以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
なお、本発明においては、磁壁移動素子を磁気ランダムアクセスメモリ(MRAM)のメモリセルに用いた場合を磁気(磁壁移動型)メモリセルと呼ぶ。
(第1の実施の形態)
図1は本発明の第1の実施の形態に係る磁壁移動素子(磁気メモリセル)を示す図で、(A)は概略平面図及び(B)は(A)の磁壁移動素子の断面図、(C)は(B)の部分拡大断面図である。
図1(A)及び(B)を参照すると、本発明の第1の実施の形態に係る磁壁移動素子20は、記録層1、記録層1の第1磁化固定領域5の磁化を固定する第1固定層2、及び記録層1の第2磁化固定領域6の磁化を固定する第2固定層3を備えた磁壁移動素子本体10と、センス層11、トンネルバリア層12、及びリファレンス層13をこの順で積層した磁気トンネル結合(MTJ)15と、磁場印加手段として外部磁場印加機構8とを備える。
磁壁移動素子本体10は、第1固定層2及び第2固定層3に夫々設けられた第1端子(T1)16、第2端子(T2)17を有する。
また、MTJ15は、センス層11、トンネルバリア層12、及びリファレンス層13の積層方向両端には、第3端子(T)18、第4端子(T4)19を備える。
尚、+Z方向(第1の方向)は、基板の裏面から表面への基板に垂直な方向であり、−Z方向(第2の方向)はこれと反平行な方向である。X及びY方向は、Z方向に垂直な水平方向として定義される。X方向は、互いに反平行な+X方向(第3の方向)及び−X方向を有する。また、Y方向は、互いに反平行な+Y方向(第4の方向)及び−Y方向(第5の方向)を有する。さらに、X方向は素子の長手方向であり、Y方向は、X方向及びZ方向に垂直な方向として定義される。
また、図中矢印14は各磁性層の磁化方向を示している。また、磁化の状態としては、初期磁化状態を示している。
磁壁移動素子本体10の記録層1は、内部を磁壁7が移動可能である。記録層1は、第1磁化固定領域5、第2磁化固定領域6、及び反転領域4を備える。
第1磁化固定領域5は、第1固定層2により+Z方向に磁化が保持され、書き込み、及び、読み出し動作によって変化しない。
また、第2磁化固定領域6は、第2固定層3により―Z方向に磁化が保持され、書き込み、及び、読み出し動作によって変化しない。
また、反転領域4は、第1磁化固定領域5と第2磁化固定領域6との間に設けられ、磁化方向が+Z方向及び−Z方向のいずれか一方に変更可能である。
第1端子(T1)16は、第1磁化固定領域5に接続された電流端子である。また、第2端子(T2)17は、第2磁化固定領域6に接続された電流端子である。
記録層1は、磁性膜として、強磁性体からなる強磁性層(図1(c)の符号21参照)を有する。より詳細には、この強磁性層は、垂直磁気異方性を有する垂直磁化膜で形成される。
記録層1の強磁性層の材料は、Fe、Co、Niのうちから選択される少なくとも1つ以上を含むことが望ましく、Co/Ni積層膜、Co/Pd積層膜、Co/Pt積層膜、Co−Cr−Pt合金、Co−Fe−B合金などが例示される垂直磁気異方性を有する薄膜を用いる。
さらに、図1(A)及び(B)には図示を省略されているが、図1(C)に示すように、記録層1は、強磁性層21の上下に層22,23を有する。上下の層22,23のうちの少なくとも一方の層はPt、Pd、Au、Agを含む第1グループか又はTa、W、Nb、Moを含む第2グループから選択された少なくとも一種の重金属が望ましい。
また、記録層1の強磁性層21の上下の層22,23の他方はMg−O、Al−Oなどの酸化金属が望ましい。
このような構成により、記録層1は、重金属層22、強磁性層21、酸化された金属層23からなる非対称な三層構造によるラシュバ場、もしくは、重金属層のスピンホール効果によるスピン流注入のいずれかの現象を発現することができる。
図1(B)に最もよく示されるように、第1固定層2および第2固定層3は、強磁性体で形成される。より詳細には、垂直磁気異方性を有する垂直磁化膜で形成される。第1固定層2及び第2固定層3の材料は、磁化の向きが反転可能な磁化自由層(フリー層)と同様である。尚、第1及び第2固定層2,3の磁化は固定されており、書き込み、及び、読み出し動作によって変化しない。
次に、MTJ15について説明する。
まず、センス層11は、強磁性体で形成される。より詳細には、面内磁気異方性を有する面内磁化膜で形成される。センス層11の材料は、Fe、Co、Niのうちから選択される少なくとも1つ以上を含むことが望ましい。より具体的には、センス層11は、Ni−Fe合金、Co−Fe−B合金、Co−Fe合などが例示される面内磁気異方性を有する薄膜を用いる。また、センス層11は、磁化方向が+Y方向及び−Y方向のいずれか一方に変更可能である。
また、リファレンス層13は、強磁性体で形成される。より詳細には、面内磁気異方性を有する面内磁化膜で形成される。リファレンス層13の材料は、センス層11の場合と同様である。尚、リファレンス層13の磁化は固定されており、書き込み、及び、読み出し動作によって変化しない。そのため、リファレンス層13は、強磁性層、非磁性層、及び強磁性層からなる積層膜であってもよい。その積層膜の2つの強磁性層の磁化は、反強磁性結合によって互いに反平行に向くように設定してもよい。
さらに、トンネルバリア層12は、非磁性層である。好適には、トンネルバリア層は絶縁膜で形成され、その材料としてはMg−O、Al−O、Ni−O、Hf−Oが例示される。このトンネルバリア層はセンス層とリファレンス層に挟まれており、これらセンス層11、トンネルバリア層12、リファレンス層13によって磁気トンネル接合(MTJ)が形成されている。尚、トンネルバリア層12の材料として、非磁性の半導体や金属材料が形成されている。
第3端子(T3)18は、センス層11に接続された電流端子である。また、第4端子(T4)は、リファレンス層13に接続された電流端子である。尚、磁壁移動素子本体10の第1端子(T1)16、及び第2端子(T2)17の一方と、MTJ15の第3端子(T3)18、及び第4端子(T4)19の一方は兼用してもよい。
次に、磁場印加手段としての外部磁場印加機構8について説明する。
外部磁場印加機構8は、記録層1の面内に磁場を印加する。なお、外部磁場印加機構8として、素子近傍に配線を配置して、電流を流して磁場を発生させてもよい。また、素子近傍に強磁性体を配置して、強磁性体からの漏洩磁場など磁気的な相互作用を利用しても良い。
次に、本発明の実施の形態による磁壁移動素子を磁気メモリセルとして用いた場合のデータ「0」と「1」の磁化状態について説明する。
図2(A)及び(B)は、本発明の第1の実施の形態に係る磁壁移動素子20が取りうる2つの磁化状態を夫々示している。それぞれの磁化状態は、記憶データ「0」と「1」に対応付けられる。
図示の例においては、第1磁化固定領域5の磁化方向は+Z方向(第1の方向)に保持されている。また、第2磁化固定領域6の磁化方向は、−Z方向(第2の方向)に保持されている。さらに、リファレンス層13の磁化は+Y方向(第4の方向に固定されている。
図2(A)に示されるように、反転領域4の磁化が+Z方向の場合、反転領域4と第2磁化固定領域6の境の近傍位置に磁壁7が形成される。反転領域4からの漏洩磁場(磁界、図示せず)は、センス層11位置において、+Y方向の成分を有し、センス層11の磁化は、漏洩磁場(磁界、図示せず)の方向に従って、+Y方向に向く。この場合、センス層11とリファレンス層13の磁化は平行であり、MTJ15の抵抗値は低くなる(低抵抗状態)。この低抵抗状態は、例えばデータ「0」に対応付けられる。
図2(B)に示されるように、反転領域4の磁化が−Z方向(第2の方向)の場合、反転領域4と第1固定領域5の境の近傍位置に磁壁7が形成される。反転領域4からの漏洩磁場(磁界、図示せず)は、センス層11位置において、−Y方向(第5の方向)の成分を有し、センス層11の磁化は、漏洩磁場(磁界、図示せず)の方向に従って、−Y方向に向く。この場合、センス層11とリファレンス層13の磁化は反平行であり、MTJ15の抵抗値は高くなる(高抵抗状態)。この高抵抗状態は、例えばデータ「1」に対応付けられる。
次に、本発明の第1の実施の形態による磁壁移動素子の書き込み動作について説明する。
図3(A)及び(B)は、本第1の実施の形態に係る磁壁移動素子の書き込み動作を示す概念図である。尚、説明のため、MTJは省略し、図示していない。例として、第1磁化固定領域5の磁化方向は+Z方向に保持されている。第2磁化固定領域6の磁化方向は、−Z方向に保持されている。
ここで、「電流駆動磁壁移動」によって、磁壁7が反転領域4を移動するのに必要な閾値電流値をIW_TH0とする。
また、「面内磁場と面内電流により誘起された磁化反転」によって、磁化が反転するのに必要な閾値電流値をIW_TH1とする。
図3(A)には、データ「1」からデータ「0」への書き換え時に供給される書き込み電流IW0を示している。
ここで、従来の磁壁移動型のMRAMは、書き込み電流IW0の大きさは、「電流駆動磁壁移動」の閾値電流IW_TH0より大きく、「面内磁場と面内電流により誘起された磁化反転」の閾値電流IW_TH1より小さくなるように設定される必要があった。
それに対し、図3(A)に示した本第1の実施の形態に係る磁壁移動素子は、書き込み電流IW0の大きさが、IW_TH0より大きく、かつ、IW_TH1より大きい場合にも正常に意図したデータを書き込めることを以下に説明する。
まず、書き込み電流IW0は、第2端子(T2)から、記録層1を通り、第1端子(T1)へ流れる。この場合、反転領域4には、第1磁化固定領域5からスピン偏極した電子が注入される。注入された電子のスピンは、第1磁化固定領域5と反転領域4の境にある磁壁7を第2磁化固定領域6の方向へ駆動する。
反転領域A(符号4Aで示す)は、「電流駆動磁壁移動」によって、磁壁7が移動して磁化が反転した領域であり、磁化は+Z方向へ反転する。外部磁場印加機構8は+X方向へ磁場を印加する。反転領域B(符号4Bで示す)は「面内磁場と面内電流により誘起された磁化反転」によって、磁化が反転した領域である。
反転領域B(4B)の磁化は最終的にZ×I×Hの方向である、+Z方向へ反転する。このように、反転領域A(4A)と反転領域B(4B)の磁化の反転方向を同じ向きになるように外部磁場を印加することにより、意図したデータ「0」を書き込める。
図3(B)には、データ「0」からデータ「1」への書き換え時に供給される書き込み電流IW1を示している。
従来の磁壁移動型のMRAMは、書き込み電流IW1の大きさは、「電流駆動磁壁移動」の閾値電流IW_TH0より大きく、「面内磁場と面内電流により誘起された磁化反転」の閾値電流IW_TH1より小さくなるように設定される必要があった。
それに対し、図3(B)に示した本実施の形態に係る磁壁移動素子は、書き込み電流IW1の大きさが、IW_TH0より大きく、かつ、IW_TH1より大きい場合にも正常に意図したデータを書き込めることを説明する。
書き込み電流IW1は端子T1から、記録層1を通り、端子T2へ流れる。この場合、反転領域4には、第2固定領域6からスピン偏極した電子が注入される。注入された電子のスピンは、第2固定領域6と反転領域4の境にある磁壁7を第1固定領域5の方向へ駆動する。反転領域A(4A)は「電流駆動磁壁移動」によって、磁壁7が移動して磁化が反転した領域であり、磁化は−Z方向へ反転する。外部磁場印加機構8は+X方向(第3の方向)へ外部磁場9を印加する。反転領域Bは「面内磁場と面内電流により誘起された磁化反転」によって、磁化が反転した領域である。反転領域B(4B)の磁化は最終的にZ×I×Hの方向である、−Z方向へ反転する。このように、反転領域A(4A)と反転領域B(4B)の磁化の反転方向を同じ向きになるように外部磁場9を印加することにより、意図したデータ「1」を書き込める。
次に本発明の第1の実施の形態による磁壁移動素子の読み出し動作について説明する。
図4は、本第1の実施の形態に係る磁壁移動素子の読み出し動作を示す概念図である。尚、説明のため、記録層1は省略し、図示していない。データ読み出し時、読み出し電流IRが、端子T3と端子T4との間に供給される。その結果、読み出し電流は、トンネルバリア層12を貫通するようにMTJ15を流れる。その読み出し電流IRあるいは、読み出し電流IRに応じた読み出し電圧に基づいて、MTJ15の抵抗値が検出され、反転領域4の磁化方向がセンスされる。
以上のように、本第1の実施の形態によれば、垂直磁化膜を用いた磁壁移動型のMRAMにおいて、高い信頼性でデータを書き込むことが出来る。
(第2の実施の形態)
図5(A)は本発明の第2実施の形態の磁壁移動素子の概略平面図及び図5(B)は、(A)の磁壁移動素子の断面図である。
本第2の実施の形態に係る磁壁移動素子は第1の実施の形態による磁壁移動素子とは、第2の実施の形態に係る磁壁移動素子が外部磁場印加機構8が無い点のみ異なる。
即ち、図5(A)及び(B)を参照すると、本発明の第2の実施の形態に係る磁壁移動素子20は、記録層1、記録層1の第1磁化固定領域5の磁化を固定する第1固定層2、及び記録層1の第2磁化固定領域6の磁化を固定する第2固定層3を備えた磁壁移動素子本体10と、センス層11、トンネルバリア層12、及びリファレンス層13をこの順で積層した磁気トンネル結合(MTJ)15とを備える。
磁壁移動素子本体10は、第1固定層2及び第2固定層3に夫々設けられた第1端子(T1)16、第2端子(T2)17を有する。
また、MTJ15は、センス層11、トンネルバリア層12、及びリファレンス層13の積層方向両端には、第3端子(T)18、第4端子(T4)19を備える。
尚、+Z方向(第1の方向)は、基板の裏面から表面への基板に垂直な方向であり、−Z方向(第2の方向)はこれと反平行な方向である。X及びY方向は、Z方向に垂直な水平方向として定義される。X方向は、互いに反平行な+X方向(第3の方向)及び−X方向を有する。また、Y方向は、互いに反平行な+Y方向(第4の方向)及び−Y方向(第5の方向)を有する。さらに、X方向は素子の長手方向であり、Y方向は、X方向及びZ方向に垂直な方向として定義される。
また、図中矢印14は各磁性層の磁化方向を示している。また、磁化の状態としては、初期磁化状態を示している。
磁壁移動素子本体10の記録層1は、内部を磁壁7が移動可能である。記録層1は、第1磁化固定領域5、第2磁化固定領域6、及び反転領域4を備える。
第1磁化固定領域5は、第1固定層2により+Z方向に磁化が保持され、書き込み、及び、読み出し動作によって変化しない。
また、第2磁化固定領域6は、第2固定層3により―Z方向に磁化が保持され、書き込み、及び、読み出し動作によって変化しない。
また、反転領域4は、第1磁化固定領域5と第2磁化固定領域6との間に設けられ、磁化方向が+Z方向及び−Z方向のいずれか一方に変更可能である。
第1端子(T1)16は、第1磁化固定領域5に接続された電流端子である。第2端子(T2)17は、第2磁化固定領域6に接続された電流端子である。
記録層1は、磁性膜として、強磁性体からなる強磁性層(図1(c)の符号21参照)を有する。より詳細には、この強磁性層は、垂直磁気異方性を有する垂直磁化膜で形成される。
記録層1の強磁性層の材料は、Fe、Co、Niのうちから選択される少なくとも1つ以上を含むことが望ましく、Co/Ni積層膜、Co/Pd積層膜、Co/Pt積層膜、Co−Cr−Pt合金、Co−Fe−B合金などが例示される垂直磁気異方性を有する薄膜を用いる。
さらに、図1(A)及び(B)には図示を省略されているが、図1(C)に示すように、記録層1は、強磁性層21の上下に層22,23を有する。上下の層22,23のうちの少なくとも一方の層はPt、Pd、Au、Agを含む第1グループか又はTa、W、Nb、Moを含む第2グループから選択された少なくとも一種の重金属が望ましい。
また、記録層1の強磁性層21の上下の層22,23の他方はMg−O、Al−Oなどの酸化金属が望ましい。
このような構成により、記録層1は、重金属層22、強磁性層21、酸化された金属層23からなる非対称な三層構造によるラシュバ場、もしくは、重金属層のスピンホール効果によるスピン流注入のいずれかの現象を発現することができる。
図5(B)に最もよく示されるように、第1固定層2および第2固定層3は、強磁性体で形成される。より詳細には、垂直磁気異方性を有する垂直磁化膜で形成される。第1固定層2及び第2固定層3の材料は、磁化の向きが反転可能な磁化自由層(フリー層)と同様である。尚、第1及び第2固定層2,3の磁化は固定されており、書き込み、及び、読み出し動作によって変化しない。
次に、MTJ15について説明する。
まず、センス層11は、強磁性体で形成される。より詳細には、面内磁気異方性を有する面内磁化膜で形成される。センス層11の材料は、Fe、Co、Niのうちから選択される少なくとも1つ以上を含むことが望ましい。より具体的には、センス層11は、Ni−Fe合金、Co−Fe−B合金、Co−Fe合などが例示される面内磁気異方性を有する薄膜を用いる。また、センス層11は、磁化方向が+Y方向及び−Y方向のいずれか一方に変更可能である。
また、リファレンス層13は、強磁性体で形成される。より詳細には、面内磁気異方性を有する面内磁化膜で形成される。リファレンス層13の材料は、センス層11の場合と同様である。尚、リファレンス層13の磁化は固定されており、書き込み、及び、読み出し動作によって変化しない。そのために、例えばリファレンス層13に反強磁性層(図示されない)が積層されてもよい。また、リファレンス層13は、強磁性層、非磁性層、及び強磁性層からなる積層膜であってもよい。その積層膜の2つの強磁性層の磁化は、反強磁性結合によって互いに反平行に向くように設定してもよい。
さらに、トンネルバリア層12は、非磁性層である。好適には、トンネルバリア層は絶縁膜で形成され、その材料としてはMg−O、Al−O、Ni−O、Hf−Oが例示される。このトンネルバリア層はセンス層とリファレンス層に挟まれており、これらセンス層11、トンネルバリア層12、リファレンス層13によって磁気トンネル接合(MTJ)が形成されている。尚、トンネルバリア層12の材料として、非磁性の半導体や金属材料が形成されている。
第3端子(T3)18は、センス層11に接続された電流端子である。また、第4端子(T4)は、リファレンス層19に接続された電流端子である。尚、磁壁移動素子本体10の第1端子(T1)16、及び第2端子(T2)17の一方と、MTJ15の第3端子(T3)18、及び第4端子(T4)19の一方は兼用してもよい。
本発明の第2の実施の形態においては、磁場印加手段としての外部磁場印加機構8を用いずに、第1及び第2固定層1,2からの漏洩磁場25を利用する。
第1固定層2からの漏洩磁場25は、反転領域において+X成分を有する。また、第2固定層3からの漏洩磁場25は、反転領域4において+X成分を有する。
第1固定層2と第2固定層3の漏洩磁場25の向きは、第1の実施の形態の外部磁場印加機構8による外部磁場9の方向と一致し、第1の実施の形態と同様の効果が得られる。
この漏洩磁場25によって、記録層1の面内に磁場を印加する。
次に、本発明の第2の実施の形態による磁壁移動素子のデータ「0」と「1」の磁化状態について説明する。
図5(B)の例においては、第1磁化固定領域5の磁化方向は+Z方向(第1の方向)に保持されている。また、第2磁化固定領域6の磁化方向は、−Z方向(第2の方向)に保持されている。さらに、リファレンス層13の磁化は+Y方向(第4の方向に固定されている。
図5(A)に示されるように、反転領域4の磁化が+Z方向の場合、反転領域4と第2磁化固定領域6の境の近傍位置に磁壁7が形成される。反転領域4からの漏洩磁場(磁界)25は、センス層11位置において、+Y方向の成分を有し、センス層11の磁化は、漏洩磁場(磁界)25の方向に従って、+Y方向に向く。この場合、センス層11とリファレンス層13の磁化は平行であり、MTJ15の抵抗値は低くなる(低抵抗状態)。この低抵抗状態は、例えばデータ「0」に対応付けられる。
図5(B)の状態から、反転領域4の磁化が−Z方向(第2の方向)に変化した場合、反転領域4と第1固定領域5の境の近傍位置に磁壁7が形成される。反転領域4からの漏洩磁場(磁界)25は、センス層11位置において、−Y方向(第5の方向)の成分を有し、センス層11の磁化は、漏洩磁場(磁界)25の方向に従って、−Y方向に向く。この場合、センス層11とリファレンス層13の磁化は反平行であり、MTJ15の抵抗値は高くなる(高抵抗状態)。この高抵抗状態は、例えばデータ「1」に対応付けられる。
以上のように、本第2の実施の形態によれば、垂直磁化膜を用いた磁壁移動型のMRAMにおいて、高い信頼性でデータを書き込むことが出来る。さらに、本第2の実施の形態では、磁場印加機構8を排除できることから、より簡易的に作成することができる。
(第3の実施の形態)
次に本発明の第3の実施の形態では、磁壁移動素子の磁性膜チップ内の漏洩磁場について説明する。
図6(A)は本発明の第3実施の形態の磁壁移動素子の概略平面図、及び図6(B)は、(A)の磁壁移動素子の断面図である。本第3の実施の形態に係る磁壁移動素子は第1の実施の形態とは、第1の実施の形態による外部磁場印加機構8として、第1強磁性層26の漏洩磁場25を利用している点が異なる。
図6(A)及び図6(B)を参照すると、本発明の第1の実施の形態に係る磁壁移動素子20は、記録層1、記録層1の第1磁化固定領域5の磁化を固定する第1固定層2、及び記録層1の第2磁化固定領域6の磁化を固定する第2固定層3を備えた磁壁移動素子本体10と、センス層11、トンネルバリア層12、及びリファレンス層13をこの順で積層した磁気トンネル結合(MTJ)15と、磁場印加手段として第1強磁性層26とを備える。
磁壁移動素子本体10は、第1固定層2及び第2固定層3に夫々設けられた第1端子(T1)16、第2端子(T2)17を有する。
また、MTJ15は、センス層11、トンネルバリア層12、及びリファレンス層13の積層方向両端には、第3端子(T)18、第4端子(T4)19を備える。
尚、+Z方向(第1の方向)は、基板の裏面から表面への基板に垂直な方向であり、−Z方向(第2の方向)はこれと反平行な方向である。X及びY方向は、Z方向に垂直な水平方向として定義される。X方向は、互いに反平行な+X方向(第3の方向)及び−X方向を有する。また、Y方向は、互いに反平行な+Y方向(第4の方向)及び−Y方向(第5の方向)を有する。さらに、X方向は素子の長手方向であり、Y方向は、X方向及びZ方向に垂直な方向として定義される。
また、図中矢印14は各磁性層の磁化方向を示している。また、磁化の状態としては、初期磁化状態を示している。
磁壁移動素子本体10の記録層1は、内部を磁壁7が移動可能である。記録層1は、第1磁化固定領域5、第2磁化固定領域6、及び反転領域4を備える。
第1磁化固定領域5は、第1固定層2により+Z方向に磁化が保持され、書き込み、及び、読み出し動作によって変化しない。
また、第2磁化固定領域6は、第2固定層3により―Z方向に磁化が保持され、書き込み、及び、読み出し動作によって変化しない。
また、反転領域4は、第1磁化固定領域5と第2磁化固定領域6との間に設けられ、磁化方向が+Z方向及び−Z方向のいずれか一方に変更可能である。
第1端子(T1)16は、第1磁化固定領域5に接続された電流端子である。第2端子(T2)17は、第2磁化固定領域6に接続された電流端子である。
記録層1は、磁性膜として、強磁性体からなる強磁性層(図1(c)の符号21、参照)を有する。より詳細には、この強磁性層は、垂直磁気異方性を有する垂直磁化膜で形成される。
記録層1の強磁性層の材料は、Fe、Co、Niのうちから選択される少なくとも1つ以上を含むことが望ましく、Co/Ni積層膜、Co/Pd積層膜、Co/Pt積層膜、Co−Cr−Pt合金、Co−Fe−B合金などが例示される垂直磁気異方性を有する薄膜を用いる。
さらに、図6(A)及び図6(B)には図示を省略されているが、図1(C)で示すものと同様に、記録層1は、強磁性層21の上下に層22,23を有する。上下の層22,23のうちの少なくとも一方の層はPt、Pd、Au、Agを含む第1グループか又はTa、W、Nb、Moを含む第2グループから選択された少なくとも一種の重金属が望ましい。
また、記録層1の強磁性層21の上下の層22,23の他方はMg−O、Al−Oなどの酸化金属が望ましい。
このような構成により、記録層1は、重金属層22、強磁性層21、酸化された金属層23からなる非対称な三層構造によるラシュバ場、もしくは、重金属層のスピンホール効果によるスピン流注入のいずれかの現象を発現することができる。
図6(B)に最もよく示されるように、第1固定層2および第2固定層3は、強磁性体で形成される。より詳細には、垂直磁気異方性を有する垂直磁化膜で形成される。第1固定層2及び第2固定層3の材料は、磁化の向きが反転可能な磁化自由層(フリー層)と同様である。尚、第1及び第2固定層2,3の磁化は固定されており、書き込み、及び、読み出し動作によって変化しない。
次に、MTJ15について説明する。
まず、センス層11は、強磁性体で形成される。より詳細には、面内磁気異方性を有する面内磁化膜で形成される。センス層11の材料は、Fe、Co、Niのうちから選択される少なくとも1つ以上を含むことが望ましい。より具体的には、センス層11は、Ni−Fe合金、Co−Fe−B合金、Co−Fe合などが例示される面内磁気異方性を有する薄膜を用いる。また、センス層11は、磁化方向が+Y方向及び−Y方向のいずれか一方に変更可能である。
また、リファレンス層13は、強磁性体で形成される。より詳細には、面内磁気異方性を有する面内磁化膜で形成される。リファレンス層13の材料は、センス層11の場合と同様である。尚、リファレンス層13の磁化は固定されており、書き込み、及び、読み出し動作によって変化しない。そのために、例えばリファレンス層13に反強磁性層(図示されない)が積層されてもよい。また、リファレンス層13は、強磁性層、非磁性層、及び強磁性層からなる積層膜であってもよい。その積層膜の2つの強磁性層の磁化は、反強磁性結合によって互いに反平行に向くように設定してもよい。
さらに、トンネルバリア層12は、非磁性層である。好適には、トンネルバリア層は絶縁膜で形成され、その材料としてはMg−O、Al−O、Ni−O、Hf−Oが例示される。このトンネルバリア層はセンス層とリファレンス層に挟まれており、これらセンス層11、トンネルバリア層12、リファレンス層13によって磁気トンネル接合(MTJ)が形成されている。尚、トンネルバリア層12の材料として、非磁性の半導体や金属材料が形成されている。
第3端子(T3)18は、センス層11に接続された電流端子である。また、第4端子(T4)は、リファレンス層19に接続された電流端子である。尚、磁壁移動素子本体10の第1端子(T1)16、及び第2端子(T2)17の一方と、MTJ15の第3端子(T3)18、及び第4端子(T4)19の一方は兼用してもよい。
次に、磁場印加手段としての第1強磁性層26について説明する。
第1強磁性層26は、記録層1の面内に磁場を印加する。第1強磁性層26は、強磁性体で形成される。より詳細には、面内磁気異方性を有する面内磁化膜で形成される。第1強磁性層26の材料は、センス層11の場合と同様である。尚、第1強磁性層26の磁化は固定されており、書き込み、及び、読み出し動作によって変化しない。そのために、例えば、第1強磁性層26に反強磁性層(図示せず)が積層されてもよい。また、第1強磁性層26は、強磁性層、非磁性層、強磁性層からなる積層膜であってもよい。その積層膜の2つの強磁性層の磁化は、反強磁性結合によって互いに反平行に向くように設定してもよい。
第1強磁性層26は記録層1の近傍に位置し、−X方向に磁化している。反転領域4における第1強磁性層26からの漏洩磁場25は+X方向であり、第1の実施の形態の外部磁場9の方向と一致し、第1実施の形態と同様の効果が得られる。
次に、本発明の実施の形態による磁壁移動素子のデータ「0」と「1」の磁化状態について説明する。
第1及び第2の実施の形態と同様に、本発明の第3の実施の形態に係る磁壁移動素子20は、2つの磁化状態を取りうる。それぞれの磁化状態は、記憶データ「0」と「1」に対応付けられる。
図6(B)に示す例においては、第1磁化固定領域5の磁化方向は+Z方向(第1の方向)に保持されている。また、第2磁化固定領域6の磁化方向は、−Z方向(第2の方向)に保持されている。さらに、リファレンス層13の磁化は+Y方向(第4の方向に固定されている。
図6(B)に示されるように、反転領域4の磁化が+Z方向の場合、反転領域4と第2磁化固定領域6の境の近傍位置に磁壁7が形成される。反転領域4からの漏洩磁場(磁界)25は、センス層11位置において、+Y方向の成分を有し、センス層11の磁化は、漏洩磁場(磁界)25の方向に従って、+Y方向に向く。この場合、センス層11とリファレンス層13の磁化は平行であり、MTJ15の抵抗値は低くなる(低抵抗状態)。この低抵抗状態は、例えばデータ「0」に対応付けられる。
図6(B)の状態から、反転領域4の磁化が−Z方向(第2の方向)の場合、反転領域4と第1固定領域5の境の近傍位置に磁壁7が形成される。反転領域4からの漏洩磁場(磁界)は、図示の漏洩磁場の矢印25とは反対方向であり、センス層11位置において、−Y方向(第5の方向)の成分を有し、センス層11の磁化は、反対方向の漏洩磁場(磁界)の方向に従って、−Y方向に向く。この場合、センス層11とリファレンス層13の磁化は反平行であり、MTJ15の抵抗値は高くなる(高抵抗状態)。この高抵抗状態は、例えばデータ「1」に対応付けられる。
以上のように、本発明の第3の実施の形態によれば、垂直磁化膜を用いた磁壁移動型のMRAMにおいて、高い信頼性でデータを書き込むことが出来る。
(第4の実施の形態)
本発明の第4の実施の形態では、磁性膜チップ内の交換結合について説明する。
図7(A)は本発明の第4の実施の形態の磁壁移動素子の概略平面図及び図7(B)は(A)の磁壁移動素子の断面図である。本第4の実施の形態に係る磁壁移動素子は、第1の実施の形態とは、外部磁場印加機構8として第2強磁性層27の漏洩磁場(図示せず)を利用している点が異なる。
図7(A)及び図7(B)を参照すると、本発明の第1の実施の形態に係る磁壁移動素子20は、記録層1、記録層1の第1磁化固定領域5の磁化を固定する第1固定層2、及び記録層1の第2磁化固定領域6の磁化を固定する第2固定層3を備えた磁壁移動素子本体10と、センス層11、トンネルバリア層12、及びリファレンス層13をこの順で積層した磁気トンネル結合(MTJ)15と、磁場印加手段として、記録層1上に形成された第2強磁性層27とを備える。
磁壁移動素子本体10は、第1固定層2及び第2固定層3に夫々設けられた第1端子(T1)16、第2端子(T2)17を有する。
また、MTJ15は、センス層11、トンネルバリア層12、及びリファレンス層13の積層方向両端には、第3端子(T)18、第4端子(T4)19を備える。
尚、+Z方向(第1の方向)は、基板の裏面から表面への基板に垂直な方向であり、−Z方向(第2の方向)はこれと反平行な方向である。X及びY方向は、Z方向に垂直な水平方向として定義される。X方向は、互いに反平行な+X方向(第3の方向)及び−X方向を有する。また、Y方向は、互いに反平行な+Y方向(第4の方向)及び−Y方向(第5の方向)を有する。さらに、X方向は素子の長手方向であり、Y方向は、X方向及びZ方向に垂直な方向として定義される。
また、図中矢印14は各磁性層の磁化方向を示している。また、磁化の状態としては、初期磁化状態を示している。
磁壁移動素子本体10の記録層1は、内部を磁壁7が移動可能である。記録層1は、第1磁化固定領域5、第2磁化固定領域6、及び反転領域4を備える。
第1磁化固定領域5は、第1固定層2により+Z方向に磁化が保持され、書き込み、及び、読み出し動作によって変化しない。
また、第2磁化固定領域6は、第2固定層3により―Z方向に磁化が保持され、書き込み、及び、読み出し動作によって変化しない。
また、反転領域4は、第1磁化固定領域5と第2磁化固定領域6との間に設けられ、磁化方向が+Z方向及び−Z方向のいずれか一方に変更可能である。
第1端子(T1)16は、第1磁化固定領域5に接続された電流端子である。また、第2端子(T2)17は、第2磁化固定領域6に接続された電流端子である。
記録層1は、磁性膜として、強磁性体からなる強磁性層(先の図1(c)の符号21と同様)を有する。より詳細には、この強磁性層は、垂直磁気異方性を有する垂直磁化膜で形成される。
記録層1の強磁性層の材料は、Fe、Co、Niのうちから選択される少なくとも1つ以上を含むことが望ましく、Co/Ni積層膜、Co/Pd積層膜、Co/Pt積層膜、Co−Cr−Pt合金、Co−Fe−B合金などが例示される垂直磁気異方性を有する薄膜を用いる。
さらに、図7(A)及び(B)には図示を省略されているが、先に説明した図1(C)と同様に、記録層1は、強磁性層21の上下に層22,23を有する。上下の層22,23のうちの少なくとも一方の層はPt、Pd、Au,Agを含む第1グループか又はTa、W、Nb、Moを含む第2グループから選択された少なくとも一種の重金属が望ましい。
また、記録層1の強磁性層21の上下の層22,23の他方はMg−O、Al−Oなどの酸化金属が望ましい。
このような構成により、記録層1は、重金属層22、強磁性層21、酸化された金属層23からなる非対称な三層構造によるラシュバ場、もしくは、重金属層のスピンホール効果によるスピン流注入のいずれかの現象を発現することができる。
図7(B)に最もよく示されるように、第1固定層2および第2固定層3は、強磁性体で形成される。より詳細には、垂直磁気異方性を有する垂直磁化膜で形成される。第1固定層2及び第2固定層3の材料は、磁化の向きが反転可能な磁化自由層(フリー層)と同様である。尚、第1及び第2固定層2,3の磁化は固定されており、書き込み、及び、読み出し動作によって変化しない。
次に、MTJ15について説明する。
まず、センス層11は、強磁性体で形成される。より詳細には、面内磁気異方性を有する面内磁化膜で形成される。センス層11の材料は、Fe、Co、Niのうちから選択される少なくとも1つ以上を含むことが望ましい。より具体的には、センス層11は、Ni−Fe合金、Co−Fe−B合金、Co−Fe合などが例示される面内磁気異方性を有する薄膜を用いる。また、センス層11は、磁化方向が+Y方向及び−Y方向のいずれか一方に変更可能である。
また、リファレンス層13は、強磁性体で形成される。より詳細には、面内磁気異方性を有する面内磁化膜で形成される。リファレンス層13の材料は、センス層11の場合と同様である。尚、リファレンス層13の磁化は固定されており、書き込み、及び、読み出し動作によって変化しない。そのため、リファレンス層13は、強磁性層、非磁性層、及び強磁性層からなる積層膜であってもよい。その積層膜の2つの強磁性層の磁化は、反強磁性結合によって互いに反平行に向くように設定してもよい。
さらに、トンネルバリア層12は、非磁性層である。好適には、トンネルバリア層は絶縁膜で形成され、その材料としてはMg−O、Al−O、Ni−O、Hf−Oが例示される。このトンネルバリア層はセンス層とリファレンス層に挟まれており、これらセンス層11、トンネルバリア層12、リファレンス層13によって磁気トンネル接合(MTJ)が形成されている。尚、トンネルバリア層12の材料として、非磁性の半導体や金属材料が形成されている。
第3端子(T3)18は、センス層11に接続された電流端子である。また、第4端子(T4)は、リファレンス層19に接続された電流端子である。尚、磁壁移動素子本体10の第1端子(T1)16、及び第2端子(T2)17の一方と、MTJ15の第3端子(T3)18、及び第4端子(T4)19の一方は兼用してもよい。
次に、磁場印加手段としての第2強磁性層27について説明する。
第2強磁性層27は、記録層1の面内に磁場を印加する。第2強磁性層27は、強磁性体で形成される。より詳細には、面内磁気異方性を有する面内磁化膜で形成される。第2強磁性層27の材料は、センス層11の場合と同様である。尚、第2強磁性層27の磁化は固定されており、書き込み、及び、読み出し動作によって変化しない。そのために、例えば、第2強磁性層27に反強磁性層(図示せず)が積層されてもよい。また、第2強磁性層27は、強磁性層、非磁性層、強磁性層からなる積層膜であってもよい。その積層膜の2つの強磁性層の磁化は、反強磁性結合によって互いに反平行に向くように設定してもよい。
第2強磁性層27は記録層1の上に積層され、+X方向に磁化している。反転領域4における第2強磁性層27との交換結合による磁場方向は+X方向であり、第1の実施の形態の外部磁場9の方向と一致し、第1実施の形態と同様の効果が得られる。
次に、本発明の実施の形態による磁壁移動素子のデータ「0」と「1」の磁化状態について説明する。
本発明の第4の実施の形態に係る磁壁移動素子20は、2つの磁化状態を夫々取り得る。それぞれの磁化状態は、記憶データ「0」と「1」に対応付けられる。
図7(B)の例においては、第1磁化固定領域5の磁化方向は+Z方向(第1の方向)に保持されている。また、第2磁化固定領域6の磁化方向は、−Z方向(第2の方向)に保持されている。さらに、リファレンス層13の磁化は+Y方向(第4の方向に固定されている。
図7(B)に示されるように、反転領域4の磁化が+Z方向の場合、反転領域4と第2磁化固定領域6の境の近傍位置に磁壁7が形成される。反転領域4からの漏洩磁場(磁界)は、センス層11位置において、+Y方向の成分を有し、センス層11の磁化は、漏洩磁場(磁界、図示せず)の方向に従って、+Y方向に向く。この場合、センス層11とリファレンス層13の磁化は平行であり、MTJ15の抵抗値は低くなる(低抵抗状態)。この低抵抗状態は、例えばデータ「0」に対応付けられる。
一方、反転領域4の磁化が−Z方向(第2の方向)の場合、反転領域4と第1固定領域5の境の近傍位置に磁壁7が形成される。反転領域4からの漏洩磁場(磁界、図示せず)は、センス層11位置において、−Y方向(第5の方向)の成分を有し、センス層11の磁化は、漏洩磁場(磁界、図示せず)の方向に従って、−Y方向に向く。この場合、センス層11とリファレンス層13の磁化は反平行であり、MTJ15の抵抗値は高くなる(高抵抗状態)。この高抵抗状態は、例えばデータ「1」に対応付けられる。
以上のように、本発明の第4の実施の形態によれば、垂直磁化膜を用いた磁壁移動型のMRAMにおいて、高い信頼性でデータを書き込むことが出来る。
(第5の実施の形態)
本発明の第5の実施の形態では、磁性膜パッケージについて説明する。
図8は本発明の第5の実施の形態の磁壁移動素子の断面図である。本第5の実施の形態に係る磁壁移動素子は第1の実施の形態と、磁場印加手段として外部磁場印加機構8の代わりに、第3強磁性層28の漏洩磁場25を利用している点が異なる。
チップ31は、第1乃至第4の実施の形態による磁壁移動素子本体と、MTJ15を有するものと同様な構成である。
即ち、図8を参照すると、本発明の第1の実施の形態に係る磁性膜パッケージは、チップ31を収容したパッケージ30と、パッケージ30の上面に形成された磁場印加手段としての第3強磁性層28とを有する。
チップ31の詳細な構成は、図8には示されないが、第1乃至第4の実施の形態と同様の磁壁移動素子本体10とMTJ15とを有し、磁壁移動素子本体10は、記録層1、記録層1の第1磁化固定領域5の磁化を固定する第1固定層2、及び記録層1の第2磁化固定領域6の磁化を固定する第2固定層3を備えた磁壁移動素子本体10と、センス層11、トンネルバリア層12、及びリファレンス層13をこの順で積層した磁気トンネル結合(MTJ)15とを備える構成であるので、その詳細な説明は省略する。
次に、磁場印加手段としての第3強磁性層28について説明する。
第3強磁性層28は、記録層1の面内に磁場を印加する。また、第3強磁性層28は、強磁性体で形成される。より詳細には、面内磁気異方性を有する面内磁化膜で形成される。強磁性層3の材料は、センス層11の場合と同様である。尚、第3強磁性層28の磁化は固定されており、書き込み、及び、読み出し動作によって変化しない。そのために、例えば、第3強磁性層28に反強磁性層(図示せず)が積層されてもよい。また、第3強磁性層28は、強磁性層、非磁性層、強磁性層からなる積層膜であってもよい。その積層膜の2つの強磁性層の磁化は、反強磁性結合によって互いに反平行に向くように設定してもよい。
第3強磁性層28は、チップのパッケージに位置し、矢印で示すように−X方向に磁化している。反転領域4における強磁性層28からの漏洩磁場25は+X方向であり、第1の実施形態の外部磁場9の方向と一致し、第1の実施の形態と同様の効果が得られる。
以上のように、本第5の実施の形態によれば、垂直磁化膜を用いた磁壁移動型のMRAMにおいて、高い信頼性でデータを書き込むことが出来る。
(第6の実施の形態)
本発明の第6の実施の形態では、磁場印加手段として配線32を用いた例について説明する。
図9(A)は本発明の第6の実施の形態の磁壁移動素子の概略平面図及び図9(B)は(A)の磁壁移動素子の断面図である。
本第6の実施の形態に係る磁壁移動素子は第1の実施の形態と、外部磁場印加機構8として第1の配線32からの電流磁場33を利用している点が異なる。
即ち、図9(A)及び図9(B)を参照すると、本発明の第6の実施の形態に係る磁壁移動素子20は、記録層1、記録層1の第1磁化固定領域5の磁化を固定する第1固定層2、及び記録層1の第2磁化固定領域6の磁化を固定する第2固定層3を備えた磁壁移動素子本体10と、センス層11、トンネルバリア層12、及びリファレンス層13をこの順で積層した磁気トンネル結合(MTJ)15と、磁場印加手段として配線32とを備える。
磁壁移動素子本体10は、第1固定層2及び第2固定層3に夫々設けられた第1端子(T1)16、第2端子(T2)17を有する。
また、MTJ15は、センス層11、トンネルバリア層12、及びリファレンス層13の積層方向両端には、第3端子(T)18、第4端子(T4)19を備える。
尚、+Z方向(第1の方向)は、基板の裏面から表面への基板に垂直な方向であり、−Z方向(第2の方向)はこれと反平行な方向である。X及びY方向は、Z方向に垂直な水平方向として定義される。X方向は、互いに反平行な+X方向(第3の方向)及び−X方向を有する。また、Y方向は、互いに反平行な+Y方向(第4の方向)及び−Y方向(第5の方向)を有する。さらに、X方向は素子の長手方向であり、Y方向は、X方向及びZ方向に垂直な方向として定義される。
また、図中矢印14は各磁性層の磁化方向を示している。また、磁化の状態としては、初期磁化状態を示している。
磁壁移動素子本体10の記録層1は、内部を磁壁7が移動可能である。記録層1は、第1磁化固定領域5、第2磁化固定領域6、及び反転領域4を備える。
第1磁化固定領域5は、第1固定層2により+Z方向に磁化が保持され、書き込み、及び、読み出し動作によって変化しない。
また、第2磁化固定領域6は、第2固定層3により―Z方向に磁化が保持され、書き込み、及び、読み出し動作によって変化しない。
また、反転領域4は、第1磁化固定領域5と第2磁化固定領域6との間に設けられ、磁化方向が+Z方向及び−Z方向のいずれか一方に変更可能である。
第1端子(T1)16は、第1磁化固定領域5に接続された電流端子である。また、第2端子(T2)17は、第2磁化固定領域6に接続された電流端子である。
記録層1は、磁性膜として、強磁性体からなる強磁性層(図1(c)の符号21参照)を有する。より詳細には、この強磁性層は、垂直磁気異方性を有する垂直磁化膜で形成される。
記録層1の強磁性層の材料は、Fe、Co、Niのうちから選択される少なくとも1つ以上を含むことが望ましく、Co/Ni積層膜、Co/Pd積層膜、Co/Pt積層膜、Co−Cr−Pt合金、Co−Fe−B合金などが例示される垂直磁気異方性を有する薄膜を用いる。
さらに、図9(B)には図示を省略されているが、図1(C)に示したものと同様に、記録層1は、強磁性層21の上下に層22,23を有する。上下の層22,23のうちの少なくとも一方の層はPt、Pd、Au、Agを含む第1グループか又はTa、W、Nb、Moを含む第2グループから選択された少なくとも一種の重金属が望ましい。
また、記録層1の強磁性層21の上下の層22,23の他方はMg−O、Al−Oなどの酸化金属が望ましい。
このような構成により、記録層1は、重金属層22、強磁性層21、酸化された金属層23からなる非対称な三層構造によるラシュバ場、もしくは、重金属層のスピンホール効果によるスピン流注入のいずれかの現象を発現することができる。
図9(B)に最もよく示されるように、第1固定層2および第2固定層3は、強磁性体で形成される。より詳細には、垂直磁気異方性を有する垂直磁化膜で形成される。第1固定層2及び第2固定層3の材料は、磁化の向きが反転可能な磁化自由層(フリー層)と同様である。尚、第1及び第2固定層2,3の磁化は固定されており、書き込み、及び、読み出し動作によって変化しない。
次に、MTJ15について説明する。
まず、センス層11は、強磁性体で形成される。より詳細には、面内磁気異方性を有する面内磁化膜で形成される。センス層11の材料は、Fe、Co、Niのうちから選択される少なくとも1つ以上を含むことが望ましい。より具体的には、センス層11は、Ni−Fe合金、Co−Fe−B合金、Co−Fe合などが例示される面内磁気異方性を有する薄膜を用いる。また、センス層11は、磁化方向が+Y方向及び−Y方向のいずれか一方に変更可能である。
また、リファレンス層13は、強磁性体で形成される。より詳細には、面内磁気異方性を有する面内磁化膜で形成される。リファレンス層13の材料は、センス層11の場合と同様である。尚、リファレンス層13の磁化は固定されており、書き込み、及び、読み出し動作によって変化しない。そのため、リファレンス層13は、強磁性層、非磁性層、及び強磁性層からなる積層膜であってもよい。その積層膜の2つの強磁性層の磁化は、反強磁性結合によって互いに反平行に向くように設定してもよい。
さらに、トンネルバリア層12は、非磁性層である。好適には、トンネルバリア層は絶縁膜で形成され、その材料としてはMg−O、Al−O、Ni−O、Hf−Oが例示される。このトンネルバリア層はセンス層とリファレンス層に挟まれており、これらセンス層11、トンネルバリア層12、リファレンス層13によって磁気トンネル接合(MTJ)15が形成されている。尚、トンネルバリア層12の材料として、非磁性の半導体や金属材料が形成されている。
第3端子(T3)18は、センス層11に接続された電流端子である。また、第4端子(T4)は、リファレンス層19に接続された電流端子である。尚、磁壁移動素子本体10の第1端子(T1)16、及び第2端子(T2)17の一方と、第3端子(T3)18、及び第4端子(T4)19の一方は兼用してもよい。
次に、磁場印加手段としての配線32について説明する。
外部磁場印加機構8は、記録層1の面内に電流によって生じた磁場を印加する。
第1の配線32は記録層1の近傍に位置し、Y方向に延伸している。第1の配線に+Y方向に電流(第2の電流)を流すことにより、反転領域4における第1の配線32からの漏洩磁場(電流磁場)33は+X方向であり、第1の実施形態の外部磁場の方向と一致し、第1実施の形態と同様の効果が得られる。
次に、本発明の実施の形態による磁壁移動素子のデータ「0」と「1」の磁化状態について説明する。
本発明の第6の実施の形態に係る磁壁移動素子20は、2つの磁化状態を夫々取り得る。それぞれの磁化状態は、記憶データ「0」と「1」に対応付けられる。
図9(B)の例においては、第1磁化固定領域5の磁化方向は+Z方向(第1の方向)に保持されている。また、第2磁化固定領域6の磁化方向は、−Z方向(第2の方向)に保持されている。さらに、リファレンス層13の磁化は+Y方向(第4の方向に固定されている。
図9(B)に示されるように、反転領域4の磁化が+Z方向の場合、反転領域4と第2磁化固定領域6の境の近傍位置に磁壁7が形成される。反転領域4からの漏洩磁場(磁界)は、センス層11位置において、+Y方向の成分を有し、センス層11の磁化は、漏洩磁場(磁界、図示せず)の方向に従って、+Y方向に向く。この場合、センス層11とリファレンス層13の磁化は平行であり、MTJ15の抵抗値は低くなる(低抵抗状態)。この低抵抗状態は、例えばデータ「0」に対応付けられる。
一方、反転領域4の磁化が−Z方向(第2の方向)の場合、反転領域4と第1固定領域5の境の近傍位置に磁壁7が形成される。反転領域4からの漏洩磁場(磁界、図示せず)は、センス層11位置において、−Y方向(第5の方向)の成分を有し、センス層11の磁化は、漏洩磁場(磁界、図示せず)の方向に従って、−Y方向に向く。この場合、センス層11とリファレンス層13の磁化は反平行であり、MTJ15の抵抗値は高くなる(高抵抗状態)。この高抵抗状態は、例えばデータ「1」に対応付けられる。
以上のように、本第6の実施の形態によれば、垂直磁化膜を用いた磁壁移動型のMRAMにおいて、高い信頼性でデータを書き込むことが出来る。
本発明は上記各実施の形態に限定されず、本発明の技術思想の範囲内において、各実施の形態は適宜変形又は変更され得ることは明らかである。
たとえば、本実施例では、MTJ15は反転領域4と物理的に離れた位置に設けられたが、反転領域4に接してトンネルバリア膜を形成し、さらに垂直磁気異方性を有するリファレンス層をトンネルバリア膜の反転領域4の反対側に形成して、反転領域4の磁化を読み出ししてもよい。
また、本実施の形態では、磁気ランダムアクセスメモリのメモリセルであるが、他の磁気メモリ、例えば、レーストラックメモリの書き込みに本技術を利用しても良い。