JP6184794B2 - 非晶質−シリカ亜鉛系アンモニア消臭剤 - Google Patents
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特許文献1及び2の消臭剤は、硫化水素やメルカプタンなどの硫黄系のガスに対して優れた消臭効果を示すものであるが、悪臭成分にはこれ以外にもアンモニアや各種アミン類、低級脂肪酸類がある。
この特許文献3の消臭剤は、アンモニアやアミン類に加えて硫化水素やメルカプタン等の硫黄系のガスに対しても優れた消臭性を示すものであるが、未だ改善すべき余地がある。
SiO2・xZnO
式中、0<x≦0.60である、
で表されるモル組成を有しており、ジ−n−ブチルアミン滴定法で測定した水酸基量が200〜900meq/kgであると共に、X線小角散乱で測定した一次粒子径が7.0〜20.0nmであることを特徴とする非晶質−シリカ亜鉛系アンモニア消臭剤が提供される。
本発明のアンモニア消臭剤は、出発原料として、亜鉛華とケイ酸ソーダとを使用し、両者を反応させ、熟成させ、一旦ろ過した後、得られたろ過ケーキを再分散させ、次いでpH調整を行い、ろ過・水洗し、乾燥することにより製造される。
亜鉛華とケイ酸ソーダの使用割合(仕込みZn/Si)は、得られる消臭剤の組成に影響するものであり、酸化物換算でZn/Siのモル比が0.20≦x≦0.70とするのが好ましい。即ち、このような量比で亜鉛華とケイ酸ソーダとを反応させることにより、本発明の生成物である非晶質−シリカ亜鉛系消臭剤において、表面の水酸基によるアンモニア吸着性がバランスよく発現し、優れた消臭能力が得られることとなる。
例えば、ケイ酸ソーダ水溶液中に亜鉛華を添加するようにして反応を行うと、ゲル化が一気に進行してしまう結果、所定の水酸基量や一次粒子径等の物性を有し、消臭能力に優れほぐれやすい本発明の非晶質−シリカ亜鉛系アンモニア消臭剤を得ることができない。
また、同時注加に際しては、反応容器内の張り水の量を、硫酸亜鉛水溶液及びケイ酸ソーダ水溶液の全量が注加されたときの反応容器内の液量に対して10〜15体積%程度に設定しておくことが、適度な嵩密度を有し、所定の嵩密度/真密度比を得る上で好適である。
例えば、反応時のpHが上記範囲よりも高いと、得られる消臭剤は嵩密度が過度に大きくなる結果、密度比も大きくなるため、取扱いが悪くなり、またアンモニア消臭能も低下する傾向にある。また、pHが上記範囲よりも低い場合には、得られる粒子が軽く、嵩密度が過度に小さくなることで濾過性が悪くなり、また密度比も小さくなるため消臭剤として取扱いが悪くなってしまう。さらには、有効成分である亜鉛の溶解度が高くなり、消臭剤に取り込まれず濾液として排出されるため、仕込みの亜鉛分が有効に利用されず無駄が多くなるばかりか、排液処理の負担も増大することとなる。
pHが上記範囲よりも低いと、生成物表面の水酸基量が過剰となり、このような場合には水分に対する吸着の選択性が増す傾向にあるので、かえって消臭能力が下がる結果となる。また有効成分である亜鉛が完全に溶出してしまった場合、もはや十分な消臭能力は確保できなくなる。また、上記範囲よりも高いと、夾雑物の除去が効果的に行われないため、生成物表面の水酸基量が夾雑物により被覆されたままとなり、アンモニアに対する消臭性が不満足となってしまう。
上記のようにして得られる本発明のシリカ亜鉛系アンモニア消臭剤は、非晶質であり、そのXRDを示す図1から理解されるように、結晶ピークを有していない。即ち、この消臭剤は、酸化亜鉛(亜鉛華)の結晶ピークを有していないことから、亜鉛華とシリカとの単なる混合物ではなく、亜鉛がシリカに結合しており、不規則に配列した構造を有していることが判る。
SiO2・xZnO
式中、0<x≦0.60の値である、
で表されるモル組成を有している。即ち、Zn/Siモル比に相当するxが上記範囲内にあることにより、アンモニアに対する亜鉛及びシリカによる吸着性がバランスよく発現し、優れた消臭性を発揮することが可能となる。このxの値が上記範囲外であるときには、アンモニアに対する消臭性能が低下してしまう。
なお、上記式中のxは、仕込みのZn/Siモル比よりも低い値となっているが、これは、再分散工程でのpH調整により、Znが溶出するためである。pHの値を低く調整すると、Znの溶解度が上がるため、xの値はより低いものとなる。
この点、本発明の実施例6では、pHの値を低く設定することにより、消臭剤に残存する亜鉛分はごく微量となっているが、アンモニア消臭能力としては、比較例4や比較例6のようにある程度の量の亜鉛分を含む市販の消臭剤と同等であり、また亜鉛分を含まないシリカ(比較例5)に対しては格段に優れている。このようにごく微量の亜鉛分で消臭能力が発揮されることは、本発明の驚くべき特徴の一つである。図2に示すXRFの測定結果から、比較例5のシリカではZn元素に由来する2θ=37.5°付近のピークは検出されないが、実施例6のシリカ亜鉛系アンモニア消臭剤ではピークが確認でき、亜鉛が微量に存在していることが確認される。
このように、本発明においては、亜鉛分が微量であっても、十分に実用に供し得る消臭剤が得られるわけであるが、亜鉛分を一定以上残存させることにより、更に消臭能力を向上させることができる(実施例1〜5)ため、前記モル組成のxの値が0.10≦x≦0.60であることが、より好ましい。
例えば、水酸基量が上記範囲よりも大きいと、水分を吸着し易くなり、アンモニアに対する吸着性が低下してしまい、これら悪臭成分に対する消臭性が不満足なものとなってしまう。また、水酸基量が上記範囲よりも少ない場合にもアンモニアに対する吸着容量が低く、やはり消臭性が不満足なものとなってしまう。即ち、粒子表面のOH基が適度な量で分布しているため、アンモニアに対する選択的吸着性が得られ、これら悪臭成分に対して高い消臭性を確保することができるわけである。
なお、以下の実験で行った各種の測定は、次の方法により行った。
JIS M 8853:1998に準拠して測定した。なお、測定試料は110℃乾燥物を基準とした。
試料を消臭試験の前処理条件と揃えるため、110℃で2時間乾燥し、デシケーターで放冷した。放冷後、試料0.5gを秤量し、規定度0.01Nのジ−n−ブチルアミン−トルエン溶液50mlに加えた。上記溶液をスターラーで1時間撹拌した後、静置し粉体を完全に沈降させるため一晩放置した。上澄み5mlをとり、50mlの水/MeOH=1/1(by vol.)溶液を加えたpHメーターでpHを測定しながら規定度0.01Nの塩酸で滴定を行い、滴定量を測定した。滴定量から水酸基量を算出した。
株式会社リガク製の試料粉末型X線回折装置RINT−UltimaIIIを用い、下記の条件で測定した。なお、解析は、解析ソフトNANO-Solver Ver.3.0を用いて行った。
透過小角散乱法光学系選択スリット;
DS:1.0mm、
SS:0.2mm、
RS:0.1mm、
Cu管球、
40kV、
40mA、
走査軸2θ/θ(連続);
走査範囲:0.10°〜6.00°
走査速度(ステップ):0.02°/min
JIS K 6220−1 7.7:2001に準拠して測定した。
JIS R 1620:1995に準拠して測定した。
株式会社リガク製の試料粉末型X線回折装置UltimaIVを用いて、下記の条件でX線回折パターンを測定した。
ターゲット Cu
フィルター Ni
検出器 SC
電圧 40kV
電流 40mA
走査速度 3°/min
サンプリング幅 0.02°
スリット:DS 0.5°,RS 0.3mm,SS 0.5°
株式会社リガク製の蛍光X線分析装置RIX2100を用い、ターゲットはRh、分析線はKαで、その他は下記表1に示す条件で測定を行った。
1.8L保存ビンに110℃で2時間以上乾燥した試料30mgを入れた。保存ビン内のアンモニア濃度が約1000ppmになるようにアンモニアを注射器で注入した。注入60分後及び120分後に、(株)ガステック製検知管No.3Mを使用し、アンモニア濃度を測定した。同時にアンモニアガスのみを入れた保存ビン(ブランク)を用意し、注入した直後のアンモニア濃度を初期濃度とした。60分後、120分後の消臭率が変化していない場合、平衡と判断した。消臭率は以下の計算式で求めた。
消臭率(%)=(A−B)×100/C
式中、Aは、ブランクの120min.後のアンモニア濃度であり
Bは、試料の120min.後のアンモニア濃度であり、
Cは、ブランクの注入直後のアンモニア濃度である。
ケイ酸ソーダ:3号ケイ酸ソーダ(SiO2:22.9%,Na2O:7.37%)
苛性ソーダ:水酸化ナトリウム水溶液(NaOH:49%)
亜鉛華:純度99.8%
硫酸:稀釈硫酸(H2SO4:75%)
(合成工程)
ケイ酸ソーダ611.4gと苛性ソーダ25.0gを水に溶かして全量を1Lとし、これをA液とする。一方、亜鉛華60.1gと硫酸100.1gを水に溶かして全量を1Lとし、これをB液とする。
3Lのステンレス製ジョッキに水250.0gを入れ、攪拌羽根による撹拌下、温度を40℃に保ちながらA液とB液とをそれぞれ約9cm3/minの速度で同時注加した。注加終了後の反応液のpHは7.3であった。さらに撹拌を続け、60分間熟成した後、濾過により反応物ケーキを得た。
(再分散工程)
このケーキを、固形分濃度が18%となるように、2Lビーカーで水に再分散した。この時の撹拌には卓上スターラーと回転子を使用した。再分散後、pHを測定しながら硫酸を徐々に添加し、pH=7.0を目標として添加を止め、その後30分間撹拌を続けながら熟成させた。硫酸の添加を止めてから安定したpHを、表1の再分散pHに示した。
(乾燥工程)
この反応液を濾過水洗し、110℃で一晩乾燥し、乳鉢乳棒で粉砕した後150メッシュを通すことで、シリカ亜鉛系消臭剤を得た。
なお、このシリカ亜鉛系消臭剤のXRD測定を行い、図1に示した。
再分散工程においてpH=6.1を目標として硫酸を添加した以外は、実施例1と同様の操作でシリカ亜鉛系消臭剤を得た。
(合成工程)
ケイ酸ソーダ655.0gを水に溶かして全量を1Lとし、これをA液とする。一方、亜鉛華50.1gと硫酸101.9gを水に溶かして全量を1Lとし、これをB液とする。以降は実施例1と同様の操作を行った。なお注加終了後の反応液のpHは7.2であった。
(再分散工程)
pH=6.6を目標として硫酸を添加した以外は、実施例1と同様の操作を行った。
(乾燥工程)
実施例1と同様の操作を行ってシリカ亜鉛系消臭剤を得た。
(合成工程)
ケイ酸ソーダ524.0gと苛性ソーダ90.0gを水に溶かして全量を1Lとし、これをA液とする。一方、亜鉛華80.2gと硫酸133.5gを水に溶かして全量を1Lとし、これをB液とする。以降は実施例1と同様の操作を行った。なお注加終了後の反応液のpHは7.3であった。
(再分散工程)
実施例3と同様の操作を行った。
(乾燥工程)
実施例1と同様の操作を行ってシリカ亜鉛系消臭剤を得た。
再分散工程においてpH=5.3を目標として硫酸を添加した以外は、実施例1と同様の操作でシリカ亜鉛系消臭剤を得た。
再分散工程においてpH=2.8を目標として硫酸を添加した以外は、実施例1と同様の操作でシリカ亜鉛系消臭剤を得た。
なお、このシリカ亜鉛系消臭剤の組成モル比に関しては、亜鉛分が微量であるため、他の実施例により、組成とXRFピーク強度を対応させた検量線を作成し、XRFから概算値を算出した。
XRF測定の結果を、後述する比較例5とともに図2に示し、微量の亜鉛分の存在を確認した。
特許文献1(特開2005−87630)の実施例5に従って合成し、消臭剤を得た。
特許文献2(特開2011−104274)の実施例7に従って合成し、消臭剤を得た。
特許文献3(特開昭63−220874)の実施例7に従って合成し、消臭剤を得た。
市販のアルミノケイ酸亜鉛からなる消臭剤製品(水澤化学工業(株)製ミズカナイトHP)を使用した。
市販のシリカ製品(水澤化学工業(株)製ミズカシルP−707)を使用した。
なお、このシリカ製品のXRF測定を行い、実施例6とともに図2に示した。
市販の消臭剤製品を使用した。
また、各実施例で得られたサンプルにつき、各種の物性及びアンモニア消臭能力を表3に示す。
Claims (3)
- 酸化物換算で、下記式:
SiO2・xZnO
式中、0<x≦0.60である、
で表されるモル組成を有しており、ジ−n−ブチルアミン滴定法で測定した水酸基量が200〜900meq/kgであると共に、X線小角散乱で測定した一次粒子径が7.0〜20.0nmであることを特徴とする非晶質−シリカ亜鉛系アンモニア消臭剤。 - 前記モル組成のxの値が0.10≦x≦0.60であり、ジ−n−ブチルアミン滴定法で測定した水酸基量が200〜700meq/kgである、請求項1記載の非晶質−シリカ亜鉛系アンモニア消臭剤。
- 嵩密度(g/cm3)と真密度(g/cm3)との比(嵩密度/真密度)が0.15〜0.32の範囲にある請求項1又は2に記載の非晶質−シリカ亜鉛系アンモニア消臭剤。
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