以下、必要に応じて図面を参照しつつ、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図面中、同一要素には同一符号を付すこととし、重複する説明は省略する。また、上下左右等の位置関係は、特に断らない限り、図面に示す位置関係に基づくものとする。更に、図面の寸法比率は図示の比率に限られるものではない。
本実施形態のポジ型感光性樹脂組成物は、(A)成分であるメタクレゾール及びパラクレゾールから得られるノボラック型フェノール樹脂と、(B)成分であるオルトクレゾールから得られるノボラック型フェノール樹脂と、(C)成分である光により酸を発生する化合物とを含有する。
以下、ポジ型感光性樹脂組成物を構成する各成分について詳細に説明する。
<(A)成分>
(A)成分は、メタクレゾール及びパラクレゾールを主成分として含むフェノール誘導体と、アルデヒド類との重縮合生成物である。重縮合は、酸等の触媒存在下で行われる。
メタクレゾールとパラクレゾールとの質量比は、現像性及び耐現像液性の観点から、メタクレゾール/パラクレゾールが、50/50〜70/30であることが好ましく、55/35〜65/45であることがより好ましい。
(A)成分を得るために用いられるフェノール誘導体として、メタクレゾール及びパラクレゾール以外のフェノール誘導体を共重合することができる。メタクレゾール及びパラクレゾール以外のフェノール誘導体としては、例えば、フェノール;オルトクレゾール、2−エチルフェノール、3−エチルフェノール、4−エチルフェノール、2−ブチルフェノール、3−ブチルフェノール、4−ブチルフェノール、2,3−キシレノール、2,4−キシレノール、2,5−キシレノール、2,6−キシレノール、3,4−キシレノール、3,5−キシレノール、2,3,5−トリメチルフェノール、3,4,5−トリメチルフェノール等のアルキルフェノール;メトキシフェノール、2−メトキシ−4−メチルフェノール等のアルコキシフェノール;ビニルフェノール、アリルフェノール等のアルケニルフェノール;ベンジルフェノール等のアラルキルフェノール;メトキシカルボニルフェノール等のアルコキシカルボニルフェノール;ベンゾイルオキシフェノール等のアリールカルボニルフェノール;クロロフェノール等のハロゲン化フェノール;カテコール、レゾルシノール、ピロガロール等のポリヒドロキシベンゼンが挙げられる。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。これらのフェノール誘導体は本発明が奏する効果を損ねない範囲で添加することができ、その添加量は、(A)成分を得るために用いられるフェノール誘導体の総量を基準として、30質量%以下であることが好ましい。
アルデヒド類としては、例えば、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、アセトン、グリセルアルデヒド及びグリオキシル酸メチルが挙げられる。また、パラホルムアルデヒド、トリオキサン等のホルムアルデヒドの前駆体をフェノール誘導体との反応に用いてもよい。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。
(A)成分は、感光層の可とう性を向上する観点から、不飽和炭化水素基を有する化合物と反応させて得られるノボラック型フェノール樹脂(以下、「不飽和炭化水素基を有する化合物で変性されたフェノール樹脂」という。)を含むことが好ましい。
不飽和炭化水素基を有する変性フェノール樹脂は、一般に、上記メタクレゾール若しくはパラクレゾールと不飽和炭化水素基を有する化合物(好ましくは炭素数が4〜100のもの)(以下場合により単に「不飽和炭化水素基含有化合物」という。)との反応生成物(以下「不飽和炭化水素基変性フェノール誘導体」という。)と、アルデヒド類との縮重合生成物、又は、上記ノボラック型フェノール樹脂と不飽和炭化水素基含有化合物との反応生成物である。
フェノール誘導体は、(A)成分としてのフェノール樹脂の原料として上述したフェノール誘導体と同様のものを用いることができる。
不飽和炭化水素基含有化合物の不飽和炭化水素基は、レジストパターンの密着性及び感光層の可とう性の観点から、2以上の不飽和基を含むことが好ましい。また、樹脂組成物とした時の相溶性及び硬化膜の可とう性の観点からは、不飽和炭化水素基含有化合物は炭素数8〜80のものが好ましく、炭素数10〜60のものがより好ましい。
不飽和炭化水素基含有化合物としては、例えば、炭素数4〜100の不飽和炭化水素、カルボキシル基を有するポリブタジエン、エポキシ化ポリブタジエン、リノリルアルコール、オレイルアルコール、不飽和脂肪酸及び不飽和脂肪酸エステルである。好適な不飽和脂肪酸としては、クロトン酸、ミリストレイン酸、パルミトレイン酸、オレイン酸、エライジン酸、バクセン酸、ガドレイン酸、エルカ酸、ネルボン酸、リノール酸、α−リノレン酸、エレオステアリン酸、ステアリドン酸、アラキドン酸、エイコサペンタエン酸、イワシ酸及びドコサヘキサエン酸が挙げられる。これらの中でも特に、炭素数8〜30の不飽和脂肪酸と、炭素数1〜10の1価から3価のアルコールとのエステルがより好ましく、炭素数8〜30の不飽和脂肪酸と3価のアルコールであるグリセリンとのエステルが特に好ましい。
炭素数8〜30の不飽和脂肪酸とグリセリンとのエステルは、植物油として商業的に入手可能である。植物油は、ヨウ素価が100以下の不乾性油、100を超えて130未満の半乾性油又は130以上の乾性油がある。不乾性油として、例えば、オリーブ油、あさがお種子油、カシュウ実油、さざんか油、つばき油、ひまし油及び落花生油が挙げられる。半乾性油として、例えば、コーン油、綿実油及びごま油が挙げられる。乾性油としては、例えば、桐油、亜麻仁油、大豆油、胡桃油、サフラワー油、ひまわり油、荏の油及び芥子油が挙げられる。また、これらの植物油を加工して得られる加工植物油を用いてもよい。
上記植物油の中で、パラクレゾール若しくはメタクレゾール、又はノボラック型フェノール樹脂と植物油との反応において、過度の反応の進行に伴うゲル化を防ぎ、歩留まりが向上する観点から、不乾性油を用いることが好ましい。一方、レジストパターンの密着性及び機械特性が向上する観点では乾性油を用いることが好ましい。乾性油の中でも、本発明による効果をより有効かつ確実に発揮できることから、桐油、亜麻仁油、大豆油、胡桃油及びサフラワー油が好ましく、桐油及び亜麻仁油がより好ましい。
これらの不飽和炭化水素基含有化合物は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。
不飽和炭化水素基を有する化合物で変性されたフェノール樹脂を調製するにあたり、まず、上記フェノール誘導体と上記不飽和炭化水素基含有化合物とを反応させ、不飽和炭化水素基変性フェノール誘導体を作製する。上記反応は、50〜130℃で行うことが好ましい。フェノール誘導体と不飽和炭化水素基含有化合物との反応割合は、感光層の可とう性を向上させる観点から、フェノール誘導体100質量部に対し、不飽和炭化水素基含有化合物1〜100質量部であることが好ましく、5〜50質量部であることがより好ましい。上記反応においては、必要に応じて、p−トルエンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸等を触媒として用いてもよい。
上記反応により生成する不飽和炭化水素基変性フェノール誘導体と、アルデヒド類とを重縮合させることにより、不飽和炭化水素基含有化合物によって変性されたフェノール樹脂が生成する。アルデヒド類は、フェノール樹脂を得るために用いられるアルデヒド類として上述したものと同様のものを用いることができる。
上記アルデヒド類と、上記不飽和炭化水素基変性フェノール誘導体との反応は、重縮合反応であり、従来公知のフェノール樹脂の合成条件を用いることができる。反応は酸又は塩基等の触媒の存在下で行うことが好ましく、酸触媒を用いることがより好ましい。酸触媒としては、例えば、塩酸、硫酸、ぎ酸、酢酸、p−トルエンスルホン酸及びシュウ酸が挙げられる。これらの酸触媒は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
上記反応は、通常反応温度100〜120℃で行うことが好ましい。また、反応時間は使用する触媒の種類や量により異なるが、通常1〜50時間である。反応終了後、反応生成物を200℃以下の温度で減圧脱水することで不飽和炭化水素基含有化合物によって変性されたフェノール樹脂が得られる。なお、反応には、トルエン、キシレン、メタノール等の溶媒を用いることができる。
不飽和炭化水素基含有化合物によって変性されたフェノール樹脂は、上述の不飽和炭化水素基変性フェノール誘導体を、m−キシレンのようなフェノール以外の化合物とともにアルデヒド類と重縮合することにより得ることもできる。この場合、フェノール誘導体と不飽和炭化水素基含有化合物とを反応させて得られる化合物に対するフェノール以外の化合物のモル比は、0.5未満であると好ましい。
不飽和炭化水素基含有化合物によって変性されたフェノール樹脂は、上記ノボラック型フェノール樹脂と不飽和炭化水素基含有化合物とを反応させて得ることもできる。
ノボラック型フェノール樹脂と反応させる不飽和炭化水素基含有化合物は、上述した不飽和炭化水素基含有化合物と同様のものを使用することができる。
ノボラック型フェノール樹脂と不飽和炭化水素基含有化合物との反応は、通常50〜130℃で行うことが好ましい。また、フェノール樹脂と不飽和炭化水素基含有化合物との反応割合は、感光層の可とう性を向上させる観点から、フェノール樹脂100質量部に対し、不飽和炭化水素基含有化合物1〜100質量部であることが好ましく、2〜70質量部であることがより好ましく、5〜50質量部であることが更に好ましい。このとき、必要に応じて、p−トルエンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸等を触媒として用いてもよい。なお、反応にはトルエン、キシレン、メタノール、テトラヒドロフランなどの溶媒を用いることができる。
以上のような方法により生成する不飽和炭化水素基含有化合物によって変性されたフェノール樹脂中に残ったフェノール性水酸基に、更に多塩基酸無水物を反応させることにより酸変性したフェノール樹脂を(A)成分として用いることもできる。多塩基酸無水物で酸変性することにより、カルボキシ基が導入され、弱アルカリ水溶液(現像液)でも容易に現像することが可能となる。
多塩基酸無水物は、複数のカルボキシ基を有する多塩基酸のカルボキシ基が脱水縮合して形成された酸無水物基を有していれば、特に限定されない。多塩基酸無水物としては、例えば、無水フタル酸、無水コハク酸、オクテニル無水コハク酸、ペンタドデセニル無水コハク酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、無水ナジック酸、3,6−エンドメチレンテトラヒドロ無水フタル酸、メチルエンドメチレンテトラヒドロ無水フタル酸、テトラブロモ無水フタル酸及び無水トリメリット酸等の二塩基酸無水物、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、ジフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物、ブタンテトラカルボン酸二無水物、シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、無水ピロメリット酸及びベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物等の芳香族四塩基酸二無水物が挙げられる。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの中でも、多塩基酸無水物は二塩基酸無水物であることが好ましく、テトラヒドロ無水フタル酸、無水コハク酸及びヘキサヒドロ無水フタル酸からなる群より選ばれる1種以上であることがより好ましい。この場合、さらに良好な形状を有するレジストパターンを形成できるという利点がある。
フェノール性水酸基と多塩基酸無水物との反応は、50〜130℃で行うことができる。この反応において、多塩基酸無水物をフェノール性水酸基1モルに対して、0.10〜0.80モルを反応させることが好ましく、0.15〜0.60モル反応させることがより好ましく、0.20〜0.40モル反応させることが更に好ましい。多塩基酸無水物が0.10モル未満では、現像性が低下する傾向にあり、0.80モルを超えると、未露光部の耐アルカリ性が低下する傾向にある。
なお、上記反応には、反応を迅速に行う観点から、必要に応じて、触媒を含有させてもよい。触媒としては、トリエチルアミン等の3級アミン、トリエチルベンジルアンモニウムクロライド等の4級アンモニウム塩、2−エチル−4−メチルイミダゾール等のイミダゾール化合物、トリフェニルホスフィン等のリン化合物が挙げられる。
多塩基酸無水物で更に変性したフェノール樹脂の酸価は、30〜200mgKOH/gであることが好ましく、40〜170mgKOH/gであることがより好ましく、50〜150mgKOH/gであることが更に好ましい。酸価が30mgKOH/g未満であると、酸価が上記範囲にある場合と比較して、アルカリ現像に長時間を要する傾向にあり、200mgKOH/gを超えると、酸価が上記範囲にある場合と比較して、未露光部の耐現像液性が低下する傾向にある。
(A)成分の分子量は、アルカリ水溶液に対する溶解性や、感光特性(感度、解像度)と機械特性とのバランスを考慮すると、重量平均分子量(Mw)で、5000〜50000であることが好ましく、9000〜23000であることがより好ましく、10000〜20000であることが特に好ましい。
ここで、本明細書における重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定し、標準ポリスチレン検量線より換算して得た値である。GPCにおける測定の条件は以下のとおりである。
ポンプ:L−6200型(日立製作所製、商品名)
カラム:TSKgel−G5000HXL(東ソー製、商品名)
検出器:L−3300RI型(日立製作所製、商品名)
溶離液:テトラヒドロフラン
温度:30℃
流量:1.0mL/分
感光性樹脂組成物中の(A)成分の含有量は、(A)成分、(B)成分及び(C)成分の総量100質量部に対して、10〜35質量部であることが好ましく、15〜30質量部であることがより好ましく、20〜25質量部であることが特に好ましい。
<(B)成分>
(B)成分は、オルトクレゾールを主成分として含むフェノール誘導体と、アルデヒド類との重縮合生成物である。重縮合は、酸等の触媒存在下で行われる。
(B)成分を得るために用いられるフェノール誘導体として、オルトクレゾール以外のフェノール誘導体を共重合することができる。オルトクレゾール以外のフェノール誘導倒しては、例えば、フェノール;メタクレゾール、パラクレゾール、2−エチルフェノール、3−エチルフェノール、4−エチルフェノール、2−ブチルフェノール、3−ブチルフェノール、4−ブチルフェノール、2,3−キシレノール、2,4−キシレノール、2,5−キシレノール、2,6−キシレノール、3,4−キシレノール、3,5−キシレノール、2,3,5−トリメチルフェノール、3,4,5−トリメチルフェノール等のアルキルフェノール;メトキシフェノール、2−メトキシ−4−メチルフェノール等のアルコキシフェノール;ビニルフェノール、アリルフェノール等のアルケニルフェノール;ベンジルフェノール等のアラルキルフェノール;メトキシカルボニルフェノール等のアルコキシカルボニルフェノール;ベンゾイルオキシフェノール等のアリールカルボニルフェノール;クロロフェノール等のハロゲン化フェノール;カテコール、レゾルシノール、ピロガロール等のポリヒドロキシベンゼンが挙げられる。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。これらのフェノール誘導体は本発明が奏する効果を損ねない範囲で添加することができ、その添加量は、(B)成分を得るために用いられるフェノール誘導体の総量を基準として、15質量%以下であることが好ましい。
アルデヒド類としては、(A)成分で例示したアルデヒド類と同様ものを例示することができる。
(B)成分の分子量は、感光層における未露光部の耐現像液性と露光部の現像性とをバランス良く向上できる観点から、重量平均分子量で1000〜7000が好ましく、1000〜6000がより好ましく、3000〜6000が特に好ましい。
感光性樹脂組成物中の(B)成分の含有量は、(A)成分、(B)成分及び(C)成分の総量100質量部に対して50〜80質量部であることが好ましく、55〜75質量部であることがより好ましく、60〜70質量部であることが特に好ましい。
<(C)成分>
(C)成分である光により酸を発生する化合物は、感光剤として用いられる。このような(C)成分は、光照射により酸を発生させ、光照射した部分のアルカリ水溶液への可溶性を増大させる機能を有する。(C)成分としては、一般に光酸発生剤と称される化合物を用いることができる。(C)成分の具体例としては、o−キノンジアジド化合物、アリールジアゾニウム塩、ジアリールヨードニウム塩、トリアリールスルホニウム塩等が挙げられる。これらの中で、感度が高いことから、1,2−キノンジアジド化合物が好ましい。
1,2−キノンジアジド化合物は、1,2−キノンジアミド及び/又はその誘導体である。かかる1,2−キノンジアジド化合物は、水酸基又はアミノ基を有する有機化合物(以下単に「有機化合物」という。)に、スルホ基及び/又はスルホニルクロリド基を有する1,2−キノンジアジド化合物を反応させて得られる化合物である。このとき、有機化合物の水酸基又はアミノ基と、1,2−キノンジアジド化合物のスルホ基又はスルホニルクロリド基とが結合する。なお、この結合は、得られる1,2−キノンジアジド化合物の分子内に少なくとも一つ以上あればよい。
上記スルホ基及び/又はスルホニルクロリド基を有する1,2−キノンジアジド化合物としては、例えば、1,2−ナフトキノン−2−ジアジド−4−スルホン酸、1,2−ナフトキノン−2−ジアジド−5−スルホン酸、オルトアントラキノンジアジドスルホン酸、1,2−ナフトキノン−2−ジアジド−4−スルホニルクロリド、1,2−ナフトキノン−2−ジアジド−5−スルホニルクロリド、及びオルトアントラキノンジアジドスルホニルクロリドが挙げられる。これらの中でも、1,2−ナフトキノン−2−ジアジド−4−スルホン酸、1,2−ナフトキノン−2−ジアジド−5−スルホン酸、1,2−ナフトキノン−2−ジアジド−4−スルホニルクロリド及び1,2−ナフトキノン−2−ジアジド−5−スルホニルクロリドからなる群より選ばれる1種以上の化合物が好ましい。これらのスルホ基及び/又はスルホニルクロリド基を有する1,2−キノンジアジド化合物は、溶剤によく溶解することから、有機化合物との反応効率を高めることができる。
上記有機化合物としては、例えば、ポリヒドロキシベンゾフェノン類、ビス[(ポリ)ヒドロキシフェニル]アルカン類、トリス(ヒドロキシフェニル)メタン類又はそのメチル置換体、ビス(シクロヘキシルヒドロキシフェニル)(ヒドロキシフェニル)メタン類又はそのメチル置換体、フェノール、p−メトキシフェノール、ジメチルフェノール、ヒドロキノン、ナフトール、ピロカテコール、ピロガロール、ピロガロールモノメチルエーテル、ピロガロール−1,3−ジメチルエーテル、没食子酸、アニリン、p−アミノジフェニルアミン、4,4’−ジアミノベンゾフェノン、ノボラック、ピロガロール−アセトン樹脂、p−ヒドロキシスチレンのホモポリマー又はこれと共重合し得るモノマーとの共重合体が挙げられる。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。
ポリヒドロキシベンゾフェノン類としては、例えば、2,3,4−トリヒドロキシベンゾフェノン、2,4,4’−トリヒドロキシベンゾフェノン、2,4,6−トリヒドロキシベンゾフェノン、2,3,6−トリヒドロキシベンゾフェノン、2,3,4−トリヒドロキシ−2’−メチルベンゾフェノン、2,3,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン、2,2’,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン、2,3’,4,4’,6−ペンタヒドロキシベンゾフェノン、2,2’,3,4,4’−ペンタヒドロキシベンゾフェノン、2,2’,3,4,5−ペンタヒドロキシベンゾフェノン、2,3’,4,4’,5’,6−ヘキサヒドロキシベンゾフェノン及び2,3,3’,4,4’,5’−ヘキサヒドロキシベンゾフェノンが挙げられる。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。
ビス[(ポリ)ヒドロキシフェニル]アルカン類としては、例えば、ビス(2,4−ジヒドロキシフェニル)メタン、ビス(2,3,4−トリヒドロキシフェニル)メタン、2−(4−ヒドロキシフェニル)−2−(4’−ヒドロキシフェニル)プロパン、2−(2,4−ジヒドロキシフェニル)−2−(2’,4’−ジヒドロキシフェニル)プロパン、2−(2,3,4−トリヒドロキシフェニル)−2−(2’,3’,4’−トリヒドロキシフェニル)プロパン、4,4’−{1−[4−〔2−(4−ヒドロキシフェニル)−2−プロピル〕フェニル]エチリデン}ビスフェノール及び3,3’−ジメチル−{1−[4−〔2−(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)−2−プロピル〕フェニル]エチリデン}ビスフェノールが挙げられる。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。
トリス(ヒドロキシフェニル)メタン類又はそのメチル置換体としては、例えば、トリス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(4−ヒドロキシ−3、5−ジメチルフェニル)−4−ヒドロキシフェニルメタン、ビス(4−ヒドロキシ−2,5−ジメチルフェニル)−4−ヒドロキシフェニルメタン、ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)−2−ヒドロキシフェニルメタン、ビス(4−ヒドロキシ−2,5−ジメチルフェニル)−2−ヒドロキシフェニルメタン、ビス(4−ヒドロキシ−2,5−ジメチルフェニル)−3,4−ジヒドロキシフェニルメタン及びビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)−3,4−ジヒドロキシフェニルメタンが挙げられる。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。
ビス(シクロヘキシルヒドロキシフェニル)(ヒドロキシフェニル)メタン類又はそのメチル置換体としては、例えば、ビス(3−シクロヘキシル−4−ヒドロキシフェニル)−3−ヒドロキシフェニルメタン、ビス(3−シクロヘキシル−4−ヒドロキシフェニル)−2−ヒドロキシフェニルメタン、ビス(3−シクロヘキシル−4−ヒドロキシフェニル)−4−ヒドロキシフェニルメタン、ビス(5−シクロヘキシル−4−ヒドロキシ−2−メチルフェニル)−2−ヒドロキシフェニルメタン、ビス(5−シクロヘキシル−4−ヒドロキシ−2−メチルフェニル)−3−ヒドロキシフェニルメタン、ビス(5−シクロヘキシル−4−ヒドロキシ−2−メチルフェニル)−4−ヒドロキシフェニルメタン、ビス(3−シクロヘキシル−2−ヒドロキシフェニル)−3−ヒドロキシフェニルメタン、ビス(5−シクロヘキシル−4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)−4−ヒドロキシフェニルメタン、ビス(5−シクロヘキシル−4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)−3−ヒドロキシフェニルメタン、ビス(5−シクロヘキシル−4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)−2−ヒドロキシフェニルメタン、ビス(3−シクロヘキシル−2−ヒドロキシフェニル)−4−ヒドロキシフェニルメタン、ビス(3−シクロヘキシル−2−ヒドロキシフェニル)−2−ヒドロキシフェニルメタン、ビス(5−シクロヘキシル−2−ヒドロキシ−4−メチルフェニル)−2−ヒドロキシフェニルメタン及びビス(5−シクロヘキシル−2−ヒドロキシ−4−メチルフェニル)−4−ヒドロキシフェニルメタンが挙げられる。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。
これらの中でも、有機化合物は、ポリヒドロキシベンゾフェノン類、ビス[(ポリ)ヒドロキシフェニル]アルカン類、トリス(ヒドロキシフェニル)メタン類、及び/又は、ビス(シクロヘキシルヒドロキシフェニル)(ヒドロキシフェニル)メタン類であることが好ましい。
また、上記有機化合物は、下記一般式(1)〜(3)のいずれかで表される化合物であることがより好ましい。この場合、感光性樹脂組成物への光照射前と光照射後との現像液に対する溶解度差が大きくなるため、画像コントラストにより優れるという利点がある。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。
ここで、式(1)〜(3)中、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9、R10、R11及びR12は、それぞれ独立に水素原子、置換若しくは無置換の炭素数1〜5のアルキル基、又は、置換若しくは無置換の炭素数1〜5のアルコキシ基を示し、Xは単結合、酸素原子又はフェニレン基を示す。
有機化合物が上記一般式(1)〜(3)のいずれかで表される化合物である場合、スルホ基及び/又はスルホニルクロリド基を有する1,2−キノンジアジド化合物が、1,2−ナフトキノン−2−ジアジド−4−スルホン酸、1,2−ナフトキノン−2−ジアジド−5−スルホン酸、1,2−ナフトキノン−2−ジアジド−4−スルホニルクロリド、及び/又は1,2−ナフトキノン−2−ジアジド−5−スルホニルクロリドであることが好ましい。これらのスルホ基及び/又はスルホニルクロリド基を有する1,2−キノンジアジド化合物は、上記一般式(1)〜(3)で表される化合物との相溶性が良好であることから、(a)成分と(b)成分とを混合した場合に生じる凝集物の発生量を低減させることができる。また、これらを含む感光性樹脂組成物をポジ型フォトレジストの感光性成分として用いると、感度、画像コントラスト及び耐熱性により優れるものとなる。
また、上記一般式(1)〜(3)で表される化合物は、下記化学式(4)〜(6)のいずれかで表される化合物であることがより好ましい。この場合、光感度により優れるという利点がある。
上記化学式(4)〜(6)で表される化合物を用いた1,2−キノンジアジド化合物の合成方法としては、下記の方法が挙げられる。すなわち、例えば、上述の化学式(4)〜(6)のいずれかで表される化合物と、1,2−ナフトキノン−2−ジアジド−スルホニルクロリドとを、ジオキサン、THFのような溶媒中に添加し、トリエチルアミン、トリエタノールアミン、炭酸アルカリ又は炭酸水素アルカリ等のアルカリ触媒存在下で反応させる方法が挙げられる。このとき、上記化学式(4)〜(6)で表される化合物の水酸基と、1,2−ナフトキノン−2−ジアジド−スルホニルクロリドのスルホニル基とが縮合した1,2−キノンジアジド化合物が合成される。なお、得られる1,2−キノンジアジド化合物の分子内において、化学式(4)〜(6)で表される化合物の水酸基と、1,2−ナフトキノン−2−ジアジド−スルホニルクロリドのスルホニル基との結合は少なくとも一つあればよい。
1,2−ナフトキノン−2−ジアジド−スルホニルクロリドとしては、1,2−ナフトキノン−2−ジアジド−4−スルホニルクロリド、又は、1,2−ナフトキノン−2−ジアジド−5−スルホニルクロリドが好適である。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
感光性樹脂組成物中の(C)成分の含有量は、感光特性及び機械特性の観点から、(A)成分、(B)成分、及び(C)成分の総量100質量部に対して、3〜30質量部であることが好ましく、5〜25質量部であることがより好ましく、10〜20質量部であることが特に好ましい。
<(D)成分>
ポジ型感光性樹脂組成物の塗布性、消泡性、レベリング性等を向上させ、かつ、感光性フィルムとした場合の感光層の支持体フィルムからの剥離性を向上する目的で、感光性樹脂組成物は、(D)成分としてフッ素系界面活性剤を含有することができる。
フッ素系界面活性剤としては、例えば、BM−1000、BM−1100(以上、BMケミー社製、商品名);メガファックF142D、メガファックF172、メガファックF173、メガファックF183、メガファックR−08、メガファックR−30、メガファックR−90PM−20、メガファックBL−20(以上、大日本インキ化学工業社製、商品名);フロラードFC−135、フロラードFC−170C、フロラードFC−430、フロラードFC−431、ノベックFC−4430、ノベックFC−4432(以上、住友スリーエム社製、商品名);サーフロンS−112、サーフロンS−113、サーフロンS−131、サーフロンS−141、サーフロンS−145(以上、旭硝子社製、商品名)等の市販品を用いることができる。これらの中でも特に、露光後のクラック発生性をより向上できる観点からは、パーフルオロブタンスルホン酸骨格を有するフッ素系界面活性剤である、ノベックFC−4430、ノベックFC−4432が好ましい。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。
感光性樹脂組成物中に(D)成分を配合する場合の含有割合は、(A)成分、(B)成分及び(C)成分の総量100質量部に対して、0.1〜5質量部であることが好ましく、0.2〜2質量部であることが好ましく、0.3〜1質量部であることが更に好ましい。(D)成分の含有割合が5質量部を超えると、画像コントラストが低下する傾向にある。
<(E)成分>
支持体フィルムへの塗工性、形成した感光層の基材への密着性及び露光後の現像性をより向上する観点から、感光性樹脂組成物は、(E)成分として密着性付与剤を含有することができる。
(E)成分としては、含窒素化合物、シランカップリング剤、アルミキレート剤等の接着助剤及び/又は有機酸、高沸点溶媒等の溶解性調整剤を用いることができる。
含窒素化合物としては、アゾール基、アミノ基、アミド基、イミノ基、イミド基等を有することが好ましく、例えば、イミダゾール、ピラゾール、ベンゾイミダゾール、ベンゾトリアゾール、メルカプトトリアゾール等のトリアゾ−ル系化合物、アルキルアミン、ピペリジン、ピペラジン、モルホリン、アニリン、エチレンジアミン、カテコールアミン、、エチレンジアミン四酢酸、ビピリジン、ターピリジン及びフェナントロリンが挙げられる。
シランカップリング剤としては、カルボキシル基、メタクリロイル基、イソシアネート基、エポキシ基等の反応性置換基を有していることが好ましく、例えば、トリメトキシシリル安息香酸、γ―メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、γ―グリシドキシプロピルトリメトキシシラン及びβ―(3,4―エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランが挙げられる。
アルミキレート剤としては、例えば、アルミニウムエチルアセトアセテート・ジイソプロピレート、アルミニウムトリスエチルアセトアセテート、アルミニウムビスエチルアセトアセテート・モノアセチルアセトネート及びアルミニウムトリスアセチルアセトネートが挙げられる。
これらの接着助剤の中でも特に、現像性の観点から、含窒素化合物が好ましく、トリアゾ−ル系化合物がより好ましく、メルカプトトリアゾ−ルが特に好ましい。
感光性樹脂組成物中に接着助剤を配合する場合の含有量は、(A)成分、(B)成分及び(C)成分の総量100質量部に対して、0.1〜5質量部であることが好ましく、0.2〜3質量部であることが好ましく、0.3〜2質量部であることが更に好ましい。
有機酸としては、例えば、モノカルボン酸、ヒドロキシモノカルボン酸、高価カルボン酸及び酸無水物が挙げられる。
モノカルボン酸としては、例えば、酢酸、プロピオン酸、n−酪酸、iso−酪酸、n−吉草酸、iso−吉草酸、安息香酸及び桂皮酸が挙げられる。
ヒドロキシモノカルボン酸としては、例えば、乳酸、ヒドロキシ酪酸、サリチル酸、ヒドロキシ安息香酸、ヒドロキシ桂皮酸、ヒドロキシイソフタル酸及びシリンギン酸が挙げられる。
多価カルボン酸としては、例えば、シュウ酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、マレイン酸、イタコン酸、ヘキサヒドロフタル酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、シクロヘキサンジカルボン酸、シクロヘキサントリカルボン酸、トリメリット酸及びピロメリット酸が挙げられる。
酸無水物としては、例えば、無水イタコン酸、無水コハク酸、無水シトラコン酸、無水ドデセニルコハク酸、無水トリカルバニル酸、無水マレイン酸、無水ヘキサヒドロフタル酸、無水メチルテトラヒドロフタル酸、無水ハイミック酸、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸、シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、無水フタル酸、無水ピロメリット酸、無水トリメリット酸、無水ベンゾフェノンテトラカルボン酸、エチレングリコールビス無水トリメリテート及びグリセリントリス無水トリメリテートが挙げられる。
高沸点溶媒は、常圧下での沸点が150℃以上の溶媒を表し、例えば、N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド、ジヘキシルエーテル、カプロン酸、カプリル酸、1−オクタノール、1−ノナノール、ベンジルアルコール、酢酸ベンジル、安息香酸エチル、γ−ブチロラクトン及びフェニルセロソルブアセテートが挙げられる。
上記溶解性調整剤の配合量は、用途や塗布方法に応じて適宜調整することができ、上記感光性樹脂組成物が均一に混合され得る配合量であれば特に限定されないが、感光性樹脂組成物全量に対して、60質量%以下であることが好ましく、40質量%以下であることがより好ましい。
<その他の成分>
本実施形態の感光性樹脂組成物には、必要に応じて、増感剤、吸光剤(染料)、架橋剤、可塑剤、顔料、充填材、難燃剤、安定剤、剥離促進剤、酸化防止剤、香料、イメージング剤、熱架橋剤等の添加剤を含有させてもよい。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの添加剤の配合量は、上記感光性樹脂組成物の特性を損なわない範囲であれば特に制限されないが、感光性樹脂組成物全量に対して、50質量%以下であることが好ましい。
感光性樹脂組成物の調製は、通常の方法で混合、攪拌すればよく、充填材、顔料等を添加する場合にはディゾルバー、ホモジナイザー、3本ロールミル等の分散機を用いて分散、混合させればよい。また、必要に応じて、さらにメッシュ、メンブレンフィルター等を用いてろ過してもよい。
[感光性フィルム]
本実施形態に係る感光性フィルムは、少なくとも一方の面が離型処理された支持体フィルムと、該支持体フィルムの離型処理面上に形成された上記ポジ型感光性樹脂組成物からなる感光層とを備える。感光層の支持体フィルムと反対側の面には、必要に応じて、保護フィルムを積層することができる。
図1は、感光性フィルムの一実施形態を示す模式断面図である。図1に示した感光性フィルム1は、支持体フィルム10上に感光層14が積層され、さらに感光層14の支持体フィルム10と反対側の面に保護フィルム15を積層した構造を有する。感光層14は、本実施形態の感光性樹脂組成物からなる層である。
<支持体フィルム>
本実施形態に係る支持体フィルム10は、少なくとも一方の面が離型処理されている。ここで、離型処理とは、シリコーン系界面活性剤、シリコーン樹脂等のシリコーン系化合物、フッ素系界面活性剤、フッ素樹脂等のフッ素含有化合物、アルキッド樹脂等の離型剤で支持体フィルムの表面を薄くコートする化学処理や、支持体フィルムをコロナ処理する等の物理処理を指す。
支持体フィルムに離型剤をコートする場合は、離型の効果が得られる限度で薄くコートすることが好ましい。コート後は、熱やUV処理により離型剤を支持体フィルムに定着させてもよい。離型剤をコートする前に、支持体フィルムに下塗り層を施すことがより好ましい。
感光性樹脂組成物の塗布性及び感光層の剥離性の観点からは、支持体フィルムの離型処理面の23℃における表面張力(ぬれ張力)が、20〜45mN/mであることが好ましく、30〜45mN/mであることがより好ましく、35〜45mN/mであることが更に好ましい。ここで、上記支持体フィルムにおける離型処理面の表面張力は、以下のようにして測定できる。例えば、23℃の条件下、綿棒を用いて市販の濡れ張力試験用混合液(和光純薬工業株式会社製)を、支持体フィルムの離型処理面に塗布した時に、撥液することなしに、べったり濡れる試験用混合液番号の最小値を表面張力(ぬれ張力)とする。
また、感光層の剥離性の観点から、支持体フィルムの離型処理面の23℃における180℃剥離強度が、5〜300g/インチ(1.97〜118g/cm)であることが好ましく、5〜200g/インチ(1.97〜78.7g/cm)であることがより好ましく、100〜200g/インチ(39.4〜78.7g/cm)であることが更に好ましい。上記180°剥離強度は、粘着テープ(日東電工社製、商品名:「NITTO31B」)を用いて、一般的な方法(例えば、JIS K6854−2に準拠する方法等)で測定することができる。
離型処理を施す前の支持体フィルムとしては、表面が平滑であれば特に限定されないが、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエステル等の重合体フィルムを用いることができ、中でも、ポリエチレンテレフタレートフィルム(以下、「PETフィルム」という)が好ましい。
少なくとも一方の面がシリコーン化合物で離型処理されたPETフィルムとしては、例えば、帝人デュポンフィルム株式会社製の商品名「ピューレックスA53」、「A31−25」、「A51−25」及び「A53−38」を市販品として入手可能である。
支持体フィルム10の厚さは、15〜50μmであることが好ましく、25〜40μmであることがより好ましい。上記支持体フィルム10の厚さが15μm未満では、離型処理時のひずみが残留したり、フィルムを巻き取った際に巻きしわの発生が起こる可能性があり、50μmを超えると、基材に感光層14をラミネートする際の加熱圧着時に、基材と感光層14との間に気泡が巻き込みやすくなる傾向がある。
<保護フィルム>
保護フィルム15としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエステル等の重合体フィルムを用いることができる。また、支持体フィルムと同様に、離型処理を施した重合体フィルムを用いてもよい。感光性フィルムをロール状に巻き取る際の柔軟性の観点からは、保護フィルム15として、ポリエチレンフィルムが特に好ましい。また、保護フィルム15は、感光層表面の凹みを低減できるよう、低フィッシュアイのフィルムであることが好ましい。
保護フィルム15の厚さは、10〜100μmであることが好ましく、15〜80μmであることが特に好ましい。
次に、本実施形態の感光性フィルム1の作製方法について説明する。
感光層14は、上記感光性樹脂組成物を液状レジストとして支持体フィルム10上に塗布することで形成することができる。感光性樹脂組成物を支持体フィルム10上に塗布する際には、必要に応じて、上記感光性樹脂組成物を所定の溶剤に溶解して固形分20〜90質量%の溶液としたものを塗布液として用いてもよい。
かかる溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、オクタン、デカン、石油エーテル、石油ナフサ、水添石油ナフサ、ソルベントナフサ、アセトン、メチルイソブチルケトン、ジエチルケトン、ジイソブチルケトン、メチルアミルケトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、トルエン、キシレン、テトラメチルベンゼン、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチルホスホリルアミド、テトラメチレンスルホン、γ−ブチロラクトン、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸エチル、、酢酸ベンジル、n−ブチルアセテート、エトキシエチルプロピオナート、3−メチルメトキシプロピオナート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等の有機溶剤、又はこれらの混合溶剤が挙げられる。
塗布の方法としては、例えば、ロールコータ、コンマコータ、グラビアコータ、エアーナイフコータ、ダイコータ、バーコータ等の方法が挙げられる。また、上記溶剤の除去は例えば、加熱により行うことができ、その場合の加熱温度は約70〜150℃であると好ましく、加熱時間は約5〜約30分間であると好ましい。
このようにして形成された感光層14中の残存有機溶剤量は、後の工程での有機溶剤の拡散を防止する観点から、2質量%以下であることが好ましい。
また、感光層14の厚さは、用途により異なるが、溶剤を除去した後の厚さが1〜30μm程度であることが好ましい。また、感光性フィルムをロール状にして使用する場合には、感光層14のクラックを低減できる観点から、感光層14の厚さは1〜5μmとすることが好ましい。なお、感光層14の厚さを5μm〜30μmとして厚膜の感光性フィルムを作製する場合には、(A)成分として、不飽和炭化水素基を有する変性フェノール樹脂を用いることにより、感光層14のクラックを抑制できる。
感光性フィルム1は、支持体フィルム10と感光層14との間、及び/又は、感光層14と保護フィルム15との間に、クッション層、接着層、光吸収層、ガスバリア層等の中間層又は保護層を更に備えていてもよい。
感光性フィルム1は、例えば、円筒状等の巻芯に巻きとり、ロール状の形態で貯蔵することができる。巻芯としては、従来用いられているものであれば特に限定されず、例えば、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ABS樹脂(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体)等のプラスチック等が挙げられる。貯蔵時には、支持体フィルムが最も外側になるように巻き取られることが好ましい。また、ロール状に巻き取られた感光性フィルム(感光性フィルムロール)の端面には、端面保護の観点から端面セパレータを設置することが好ましく、加えて耐エッジフュージョンの観点から防湿端面セパレータを設置することが好ましい。また、感光性フィルム1を梱包する際には、透湿性の小さいブラックシートに包んで包装することが好ましい。
[レジストパターンの形成方法]
次に、レジストパターンの形成方法について説明する。
レジストパターンの形成方法は、上述のポジ型感光性樹脂組成物からなる感光層を露光する工程と、露光後の感光層をアルカリ水溶液により現像してパターン化する工程とを備える。本発明のポジ型感光性樹脂組成物から形成される感光層は、露光・現像工程を繰り返し行うことができる。
レジストパターンを形成する基材としては、多層の金属層を備える基材を用いることができる。基材として、例えば、金属用途のエッチング液に溶解されない素材から構成される基板の上に、2層以上の金属層を備える基材が挙げられる。上記基板としては、例えば、ガラス、酸化チタン、アルミナ等の金属酸化物、シリコン等の半導体、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエステル、ポリカーボネート等の有機化合物等から構成されるものを用いることができる。金属層としては、例えば、金、銀、銅、アルミニウム、鉄、タングステン、モリブデン、チタン、ニッケル等の金属、酸化インジウムスズ(ITO)、酸化亜鉛等の金属酸化物からなる層が挙げられる。金属層は、これらの金属又は金属酸化物を、真空蒸着、スパッタリング、電解めっき、無電解めっき、プラズマを用いた化学気相成長により、上記基板の上に積層することで形成できる。
感光性フィルム1を用いて基材上に感光層を形成する方法を説明する。レジストパターンの形成方法は、基材上に、感光性フィルム1を、感光層14が密着するようにして積層し、活性光線を画像状に照射して露光部を現像により除去するものである。活性光線が照射されていない部分は、感光剤である(C)成分が(A)及び(B)成分であるフェノール樹脂と相互作用を起こして溶解禁止剤として働いているのでアルカリに溶けない。しかしながら、活性光線が照射された部分では、(C)成分が光分解して、溶解禁止効果を失う。これにより、活性光線が照射された露光部分がアルカリ可溶となる。
基材上への感光層14の積層方法としては、保護フィルム15を除去した後、感光層14を70〜130℃程度に加熱しながら基材に0.1〜1MPa程度(1〜10kgf/cm2程度)の圧力でラミネータ等を用いて圧着する方法等が挙げられる。かかる積層工程は減圧下で行ってもよい。
このようにして基材上に積層された感光層14に対して、ネガ又はポジマスクパターンを通して活性光線を画像状に照射して露光部を形成させる。この際、感光層14上に存在する支持体10が活性光線に対して透明である場合には、支持体10を通して活性光線を照射することができ、支持体10が活性光線に対して遮光性を示す場合には、支持体10を除去した後に感光層14に活性光線を照射する。
活性光線の光源としては、従来公知の光源、例えば、カーボンアーク灯、水銀蒸気アーク灯、高圧水銀灯、キセノンランプ等の紫外線、可視光等を有効に放射するものが用いられる。また、レーザー直接描画露光法等を用いてもよい。
露光部の形成後、露光部の感光層を現像により除去することで、レジストパターンが形成される。かかる露光部の除去方法としては、感光層14上に支持体10が存在する場合にはオートピーラー等で支持体10を除去し、アルカリ性水溶液、水系現像液、有機溶剤等の現像液によるウェット現像、あるいはドライ現像等で露光部を除去して現像する方法等が挙げられる。
ウェット現像に用いるアルカリとしては、例えば、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、アンモニア等の弱アルカリ無機化合物;水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属化合物;水酸化カルシウム等のアルカリ土類金属化合物;モノメチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、モノエチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、モノプロピルアミン、ジメチルプロピルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、ジメチルアミノエチルメタクリレート、ポリエチレンイミン等の弱アルカリ有機化合物;テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド、テトラエチルアンモニウムハイドロオキサイド等が挙げられる。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて水溶液として用いてもよい。アルカリ性水溶液のpHは9〜13の範囲とすると好ましく、環境負荷低減の観点からは、pHは9〜12.6の範囲とするとより好ましく、9〜12の範囲とすると特に好ましい。その温度は、感光層の現像性に合わせて調整される。また、アルカリ性水溶液中には、界面活性剤、消泡剤、有機溶剤等を混入させてもよい。
上記現像の方式としては、例えば、ディップ方式、スプレー方式、ブラッシング、スラッピング等が挙げられる。なお、現像後の処理として、必要に応じて60〜250℃程度の加熱等を行うことによりレジストパターンを硬化させて用いてもよい。
このようにしてレジストパターンが得られる。本発明の感光性フィルム1を用いることのより、感光層14の基材への転写性に優れるため、支持体フィルム10の剥離・除去が容易でなり、感光層14が欠陥なく基材へ転写でき、その結果、欠陥の十分に少ないレジストパターンを形成することができる。
また、感光層14の露光部分は弱アルカリ水溶液で容易に溶解して基材から剥離し、弱アルカリ現像性が極めて良好であるため、コントラストに優れた微細なレジストパターンを形成することが可能となる。
なお、本実施形態では、ポジ型感光性樹脂組成物を、上記基材上に直接塗布し乾燥して感光層を形成することができる。この場合、上述の基材上に、ポジ型感光性樹脂組成物を、スピンナー等を用いて回転塗布し、塗膜を形成する。この塗膜が形成された基材をホットプレート、オーブン等を用いて乾燥する。これにより、基材上に感光層が形成される。その後の露光工程及び現像工程は感光性フィルム1を用いた場合と同様に行うことができる。
本実施形態では、基材に感光層を形成した状態で上述の露光及び現像を、必要に応じて2回以上繰り返して行うことが可能である。すなわち、本発明のポジ型感光性樹脂組成物を用いることにより、露光、現像工程を繰り返して2層以上の金属層をエッチングする際に一度形成したレジストパターンを基材から剥離し、再度新しく感光層を基材上に形成する工程を割愛することができる。これにより、レジストパターンを用いて基材の金属層のエッチングする際の工程を短縮することができるため、コスト的、環境的にも有用である。
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。本発明は、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変形が可能である。
以下、実施例を挙げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
[(A)成分]
(A)成分として、メタクレゾール及びパラクレゾールから得られるノボラック型フェノール樹脂を合成した。
(合成例A1)
メタクレゾール及びパラクレゾールを質量比60:40で混合したクレゾール490質量部に、亜麻仁油210質量部を加え撹拌した後、50質量%トリフルオロ酢酸水溶液を1.12質量部加え、120℃で2時間反応した。反応後、室温まで冷却し、92%パラホルムアルデヒド89質量部、メタノール18質量部及びシュウ酸1質量部を加え、90℃で3時間撹拌した後、減圧蒸留を行い未反応のクレゾールを除去し、30%亜麻仁油変性ノボラック型フェノール樹脂(A1)を得た。(A1)のMwは18000であった。
(合成例A2)
92%パラホルムアルデヒドの添加量を81質量部に変更した以外は、合成例A1と同様に操作して、ノボラック型フェノール樹脂(A2)を得た。(A2)のMwは10000であった。
(合成例A3)
上記(A1)45質量部、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(以下、「PGMEA」と略記する)45質量部及び無水コハク酸17.6質量部をフラスコに入れ、300mL/分の流量で窒素フローしながら100℃で撹拌した。無水コハク酸が完全に溶解した後、フラスコを室温に冷却し、PGMEA17.6質量部で希釈したジアザビシクロウンデセン(以下、「DBU」と略記する)0.9質量部を添加し、120℃で2時間反応させた。反応終了後、系内が30℃以下になるまで冷却してから窒素雰囲気を開放し、ノボラック型フェノール樹脂(A3)成分を得た。(A3)のMwは18000であった。
(合成例A4)
メタクレゾール及びパラクレゾールを質量比60:40で混合したクレゾール490質量部に92%パラホルムアルデヒド96質量部、メタノール18質量部及びシュウ酸1質量部を加え、90℃で3時間撹拌した後、減圧蒸留を行い未反応のクレゾールを除去し、ノボラック型フェノール樹脂(A4)を得た。(A4)のMwは17000であった。
(合成例A5)
メタクレゾール及びパラクレゾールを質量比60:40で混合したクレゾール336質量部に92%パラホルムアルデヒド112質量部及びシュウ酸1.2質量部を加え、120℃で4時間撹拌した後、減圧蒸留を行い未反応のクレゾールを除去し、ノボラック型フェノール樹脂(A5)を得た。(A5)のMwは3000であった。
[(B)成分]
(B)成分として、オルトクレゾールから得られるノボラック型フェノール樹脂を合成した。
(合成例B1)
オルトクレゾール336質量部に92%パラホルムアルデヒド112質量部及びシュウ酸1.2質量部を加え、120℃で4時間撹拌した後、減圧蒸留を行い未反応のオルトクレゾールを除去し、ノボラック型フェノール樹脂(B1)を得た。(B1)のMwは3000であった。
(合成例B2)
92%パラホルムアルデヒドの配合量を86質量部に変更した以外は、合成例B1と同様の操作を行い、ノボラック型フェノール樹脂(B2)を得た。(B2)のMwは1000であった。
(合成例B3)
92%パラホルムアルデヒドを134.5質量部に変更した以外は、合成例B1と同様の操作を行い、ノボラック型フェノール樹脂(B3)を得た。(B3)のMwは6000であった。
(合成例B4)
上記(B1)45質量部、PGMEA溶媒45質量部及び無水コハク酸11.3質量部をフラスコに入れ、300mL/分の流量で窒素フローしながら100℃で撹拌した。無水コハク酸が完全に溶解した後,フラスコを室温に冷却し、PGMEA12.5質量部で希釈したDBU0.9質量部を添加し、120℃で2時間反応をさせた。反応終了後,系内が30℃以下になるまで冷却してから窒素雰囲気を開放し、ノボラック型フェノール樹脂(B4)成分を得た。(B4)のMwは3000であった。
[(A)及び(B)成分以外のフェノール樹脂]
(比較合成例C1)
オルトクレゾールをメタクレゾールに変更した以外は、合成例B1と同様の操作を行い、ノボラック型フェノール樹脂(C1)を得た。(C1)のMwは3000であった。
(比較合成例C2)
オルトクレゾールをパラクレゾールに変更した以外は、合成例B1と同様の操作を行い、ノボラック型フェノール樹脂(C2)を得た。(C2)のMwは3000であった。
<感光性樹脂組成物の調製>
(実施例1)
(A)成分として(A1)21質量部、(B)成分として(B1)64質量部、(C)成分として「PA−28」(ダイトーケミックス製、商品名)15質量部、(D)成分として「FC−4430」(住友スリーエム製、商品名)0.5質量部、(E)成分として3−メルカプト−1,2,4−トリアゾール(以下、「3MT」と略記する)0.3質量部、溶媒としてメチルエチルケトン(以下、「MEK」と略記する)140質量部及びPGMEA90質量部を混合し、感光性樹脂組成物を作製した。
(実施例2〜4、参考例5及び実施例6〜8)
表1に示す組成(単位:質量部)となるよう(A)及び(B)成分を変更した以外は、実施例1と同様にして、感光性樹脂組成物を作製した。
(比較例1〜3)
表2に示した組成(単位:質量部)に変更した以外は実施例1と同様にして感光性樹脂組成物を作製した。
<感光性フィルムの作製及び感光層の評価>
(実施例1〜4、参考例5及び比較例1〜3)
上記感光性樹脂組成物を用い、以下の手順に従って感光性フィルムを作製した。まず、スピンコーター(ダイトロンテクノロジー製)を用いて、300rpm/10秒→500rpm/30秒の条件で、片面がシリコーン系化合物で離型処理されたPETフィルム「ピューレックス A53」(帝人デュポンフィルム社製商品名、膜厚50μm、日東電工社製の粘着テープ「NITTO31B」を用いた23℃での180°剥離強度100g/インチ、離型処理面の表面張力44mN/m)の離型処理面に感光性樹脂組成物を塗布した。次いで、コンベア式乾燥機(RCPオーブンライン、大日本スクリーン製)にて、95℃で5分間乾燥を行い、厚み4.0μmの感光層を形成した感光性フィルムを作製した。
ロールラミネータ(日立化成テクノプラント製)を用いて、圧力0.5MPa、上下ロール温度120℃、速度0.5m/分の条件で、上記感光性フィルムの感光層を基板上にラミネートし、ポジ型フォトレジスト積層体を得た。得られたポジ型フォトレジスト積層体を用いて、下記工程1〜3の順に感光層を露光・現像した。
(工程1)
ポジ型フォトレジスト積層体からPETフィルムを剥がし、UV露光機(大日本スクリーン製、商品名「大型マニュアル露光機 MAP−1200」)を用いて100mJ/cm2の条件で、感光層を露光した。パターン形成にはガラスマスク(凸版印刷製、商品名「TOPPAN−TEST−CHART−NO1−N L78I1」)を用いた。次いで、現像液として、2.38wt%のTMAH水溶液(pH=13.0)を用い、スプレー式現像装置(大日本スクリーン製、商品名「DVW−911」)で30℃で所定時間現像を行い、蒸留水で洗浄した後、窒素ブローにて乾燥を行い、レジスト膜1を形成した。
(工程2)
工程1で残存しているレジスト膜1の半分をブラックシートで覆い、工程1と同様に100mJ/cm2の条件で露光を行った。2.38質量%のTMAH現像液を用いて、工程1と同様にスプレー現像機にて30℃で所定の時間現像し、蒸留水で洗浄した後、窒素ブローにて乾燥を行い、レジスト膜2を形成した。
(工程3)
工程2で残存しているレジスト膜2の全面を、工程1と同様に100mJ/cm2の条件で露光を行った。2.38質量%のTMAH水溶液を用いて、工程1と同様にスプレー現像機にて30℃で所定の時間現像し、蒸留水で洗浄した。その後、窒素ブローにて乾燥を行った。
(実施例6)
上記工程1〜3で用いた現像液を2.38質量%TMAH水溶液から1.19質量%TMAH水溶液(pH=12.6)に変更した以外は実施例1と同様の操作を行い、感光層を露光・現像した。
(実施例7)
上記工程1〜3で用いた現像液を2.38質量%TMAH水溶液から1.0質量%Na2CO3水溶液(pH=11.3)に変更した以外は実施例1と同様の操作を行い、感光層を露光・現像した。
(実施例8)
感光性樹脂組成物をスピンコーター(ダイトロンテクノロジー製)を用いて、300rpm/10秒→500rpm/30秒の条件で、基板に直接塗布し、コンベア式乾燥機(RCPオーブンライン、大日本スクリーン製)にて、95℃で5分間乾燥を行い、ポジ型フォトレジスト積層体を得た以外は、実施例1と同様の操作を行い、感光層を露光・現像した。
<感光層の評価>
支持体フィルム上に形成した感光層の可とう性と、工程1〜3における感光層の繰り返し現像性とを以下の基準で評価した。結果を表3及び表4に示す。
(可とう性)
支持体フィルム上に形成した感光層の可とう性は、種々の直径を有するコア材に感光性フィルムを巻き取り、クラック、剥離、転写の有無を以下の五段階で評価した。
A:直径1cmコア材に巻き取り可能。
B:直径3cmコア材に巻き取り可能。
C:直径5cmコア材に巻き取り可能。
D:直径10cmコア材に巻き取り可能。
E:直径20cmコア材に巻き取り可能。
(現像性)
工程1〜3における感光層の露光部の現像性をで評価した。具体的には、パターンエッジ部分の切れ性、ベタ部分の現像残り、剥離片や糸状の残渣の基板上への付着を以下の基準五段階で評価した。
A:パターンエッジ部のきれ性良好、ベタ部に現像残り無し、剥離片無し、糸状残渣無し
B:パターンエッジ部のきれ性不良、ベタ部に現像残り無し、剥離片無し、糸状残渣無し
C:パターンエッジ部のきれ性不良、ベタ部に現像残り無し、剥離片無し、糸状残渣あり
D:パターンエッジ部のきれ性不良、ベタ部に現像残りあり、剥離片無し、糸状残渣あり
E:パターンエッジ部のきれ性不良、ベタ部に現像残りあり、剥離片あり、糸状残渣あり
(耐現像液性)
工程1及び2において、感光層の未露光部の耐現像液性を以下の基準で評価した。具体的には、クラック、膜減り、表層の剥離を五段階で評価した。
A:クラック無し、膜減り無し、表層の剥離無し
B:クラック無し、膜減り無し、表層の剥離あり
C:クラックあり、膜減り無し、表層の剥離無し
D:クラックあり、膜減りあり、表層の剥離無し
E:クラックあり、膜減りあり、表層の剥離あり
(レジスト外観)
工程1及び2では、感光層の未露光部についてのレジスト外観を以下の基準で評価した。具体的には、表面のざらつきや凹凸の程度を五段階で評価した。
A:概ね良好
B:若干のざらつきあり
C:凹凸あり
D:層分離、もしくは白濁あり
E:基板表面の露出あり
実施例1〜4及び実施例6〜8のポジ型感光性樹脂組成物によれば、露光部の現像性及び未露光部の耐現像液性に十分に優れ、弱アルカリ性現像液での繰り返し現像が可能な感光層を形成できることが確認された。