JP6186108B2 - フェノール系樹脂組成物 - Google Patents
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以下に本発明を詳述する。
そこで、本発明者らは、フェノール系樹脂組成物に、特定の構造を有するジスルフィド化合物を配合することにより、該フェノール系樹脂組成物の金属密着性及び硬化物の耐熱性を大きく向上させることができることを見出し、本発明を完成させるに至った。
上記ジスルフィド化合物を含有することにより、本発明のフェノール系樹脂組成物は、金属密着性及び硬化物の耐熱性に優れるものとなる。また、上記ジスルフィド化合物は、フェノール系樹脂の硬化を促進する触媒としての役割も有する。
本明細書において上記「フェノール系樹脂」とは、硬化物中の繰り返し単位中に、フェノール構造を有する樹脂を意味する。
上記フェノール系樹脂としては、例えば、ベンゾオキサジン樹脂、ノボラック型フェノール樹脂やレゾール型フェノール樹脂等のフェノール樹脂等が挙げられる。なかでも、得られるフェノール系樹脂組成物を硬化させる際に副生ガスを発生させないことから、ベンゾオキサジン樹脂が好適である。
上記ベンゾオキサジン樹脂としては、例えば、下記一般式(4−1)又は(4−2)で表される樹脂、下記一般式(5−1)、(5−2)、(5−3)、又は、(5−4)で表される樹脂、下記一般式(6)で表される樹脂、ベンゾオキサジンの開環重合により得られる樹脂等が挙げられる。なかでも、一般式(4−1)又は(4−2)で表される樹脂が好ましく、一般式(4−1)で表される樹脂がより好ましい。
上記その他の樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル、ビニルエステル樹脂、ジアリルフタレート樹脂、ポリウレタン、ケイ素樹脂、ポリイミド、塩化ビニル樹脂、塩化ビニリデン樹脂、酢酸ビニル樹脂、ポリスチレン、メタクリル樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、フッ素樹脂、ポリアミド、ポリアセタール、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリフェニレンエーテル、ポリフェニレンスルフィド、ポリアリレート、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルエーテルケトン、液晶性ポリマー等が挙げられる。
上記ノボラック型フェノール樹脂を用いる場合の硬化剤としては、ヘキサミチレンテトラミンが一般的であり、本発明のフェノール系樹脂組成物においても用いることができる。また、上記レゾール型フェノール樹脂を用いる場合の硬化剤としては、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、アルカリ土類金属の水酸化物、アンモニアや第三級アミン等が挙げられる。
その他の硬化剤としては、例えば、アミン系硬化剤、酸無水物系硬化剤、ポリアミド系硬化剤、潜在性硬化剤である三フッ化ホウ素アミン錯体やジシアンジアミド等を、それぞれの用途に応じて使用することができる。
上記アミン系硬化剤としては、例えば、ジエチレントリアミンやトリエチレンテトラミン等の脂肪族ポリアミン、メタフェニレンジアミンやジアミノジフェニルメタンやジアミノジフェニルスルホン等の芳香族ポリアミンを使用することができる。しかしながら、上記アミン系硬化剤は金属に対して優れた接着性を示すものの、人体への毒性や高い粘性および着色の原因となる。
上記酸無水物系硬化剤としては、例えば、無水コハク酸、無水マレイン酸、無水フタル酸、無水ヘキサヒドロフタル酸、無水メチルヘキサヒドロフタル酸、無水メチルテトラヒドロフタル酸、無水ナジック酸、水素化無水ナジック酸、無水トリメット酸、無水ピロメリット酸等を用いることができる。
上記酸無水物系硬化剤は低い粘度で扱いやすく、配合物の可使時間が比較的長く、硬化物が電気絶縁性、機械的特性、耐熱安定性、耐薬品性に優れるものとなり、更に、上記アミン系硬化剤と比較して安全衛生性に優れている等の利点を有しており、LED素子等の光半導体の封止材料、半導体の封止材料、電気・電子絶縁材料に好適に用いることができる。これらの酸無水物系硬化剤の中でも、無水フタル酸、無水ヘキサヒドロフタル酸、無水メチルヘキサヒドロフタル酸が好適に用いられる。
これらの硬化剤は、単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
また、上記硬化剤として半導体封止材料に好適なフェノール樹脂を用いる場合、上記硬化促進剤として、2−メチルイミダゾール、2−エチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール等のイミダゾール類、2−(ジメチルアミノメチル)フェノール、1,8−ジアザビシクロ(5.4.0)−ウンデセン−7等の第3級アミン類、トリフェニルホスフィン等のホスフィン類、オクチル酸スズ等の金属化合物等を用いることが好ましい。
上記無機充填剤としては、例えば、ガラス繊維、溶融シリカ、結晶シリカ、アルミナ、水酸化アルミニウム、クレー、タルク、カオリン等が挙げられる。
上記離型剤としては、例えば、ステアリン酸、ステアリン酸亜鉛、モンタン酸、ポリオレフィン等が挙げられる。
上記シランカップリング剤としては、例えば、アミノシラン、エポキシシラン、メルカプトシラン等が挙げられる。
上記着色剤としては、例えば、無機顔料や、カーボンブラック等の有機顔料等が挙げられる。
フェノール系樹脂として、ベンゾオキサジン樹脂(四国化成社製、「F−a型」)100重量部に対して、ジスルフィド化合物として4,4’−ジチオジアニリン(住友精化社製、「DTDA」)0.1重量部を加えて、140℃に加熱しながら混合し、フェノール系樹脂組成物を得た。
4,4’−ジチオジアニリンの配合量を1重量部に変更したこと以外は、実施例1と同様にしてフェノール系樹脂組成物を得た。
4,4’−ジチオジアニリンの配合量を2重量部に変更したこと以外は、実施例1と同様にしてフェノール系樹脂組成物を得た。
4,4’−ジチオジアニリンに代えて、3,3’−ジヒドロキシジフェニルジスルフィド(東京化成社製)2重量部を配合したこと以外は、実施例1と同様にしてフェノール系樹脂組成物を得た。
4,4’−ジチオジアニリンに代えて、1、2−ジチアン2重量部を配合したこと以外は、実施例1と同様にしてフェノール系樹脂組成物を得た。
4,4’−ジチオジアニリンに代えて、trans−4,5−ジヒドロキシ−1,2−ジチアン(アルドリッチ社製)2重量部を配合したこと以外は、実施例1と同様にしてフェノール系樹脂組成物を得た。
4,4’−ジチオジアニリンを配合せず、ベンゾオキサジン樹脂のみを用いた。
4,4’−ジチオジアニリンに代えて、モノスルフィド化合物である4,4’−チオジフェノール(住友精化社製、「TDP」)2重量部を配合したこと以外は、実施例1と同様にしてフェノール系樹脂組成物を得た。
4,4’−ジチオジアニリンに代えて、トリアジン化合物であるメラミンモノマー(東京化成社製)2重量部を配合したこと以外は、実施例1と同様にしてフェノール系樹脂組成物を得た。
ビスフェノールA型エポキシ樹脂(三菱化学社製、「jER828」)100重量部に対して、硬化剤としてリカシッドMH−700(新日本理化社製、4−メチルヘキサヒドロ無水フタル酸/ヘキサヒドロ無水フタル酸=70/30)90重量部、硬化促進剤として2−エチル−4−メチルイミダゾール(四国化成社製、「キュアゾール2E4MZ」)1重量部を添加し、エポキシ樹脂組成物を得た。
ビスフェノールA型エポキシ樹脂(三菱化学社製、「jER828」)100重量部に対して、4,4’−ジチオジアニリン(住友精化社製、「DTDA」)2重量部を溶解させ、硬化剤としてリカシッドMH−700(新日本理化社製、4−メチルヘキサヒドロ無水フタル酸/ヘキサヒドロ無水フタル酸=70/30)90重量部、硬化促進剤として2−エチル−4−メチルイミダゾール(四国化成社製、「キュアゾール2E4MZ」)1重量部を添加し、エポキシ樹脂組成物を得た。
実施例1〜6及び比較例2、3で得られたフェノール系樹脂組成物、比較例1のベンゾオキサジン樹脂、及び、比較例4、5で得られたエポキシ樹脂組成物について以下の評価を行った。結果を表1〜3に示した。
公称厚さ35μm、平滑面粗度Rz=0.25μmの電解銅箔(福田金属粉箔工業社製)を5cm以上×5cm以上の大きさに切断し、アセトンで防腐剤を洗浄した後、10%硝酸で30秒間エッチングし、蒸留水で洗浄した後、60℃で乾燥させて、試験片とした。
実施例及び比較例で得られたフェノール樹脂組成物、ベンゾオキサジン樹脂、エポキシ樹脂組成物をそれぞれアルミ板に塗布し、その上から得られた試験片の平滑面を重ね合わせた。150℃で3時間加熱した後、更に、180℃で3時間加熱して硬化させ、硬化後、幅1cmずつカッターで切れ目を入れ、90度剥離試験片とした。なお、アルミ板については、アセトンで脱脂後、研磨紙(600番)で研磨し、アセトンで研磨屑を除去し乾燥させたものを使用した。
得られた90度剥離試験片について、DAGE−SERISE4000(アークラック社製)を用いて、試験速度25mm/minの条件で90度剥離接着強度試験を実施した。
実施例及び比較例で得られたフェノール系樹脂組成物、ベンゾオキサジン樹脂、エポキシ樹脂組成物をそれぞれ150℃で3時間、180℃で3時間加熱して硬化させ、硬化物を細かく粉砕し測定試料とした。
得られた試験片について、示差熱熱重量同時測定装置(エスアイアイ・ナノテクノロジー社製、「TG/DTA6200」)を用いて、昇温条件35〜530℃、10℃/minで、5%重量減少温度を測定した。
実施例3、4及び比較例3で得られたフェノール系樹脂組成物、並びに、比較例1のベンゾオキサジン樹脂について、示差走査熱量計(エスアイアイ・ナノテクノロジー社製、「DSC6220」)を用いて、35〜320℃、10℃/minの昇温条件で硬化時の発熱温度を測定した。
なお、表3に示した第一発熱温度並びに第二発熱温度の発熱開始温度及び発熱ピーク温度が低い方が、より低温で硬化することを示す。
一方で、表2より、ジスルフィド結合を有しないものをフェノール系樹脂に添加した場合(比較例2)では、金属密着性の向上効果が見られず、また、トリアジン化合物を添加した場合(比較例3)では、金属密着性の向上は見られたが、得られたフェノール系樹脂組成物の硬化物が耐熱性に劣るものとなった。
また、比較例4、5の結果より、上記一般式(1)で表されるジスルフィド化合物はエポキシ樹脂に対しては優れた効果を示さないことが分かる。また、耐熱性に関しても、該ジスルフィド化合物を配合すると、低下が見られた。
また、表3より、ベンゾオキサジン樹脂のみを用いた場合(比較例1)に対して、上記一般式(1)で表されるジスルフィド化合物を添加すると、硬化温度がより低温となった(実施例3、4)。トリアジン化合物を添加した場合(比較例3)は、硬化温度が低くなったが、実施例のものと比べると効果は小さかった。
Claims (2)
- フェノール系樹脂及びジスルフィド化合物のみからなり、
前記ジスルフィド化合物は、4,4’−ジチオジアニリンであり、
前記フェノール系樹脂は、ベンゾオキサジン樹脂である
ことを特徴とするフェノール系樹脂組成物。 - ジスルフィド化合物の含有量が、フェノール系樹脂100重量部に対して0.01〜20重量部であることを特徴とする請求項1記載のフェノール系樹脂組成物。
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