JP4016989B2 - 半導体封止用樹脂組成物とそれを用いた半導体装置 - Google Patents

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Description

この出願の発明は、リードフレーム型半導体装置を封止するために用いられる半導体封止用樹脂組成物と、この半導体封止用樹脂組成物を用いて封止した半導体装置に関するものである。
電気、電子部品や半導体装置などの封止においては、エポキシ樹脂組成物を用いた低圧トランスファー成形が主流となっている。このようなエポキシ樹脂組成物による封止方法では、主に、樹脂成分としてo−クレゾールノボラック型エポキシ樹脂を、硬化剤成分としてフェノールノボラックを配合した樹脂組成物が使用されている。
一方、近年、集積回路(IC)、大規模集積回路(LSI)、超大規模集積回路(VLSI)などの電子部品や半導体装置の高密度化、高集積化に伴い、それらの実装方式は、挿入実装から表面実装に移り変わりつつある。また実装時に使用されるはんだについては、環境対応の観点から鉛フリー化が進んでいる。そのため、実装温度が、従来の共晶はんだを使用した場合に比較して約20℃上昇し、吸湿リフロー後の半導体パッケージ内における剥離の発生頻度が上がるという問題が見られるようになった。
さらに、近年、集積回路のリードフレームとして42アロイ合金あるいはCu合金に銀(Ag)メッキが施されているものや、はんだメッキに換わり、パラジウム(Pd)、パラジウム-金(Pd-Au)等によりメッキが施されているものが使用されるようになってきた。しかし、このようなメッキ処理を行うことにより、半導体封止用樹脂組成物とリードフレームとの接着性が低下したり、吸湿リフロー後の剥離が生じたりするという新たな問題が生じていた。
そこで、半導体封止用樹脂組成物の耐熱性や密着性を向上するために、様々な試みがなされてきた。具体的には、特殊な構造を有する樹脂を使用し、半導体封止用樹脂組成物そのものを低吸湿化、低弾性化することにより、リードフレームとの接着性を上げることが検討された(例えば、特許文献1、2)。しかし、このような半導体封止用樹脂組成物でも、Ag、Pd、Pd-Au等に対する接着性が十分とは言い難い上、樹脂骨格そのものが異なるため、十分な成形性や電気特性が得られないという問題が見られた。
また、シリコーン化合物を添加することにより低弾性化した半導体封止用樹脂組成物も検討された(特許文献3、4)が、このような半導体封止用樹脂組成物でも、Ag、Pd、Pd-Au等に対する接着性の大幅な向上は実現されず、反対に吸湿性が高くなるという新たな問題が発生した。
特開平5−226523 特開平5−291439 特開平5−021651 特開平7−150014
そこで、この出願の発明は、以上のとおりの事情に鑑みてなされたものであり、従来技術の問題点を解消し、Ag、Pd、Pd-Auとの接着性が高く、吸湿リフロー後の剥離の少ない新しい半導体封止用樹脂組成物と、このような半導体封止用樹脂組成物を用いて封止した半導体装置を提供することを課題としている。
この出願の発明は、上記の課題を解決するものとして、第1には、少なくとも、エポキシ樹脂と、硬化剤と、無機充填材と、次式(I)
(ただし、R1およびR2は、同一または別異に、水素原子、または、アルキル基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、およびアミノ基からなる群より選択される置換基であり、R1およびR2のうち少なくとも1つはカルボキシル基、または、アミノ基である)
で表されるジフェニルジスルフィド誘導体を含有するリードフレーム型半導体装置封止用エポキシ樹脂組成物であって、ジフェニルジスルフィド誘導体の含有量が、樹脂組成物の全体量に対して0.01〜1重量%であることを特徴とする半導体封止用樹脂組成物を提供する。
また、この出願の発明は、第2には、ジフェニルジスルフィド誘導体は、2, 2'-ジカルボキシジフェニルジスルフィドまたは4, 4'-ジアミノジフェニルジスルフィドであることを特徴とする前記の半導体封止用樹脂組成物を提供する。
そして、この出願の発明は、第3には、前記いずれかの半導体封止用樹脂組成物によって封止されてなることを特徴とする半導体装置をも提供する。
上記第1の発明の半導体封止用樹脂組成物は、少なくとも、エポキシ樹脂と、硬化剤と、無機充填材と、次式(I)
(ただし、R1およびR2は、同一または別異に、水素原子、または、アルキル基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、およびアミノ基からなる群より選択される置換基であり、R1およびR2のうち少なくとも1つはカルボキシル基、または、アミノ基である)
で表されるジフェニルジスルフィド誘導体を含有するものであり、ジフェニルジスルフィド誘導体を、樹脂組成物の全体量に対して0.01〜1重量%で含有することから、Ag、Pd、Pd-Au等でメッキされたリードフレームに対しても高い接着性を発揮し、さらに耐湿信頼性が向上される。
また、上記第2の発明の半導体封止用樹脂組成物では、ジフェニルジスルフィド誘導体を、2, 2'-ジカルボキシジフェニルジスルフィドまたは4, 4'-ジアミノジフェニルジスルフィドとすることにより、高いリードフレーム接着性と耐湿性が得られるとともに、高い成形性が維持される。
そして、上記第3の発明の半導体装置は、前記いずれかの半導体封止用樹脂組成物を用いて封止成形することにより製造されることから、吸湿リフロー性に優れたものとなる。
この出願の発明の半導体封止用樹脂組成物は、少なくとも、エポキシ樹脂と、硬化剤と、無機充填材と、ジフェニルジスルフィド誘導体を含有するものであり、ジフェニルジスルフィド誘導体の含有量が、樹脂組成物の全体量に対して0.01〜1重量%であることを特徴とする。
この出願の発明の半導体封止用樹脂組成物において、エポキシ樹脂は、一般的に半導体封止用として使用される各種のエポキシ樹脂であってよく、とくに限定されない。例えば、o−クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ナフタレン環含有エポキシ樹脂等を挙げることができる。これらは1種に限定されず、複数を組み合わせて使用してもよい。
また、硬化剤としては、一般的に半導体封止用として使用される各種のものを適用できる。具体的には、フェノールノボラック樹脂、ジシクロペンタジエン型フェノール樹脂、フェノールアラルキル樹脂、クレゾールノボラック樹脂、ナフトールアラルキル樹脂等のナフタレン骨格含有フェノール樹脂、多価フェノール化合物が例示される。これらは1種に限定されず、複数種を組み合わせて使用してもよい。このとき、エポキシ樹脂と硬化剤の含有量はとくに限定されないが、例えば、エポキシ樹脂と硬化剤との当量比が0.5〜1.5となるように配合することができる。
さらに、無機充填材としては、一般的に半導体封止用として使用されるものであればよく、その種類は特に限定されない。例えば、溶融シリカ、結晶シリカ、アルミナ、窒化ケイ素、窒化アルミニウム等が挙げられる。無機充填材の含有量もとくに限定されないが、例えば、半導体封止用樹脂組成物全量に対して60〜93重量%とすることができる。
さらに、この出願の発明の半導体封止用樹脂組成物において必須成分として含有されるジフェニルジスルフィド誘導体は、次式(I)
で表されるものである。
このとき、式(I)において、R1およびR2は、同一または別異に、水素原子、または、メチル(-CH3)、エチル(-C2H5)、プロピル(-C3H7)、ブチル(-C4H9)等のアルキル基、ヒドロキシル(-OH)基、カルボキシル(-COOH)基、およびアミノ(-NH2)基からなる群より選択される置換基である。ただし、R1およびR2のうち少なくとも1つは、カルボキシル基、または、アミノ基であるとする。
このとき、水素原子や置換基は、フェニル環の2〜6位のいずれに結合していてもよく、またフェニル環上の2箇所以上の位置に、同一または別異のR1やR2が結合していてもよい。
このようなジフェニルジスルフィド誘導体としては、具体的には、R1およびR2が各々フェニル環の2位と2’位に結合したカルボキシル基である次式(a)の2, 2'-ジカルボキシジフェニルジスルフィド、R 1 およびR 2 が各々フェニル環の4位と4’位に結合したアミノ基である次式(b)の4, 4'-ジアミノジフェニルジスルフィドが例示される。
もちろん、ジフェニルジスルフィド誘導体としては、例えば、R1とR2の一方がフェニル環の2位に結合し、他方がフェニル環の3’位に結合した場合のような非対称のものも考慮される。
これらのジフェニルジスルフィド誘導体の中でも、とくに、4, 4'-ジアミノジフェニルジスルフィド(b)を使用した場合には、半導体封止用樹脂組成物を使用した半導体装置において吸湿リフロー後の剥離発生が効果的に低減される上、良好な成形性が維持され、好ましい。
この出願の発明の半導体封止用樹脂組成物において、上記式(I)で表されるジフェニルジスルフィド誘導体の含有量は、樹脂組成物の全体量に対して0.01〜1重量%とする。ジフェニルジスルフィド誘導体の含有量が0.01重量%未満の場合には、このような半導体封止用樹脂組成物を使用しても吸湿リフロー性が十分に向上されず、1重量%より多い場合には、半導体封止用樹脂組成物の成形性が著しく悪化し、良好な成形物を得られなくなるため、好ましくない。
この出願の発明の半導体封止用樹脂組成物は、以上のとおり、エポキシ樹脂と、硬化剤と、無機充填材と、式(I)で表されるジフェニルジスルフィド誘導体を必須成分として含有するものであるが、これら以外にも、一般的に半導体封止用として使用される各種の添加剤を含有していてもよい。
具体的には、カルナバワックス、ポリエチレンワックス、ステアリン酸、モンタン酸、カルボキシル基含有ポリオレフィン等の離型剤、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン等のシランカップリング剤、トリフェニルホスフィン(TPP)、トリメチルホスフィン等の有機リン化合物類、2−メチルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール等のイミダゾール類や、1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7、トリエタノールアミン、ベンジルジメチルアミン等の三級アミン類等の硬化促進剤、リン系難燃剤、ブロム化合物、三酸化アンチモン等の難燃剤、カーボンブラック、有機染料等の着色剤や、表面がシリコーンレジンによって被覆されたシリコーンゴムパウダー等の改質剤を挙げることができる。
以上のとおりのこの出願の発明の半導体封止用樹脂組成物は、上記のエポキシ樹脂、硬化剤、無機充填材、ジフェニルジスルフィド誘導体、さらに必要に応じて各種の添加剤を配合し、これをミキサーやブレンダーで均一に混合した後に、加熱ロールやニーダー等で混練することによって調製できるものである。ここで、上記の各成分の配合順序は特に限定されるものではなく、また混練物を必要に応じて冷却固化させ、粉砕してペレットやパウダーにしたり、あるいはタブレット化したりして使用することができる。
そして、このようにして調製した半導体封止用樹脂組成物を用いて封止成形することによって、半導体装置を作製することができる。例えば、IC等の半導体素子を搭載したリードフレームをトランスファー成形金型にセットし、トランスファー成形を行うことによって、半導体素子を半導体封止用樹脂組成物で封止した半導体装置を作製することができるものである。
このようにして得られる半導体装置では、封止材が前記のジフェニルジスルフィド誘導体を0.01〜1重量%含有する半導体封止用樹脂組成物であることから、高い接着強度を有し、吸湿リフロー性に優れたものとなる。
以下、実施例を示し、この発明の実施の形態についてさらに詳しく説明する。もちろん、この発明は以下の例に限定されるものではなく、細部については様々な態様が可能であることは言うまでもない。
<実施例1〜、比較例1〜2>
(1)半導体封止用樹脂組成物の調製
表1に示す配合量で各成分を配合し、ブレンダーで30分間混合して均一化した後、80℃に加熱したニーダーで混練溶融させて押し出し、冷却した後、粉砕機で所定の粒度に粉砕して粉粒状の半導体封止用樹脂組成物を得た。
なお、エポキシ樹脂としては、o−クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(住友化学工業(株)製「ESCN-195XL-3」エポキシ当量195)またはビフェニル型エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン(株)製「YX4000H」エポキシ当量195)を使用した。
また、硬化剤としては、フェノールノボラック樹脂(荒川化学工業(株)製「タマノル752」水酸基当量104)またはフェノールアラルキル樹脂(三井化学(株)製「ミレックスXLC-3L」水酸基当量172)を、ジフェニルジスルフィド誘導体としては、2, 2'-ジカルボキシジフェニルジスルフィド(和光純薬工業(株)製)または4, 4'-ジアミノジフェニルジスルフィド(住友精化(株)製)を使用した。
さらに、難燃剤としてブロム化エポキシ樹脂(住友化学工業(株)製「ESB400T」エポキシ当量400)および三酸化アンチモンを、硬化促進剤としてトリフェニルホスフィン(北興化学工業(株)「TPP」)を、離型剤としてカルナバワックスを、着色剤としてカーボンブラックを、無機充填材として溶融シリカ(平均粒径20μm)を、そして、シランカップリング剤としてγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業(株)「KBM403」)を用いた。
(2)接着強度の評価
トランスファー成形により、Agメッキ、Pdメッキ、Pd-Auメッキを施したCu合金基板上に接着面積4 mm2の成型品を作製し、これを175℃で6時間加熱して後硬化させ評価用チップとした。このチップの剪断方向に荷重をかけて成型品とメッキ基板とが剥離するまでの剪断接着力を測定した。
結果を表1に示した。
(3)吸湿リフロー性の評価
Cu合金リードフレームにAgメッキ、Pdメッキ、Pd-Auメッキを施した28 mm×28 mm×3.2 mmの160ピンQFPパッケージをトランスファー成形した後、175℃で6時間の後硬化を行い、評価用チップを得た。このチップ面を超音波探査装置により観察して、Agメッキ、Pdメッキ、Pd-Auメッキ部分の剥離の有無を確認した。
さらに、この後、85℃ 85 %RHで72時間吸湿処理を行い、IRリフロー炉にてMax 240℃でリフロー処理を行った。この後、チップ面を超音波探査装置により観察し、Agメッキ、Pdメッキ、Pd-Auメッキ部分の剥離の有無を確認した。
結果を表1に示した。
表1にみられるように、エポキシ樹脂と、硬化剤と、無機充填材と、0.01〜1重量%のジフェニルジスルフィド誘導体を含有する半導体封止用樹脂組成物(実施例1〜)では、前記の式(I)で表されるジフェニルジスルフィド誘導体により、Ag、Pd、Pd-Auメッキされたリードフレームに対する接着性が高くなり、吸湿リフロー後の剥離がほとんど起こらないことが確認された。
とくに、1重量%の4, 4'-ジアミノジフェニルジスルフィドをジフェニルジスルフィド誘導体として含有する半導体封止用樹脂組成物(実施例)は、高いリードフレーム接着性と優れた吸湿リフロー性を発揮した。
一方、ジフェニルジスルフィド誘導体を含有しない半導体封止用樹脂組成物(比較例1〜2)では、十分なリードフレーム接着性が得られず、すべての評価用チップにおいて吸湿リフロー後に剥離が生じた。
以上より、この発明によって、Ag、Pd、Pd-Au等でメッキされたリードフレームに対する高い接着性と優れた吸湿リフロー性を示す半導体封止用樹脂組成物が提供されることが確認された。

Claims (3)

  1. 少なくとも、エポキシ樹脂と、硬化剤と、無機充填材と、次式(I)
    (ただし、R1およびR2は、同一または別異に、水素原子、または、アルキル基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、およびアミノ基からなる群より選択される置換基であり、R1およびR2のうち少なくとも1つはカルボキシル基、または、アミノ基である)
    で表されるジフェニルジスルフィド誘導体を含有するリードフレーム型半導体装置封止用エポキシ樹脂組成物であって、ジフェニルジスルフィド誘導体の含有量が、樹脂組成物の全体量に対して0.01〜1重量%であることを特徴とする半導体封止用樹脂組成物。
  2. ジフェニルジスルフィド誘導体は、2, 2'-ジカルボキシジフェニルジスルフィドまたは4, 4'-ジアミノジフェニルジスルフィドであることを特徴とする請求項1の半導体封止用樹脂組成物。
  3. 請求項1または2のいずれかの半導体封止用樹脂組成物によって封止されてなることを特徴とする半導体装置。
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