JP6199166B2 - タイヤ加硫金型及びタイヤの製造方法 - Google Patents

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本発明は、タイヤのサイドウォール部に接するサイド成形面に複数のベントホールが設けられたタイヤ加硫金型と、それを用いたタイヤの製造方法とに関する。
従来、空気入りタイヤの加硫成形に用いられるタイヤ加硫金型では、タイヤのサイドウォール部に接するサイド成形面に複数のベントホールが設けられている(例えば、特許文献1,2)。かかる構成によれば、タイヤとサイド成形面との間の余分なエアを金型の外部に排出し、ライトネスやベアと呼ばれるゴム欠損の原因となるエア溜まりの発生を防いで、良好なタイヤ外観の成形を図ることができる。
ところで、タイヤのサイドウォール部の表面には、岩場のような悪路での走破性を向上するために、或いはタイヤ側面の意匠性や装飾性を向上するために、タイヤ周方向に沿ってブロック列が設けられることがある。そのブロック列がバリアブルピッチ配列されている場合、タイヤ加硫金型のサイド成形面には、ピッチ長の異なる複数の凹部をタイヤ周方向に配列してなる凹部列が設けられることになる。
しかし、かかる凹部列を構成する複数の凹部のうち、ピッチ長が大きい凹部では、それよりもピッチ長が小さい凹部に比べて、加硫成形時に所要量のゴムが充填されるまでに時間が掛かり、ゴム流れが低下する傾向にあった。それ故、そのピッチ長が大きい凹部の内部でエア溜まりが発生しやすく、それに起因したブロックのゴム欠損によってタイヤの外観不良となる恐れがあった。
特開2008−265502号公報 特開平8−47929号公報
本発明は上記実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、凹部の内部でのエア溜まりの発生を抑制できるタイヤ加硫金型と、それを用いたタイヤの製造方法を提供することにある。
上記目的は、下記の如き本発明により達成することができる。即ち、本発明に係るタイヤ加硫金型は、タイヤのサイドウォール部に接するサイド成形面に、ピッチ長の異なる複数の凹部をタイヤ周方向に配列してなる凹部列と、前記凹部の底面で開口するベントホールとが設けられたタイヤ加硫金型において、前記凹部列を構成する複数の凹部のうち、ピッチ長が最小となる最小凹部に設けられたベントホールの径に比べて、ピッチ長が最大となる最大凹部に設けられたベントホールの径が大に設定されているものである。
かかる構成によれば、ベントホールの径が相対的に大きい最大凹部において、加硫成形時のゴムが積極的に内部に引き込まれるため、所要量のゴムが充填されるまでの時間が早められる。これにより、最大凹部の内部では、ゴム流れが促進されることによりエアが分散され、延いてはエア溜まりの発生を抑制できる。また、ベントホールの径が相対的に小さい最小凹部ではゴムを無駄に引き込むことがなく、最大凹部へのゴムの充填を早める上記の効果を確保できる。
前記最小凹部に設けられたベントホールの径に、前記最小凹部のピッチ長に対する前記最大凹部のピッチ長の割合を乗じて得られる寸法と、前記最大凹部に設けられたベントホールの径との差が0.1mm以下であることが好ましい。かかる構成によれば、最大凹部の内部でゴム流れを適度に促進してエア溜まりの発生を抑制できるとともに、最大凹部と最小凹部との間でゴムの充填速度の均一化を図ることができる。
前記凹部列を構成する複数の凹部に、前記最小凹部のピッチ長よりも大きく且つ前記最大凹部のピッチ長よりも小さいピッチ長を有する中間凹部が含まれ、前記最小凹部に設けられたベントホールの径に比べて、前記中間凹部に設けられたベントホールの径が大に設定され、その中間凹部に設けられたベントホールの径に比べて、前記最大凹部に設けられたベントホールの径が大に設定されていることが好ましい。これにより、最大凹部と中間凹部の各々に適した度合いでゴム流れが改善され、エア溜まりの発生を適切に抑制できる。
前記最大凹部に設けられたベントホールの径が2.2mm以下に設定されていることが好ましい。これにより、最大凹部に設けられたベントホールに流れ込んだゴムによって形成されるゴム突起が太くなり過ぎず、トリミング作業が簡単になって都合が良い。一方、ベントホールによる排気性能を確保するうえでは、前記最小凹部に設けられたベントホールの径が0.6mm以上に設定されていることが好ましい。
本発明に係るタイヤの製造方法は、上述したタイヤ加硫金型のキャビティに未加硫タイヤをセットし、その未加硫タイヤに加熱加圧を施して加硫を行う工程を含むものである。かかる方法によれば、上述のように凹部の内部でゴム流れを促進してエア溜まりの発生を防止できることから、良好なタイヤ外観を成形することができる。
本発明に係るタイヤ加硫金型の一例を概略的に示す縦断面図 サイド成形面を示す平面図
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。
図1に示すタイヤ加硫金型10には、破線で輪郭を示した未加硫タイヤTがタイヤ軸を上下にしてセットされる。即ち、図1では、上下方向がタイヤ幅方向、左右方向がタイヤ径方向となる。タイヤ加硫金型10は、キャビティ30にセットされたタイヤTのサイドウォール部に接するサイド成形面1と、タイヤTのトレッド部に接するトレッド成形面2とを備える。サイド成形面1には、加硫成形時にタイヤTとサイド成形面1との間の余分なエアを排出するために、金型10の内部(キャビティ30)と外部とを連通させる複数のベントホール11,12が設けられている。
タイヤ加硫金型10は、タイヤTのサイドウォール部を成形するサイドプレート91,92と、タイヤTのトレッド部を成形する環状のトレッドリング93とを備える。サイド成形面1はサイドプレート91,92の各々の内面に形成され、トレッド成形面2はトレッドリング93の内面に形成されている。トレッド成形面2には、サイド成形面1と同様に、余分なエアを排出するための複数のベントホール13が設けられている。また、図示を省略しているが、トレッド成形面2にはトレッドパターンに対応した凹凸模様が形成されている。
この金型10は、所謂セグメンテッドモールドであり、タイヤ周方向に分割された複数のセクターによってトレッドリング93が構成されている。型開き時には、サイドプレート92とトレッドリング93が上昇するとともに、各セクターが放射状に広がるようにしてタイヤ径方向外側に変位し、タイヤの出し入れが可能になる。型締め時には、セクターが寄り集まることによりトレッドリング93が円環状に連続し、図1のようにサイド成形面1とトレッド成形面2とがタイヤTの外表面に密着しうる状態になる。
図2に拡大して示すように、サイド成形面1には、ピッチ長の異なる複数の凹部3をタイヤ周方向に配列してなる凹部列300と、その凹部3の底面で開口するベントホール11とが設けられている。凹部列300は、タイヤ周方向に沿って環状に延びている。図示を省略しているが、凹部列300よりもタイヤ径方向内側(図2の下側)の領域には、その表面に種々の凹凸模様(文字や数字、図形などの表示マークを含む場合もある)が形成されているとともに、図1で示したベントホール12が所々に設けられている。
この金型10を用いて加硫成形したタイヤのサイドウォール部の表面には、凹部列300に対応したブロック列が形成される。かかるブロック列は、例えばライトトラックやSUVに装着されるタイヤにおいて、岩場のような悪路での走破性や耐外傷性を向上するのに有用である。また、そのブロック列はバリアブルピッチ配列となり、一般には、ノイズ低減を目的としてトレッド部でバリアブルピッチ配列されたブロックパターンに対応したピッチを有する。バリアブルピッチ配列では、タイヤ表面の一周に亘って、ピッチ長の異なる複数のブロックが配列される。
本実施形態では、凹部列300が3種の凹部31〜33を含んでおり、これらの形状はピッチ長を除いて同じであって、その底面で開口するベントホール11の数も同じである。ピッチ長は、タイヤ周方向に繰り返される模様の構成単位の長さであり、凹部31〜33のピッチ長P1〜P3は、P1<P2<P3の関係を満たす。この金型10では、凹部列300を構成する複数の凹部31〜33のうち、ピッチ長が最小となる最小凹部31に設けられたベントホール11aの径φ11aに比べて、ピッチ長が最大となる最大凹部33に設けられたベントホール11cの径φ11cが大に設定されている。
ピッチ長P3が大きい最大凹部33では、所要量のゴムが充填されるまでに時間が掛かり、それに伴ってゴム流れが低下する傾向にあるが、この金型10では、径φ11cが相対的に大きく設定されているため、加硫成形時のゴムが積極的に最大凹部33の内部に引き込まれ、ゴムが充填されるまでの時間が早められる。これにより、最大凹部33の内部では、ゴム流れの促進によってエアが分散され、延いてはエア溜まりの発生を抑制できる。また、ベントホール11の径が相対的に小さい最小凹部31ではゴムを無駄に引き込むことがなく、最大凹部33へのゴムの充填を早める上記の効果を確保できる。
このように、径φ11aに対して径φ11cを相対的に大きくした構造は、余分なエアを逃がすというベントホール11の本来の作用よりも、寧ろゴムを引き込んでゴム流れを促すという作用に主眼を置いたものであり、最大凹部33でゴムを積極的に動かしてエアの分散を図るものである。最大凹部33の内部でエアが適度に分散されることによりエア溜まりの発生は抑えられ、その結果、ブロックのゴム欠損を防いで、良好なタイヤ外観を得ることができる。
凹部列300を構成する複数の凹部には、ピッチ長P1よりも大きく且つピッチ長P3よりも小さいピッチ長P2を有する中間凹部32が含まれる。ベントホール11aの径φ11aに比べて、中間凹部32に設けられたベントホール11bの径φ11bは大に設定され、そのベントホール11bの径φ11bに比べて、ベントホール11cの径φ11cは大に設定されている。これにより、最大凹部33と中間凹部32の各々に適した度合いでゴム流れが改善され、エア溜まりの発生を適切に抑制できる。これらの大小関係は、凹部3の各々でのベントホール11の径の平均値において満足することが望ましい。
凹部列300におけるゴムの充填速度の均一化を図るうえでは、ベントホール11の径の大きさをピッチ長の比率に応じて変化させることが好ましい。具体的に、最小凹部31と最大凹部33との関係では、最小凹部31に設けられたベントホール11aの径φ11aに、最小凹部31のピッチ長P1に対する最大凹部33のピッチ長P3の割合を乗じて得られる寸法(即ち、φ11a×P3/P1)と、最大凹部33に設けられたベントホール11cの径φ11cとの差が0.1mm以下であることが好ましい。
同様に、最小凹部31と中間凹部32との関係では、ベントホール11aの径φ11aに、ピッチ長P1に対するピッチ長P2の割合を乗じて得られる寸法(即ち、φ11a×P2/P1)と、ベントホール11bの径φ11bとの差が0.1mm以下であることが好ましい。更に、中間凹部32と最大凹部33との関係では、ベントホール11bの径φ11bに、ピッチ長P2に対するピッチ長P3の割合を乗じて得られる寸法(即ち、φ11b×P3/P2)と、ベントホール11cの径φ11cとの差が0.1mm以下であることが好ましい。
本実施形態では、凹部31〜33の深さ(サイド成形面1の法線方向に沿って測定される凹み量)が互いに同じである。この深さが大きくなるにつれて、凹部の容積の差は大きくなり、それに伴って最大凹部33でのゴム流れの低下も大きくなる。かかる傾向は凹部の深さが2mmを越えると顕在化しやすく、そのような凹部列300では、既述のようにベントホール11の径の大きさを異ならせることが好ましい。凹部31〜33の深さは5mmを越える場合もあり、7mmを越える場合もあり得る。
最大凹部33に設けられたベントホール11cの径φ11cは、スピューと呼ばれるゴム突起のトリミング作業の煩雑化を避けるうえで、2.2mm以下が好ましく、2.0mm以下がより好ましい。スピューは、ベントホール11に流れ込んだゴムによって、加硫成形後のタイヤの表面に形成される。また、径φ11cは、ゴム流れを促進する効果を確保するうえで、0.8mm以上であることが好ましい。最小凹部31に設けられたベントホール11aの径φ11aは、ベントホール11による排気性能を確保するうえで、0.6mm以上であることが好ましい。
本実施形態では、凹部3が有する角部にベントホール11が設定された例を示す。但し、上述のように、このベントホール11はゴムの引き込みによって凹部3内でのゴム流れを促進するものであるため、エア溜まりが凹部3の角部で発生しやすい場合であっても、ベントホール11を角部に設定する必要はなく、凹部3の角部から離れた箇所(例えば、凹部3の底面の中央部)にベントホール11を設定しても構わない。
本実施形態では、ピッチ長が相異なる3種の凹部31〜33によって凹部列300が構成されている例を示したが、これに限られるものではなく、複数種の中間凹部を含んだ4種以上の凹部や、或いは中間凹部を含まない2種の凹部によって凹部列を構成することも可能である。また、凹部列を構成する凹部の形状は、本実施形態で示したものに限られず、種々の形状を採用することができる。
ベントホール11は、径一定の丸孔に限られず、例えば開口部にザグリを有する形状でもよい。その場合、ベントホールの径は、ザグリではなくベントホールの本体部で測定されるものとする。ザグリの径寸法は、加硫成形時にゴムを引き込んで凹部内でのゴム流れを促す作用には殆ど影響を及ぼさないと考えられる。
図2で示していないサイドプレート92のサイド成形面1において、ピッチ長の異なる複数の凹部をタイヤ周方向に配列してなる凹部列が設けられている場合には、サイドプレート91と同じ要領でベントホールを設けることにより、その凹部の内部でのエア溜まりの発生を抑制できる。また、バリアブルピッチ配列されたブロックパターンを形成するための凹部列がトレッド成形面2に設けられている場合も、上記と同様の要領でベントホールを設けることにより、トレッド部のブロックのゴム欠損を防いで、良好なタイヤ外観を得ることができる。
この金型10を用いたタイヤの製造方法は、金型10のキャビティ30に未加硫タイヤをセットし、その未加硫タイヤに加熱加圧を施して加硫を行う工程を含む。この金型10によれば、上述のように凹部の内部でエア溜まりの発生を防止できるため、サイドウォール部のブロックにゴム欠損の無い良好なタイヤ外観を有する空気入りタイヤを製造することができる。
本発明に係るタイヤ加硫金型は、サイド成形面に設けられるベントホールを上記の如く構成したこと以外は、通常のタイヤ加硫金型と同等であり、従来公知の形状や材質、機構などが何れも本発明に採用することができる。
本発明は上述した実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変更が可能である。したがって、例えば、前述の実施形態では、タイヤ加硫金型がセグメンテッドモールドであったが、これに限られず、トレッド部の中央部で上下に二分割された所謂2ピースモールドであってもよい。
本発明の構成と効果を具体的に示すため、図2に示したサイド成形面を備えるタイヤ加硫金型によりタイヤを加硫成形し、そのときのエア溜まりの発生状況を確認した。成形したタイヤにおいて、サイドウォール部のブロックにゴム欠損が生じた場合は、加硫成形時にエア溜まりが発生したとして「×」で評価し、ゴム欠損の無い許容レベルのタイヤ外観が得られた場合は、エア溜まりが発生しなかったとして「○」で評価し、特に良好なタイヤ外観が得られた場合は、エア溜まりの発生を効果的に防止できたとして「◎」で評価した。
Figure 0006199166
表1に示すように、比較例1,2ではエア溜まりが発生したのに対し、実施例1,2ではエア溜まりの発生が抑制されており、上記の如きベントホールの構成によりゴム流れが改善されたものと考えられる。
1 サイド成形面
2 トレッド成形面
3 凹部
10 タイヤ加硫金型
11 ベントホール
30 キャビティ
31 最小凹部
32 中間凹部
33 最大凹部
300 凹部列

Claims (6)

  1. タイヤのサイドウォール部に接するサイド成形面に、ピッチ長の異なる複数の凹部をタイヤ周方向に配列してなる凹部列と、前記凹部の底面で開口するベントホールとが設けられたタイヤ加硫金型において、
    前記凹部列を構成する複数の凹部のうち、ピッチ長が最小となる最小凹部に設けられたベントホールの径に比べて、ピッチ長が最大となる最大凹部に設けられたベントホールの径が大に設定されていることを特徴とするタイヤ加硫金型。
  2. 前記最小凹部に設けられたベントホールの径に、前記最小凹部のピッチ長に対する前記最大凹部のピッチ長の割合を乗じて得られる寸法と、前記最大凹部に設けられたベントホールの径との差が0.1mm以下である請求項1に記載のタイヤ加硫金型。
  3. 前記凹部列を構成する複数の凹部に、前記最小凹部のピッチ長よりも大きく且つ前記最大凹部のピッチ長よりも小さいピッチ長を有する中間凹部が含まれ、
    前記最小凹部に設けられたベントホールの径に比べて、前記中間凹部に設けられたベントホールの径が大に設定され、その中間凹部に設けられたベントホールの径に比べて、前記最大凹部に設けられたベントホールの径が大に設定されている請求項1又は2に記載のタイヤ加硫金型。
  4. 前記最大凹部に設けられたベントホールの径が2.2mm以下に設定されている請求項1〜3いずれか1項に記載のタイヤ加硫金型。
  5. 前記最小凹部に設けられたベントホールの径が0.6mm以上に設定されている請求項1〜4いずれか1項に記載のタイヤ加硫金型。
  6. 請求項1〜5いずれか1項に記載のタイヤ加硫金型のキャビティに未加硫タイヤをセットし、その未加硫タイヤに加熱加圧を施して加硫を行う工程を含むタイヤの製造方法。
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