JP6191437B2 - 溶銑の精錬方法 - Google Patents

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本発明は、転炉で溶銑を脱りん処理する際に、上吹きランスから粉状CaOを吹き込む脱りん処理を行う溶銑の精錬方法に関する。
鉄鋼製品の低りん化ニーズの高まり、およびその製造プロセスを高能率化する必要性に応じて、近年、転炉製鋼プロセスを溶銑予備脱りん処理と溶銑脱炭処理に分割して行う比率が増加している。さらにその溶銑予備脱りん処理自体も高能率化かつ低りん化が求められており、例えば「粉体上吹き脱りん法」の発明(例えば、特許文献1参照。)や、それを更に改良した以下に記載の発明が近年多数公開されている。
例えば、(1)脱りん処理中のスピッティング量を低減するために、カバースラグを生成した後にCaO含有脱りん剤を吹付ける方法(例えば、特許文献2参照。)や、(2)発生スラグ量を抑制するために、Si濃度が0.20質量%以下の溶銑を用いて脱りん処理後のスラグ塩基度を2.5超4.95以下で処理する脱りん方法(例えば、特許文献3参照。)、(3)CaO含有粉をランスから酸素含有ガスとともに溶銑に上吹きして脱りんする方法であり、CaO含有粉の吹きつけ速度と酸素流量の比を溶銑Si濃度に応じて調整する方法(例えば、特許文献4参照。)がある。確かに(1)はスピッティング抑制には効果的であり、(2)は高脱りん能を得られるかもしれないが、いずれも高能率化との関係は不明である。一方(3)は酸素流量が一定条件であれば、溶銑Si濃度が高い場合には、CaO含有粉の吹きつけ速度を大きくする必要があり、粉が溶銑に衝突することによって発生するスピッティング量が増加する可能性が高い。
また、本出願人は、上吹きする酸素含有ガスと溶融金属との反応効率を低下させることなくスピッティングを低減可能な上吹きランス(以下、「ねじれランス」、という。)に係る特許発明を提案した(特許文献5参照。)。
図1(a)は、通常の多孔ランス1の先端部を示す概要図であり、図1(b)はねじれランス1の先端部を示す概要図である。図1(a)及び図1(b)において、符号1はランスであり、符号2はノズルである。
通常の多孔ランス1では、図1(a)に示すように各ノズル2は、その中心軸の延長がランス1の中心軸上の1点で交わるように、傾斜して配置されるのに対し、ねじれランス1では、図1(b)に示すように各ノズル2は、その中心軸の延長が相互にねじれた位置関係となるように、傾斜して配置される。
特許文献5には、6孔のねじれランス1において、ランス1の中心軸から半径方向のジェットの動圧分布を調査し、ランス中心からみて動圧が最大となる方位と、そこから30°ずれた隣接するノズル2との境界に相当する方位(最も動圧が小さくなる方位)で、各方位でのピーク動圧値が近い値になるような、すなわち円周方向の動圧変動が小さくなるような相互にねじれた位置関係の範囲が提案されており、このねじれランス1によってスピッティング量を低減できることが開示されている。
特開平8−311523号公報 特許第3687433号公報 特許第3952846号公報 特開2011−12286号公報 特開2000−1714号公報
しかし、特許文献5では、ねじれランスのノズルと液滴飛散速度に及ぼす影響を水モデル実験により調査しているため、粉状生石灰を酸素ガスジェットとともに吹き付ける検討は行われていない。特許文献1〜4に記載の条件は、ねじれランスを用いることが一切考慮されていない。特許文献5に記載のねじれランスを用いた場合に特許文献1〜4に記載の条件をそのまま適用したとしても、近年の溶銑予備脱りん処理に要求されている高脱りん効率および高脱りん能を満足することになるとは考え難い。
したがって、本発明の目的は、以上のような従来技術の課題を解決し、高脱りん処理効率、高脱りん能を両立することができる溶銑の精錬方法を提供することである。
本発明者らは、特許文献5に開示された脱りん処理方法において、高脱りん処理効率、高脱りん能を両立するため、吹錬時の鋼浴の挙動を詳しく解析した。その結果、本発明者らは、特許文献5に記載のように、ランス形状を特定の条件とすると、粉状生石灰を含まない酸素ガスジェットを吹き付けるだけで鋼浴が旋回する知見を得た。これにより、酸素ガスジェットだけで鋼浴が旋回するため、上吹きランスから酸素と共に粉状生石灰を吹付けることで鋼浴の運動エネルギが増加し、鋼浴の旋回速度が高まることで、スピッティング発生量は更に低減されることが考えられる。さらに、スピッティングが抑制されるため、粉状生石灰の吹きつけ速度を増加でき脱りん効率が高まる。これにともない、鋼浴が旋回することでスラグ−メタル反応効率がアップし、脱りん能が向上するとも考えられる。
ただ、ねじれランスの吹き付けによる鋼浴の旋回速度には限界があるため、粉状生石灰の吹きつけ速度が速すぎてはならない。一方、脱りん処理効率の低下を抑制するため、粉状生石灰の吹きつけ速度が遅すぎてはならない。
また、高脱りん処理効率および高脱りん能のために、単に酸素吹付け流量を増やしたとしても、ねじれランスを使用してもなおスピッティングの抑制が十分ではなく、かつ、生石灰の滓化が高速脱りん処理に対応できずに溶銑中P%を十分に低下させることができない。一方、酸素吹付け流量が少なすぎても高速脱りん処理が達成されない。
さらに、粉状生石灰と酸素とを同時に鋼浴に吹付ける脱りん方法においては、それらが吹付けられた鋼浴表面の部分である火点において、鉄と酸素とが反応して溶融FeOが生成する。同時に吹き込まれた粉状生石灰は、生成したFeOと混合され、火点において溶融CaO−FeOスラグが生成し、脱りん反応が速やかに進行する。したがって、ねじれランスを使用した溶銑の脱りん処理において、スピッティングを抑制し、鋼浴表面でのスラグ−メタル反応効率を高めて高脱りん処理効率および高脱りん能を達成するためには、酸素吹付け流量が一定の範囲内である条件の下、粉状生石灰の質量流量は、酸素含有ガスの体積流量に対する比であるWCaO(kg)/FO2(Nm)が所定の範囲内に入るような流量である必要がある。
本発明は、これらの知見に基づいて完成された。
本発明は、上吹きランスを備えた上底吹き型の転炉に溶銑を装入して、前記上吹きランスから酸素と共に粉状生石灰を吹付けて脱りん処理する溶銑の精錬方法であって、前記上吹きランスは、同一円周上に等間隔で配置された3孔以上のノズルを備え、ランス中心軸がZ軸、ノズルの出口位置がX軸上となるように定めたXYZ直交座標系において、YZ平面およびXZ平面への前記ノズルの軸の投影がZ軸となす角度をそれぞれα、βとしたとき、αとβが下記(1)式を満足し、かつ、該上吹きランスからの酸素吹付け流量FO2(Nm/min/t)を2.0〜3.0の範囲で、前記粉状生石灰の吹付け速度WCaO(kg/min/t)と当該酸素の吹付け流量FO2(Nm/min/t)との比WCaO/FO2を2.0≦WCaO/FO2<3.0とすることを特徴とする、溶銑の精錬方法である。
0<tanα/tanβ<2.75・・・(1)
本発明により高速脱りん処理時のスピッティング発生量を抑制できるようになり、高脱りん処理効率(高速脱りん吹錬)、および高脱りん能確保(処理後[P]低下)を同時に達成することが可能になった。
図1は、ねじれランスの先端部を示す概要図であり、図1(a)は通常のランス、図1(b)は本発明で使用するねじれを有するランスである。 図2は、本発明で使用するねじれランスの先端部の例を示す概要図であり、図2(a)はねじれランスの平面図、図2(b)は図2(a)におけるb−b断面のyz平面への投影図、図2(c)は図2(a)のc−c断面のxz平面への投影図である。 図3は、本発明で使用するねじれランスのノズルとそれに対応する火点の幾何学的位置関係を示す概要図である。 図4は、ねじれランスとノーマルランス使用時の吹錬中ダスト発生量推移を示す図である。 図5は、処理後[C]−処理後[P]の関係を示す図である。 図6は、計算りん分配−実りん分配の関係を示す図である。 図7は、滓化率−実りん分配の関係を示す図である。
本発明を、添付図面を参照しながら説明する。
本発明は、上吹きランスを備えた上底吹き型転炉に、一般的には質量濃度でC:4.3〜4.6%、Si:0.30〜0.80%およびP:0.090〜0.120%を含有する溶銑を装入し、上吹きランスから酸素と共に粉状生石灰を吹付けて脱りん処理を行う。
この際、本発明では、上吹きランスは、同一円周上に等間隔で配置された3孔以上のノズルを備え、ランス中心軸がZ軸、ノズルの出口位置がX軸上となるように定めたXYZ直交座標系において、YZ平面およびXZ平面への前記ノズルの軸の投影がZ軸となす角度をそれぞれα、βとしたとき、αとβが下記(1)式を満足するものである。
0<tanα/tanβ<2.75・・・(1)
図2は、本発明で使用するねじれランス1の先端部を示す概要図であり、図2(a)はねじれランス1の平面図、図2(b)は図2(a)におけるb−b断面のyz平面への投影図、図2(c)は図2(a)のc−c断面のxz平面への投影図である。同図において図1と同一部品は同一符号で表す。なお、説明し易いように、図2(a)中のノズルAのみを抽出して図2(b)、図2(c)に示す。すなわち、図2(a)において、ランス中心軸がz軸となり、同一円周上に等間隔で配置された3孔以上の孔(周縁孔)であるノズルAの出口位置がx軸上となるxyz直交座標系を用いて、説明する。なお、図2(a)〜図2(c)における符号2i,2jはそれぞれノズル2の入側,出側を示し、符号3は小径ノズルを示す。
図2において、ランス中心軸がz軸、ノズルの出口位置がx軸上となるxyz直交座標系を用いて説明する。ねじれランス1には、ノズルのひねりに相当する、yz平面へのノズル軸の投影とz軸とがなす角度α(以下、「ノズル旋回角」という)、及びノズルの外側方向の傾斜に相当するxz平面へのノズル軸の投影とz軸とのなす角度β(以下、「ノズル傾斜角」という)とを有する6つのノズル2(そのうちでx軸上にある一つの孔を「ノズルA」と称する。)が、ランス軸の周りに等間隔で軸対象に配置されている。
ノズル軸がz軸上の1点で交わる通常の多孔ランス(図1(a)により示されるランス1が例示される。)を同図の角度に適用すると、ノズル旋回角αは0°であり、ノズル傾斜角βは通常のランス(すなわちねじれ構造を有していないランス)におけるノズルの角度に相当する。
図3は、本発明で使用するねじれランスのノズルとそれに対応する火点の幾何学的位置関係を示す概要図である。同図ではノズル1本分のみを示す。
図3に示すように、火点の中心(ノズル軸の延長が溶融金属浴面4と交わる位置)からz軸に降ろした垂線のxy平面への投影とx軸とがなす角度をねじれ度δと定義すると、ねじれ度δ、ノズル旋回角α、ノズル傾斜角β、ねじれランス−浴面間距離H、ノズル2の孔出口位置とランス中心軸との距離D(図3参照)との間に(2)式の関係が得られる。
tanδ=Htanα/(Htanβ+D)・・・(2)
ここで、(2)式で、DがHに比べて十分に小さいとすると、ねじれ度δは近似的に(3)式で与えられる。
δ=tan−1(tanα/tanβ)・・・(3)
このねじれランス1に関し、本発明では、各ノズルに対応する火点の重なりが生じないようにしてスピッティングを低減するため、前記(1)式を規定している。
本発明に係る溶銑の精錬方法において、本発明で使用するねじれランスを用いた粉状生石灰および酸素の吹きつけ条件は、上吹きランスからの酸素吹付け流量FO2(Nm/min/t)が2.0〜3.0(Nm/min/t)の範囲において、粉状生石灰の吹きつけ速度WCaO(kg/min/t)と酸素の上吹き流量FO2(Nm/min/t)との比であるWCaO/FO2(kg/Nm)を2.0≦WCaO/FO2<3.0とする。
溶銑脱りん処理において処理能率向上を目指す場合、酸素供給速度を高めること自体は容易である。しかし、過剰な酸素供給速度増加は、CaOの供給速度や滓化速度とのバランスがとれていないと、処理時間の短縮には繋がらない。このような観点から、前述の比の範囲内において、上吹きランスからの酸素吹付け流量FO2(Nm/min/t)は、2.0〜3.0(Nm/min/t)である必要がある。FO2(Nm/min/t)が2.0未満では本発明が目的とする高速脱りん処理を達成することができないし、それが3.0を超える条件では本発明を適用してもなおスピッティングの発生抑制は不十分で、かつ、高速処理に生石灰の滓化が追い付かず処理後溶銑中P%を安定して十分に低下させることが困難になるからである。
上吹き酸素は、工業用純酸素を用いれば良いが、酸素濃度が80%以上の気体により供給してもよい。
本発明では、WCaO/FO2(kg/Nm)の比を規定することによって、鋼浴の旋回により高まったスラグ−メタル反応効率を更に高めることにより、高脱りん処理効率を達成することができる。WCaO/FO2(kg/Nm)が2.0未満であると、粉状生石灰の質量流量が低すぎ、処理時間を費やすために脱りん処理効率が低下する。WCaO/FO2(kg/Nm)が3.0以上であると、スピッティング発生量が増加し、また、CaOの滓化が追いつかずに脱りん処理効率や処理後[P]が劣化する。ねじれランスの吹き付けによる鋼浴の旋回速度には限界があるためである。
溶銑脱りん処理において、その処理を高脱りん処理効率かつ高脱りん能で行うためには、前述の比の範囲内において、上吹き酸素流量FO2や粉状生石灰の吹きつけ速度WCaOを高めることが望ましい。粉状生石灰の吹きつけ速度は、供給されたCaOの滓化(溶融スラグ化)によって規制される。この滓化速度は、上吹き酸素により旋回する鋼浴の運動エネルギ(攪拌能力)の他に、CaOが供給されるスラグの塩基度に影響されるが、適切な範囲の塩基度であれば、CaOを粉状で酸素と共に溶銑に吹き付けることによって向上させることができる。このような条件では、装入塩基度(生石灰中のCaO質量)/(溶銑中Si質量×2.14)は1.2〜2.6程度が適当である。
本発明において、粉状生石灰とは、CaOの質量濃度で90%以上であり、粒径0.1mm以下の生石灰をいう。
本発明で規定する要件を導出するための調査結果を、添付図面を参照しながら説明する。
(1)共通する調査条件
本発明者らは、溶銑78t〜85t(組成:[C]4.3〜4.6質量%、[Si]0.30〜0.73質量%、[P]0.090〜0.120質量%)を上底吹転炉へ装入し、装入塩基度:(装入CaO質量)/(溶銑中Si質量×2.14)を1.2〜2.6の範囲で、上吹き酸素流量FO2:2.0〜3.0Nm/min/tにて脱珪脱りん処理を行った。
上吹きランス(使用ランス)には、ノズル径φ38mm、α=14.5°、β=15°、(δ=44°)の5孔ねじれランス、および、ノズル径φ38mm、α=0°、β=15°、(δ=0°)の5孔ノーマルランスを用いた。また上吹き酸素を溶銑へ供給開始すると同時に、CaOを92%含有し最大粒径が0.1mm以下である粉状生石灰を吹付け速度WCaO(kg/min/t)で、上吹き酸素流量FO2=2.0〜3.0(Nm/min/t)と共に溶銑浴面へ吹き付けて脱りん処理を行った。ここでWCaO/FO2は表1に示す通り2.0以上3.50以下で制御した。なおフッ素含有副原料およびカルシウムフェライト等の合成造滓材はいずれのケースも使用しない。
(2)スピッティング発生量の調査
まず吹錬中のスピッティング発生量を評価するため、吹錬開始直後から1分毎に集塵水を採取しダスト濃度の推移を計測した。結果を図4に示す。
ねじれランスを使用した《ケース1》では、ノーマルランスを使用した《ケース3》と比べダスト発生量が10〜25%低減した。また吹錬開始1分までよりも、2分以降の方がダスト低減効果が大きい値を示した。これは脱炭吹錬で観測された効果と同じであり、ねじれランスの効果により鋼浴が回転し始めることでスピッティング発生量が低減したことを示唆している。
一方、同じねじれランスを使用した場合であってもWCaO/FO2≧3.0の《ケース2》では、ダスト発生量は《ケース3》とほぼ同一レベルで効果は確認されなかった。これは、WCaO/FO2が大きくなることで増加するスピッティング量と、ねじれランスの効果によって減少するスピッティング量が相殺したためと考えられる。
(3)脱りん能および脱りん処理効率の調査
次に脱りん能および脱りん処理効率についての評価結果を整理する。使用ランスおよび吹錬条件は、上述の条件と同一である。図5に処理後[C]−処理後[P]の関係を示すが、《ケース1》は《ケース3》と比較し同一処理後[C]でも処理後[P]が安定して下がっている。また、スラグ中のりん濃度(%P)と溶銑中のりん濃度[P]%との比であるりん分配比(Lp=(%P)/[P]%)を計算値と分析値とを対比して評価した図6を見ても、《ケース1》の方が《ケース3》よりも高いりん分配比を得ていることが確認される。一方《ケース2》は《ケース3》とほぼ同等の結果であった。この結果から、《ケース2》ではWCaO/FO2が増大しすぎたことで粉状生石灰の滓化が追い付かず、また一部はスピッティングダストとともに炉外へ排出されたと考えられる。
なお、図6の横軸である計算Lpは、式(4)を用いて算出した。式中のTは、溶銑の温度(K)である。
logL=2.5log(%T.Fe)+0.0715{(%CaO)+0.25(%MgO)}+(105.1/T+0.0723)[%C]+7710.2/T−8.55・・・(4)
そこで、《ケース1》〜《ケース3》の滓化率を比較した。結果を図7に示すが、推定通り《ケース2》は滓化率が低下していること確認される。なお、滓化率は《ケース1》≒《ケース3》>《ケース2》だが、脱りん率は《ケース1》>《ケース2》≒《ケース3》となった。この理由は、《ケース2》が《ケース3》よりもねじれランスの効果で反応効率がアップしたためと考えられる。
以上の結果から、粉体上吹き脱りん法において所定形状のねじれランスを適用し、一般的な組成として質量濃度でC:4.3〜4.6%、Si:0.30〜0.80%およびP:0.090〜0.120%を含有する溶銑を対象として、酸素の上吹き流量FO2(Nm/min/t)を2.0〜3.0の範囲で、粉状生石灰の吹きつけ速度WCaO(kg/min/t)と酸素の上吹き酸素流量FO2(Nm/min/t)との比を2.0≦WCaO/FO2<3.0に制御することで、高脱りん処理効率(高速脱りん吹錬)、および高脱りん能(処理後[P]低下)を同時に実現可能であることが確認された。
なお、処理前溶銑中のSiは、脱燐処理後には基本的に全てスラグ中のSiOに移行する。したがって、処理前溶銑中の[Si]%が高くなるほど生成スラグ量が増加する傾向にあり、その結果、生成させるスラグの塩基度を低くしても処理後溶銑中のりん濃度が低下し易くなることが知られている。また、生成スラグ量が多くなる条件では、スピッティングの発生は抑制されることも知られている。本発明に係る上記調査においても、[Si]%が0.45%を超えるような高い条件では、本発明の適用によるスピッティング低減効果や滓化促進効果は、実質的に目立ちにくくなっていた。したがって、本発明が目的とする高速脱りん処理時のスピッティング抑制や、高脱りん処理効率および高脱りん能確保の同時達成に関する効果は、処理前溶銑中の[Si]が0.45%以下の方が一層明確になるといえる。
溶銑78t〜85t(組成:[C]4.3〜4.6質量%、[Si]0.35〜0.45質量%、[P]0.090〜0.120質量%)を上底吹転炉へ装入し、上吹き酸素の吹付け流量FO2:2.0〜3.0Nm/min/tにて6〜8分間脱りん処理を行った。
上吹きランスには、ノズル径φ38mm、α=14.5°、β=15°(δ=44°)の5孔ねじれランスを用い、比較のために従来方法としてノズル径φ38mm、α=0°、β=15°(δ=0°)の5孔ノーマルランスを用いた。また上吹き酸素を溶銑へ供給開始すると同時に、粉状生石灰としてCaOを92%含有し最大粒径が0.1mm以下である粉状生石灰を、吹付け速度WCaO(kg/min/t)と上吹き酸素の吹付け流量FO2(Nm/min/t)との比であるWCaO/FO2を2.0〜3.0の範囲で、上吹き酸素と共に連続的に溶銑浴面へ吹き付けて脱りん処理を行った。粉状生石灰の供給量は、装入塩基度が1.8〜2.3の範囲で調整した。なお、塊状の生石灰並びにフッ素含有副原料およびカルシウムフェライト等の合成造滓材はいずれのケースも使用しなかった。
その結果、比較例では処理後のC%=3.5〜3.8%の範囲で、処理後のP%が処理後のC%に応じて0.012〜0.020%に上昇していたのに対し、本発明例では同じ処理後のC%=3.5〜3.8%の範囲で、処理後のP%が0.010%以下に安定して低下していた。
さらに、スピッティング発生量も、比較例に比べて本発明例の方が明らかに少ないと分かる状況であった。
1 ランス
2 ノズル
2i ノズルの入側
2j ノズルの出側
3 小径ノズル
4 浴面
5 火点
D ノズル出口とランス中心間距離
ランスと湯面間距離
R 浴面上の火点中心とランス中心軸位置間距離

Claims (1)

  1. 上吹きランスを備えた上底吹き型の転炉に溶銑を装入して、前記上吹きランスから酸素と共に粉状生石灰を吹付けて脱りん処理する溶銑の精錬方法であって、
    前記上吹きランスは、同一円周上に等間隔で配置された3孔以上のノズルを備え、ランス中心軸がZ軸、ノズルの出口位置がX軸上となるように定めたXYZ直交座標系において、YZ平面およびXZ平面への前記ノズルの軸の投影がZ軸となす角度をそれぞれα、βとしたとき、αとβが下記(1)式を満足し、かつ、
    該上吹きランスからの酸素吹付け流量FO2(Nm/min/t)を2.0〜3.0の範囲で、
    前記粉状生石灰の吹付け速度WCaO(kg/min/t)と当該酸素の吹付け流量FO2(Nm/min/t)との比WCaO/FO2を2.0≦WCaO/FO2<3.0とすること
    を特徴とする、溶銑の精錬方法。
    0<tanα/tanβ<2.75・・・(1)
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