本発明の実施の形態について以下説明する。本実施形態は本発明を実施する一例であって、本発明は本実施形態に限定されるものではない。
<面状発熱体>
図1は、本発明の実施形態に係る面状発熱体の構成の一例を示す模式断面図である。図1に示す面状発熱体80は、発熱層82と、絶縁層(84,86)と、を備える。発熱層82の長手方向又は端手方向の両端には不図示の電極層が配置されており、発熱層82は、不図示の電極層及び給電線90を介して電源92と電気的に接続されている。そして、電源92から給電線90(及び電極層)を介して発熱層82に電力供給がなされる。
発熱層82の一方の面には絶縁層84が配置され、発熱層82の他方の面には絶縁層86が配置されている。すなわち、面状発熱体80は、発熱層82が絶縁層84,86に挟まれる形で積層された構造となっている。面状発熱体80は、後述するように無端ベルトの内周側に配置される。そして、図1では、発熱層82の一方の面に配置される絶縁層84が、無端ベルトの内周面と対向配置される。絶縁層84と無端ベルトの内周面との間には予め定められた間隔が設けられていてもよいが、発熱層82からの熱を効率的に無端ベルトに伝熱させる等の点から、絶縁層84は無端ベルトの内周面に接触している方が好ましい。なお、面状発熱体80は、無端ベルトを加熱する面を有していれば、棒状、平板状等その形状は特に制限されるものではないが、前述したように、無端ベルトの内周面に絶縁層84を接触させる方が熱効率の点で好ましいため、可撓性(フレキシブル性)を有することが好ましい。
本実施形態では、絶縁層84が、発熱層82を介して反対側の絶縁層86より高い熱伝導率を有している。絶縁層86より絶縁層84の熱伝導率を高くすることで、絶縁層84,86の熱伝導率を同じ又は絶縁層86の熱電伝導率を絶縁層84より高くした場合と比べて、発熱層82の熱は、絶縁層86側への伝熱・放熱が抑えられ、絶縁層86側より絶縁層84側へ伝熱し易くなり、絶縁層84の外側表面(すなわち無端ベルトに接する面状発熱体80表面)の温度上昇速度が向上すると考えられる。ここで、絶縁層の熱伝導率とは、絶縁層の膜厚方向(図1の矢印A方向)の熱伝導率と面内方向(図1の矢印B方向)の熱伝導率とを乗じた値である。すなわち、絶縁層84の熱導電率が絶縁層86の熱伝導率より高いとは、絶縁層84の膜厚方向の熱伝導率×面内方向の熱伝導率の値が、絶縁層86の膜厚方向の熱伝導率×面内方向の熱伝導率の値より高いことを示している。
また、本実施形態の絶縁層84の膜厚方向の熱導電率は、面内方向の熱伝導率より高い。絶縁層84の膜厚方向の熱伝導率を面内方向の熱伝導率より高くすることで、絶縁層84の膜厚方向及び面内方向の熱伝導率を同じ又は面内方向の熱伝導率を膜厚方向の熱伝導率より高くした場合と比べて、発熱層82から絶縁層84の外側表面への伝熱における熱抵抗が抑えられ、絶縁層84の外側表面(すなわち無端ベルトに接する面状発熱体80表面)の温度上昇速度が向上すると考えられる。
このように、絶縁層84の熱伝導率を絶縁層86の熱伝導率より高くし、また、絶縁層84の膜厚方向の熱伝導率を面内方向の熱伝導率より高くすることで、絶縁層86側への伝熱・放熱が抑えられ、且つ発熱層82から絶縁層84の外側表面への伝熱における熱抵抗が抑えられるため、絶縁層84の外側表面(すなわち無端ベルトに接する面状発熱体80表面)の温度上昇速度が向上すると考えられる。その結果、発熱層82による不要な熱エネルギの発生が抑えられ、発熱層82からの熱が絶縁層84を介して無端ベルトへ効率良く伝えられると考えられる。これにより、例えば、無端ベルトは短時間で加熱されるため、定着装置のウォーミングアップ時間が短縮される。
絶縁層84は、主に高分子樹脂と熱伝導フィラー等から構成される。絶縁層86は、主に絶縁層84と同じ又は異なる高分子樹脂等から構成されるものである。絶縁層84の熱伝導率を絶縁層86の熱伝導率より高くするには、例えば、絶縁層84に熱伝導フィラーを含有させ、絶縁層86に熱伝導フィラーを含有させないか又は絶縁層84に含有する熱伝導フィラーの含有量より少ない含有量にすればよい。絶縁層84に含有される熱伝導フィラーの含有量は、絶縁層86より熱伝導率を高くする等の点で、例えば、高分子樹脂溶液固形分に対して2体積%以上40体積%以下が好ましく、5体積%以上20体積%以下がより好ましい。絶縁層86に熱伝導フィラーを含有させる場合、その含有量は、絶縁層84に含有される熱伝導フィラーの含有量に対して1/2以下が好ましい。
絶縁層84の面内方向の熱伝導率より膜厚方向の熱伝導率を高くする方法としては、例えば、基材上に熱伝導フィラー含有の高分子樹脂溶液を塗布して、膜圧方向に磁場を掛けて絶縁層を作製する方法が挙げられる。この方法によれば、熱伝導フィラーは絶縁層84の膜厚方向に沿って配向されるため、膜厚方向の熱伝導率が面内方向の熱伝導率より高くなる。その他の例としては、熱伝導フィラー含有の高分子樹脂溶液Aと熱伝導フィラーを含まず且つ高分子樹脂Aと非相溶の高分子樹脂Bとを混合し、該混合溶液を基材上に塗布して、絶縁層を作製する方法が挙げられる。この方法により得られる絶縁層は、例えば、熱伝導フィラーを含まない高分子樹脂の海と熱伝導フィラーを含有する高分子樹脂の島から構成される海島構造となる。このような海島構造においては、島となる高分子樹脂が絶縁層の膜厚方向に沿って配向しやすくなるため、高分子樹脂の島内に分散する熱伝導フィラーによって、膜厚方向の熱伝導率が面内方向の熱伝導率より高くなると考えられる。
絶縁層84に用いられる高分子樹脂としては、耐熱性を有することが望ましく、例えば、ポリイミド、ポリベンゾイミダゾール、ポリエーテルエーテルケトン、発砲ポリイミド、ガラスバルーンや樹脂バルーン等を分散させた分散耐熱樹脂などが挙げられる。絶縁層84に用いられる高分子樹脂は、耐熱性、機械的強度等の点から、ポリイミドが好ましい。また、絶縁層86に用いられる高分子樹脂は、低熱伝導率を有する等の点から、例えば、発砲ポリイミドが好ましい。
海島構造を形成する場合、海側の樹脂としては、フッ素を含有するフッ素化ポリイミド等が挙げられ、島側の樹脂としては、フッ素を含有しないポリイミド等が挙げられる。島側の樹脂に対して、海側の樹脂の含有量を1.5倍〜10倍程度として、混合溶液を作製し、該混合溶液を基材上に塗布して、絶縁層を形成すればよい。
また、熱伝導フィラーとしては、高分子樹脂より熱伝導性の高いものであれば特に制限されるものではないが、例えば、酸化ケイ素、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、酸化錫、ホウ酸アルミニウム、酸化マグネシウム、窒化ホウ素などの無機物、カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバー、グラファイト等の炭素材料、鉄、銅、ニッケル、クロム等の金属粒子等が挙げられる。但し、炭素材料や金属粒子等の導電体を用いる場合には、発熱層82との絶縁性を確保する等の点から、絶縁層84と発熱層82との間にポリイミドフィルム等の絶縁フィルムを配置することが望ましい。
絶縁層84及び絶縁層86の厚さは特に制限されるものではないが、例えば1μm以上100μm以下の範囲であることが好ましく、1μm以上50μm以下の範囲がより好ましい。
絶縁層84の膜厚方向の熱伝導率は、発熱層82から絶縁層84の外側表面への伝熱における熱抵抗が抑えられる等の点から、面内方向の熱伝導率に対して3倍以上20倍以下の範囲が好ましく、10倍以上20倍以下の範囲がより好ましい。また、絶縁層84の面内方向の熱伝導率は、例えば0.3(W/mk)以上1(W/mk)以下の範囲が好ましく、0.3(W/mk)以上0.7(W/mk)以下の範囲がより好ましい。また、絶縁層84の膜厚方向の熱伝導率は、例えば、1(W/mk)以上20(W/mk)以下の範囲が好ましく、また、3(W/mk)以上20(W/mk)以下の範囲がより好ましい。
絶縁層86の熱伝導率は、発熱層82から絶縁層86側への伝熱・放熱を抑える等の点から、例えば、絶縁層86の熱伝導率は、絶縁層84の膜厚方向の熱伝導率に対して1/20以上1/2以下の範囲が好ましく、1/20以上1/10以下の範囲がより好ましい。絶縁層86の面内方向の熱伝導率は、例えば0.05(W/mk)以上0.3(W/mk)以下の範囲が好ましく、0.1(W/mk)以上0.3(W/mk)以下の範囲がより好ましい。また、絶縁層86の膜厚方向の熱伝導率は、例えば、0.05(W/mk)以上0.3(W/mk)以下の範囲が好ましく、また、0.1(W/mk)以上0.3(W/mk)以下の範囲がより好ましい。
絶縁層84及び絶縁層86の耐電圧は、例えば、厚さ25μmで耐電圧1kV以上が好ましく、厚さ25μmで耐電圧3kV以上がより好ましい。
図1に示す発熱層82は、通電されると内部抵抗によって発熱する抵抗発熱体であり、例えば、ステンレス箔、鉄−ニッケル合金箔、ニッケル−クロム合金箔、銅―ニッケル合金箔などの金属箔、カーボン粒子や金属粒子等の導電性粒子をポリイミド等の高分子樹脂中に分散させた導電発熱層等が挙げられる。カーボン粒子は、例えば、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバー等が挙げられる。本実施形態の発熱層82は、発熱回路を有すれば、抵抗発熱体に限定されるものではなく、電磁誘導発熱体などでもよい。
発熱層82の厚さは、特に制限されるものではないが、例えば、10μm以上100μm以下の範囲が好ましく、10μm以上50μm以下の範囲がより好ましい。
以下に、面状発熱体80の製造方法の一例を説明する。絶縁層を構成する高分子樹脂としてポリイミドを用いているが、これに限定されるものではない。
まず、ポリアミック酸溶液Aを準備する。ポリアミック酸溶液Aとしては、例えば、ジアミン化合物とテトラカルボン酸二無水物とを有機溶媒中で反応させることにより得られる。有機溶媒は、ジアミン化合物とテトラカルボン酸二無水物との反応により得られるポリアミック酸を溶解するものであれば特に限定されないが、有機極性溶媒が好適に挙げられる。有機極性溶媒としては、その官能基がテトラカルボン酸二無水物又はジアミンと反応しない双極子を有するものが挙げられる。有機極性溶媒として具体的には、例えば、ジメチルスルホキシド、ジエチルスルホキシドなどのスルホキシド系溶媒、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミドなどのホルムアミド系溶媒、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミドなどのアセトアミド系溶媒、N−メチル−2−ピロリドン、N−ビニル−2−ピロリドンなどのピロリドン系溶媒などが挙げられる。
準備したポリアミック酸溶液Aに熱伝導フィラーを分散させ、熱伝導フィラー分散ポリアミック酸溶液を調製する。次に、ポリアミック酸溶液Aと親和性の低い(非相溶の)ポリアミック酸溶液Bと前述の熱伝導フィラー分散ポリアミック酸溶液とを混合し、離型剤を塗布した金属基板上に塗布し、溶液塗膜を形成する。塗布には、例えば、ダイコータ、コンマコータ、ロールコータ、バーコータ、グラビアコータ等が使用される。
次に、金属基板上に形成した溶液塗膜を乾燥させる。乾燥塗膜上にステンレス箔等の発熱層82を載せ、発熱層82の上に、例えばポリイミドフィルム等の絶縁層86を載せる。又は発熱層82の上に、前述のポリアミック酸溶液Aを塗布・乾燥させてもよい。
次いで、上記積層物を加熱プレスして、金属基板上の乾燥塗膜をイミド化させ、絶縁層84を形成することで、面状発熱体80を得る。加熱プレスの条件は、絶縁層に使用する高分子樹脂の種類によって適宜選択されるものであり、特に制限されるものではないが、加熱温度は、例えば350℃以上450℃以下で、加熱時間は、例えば20分以上180分以下、プレス圧は、例えば0.5kgf/cm2以上50kgf/cm2以下で行うことが好ましい。
<定着装置>
図2は、本発明の実施形態に係る定着装置の構成の一例を示す概略構成図である。図2に示す定着装置60は、無端ベルト71と、面状発熱体80と、加圧ロール73と、押圧支持体74と、を備える。加圧ロール73は、不図示の駆動源により矢印B方向に回転可能な回転部材である。無端ベルト71は、加圧ロール73の回転に従って、矢印A方向に回転する。無端ベルト71と加圧ロール73との間にはニップ部Nが形成され、ここに未定着のトナー像を保持した被記録媒体Pが矢印C方向に挿通される。
無端ベルト71の内周面には、ニップ部Nで無端ベルト71の外周面と接触している加圧ロール73の表面を押圧するように、押圧支持体74が、無端ベルト71の内周面と接触するように配置されている。押圧支持体74は、鉄、アルミニウムなどの、耐久性や耐熱性の良好な、剛性の高い材料を用いることができるが、熱伝導性の観点からアルミニウム系の材料が好ましい。
図2の面状発熱体80は、無端ベルト71の内周面において、押圧支持体74と対向する位置に設けられる。なお、面状発熱体80は、押圧支持体74が設けられる位置以外であれば、無端ベルト71の内周面のいずれの位置に設けられてもよい。図2の面状発熱体80は、前述したように、図1に示す発熱層82の両面に配置される絶縁層84及び絶縁層86を有している。そして、図2の面状発熱体80は、絶縁層84の外側表面が無端ベルト71の内周面と接触している。
無端ベルト71としては、例えば、単層の樹脂製フィルムでもよいし、単層の金属製フィルムでもよいし、樹脂の層と金属の層をそれぞれ複層にしてもよいし、金属製フィルムを基材とし、その上に樹脂製の弾性層や離型層を設けるなど、樹脂層と金属層とを組み合わせても良い。
図2に示す定着装置60は、以下のように動作する。記録媒体Pの表面に形成された未定着トナー像を定着し、記録媒体Pの表面に画像を形成する場合、加圧ロール73の矢印B方向への回転に伴い、無端ベルト71が回転する。また、面状発熱体80に電力が供給される等して発熱させて、面状発熱体80により供給される熱により、無端ベルト71が予め定められた温度まで加熱される。具体的には、図1に示す発熱層82への通電により発熱層82が発熱し、発熱層82で発生した熱は絶縁層84を介して図2に示す無端ベルト71に伝熱される。前述したように、絶縁層84の熱伝導率は絶縁層86の熱伝導率より高く、また、絶縁層84の膜厚方向の熱伝導率は面内方向の熱伝導率より高いため、発熱層82からの熱は絶縁層84の外側表面へ伝わり易くなる。その結果、発熱層82からの熱は絶縁層84を介して無端ベルト71へ効率良く伝えられるため、例えば、無端ベルト71は短時間で加熱され、定着装置60のウォーミングアップ時間が短縮される。
このように加熱された無端ベルト71は、加圧ロール73とのニップ部Nまで移動する。一方、不図示の搬送手段により矢印C方向へと、未定着トナー像が形成された記録媒体Pが搬送される。記録媒体Pが前記ニップ部を通過した際に、未定着トナー像は無端ベルト71により加熱され記録媒体Pの表面に定着される。このようにして画像が形成された記録媒体Pは、不図示の搬送手段により、定着装置60から排出される。また、ニップ部Nにおいて定着処理を終え、外周面の表面温度が低下した無端ベルト71は、次の定着処理に備えて再度加熱されるために、面状発熱体80方向へと回転する。
<画像形成装置>
図3は、本発明の実施形態に係る画像形成装置の構成の一例を示す概略構成図である。ここでは、一般にタンデム型と呼ぶ中間転写方式の画像形成装置を例に挙げて説明する。
図3に示す画像形成装置100は、電子写真方式により各色成分のトナー像が形成される複数の画像形成ユニット1Y,1M,1C,1Kと、各画像形成ユニット1Y,1M,1C,1Kにより形成された各色成分トナー像を中間転写ベルト15に順次転写(一次転写)させる一次転写部10と、中間転写ベルト15上に転写された重畳トナー像を記録媒体である用紙Kに一括転写(二次転写)させる二次転写部20と、二次転写された画像を用紙K上に定着させる定着装置60とを備えている。また、画像形成装置100は、各装置(各部)の動作を制御する制御部40を有している。また、定着装置60は、前述の定着装置である。
画像形成装置100の各画像形成ユニット1Y,1M,1C,1Kは、表面に形成されるトナー像を保持する像保持体の一例として、矢印A方向に回転する感光体ドラム11を備えている。
感光体ドラム11の周囲には、前記像保持体の表面を帯電させる帯電手段の一例として、感光体ドラム11を帯電させる帯電器12が設けられ、前記帯電器12により帯電した像保持体の表面に潜像を形成する潜像形成手段の一例として、感光体ドラム11上に静電潜像を書込むレーザ露光器13(図中露光ビームを符号Bmで示す)が設けられている。
また、感光体ドラム11の周囲には、前記潜像形成手段により前記像保持体の表面に形成された潜像をトナーにより現像してトナー像を形成する現像手段の一例として、各色成分トナーが収容されて感光体ドラム11上の静電潜像をトナーにより可視像化する現像器14が設けられ、感光体ドラム11上に形成された各色成分トナー像を一次転写部10にて中間転写ベルト15に転写する一次転写ロール16が設けられている。
さらに、感光体ドラム11の周囲には、感光体ドラム11上の残留トナーが除去されるドラムクリーナ17が設けられ、帯電器12、レーザ露光器13、現像器14、一次転写ロール16及びドラムクリーナ17の電子写真用デバイスが感光体ドラム11の回転方向に沿って順次配設されている。これらの画像形成ユニット1Y,1M,1C,1Kは、中間転写ベルト15の上流側から、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の順に、略直線状に配置されている。
中間転写体である中間転写ベルト15は、ポリイミドあるいはポリアミド等の樹脂をベース層としてカーボンブラック等の帯電防止剤を適当量含有させたフィルム状の加圧ベルトで構成されている。そして、その体積抵抗率は106Ωcm以上1014Ωcm以下となるように形成されており、その厚みは、例えば、0.1mm程度に構成されている。
中間転写ベルト15は、各種ロールによって図3に示すB方向に所定の速度で循環駆動(回転)されている。この各種ロールとして、定速性に優れたモータ(図示せず)により駆動されて中間転写ベルト15を回転させる駆動ロール31、各感光体ドラム11の配列方向に沿って略直線状に延びる中間転写ベルト15を支持する支持ロール32、中間転写ベルト15に対して一定の張力を与えると共に中間転写ベルト15の蛇行を防止する補正ロールとして機能するテンションロール33、二次転写部20に設けられるバックアップロール25、中間転写ベルト15上の残留トナーを掻き取るクリーニング部に設けられるクリーニングバックアップロール34を有している。
一次転写部10は、中間転写ベルト15を挟んで感光体ドラム11に対向して配置される一次転写ロール16で構成されている。一次転写ロール16は、シャフトと、シャフトの周囲に固着された弾性層としてのスポンジ層とで構成されている。シャフトは、鉄、SUS等の金属で構成された円柱棒である。スポンジ層はカーボンブラック等の導電剤を配合したNBRとSBRとEPDMとのブレンドゴムで形成され、体積抵抗率が107.5Ωcm以上108.5Ωcm以下のスポンジ状の円筒ロールである。
そして、一次転写ロール16は中間転写ベルト15を挟んで感光体ドラム11に圧接配置され、さらに一次転写ロール16にはトナーの帯電極性(マイナス極性とする。以下同様。)と逆極性の電圧(一次転写バイアス)が印加されるようになっている。これにより、各々の感光体ドラム11上のトナー像が中間転写ベルト15に順次、静電吸引され、中間転写ベルト15上において重畳されたトナー像が形成されるようになっている。
二次転写部20は、バックアップロール25と、前記現像手段により形成されたトナー像を記録媒体に転写する転写手段の一例としての、中間転写ベルト15のトナー像保持面側に配置される二次転写ロール22と、を備えて構成されている。
バックアップロール25は、表面がカーボンを分散したEPDMとNBRのブレンドゴムのチューブ、内部はEPDMゴムで構成されている。そして、その表面抵抗率が107以上Ω/□1010Ω/□以下となるように形成され、硬度は、例えば、70°(アスカーC:高分子計器社製、以下同様。)に設定される。このバックアップロール25は、中間転写ベルト15の裏面側に配置されて二次転写ロール22の対向電極を構成し、二次転写バイアスが安定的に印加される金属製の給電ロール26が接触配置されている。
一方、二次転写ロール22は、シャフトと、シャフトの周囲に固着された弾性層としてのスポンジ層とで構成されている。シャフトは鉄、SUS等の金属で構成された円柱棒である。スポンジ層はカーボンブラック等の導電剤を配合したNBRとSBRとEPDMとのブレンドゴムで形成され、体積抵抗率が107.5以上Ωcm108.5Ωcm以下のスポンジ状の円筒ロールである。
そして、二次転写ロール22は中間転写ベルト15を挟んでバックアップロール25に圧接配置され、さらに二次転写ロール22は接地されてバックアップロール25との間に二次転写バイアスが形成され、二次転写部20に搬送される用紙K上にトナー像を二次転写する。
また、中間転写ベルト15の二次転写部20の下流側には、二次転写後の中間転写ベルト15上の残留トナーや紙粉を除去し、中間転写ベルト15の表面をクリーニングする中間転写ベルトクリーナ35が接離自在に設けられている。
一方、イエローの画像形成ユニット1Yの上流側には、各画像形成ユニット1Y,1M,1C,1Kにおける画像形成タイミングをとるための基準となる基準信号を発生する基準センサ(ホームポジションセンサ)42が配設されている。また、黒の画像形成ユニット1Kの下流側には、画質調整を行うための画像濃度センサ43が配設されている。この基準センサ42は、中間転写ベルト15の裏側に設けられた所定のマークを認識して基準信号を発生しており、この基準信号の認識に基づく制御部40からの指示により、各画像形成ユニット1Y,1M,1C,1Kは画像形成を開始するように構成されている。
更に、本実施形態の画像形成装置では、用紙Kを搬送する搬送手段として、用紙Kを収容する用紙収容部50、この用紙収容部50に集積された用紙Kを所定のタイミングで取り出して搬送する給紙ロール51、給紙ロール51により繰り出された用紙Kを搬送する搬送ロール52、搬送ロール52により搬送された用紙Kを二次転写部20へと送り込む搬送ガイド53、二次転写ロール22により二次転写された後に搬送される用紙Kを定着装置60へと搬送する搬送ベルト55、用紙Kを定着装置60に導く定着入口ガイド56を備えている。
次に、本実施形態に係る画像形成装置の基本的な作像プロセスについて説明する。図3に示す画像形成装置では、図示しない画像読取装置や図示しないパーソナルコンピュータ(PC)等から出力される画像データは、図示しない画像処理装置により所定の画像処理が施された後、画像形成ユニット1Y,1M,1C,1Kによって作像作業が実行される。
画像処理装置では、入力された反射率データに対して、シェーディング補正、位置ズレ補正、明度/色空間変換、ガンマ補正、枠消しや色編集、移動編集等の各種画像編集等の所定の画像処理が施される。画像処理が施された画像データは、Y,M,C,Kの4色の色材階調データに変換され、レーザ露光器13に出力される。
レーザ露光器13では、入力された色材階調データに応じて、例えば半導体レーザから出射された露光ビームBmを画像形成ユニット1Y,1M,1C,1Kの各々の感光体ドラム11に照射している。画像形成ユニット1Y,1M,1C,1Kの各感光体ドラム11では、帯電器12によって表面が帯電された後、このレーザ露光器13によって表面が走査露光され、静電潜像が形成される。形成された静電潜像は、各々の画像形成ユニット1Y,1M,1C,1Kによって、Y,M,C,Kの各色のトナー像として現像される。
画像形成ユニット1Y,1M,1C,1Kの感光体ドラム11上に形成されたトナー像は、各感光体ドラム11と中間転写ベルト15とが接触する一次転写部10において、中間転写ベルト15上に転写される。より具体的には、一次転写部10において、一次転写ロール16により中間転写ベルト15の基材に対しトナーの帯電極性(マイナス極性)と逆極性の電圧(一次転写バイアス)が付加され、トナー像を中間転写ベルト15の表面に順次重ね合わせて一次転写が行われる。
トナー像が中間転写ベルト15の表面に順次一次転写された後、中間転写ベルト15は移動してトナー像が二次転写部20に搬送される。トナー像が二次転写部20に搬送されると、搬送手段では、トナー像が二次転写部20に搬送されるタイミングに合わせて給紙ロール51が回転し、用紙収容部50から所定サイズの用紙Kが供給される。給紙ロール51により供給された用紙Kは、搬送ロール52により搬送され、搬送ガイド53を経て二次転写部20に到達する。この二次転写部20に到達する前に、用紙Kは一旦停止され、トナー像が保持された中間転写ベルト15の移動タイミングに合わせてレジストロール(図示せず)が回転することで、用紙Kの位置とトナー像の位置との位置合わせがなされる。
二次転写部20では、中間転写ベルト15を介して、二次転写ロール22がバックアップロール25に加圧される。このとき、タイミングを合わせて搬送された用紙Kは、中間転写ベルト15と二次転写ロール22との間に挟み込まれる。その際に、給電ロール26からトナーの帯電極性(マイナス極性)と同極性の電圧(二次転写バイアス)が印加されると、二次転写ロール22とバックアップロール25との間に転写電界が形成される。そして、中間転写ベルト15上に保持された未定着トナー像は、二次転写ロール22とバックアップロール25とによって加圧される二次転写部20において、用紙K上に一括して静電転写される。
その後、トナー像が静電転写された用紙Kは、二次転写ロール22によって中間転写ベルト15から剥離された状態でそのまま搬送され、二次転写ロール22の用紙搬送方向下流側に設けられた搬送ベルト55へと搬送される。搬送ベルト55では、定着装置60における最適な搬送速度に合わせて、用紙Kを定着装置60まで搬送する。定着装置60に搬送された用紙K上の未定着トナー像は、定着装置60によって熱及び圧力で定着処理を受けることで用紙K上に定着される。そして定着画像が形成された用紙Kは、画像形成装置の排出部に設けられた排紙収容部(不図示)に搬送される。
一方、用紙Kへの転写が終了した後、中間転写ベルト15上に残った残留トナーは、中間転写ベルト15の回転に伴ってクリーニング部まで搬送され、クリーニングバックアップロール34及び中間転写ベルトクリーナ35によって中間転写ベルト15上から除去される。
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施の形態に限定的に解釈されるものではなく、種々の変形、変更、改良が可能であり、本発明の要件を満足する範囲内で実現可能であることは言うまでもない。
以下、本発明を、実施例を挙げてさらに具体的に説明する。ただし、これら各実施例は、本発明を制限するものではない。
<実施例1>
まず、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物と、p−フェニレンジアミンが、N−メチルピロリドン中で合成された、固形分濃度18質量%のポリアミック酸溶液Aを用意した。次に、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物と、2,2−ビス(4−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパンが、N−メチルピロリドン中で合成された、固形分濃度18質量%のポリアミック酸溶液Bを用意した。ポリアミック酸溶液Aに、熱伝導フィラーとして六方晶窒化ホウ素粉末(UHP−S1、昭和電工製)を、ポリアミック酸溶液A固形分に対し、50体積%の添加量で添加し、プラネタリーミキサーで1時間撹拌した。次に窒化ホウ素粉末を分散撹拌させたポリアミック酸溶液Aとポリアミック酸溶液Bとをポリアミック酸の質量%が、ポリアミック酸溶液Aに対するポリアミック酸溶液Bの比として、2:1となるよう添加し、プラネタリーミキサーで15分間撹拌した。この窒化ホウ素が分散したポリアミック酸混合溶液を、バーコータで、シリコーン系離型剤を塗布したアルミ板上に塗布し、300μmの塗膜を得た。形成した塗膜を100℃の乾燥炉に投入し、塗膜厚さが250μmとなるまで乾燥させた。走査型電子顕微鏡を用いて、表面、断面を観察する方法により、海島構造であることを確認した。
次に、半乾燥塗膜上に、20μmの発熱回路状にしたステンレス箔(発熱層)を載せ、その上に、絶縁層Bであるポリイミドフィルム(ユーピレックス−75S;宇部興産製)を載せた。
次に、アルミ板及びアルミ板上の積層体を厚さ10mmの2枚のSUS板で挟み、2枚のSUS板をボルトで固定した後、オーブンに入れ、窒素ガス雰囲気下で段階的に350℃まで昇温して、上記半乾燥塗膜をイミド化して、絶縁層Aをとした。段階的な昇温は160℃で1時間、250℃で30分、350℃で1時間行った。その後、室温(25℃)で放冷し、SUS板の固定ボルトを外し、アルミ板上から積層体を剥がし、これを面状発熱体1とした。
面状発熱体1の絶縁層A及び絶縁層Bの熱伝導率をより正確に測定するために、別途、前述の窒化ホウ素が分散したポリアミック酸混合溶液をバーコータで、シリコーン系離型剤を塗布したアルミ板上に厚さ300μmで塗布し、該塗膜のみをオーブンに入れ、窒素ガス雰囲気下で段階的に350℃まで昇温して、イミド化して得た絶縁層A単膜と、絶縁層Bであるポリイミドフィルム(ユーピレックス−75S;宇部興産製)とを用意して、それぞれの面内方向と膜厚方向の熱伝導率を熱物性測定装置(ベテル社製、サーモウェーブアナライザTA3型)により測定した。その結果、絶縁層Aの面内方向の熱伝導率は、1.0(W/mk)であり、膜厚方向の熱伝導率は3.1(W/mk)であった。また、一方、絶縁層Bの面内方向の熱伝導率は、1.1(W/mk)であり、膜厚方向の熱伝導率は、0.27(W/mk)であった。すなわち、絶縁層Aの熱伝導率(面内方向×膜厚方向)は、絶縁層Bの熱伝導率(面内方向×膜厚方向)より高く、また、絶縁層Aの膜厚方向の熱伝導率は、面内方向の熱伝導率より高い値であった。
次に、面状発熱体1に通電して、絶縁層Aの外側表面及び絶縁層Bの外側表面の温度上昇速度を一定通電時間後の放射温度計による温度測定により測定した。具体的には、30℃以下の室温状態の面状発熱体に通電してから5秒後の絶縁層A,Bの表面温度を、放射温度計(HORIBA製 IT−545)を用いて測定することにより、絶縁層A,Bの温度上昇速度を求め、これらを用いて温度上昇速度比を算出した。その結果、絶縁層Aの外側表面の温度上昇速度は、絶縁層Bの外側表面の温度上昇速度の6倍であった。
<実施例2>
実施例1の絶縁層Bであるポリイミドフィルム(ユーピレックス−75S;宇部興産製)を5mm厚の発泡ポリイミド(ユーピレックスフォーム、宇部興産製)に代えたこと以外は実施例1と同様の条件で面状発熱体2を得た。そして、面状発熱体2に通電して、絶縁層Aの外側表面及び絶縁層Bの外側表面の温度上昇速度を一定通電時間後の放射温度計による温度測定により測定した(実施例1と同様の条件で測定した)。その結果、絶縁層Aの外側表面の温度上昇速度は、絶縁層B(発泡ポリイミド)の外側表面の温度上昇速度の20倍であった。また、実施例2の絶縁層Aの外側表面の温度上昇速度は、実施例1の絶縁層Aの外側表面の温度上昇速度の3倍であった。
<比較例1>
まず、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物と、p−フェニレンジアミンが、N−メチルピロリドン中で合成された、固形分濃度18重量%のポリアミック酸溶液Aを用意し、ポリアミック酸溶液Aをバーコータで、シリコーン系離型剤を塗布したアルミ板上に塗布し、300μmの塗膜を得た。形成した塗膜を100℃の乾燥炉に投入し、塗膜厚さが250μmとなるまで乾燥させた。次に形成した半乾燥塗膜上に、20μmの発熱回路状にしたステンレス箔を載せ、その上に、ポリイミドフィルム(ユーピレックス−75S;宇部興産製)を載せた。アルミ板及びアルミ板上の積層体を厚さ10mmの2枚のSUS板で挟み、2枚のSUS板をボルトで固定した後、オーブンに入れ、窒素ガス雰囲気下で段階的に350℃まで昇温して、上記半乾燥塗膜をイミド化して、絶縁層Aをとした。段階的な昇温は160℃で1時間、250℃で30分、350℃で1時間行った。その後、室温(25℃)で放冷し、SUS板の固定ボルトを外し、SUS板の固定ボルトを外し、アルミ板上から積層体を剥がし、これを面状発熱体4とした。
面状発熱体4の絶縁層A及び絶縁層Bの熱伝導率をより正確に測定するために、別途、前述のポリアミック酸溶液Aをバーコータで、シリコーン系離型剤を塗布したアルミ板上に厚さ300μmで塗布し、該塗膜のみをオーブンに入れ、窒素ガス雰囲気下で段階的に350℃まで昇温して、イミド化した絶縁層A単膜と、絶縁層Bであるポリイミドフィルム(ユーピレックス−75S;宇部興産製)とを用意して、それぞれの面内方向と膜厚方向の熱伝導率を熱物性測定装置(ベテル社製、サーモウェーブアナライザTA3型)により測定した。その結果、絶縁層Aの面内方向の熱伝導率は、1.0(W/mk)であり、膜厚方向の熱伝導率は0.3(W/mk)であった。また、絶縁層Bの面内方向の熱伝導率は、1.1(W/mk)であり、膜厚方向の熱伝導率は、0.27(W/mk)であった。したがって、絶縁層Aの熱伝導率(面内方向×膜厚方向)と絶縁層Bの熱伝導率(面内方向×膜厚方向)との差はほとんど生じなかった。また、絶縁層Aの膜厚方向の熱伝導率は、面内方向の熱伝導率より低い値となった。ポリイミドのみから構成される比較例1の絶縁層Aでは、ポリイミドの主鎖が面内方向に配向し易いと考えられる。そして、面内方向に配向したポリイミドの主鎖の影響により、絶縁層Aの膜厚方向より面内方向の熱伝導率が高くなったと考えられる。
次に、面状発熱体4に通電し、絶縁層Aの外側表面及び絶縁層Bの外側表面の温度上昇速度を一定通電時間後の放射温度計による温度測定により測定した(実施例1と同様の条件で測定した)。その結果、絶縁層Aの外側表面及び絶縁層Bの外側表面の温度上昇速度に差はほとんどなかった。また、比較例1の絶縁層Aの外側表面の温度上昇速度は、実施例1の絶縁層Aの外側表面の温度上昇速度の1/6であった。すなわち、絶縁層Bより絶縁層Aの熱伝導率が高く、絶縁層Aの面内方向より膜厚方向の熱伝導率が高い実施例1の方が、絶縁層AとBの熱伝導率にほとんど差がなく、絶縁層Aの膜厚方向より面内方向の熱伝導率が高い比較例1より、絶縁層Aの外側表面(無端ベルトに接する側の面)の温度上昇速度が向上した。
<比較例2>
比較例1のポリアミック酸溶液Aに、熱伝導フィラーとして六方晶窒化ホウ素粉末(UHP−S1、昭和電工製)を、ポリアミック酸溶液A固形分に対し、50体積%の添加量で添加したこと以外は、比較例1と同様の条件で面状発熱体5を作製した。
比較例1と同様に、比較例2の絶縁層Aの熱伝導率を熱物性測定装置(ベテル社製、サーモウェーブアナライザTA3型)により測定した。その結果、絶縁層Aの面内方向の熱伝導率は、4.9(W/mk)であり、膜厚方向の熱伝導率は1.2(W/mk)であった。すなわち、熱伝導フィラーを添加した比較例2の絶縁層Aの膜厚方向の熱伝導率は、面内方向の熱伝導率より低い値となった。1種類のポリアミック酸溶液に熱伝導フィラーを分散させた場合、非相溶の2種のポリアミック酸溶液のいずれか一方に熱伝導フィラーを分散させ、2種のポリアミック酸溶液を混合させた場合より、絶縁層A中に熱伝導フィラーが均一に分散していると考えられる。そうすると、比較例2の絶縁層Aは、乾燥時の膜厚方向の体積収縮によって窒化ホウ素フィラーの長軸が面内方向に配向しやすくなる影響により、絶縁層Aの膜厚方向より面内方向の熱伝導率が高くなったと考えられる。
面状発熱体5に通電して、絶縁層Aの外側表面及び絶縁層Bの外側表面の温度上昇速度を一定通電時間後の放射温度計による温度測定により測定した(実施例1と同様の条件で測定した)。その結果、絶縁層Aの外側表面の温度上昇速度は、絶縁層Bの外側表面の温度上昇速度の1.5倍であった。しかし、比較例2における絶縁層Aの外側表面の温度上昇速度は、実施例1における絶縁層Aの外側表面の温度上昇速度の1/3であった。すなわち、絶縁層Bより絶縁層Aの熱伝導率が高く、絶縁層Aの面内方向より膜厚方向の熱伝導率が高い実施例1の方が、絶縁層Bより絶縁層Aの熱伝導率が高く、絶縁層Aの膜厚方向より面内方向の熱伝導率が高い比較例2より、絶縁層Aの外側表面(無端ベルトに接する側の面)の温度上昇速度が向上した。
<実施例4>
実施例1のポリアミック酸溶液Bに、熱伝導フィラーとして六方晶窒化ホウ素粉末(UHP−S1、昭和電工製)を、ポリアミック酸溶液A固形分に対し、70体積%の添加量で添加したこと以外は、実施例1と同様の条件で面状発熱体6を作製した。
実施例4の絶縁層Aの熱伝導率を熱物性測定装置(ベテル社製、サーモウェーブアナライザTA3型)により測定した。その結果、絶縁層Aの面内方向の熱伝導率は、1.4(W/mk)であり、膜厚方向の熱伝導率は4.9(W/mk)であり、面内方向/膜厚方向の熱伝導率は、3.5であった。次に、面状発熱体6に通電して、絶縁層Aの外側表面及び絶縁層Bの外側表面の温度上昇速度を一定通電時間後の放射温度計による温度測定により測定した(実施例1と同様の条件で測定した)。その結果、絶縁層Aの外側表面の温度上昇速度は、絶縁層Bの外側表面の温度上昇速度の8.5倍であった。また、実施例4における絶縁層Aの外側表面の温度上昇速度は、実施例1における絶縁層Aの外側表面の温度上昇速度の1.6倍であった。
<実施例5>
実施例1のポリアミック酸溶液Bに、熱伝導フィラーとして六方晶窒化ホウ素粉末(UHP−S1、昭和電工製)を、ポリアミック酸溶液B固形分に対し、20体積%の添加量で添加したこと以外は、実施例1と同様の条件で面状発熱体7を作製した。
実施例5の絶縁層Aの熱伝導率を熱物性測定装置(ベテル社製、サーモウェーブアナライザTA3型)により測定した。その結果、絶縁層Aの面内方向の熱伝導率は、0.7(W/mk)であり、膜厚方向の熱伝導率は2.3(W/mk)であり、面内方向/膜厚方向の熱伝導率は、3.3であった。次に、面状発熱体7に通電して、絶縁層Aの外側表面及び絶縁層Bの外側表面の温度上昇速度を一定通電時間後の放射温度計による温度測定により測定した(実施例1と同様の条件で測定した)。その結果、絶縁層Aの外側表面の温度上昇速度は、絶縁層Bの外側表面の温度上昇速度の3倍であった。また、実施例5における絶縁層Aの外側表面の温度上昇速度は、実施例1における絶縁層Aの外側表面の温度上昇速度の2/3であった。