JP6194647B2 - ステアリング制御装置 - Google Patents

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Description

本発明は、アシストトルクによって操舵感を調整するステアリング制御装置に関する。
従来、ドライバは操舵感(手感)から車両の状況を把握できることが知られている。操舵感の感じ方はドライバ毎に個人差があり、また路面状況の変化によっても異なるため、操舵感を調整する装置の開発が進められている。この種の装置として、予め設定されている操舵特性線図におけるパラメータをドライバが設定することにより、操舵感を調整するものがある(例えば、特許文献1参照)。
特許第4461630号公報
上述の操舵特性線図は、ステアリングの回動状態を表すパラメータである操舵トルク、操舵角等のパラメータと、操舵感を調整するためのアシストトルクを発生させるモータのモータ電流との関係を示すものである。
しかしながら、車両を構成する一部品であるモータのモータ電流をどのように変化させると操舵感がどのように変化するのかを意識して操舵感の調整を行うことは、ドライバには直感的に理解しにくい作業であるという問題があった。
本発明はこのような問題に鑑みてなされたものであり、ドライバが直感的に理解しやすい操作で操舵感を調整するステアリング制御装置を提供することを目的とする。
上記目的を達成するためになされたステアリング制御装置は、操舵部材に連結された操舵軸に加わる操舵トルクに応じたアシストトルクをモータにより出力することで操舵特性を制御するものである。調整トルク生成手段は、操舵トルクと操舵角との関係を規定する機械インピーダンスを調整するための調整トルクを生成する。
指令値生成手段は、調整トルク生成手段にて生成された調整トルクに基づいて、モータを制御するための指令値を生成する。指標値生成手段は、操舵部材の操舵時にドライバが受ける操舵感を示す操舵感指標値を生成する。ここで特に、調整トルク生成手段は、操舵感指標値に基づいて機械インピーダンスを補正するための調整トルクを生成する。
このような構成によれば、操舵特性を調整する指標としてドライバが受ける操舵感を示す操舵感指標値を用いるため、ドライバ及び操舵特性を調整しようとする操作者は、感覚的、直感的に操舵特性を調整することができる。
なお、特許請求の範囲に記載した括弧内の符号は、一つの態様として後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものであって、本発明の技術的範囲を限定するものではない。
電動パワーステアリングシステムの概略構成を示す構成図である。 ECUの制御機構の概略を示す構成図である。 ベースアシスト部の構成を示す構成図である。 操舵感指標の一例を示す説明図である。 負荷推定器の構成を示す構成図である。 剛性ベースマップの特性を例示するグラフである。 剛性重さ補正マップの特性を例示するグラフである。 剛性硬さ補正マップの特性を例示するグラフである。 剛性摩擦補正マップの特性を例示するグラフである。 (a)は剛性調整マップの特性を例示するグラフであり、(b)は剛性調整マップに従って剛性係数に相当する係数を変化させることによって操舵トルクから操舵角までの伝達特性が変化する様子を示したボード線図である。 指標生成部の概略構成を示す構成図である。 指標制御部が実行する処理(操舵感設定処理)を説明するフローチャートである。 入力部(タッチパネルディスプレイ)の表示の一例を示す説明図である。
以下に本発明の一実施形態を図面と共に説明する。
<全体構成>
本実施形態の電動パワーステアリングシステム1は、図1に示すように、ドライバによるハンドル(操舵部材)2の操作をモータ6によってアシストするものである。ハンドル2は、ステアリングシャフト3の一端に固定され、ステアリングシャフト3の他端にはトルクセンサ4が接続されており、このトルクセンサ4の他端には、インターミディエイトシャフト5が接続されている。なお、以下の説明では、ステアリングシャフト3からトルクセンサ4を経てインターミディエイトシャフト5に至る軸体全体を、まとめて操舵軸ともいう。また、以下では、操舵軸の回転角を舵角、操舵軸の回転角速度を操舵速度、操舵軸の回転角加速度を操舵加速度ともいう。
トルクセンサ4は、操舵トルクTsを検出するためのセンサである。具体的には、ステアリングシャフト3とインターミディエイトシャフト5とを連結するトーションバーを有し、このトーションバーのねじれ角に基づいてそのトーションバーに加えられているトルクを検出する。
モータ6は、ハンドル2の操舵力をアシスト(補助)するものであり、減速機構6aを介してその回転がインターミディエイトシャフト5に伝達される。すなわち、減速機構6aは、モータ6の回転軸の先端に設けられたウォームギアと、このウォームギアと噛み合った状態でインターミディエイトシャフト5に同軸状に設けられたウォームホイールとにより構成されており、これにより、モータ6の回転がインターミディエイトシャフト5に伝達される。逆に、ハンドル2の操作や路面からの反力(路面反力)によってインターミディエイトシャフト5が回転すると、その回転が減速機構6aを介してモータ6に伝達され、モータ6も回転することになる。
また、モータ6は、本実施形態ではブラシレスモータであり、内部にレゾルバ等の回転センサを備え、モータ6の回転状態を出力可能に構成されている。本実施形態のモータ6は、回転センサからの回転状態として、少なくともモータ速度ω(回転角速度を示す情報)を出力可能に構成されている。なお、モータ速度ωの代わりに、モータ速度ωに減速機構6aのギア比を乗じることで求められる操舵速度を用いてもよい。
インターミディエイトシャフト5における、トルクセンサ4が接続された一端とは反対側の他端は、ステアリングギアボックス7に接続されている。ステアリングギアボックス7は、ラックとピニオンギアからなるギア機構にて構成されており、インターミディエイトシャフト5の他端に設けられたピニオンギアに、ラックの歯が噛み合っている。そのため、ドライバがハンドル2を回すと、インターミディエイトシャフト5が回転(すなわちピニオンギアが回転)し、これによりラックが左右に移動する。ラックの両端にはそれぞれタイロッド8が取り付けられており、ラックとともにタイロッド8が左右の往復運動を行う。これにより、タイロッド8がその先のナックルアーム9を引っ張ったり押したりすることで、操舵輪である各タイヤ10の向きが変わる。
また、車両における所定の部位には、車速Vを検出するための車速センサ11が設けられている。
このような構成により、ドライバがハンドル2を回転(操舵)させると、その回転がステアリングシャフト3、トルクセンサ4、およびインターミディエイトシャフト5を介してステアリングギアボックス7に伝達される。そして、ステアリングギアボックス7内で、インターミディエイトシャフト5の回転がタイロッド8の左右移動に変換され、タイロッド8が動くことによって、左右の両タイヤ10が操舵される。
以下では、ハンドル2からタイヤ10に至る、ハンドル2の操舵力が伝達される機構全体を操舵系メカ100という。操舵系メカ100は、ECU15及び指標生成部16を備えるステアリング制御部50によって制御される(つまり操舵系メカ100は、図1に示したシステム構成図のうちステアリング制御部50を除く機構全体をいう)。
<ECU>
ECU15は、図示しない車載バッテリからの電力によって動作し、トルクセンサ4にて検出された操舵トルクTs、モータ6のモータ速度ω、および車速センサ11にて検出された車速Vに基づいて、アシストトルク指令Taを演算する。そして、その演算結果に応じた駆動電圧Vdをモータ6へ印加することにより、ドライバがハンドル2を回す力(ひいては両タイヤ10を操舵する力)のアシスト量を制御するものである。
本実施形態ではモータ6がブラシレスモータであるため、ECU15からモータ6へ出力(印加)される駆動電圧Vdは、詳しくは、3相(U、V、W)の駆動電圧Vdu、Vdv、Vdwである。ECU15からモータ6へこれら各相の駆動電圧Vdu、Vdv、Vdwを印加(各相の駆動電流を通電)することで、モータ6の回転トルクが制御される。ブラシレスモータを3相の駆動電圧で駆動(例えばPWM駆動)する方法やその3相の駆動電圧を生成する駆動回路(例えば3相インバータ)についてはよく知られているため、ここではその詳細説明は省略する。
ECU15は、直接的にはモータ6へ印加する駆動電圧Vdを制御することによりモータ6を制御するものであるが、モータ6を制御することで結果としてそのモータ6により駆動される操舵系メカ100を制御するものであると言え、よってECU15の制御対象はこの操舵系メカ100であると言える。
<ECUによる制御>
次に、ECU15の概略構成(制御機構)を図2のブロック図に基づいて説明する。なお、図2に示したECU15の制御機構のうち、電流フィードバック(FB)部42を除く各部、および電流FB部42の機能の一部は、実際には、ECU15が備える図示しないCPUが所定の制御プログラムを実行することによって実現されるものである。つまり、CPUによって実現される各種機能を機能ブロック毎に分けて図示したものが図2である。但し、これら各図に示した制御機構がソフトウェアにて実現されることはあくまでも一例であり、図2等に示した制御機構全体または一部を例えばロジック回路等のハードウェアにて実現するようにしてもよいことはいうまでもない。
ECU15は、図2に示すように、ベースアシスト指令Tb*を生成するベースアシスト部20と、補正トルク指令Trを生成する補正部30と、ベースアシスト指令Tb*と補正トルク指令Trを加算することによりアシストトルク指令Taを生成する加算器41と、アシストトルク指令Taに基づいてモータ6へ駆動電圧Vdを印加することによりモータ6を通電駆動する電流フィードバック(FB)部42と、を備えている。
ベースアシスト部20は、路面反力(路面負荷)に応じた操舵反力(操舵トルク)の特性の実現、すなわち路面負荷に対応した反応(反力)が準定常的にドライバへ伝達されるようにすることで車両の状態や路面の状態をドライバが把握しやすくなるようにすると共に、操舵状態に応じてドライバに与える手感(ハンドルからタイヤまでの感覚的硬さ、ねばり、重さ)を調整することで操舵感を向上させることを実現するためのブロックである。ベースアシスト部20は、操舵トルクTsとモータ速度ωと車速Vと指標生成部16から出力される操舵感指標値(u1、u2、u3)とに基づき、上述した路面負荷に応じた伝達感や操舵状態に応じた操舵感が実現されるようにハンドル2の操作をアシストするための、ベースアシスト指令Tb*を生成する。
補正部30は、ドライバのハンドル操作に対する車両運動特性や操舵メカ系の伝達を、ドライバの意図(具体的には車両が適切に収斂する、又はスムーズな車両旋回を発生させる等)に沿うようにするためのブロックである。補正部30は、操舵トルクTsとモータ速度ωと車速Vとに基づき、上述した不安定な挙動を抑制(収斂)するための補正トルク指令Trを生成する。
加算器41は、ベースアシスト部20で生成されたベースアシスト指令Tb*と補正部30で生成された補正トルク指令Trとを加算することにより、アシストトルク指令Taを生成する。
電流FB部42は、アシストトルク指令Taに基づき、そのアシストトルク指令Taに対応したアシストトルク(アシスト操舵力)が操舵軸(特にトルクセンサ4よりもタイヤ10側)に付与されるようにモータ6へ駆動電圧Vdを印加する。具体的には、アシストトルク指令Taに基づいて、モータ6の各相へ通電すべき目標電流(相毎の目標電流)を設定する。そして、各相の通電電流Imを検出・フィードバックして、その検出値(各相の通電電流Im)がそれぞれ目標電流と一致するように駆動電圧Vdを制御(通電電流を制御)することで、操舵軸に対して所望のアシスト操舵力を発生させる。
なお、このような補正部30および電流FB部42は公知の技術(例えば、特開2013−52793号公報参照)であるため、ここでは説明を省略し、以下では、本発明の主要部に関わるベースアシスト部20について詳述する。
<ベースアシスト部>
ベースアシスト部20は、図3に示すように、負荷推定器21と、基本負荷量演算部22と、ドライバ仕事率演算部23と、剛性調整量演算部24と、粘性調整量演算部25と、慣性調整量演算部26と、微分器261と、目標演算器27と、偏差演算器28と、コントローラ部29と、記憶部71とを備えている。
負荷推定器21は、ベースアシスト指令Tb*(アシストトルクに相当)と操舵トルクTsとに基づいて路面負荷を推定する。基本負荷量演算部22は、負荷推定器21にて推定された路面負荷(推定負荷Tx)と自車両の走行速度(車速V)とに基づいて、操舵トルクの目標値の基本成分である基本トルクTf*を生成する。
ドライバ仕事率演算部23は、モータ速度ωに減速機構6aのギア比を乗じることで求めた操舵速度に、操舵トルクTsを乗じることでドライバ仕事率Wを算出する。但し、操舵トルクTsおよびモータ速度ω(ひいては操舵速度)は、いずれもハンドル2を右回転させた場合と、左回転させた場合とで逆極性の値となる。また、操舵トルクTsは、Ts=0となるハンドル2の位置を中立位置として、中立位置から右回転させた場合と左回転させた場合とで逆極性の値となる。中立位置は、タイヤがグリップしている通常走行時には、車両を直進させる位置が中立位置となり、オーバステアによるスピン発生時にはタイヤが横滑りしている方向が中立位置となる。ここでは、右回転時に正、左回転時に負となるものとする。
従って、操舵トルクTsとモータ速度ωの極性が同じでありドライバ仕事率Wが正極性となる場合は、ハンドルを切り込む操作によって生じた値であること、操舵トルクTsとモータ速度ωの極性が異なっておりドライバ仕事率Wが負極性となる場合は、ハンドルを切り戻す操作によって生じた値であること、ドライバ仕事率Wがゼロであれば保舵の状態であることを表す。
つまり、ハンドルを中立位置から左右どちらかに切り込んだ場合、操舵トルクTs、モータ速度ωの極性は同じであるため、ドライバ仕事率Wは正極性の値となる。ハンドルを切った状態で保持すると(保舵の状態)、モータ速度ωは0であるため、ドライバ仕事率は0となる。この保舵の状態から、ハンドルを切り戻した場合、切り込んだときとはモータ速度ωの極性が反転し、操舵トルクTsとモータ速度ωの極性が互いに異なったものとなるため、ドライバ仕事率Wは負極性の値となる。なお、操舵トルクTsは、タイヤの向きが車両の進行方向から外れるほど大きな値となり、また、モータ速度ωが急な操舵を行うほど大きな値となり、これらの操作の度合い(操作量)に応じて、ドライバ仕事率Wの絶対値は大きな値をとる。
なお、操舵速度はモータ速度ωに比例した値であるため、モータ速度ωを操舵速度と見なして、モータ速度ωに操舵トルクTsを乗じたものをドライバ仕事率Wとして用いてもよい。
微分器261は、操舵速度に相当するモータ速度ωを微分することで操舵加速度に相当するモータ加速度αを生成する。
記憶部71は、指標生成部16から入力された操舵感指標の指標値(u1、u2、u3)を記憶し、記憶した指標値(u1、u2、u3)を、剛性係数演算部24a、粘性係数演算部25a、及び慣性係数演算部26aに出力する。記憶部71に記憶される操舵感の指標値(u1、u2、u3)は、指標生成部16からの出力によって更新される。
操舵感指標は、ドライバが直感的、感覚的に理解できるように設定された、操舵感を調整するための指標であり、本実施形態では、図4に示すように、「重さ」、「硬さ」、「摩擦」の3つの指標が用いられる。以下では、「重さ」についての指標値である重さ指標値u1、「硬さ」についての指標値である硬さ指標値u2、及び「摩擦」についての指標値である摩擦指標値u3をまとめて、操舵感指標値(u1、u2、u3)という。
図3に戻り、剛性調整量演算部24は、ドライバ仕事率Wと推定負荷Txと車速Vと操舵感指標値(u1、u2、u3)とに基づいて、目標操舵トルクTs*に含まれる調整成分の一つであり、操舵時にドライバに与える操舵系メカ100の剛性感を調整するための剛性調整トルクTk*を生成する。粘性調整量演算部25は、ドライバ仕事率Wとモータ速度ωと車速Vと操舵感指標値(u1、u2、u3)とに基づいて、目標操舵トルクTs*に含まれる調整成分(調整トルク)の一つであり、操舵時にドライバに与える操舵系メカ100の粘性感を調整するための粘性調整トルクTc*を生成する。慣性調整量演算部26は、ドライバ仕事率Wとモータ加速度αと操舵感指標値(u1、u2、u3)とに基づいて、目標操舵トルクTs*に含まれる調整成分の一つであり、操舵時にドライバに与える操舵系メカ100の慣性感を調整するための慣性調整トルクTi*を生成する。
目標演算器27は、基本トルクTf*、剛性調整トルクTk*、粘性調整トルクTc*、慣性調整トルクTi*を加算して目標操舵トルクTs*を演算する。偏差演算器28は、操舵トルクTsと目標操舵トルクTs*との差であるトルク偏差を演算する。コントローラ部29は、微分器や積分器等を備えており、ハンドル操作時にドライバに与える路面負荷に応じた伝達感や操舵状態量に応じた操舵感を調整するための出力を生成する。
コントローラ部29は、トルク偏差(操舵トルクTsと目標操舵トルクTs*との差)に基づき、トルク偏差が0になるよう、すなわち操舵トルクTsが目標操舵トルクTs*に追従するように制御することで、路面負荷に応じた伝達感や操舵状態量に応じた操舵感を実現するアシストトルク(アシスト量とも言う)を発生させるためのベースアシスト指令Tb*を生成する。
負荷推定器21は、図5に示すように、ベースアシスト指令Tb*と操舵トルクTsとを加算する加算器21aと、その加算結果から所定の周波数以下の帯域の成分を抽出するローパスフィルタ(LPF)21bとを備え、このLPF21bにより抽出された周波数成分を推定負荷Txとして出力する。通常、ドライバは、主に10Hz以下の操舵反力情報を頼りに運転をしているため、LPF21bは、概ね10Hz以下の周波数成分を通過(抽出)させ、10Hzより高い周波数成分は遮断するように設定されている。
図3に戻り、基本負荷量演算部22は、路面反力に応じてドライバがハンドル操作を重いまたは軽いと感じることができるようにするための、或いは路面反力の上昇に対するドライバの操舵反力(或いは操舵トルク)の上昇度合い(勾配)を実現するための、基本トルクTf*を生成するものである。本実施形態の基本負荷量演算部22は、実際には、推定負荷Txおよび車速Vに対応する基本トルクTf*がマップ化されており、そのマップをもとに基本トルクTf*を生成する。
する。
ところで、機械インピーダンス(剛性係数、粘性係数、慣性係数)は、物体に加わる力Fと、物体の変位量xとの関係を規定するものであり、(1)式の関係式によって表される。特に回転運動の場合では、Fは物体に加わるトルク、xは物体の回転量と見なす。
xは操舵角(モータの回転角)、その1回微分値は操舵速度(モータ速度ω)、その2回微分は操舵加速度(モータ加速度α)を表す。つまり、剛性調整量演算部24、粘性調整量演算部25、慣性調整量演算部26は、(1)式に従ってハンドル操作時にドライバに与える操舵感の調整に必要なトルク(以下、操舵感調整トルクTsf*という。操舵感調整トルクTsf*は、剛性調整トルクTk*、粘性調整トルクTc*、慣性調整トルクTi*を加算したトルクに相当する)を求めるものである。
但し、本実施形態では、(2)式に示すように、剛性調整トルクTk*の算出に、操舵角xではなく推定負荷Txを使用しているため、剛性係数の代わりに剛性係数に相当する剛性相当係数Kが用いられている。なお、操舵角xと剛性相当係数Kの関係は、操舵系メカ100の特性を表す関係式から簡単に求めることができる。
剛性調整量演算部24は、剛性係数演算部24aと乗算器24bを備える。
剛性係数演算部24aは、ドライバ仕事率W、車速V、および操舵感指標値(u1、u2、u3)に応じて、ハンドル操作時にドライバに与える剛性感(ばね感)を調整するための剛性相当係数K(機械インピーダンスの剛性係数に相当する値、(2)式参照)を生成する。乗算器24bは、剛性相当係数Kに推定負荷Txを乗じることで剛性調整トルクTk*を生成する。つまり、剛性相当係数Kは、路面負荷(推定負荷Tx)に対する調整係数といえる。
簡単のため、以下では車速Vがある一定値である場合について説明する。剛性係数演算部24aは、(3a)〜(3c)式に示すように、ドライバ仕事率Wに応じて、予め用意された基本剛性相当係数K0を、操舵感指標値(u1、u2、u3)に対応して生成される付加剛性相当係数K1、K2、K3で調整することにより、剛性相当係数Kを生成するように構成されている。
Stiffness(W)、BaseMap(W)、AddMap1(W)、AddMap2(W)、AddMap3(W)は、ドライバ仕事率Wの関数として用意してもよいし、マップとして用意してもよい。本実施形態では、これらはマップとして用意されており、順に、剛性調整マップ、剛性ベースマップ、剛性重さ付加マップ、剛性硬さ付加マップ、剛性摩擦付加マップというものとする。つまり本実施形態では、剛性相当係数Kを生成する際に用いる、剛性重さ付加マップ、剛性硬さ付加マップ、剛性摩擦付加マップの重み付けを、操舵感指標値(u1、u2、u3)によって変化させている。
例えば、剛性ベースマップは、図6に示すものが用いられ、剛性重さ付加マップ、剛性硬さ付加マップ、剛性摩擦付加マップは、図7〜図9に示すものが用いられる。ここで、剛性硬さ付加マップは、図8に示すように、硬さ指標値u2の増加に対して、ハンドルの切り込み(W>0)に従って所定の割合で剛性を増加させるように設定されている。
剛性調整マップは、これらのマップを組み合わせたものであり、例えば、操舵感指標値(u1、u2、u3)がu1=0.6、u2=0.8、u3=−0.25に設定されている場合(図4参照、以下補正モードという)、図10(a)に示すマップとなる。この場合、操舵感指標値(u1、u2、u3)がu1=0、u2=0、u3=0に設定されているとき(以下、基準モードという)に比べて、ハンドルの切り込み(W>0)時に剛性が増加し、より「硬さ」の感覚が付与されるようになっている。また、この剛性調整マップに従って剛性係数に相当する係数を変化させることによって操舵トルクから操舵角までの伝達特性が変化する様子を示したボード線図は、図10(b)に示すものとなる。
ここでは、ドライバ仕事率が30Wのときの各モードにおける伝達特性を示している。伝達特性において剛性係数の特徴が表現される部位、すなわち定常ゲインが補正モードのほうが小さくなっている。剛性が大きくなるほど定常ゲインは小さくなるものなので、剛性調整マップによって、確かに剛性が調整できていることがここからわかる。
なお、図6〜10に示したマップは、上述のように、車速Vがある一定値である場合について示したものである。従って、実際には上述のマップに示した特性は車速Vによって変化する。
粘性調整量演算部25は、粘性係数演算部25aと乗算器25bを備える。粘性係数演算部25aは、ドライバ仕事率W、車速V、および操舵感指標値(u1、u2、u3)に応じて、ハンドル操作時にドライバに与える粘性感を調整するために使用する粘性係数Cを生成する。乗算器25bは、粘性係数Cに操舵速度に相当するモータ速度ωを乗じることで粘性調整トルクTc*を生成する((2)式参照)。
粘性係数演算部25aは、剛性相当係数Kと同様に、ドライバ仕事率Wに応じて、予め用意された基本粘性係数C0を、操舵感指標値(u1、u2、u3)に対応して生成される付加粘性係数C1、C2、C3で調整することにより、粘性係数Cを生成するように構成されている((3)式参照)。本実施形態では、基本粘性係数C0、付加粘性係数C1、C2、C3は、それぞれ、予め用意された粘性ベースマップ、粘性重さ付加マップ、粘性硬さ付加マップ、粘性摩擦付加マップを用いて生成される。
つまり、粘性係数演算部25aは、粘性係数Cを生成する際に用いる、粘性重さ付加マップ、粘性硬さ付加マップ、粘性摩擦付加マップの重み付けを、操舵感指標値(u1、u2、u3)によって調整している。なお、剛性相当係数Kと同様に、粘性係数Cは車速Vによって変化する。
慣性調整量演算部26は、慣性係数演算部26aと乗算器26bを備える。慣性係数演算部26aは、ドライバ仕事率Wおよび操舵感指標値(u1、u2、u3)に応じて、ハンドル操作時にドライバに与える慣性感を調整するための慣性係数Iを、慣性調整マップを用いて生成する。乗算器26bは、微分器261によって生成されたモータ加速度αに慣性係数Iを乗じることで慣性調整トルクTi*を演算する。
慣性係数演算部25aは、剛性相当係数Kと同様に、ドライバ仕事率Wに応じて、予め用意された基本慣性係数I0を、操舵感指標値(u1、u2、u3)に対応して生成される付加慣性係数I1、I2、I3で調整することにより、慣性係数Iを生成するように構成されている((3)式参照)。本実施形態では、基本慣性係数I0、付加慣性係数I1、I2、I3は、それぞれ、予め用意された慣性ベースマップ、慣性重さ付加マップ、慣性硬さ付加マップ、慣性摩擦付加マップを用いて生成される。
つまり、慣性係数演算部26aは、慣性係数Iを生成する際に用いる、慣性重さ付加マップ、慣性硬さ付加マップ、慣性摩擦付加マップの重み付けを、操舵感指標値(u1、u2、u3)によって調整している。ここで、剛性相当係数K及び粘性係数Cとは異なり、慣性係数Iは車速Vによって変化しない。ただし、慣性係数Iを変化させるパラメータとして、剛性相当係数K及び粘性係数Cと同様に、ドライバ仕事率Wに加えて車速Vを用いてもよい。
このように、剛性調整量演算部24、粘性調整量演算部25、慣性調整量演算部26は、(4a)〜(4c)式に示すように、記憶部71に記憶されている操舵感指標値(作用指標値)(u1、u2、u3)に対応するように、操舵感調整トルクTsf*を表現する機械インピーダンスの剛性相当係数K、粘性係数C、慣性係数I(基本調整特性)を調整している。
<指標生成部>
指標生成部16は、操舵感指標値(u1、u2、u3)を生成し、生成した操舵感指標値(u1、u2、u3)をECU15に出力する(書き込む)ように構成されている。
具体的には、指標生成部16は、図11に示すように、ドライバや操作者からの設定指令が入力される入力部65と、外部記憶装置である外部サーバ80との通信を行う送受信部66と、入力部65が出力する設定指令を受け付け、該設定指令に従って操舵感指標値を設定し、これをECU15に出力する(書き込む)指標制御部60とを備える。入力部65は、ドライバが操作するタッチパネルディスプレイからなり、送受信部66は無線による通信装置からなるものとする。
<指標制御部による制御>
指標制御部60は、CPU61、ROM62、RAM63等を備える周知のマイクロコンピュータからなる。指標制御部60は、例えば、ドライバによるタッチパネルディスプレイ65の操作によって操舵感設定モードボタン(図示せず)が選択されることをきっかけとして、操舵感設定処理を実行する。次に、図12に示すフローチャートと、図13に示すタッチパネルディスプレイ65の表示の一例とを用いて、操舵感設定処理について説明する。
はじめにS110では、タッチパネルディスプレイ65の画面を図13に示すように切り替える。ここでは、画面の左側に、「スポーツモード」、「ラグジュアリーモード」、「スノーモード」、「カスタムモード」等のように、操舵感モードの名称の一覧(以下、操舵感モード一覧という)を表示する。また、画面下部に、「ダウンロード」、「アップロード」、「編集」、及び「決定」の各動作モードに切り替える動作モード切替ボタンを表示する。
そして、ドライバによるカーソルの操作によって操舵感モード一覧のうち一つが選択されると、画面右側に、カーソルにより選択されている操舵感モードの説明(モード説明)と、この操舵感モードでの操舵感指標値(u1、u2、u3)とを表示する。操舵感モード一覧のデータ、すなわち各操舵感モードの名称、これに対応するモード説明及び操舵感指標値(u1、u2、u3)は、予めRAM63に記憶されている。
画面上にて、操舵感指標は、例えば「重さ」であれば、軽いから重いまでのレベルを示す直線、「硬さ」であれば、柔らかいから硬いまでのレベルを示す直線、「摩擦」であれば、すっきりからしっとりまでのレベルを示す直線で表示され、直線上には操舵指標のレベルを示す位置にマーカーが表示される。本実施形態では、例えば「重さ」という操舵感指標について、「軽い」=−1、「重い」=1、真ん中=0のように指標値が割り当てられている。同様に、「硬さ」、「摩擦」という操舵感指標についても、1から−1の範囲で指標値が割り当てられている。つまり、マーカーの位置に対応する指標値が、操舵感指標値に相当する。
次にS115では、操舵感モード一覧のうち、いずれか一つが選択されたか否かを判断する。具体的には、カーソルによりいずれか一つの操舵感モードが選択された状態で「決定」ボタンが選択されたか否かを判断する。ここで、「決定」ボタンが選択された場合はS130に移行する。一方、「決定」ボタンが選択されなかった場合はS120に移行する。以下では、「決定」ボタンが選択されたときに、カーソルにより選択されている操舵感モードを選択操舵感モードという。
続くS120では、ダウンロードを実行するか否かを判断する。具体的には、所定時間内に「ダウンロード」ボタンが選択されたか否かを判断し、ここで、所定時間内に「ダウンロード」ボタンが選択された場合、S125に移行する。一方、所定時間内に「ダウンロード」ボタンが選択されなかった場合、本処理を終了する。
S120にて「ダウンロード」ボタンが選択された場合に移行するS125では、送受信部66を用いて外部サーバ80に記憶されている操舵感モードに関する詳細データ(操舵感モードの名称、そのモードについてのモード説明及び操舵感指標値(u1、u2、u3))である既成操舵感データのダウンロードを実行する。そして、ダウンロードした既成操舵感データを追加するように、RAM63に記憶されている操舵感モード一覧のデータを更新する。その後S110に移行する。
S115にて操舵感モードが選択された場合に移行するS130では、アップロードを実行するか否かを判断する。具体的には、「アップロード」ボタンが選択されたか否かを判断する。ここで、「アップロード」ボタンが選択された場合はS135に移行する。S135では、選択操舵感モードに関する詳細データを、送受信部66を用いて外部サーバ80にアップロードする。
S130にて「アップロード」ボタンが選択されなかった場合に移行するS140では、編集を受け付けるか否かを判断する。具体的には、「編集」ボタンが選択されたか否かを判断し、ここで、「編集」ボタンが選択された場合、S150に移行する。一方、「編集」ボタンが選択されなかった場合、S145に移行する。S145では、選択操舵感モードについて操舵感指標値(u1、u2、u3)をECU15に出力する。そして本処理を終了する。
S140にて「編集」ボタンが選択された場合に移行するS150では、新たな認識名称(以下、新認識名称という)をドライバに入力させるためのウィンドウを表示し、ウィンドウにて入力された新認識名称と、選択操舵感モードのモード説明及び操舵感指標値(u1、u2、u3)とを、新識名称の操舵感モードの詳細データとしてRAM63に記憶する。そして、新認識名称の操舵感モードの詳細データをタッチパネルディスプレイの右画面に表示する。
続くS155では、操舵感指標のレベルを示すマーカーを左右に移動可能とし、マーカーの位置に対応する指標値を新たに操舵感指標値として取得しRAM63に記憶する。これにより、ドライバは、マーカーを左右にスライドさせることによって容易に操舵感指標値を設定することができる。
また、S155では、モード説明が表示されている箇所がカーソルによって選択されると、モード説明を編集させるためのウィンドウを表示し、ウィンドウに入力された内容を新たなモード説明としてRAM63に記憶する。これにより、ドライバは、モード説明が表示されている箇所をカーソルで選択し、表示されたウィンドウへの入力を行うことで、容易にモード説明の編集を行うことができる。
次にS160では、編集された操舵感モード(新認識名称の操舵感モード)に変更するか否かを判断する。具体的には「決定」ボタンが選択されたか否かを判断する。ここで「決定」ボタンが選択さなかった場合、S110に移行する。一方、「決定」ボタンが選択された場合、S165に移行する。S165では、新認識名称の操舵感モードの操舵感指標値(u1、u2、u3)をECU15に出力する。そして本処理を終了する。
つまり、指標制御部60は、ドライバによるカーソル、動作モード切替ボタン及びマーカーの操作に従って、RAM63に記憶されている既存の操舵感モードを選択して該モードの操舵指標値(u1、u2、u3)をECU15に出力する処理、外部サーバより既成操舵感データをダウンロードして該データの操舵指標値(u1、u2、u3)をECU15に出力する処理、既存及びダウンロードした操舵感モードのデータを編集して新規の編集操舵感データとし、該編集操舵感データの操舵指標値(u1、u2、u3)をECU15に出力する処理、を実行する。
<効果>
以上説明したように、本実施形態では、操舵特性を調整する操舵感指標として、「重さ」、「硬さ」、「摩擦」のように、ドライバが受ける操舵感を示す指標が用いられており、これらの操舵感指標は機械インピーダンス特性に対応付けられている。そして、ステアリング制御部50は、対応付けられた機械インピーダンス特性をモータ制御によって実現するように構成されている。
このため、操舵感指標値(u1、u2、u3)を設定することによって、操舵感と直接結びつかないパラメータ(例えば、モータ電流や舵角比等の機械的なパラメータ)を設定する従来装置と比べて、より素早く、感覚的、直感的に操舵特性を調整することができる。
本実施形態では、指標生成部16は、タッチパネルディスプレイ65を介して、ドライバ(操作者)からの設定指令を受け付け、受け付けた設定指令に従って操舵感指標値(u1、u2、u3)を調整するように構成されている。これにより、調整された指標値(操作者設定指標値)に従って、ドライバ(操作者)の好みに応じて操舵感を設定することができる。また、タッチパネルディスプレイ65を用いることにより、ドライバ(操作者)は容易に操舵感を調整することができる。
本実施形態では、指標生成部16は、送受信部66によって、外部サーバ80に記憶されている既成操舵感データをダウンロードするように構成されている。そして、ダウンロードした既成操舵感データにおける操舵感指標値(既成指標値)に基づき操舵特性を設定するように構成されている。さらに、指標生成部16は、ダウンロードした既成操舵感データを調整(編集)して新たに編集操舵感データを生成し、この編集操舵感データにおける操舵感指標値(操作者設定指標値)に基づき操舵特性を設定するように構成されている。
これにより、例えば予めROMに記憶された数種類のモードについて操舵指標値を調整する場合と比べて、市街地、ワインディング路、高速道路といった道路による走行パターンの変化、雨や雪による路面状況の変化等、種々の走行状況に適応した操舵特性を設定することがきる。また、ドライバ(操作者)の性別、年齢、嗜好に、より細やかに対応した操舵特性を設定することができる。
本実施形態では、指標生成部16は、送受信部66によって、編集操舵感データを外部サーバ80にアップロードするように構成されている。これにより、他のドライバ(操作者)との間で編集操舵感データを共有することができる。
また本実施形態では、電動パワーステアリングシステム1は、ベースアシスト部20が路面負荷(推定負荷Tx)に応じた反力をドライバへ伝達する成分と、ドライバ仕事率Wに応じて操舵系メカ100の機械インピーダンスを調整する成分とから、アシストトルクの発生源となるモータ6を制御するベースアシスト指令Tb*を生成している。
これにより、電動パワーステアリングシステム1は、ハンドル操作時にドライバに対して、路面負荷に応じた伝達感や操舵状態に応じた操舵感を的確に提供することができる。しかも、機械インピーダンスを変化させるパラメータとして切り込み、切り戻し、保舵等の操舵状態を識別可能なドライバ仕事率Wを用いているため、操舵状態毎に制御を切り替える必要がなく、簡易な制御によって細やかに操舵感の調整を行うことができる。
<請求項との対応>
ECU15及び指標生成部16を備えるステアリング制御部50が、ステアリング制御装置に相当する。指標生成部16が指標値生成手段に相当し、ドライバ仕事率演算部23が操舵状態量生成手段に相当し、剛性調整量演算部24、粘性調整量演算部25、慣性調整量演算部26が調整トルク生成手段に相当し、負荷推定器21、基本負荷量演算部22、目標演算器27、偏差演算器28、コントローラ部29が指令値生成手段に相当する。
また、タッチパネルディスプレイ65が入力手段に相当し、送受信部66がアップロード手段に相当し、記憶部71が記憶手段に相当する。
<他の実施形態>
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されることなく、種々の形態を採り得ることは言うまでもない。例えば、一つの構成要素が有する機能を複数の構成要素に分散させたり、複数の構成要素が有する機能を一つの構成要素に統合したりしてもよい。また、上記実施形態の構成の少なくとも一部を、同様の機能を有する公知の構成に置き換えてもよい。
指標生成部16は、上記実施形態に示す構成に限るものではない。指標生成部は、必要に応じて車両に接続される外部装置であってもよいし、車載ナビゲーション装置等の車両に搭載されている既存の装置に、指標生成部としての機能を持たせることで実現してもよい。また、入力部65は、例えば、車両に搭載されている既存の各種入力装置を利用してもよい。または、入力部65を携帯電話を利用するように構成し、携帯電話を利用した無線通信により取得した操舵感指標値をECU15に出力するように指標生成部を構成してもよい。また、入力部65を携帯電話で構成する場合、送受信部66の機能を該携帯電話が備えるように構成してもよい。
上記実施形態では、操舵感指標として「重さ」、「硬さ」、「摩擦」という3つの指標を用いたが、操舵感指標及びその数はこれに限るものではない。操舵感指標は、操舵部材の操作によってドライバが受ける感覚に直接結びつく指標であればよい。
上記実施形態では、機械インピーダンスを変化させるパラメータとして、操舵トルクTsと操舵速度(モータ速度ω)の積からなるドライバ仕事率Wを用いているが、これに限るものではなく、操舵軸の回転角に応じて増減する第1の物理量と、操舵軸の回転速度に応じて増減する第2の物理量との積によって求められる操舵状態量であればよい。第1の物理量としては、上記実施形態で用いた操舵トルクTsの他に、ヨーレート、横加速度、操舵角等を用いてもよい。また、第2の物理量としてはハンドルに連動して変位する部位の変位速度であればよい。
上記実施形態では、ベースアシスト部20で生成されたベースアシスト指令Tb*に補正部30で生成された補正トルク指令Trを加えたものを電流FB部42に供給するアシストトルク指令Taとしているが、補正部30を省略し、ベースアシスト指令Tb*をそのままアシストトルク指令Taとするように構成してもよい。
上記実施形態では、機械インピーダンスとして剛性係数、粘性係数、慣性係数の全てを調整しているが、いずれか一つまたはいずれか二つの係数を調整するように構成してもよい。
上記実施形態では、負荷推定器21において、ベースアシスト指令Tb*と操舵トルクTsから推定負荷Txを生成しているが、ベースアシスト指令Tb*の代わりに電流FB部42で検出される通電電流Imを用いてもよい。
上記実施形態では、基本トルクTf*を、推定負荷Txから生成しているが、操舵角から生成するように構成してもよい。
上記実施形態では、基本トルクTf*と、機械インピーダンス調整用のトルクTk*,Tc*,Ti*を別々に求めた後、これらを加算して目標操舵トルクTs*を生成しているが、機械インピーダンスを反映した規範操舵モデルを用いて操舵角から目標操舵トルクTs*を求めるように構成されたシステムに本発明を適用してもよい(例えば、特許4232471号公報参照)。この場合、規範操舵モデル中で使用される機械インピーダンスを、操舵状態量(例えば、ドライバ仕事率W)によって調整するように構成すればよい。
上記実施形態では、本発明をEPSに適用した例を示したが、これに限定されるものではなく、ハンドルと操舵輪とが機械的に切り離された構成を有するステア・バイ・ワイヤに適用してもよい。この場合、基本トルクTf*を用いることなく、剛性調整トルクTk*と粘性調整トルクTc*と慣性調整トルクTi*を加算したものを目標操舵トルクTs*とすればよい。
1…電動パワーステアリングシステム 2…ハンドル 3…ステアリングシャフト 4…トルクセンサ 5…インターミディエイトシャフト 6…モータ 6a…減速機構 7…ステアリングギアボックス 8…タイロッド 9…ナックルアーム 10…タイヤ 11…車速センサ 16…指標生成部 20…ベースアシスト部 21…負荷推定器 21a,41…加算器 21b…LPF 22…基本負荷量演算部 23…ドライバ仕事率演算部 24…剛性調整量演算部 24a…剛性係数演算部 24b,25b,26b…乗算器 25…粘性調整量演算部 25a…粘性係数演算部 26…慣性調整量演算部 26a…慣性係数演算部 26b…乗算器 27…目標演算器 28…偏差演算器 29…コントローラ部 30…補正部 41…加算器 42…電流フィードバック部 50…操舵特性調整システム 60…操舵制御ECU 61…CPU 62…ROM 63…RAM 65…入力部(タッチパネルディスプレイ) 66…送受信部 71…記憶部 80・・・外部サーバ 100…操舵系メカ 261…微分器

Claims (9)

  1. 操舵部材(2)に連結された操舵軸(3、5)に加わる操舵トルクに応じたアシストトルクをモータ(6)によって出力することで操舵特性を制御するステアリング制御装置(15)であって、
    前記操舵軸に加わる操舵トルクと操舵角との関係を規定する機械インピーダンスを調整するための調整トルクを生成する調整トルク生成手段(24、25、26)と、
    前記調整トルク生成手段にて生成された調整トルクに基づいて、前記モータを制御するための指令値を生成する指令値生成手段(21、22、27、28、29)と、
    前記操舵部材の操舵時にドライバに受けさせようとする操舵感を示す操舵感指標値であって、ドライバを含む操作者が設定する複数の操舵感指標値を取得する指標値取得手段(16)と、
    を備え、
    前記調整トルク生成手段は、前記複数の操舵感指標値に基づいて、前記機械インピーダンスを調整するための調整トルクを生成し、
    前記指令値生成手段は、少なくとも前記調整トルクを含んだ目標操舵トルクを生成し、前記指令値は、前記目標操舵トルクに前記操舵トルクを追従させるためのものであり、
    前記目標操舵トルクは、基本トルクと、前記調整トルクとを含み、前記基本トルクは、前記目標操舵トルクに前記操舵トルクを追従させるためのトルクを示すアシストトルクを前記モータに発生させるための指令値と操舵トルクとに基づいて算出される路面負荷と、車速と、を用いて算出されることを特徴とするステアリング制御装置。
  2. 前記指標値生成手段により生成された操舵感指標値を記憶する記憶手段(71)を備え、
    前記調整トルク生成手段は、前記記憶手段に記憶されている操舵感指標値に基づいて、前記機械インピーダンスを調整するための調整トルクを生成することを特徴とする請求項に記載のステアリング制御装置。
  3. 前記操舵部材に加わる操作を表す操舵状態量を生成する操舵状態量生成手段(23)を備え、
    前記調整トルク生成手段は、前記操舵状態量に基づいて前記機械インピーダンスを調整するための調整トルクを生成することを特徴とする請求項または請求項に記載のステアリング制御装置。
  4. 前記操舵状態量は、前記操舵軸の回転量に応じて増減する第1の物理量と、前記操舵軸の回転速度に応じて増減する第2の物理量との積であることを特徴とする請求項に記載のステアリング制御装置。
  5. 前記操舵状態量は、前記第1の物理量として前記操舵トルク、前記第2の物理量として前記操舵軸の角速度を用いて求めたドライバ仕事率であることを特徴とする請求項に記載のステアリング制御装置。
  6. 前記調整トルク生成手段は、前記機械インピーダンスとして剛性係数、粘性係数、慣性係数のうち少なくとも一つを調整することを特徴とする請求項1乃至請求項のいずれか1項に記載のステアリング制御装置。
  7. 前記指標値生成手段は、外部からの入力により操舵感指標値を生成することを特徴とする請求項1乃至のいずれか1項に記載のステアリング制御装置。
  8. 前記指標値生成手段は、外部に記憶されている操舵感指標値をダウンロードし、操舵感指標値を生成することを特徴とする請求項1乃至のいずれか1項に記載のステアリン
    グ制御装置。
  9. 前記指標値生成手段は、生成した操舵感指標値を外部記憶装置にアップロードするアップロード手段(66)を備えることを特徴とする請求項1乃至のいずれか1項に記載のステアリング制御装置。
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