する。これによりトランジスタ40−2は、中間層に対応するビット線BL2、BL5にVERAを転送する。
次に時刻t3で、ドライバ124は、最下層に対応する配線BLBIAS1にVERAを印加する。これによりトランジスタ40−1は、最下層に対応するビット線BL1、BL4に電圧VERAを転送する。
最後に時刻t4で、制御部121は信号線TCSLに例えば0Vを印加し、トランジスタ40をオフ状態とする。また、ドライバ124は配線BLBIAS1〜BLBIAS3に例えば0Vを印加する。これによりビット線BLへのVERAの転送が終了する。
また、この間(時刻t1〜t4)、制御部121は、信号線BLS1〜BLS3に例えば0Vを印加し、トランジスタ41を全てオフ状態とする。
従って、トランジスタ40−3は、時刻t1〜t4の間、ビット線BL3、BL6にVERAを転送する。トランジスタ40−2は、時刻t2〜t4の間、ビット線BL2、BL5にVERAを転送する。トランジスタ40−1は、時刻t3〜t4の間、ビット線BL1、BL4にVERAを転送する。
このように、本例では配線BLBIAS1〜BLBIAS3にVERAを印加する期間を変えることにより、各レイヤに対応するビット線BLに異なる消去パルス幅のVERAを印加する。
7.2.4 レイヤ毎の消去電圧の変更について
次に本例に係る回路構成を用いて、各レイヤに対応するビット線BLにそれぞれ異なる値のVERA1〜VERA3を印加する方法ついて説明する。すなわち、図35に示す構成により第6実施形態を実現する場合について説明する。
図37は、本例に係るビット線接続部116の配線の電位を示すタイミングチャートである。図示するように、制御部121は、信号線TCSLにVERAHを印加してトランジスタ40は全てオン状態とし、信号線BLS1〜BLS3に例えば0Vを印加してトランジスタ41を全てオフ状態とする。この状態において、ドライバ124は、最下層に対応する配線BLBIAS1にVERA1を印加し、中間層に対応する配線BLBIAS2にVERA2を印加し、最上層に対応する配線BLBIAS3にVERA3を印加する。ここで、VERA1〜VERA3の電圧値の高さは、消去しにくいレイヤに対応するものほど高く、VERA1<VERA2<VERA3の関係となる。またVERAHは、トランジスタ40が最も電圧値の高いVERA3を転送できるように、VERAH>VERA3+Vtとする。
これにより、トランジスタ40−1は、ビット線BL1、BL4にVERA1を転送する。トランジスタ40−2は、ビット線BL2、BL5にVERA2を転送する。そして、トランジスタ40−3は、ビット線BL3、BL6にVERA3を転送する。
このように、本例では配線BLBIAS1〜BLBIAS3に印加する電圧値を変えることにより、各レイヤに対応するビット線BLに異なる値のVERA1〜VERA3を印加する。
7.3 第3例
7.3.1 第3例に係る構成について
次に本実施形態の第3例に係るソース線接続部117について説明する。本例は、第2及び第4実施形態で説明したメモリセルアレイ111に適用可能なソース線接続部117に関するものである。すなわち、データの消去時にVERAをソース線SLに印加する構成に適用可能なものである。図38は、本例に係るソース線接続部117の回路図である。
図示するように、ソース線接続部117は、高耐圧のNチャネルMOSトランジスタ42−1〜42−3、43−1〜43−3を備えている。
トランジスタ42−1〜42−3は、電流経路の一端が対応するソース線SL1〜SL3にそれぞれ接続され、他端が配線SLBIASに共通に接続される。配線SLBIASはドライバ124とトランジスタ42を接続する配線である。また、トランジスタ42−1〜42−3は、ゲートが信号線TCSL1〜TCSL3にそれぞれ接続される。
トランジスタ43−1〜43−3は、ゲートが信号線SLS1〜SLS3に接続され、電流経路の一端が対応するソース線SL1〜SL3にそれぞれ接続され、他端がソース線ドライバ114に接続される。ここで、信号線SLSは、制御部121からの信号をトランジスタ43に転送して、トランジスタ43のオン/オフ状態、すなわちソース線ドライバ114との電気的な接続を制御する信号線である。
7.3.2 消去時の動作について
次に消去時における本例に係るソース線接続部117の動作について説明する。
まずドライバ124は、配線SLBIASにVERAを印加する。そして制御部121は、消去対象のレイヤに対応する信号線TCSLにVERAHを印加し、対応するトランジスタ42をオン状態とする。更に制御部121は、消去対象のレイヤに対応する信号線SLSにトランジスタ43をオフ状態にする電圧(例えば0V)を印加する。これにより、消去対象のレイヤに対応するトランジスタ42は、対応するソース線SLにVERAを転送する。
また、制御部121は消去対象ではないレイヤに対応する信号線TCSLに例えば0Vを印加し、対応するトランジスタ42をオフ状態とする。更に制御部121は、消去対象ではないレイヤに対応する信号線SLSに、トランジスタ43をオン状態にする電圧を印加する。これにより、ソース線ドライバ114は、オン状態のトランジスタ43を介して、消去対象ではないレイヤに対応するソース線SLに、GIDLを発生させない電圧を印加する。
なお、本例に係る回路構成を用いて、各レイヤに対応するソース線SLにそれぞれ異なる期間、VERAを印加することも可能である。この場合、第1例と同様に、制御部121が信号線TCSL1〜TCSL3にVERAHを印加する期間を変えることにより、各レイヤに対応するソース線SLに異なる消去パルス幅のVERAを印加する。
また、本例に係る回路構成を用いて、各レイヤに対応するソース線SLにそれぞれ異なる値のVERA1〜VERA3を印加することも可能である。この場合、第1例と同様に、制御部121が信号線TCSL1〜TCSL3に印加するVERAH1〜VERAH3の値を変えることにより、各レイヤに対応するソース線SLに異なる値のVERA1〜VERA3を印加する。
7.4 第4例
7.4.1 第4例に係る構成について
次に本実施形態の第4例に係るソース線接続部117について説明する。本例は、第3例と異なり、トランジスタ42−1〜42−3のゲートが信号線TCSLに共通に接続され、電流経路の一端がレイヤ毎に異なる配線SLBIAS1〜SLBIAS3に接続されたものである。よって本例に係る構成は、第2例と同様に、ドライバ124の制御により、トランジスタ42−1〜42−3に異なる条件で電圧を供給可能な構造となっている。図39は、本例に係るソース線接続部117の回路図である。なお、ここでは第3例と異なる点のみ説明する。
図示するように、トランジスタ42−1〜42−3は、ゲートが信号線TCSLに共通に接続される。また、トランジスタ42−1は、電流経路の一端が配線SLBIAS1に接続され、トランジスタ42−2は、電流経路の一端が配線SLBIAS2に接続され、トランジスタ42−3は、電流経路の一端が配線SLBIAS3に接続される。そして、トランジスタ42−1〜42−3は、電流経路の他端がそれぞれ対応するソース線SL1〜SL3に接続される。
7.4.2 消去時の動作について
次に、消去時における本例に係るソース線接続部117の動作について説明する。
まず制御部121は、信号線TCSLにVERAHを印加し、トランジスタ42−1〜42−3を全てオン状態とする。また制御部121は、信号線SLS1〜SLS3に例えば0Vを印加し、トランジスタ43−1〜43−3をオフ状態とする。この状態において、ドライバ124は、消去対象のレイヤに対応する配線SLBIASに、VERAを印加し、消去対象ではないレイヤに対応する配線SLBIASにGIDLを発生させない電圧(例えば10V程度)を印加する。そしてトランジスタ42は、これらの電圧をソース線SL1〜SL3にそれぞれ転送する。
なお、本例に係る回路構成を用いて、各レイヤに対応するソース線SLにそれぞれ異なる期間、VERAを印加することも可能である。この場合、第2例と同様に、ドライバ124が、配線SLBIAS1〜SLBIAS3にVERAを印加する期間を変えることにより、各レイヤに対応するソース線SLに異なる消去パルス幅のVERAが印加される。
また、本例に係る回路構成を用いて、各レイヤに対応するソース線SLにそれぞれ異なる値のVERA1〜VERA3を印加することも可能である。この場合、第2例と同様に、ドライバ124が、配線SLBIAS1〜SLBIAS3にVERA1〜VERA3をそれぞれ印加することにより、各レイヤに対応するソース線SLにVERA1〜VERA3がそれぞれ印加される。また第2例で説明したように、GIDLを発生させない電圧は、トランジスタ41を介してセンスアンプによって供給されても良い。
7.5 本実施形態に係る効果
以上のように、第1、第2、第4乃至第6実施形態で説明した消去動作を実現するには、例えば本実施形態に係る構成を適用することが出来る。
8.第8実施形態
次に第8実施形態に係る半導体記憶装置及びデータ消去方法について説明する。本実施形態は、第1乃至第7実施形態において、複数のレイヤをゾーン単位で管理する、すなわち複数のレイヤを1つのゾーンに纏め、このゾーン毎にリトライ判定を行うものである。以下では、一例として、第1実施形態に係る半導体記憶装置に本実施形態を適用した場合において、第1実施形態と異なる点についてのみ説明する。
8.1 データの消去動作について
まず本実施形態に係るゾーンについて説明する。図40は、ストリンググループGR1−1〜GR4−1の断面図であり、第1方向と第3方向で形成される断面を示している。図の例では、最下層と中間層とに位置するNANDストリングSR1、SR2をゾーンZN1、最上層に位置するNANDストリングSR3をゾーンZN2とする。
なお、ここでは、最下層と中間層とをゾーンZN1、最上層をゾーンZN2としているが、最下層をゾーンZN1、中間層と最上層とをゾーンZN2としてもよい。また、NANDストリングSRの積層数により3つ以上のゾーンZNを設けても良く、ゾーンZNは任意に設定出来る。
次に本実施形態に係る消去動作について説明する。図41は、本実施形態に係る消去動作のフローチャートである。図示するように、本実施形態に係る構成は、第1実施形態で説明した図9と大まかな流れは同じである。図9との違いは、消去、消去ベリファイ、及びリトライ判定をゾーンZN単位で行う点である。
次に、本実施形態に係る消去動作につき、具体例として2回の消去でリトライ判定がパスした場合を用いて説明する。図42は、本実施形態における処理フローを示す。
図示するように、まず制御部121は、コントローラ200から消去命令を受信する(ステップS20)。
次に制御部121は、ゾーンZN1、ZN2の全てのメモリセルトランジスタMTのデータを消去する(ステップS21)。
次に制御部121は、ストリンググループGR単位で消去ベリファイ(ステップS22)を実行する。すなわち、まず制御部121は、ストリンググループGR1におけるゾーンZN1、ZN2に対して、消去ベリファイを実行する(Evfy1)。そして、カウンタ125は、フェイルビット数をカウントする。具体的には、ストリンググループGR1のゾーンZN1に対応するビット線BL1、BL2、BL4、BL5、BL7、BL8、…BL(3i+1)、BL(3i+2)に存在するフェイルビット数をカウントする。この際、本例ではd1個のフェイルビットが見つかったと仮定する(カウント数=d1)。このd1は、第1実施形態で説明した図10におけるa1+b1に相当する。またカウンタ125は、ゾーンZN2に対応するビット線BL3、BL6、BL9、…BL(3i+3)に存在するフェイルビット数をカウントする。この際、本例ではc1個のフェイルビットが見つかったと仮定する(カウント数=c1)。そしてカウンタ125は、このカウント数d1、c1を、いずれかのラッチ回路に保持させる。
以後、制御部121は同様にして、ストリングループGR2〜GR4の消去ベリファイを実行する(Evfy2〜Evfy4)。各消去ベリファイにおいて、ゾーンZN1で見つかったフェイルビット数がそれぞれd2〜d4個、ゾーンZN2で見つかったフェイルビット数がそれぞれc2〜c4個であったとする。
次に制御部121は、リトライ判定(Evfy判定)を行う(ステップS23)。すなわち制御部121は、ゾーンZN毎にフェイルビット数を合計し判定基準ビット数と比較する。この結果、ゾーンZN1のフェイルビット数の合計(d1+d2+d3+d4)<判定基準ビット数、ゾーンZN2のフェイルビット数の合計(c1+c2+c3+c4)>判定基準ビット数だったと仮定する。すると制御部121は、ゾーンZN1はリトライ判定にパスし、ゾーンZN2はリトライ判定にフェイルした、と判断する(ステップS24、No)。
次に制御部121は、リトライ判定をフェイルしたゾーンZN2の2回目の消去を実行する(ステップS25)。
次に制御部121は、ゾーンZN2の消去ベリファイ(ステップS22)とリトライ判定(ステップS23)を行う。この際、ゾーンZN2のフェイルビット数をc1’〜c4’個とする。そして、(c1’+c2’+c3’+c4’)<判定基準ビット数だったと仮定する。すると制御部121は、ゾーンZN2はリトライ判定にパスした、と判断し(ステップS24、Yes)、データの消去動作を終了する。
なお、本例ではゾーンZN1、ZN2で対応するレイヤ数が異なるため、判定基準ビット数はゾーンZNにより異なる設定としても良い。
また、ここでは本実施形態を第1実施形態に適用した場合について説明したが、第2乃至第7実施形態においても、複数のレイヤをゾーン単位で管理することにより、本実施形態を適用出来る。
8.3 本実施形態に係る効果
本実施形態に係る構成であると、上記第1乃至第7実施形態と同様の効果が得られる。
また本実施形態に係る構成では、複数のレイヤをまとめて管理している。そのため、フェイルビット数をカウントするカウンタや、カウント数を記憶するラッチ回路を削減することが出来る。また、例えば、図32のビット線接続部においては、レイヤ数と同じ個数のトランジスタ40を必要とするが、ゾーン管理にすることで、トランジスタ40の個数をゾーン数と同じ個数に削減することが出来る。このように、ゾーン管理にすることにより、回路素子数を少なくすることが出来る。
9.第9実施形態
次に第9実施形態に係る半導体記憶装置及びデータ消去方法について説明する。本実施形態は、上記第1乃至第8実施形態において、隣接するメモリセルトランジスタMTのデータを交互に消去する(これを、以下では「ストライプ消去」と呼ぶ。)ものである。以下では、第1乃至第8実施形態と異なる点についてのみ説明する。
9.1 データの消去動作の全体的な流れについて
まず本実施形態のデータの消去動作の全体的な流れについて説明する。
本実施形態では、第1乃至第8実施形態において、メモリユニットMU1のストリンググループGR1−1〜GR4−1の各レイヤを4層、すなわちNANDストリングSR1〜SR4を積層にした構造でストライプ消去を行う場合を例として説明する。但し、ストリンググループGRの構成は、これに限定されるものでは無く、レイヤは3層以下であっても5層以上であっても良い。
図43は、データの消去動作の流れを示すフローチャートである。
図示するように、まず制御部121は、コントローラ200から消去命令を受信する(ステップS40)。
次に制御部121は、消去命令に応答して、第1乃至第4のデータの消去を実行する。
まず、第1のデータの消去において、制御部121は、偶数レイヤの偶数ワード線WLに接続されるメモリセルトランジスタMTのデータを消去する(ステップS41)。図44は、第1のデータの消去において、あるメモリセルグループGRの消去対象となるメモリセルトランジスタMTを示している。図示するように、制御部121は、偶数レイヤに位置するNANDストリングSR2、SR4に形成され、偶数ワード線WL2、WL4に接続されるメモリセルトランジスタMT2、MT4のデータを消去する。
次に第2のデータの消去において、制御部121は、偶数レイヤの奇数ワード線WLに接続されるメモリセルトランジスタMTのデータを消去する(ステップS42)。図45は、第2のデータの消去において、あるメモリセルグループGRの消去対象となるメモリセルトランジスタMTを示している。図示するように、制御部121は、偶数レイヤに位置するNANDストリングSR2、SR4に形成され、奇数ワード線WL1、WL3に接続されているメモリセルトランジスタMT1、MT3のデータを消去する。
次に第3のデータの消去において、制御部121は、奇数レイヤの偶数ワード線WLに接続されるメモリセルトランジスタMTのデータを消去する(ステップS43)。図46は、第3のデータの消去において、あるメモリセルグループGRの消去対象となるメモリセルトランジスタMTを示している。図示するように、制御部121は、奇数レイヤに位置するNANDストリングSR1、SR3に形成され、偶数ワード線WL2、WL4に接続されているメモリセルトランジスタMT2、MT4のデータを消去する。
次に第4のデータの消去において、制御部121は、奇数レイヤの奇数ワード線WLに接続されるメモリセルトランジスタMTのデータを消去する(ステップS44)。図47は、第4のデータの消去において、あるメモリセルグループGRの消去対象となるメモリセルトランジスタMTを示している。図示するように、制御部121は、奇数レイヤに位置するNANDストリングSR1、SR3に形成され、奇数ワード線WL1、WL3に接続されているメモリセルトランジスタMT1、MT3のデータを消去する。
上記の第1乃至第4のデータの消去により消去対象ブロックBLKでは、全メモリセルトランジスタMTのデータが消去される。
次に制御部121は、消去ベリファイを実行し(ステップS45)、その次にリトライ判定を実行する(ステップS46)。
リトライ判定にパスした場合(ステップS47、Yes)、データの消去動作は終了となる。
リトライ判定にフェイルした場合(ステップS47、No)、ステップS48に移り、リトライ判定にフェイルしたレイヤのストライプ消去を行う(ステップS48〜S51)。
そして、全てのレイヤのリトライ判定がパスするまで(ステップS47 Yes)、または予め設定された消去ループの上限回数まで、繰り返し消去が行われる。
なお、ここで、第1乃至第4のデータの消去の順序は入れ替えても良い。
上記の消去の具体的な方法としては、いくつかの方法を採用できる。これらについて、以下、2つの例を説明する。
9.2 第1例
本例は、GIDLを用いてデータの消去をする。すなわち本例は、GIDL消去を用いた第1、第2、第4乃至第8実施形態に係る半導体記憶装置に対応出来る。
図48は、図43の第1乃至第4のデータの消去(ステップS41〜S44)に対応したドライバ124からの出力電位と、ビット線BL及び/またはソース線SLの電位と、ワード線WLの電位とを示すタイミングチャートである。なお、ここでは説明していない他の配線の電位については、第1、第2、第4乃至第8実施形態で説明した通りである。また、ここではメモリユニットMU1に関する配線のみ説明するが、その他の消去対象のメモリユニットMUに関しても同様である。
まず第1のデータの消去(時刻t1〜t2)において、ドライバ124は、消去対象の偶数レイヤに位置する偶数NANDストリングSR2、SR4に対応するビット線BL2、BL4及び/またはソース線SL2、SL4にVERAを印加する。
そして、例えばセンスアンプ113、またはソース線ドライバ114は、奇数レイヤに位置する奇数NANDストリングSR1、SR3に対応するビット線BL1、BL3及び/またはソース線SL1、SL3に、GIDLを発生させない電圧(例えば0V〜VERAの1/2程度の電圧)を印加する。
この状態において、ロウデコータ112は、消去対象の偶数ワード線WL2、WL4にVERA_WL(例えば0V)を印加し、消去対象ではない奇数ワード線WL1、WL3に、GIDLにより発生したホールがメモリセルトランジスタMTに注入されない電圧(例えばVERAの1/2程度の電圧)を印加する。これにより、偶数NANDストリングSR2、SR4でGIDLが発生し、偶数ワード線WL2、WL4に接続するメモリセルトランジスタMT2、MT4のデータが消去される。
例えば、本実施形態を第1実施形態に適用した場合には、ドライバ124は、ビット線BL2、BL4にVERAを印加し、センスアンプ113はビット線BL1、BL3にGIDLを発生させない電圧を印加する。また本実施形態を第2実施形態に適用した場合には、ドライバ124は、ソース線SL2、SL4にVERAを印加し、ソース線ドライバ114はソース線SL1、SL3にGIDLを発生させない電圧を印加する。また本実施形態を第4実施形態に適用した場合には、ドライバ124は、ビット線BL2、BL4とソース線SL2、SL4にVERAを印加する。
次に第2のデータの消去(時刻t3〜t4)においては、第1のデータの消去と同様に、制御部121は、消去対象の偶数NANDストリングSR2、SR4でGIDLを発生させる。この状態において、ロウデコータ112は、消去対象の奇数ワード線WL1、WL3にVERA_WL(例えば0V)を印加し、消去対象ではない偶数ワード線WL2、WL4に、GIDLにより発生したホールがメモリセルトランジスタMTに注入されない電圧(例えばVERAの1/2程度の電圧)を印加する。これにより、第2のデータの消去では、偶数NANDストリングSR2、SR4でGIDLが発生し、奇数ワード線WL1、WL3に接続するメモリセルトランジスタMT1、MT3のデータが消去される。
次に第3のデータの消去(時刻t5〜t6)において、ドライバ124は、消去対象の奇数NANDストリングSR1、SR3に対応するビット線BL1、BL3及び/またはソース線SL1、SL3にVERAを印加する。そして、例えばセンスアンプ113、またはソース線ドライバ114は、消去対象ではない偶数NANDストリングSR2、SR4に対応するビット線BL2、BL4及び/またはソース線SL2、SL4にGIDLを発生させない電圧(例えば0V〜VERAの1/2程度の電圧)を印加する。この状態において、ロウデコータ112は、消去対象の偶数ワード線WL2、WL4にVERA_WL(例えば0V)を印加し、消去対象ではない奇数ワード線WL1、WL3に、GIDLにより発生したホールがメモリセルトランジスタMTに注入されない電圧(例えばVERAの1/2程度の電圧)を印加する。これにより、第3のデータの消去では、奇数NANDストリングSR1、SR3でGIDLが発生し、偶数ワード線WL2、WL4に接続するメモリセルトランジスタMT2、MT4のデータが消去される。
次に第4のデータの消去(時刻t7〜t8)において、第3のデータの消去と同様に、制御部121は、消去対象の奇数NANDストリングSR1、SR3でGIDLを発生させる。この状態において、ロウデコータ112は、消去対象の奇数ワード線WL1、WL3にVERA_WL(例えば0V)を印加し、消去対象ではない偶数ワード線WL2、WL4に、GIDLにより発生したホールがメモリセルトランジスタMTに注入されない電圧(例えばVERAの1/2程度の電圧)を印加する。これにより、第4のデータの消去では、奇数NANDストリングSR1、SR3でGIDLが発生し、奇数ワード線WL1、WL3に接続するメモリセルトランジスタMT1、MT3のデータが消去される。
上記4つのステップにより、消去対象ブロックBLKのデータの消去は完了する。
9.3 第2例
本例はFNトンネル効果を用いてデータの消去をする。すなわち本例はFNトンネル効果を用いた第3、第5、第6、第8実施形態に適用出来る。
図49は、図43の第1乃至第4のデータの消去(ステップS41〜S44)に対応したビット線BL及び/またはソース線SLの電位と、ワード線WLの電位とを示すタイミングチャートである。なお、ここでは説明していない他の配線の電位については、第3、第5、第6、第8実施形態で説明したとおりである。また、ここではメモリユニットMU1に関する配線のみ説明するが、その他の消去対象のメモリユニットMUに関しても同様である。
まず第1のデータの消去(時刻t1〜t3)において、ソース線ドライバ114は、消去対象の偶数NANDストリングSR2、SR4に対応するソース線SL2、SL4に、選択トランジスタST2がオン状態となる電圧(例えば0V)を印加する。また、ソース線ドライバ114は、消去対象ではない奇数NANDストリングSR1、SR3に対応するソース線SL1、SL3に、選択トランジスタST2がオフ状態となる電圧(例えば−3.3V)を印加する。これにより、偶数NANDストリングSR2、SR4内の選択トランジスタST2は、オン状態となり、奇数NANDストリングSR1、SR3内の選択トランジスタST2は、オフ状態となる。
この状態において、ロウデコータ112は、消去対象の偶数ワード線WL2、WL4に、時刻t1〜t2の間、例えば−7Vを印加し、時刻t2〜t3の間、FNトンネル電流が流れるための電圧(例えば−18V)を印加する。またロウデコータ112は、時刻t1〜t3の間、消去対象ではない奇数ワード線WL1、WL3に、FNトンネル電流が流れない電圧(例えば0V)を印加する。これにより、第1のデータの消去では、偶数NANDストリングSR2、SR4において偶数ワード線WL2、WL4に接続されたメモリセルトランジスタMT2、MT4にFNトンネル電流が流れ、これらのメモリセルトランジスタMT2及びMT4のデータが消去される。
次に第2のデータの消去(時刻t4〜t6)において、第1のデータの消去と同様に、ソース線ドライバ114は、偶数NANDストリングSR2、SR4に形成された選択トランジスタST2をオン状態とし、奇数NANDストリングSR1、SR3に形成された選択トランジスタST2をオフ状態とする。この状態において、ロウデコータ112は、消去対象の奇数ワード線WL1、WL3に、時刻t4〜t5の間、例えば−7Vを印加し、時刻t5〜t6の間、FNトンネル電流が流れるための電圧(例えば−18V)を印加する。更に、ロウデコータ112は、時刻t4〜t6の間、消去対象ではない偶数ワード線WL2、WL4に、FNトンネル電流が流れない電圧(例えば0V)を印加する。これにより、第2のデータの消去では、偶数NANDストリングSR2、SR4において奇数ワード線WL1、WL3に接続されたメモリセルトランジスタMT1、MT3のデータが消去される。
次に第3のデータの消去(時刻t7〜t9)において、ソース線ドライバ114は、消去対象の奇数NANDストリングSR1、SR3に対応するソース線SL1、SL3に、選択トランジスタST2がオン状態となる電圧(例えば0V)を印加する。また、ソース線ドライバ114は、消去対象ではない偶数NANDストリングSR2、SR4に対応するソース線SL2、SL4に、選択トランジスタST2がオン状態となる電圧(例えば−3.3V)を印加する。これにより、奇数NANDストリングSR1、SR3内の選択トランジスタST2は、オン状態となり、偶数NANDストリングSR2、SR4内の選択トランジスタST2は、オフ状態となる。この状態において、ロウデコータ112は、消去対象の偶数ワード線WL2、WL4に、時刻t7〜t8の間、例えば−7Vを印加し、時刻t8〜t9の間、FNトンネル電流が流れるための電圧(例えば−18V)を印加する。更に、ロウデコータ112は、時刻t7〜t9の間、消去対象ではない奇数ワード線WL1、WL3に、FNトンネル電流が流れない電圧(例えば0V)を印加する。これにより、第3のデータの消去では、奇数NANDストリングSR1、SR3において偶数ワード線WL2、WL4に接続されたメモリセルトランジスタMT2、MT4のデータが消去される。
次に第4のデータの消去(時刻t10〜t12)において、第3のデータの消去と同様に、ソース線ドライバ114は、奇数NANDストリングSR1、SR3に形成された選択トランジスタST2をオン状態とし、偶数NANDストリングSR2、SR4に形成された選択トランジスタST2をオフ状態とする。この状態において、ロウデコータ112は、消去対象の奇数ワード線WL1、WL3に、時刻t10〜t11の間、例えば−7Vを印加し、時刻t11〜t12の間、FNトンネル電流が流れるための電圧(例えば−18V)を印加する。更に、ロウデコータ112は、時刻t10〜t12の間、消去対象ではない偶数ワード線WL2、WL4に、FNトンネル電流が流れない電圧(例えば0V)を印加する。これにより、第4のデータの消去では、奇数NANDストリングSR1、SR3において奇数ワード線WL1、WL3に接続されたメモリセルトランジスタMT1、MT3のデータが消去される。
上記4つのステップにより、消去対象ブロックBLKのデータの消去は完了する。
9.4 本実施形態に係る効果
本実施形態に係る構成であると、上記第1乃至第8実施形態と同様の効果が得られる。
また、本実施形態に係る構成では、メモリセルトランジスタ間の領域にある電荷蓄積層26にトラップされたホールによりデータが破壊されることを抑制することが出来る。本効果につき、以下詳細に説明する。
図50は、NANDストリングSR1〜SR3を有するあるストリンググループGRの断面図であり、第1方向と第3方向で形成される断面を示している。図51は、図50の51−51線におけるNANDストリングSR2の断面図であり、NANDストリングSR2の第2方向と第3方向で形成される断面図を示している。図52〜図54は、図51の領域52の拡大図である。
図50と図51に示すように、電荷蓄積層26は、フィン型構造24の側面及び上面をほぼ完全に被覆する。このため、1つのメモリセルトランジスタMTに着目した場合、このメモリセルトランジスタMTの電荷蓄積層26は、その上下方向(ここでは「レイヤ方向」と呼び、第1方向に対応する)及び左右方向(ここでは「ストリング方向」と呼び、第2方向に対応する)で隣接するメモリセルトランジスタMTの電荷蓄積層26と、共通につながっている。つまり、隣接するメモリセルトランジスタ間の領域にも電荷蓄積層26が存在する。メモリセルトランジスタ間の領域にも電荷蓄積層26が存在すると、消去の際、メモリセルトランジスタ間に生じる電界により、この領域の電荷蓄積層26にもホールがトラップされることがある。具体的には、図50に示すようにレイヤ間の領域にホールがトラップされる場合や、図51に示すようにワード線WL間の領域にホールがトラップされる場合がある。
次にメモリセルトランジスタ間の領域にトラップされたホールの影響について図52〜図54を用いて説明する。図52はデータの消去直後の状態を示している。図示するように、メモリセルトランジスタ間の領域A1にもホールが注入される。図52ではストリング方向の領域A1を示しているが、レイヤ方向の領域A1にもホールが注入される。
その後、図53に示すように、選択ワード線WL2に接続されるメモリセルトランジスタMT2にデータがプログラムされる場合を仮定する。なお本実施形態では、データが消去された状態を“0”、電荷が注入されてデータがプログラムされた状態を“1”とする。よって、メモリセルトランジスタMT2の電荷蓄積層26には電荷が注入され、“1” データがプログラムされる。なお、このプログラムの段階では、領域A1にホールがトラップされたままになっている。
すると、プログラムの完了後、図54に示すように、メモリセルトランジスタMT2の電荷蓄積層26に注入された電荷が、領域A1にトラップされたホールと結合し、電荷が消失する場合がある。その結果、メモリセルトランジスタMTの閾値が下がり、書き込まれた“1”データが“0”データに変化してしまう場合がある。
これに対し、本実施形態によれば、以下の効果が得られる。本効果について、以下、詳細に説明する。
図55は、消去時の電荷蓄積層26の電位を示すグラフである。図55では、横軸にワード線位置(第2方向に沿った位置)を示し、縦軸に電荷蓄積層の電位を示している。また図55において、全てのワード線WLが一括して選択される場合の電位分布を破線で示し(図55における「全WL消去」で示したグラフ)、本実施形態に係るストライプ消去を用いて偶数ワード線WL2、WL4が選択された場合を実線で示している。
図示するように、全てのワード線WLが消去対象の場合、全てのワード線WLの電位が低くされる。従って、隣接するワード線間の電位も低くなる。その結果、メモリセルトランジスタ間の領域の電荷蓄積層26にもホールが注入されやすくなる。
これに対しストライプ消去の場合、ある選択ワード線WLに隣接するワード線WLは必ず非選択とされる。すなわち本例の場合であると、消去対象ではないワード線WL1、WL3の電位は、ホールが注入されないように高い電位(例えばVERAの半分程度の電圧)が設定されている。このため、隣接するワード線WL間の電位差が大きく、例えば消去対象のワード線WL2の両端からワード線WL1及びWL3に向けて急峻に電位が上昇する。従って、メモリセルトランジスタ間の領域には、ホールが注入されにくくなる。
また、ストライプ消去では、あるNANDストリングSRを選択した場合、隣接するNANDストリングSRは必ず非選択とされる。そして、非選択とされたNANDストリングSRでは、ビット線BL及び/またはソース線SLにGIDLを発生させない電圧が印加される。よって、非選択とされたNANDストリングSRではホールが発生しないため、非選択のNANDストリングからメモリセルトランジスタ間の領域にホールが注入されにくい。
このように、本実施形態に係る構成では、ストライプ消去を行うことにより、メモリセルトランジスタ間の領域にホールが注入されることを抑制出来る。従って、プログラム後にデータが変更されることを抑制することが出来、消去動作とプログラム動作の信頼性を向上することが出来る。
なお、本例では、ストリング方向及びレイヤ方向に隣接するメモリセルメモリセルトランジスタMTに対して交互に消去を行うため、第1〜第4の消去を実行したが、ストリング方向またはレイヤ方向に隣接するメモリセルトランジスタMTだけを交互に消去しても良い。例えば、ストリング方向に隣接するメモリセルトランジスタMTを交互に消去する場合、全NANDストリングSR1〜SR4が選択された状態で、偶数ワード線WL2、WL4と奇数ワード線WL1、WL3を交互に選択して消去する。またはレイヤ方向に隣接するメモリセルトランジスタMTを交互に消去する場合、全ワード線WLが選択された状態で、偶数NANDストリングSR2、SR4と奇数NANDストリングSR1、SR3を交互に選択して消去する。
10.第10実施形態
次に第10実施形態に係る半導体記憶装置及びデータ消去方法について説明する。本実施形態は、上記第1乃至第9実施形態において、ブロックBLKよりも小さい単位(例えばメモリユニットMUよりも小さい単位)を選択して消去を行うものである(この単位をサブブロックと呼び、サブブロック単位での消去をサブブロック消去と呼ぶ)。以下では、サブブロック消去のいくつかの例につき説明する。
10.1 サブブロック消去の第1例
本例は、NANDストリングSR単位で消去を行うものである。そして本例では、同一のレイヤに位置する複数のNANDストリングSRのデータが一括して消去される。
図56は、本例のメモリセルアレイ111の回路図であり、本例を第1実施形態に適用した場合のメモリユニットMU1を示している。なお、ここではメモリユニットMU1について説明するが、その他のメモリユニットMUに関しても同様である。
図の例では、NANDストリングSR1、SR3が消去対象とされている。よって、これらのNANDストリングSR1、SR3内のカラム選択トランジスタCSGにおいてGIDLが発生される。なお、ここではNANDストリングSR1、SR3が消去対象とされたが、例えばNANDストリングSR1だけを消去対象としても良く、消去対象のNANDストリングSRは任意に選択され得る。
図57は、消去時における本例に係る配線の電位を示すタイミングチャートである。図示するように、ドライバ124は、ビット線BL1、BL3を選択し、ビット線BL1、BL3にVERAを印加する。また、例えばセンスアンプ113は、非選択ビット線BL2にGIDLを発生させない電圧(例えば10V程度)を印加する。この間、ソース線SL1、SL2、制御信号線SSL1〜SSL4、セレクトゲート線GSL1、GSL2、及びワード線WL1〜WL4の電位は、図9の時刻t1〜t2間で説明した電位と同じとする。これにより、ビット線BL1、BL3に接続されたカラム選択トランジスタCSGで、GIDLが発生する。この結果、NANDストリングSR1、SR3のメモリセルトランジスタMTのデータが消去され、NANDストリングSR2のメモリセルトランジスタMTのデータは消去されない。
なお、本例は、第2乃至第9実施形態にも適用することが出来る。
本例を第2実施形態に適用する場合、ソース線ドライバ114は、消去対象ではないNANDストリングSR2に対応するソース線SL2に、GIDLを発生させない電圧を印加する。そして、他の配線の電位は、図19の時刻t1〜t2間で説明した電位と同じする。これにより、消去対象ではないNANDストリングSR2ではGIDLが発生しないため、データが消去されない。
また、本例を第3実施形態に適用する場合、ソース線ドライバ114は、消去対象ではないNANDストリングSR2に対応するソース線SL2に、選択トランジスタST2をオフ状態とする電圧(例えば−3.3V)を印加する。そして、他の配線の電位は、図21の時刻t1〜t3間で説明した電位と同じする。これにより、消去対象ではないNANDストリングSR2のメモリセルトランジスタMTでは選択トランジスタST2がオフ状態とされ、データが消去されない。
また、本例を第4実施形態に適用する場合、例えばセンスアンプ113とソース線ドライバ114は、消去対象ではないNANDストリングSR2に対応するビット線BL2とソース線SL2にそれぞれGIDLを発生させない電圧を印加する。そして、他の配線の電位は、図23の時刻t1〜t2間で説明した電位と同じする。
10.2 サブブロック消去の第2例
本例は、偶数または奇数ストリンググループGR単位で消去を行うものである。そして本例では、偶数または奇数ストリンググループGRのメモリセルトランジスタMTのデータが一括して消去される。
図58は、本例のメモリセルアレイ111の回路図であり、本例を第1実施形態に適用した場合のメモリユニットMU1を示している。
図の例では、ソース線SL1に接続された奇数ストリンググループGR1−1、GR3−1が消去対象とされている。第1実施形態と異なり、本例では、消去対象のストリンググループGR1−1、GR3−1の選択トランジスタST2においてGIDLが発生される。なお、ここでは奇数ストリンググループGR1−1、GR3−1が消去対象とされたが、偶数ストリンググループGR2−1、GR4−1を消去対象としても良い。
図59は、消去時における本例に係る配線の電位を示すタイミングチャートである。図示するように、ドライバ124は、ストリンググループGR1−1、3−1に対応するソース線SL1を選択し、ソース線SL1にVERAを印加する。またソース線ドライバ114は、GIDLを発生させない電圧(例えば10V程度)を非選択ソース線SL2に印加する。また、例えばセンスアンプ113は、GIDLを発生させない電圧(例えば10V程度)をビット線BL1〜BL3に印加する。更にドライバ124は、GIDLを発生させない電圧(例えば10V程度)を制御信号線SSL1〜SSL4に印加する。またロウデコーダ112は、セレクトゲート線GSL2を選択し、セレクトゲート線GSL2にVERA_GIDLを印加する。更にロウデコーダ112は、非選択セレクトゲート線GSL1にGIDLを発生させない電圧であるVERA_GSL(例えば10V程度)を印加する。更にロウデコータ112は、ワード線WL1〜WL4にVERA_WL(例えば0V)を印加する。これにより、ソース線SL1に接続された選択トランジスタST2ではGIDLが発生する。この結果、ストリンググループGR1−1、GR3−1のデータが消去される。
10.3 サブブロック消去の第3例
本例は、ワード線WL単位で消去を行うものである。そして本例では、同一のワード線に接続される複数のメモリセルトランジスタMTのデータが一括して消去される。
図60は、本例のメモリセルアレイ111の回路図であり、本例を第1実施形態に適用した場合のメモリユニットMU1を示している。
図の例では、ワード線WL2、WL4に接続される全NANDストリングSRのメモリセルトランジスタMT2、MT4が消去対象とされている。よって、本例では、カラム選択トランジスタCSG1〜CSG4において、GIDLが発生される。なお、図60の例ではワード線WL2、WL4が消去対象とされたが、例えばワード線WL1だけを消去対象としても良く、消去対象のワード線WLは任意に選択され得る。
図61は、消去時における本例に係る配線の電位を示すタイミングチャートである。図示するように、ロウデコータ112は、メモリセルトランジスタMT2、MT4に対応するワード線WL2、WL4を選択し、これらにVERA_WL(例えば0V)を印加する。更にロウデコータ112は、非選択ワード線WL1、WL3に、GIDLで発生したホールが注入されない電位(例えばVERAの1/2程度の電圧)を印加する。この間、ビット線BL1〜BL3、ソース線SL1、SL2、制御信号線SSL1〜SSL4、及びセレクトゲート線GSL1、GSL2の電位は、図9の時刻t1〜t2間で説明した電位と同じとする。これにより、カラム選択トランジスタCSG1〜CSG4で、GIDLが発生する。そしてワード線WL2、WL4に接続されたメモリセルトランジスタMT2、MT4に、GIDLにより発生したホールが注入され、データが消去される。
なお、本例は、第2乃至第9実施形態にも適用することが出来る。
本例を第2または第4実施形態に適用する場合、ロウデコータ112は、消去対象のワード線WL2、WL4にVERA_WL(例えば0V)を印加し、消去対象ではないワード線WL1、WL3に、GIDLで発生したホールが注入されない電位(例えばVERAの1/2程度の電圧)を印加する。また、他の配線の電位は、第2または第4実施形態で説明した電位と同じとする。
また、本例を第3実施形態に適用する場合、ロウデコータ112は、消去対象のワード線WL2、WL4にFNトンネル電流を流すための電圧(例えば−18V)を印加し、消去対象ではないワード線WL1、WL3に、FNトンネル電流が流れない電圧(例えば0V)を印加する。また、他の配線の電位は、第3実施形態で説明した電位と同じする。
10.4 サブブロック消去の第4例
本例は、ストリンググループGR単位で消去を行うものである。そして本例では、消去対象のストリンググループGRに位置する複数のNANDストリングSRのデータが一括して消去される。但し、本例が上記第2例と異なる点は、消去対象とするストリングループGRを自由に選択出来る点である。すなわち、第2例の場合には、消去は奇数ストリンググループ単位(例えばGR1とGR3)または偶数ストリンググループ単位(例えばGR2とGR4)で行われる。しかし本例では、全く自由に消去対象ストリンググループGRを選択出来る。つまり、いずれか1つのストリンググループGRのみを消去対象とすることも出来るし、2つまたはそれ以上の任意のストリンググループGRを消去対象とすることも出来る。
図62は、本例のメモリセルアレイ111の回路図であり、本例を第1実施形態に適用した場合のメモリユニットMU1を示している。図の例では、ストリンググループGR2−1、GR4−1が消去対象とされている。本例では、第2例と異なり、消去対象のストリンググループGRに対応したカラム選択トランジスタCSGにおいて、GIDLを発生させる。従って、図示するように、カラム選択トランジスタCSG2、CSG4においてGIDLが発生される。
図63は、消去時における本例に係る配線の電位を示すタイミングチャートである。図示するように、ドライバ124は、制御信号線SSL2、SSL4を選択し、これらにVERA_GIDLを印加する。更にドライバ124は、非選択の制御信号線SSL1、SSL3にカラム選択トランジスタCSGをオフ状態にする電圧(例えば0V)を印加する。これにより、カラム選択トランジスタCSG2、CSG4がオン状態となり、カラム選択トランジスタCSG1、CSG3がオフ状態となる。また、ビット線BL1〜BL3、ソース線SL1、SL2、セレクトゲート線GSL1、GSL2、及びワード線WL1〜WL4の電位は、第1実施形態の図9の時刻t1〜t2間で説明した電位と同じとする。これにより、制御信号線SSL2、SSL4が接続されたカラム選択トランジスタCSG2、CSG4ではGIDLが発生する。この結果、ストリンググループGR2−1、4−1のメモリセルトランジスタMTのデータが消去される。
10.5 本実施形態に係る効果
本実施形態に係る構成であると、上記第1乃至第9実施形態と同様の効果が得られる。更に、サブブロック消去を行うことにより、下記の効果が得られる。
すなわち、本実施形態に係る構成では、ブロックサイズよりも小さな単位で消去出来る。これにより、消去の際、消去ブロックBLKから非消去ブロックBLKに移動する有効データの移動量を低減することが出来る。
すなわち、消去対象領域に、消去すべきで無い有効データが存在する場合には、消去の前に、この有効データを消去非対象領域に退避させておく必要がある。消去単位となる領域が大きいほど、この退避させておくべきデータ量も大きくなるのが一般的である。この点、本実施形態によれば、消去対象領域のサイズを、ブロックBLKよりも小さく出来る。そのため、退避対象となる有効データ量も小さく出来る。
また、消去すべきデータ量に合わせて、最適なサイズの消去対象領域(サブブロック)を選択出来る。従って、データの消去サイズ及び退避させるべき有効データサイズを必要最小限とすることが出来、消去動作の処理時間を低減することが出来る。
11.第11実施形態
次に、第11実施形態に係る半導体記憶装置及びデータ消去方法について説明する。本実施形態は、上記第1乃至第10実施形態において、消去を繰り返すことによりメモリセルトランジスタMTの消去特性が変化した場合に、レイヤ毎に消去条件を補正するものである。以下は第1乃至第10実施形態と異なる点についてのみ説明する。
11.1 消去の累積回数と消去特性の関係について
図64は、消去の累積回数と、レイヤ間でのメモリセルトランジスタMTの消去特性の差を示すグラフである。図64では、最上層に位置するメモリセルトランジスタMTの消去特性と、最下層に位置するメモリセルトランジスタMTの消去特性との差が最も大きい場合を例として、その消去特性の差を示している。また消去特性の差とは、具体的にはデータの消しやすさ(言い換えれば消しにくさ)の差であり、例えば、レイヤ毎に必要な消去電圧、または必要な消去パルス幅の差などと言い換えることが出来る。
この消去特性の差は、レイヤ間でメモリセルトランジスタMTのサイズの違いが大きいほどより顕著となる。例えばレイヤ間での消去特性の差を補正するために、出荷時にレイヤ毎に補正した消去条件を設定する場合がある。しかし、プログラムと消去を繰り返すと、メモリセルトランジスタMTのゲート絶縁膜の劣化等により消去特性が変化してくる。
この消去特性の変動量は、メモリセルトランジスタMTの形状(消去のしやすさ)、消去条件等によりレイヤで異なる。例えば消去しやすいレイヤは、過剰な消去電圧のストレスに晒されることにより、消去特性の変動が他のレイヤより大きくなる場合がある。あるいは、消去しにくいレイヤは、消去ループ回数が多くなる傾向にあり、その結果、高い消去電圧を繰り返し印加されることにより、消去特性の変動が他のレイヤより大きくなる場合がある。
その結果、図64に示すように、消去の累積回数が増加するにともない、レイヤ間での消去特性の差は大きくなる。
上記の消去特性の差を補正する具体的な方法としては、いくつかの方法を採用できる。これらについて、以下、3つの例を説明する。なお、ここでは、GIDL消去を用いた場合について説明するが、FNトンネル効果を用いた消去にも適用出来る。
11.2 データの消去の第1例
本例では、消去の累積回数n(nは任意の整数)により、レイヤ毎に消去の電圧条件を変更する方法を提供する。
11.2.1 データの消去時の消去条件について
次に本例におけるデータの消去時の消去条件について説明する。本例では、コントローラ200は、例えば内蔵メモリ220に、消去条件を決定するための管理テーブルを保持している。また内蔵メモリ220は、ブロック毎(及び/またはサブブロック毎)の消去累積回数nを保持する。
本例における管理テーブルとは、消去の累積回数nを判定する判定数Nと、プリフィックスコマンド(prefix command)との関係を示すテーブルである。ここで、判定数Nは、消去累積回数nに応じて消去条件を決定するための判定数であり、小さい方からN1、N2、N3、N4、…の順に設定される任意の整数である。また、プリフィックスコマンドは、コントローラ200が発行する消去条件を決定するためのコマンドであり、判定数N1、N2、…に応じて第1のプリフィックスコマンド、第2のプリフィックスコマンド、…の順に設定される。そして、コントローラ200は、消去を実行する際、この管理テーブルに従って、消去対象ブロックBLKの消去累積回数nを判定し、その結果に応じたプリフィックスコマンドを発行する。
NAND型フラッシュメモリ100は、例えばレジスタ123内に、プリフィックスコマンドとレイヤ毎の消去条件との関係を示すテーブルを保持する。そしてNAND型フラッシュメモリ100は、コントローラ200から受信したプリフィックスコマンドに従って、消去条件を決定する。
図65は、本例のデータの消去において、消去累積回数nと消去電圧条件の関係とを示すフローチャートである。
まず、コントローラ200のホストインターフェイス回路210は、ホスト機器から消去命令を受信する(ステップS101)。
次にコントローラ200のCPU230は、ホスト機器によって消去対象とされたブロックBLKの消去累積回数nと管理テーブルを参照する(ステップS102)。
まず、消去累積回数nが0<n≦N1の場合(ステップS103、Yes)、CPU230は、プリフィックスコマンドを発行しない。従って、NANDインターフェイス回路250は、NAND型フラッシュメモリ100へ消去命令のみを送信する。NAND型フラッシュメモリ100は、出荷時に設定された第1の電圧条件でデータの消去を実行する(ステップS108)。
次に消去累積回数nがN1<n≦N2の場合(ステップS104、Yes)、CPU230は、第1のプリフィックスコマンドを発行し、NANDインターフェイス回路250は、NAND型フラッシュメモリ100に消去命令と第1のプリフィックスコマンドを送信する。NAND型フラッシュメモリ100は、第1のプリフィックスコマンドに従って、第2の電圧条件でデータの消去を実行する(ステップS109)。
次に消去累積回数nがN2<n≦N3の場合(ステップS105、Yes)、CPU230は、第2のプリフィックスコマンドを発行し、NANDインターフェイス回路250は、NAND型フラッシュメモリ100に消去命令と第2のプリフィックスコマンドを送信する。NAND型フラッシュメモリ100は、第2のプリフィックスコマンドに従って、第3の電圧条件でデータの消去を実行する(ステップS110)。
次に消去累積回数nがN3<n≦N4の場合(ステップS106、Yes)、CPU230は、第3のプリフィックスコマンドを発行し、NANDインターフェイス回路250は、NAND型フラッシュメモリ100に消去命令と第3のプリフィックスコマンドを送信する。NAND型フラッシュメモリ100は、第3のプリフィックスコマンドに従って、第4の電圧条件でデータの消去を実行する(ステップS111)。
次に消去累積回数nがN4<nの場合(ステップS107)、CPU230は、第4のプリフィックスコマンドを発行し、NANDインターフェイス回路250は、NAND型フラッシュメモリ100に消去命令と第4のプリフィックスコマンドを送信する。NAND型フラッシュメモリ100は、第4のプリフィックスコマンドに従って、第5の電圧条件でデータの消去を実行する(ステップS112)。
11.2.2 データの消去電圧について
次に、各レイヤに位置するNANDストリングSRに印加するVERAの電圧値について説明する。図66は、消去累積回数n(プリフィックスコマンド)とVERAの関係を示すグラフである。図66は、一例として次のような場合について示している。すなわち、最上層に位置するNANDストリングSR3は、最も消去しにくいが消去の累積回数nによる消去特性の変動が小さい。そして、最下層に位置するNANDストリングSR1は、最も消去しやすいが消去の累積回数nにより消去特性の変動が大きい。そして、中間層に位置するNANDストリングSR2は、最上層と最下層の中間の特性である場合について示している。
図示するように、消去累積回数が大きくなるにつれて、消去電圧VERAの値はステップアップされる。但し、そのステップアップ幅は、消去特性の変動の大きいNANDストリングに印加されるものほど大きい。従って、消去累積回数が増えるほど、VERA1とVERA3の差は小さくなる。
より具体的には、図66に示すように、消去累積回数nが判定数N1より少ない場合(0<n≦N1)、第1の電圧条件(プリフィックスコマンド無し)が適用される。第1の電圧条件では、制御部121は、VERA1〜VERA3をそれぞれ初期値に設定し、VERA1〜VERA3のそれぞれは最も小さい値に設定される。
次に消去累積回数nが判定数N1より多く判定数N2より少ない場合(N1<n≦N2)、第2の電圧条件(第1のプリフィックスコマンド)が適用される。第2の電圧条件では、制御部121は、消去特性の変動の大きさに応じてVERAをステップアップする。図66の例では、VERA3のステップ幅が最も小さく、VERA1のステップ幅が最も大きい。すなわち、消去特性の変動が大きいレイヤほど、ステップアップ幅が大きくなる。
同様に、消去累積回数nが判定数N2より多く判定数N3より少ない場合(N2<n≦N3)、第3の電圧条件(第2のプリフィックスコマンド)が適用される。また消去累積回数nが判定数N3より多く判定数N4より少ない場合(N3<n≦N4)、第4の電圧条件(第3のプリフィックスコマンド)が適用される。更に消去の累積回数nが判定数N4より多い場合(N4<n)、第5の電圧条件(第4のプリフィックスコマンド)が適用される。そして、それぞれの電圧条件に応じて、VERA1〜VERA3がステップアップされている。また制御部121は、例えば消去累積回数nが増えるほど、ステップアップ幅も大きくしても良い。
第5の電圧条件において制御部121は、VERA1〜VERA3の値を、それぞれに設定可能な最大値に設定する。その結果、VERA1とVERA3との差は最小となる。
11.2.3 コマンドシーケンスについて
次に、本例に係る消去時のコントローラ200とNAND型フラッシュメモリ100との間のコマンドシーケンスについて説明する。
図67は、消去の累積回数nが判定数N1より少ない場合に、コントローラ200とNAND型フラッシュメモリ100との間で送受信される信号のタイミングチャートである。すなわち、CPU230はプリフィックスコマンドを発行せず、NAND型フラッシュメモリ100は、出荷時の設定でデータを消去する場合を示している。
CPU230は、チップイネーブル信号/CE、アドレスラッチイネーブル信号ALE、コマンドラッチイネーブル信号CLE、ライトイネーブル信号/WE、リードイネーブル信号/REを、NANDインターフェイス回路250からNAND型フラッシュメモリ100へ送信する。また、NAND型フラッシュメモリ100は、レディ/ビジー信号/R/BをNANDインターフェイス回路250へ送信する。入出力信号I/O1〜I/O8は、コントローラ200のNANDインターフェイス回路250と、NAND型フラッシュメモリ100との間で送受信される例えば8ビットのデータである。
チップイネーブル信号/CEは、NAND型フラッシュメモリ100をイネーブルにするための信号であり、lowレベルでアサートされる。アドレスラッチイネーブル信号ALEは、入出力信号I/O1〜I/O8がアドレスであることを示す信号であり、highレベルでアサートされる。コマンドラッチイネーブル信号CLEは、入出力信号I/O1〜I/O8がコマンドであることを示す信号であり、highレベルでアサートされる。ライトイネーブル信号/WEは、NAND型フラッシュメモリ100に各データを書き込むための信号であり、lowレベルでアサートされる。リードイネーブル信号/REは、NAND型フラッシュメモリ1から各データを読み出すための信号であり、lowレベルでアサートされる。レディ/ビジー信号/R/Bは、NAND型フラッシュメモリ100がビジー状態であるか否か(信号を受信可能な状態か否か)を示す信号であり、ビジー状態の際にlowレベルとなる。
図示するようにCPU230は、プリフィックスコマンドを発行しない場合、まず消去を実行することを通知するためのコマンド“60H”を発行すると共に、CLEをアサート(“H”レベル)する。NAND型フラッシュメモリ100の制御部121は、それを図示せぬコマンドレジスタに書き込む。
次にCPU230は、消去ブロックBLKを指定するアドレスデータ“Row1”〜“Row3”を発行すると共に、ALEをアサート(“H”レベル)する。NAND型フラッシュメモリ100の制御部121は、それを図示せぬアドレスレジスタに書き込む。なお図67ではでは、アドレスデータが3サイクルで送信される例を示しているが、そのサイクル数は任意である。
次にCPU230は、消去を実行するためのコマンド“D0H”を発行すると共に、CLEをアサート(“H”レベル)する。NAND型フラッシュメモリ100の制御部121は、それをコマンドレジスタに書き込む。
なお、CPU230は、コマンド、及びアドレスデータ等を発行する度に、/WEをアサートする。よって、/WEがトグルされる度に、信号がNAND型フラッシュメモリ100に取り込まれる。
次に、NAND型フラッシュメモリ100の制御部121は、このコマンドに応答して出荷時の消去条件でデータの消去を行う。すなわち制御部121は、VERA1〜VERA3は初期値に設定し、この初期値を用いてデータが消去される。この間、NAND型フラッシュメモリ100の制御部121はビジー状態となる(R/B=“L”)。そして、消去が完了すると、R/Bは“H”レベルに復帰する。
次にCPU230が、プリフィックスコマンドを発行する場合について説明する。図68は、消去累積回数nが判定数N1より多い場合に、コントローラ200とNAND型フラッシュメモリ100との間で送受信される信号のタイミングチャートである。
図示するように、CPU230は、消去コマンド“60H”の前に、第1〜第4のプリフィックスコマンドのいずれかを示すコマンド“XH”を発行すると共に、CLEをアサート(“H”レベル)する。NAND型フラッシュメモリ100の制御部121は、これをコマンドレジスタに書き込む。引き続き、CPU230は、図67で説明したコマンドとアドレスデータの発行を行う。そして、NAND型フラッシュメモリ100の制御部121は、プリフィックスコマンドを示すコマンド“XH”を受信することで、それに対応した消去条件を設定し、データの消去を行う。
11.3 データの消去の第2例
次に、データ消去の第2例について説明する。本例は、前回、消去対象ブロックBLKの消去を行った際のプリフィックスコマンドと消去ループ回数m(mは任意の整数)により、レイヤ毎に消去の電圧条件を変更する。
11.3.1 データの消去時の消去条件について
まず、本例におけるデータの消去時の消去条件について説明する。図69は、本例に係る管理テーブルの概念図である。図示するように本例に係る管理テーブルは、直近の消去時に使用されたプリフィックスコマンドと、その際における消去ループ回数mを判定するための判定数Mと、プリフィックスコマンドとの関係を保持する。ここで、判定数Mは、前回消去時の消去ループ回数mを判定する任意の整数であり、前回消去時のプリフィックスコマンドに対応して任意に設定される。例えば、前回消去時にプリフィックスコマンドが発行されていない場合(第1の電圧条件)に、消去ループ回数mを判定する判定数をM1とする。また、前回消去時に第1のプリフィックスコマンドが発行された場合(第2の電圧条件)に、消去ループ回数mを判定する判定数をM2、以下、同様に判定数をM3、M4、…と設定する。このように、判定数M1、M2、M3、M4、…は、それぞれ関係性が無く、例えば判定数M1、M2、M3、M4、…を同じ回数としても良い。CPU230は、この管理テーブルに従い、前回のプリフィックスコマンドと消去ループ回数mに応じたプリフィックスコマンドを、NAND型フラッシュメモリ100に送信し、消去電圧条件の設定を行う。
図70は、本例のデータの消去時におけるコントローラ200の動作を示すフローチャートである。
まず、コントローラ200のホストインターフェイス回路210は、ホスト機器から消去命令を受信する(ステップS121)。
次にCPU230は、前回のプリフィックスコマンドと消去ループ回数mと管理テーブルを参照する(ステップS122)。
まず、前回消去時にCPU230がプリフィックスコマンドを発行していなかった場合(ステップS123、Yes)、CPU230は、前回消去時の消去ループ回数mと判定数M1を比較する。
消去ループ回数mが0<m≦M1の場合(ステップS128、Yes)、CPU230は、前回と同様に、プリフィックスコマンドの発行をしない。従って、NANDインターフェイス回路250は消去命令のみをNAND型フラッシュメモリ100に送信する。NAND型フラッシュメモリ100は、出荷時に設定された第1の電圧条件でデータの消去を実行する(ステップS132)。
消去ループ回数mがm>M1の場合(ステップS128、No)、CPU230は、第1のプリフィックスコマンドを発行する。NANDインターフェイス回路250はNAND型フラッシュメモリ100に消去命令と第1のプリフィックスコマンドを送信する。NAND型フラッシュメモリ100は、第1のプリフィックスコマンドに従って第2の電圧条件でデータの消去を実行する(ステップS133)。
前回消去時にCPU230が第1のプリフィックスコマンドを発行していた場合(ステップS124、Yes)において、前回消去時の消去ループ回数mが0<m≦M2の場合(ステップS129、Yes)、CPU230は、前回と同様に、第1のプリフィックスコマンドを発行する。NANDインターフェイス回路250はNAND型フラッシュメモリ100に消去命令と第1のプリフィックスコマンドを送信する。NAND型フラッシュメモリ100は、前回と同様に第1のプリフィックスコマンド従って、第2の電圧条件でデータの消去を実行する(ステップS132)。
消去ループ回数mがm>M2の場合(ステップS129、No)、CPU230は、第2のプリフィックスコマンドを発行する。NANDインターフェイス回路250はNAND型フラッシュメモリ100に消去命令と第2のプリフィックスコマンドを送信する。NAND型フラッシュメモリ100は、第2のプリフィックスコマンドに従って、第3の電圧条件でデータの消去を実行する(ステップS133)。
前回消去時にCPU230が第2のプリフィックスコマンドを発行していた場合(ステップS125、Yes)において、前回消去時の消去ループ回数mが0<m≦M3の場合(ステップS130、Yes)、CPU230は、前回と同様に、第2のプリフィックスコマンドを発行する。NANDインターフェイス回路250はNAND型フラッシュメモリ100に消去命令と第2のプリフィックスコマンドを送信する。NAND型フラッシュメモリ100は、第2のプリフィックスコマンドに従って、第3の電圧条件でデータの消去を実行する(ステップS134)。
消去ループ回数mがm>M3の場合(ステップS130_No)、CPU230は、第3のプリフィックスコマンドを発行する。NANDインターフェイス回路250はNAND型フラッシュメモリ100に消去命令と第3のプリフィックスコマンドを送信する。NAND型フラッシュメモリ100は、第3のプリフィックスコマンドに従って、第4の電圧条件でデータの消去を実行する(ステップS135)。
前回消去時にCPU230が第3のプリフィックスコマンドを発行していた場合(ステップS126、Yes)において、前回消去時の消去ループ回数mが0<m≦M4の場合(ステップS131、Yes)、CPU230は、前回と同様に、第3のプリフィックスコマンドを発行する。NANDインターフェイス回路250はNAND型フラッシュメモリ100に消去命令と第3のプリフィックスコマンドを送信する。NAND型フラッシュメモリ100は、第3のプリフィックスコマンドに従って、第4の電圧条件でデータの消去を実行する(ステップS135)。
消去ループ回数mがm>M4の場合(ステップS131、No)、CPU230は、第4のプリフィックスコマンドを発行する。NANDインターフェイス回路250はNAND型フラッシュメモリ100に消去命令と第4のプリフィックスコマンドを送信する。NAND型フラッシュメモリ100は、第4のプリフィックスコマンドに従って、第5の電圧条件でデータの消去を実行する(ステップS136)。
前回消去時にCPU230が第4のプリフィックスコマンドを発行していた場合(ステップS127、Yes)、CPU230は、第4のプリフィックスコマンドを発行する。NANDインターフェイス回路250はNAND型フラッシュメモリ100に消去命令と第4のプリフィックスコマンドを送信する。NAND型フラッシュメモリ100は、第4のプリフィックスコマンドに従って、第5の電圧条件でデータの消去を実行する(ステップS136)。
消去完了後、CPU230は、消去ループ回数mをNAND型フラッシュメモリ100から読み出す。そして、CPU230は、例えば内蔵メモリ220に、NANDフラッシュメモリ100から読み出した対象ブロックBLKの消去ループ回数mと、CPU230が発行したプリフィックスコマンドを記憶する。
11.3.2 データの消去電圧について
図71は、消去の累積回数n(プリフィックスコマンド)、消去ループ回数m、及びVERAの関係を示すグラフである。図71は図66と同様に、最上層に位置するNANDストリングSR3が最も消去しにくいが消去特性の変動が小さく、最下層に位置するNANDストリングSR1が最も消去しやすく消去特性の変動が大きい場合について示している。
図示するように、VERAの変動の仕方は図66と同様である。しかし本例では、VERAがステップアップする際の条件が図66と異なる。すなわち、前述のように、消去累積回数nそのものによるのではなく、直近で使用されていたプリフィックスコマンドと及びそこでの消去ループ回数mに基づく。従って、図71に示すように、プリフィックスコマンドを用いずに消去動作が行われている期間は、消去ループ回数がM1に達すると、VERAがステップアップされる。また第1のプリフィックスコマンドを用いて消去動作が行われている期間は、消去ループ回数がM2に達すると、VERAが更にステップアップされる。以下、同様である。
なお、図70では、判定数MがM4>M3>M2>M1となっているが、判定数Mはプリフィックスコマンドに応じて任意に設定されるため、特に関係性は無く、例えば全て同じ判定数としても良い。
11.3.3 コマンドシーケンスについて
次に本例に係るコントローラ200とNAND型フラッシュメモリ100との間のコマンドシーケンスにつき、特に消去完了後に行う消去ループ回数mの読み出し動作について説明する。
本例のデータの消去において、消去を実行するまでにコントローラ200とNAND型フラッシュメモリ100との間で送受信される信号は、第1例の図67及び図68と同じである。本例では、消去完了後にコントローラ200は、当該消去動作に要した消去ループ回数mを、NAND型フラッシュメモリ100から読み出す。図72は、その場合におけるコマンドシーケンスを示す。
図示するように、CPU230は、まず読み出しを実行するためのコマンド“5Fh”を発行すると共に、CLEをアサート(“H”レベル)する。NAND型フラッシュメモリ100の制御部121は、それをコマンドレジスタに書き込む。
次にCPU230は、消去ループ回数を読み出したいメモリセルアレイ(プレーン)を指定するアドレス“xxh”を発行すると共に、ALEをアサート(“H”レベル)する。NAND型フラッシュメモリ100の制御部121は、それをアドレスレジスタに書き込む。
なお、CPU230は、コマンド、及びアドレスデータ等を発行する度に、/WEをアサートする。よって、/WEがトグルされる度に、信号がNAND型フラッシュメモリ100に取り込まれる。
次にNAND型フラッシュメモリ100の制御部121は、コマンド“5Fh”に応答して、アドレス“xxh”に関する直近の消去動作に要した消去ループ回数mを、例えばいずれかのレジスタからを読み出す。この間、NAND型フラッシュメモリ100の制御部121はビジー状態となる(R/B=“L”)。そして、読み出しが完了すると、R/Bは“H”レベルに復帰する。
次にCPU230は、/REをアサートする。NAND型フラッシュメモリ100の制御部121は、データ“xxH”をコントローラ200に転送する。そしてCPU230は、それを例えば内蔵メモリ220に記憶する。
11.4 データの消去の第3例
次に第3例について説明する。本例では、前回、消去対象ブロックBLKの消去を行った際の消去ループ回数mにより、レイヤ毎に消去の電圧条件を変更する方法を提供する。ここでは、第2例と異なる点についてのみ説明する。
11.4.1 データの消去方法について
本例におけるデータの消去方法について説明する。本例では、第1及び第2例で説明した管理テーブルは不要である。そしてコントローラ200は、前回消去時の消去ループ回数mと判定数Mとの比較結果に基づいて、プリフィックスコマンドを発行する。また本例のプリフィックスコマンドは、消去電圧の補正(VERAのステップアップ)を指示するコマンドであり、消去電圧の補正が必要な場合にのみ発行される。
図73は、本例のデータの消去時におけるコントローラ200の動作を示すフローチャートである。
まず、コントローラ200のホストインターフェイス回路210は、ホスト機器から消去命令を受信する(ステップS141)。
次にCPU230は、前回の消去動作において要した消去ループ回数mと、例えば内蔵メモリに保持する判定数Mとを比較する(ステップS142)。
まず前回消去時消去ループ回数mが0<m≦Mの場合(ステップS143、Yes)、CPU230は、プリフィックスコマンドの発行をしない。従って、NANDインターフェイス回路250は消去命令のみをNAND型フラッシュメモリ100に送信する。NAND型フラッシュメモリ100は、前回消去を行った電圧条件でデータの消去を実行する(ステップS144)。
前回の消去ループ回数mがm>Mの場合(ステップS143、No)、CPU230は、プリフィックスコマンドを発行し、NANDインターフェイス回路250からNAND型フラッシュメモリ100に消去命令とプリフィックスコマンドを送信する。NAND型フラッシュメモリ100は、プリフィックスコマンドに従って、前回の電圧条件に補正値ΔVを加算し、新しい電圧条件で、データの消去を実行する(ステップS145)。ここで、補正値ΔVは、消去電圧を変更するための補正値であり、例えばVERAのステップアップ幅である。
消去完了後、CPU230は、消去ループ回数mをNAND型フラッシュメモリ100から読み出す。CPU230は、例えば内蔵メモリ220に、NAND型フラッシュメモリ100から読み出した対象ブロックBLKの消去ループ回数mを記憶する。
11.4.2 データの消去電圧について
図74は、消去累積回数n、消去ループ回数m、及びVERAの関係を示すグラフである。図71は図66と同様に、最上層に位置するNANDストリングSR3が最も消去しにくいが消去特性の変動が小さく、最下層に位置するNANDストリングSR1が最も消去しやすく消去特性の変動が大きい場合について示している。
図示するように、VERAの変動の仕方は図66と同様である。しかし本例では、VERAがステップアップする際の条件が図66と異なる。すなわち本例では、消去累積回数nや直近で使用されていたプリフィックスコマンドに関わらず、消去ループ回数mが判定値Mを超えた時にプリフィックスコマンドが発行され、このタイミングでVERA1〜VERA3がステップアップされる。VERA1〜VERA3のステップアップ幅はそれぞれΔV1〜ΔV3であり、例えばΔV1>ΔV2>ΔV3の関係となる。
11.5 本実施形態に係る効果
本実施形態に係る構成であると、上記第1乃至第10実施形態と同様の効果が得られる。
また、本実施形態に係る構成では、メモリセルトランジスタMTの消去特性が変動しても、消去条件を補正して消去を実行することが出来る。更に、レイヤ毎に異なる補正条件を適用することによりレイヤ間の消去特性の差を補正することが出来る。従って、消去特性の変動に関わらず、各レイヤに対して最適な消去条件を適用することが出来る。その結果、消去ループ回数を少なくすることが出来、消去の動作処理時間を短くすることが出来る。
また、消去ループ回数をモニタすることにより、メモリセルトランジスタMTの消去特性の劣化状況を管理することが出来る。
なお、第1乃至第3例では、GIDLを用いた消去動作において、VERAの電圧を変更する場合について説明したが、FNトンネル効果を用いた消去動作にも適用することが出来る。FNトンネル効果を用いた消去の場合、例えば、第6実施形態の第3例で説明したように、消去のしやすさに応じて、ソース線SLに印加する電圧値を変更する。従って、プリフィックスコマンドに応じて、ソース線SLの電圧をステップアップすることにより、レイヤ間の消去特性の差を補正することが出来る。
更に本実施形態では第1〜第5の電圧条件を設定したが、複数の電圧条件が設定されていれば良い。
更に、本実施形態では、最上層に位置するNANDストリングSR3が最も消去しにくく消去特性の変動が小さく、最下層に位置するNANDストリングSR1が最も消去しやすく消去特性の変動が大きい場合について説明したが、NANDストリングSR3が最も消去特性の変動が大きく、NANDストリングSR1が最も消去特性の変動が小さくても良い。図75〜図77は第1例乃至第3例において、NANDストリングSR3が最も消去特性の変動が大きく、NANDストリングSR1が最も消去特性の変動が小さい場合をそれぞれ示している。このように消去変動の大きいレイヤのVERAのステップアップ幅を大きくすることにより、各レイヤにおいて消去特性の変動が大きい場合も小さい場合にも本実施形態を適用出来る。
更に、第2例及び第3例では、前回消去時の消去ループ回数mと判定数Mを比較してプリフィックスコマンドを決定したが、消去特性の差が大きい2つのレイヤ(例えば最上層と最下層)の消去ループ回数差をmとし、これと判定数Mを比較することによりプリフィックスコマンドを決定しても良い。
12.変形例等
上記実施形態に係る半導体記憶装置は、例えば図3に示すように複数のメモリセルトランジスタMTと、複数のワード線WLと、複数のNANDストリングSRと、複数のストリンググループGRと、複数のメモリユニットMUとを備える。複数のメモリセルトランジスタは、半導体基板上方の複数のレイヤにそれぞれ設けられる(例えば図8)。複数のワード線WLは、異なるレイヤに設けられた複数のメモリセルトランジスタMTに共通に接続される(例えば図8のワード線WL1〜WL4)。複数のNANDストリングSRは、同一のレイヤに設けられた複数のメモリセルトランジスタMTの電流経路を直列に接続する(例えば図8の半導体層23−1〜23−3)。複数のストリンググループGRは、異なるレイヤに積層された複数のNANDストリングSRを含む(例えば図6の半導体層23−1〜23−3)。複数のメモリユニットMUは、複数のストリンググループGRを備える(例えば図6のストリングGR1−1〜GR4−1)。メモリセルトランジスタMTのデータの消去は、消去動作とベリファイ動作とを含む消去ループを複数回繰り返すことにより実行される(例えば図9のステップS12〜S15)。ベリファイ動作は、消去ベリファイと、データの消去が完了したかを判定する判定動作を含む(例えば図10のステップS12及びS13)。判定動作はレイヤ毎に行われる(例えば図10のステップS13における最上層と中間層と最下層)。
上記実施形態により、動作信頼性を向上出来る半導体記憶装置及びデータ消去方法を提供出来る。
上記実施形態では消去動作の際、レイヤ毎のメモリセルトランジスタMTのサイズの違いにより最適な消去条件が異なる説明を行っているが、プログラム及び読み出し動作においてもレイヤ毎に最適な値が異なり、それぞれに制御されても良い。
更に、上記実施形態では消去の累積回数によりメモリセルトランジスタMTの消去特性が変動するため、レイヤ毎に消去条件を補正する方法の説明を行っているが、プログラム及び読み出し動作においてもレイヤ毎にプログラム条件、読み出し条件の補正を行っても良い。
更に、上記実施形態では、最上層のデータが最も消去しやすく、最下層のデータが最も消去しやすい場合について説明したが、メモリセルトランジスタMTの形状により中間層が最も消去しにくい場合、あるいは最下層が最も消去しにくい場合もあり、レイヤ間の消去しやすさの関係については限定しない。
更に、第5実施形態の第1例において、レイヤ毎に異なる消去パルス幅で消去動作を行う場合、ビット線BLに印加するVERAの印加期間を変更したが、制御信号線SSLにVERA_GIDLを印加する期間を変更することにより消去パルス幅を変更しても良い。
更に、第5実施形態及び第7実施形態において、レイヤ毎に異なる消去パルス幅で消去動作を行う場合、各レイヤの印加電圧は同じとしていたが、レイヤの消去特性により異なる電圧を供給しても良い。
更に、第6実施形態及び第7実施形態において、異なる消去電圧で消去動作を行う場合、各レイヤの消去パルス時間は同じとしていたが、レイヤの消去特性により異なる消去パルス幅で電圧を印加しても良い。
更に、第7実施形態において、ビット線接続部及びソース線接続部にNチャネルMOSトランジスタを用いたがPチャネルMOSトランジスタを用いても良い。
更に第10実施形態において、サブブロック消去を行う際、選択するサブブロックにより、異なる消去条件を適用しても良い。
更に、第11実施形態において、GIDLを用いた消去動作について説明したが、FNトンネル効果を用いた消去動作でも良く、その場合、例えば第3実施形態に係る半導体記憶装置において、ソース線SLの電圧をレイヤ毎に変更しても良い。
更に、第11実施形態において、消去の累積回数に対応した消去条件の補正として、消去電圧を変更していたが、消去パルス幅を変更しても良い。
更に、第11実施形態において、レイヤ毎に消去条件の補正を行ったがゾーンZN毎に消去条件の補正を行っても良い。
更に、第11実施形態において、CPU230が消去条件を決定し、プリフィックスコマンドの発行を行ったが、NAND型フラッシュメモリ100の制御部121において同様の処理を行っても良い。この場合、コントローラ200からのプリフィックスコマンドの発行は不要となり、消去条件の判定は制御部121の制御により行われる。
更に、第11実施形態において、レイヤ毎に消去条件の補正を行ったが、NANDストリングSRがレイヤ構造を有していない三次元のNAND型フラッシュメモリにおいても、メモリセルトランジスタMTの形状の違いで分類したグループ毎に消去条件を補正することで本実施形態を実施出来る。
更に、第11実施形態の第1例と第2例において、第1の電圧条件ではプリフィックスコマンドを発行していなかったが、第1の電圧条件に対応する第0のプリフィックスコマンドを発行しても良い。
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことが出来る。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
なお、本発明に関する各実施形態において、
(1)読み出し動作では、
Aレベルの読み出し動作に選択されたワード線に印加される電圧は、例えば0V〜0.55Vの間である。これに限定されることなく、0.1V〜0.24V、0.21V〜0.31V、0.31V〜0.4V、0.4V〜0.5V、0.5V〜0.55Vいずれかの間にしてもよい。
Bレベルの読み出し動作に選択されたワード線に印加される電圧は、例えば1.5V〜2.3Vの間である。これに限定されることなく、1.65V〜1.8V、1.8V〜1.95V、1.95V〜2.1V、2.1V〜2.3Vいずれかの間にしてもよい。
Cレベルの読み出し動作に選択されたワード線に印加される電圧は、例えば3.0V〜4.0Vの間である。これに限定されることなく、3.0V〜3.2V、3.2V〜3.4V、3.4V〜3.5V、3.5V〜3.6V、3.6V〜4.0Vいずれかの間にしてもよい。
読み出し動作の時間(tR)としては、例えば25μs〜38μs、38μs〜70μs、70μs〜80μsの間にしてもよい。
(2)書き込み動作は、上述したとおりプログラム動作とベリファイ動作を含む。書き込み動作では、
プログラム動作時に選択されたワード線に最初に印加される電圧は、例えば13.7V〜14.3Vの間である。これに限定されることなく、例えば13.7V〜14.0V、14.0V〜14.6Vいずれかの間としてもよい
奇数番目のワード線を書き込む際の、選択されたワード線に最初に印加される電圧と、偶数番目のワード線を書き込む際の、選択されたワード線に最初に印加される電圧を変えてもよい。
プログラム動作をISPP方式(Incremental Step Pulse Program)としたとき、ステップアップの電圧として、例えば0.5V程度が挙げられる。
非選択のワード線に印加される電圧としては、例えば6.0V〜7.3Vの間としてもよい。この場合に限定されることなく、例えば7.3V〜8.4Vの間としてもよく、6.0V以下としてもよい。
非選択のワード線が奇数番目のワード線であるか、偶数番目のワード線であるかで、印加するパス電圧を変えてもよい。
書き込み動作の時間(tProg)としては、例えば1700μs〜1800μs、1800μs〜1900μs、1900μs〜2000μsの間にしてもよい。
(3)消去動作では、
半導体基板上部に形成され、かつ、上記メモリセルが上方に配置されたウェルに最初に印加する電圧は、例えば12V〜13.6Vの間である。この場合に限定されることなく、例えば13.6V〜14.8V、14.8V〜19.0V、19.0〜19.8V、19.8V〜21Vの間であってもよい。
消去動作の時間(tErase)としては、例えば3000μs〜4000μs、4000μs〜5000μs、4000μs〜9000μsの間にしてもよい。
(4)メモリセルの構造は、
半導体基板(シリコン基板)上に膜厚が4〜10nmのトンネル絶縁膜を介して配置された電荷蓄積層を有している。この電荷蓄積層は膜厚が2〜3nmのSiN、またはSiONなどの絶縁膜と膜厚が3〜8nmのポリシリコンとの積層構造にすることができる。また、ポリシリコンにはRuなどの金属が添加されていても良い。電荷蓄積層の上には絶縁膜を有している。この絶縁膜は、例えば、膜厚が3〜10nmの下層High−k膜と膜厚が3〜10nmの上層High−k膜に挟まれた膜厚が4〜10nmのシリコン酸化膜を有している。High−k膜はHfOなどが挙げられる。また、シリコン酸化膜の膜厚はHigh−k膜の膜厚よりも厚くすることができる。絶縁膜上には膜厚が3〜10nmの仕事関数調整用の材料を介して膜厚が30nm〜70nmの制御電極が形成されている。ここで仕事関数調整用の材料はTaOなどの金属酸化膜、TaNなどの金属窒化膜である。制御電極にはWなどを用いることができる。
また、メモリセル間にはエアギャップを形成することができる。