以下、本発明による車両用駆動装置を適用したハイブリッド車両の一実施形態について図面を参照して説明する。図1はそのハイブリッド車両の構成を示す概要図である。
ハイブリッド車両Mは、図1に示すように、ハイブリッドシステムによって車輪例えば左右後輪Wrl,Wrrを駆動させる車両である。ハイブリッドシステムは、エンジン11および電動モータ20の2種類の動力源を組み合わせて使用するパワートレーンである。本実施形態の場合、エンジン11および電動モータ20の少なくとも何れか一方で車輪を駆動する方式であるパラレルハイブリッドシステムである。
ハイブリッド車両Mは、エンジン11、電動モータ20、クラッチ30(第1断接機構に相当)、トルクコンバータ40、変速機50、プロペラシャフト12、ディファレンシャル装置13、車輪Wrl,Wrr(駆動輪;左右後輪)および車輪Wfl,Wfr(操舵輪;左右前輪)を備えている。車輪Wrl,Wrrは、エンジン11および電動モータ20の少なくとも何れか一方の駆動力によって駆動されるものである。
ハイブリッド車両Mの車両用駆動装置は、エンジン11、電動モータ20、クラッチ30、トルクコンバータ40および変速機50によって構成されている。
クラッチ30、電動モータ20、トルクコンバータ40、変速機50、プロペラシャフト12およびディファレンシャル装置13は、駆動経路にその駆動経路に沿って直列に設けられている。駆動経路とは、エンジン11から車輪Wrl,Wrrまでの間の経路であって両者間で動力が伝達する経路である。
エンジン11は、ハイブリッド車両Mに搭載されて車輪Wrl,Wrrを駆動するものである。エンジン11は、燃料の燃焼によって作動され駆動力を発生させるものである。エンジン11の駆動力は、クランク軸11aから出力され、クラッチ30、電動モータ20、トルクコンバータ40、変速機50、プロペラシャフト12およびディファレンシャル装置13を介して車輪Wrl,Wrrに伝達されるように構成されている。
電動モータ20は、エンジン11と車輪Wrl,Wrrとの間の駆動経路上に設けられ、且つ車輪Wrl,Wrrを駆動するものである。電動モータ20の駆動力は、トルクコンバータ40、変速機50、プロペラシャフト12およびディファレンシャル装置13を介して車輪Wrl,Wrrに伝達されるように構成されている。
電動モータ20は、同期モータで構成されている。具体的には、ステータ21、ステータ21の係方向内側に同軸回転可能に配設されたロータ22およびモータ回転速度センサ23を備えている。
ステータ21には、ロータ22を回転させる磁界を形成するために複数のコイルが巻回されている。ロータ22には、複数の磁石が周方向に沿って設けられている。モータ回転速度センサ23は、ステータ21に配設され、ロータ22の回転速度(すなわち電動モータ20の回転速度)を検出するものである。モータ回転速度センサ23が検出した電動モータ20の回転速度は、モータECU73(後述する)に出力されるようになっている。なお、電動モータ20は、車輪駆動用の同期モータに限定されるものではない。
電動モータ20は、車両の加速時にはエンジン11の出力を補助し駆動力を高めるものであり、一方車両の制動時には発電を行って回生制動力を車輪に発生させるものである。また電動モータ20は、エンジン11の出力により発電を行うものであり、エンジン始動時のスタータとしても使える。
クラッチ30は、駆動経路上であって、電動モータ20とエンジン11との間に設けられ、解放時にエンジン11と電動モータ20との間の動力伝達を遮断し、係合時に動力伝達が可能となるものである。本実施形態においては、クラッチ30は湿式多板クラッチであり、通常時(非制御時)に動力を伝達するノーマルクローズ型のクラッチである。
具体的には、クラッチ30は、図2に示すように、摩擦部材31、シリンダ32、シリンダ32に軸方向に摺動可能に嵌挿されているピストン33および摩擦部材31を解放させる解放位置(図2にて実線にて示す位置)から摩擦部材31を係合させる係合位置にピストン33を移動するスプリング34を備えている。
摩擦部材31は複数のアウタクラッチプレート31aおよびインナクラッチプレート31bから構成されており、各クラッチプレート31a,31bは交互に軸方向に並設されている。アウタクラッチプレート31aは、ロータ22の内周面にスプライン係合されている。インナクラッチプレート31bは、クランク軸11aの外周面にスプライン係合されている。
シリンダ32は、ロータ22と一体的に回転されるものである。シリンダ32内には、ピストン33によって軸方向に区画された第1室32aおよび第2室32bが形成されている。第2室32b内には、ピストン33を第1室32a側に付勢するスプリング34が配設されている。
第1室32aは、第1室32aに油液を導入する供給路32aaが連通されている。ピストン33には、第1室32aと第2室32bを連通する連通孔33aが形成されている。ピストン33の第1室32a側には凸部33bが凸設されている。この凸部33bの先端が摩擦部材31と当接して押圧する。第2室32bは、第2室32bから油液を導出する排出路32baが連通されている。
図1に示すように、ハイブリッド車両Mは、クラッチ30に供給(給排)される油圧を制御(調整)するための油圧制御装置14を備えている。油圧制御装置14は、電磁切替弁、電動ポンプおよびリザーバ(いずれも図示省略)を含んで構成されている。油圧制御装置14は、クラッチ30への油圧の給排を制御してクラッチ30の断接(係合・解放)を制御している。
具体的には、油圧制御装置14がクラッチ30への油液供給を停止した状態で、クラッチ30から油圧が排出されていると、スプリング34の付勢力によりピストン33が第1室32a側へ(係合方向に)移動されるようになっている。そして、ピストン33の凸部33bが摩擦部材31を押圧すると、アウタクラッチプレート31aおよびインナクラッチプレート31bが圧接され、クランク軸11aとロータ22とが連結される(完全係合状態になる)。
一方、油圧制御装置14からクラッチ30に油液が供給されると、油液は第1室32aに供給される。このとき、ピストン33は、油圧によって押圧されて、スプリング34の付勢力に抗して第2室32b側へ移動されるようになっている。そして、ピストン33が摩擦部材31から離れると、アウタクラッチプレート31aおよびインナクラッチプレート31bの圧接が解除され、クランク軸11aとロータ22の駆動連結が解除される(図2に示す完全解放状態となる)。
トルクコンバータ40は、一般的なトルクコンバータであり、ポンプインペラ、タービンランナ(いずれも図示省略)およびロックアップクラッチ41(第2断接機構に相当)を含んで構成されている。
ポンプインペラは、電動モータ20の出力軸に連結されている。タービンランナは、作動流体を介してポンプインペラの回転駆動力が伝達されるものであり、変速機50の入力軸53に連結されている。ロックアップクラッチ41は、駆動経路上であって、電動モータ20と変速機50の間に設けられ、解放時に電動モータ20と車輪Wrl,Wrrとの間の動力伝達を遮断し、係合時に動力伝達が可能となるものである。すなわち、トルクコンバータ40は、駆動経路上であって、電動モータ20と変速機50との間に設けられ、電動モータ20の出力軸と変速機50の入力軸53とを直結するためのロックアップクラッチ41を備えるものである。
変速機50は、駆動経路上であって、電動モータ20と車輪Wrl,Wrrとの間に設けられ、車輪Wrl,Wrrに伝達される車輪の回転数を変更するものである。本実施形態においては、変速機50は、トルクコンバータ40と車輪Wrl,Wrrとの間に設けられている。変速機50は、一般的な自動変速機であり、プラネタリギヤユニット51、油圧制御装置52、入力軸53および出力軸54を含んで構成されている。
変速機50は、入力軸53から入力されるエンジン11の出力を増減して出力軸54から出力するものである。また、変速機50は、プラネタリギヤユニット51が備える各プラネタリギヤを組み合わせることによって成立する複数の変速段(例えば前進5段および後進1段)を備えている。前進段は、低速段から高速段に行くに従ってギヤ比が小さくなるように設定されている。変速機50は、アクセルペダル17(後述する)の開度、入力軸53および出力軸54の回転速度との関係に応じて変速段が変更されるようになっている。
油圧制御装置52は、変速機50への油圧の給排を制御して、変速機50を作動させて各変速段を成立させるものである。油圧制御装置52は、電磁切替弁(図示省略)および液圧ポンプ52aを含んで構成されている。液圧ポンプ52aは、エンジン11および電動モータ20のうち少なくとも一方によって駆動され、変速機50を作動するための作動液圧を発生するものである。液圧ポンプ52aは、本実施形態においては、電動モータ20の出力軸に配設され、例えばベーン式のポンプによって構成されている。また、油圧制御装置52は、油圧の給排を制御して、ロックアップクラッチ41の係合または解放を行うものである。
また、変速機50の出力軸54は、プロペラシャフト12に連結されている。出力軸54付近には、出力軸54の回転速度を検出してハイブリッドECU76(後述する)に出力する出力軸回転速度センサ55が設けられている。
また、ハイブリッド車両Mは、直接各車輪Wfl,Wfr,Wrl,Wrrに制動力を付与して車両を制動させるブレーキ装置60を備えている。ブレーキ装置60は、一般的な液圧ブレーキ装置であり、図1に示すように、ブレーキ61f,61r、ブレーキペダル62、マスターシリンダ(図示省略)およびリザーバ(図示省略)を含んで構成されている。
ブレーキ61f,61rは、直接各車輪Wfl,Wfr,Wrl,Wrrに液圧制動力を付与するものである。ブレーキ61f,61rの液圧は、ブレーキペダル62の入力に応じて制御される。ブレーキペダル62が踏み込まれているときは、ブレーキ61f,61rが各車輪Wfl,Wfr,Wrl,Wrrに液圧制動力を付与する。ブレーキ61f,61rは、例えばディスクブレーキによって構成されている。
ハイブリッド車両Mにおいては、エンジン11はエンジンECU71に電気的に接続され、油圧制御装置52は変速機ECU72に電気的に接続されている。また、電動モータ20は、バッテリ16に接続されているインバータ15を介してモータECU73に電気的に接続されている。バッテリ16は、バッテリECU74に電気的に接続されている。そして、油圧制御装置14はクラッチECU75に電気的に接続されている。エンジンECU71、変速機ECU72、モータECU73、バッテリECU74およびクラッチECU75は、CAN等により互いに通信可能に接続されるとともに、これらECU71〜75はハイブリッドECU76(制御装置に相当)ともCAN等により互いに通信可能に接続されている。
エンジンECU71は、エンジン11を制御するECU(エレクトロニック コントロール ユニット:電子制御装置。本明細書において同様。)であり、エンジン11の回転速度をエンジン11に設けられた回転速度センサ(図示省略)から入力している。回転速度センサはエンジン11のクランク軸11aの回転速度(すなわちエンジン回転速度)を検出するものである。
変速機ECU72は、変速機50を制御するECUであり、油圧制御装置52に制御指令を送信して各変速段を成立させるものである。モータECU73は、インバータ15を介して電動モータ20を上述した各駆動となるように制御するECUである。インバータ15は、直流電源としてのバッテリ16に電気的に接続されており、電動モータ20から入力した交流電圧を直流電圧に変換してバッテリ16に供給したり、逆にバッテリ16からの直流電圧を交流電圧に変換して電動モータ20へ出力したりするものである。
そして、バッテリECU74は、バッテリ16の状態を監視するECUであり、バッテリ16に設けられたバッテリ状態検出センサ16aからの検出結果からSOC(State Of Charge)を導出している。また、クラッチECU75は、クラッチ30を制御するECUであり、油圧制御装置14を構成する電磁切替弁および電動ポンプに制御指令をそれぞれ送信して、クラッチ30が係合または解放されるようにクラッチ30を制御するものである。
ハイブリッドECU76は、各ECU71〜75を統合的に制御するECUである。例えば、ハイブリッドECU76は、車両発進時には、電動モータ20でエンジン11を始動させ、車両加速時には、エンジン11の駆動力を電動モータ20の駆動力でアシストさせ、高速クルージング時には、電動モータ20のアシストなしでエンジン11の駆動力のみで駆動させるように、エンジン11、電動モータ20、クラッチ30などを制御することができる。また、電動モータ20の駆動力のみで走行させるように制御することができる。また、ハイブリッドECU76は、減速時(制動時)には、電動モータ20を発電させて回生制動力を車輪に発生させるように制御(回生制御)する。
ハイブリッドECU76には、図1に示す車両Mが備えるアクセルペダル17に付設されてその開度を検出するアクセル開度センサ17aが電気的に接続されている。アクセル開度センサ17aの検出結果は、ハイブリッドECU76に送信されるようになっている。さらに、ハイブリッドECU76には、ブレーキペダル62に付設されてブレーキペダル62が運転者の足によって踏み込まれているオンの状態と踏み込まれていないオフの状態を検出するブレーキスイッチ62aが電気的に接続されている。ブレーキスイッチ62aの検出結果は、ハイブリッドECU76に送信されるようになっている。
各ECU71〜76はそれぞれ、演算処理を実行するCPU部と、プログラムなどを保存するROMやRAMなどの記憶部と、情報を交換するための入出力部とを備えて構成されている。
次に、上述したハイブリッド車両Mにおける作動について、図3に示すフローチャートに沿って説明する。このとき、ハイブリッド車両Mが停止するために減速している状態から説明する。ブレーキペダル62はオンであるため、各車輪Wfl,Wfr,Wrl,Wrrに液圧制動力が付与されている。さらに、電動モータ20は発電を行っており、回生制動力が車輪Wrl,Wrrに付与されている。そして、クラッチ30は解放しており、ロックアップクラッチ41は係合している。また、エンジン11は停止しているため、エンジン11の回転数は零である。なお、エンジン11の回転数は、エンジンECU71に入力される回転速度センサが検出した値に基づいてハイブリッドECU76によって導出される。
ハイブリッドECU76は、車両Mの速度(以下、車速とする。)が第3速度(例えば15km/h)より大きいときは、ステップS102にて「NO」と判定し、車両Mの減速が継続される。一方、車両Mが減速されて車速が第3速度以下になったときに、ハイブリッドECU76は、ステップS102にて「YES」と判定し、油圧制御装置52に対するクラッチ指令をオフに設定してその旨を変速機ECU72に送信する。変速機ECU72は、クラッチ指令がオフである旨に基づいて油圧制御装置52を制御して、ロックアップクラッチ41を解放状態とする(ステップS104)。
なお、車速は、出力軸回転速度センサ55によって検出された値に基づいてハイブリッドECU76によって導出される。また、クラッチ指令は、各油圧制御装置に対する制御指令であり、クラッチ指令がオンのときは各クラッチを係合し、オフのときは各クラッチを解放する。
ハイブリッドECU76は、車両Mが減速されて、車速が第3速度よりも小さい第2速度(例えば10km/h)となったか否かを判定する。ハイブリッドECU76は、車速が第2速度より大きいときは、ステップS106にて「NO」と判定し、車両Mの減速が継続される。
一方、車速が第2速度以下になったときは、ハイブリッドECU76は、ステップS106にて「YES」と判定し、液圧ポンプ52aが変速機50を作動するための作動液圧を発生するように電動モータ20を駆動させる旨の制御指令をモータECU73に送信する。モータECU73は、インバータ15を制御して、所定回転数aにて電動モータ20を駆動する。(ステップS108)。
所定回転数aは、液圧ポンプ52aが変速機50を作動するための作動液圧を発生するために必要な電動モータ20の回転数である。電動モータ20の回転数は、モータECU73に入力されるモータ回転速度センサ23が検出した値に基づいて、ハイブリッドECU76によって導出される。本実施例においては、所定回転数aは例えば600rpmである。
ハイブリッドECU76は、車両Mが減速されて、車速が第2速度よりも小さい第1速度(例えば5km/h)となったか否かを判定する。ハイブリッドECU76は、車速が第1速度より大きいときは、ステップS110にて「NO」と判定し、電動モータ20が所定回転数aで駆動するとともに、車両Mの減速が継続される。
一方、車速が第1速度以下になったときに、ステップS110にて「YES」と判定する。このとき、ハイブリッドECU76は、車両Mを停止させる停止制御を開始する(ステップS112)。停止制御は、車速が第1速度以下となったときに、クラッチ30の係合を開始し、電動モータ20の駆動を停止して車両Mの車速を零にして、次の車両発進のための電動モータ20によるエンジン11の始動に備えるものである。
具体的には、クラッチ30の係合を開始するために、ハイブリッドECU76が油圧制御装置14に対するクラッチ指令をオンに設定して、その旨をクラッチECU75に送信する。クラッチECU75は、クラッチ指令がオンである旨に基づいて油圧制御装置14を制御して、クラッチ30の係合を開始する(ステップS112)。
さらに、ハイブリッドECU76は、電動モータ20を停止させる指令をモータECU73に送信し、モータECU73がインバータ15を制御して、電動モータ20を停止させる制御を開始する(ステップS112)。なお、このときモータECU73が実行する制御は、電動モータ20の目標回転数を零としたPID制御である。
そして、ハイブリッドECU76は、電動モータ20の回転数が零(すなわち車速が零)であるか否かを判定する(ステップS114)。車両Mが停止していない場合、すなわち、電動モータ20の回転数が零でなければ、ステップS114にて「NO」と判定し、電動モータ20を停止させる制御を継続する。一方、車両Mが停止して、電動モータ20の回転数が零となれば、ハイブリッドECU76は、ステップS114にて「YES」と判定し、停止制御を終了する(ステップS116)。
そして、ブレーキペダル62がオンされて車両Mが停止している状態において、ハイブリッドECU76は、運転者が車両Mを発進させるために、運転者がブレーキペダル62から足を離したか否かを判定する。すなわち、ハイブリッドECU76は、ブレーキペダル62がオフとされたか否かを判定する(ステップS118)。車両Mの停止状態を継続させるためにブレーキペダル62がオンであるときは、ステップS118にて「NO」と判定する。
一方、ブレーキペダル62がオフとされたときは、ハイブリッドECU76は、ステップS118にて「YES」と判定し、電動モータ20によりエンジン11を始動させる制御を行う(ステップS120)。具体的には、ハイブリッドECU76は、電動モータ20によってエンジン11を始動させる旨の制御指令をモータECU73に送信する。モータECU73は、インバータ15を制御して、エンジン11の回転数が所定回転数aとなるように電動モータ20を駆動する。そして、ハイブリッドECU76は、エンジンECU71にエンジン11を始動させる制御指令を送信し、エンジンECU71はエンジン11を着火する。
次に、上述したフローチャートに沿ってハイブリッド車両Mの作動について、図4に示すタイムチャートを用いて説明する。車両Mの車速が第3速度より大きく、車両Mが停止するために減速している状態から説明する。
このとき、ブレーキペダル62はオンであるため、各車輪Wfl,Wfr,Wrl,Wrrに液圧制動力が付与されている。また、クラッチ30は解放しており、ロックアップクラッチ41は係合している。そして、エンジン11は停止しているため、図4に示す破線によって表されているエンジン11の回転数は零である。さらに、ハイブリッドECU76は、回生制御を行っており、回生制動力が車輪Wrl,Wrrに付与されている。よって、電動モータ20の出力トルクはマイナスを表している。
各車輪に付与されている液圧制動力および回生制動力によって、車両Mが減速して車速が第3速度になると(時刻t1;ステップS102)、ハイブリッドECU76のクラッチ指令によって、ロックアップクラッチ41が解放する(ステップS104)。そして、さらに車両Mは減速して、減速に伴う出力軸54の回転数の低下とともに、電動モータ20の回転数が低下する。
車両Mが減速して車速が第2速度になると(時刻t2;ステップS106)、ハイブリッドECU76は回生制御を終了してモータECU73への制御指令を行い、モータECU73が電動モータ20を所定回転数a一定に保持して駆動させる(ステップS108)。本実施例においては、所定回転数aにて電動モータ20が駆動するときの電動モータ20の出力トルクは、例えば50N・mである。なお、このとき、液圧ポンプ52aによって変速機50が作動する作動液圧が発生しているため、仮にブレーキペダル62をオフとすると、各車輪に液圧制動力が付与されず、クリープ現象によって車両Mが低速で走行する。
さらに、車両Mが各車輪に付与されている液圧制動力によって減速されて、車速が第1速度となると(時刻t3;ステップS110)、ハイブリッドECU76は、車両Mの停止制御を開始する(ステップS112)。
具体的には、ハイブリッドECU76のクラッチ指令によって、クラッチECU75がクラッチ30の係合を開始する(ステップS112)。クラッチECU75が油圧制御装置14を制御して、クラッチ30への油圧の供給を停止する。そして、スプリング34の付勢力によって、ピストン33が係合位置に移動して、凸部33bが摩擦部材31を押圧する。このとき、ロータ22が回転しているため、アウタクラッチプレート31aとインナクラッチプレート31bは、回転方向に摺動しながら押圧される。そして、各クラッチプレート31a,31bが圧接されると、クランク軸11aとロータ22とが連結される。
また、ハイブリッドECU76の制御指令によって、モータECU73がインバータ15を制御して、電動モータ20を停止する制御を開始する(ステップS112)。すなわち、電動モータ20の回転速度が目標回転数の零となるように、電動モータ20の出力トルクが制御される。
ここで、エンジン11の回転数が零であるため、電動モータ20の回転数が零となれば、車輪Wrl,Wrrへの駆動力はなくなる。また、ブレーキペダル62はオンであるため、各車輪に付与されているブレーキ61f,61rの液圧制動力によって、車両Mの速度が零になる(時刻t4)。したがって、ハイブリッドECU76は、電動モータ20の回転数が零(すなわち車速が零)となると(ステップS114)、車両Mが停止したとして、車両Mの停止制御を終了する(ステップS116)。
なお、図4に示すエンジン11の回転数は、電動モータ20の回転数が零となるまでは破線で表され、電動モータ20の回転数が零となった後は電動モータ20の回転数とともに実線で表す(クラッチ30が係合しているため両回転数は一致している)。
そして、ブレーキペダル62がオンされて車両Mが停止している状態から、運転者が車両Mを発進させるために、ブレーキペダル62がオフとされると(時刻t5;ステップS118)、ハイブリッドECU76は、電動モータ20によりエンジン11を始動させる制御を行う(ステップS120)。ハイブリッドECU76の制御指令によって、モータECU73がインバータ15を制御して、回転数が所定回転数aとなるように電動モータ20を駆動する。本実施例においては、このときの電動モータ20の出力トルクは、例えば350N・mである。
エンジン11の回転数が所定回転数aに達すると、モータECU73は、インバータ15を制御して、電動モータ20の出力を停止する。このとき、クラッチ30が係合しているため、エンジン11の駆動力によって、電動モータ20の回転数も所定回転数aとなる。
ここで、上述した電動モータ20によりエンジン11を始動させる際に、クラッチ30の係合が完了している場合は、クラッチ30は滑らないため、クラッチ30の摩耗は生じない。
なお、時刻t3から時刻t4の間で、電動モータ20の出力トルクがマイナスとなれば、回生制御が行われる。これにより、係合時におけるクラッチ30への負荷が軽減するため、クラッチ30の摩耗が抑制される。
また、車速が零となる前である第1速度(かつブレーキペダル62がオン)にクラッチ30の係合を開始(ステップS112)しているため、車両停止後すぐに車両Mを発進させる場合であっても、クラッチ30が係合する時間を待つことなく電動モータ20によってエンジン11を始動させるため、エンジン11によって車両Mをスムーズに発進させることができる。
すなわち、クラッチ30が解放され、かつエンジン11が停止され、少なくともブレーキ61f,61rによる液圧制動力によって車両Mが停止される間に、車両Mの速度が第1速度となったときに、ハイブリッドECU76は、クラッチ30の係合を開始するようにクラッチECU75を介してクラッチ30に指令し、車両Mが停止された後発進されるときに、エンジン11および電動モータ20の回転数が零の状態で、エンジン11を始動するように電動モータ20に指令する。
本実施形態によれば、クラッチ30が解放され、かつエンジン11が停止され、少なくともブレーキ61f,61rによる液圧制動力によって車両Mが停止される間に、車速が第1速度となったときに、ハイブリッドECU76は、クラッチ30の係合を開始するようにクラッチ30に指令する。よって、エンジン11の回転数が零かつ電動モータ20の回転数が低い状態でクラッチ30の係合が開始される。すなわち、エンジン11と電動モータ20との回転数の差が小さい状態でクラッチ30の係合が行われるため、クラッチ30の滑りが抑制されて摩耗量が抑制される。よって、クラッチ30が高価にならないようにすることができる。
そして、車両Mを停止させた後車両Mを発進させるために、電動モータ20によってエンジン11を始動させる際には、エンジン11と電動モータ20の回転数は零であるため、両回転数の間に差がない。すなわち、クラッチ30が完全に係合している場合は、クラッチ30は滑らない。よって、クラッチ30の滑りが抑制されるため、クラッチ30の摩耗が抑制される。したがって、クラッチ30が高価にならないようにすることができる。
また、クラッチ30の係合が開始されるとき、ハイブリッドECU76は、ロックアップクラッチ41が解放状態となるようにロックアップクラッチ41に指令し、電動モータ20の回転が停止するように電動モータ20に指令するため、電動モータ20の回転数を短時間で零にすることができる。これにより、クラッチ30の係合が開始される際に、エンジン11と電動モータ20との回転数の差を短時間で小さくすることができる。したがって、クラッチ30の摩耗量をさらに抑制できるため、クラッチ30が高価にならないようにすることができる。
そして、ハイブリッドECU76は、第1速度より大きい第2速度から第1速度まで車速が減少される間に、液圧ポンプ52aが作動液圧を発生するように電動モータ20に指令するとともに、ロックアップクラッチ41が解放状態となるため、車速が第1速度となるまで、変速機を作動させることができる。これにより、第1速度をより小さい速度に設定することが可能となるため、クラッチ30の係合の際に、エンジン11と電動モータ20との回転数の差をより小さくすることができる。
さらに、ハイブリッドECU76は、クラッチ30の係合が開始されるとき、ロックアップクラッチ41が解放された状態で、電動モータ20の回転が停止するように電動モータ20に指令するため、電動モータ20の回転数を短時間で零にすることができる。これにより、クラッチ30の係合の際に、エンジン11と電動モータ20との回転数の差を短時間小さくすることができる。したがって、クラッチ30の摩耗量をさらに抑制できるため、クラッチ30が高価にならないようにすることができる。
また、第2断接機構は、ロックアップクラッチ41であるため、既存の部品を使用することができる。また、ロックアップクラッチ41の係合の際にロックアップクラッチ41の摩耗を抑制することができる。したがって、第2断接機構も高価にならないようにすることができる。
なお、本発明による車両用駆動装置の他の実施形態として、図3に示すステップS118におけるブレーキペダル62のオンの状態からオフの状態への切り替わりを、ブレーキスイッチ62aによって検出しているが、ブレーキペダル62の踏込量を検出するストロークセンサを設けて、ストロークセンサによって検出させるようにしても良い。具体的には、ブレーキペダル62が踏み込まれた状態から、所定の踏込量までブレーキペダル62が戻されたときに、ブレーキペダル62をオンの状態からオフの状態に切り替えるようにすると良い。
また、本実施形態におけるステップS118での判定に、アクセル開度センサ17aを用いるようにしても良い。具体的には、ステップS118において、ブレーキペダル62がオフの状態となった後、アクセルペダル17が踏み込まれたことがアクセル開度センサ17aによって検出されたときに、ハイブリッドECU76が「YES」と判定するようにしても良い。そして、電動モータ20によりエンジン11を始動させるようにしても良い(ステップS120)。
また、本実施形態における第3速度は、第2速度よりも大きい速度で設定されているが、第3速度を第2速度と同じ車速としても良い。この場合、車両Mが第2速度となる直前までロックアップクラッチ41が係合されているため、車両Mの減速時における回生制御をより効率よく行うことができる。
また、本実施形態におけるハイブリッドECU76は、クラッチECU75を介してクラッチ30に指令している。これに代えて、ハイブリッドECU76は、クラッチECU75を介さずに、クラッチ30に直接的に指令するようにしても良い。