以下、図面を参照しながら、本発明の好ましい実施形態について詳細に説明する。図1及び図2に示す第1実施形態による動力装置は、四輪の車両Vの左右の出力軸SL、SRを駆動するものであり、車両Vの前部に配置されている。これらの左右の出力軸SL、SRは、軸受け(図示せず)に回転自在に支持され、互いに同軸状に配置されるとともに、左右の前輪WL、WRにそれぞれ連結されている。
動力装置は、動力源としての内燃機関(以下「エンジン」という)3と、エンジン3の動力を変速するための変速機4を備えている。エンジン3は、ガソリンエンジンであり、そのクランク軸(図示せず)が変速機4の入力軸(図示せず)に連結されている。変速機4は、有段式の自動変速機であり、上記の入力軸に伝達されたエンジン3の動力を変速し、その変速機出力軸に出力する。変速機出力軸には、外歯車であるギヤ4a(図2参照)が一体に設けられている。エンジン3及び変速機4の動作は、後述するECU2によって制御される。
また、動力装置は、左右の出力軸SL、SRに分配される動力を制御するための配分装置DS1を備えており、配分装置DS1は、差動装置GS、第1回転電機11及び第2回転電機12などで構成されている。差動装置GSは、エンジン3、第1及び第2回転電機11、12と左右の出力軸SL、SRとの間で動力を伝達するためのものであり、サンギヤS、キャリヤ31、3連ピニオンギヤ32、付加ピニオンギヤ33、第1リングギヤR1、第2リングギヤR2及び第3リングギヤR3で構成されている。また、差動装置GSは、左右の前輪WL、WRの間に位置しており、サンギヤS及び第1〜第3リングギヤR1〜R3は、左右の出力軸SL、SRと同軸状に配置されている。
また、サンギヤSは、外歯車で構成されるとともに、後述する第1ピニオンギヤP1に対応して、第1ピニオンギヤP1の内周側に設けられている。さらに、サンギヤSは、軸受け(図示せず)に回転自在に支持された中空の第1回転軸14を介して、第1回転電機11の後述する第1ロータ11bに同軸状に連結されており、第1ロータ11bと一体に回転自在である。第1回転軸14の内周側には、右出力軸SRが、同軸状かつ相対的に回転自在に配置されている。キャリヤ31は、ドーナツ板状の第1基部31a及び第2基部31bと、両基部31a、31bに一体に設けられた3つの第1支軸31c及び第2支軸31d(いずれも2つのみ図示)で構成されている。また、キャリヤ31は、軸受け(図示せず)に回転自在に支持されており、その内周側には、サンギヤS及び第1回転軸14が相対的に回転自在に配置されている。
第1及び第2基部31a、31bは、左右の出力軸SL、SRと同軸状に配置されており、その軸線方向において互いに対向している。また、第2基部31bは、第1基部31aよりも右前輪WR側に配置されており、軸受け(図示せず)に回転自在に支持された中空の第2回転軸15を介して、第2回転電機12の後述する第2ロータ12bに同軸状に連結されている。これにより、キャリヤ31は、第2ロータ12bと一体に回転自在である。第2回転軸15の内周側には、第1回転軸14が、相対的に回転自在に配置されている。第1及び第2支軸31c、31dは、第1及び第2基部31a、31bの間に設けられており、左右の出力軸SL、SRと平行に延びている。また、第1支軸31cは第1基部31aの径方向の内端部に、第2支軸31dは第1基部31aの径方向の外端部に、それぞれ位置している。さらに、3つの第1支軸31cは、第1基部31aの周方向に互いに等間隔に位置しており、このことは、3つの第2支軸31dについても同様である。
前記3連ピニオンギヤ32は、互いに一体に形成された第1ピニオンギヤP1、第2ピニオンギヤP2及び第3ピニオンギヤP3から成り、第1〜第3ピニオンギヤP1〜P3は、外歯車で構成されている。3連ピニオンギヤ32の数は、上述した第2支軸31dと同じ3つであり(2つのみ図示)、各3連ピニオンギヤ32は、第2支軸31dに、軸受け(図示せず)を介して回転自在に支持されている。第1〜第3ピニオンギヤP1〜P3は、左右の出力軸SL、SRと平行な同一軸線上に、左前輪WL側からこの順で並んでいる。なお、3連ピニオンギヤ32の数及び第2支軸31dの数は3つに限らず、任意である。
前記第1〜第3リングギヤR1〜R3は、内歯車で構成されており、左前輪WL側からこの順で並んでいる。第1リングギヤR1は、第1ピニオンギヤP1に対応して、第1ピニオンギヤP1の外周側に設けられており、第1ピニオンギヤP1に噛み合っている。また、第1リングギヤR1は、中空の第3回転軸16及びフランジを介して、右出力軸SRに同軸状に連結されており、右出力軸SRと一体に回転自在である。付加ピニオンギヤ33は、外歯車で構成されており、その数が第1支軸31cと同じ3つである(2つのみ図示)。各付加ピニオンギヤ33は、第1支軸31cに、軸受け(図示せず)を介して回転自在に支持されており、サンギヤS及び第1ピニオンギヤP1の双方に噛み合っている。なお、付加ピニオンギヤ33の数及び第1支軸31cの数は3つに限らず、任意である。
第2リングギヤR2は、第2ピニオンギヤP2に対応して、第2ピニオンギヤP2の外周側に設けられており、第2ピニオンギヤP2に噛み合っている。また、第2リングギヤR2は、軸受け(図示せず)に回転自在に支持された中空の第4回転軸17及びフランジを介して、左出力軸SLに同軸状に連結されており、左出力軸SLと一体に回転自在である。第4回転軸17の内周側には、上記の第3回転軸16が相対的に回転自在に配置されている。第3リングギヤR3は、第3ピニオンギヤP3に対応して、第3ピニオンギヤP3の外周側に設けられており、第3ピニオンギヤP3に噛み合っている。また、第3リングギヤR3の外周部には、外歯車であるギヤGが形成されており、ギヤGは、前述した変速機出力軸のギヤ4aに噛み合っている。
さらに、第1〜第3ピニオンギヤP1〜P3の歯数ZP1〜ZP3、及び第1〜第3リングギヤR1〜R3の歯数ZR1〜ZR3は、それらの間に次式(1)及び(2)が成立するように、設定されている。
ZR1/ZP1>ZR3/ZP3>ZR2/ZP2 ……(1)
ZP3/ZR3=(ZP1/ZR1+ZP2/ZR2)/2
……(2)
前記第1回転電機11は、ACモータであり、複数の鉄芯やコイルなどで構成された第1ステータ11aと、複数の磁石などで構成された第1ロータ11bを有している。第1回転電機11は、左右の出力軸SL、SRと同軸状に配置されており、差動装置GSと右前輪WRの間に位置している。第1ステータ11aは、不動のケースCAに固定されている。第1ロータ11bは、第1ステータ11aに対向するように配置されており、前述したようにサンギヤSと一体に回転自在である。第1回転電機11では、第1ステータ11aに電力が供給されると、供給された電力は、動力に変換され、第1ロータ11bに出力される。また、第1ロータ11bに動力が入力されると、この動力は、電力に変換され(発電)、第1ステータ11aに出力される。
また、第1ステータ11aは、第1パワードライブユニット(以下「第1PDU」という)21を介して、充電・放電可能なバッテリ23に電気的に接続されており、バッテリ23との間で電気エネルギを授受可能である。第1PDU21は、インバータなどの電気回路で構成されている。図3に示すように、第1PDU21には、ECU2が電気的に接続されている。ECU2は、第1PDU21を制御することによって、第1ステータ11aに供給する電力と、第1ステータ11aで発電する電力と、第1ロータ11bの回転数を制御する。
前記第2回転電機12は、第1回転電機11と同様、ACモータであり、第2ステータ12a及び第2ロータ12bを有している。また、第2回転電機12は、左右の出力軸SL、SRと同軸状に配置されており、第1回転電機11と差動装置GSの間に位置している。これらの第2ステータ12a及び第2ロータ12bはそれぞれ、第1ステータ11a及び第1ロータ11bと同様に構成されている。また、第2ロータ12bは、前述したようにキャリヤ31と一体に回転自在である。さらに、第2回転電機12は、第1回転電機11と同様、第2ステータ12aに供給された電力を動力に変換し、第2ロータ12bに出力可能であり、第2ロータ12bに入力された動力を電力に変換し、第2ステータ12aに出力可能である。
また、第2ステータ12aは、第2パワードライブユニット(以下「第2PDU」という)22を介して、バッテリ23に電気的に接続されており、バッテリ23との間で電気エネルギを授受可能である。第2PDU22は、第1PDU21と同様、インバータなどの電気回路で構成されており、第2PDU22には、ECU2が電気的に接続されている。ECU2は、第2PDU22を制御することによって、第2ステータ12aに供給する電力と、第2ステータ12aで発電する電力と、第2ロータ12bの回転数を制御する。
以下、第1ステータ11a(第2ステータ12a)に供給された電力を動力に変換し、第1ロータ11b(第2ロータ12b)から出力することを適宜「力行」という。また、第1ロータ11b(第2ロータ12b)に入力された動力を用いて第1ステータ11a(第2ステータ12a)で発電し、該動力を電力に変換することを適宜「回生」という。
以上の構成の動力装置では、差動装置GSが前述したように構成されているため、サンギヤS、第2リングギヤR2、第3リングギヤR3、第1リングギヤR1及びキャリヤ31は、互いの間で動力が伝達可能であり、それらの回転数が互いに共線関係にある。ここで、共線関係とは、共線図において、それぞれの回転数が単一の直線上に並ぶ関係のことである。また、キャリヤ31を固定した状態で、サンギヤSを回転させたときには、第1〜第3リングギヤR1〜R3はいずれも、サンギヤSの回転方向と同方向に回転する。この場合、各ギヤの歯数の関係から、第1〜第3リングギヤR1〜R3の回転数の間に、「第2リングギヤR2の回転数>第3リングギヤR3の回転数>第1リングギヤR1の回転数」の関係が成立する。以上から、回転数の関係を表す共線図において、サンギヤS、第2リングギヤR2、第3リングギヤR3、第1リングギヤR1及びキャリヤ31は、この順で並ぶ。
また、サンギヤS及び第1ロータ11bは、第1回転軸14を介して互いに連結されているので、サンギヤSの回転数及び第1ロータ11bの回転数は、互いに等しい。さらに、第2リングギヤR2は、第4回転軸17及びフランジを介して左出力軸SLに連結されているので、第2リングギヤR2の回転数及び左出力軸SLの回転数は、互いに等しい。また、第3リングギヤR3は、ギヤG及びギヤ4aを介して変速機4の変速機出力軸に連結されているので、これらのギヤG及びギヤ4aによる変速を無視すれば、第3リングギヤR3の回転数及び変速機出力軸の回転数は、互いに等しい。さらに、第1リングギヤR1は、第3回転軸16及びフランジを介して右出力軸SRに連結されているので、第1リングギヤR1の回転数及び右出力軸SRの回転数は、互いに等しい。また、キャリヤ31は、第2回転軸15を介して第2ロータ12bに連結されているので、キャリヤ31の回転数及び第2ロータ12bの回転数は、互いに等しい。
以上から、動力装置における各種の回転要素の間の回転数の関係は、例えば図4に示す共線図のように表される。同図及び後述する他の共線図では、値0を示す横線から縦線上の白丸までの距離が、各回転要素の回転数に相当する。図4から明らかなように、左右の出力軸SL、SRは、互いに差回転が可能である。
また、図4におけるα及びβはそれぞれ、第1レバー比及び第2レバー比(トルク比・速度比)であり、次式(3)及び(4)で表される。
α=ZR1(ZR2×ZP1−ZS×ZP2)
/ZS(ZR1×ZP2−ZR2×ZP1) ……(3)
β=ZR2×ZP1/(ZR1×ZP2−ZR2×ZP1) ……(4)
ここで、ZSは、サンギヤSの歯数である。
これらの第1及び第2リングギヤR1、R2の歯数ZR1、ZR2、第1及び第2ピニオンギヤP1、P2の歯数ZP1、ZP2、ならびにサンギヤSの歯数ZSは、前記式(1)及び(2)による条件に加え、左右の前輪WL、WRの差回転が可能な範囲内で第1及び第2ロータ11b、12bの一方が逆転しないことを条件として、第1及び第2レバー比α、βが互いに等しくなるとともに比較的大きな値になるように、設定されている。
また、図3に示すように、ECU2には、操舵角センサ41から車両Vのハンドル(図示せず)の操舵角θを表す検出信号が、車速センサ42から車両Vの車速VPを表す検出信号が、アクセル開度センサ43から車両Vのアクセルペダル(図示せず)の操作量(以下「アクセル開度」という)APを表す検出信号が、入力される。ECU2にはさらに、電流電圧センサ44から、バッテリ23に入出力される電流・電圧値を表す検出信号が入力される。ECU2は、電流電圧センサ44からの検出信号に基づいて、バッテリ23の充電状態を算出する。
ECU2は、I/Oインターフェース、CPU、RAM及びROMなどから成るマイクロコンピュータで構成されている。ECU2は、上述した各種のセンサ41〜44からの検出信号に応じ、ROMに記憶された制御プログラムに従って、第1及び第2回転電機11、12を制御する。これにより、配分装置DS1の各種の動作が行われる。以下、車両Vの直進時及び左右の旋回時における配分装置DS1の動作について説明する。
[直進時]
車両Vの直進時で、かつ定速走行中又は加速走行中には、第1及び第2回転電機11、12の双方で力行を行うとともに、バッテリ23から第1及び第2ステータ11a、12aに供給される電力を制御する。図4は、この場合における各種の回転要素の間の回転数の関係及びトルクの釣合関係を示している。
図4において、TM1及びTM2はそれぞれ、第1及び第2回転電機11、12での力行に伴って第1及び第2ロータ11b、12bに発生した出力トルク(以下、それぞれ「第1モータ出力トルク」「第2モータ出力トルク」という)である。また、RLM1及びRRM1はそれぞれ、第1回転電機11での力行に伴って左出力軸SL及び右出力軸SRに作用する反力トルクであり、RLM2及びRRM2はそれぞれ、第2回転電機12での力行に伴って左出力軸SL及び右出力軸SRに作用する反力トルクである。さらに、TEは、エンジン3から変速機4を介して第3リングギヤR3に伝達されるトルク(以下「変速後エンジントルク」という)であり、RLE及びRREは、第3リングギヤR3への変速後エンジントルクTEの伝達に伴って左出力軸SL及び右出力軸SRにそれぞれ作用する反力トルクである。
また、左出力軸SLに伝達されるトルク(以下「左出力軸伝達トルク」という)は、RLE+RLM1−RLM2(RLM1>RLM2)で表されるともに、右出力軸SRに伝達されるトルク(以下「右出力軸伝達トルク」という)は、RRE+RRM2−RRM1(RRM2>RRM1)で表され、左右の出力軸SL、SRが、左右の前輪WL、WRとともに正転方向に駆動される。この場合、共線図(図4)における第3リングギヤR3から左出力軸SLまでの距離と、第3リングギヤR3から右出力軸SRまでの距離が互いに等しいので、第3リングギヤR3から左右の出力軸SL、SRに分配されるトルクの分配比は1:1であり、互いに等しい。さらに、左右の出力軸伝達トルクが互いに同じ要求トルクになるように、第1及び第2ステータ11a、12aに供給する電力が制御される。この要求トルクは、検出されたアクセル開度APに応じ、所定のマップ(図示せず)を検索することによって算出される。
また、上記の左出力軸伝達トルクのうちのRLM1−RLM2は、TM1×(α+1)−TM2×βで表され、右出力軸伝達トルクのうちのRRM2−RRM1は、TM2×(β+1)−TM1×αで表される。これらの式から明らかなように、第1レバー比αは、第1モータ出力トルクTM1に対する、第1回転電機11から差動装置GSを介して左右の出力軸SL、SRに伝達されるトルクの比を表す。また、第2レバー比βは、第2モータ出力トルクTM2に対する、第2回転電機12から差動装置GSを介して左右の出力軸SL、SRに伝達されるトルクの比を表す。これに対して、前述したように第1及び第2レバー比α、βが互いに同じ値に設定されているので、第1及び第2モータ出力トルクTM1、TM2を互いに同じ大きさに制御するだけで、第1及び第2回転電機11、12から左右の出力軸SL、SRに分配されるトルクを、互いに同じ大きさに精度良くかつ容易に制御することができる。
さらに、上述した第1及び第2回転電機11、12の力行を実行するための実行条件は、例えば、第1及び第2回転電機11、12によるエンジン3のアシスト中(以下「モータアシスト中」という)、又は、エンジン3を用いずに第1及び第2回転電機11、12のみによる車両Vの駆動中(以下「EV走行中」という)であり、かつ、算出されたバッテリ23の充電状態が下限値よりも大きいという条件である。この場合、バッテリ23の充電状態が下限値よりも大きいということは、バッテリ23が放電可能であることを表している。なお、図4は、モータアシスト中における各種の回転要素の間の回転数の関係及びトルクの釣合関係を示しているが、EV走行中には、エンジン3が停止しているため、変速後エンジントルクTE、反力トルクRLE及び反力トルクRREは発生しない。
さらに、車両Vの直進時で、かつ減速走行中(エンジン3のフューエルカット運転中)には、車両Vの慣性エネルギを用いて第1及び第2回転電機11、12の双方で回生を行い、回生した電力をバッテリ23に充電するとともに、該回生電力を制御する。図5は、この場合における各種の回転要素の間の回転数の関係及びトルクの釣合関係を示している。同図において、TG1及びTG2はそれぞれ、第1及び第2回転電機11、12での回生に伴って第1及び第2ロータ11b、12bに発生した制動トルク(以下、それぞれ「第1モータ制動トルク」「第2モータ制動トルク」という)である。また、RLG1及びRRG1はそれぞれ、第1回転電機11での回生に伴って左出力軸SL及び右出力軸SRに作用する反力トルクであり、RLG2及びRRG2はそれぞれ、第2回転電機12での回生に伴って左出力軸SL及び右出力軸SRに作用する反力トルクである。
この場合、左出力軸伝達トルクは、−RLG1+RLG2(RLG1>RLG2)で表されるとともに、右出力軸伝達トルクは、−RRG2+RRG1(RRG2>RRG1)で表され、左右の出力軸SL、SRに制動トルクが作用し、車両Vが減速される。また、左右の出力軸SL、SRに作用する制動トルクが互いに同じになるように、第1及び第2回転電機11、12で回生する電力が制御される。
また、上記の左出力軸伝達トルクのうちの−RLG1+RLG2は、−TG1×(α+1)+TG2×βで表され、右出力軸伝達トルクのうちの−RRG2+RRG1は、−TG2×(β+1)+TG1×αで表される。前述したように、第1及び第2レバー比α、βが互いに同じ値に設定されており、それにより、第1回転電機11から左右の出力軸SL、SRに伝達されるトルクのトルク比と、第2回転電機12から左右の出力軸SL、SRに伝達されるトルクのトルク比が互いに同じ値に設定されている。したがって、第1及び第2モータ制動トルクTG1、TG2を互いに同じ大きさに制御するだけで、第1及び第2回転電機11、12から左右の出力軸SL、SRに分配される制動トルクを、互いに同じ大きさに精度良くかつ容易に制御することができる。
さらに、上述した第1及び第2回転電機11、12の回生を実行するための実行条件は、例えば、バッテリ23の充電状態が上限値よりも小さいという条件である。この場合、バッテリ23の充電状態が上限値よりも小さいということは、バッテリ23が充電可能であることを表している。
[右旋回時]
車両Vの前進中の右旋回時において、車両Vを右旋回させる時計回り方向のヨーモーメント(以下「右ヨーモーメント」という)を増大させるときには、右ヨーモーメント増大用のトルク分配制御が実行され、このトルク分配制御として、第1〜第4トルク分配制御が用意されている。以下、これらの右ヨーモーメント増大用の第1〜第4トルク分配制御について順に説明する。この第1トルク分配制御中には、第1及び第2回転電機11、12の双方で力行を行うとともに、第1モータ出力トルクTM1が第2モータ出力トルクTM2よりも大きくなるように、第1及び第2ステータ11a、12aに供給される電力を制御する。
これにより、前述した図4に示すトルクの釣合関係から明らかなように、左出力軸伝達トルクが右出力軸伝達トルクよりも大きくなる結果、車両Vの右ヨーモーメントが増大する。この場合、第1及び第2ステータ11a、12aに供給する電力は、検出された操舵角θや車速VP、アクセル開度APに応じて制御される。なお、右ヨーモーメント増大用の第1トルク分配制御を実行するための実行条件は、例えば、モータアシスト中(第1及び第2回転電機11、12によるエンジン3のアシスト中)又はEV走行中(第1及び第2回転電機11、12のみでの車両Vの駆動中)であり、かつバッテリ23の充電状態が下限値よりも大きいという条件である。
次に、右ヨーモーメント増大用の第2トルク分配制御について説明する。この第2トルク分配制御中には、第1及び第2回転電機11、12の双方で回生を行うとともに、両回転電機11、12で回生した電力をバッテリ23に充電する。この場合、第2モータ制動トルクTG2が第1モータ制動トルクTG1よりも大きくなるように、第1及び第2回転電機11、12で回生される電力を制御する。
これにより、前述した図5に示すトルクの釣合関係から明らかなように、右出力軸SRに作用する制動トルクが左出力軸SLのそれよりも大きくなる結果、車両Vの右ヨーモーメントが増大する。この場合、第1及び第2回転電機11、12で回生する電力は、操舵角θや車速VPなどに応じて制御される。なお、右ヨーモーメント増大用の第2トルク分配制御を実行するための実行条件は、例えば、車両Vの減速走行中であり、かつバッテリ23の充電状態が上限値よりも小さいという条件である。
次に、右ヨーモーメント増大用の第3トルク分配制御について説明する。この第3トルク分配制御中には、第1回転電機11で力行を行うとともに、第2回転電機12で回生を行う。図6は、この場合における各種の回転要素の間の回転数の関係及びトルクの釣合関係を示している。図4を参照して前述したように、図6におけるTM1は、第1モータ出力トルクであり、RLM1及びRRM1はそれぞれ、第1回転電機11での力行に伴って左出力軸SL及び右出力軸SRに作用する反力トルクである。また、TEは、変速後エンジントルクであり、RLE及びRREは、第3リングギヤR3への変速後エンジントルクTEの伝達に伴って左出力軸SL及び右出力軸SRにそれぞれ作用する反力トルクである。さらに、図5を参照して前述したように、図6におけるTG2は、第2モータ制動トルクであり、RLG2及びRRG2はそれぞれ、第2回転電機12での回生に伴って左出力軸SL及び右出力軸SRに作用する反力トルクである。
この場合、左出力軸伝達トルクは、RLE+RLM1+RLG2で表されるとともに、右出力軸伝達トルクは、RRE−(RRM1+RRG2)で表される。このように、左出力軸SLに駆動トルクが作用するとともに、右出力軸SRに制動トルクが作用する結果、車両Vの右ヨーモーメントが増大する。この場合にも、操舵角θや車速VP、アクセル開度APに応じて、第1ステータ11aに供給する電力及び第2回転電機12で回生する電力が制御される。
また、上記の左出力軸伝達トルクのうちのRLM1+RLG2は、TM1×(α+1)+TG2×βで表され、右出力軸伝達トルクのうちの−(RRM2+RRM1)は、−{TG2×(β+1)+TM1×α}で表される。第1及び第2レバー比α、βが互いに同じ値に設定されているので、第1モータ出力トルクTM1及び第2モータ制動トルクTG2を介して、第1及び第2回転電機11、12から左右の出力軸SL、SRに分配されるトルクを、精度良くかつ容易に制御することができる。
なお、右ヨーモーメント増大用の第3トルク分配制御を実行するための実行条件は、例えば、次の第1増大条件又は第2増大条件である。
第1増大条件:エンジン3による車両Vの駆動中であり、かつバッテリ23の充電状態が上限値以上であること。
第2増大条件:エンジン3による車両Vの駆動中であり、充電状態が上限値よりも小さく、かつ第2回転電機12に要求される制動トルクが所定の第1上限トルク以上であること。
この場合、第1増大条件の成立時であり、バッテリ23の充電状態が上限値以上のときには、バッテリ23を充電できないので、第2回転電機12で回生した電力がすべて、バッテリ23に充電されずに、第1ステータ11aに供給される。一方、第2増大条件の成立時には、第2回転電機12で回生した電力の一部がバッテリ23に充電されるとともに、残りが第1ステータ11aに供給される。この場合、要求される制動トルクに対する第2モータ制動トルクTG2の不足分を補うように、第1モータ出力トルクTM1が制御される。
次に、右ヨーモーメント増大用の第4トルク分配制御について説明する。この第4トルク分配制御中には、第1回転電機11に対してゼロトルク制御を実行するとともに、第2回転電機12で回生を行い、第2回転電機12で回生した電力をバッテリ23に充電する。このゼロトルク制御は、第1回転電機11で回生が行われることによる引きずり損失が発生するのを回避するためのものである。この場合、第2モータ制動トルクTG2のみが発生するので、図6から明らかなように、左出力軸伝達トルクはRLE+RLG2で表されるとともに、右出力軸伝達トルクはRRE−RRG2で表される。このように、左出力軸SLに駆動トルクが作用するとともに、右出力軸SRに制動トルクが作用する結果、車両Vの右ヨーモーメントが増大する。換言すれば、右出力軸SRのトルクの一部が、第2モータ制動トルクTG2を反力として、左出力軸SLに伝達される。この場合にも、操舵角θや車速VP、アクセル開度APに応じて、第2回転電機12で回生する電力が制御される。
なお、右ヨーモーメント増大用の第4トルク分配制御を実行するための実行条件は、例えば、エンジン3による車両Vの駆動中であり、バッテリ23の充電状態が上限値よりも小さく、かつ第2回転電機12に要求される制動トルクが前記第1上限トルクよりも小さいという条件である。
なお、右ヨーモーメントを増大させるために、第2回転電機12に対してゼロトルク制御を実行するとともに、第1回転電機11で力行を行ってもよい。この場合、第1モータ出力トルクTM1のみが発生するので、図6から明らかなように、左出力軸伝達トルクはRLE+RLM1で表されるとともに、右出力軸伝達トルクはRRE−RRM1で表される。このように、左出力軸SLに駆動トルクが作用するとともに、右出力軸SRに制動トルクが作用する結果、車両Vの右ヨーモーメントが増大する。換言すれば、右出力軸SRのトルクの一部が、第1モータ力行トルクTM1を反力として、左出力軸SLに伝達される。この場合にも、操舵角θや車速VP、アクセル開度APに応じて、第1ステータ11aに供給される電力が制御される。
また、車両Vの右旋回時において、車両Vの右ヨーモーメントを低減するときには、右ヨーモーメント低減用のトルク分配制御が実行され、この右ヨーモーメント低減用のトルク分配制御として、第1〜第4トルク分配制御が用意されている。以下、これらの右ヨーモーメント低減用の第1〜第4トルク分配制御について順に説明する。この第1トルク分配制御中には、第1及び第2回転電機11、12の双方で力行を行うとともに、第2モータ出力トルクTM2が第1モータ出力トルクTM1よりも大きくなるように、第1及び第2ステータ11a、12aに供給される電力を制御する。
これにより、前述した図4に示すトルクの釣合関係から明らかなように、右出力軸伝達トルクが左出力軸伝達トルクよりも大きくなる結果、車両Vの右ヨーモーメントが低減される。この場合、第1及び第2ステータ11a、12aに供給する電力は、操舵角θや車速VP、アクセル開度APに応じて制御される。なお、右ヨーモーメント低減用の第1トルク分配制御を実行するための実行条件は、例えば、モータアシスト中又はEV走行中であり、かつバッテリ23の充電状態が下限値よりも大きいという条件である。
次に、右ヨーモーメント低減用の第2トルク分配制御について説明する。この第2トルク分配制御中には、第1及び第2回転電機11、12の双方で回生を行うとともに、両回転電機11、12で回生した電力をバッテリ23に充電する。この場合、第1モータ制動トルクTG1が第2モータ制動トルクTG2よりも大きくなるように、第1及び第2回転電機11、12で回生される電力を制御する。
これにより、前述した図5に示すトルクの釣合関係から明らかなように、左出力軸SLに作用する制動トルクが右出力軸SRに作用する制動トルクよりも大きくなる結果、車両Vの右ヨーモーメントが低減される。この場合、第1及び第2回転電機11、12で回生する電力は、操舵角θや車速VPに応じて制御される。なお、右ヨーモーメント低減用の第2トルク分配制御を実行するための実行条件は、例えば、車両Vの減速走行中であり、かつバッテリ23の充電状態が上限値よりも小さいという条件である。
次に、右ヨーモーメント低減用の第3トルク分配制御について説明する。この第3トルク分配制御中には、第1回転電機11で回生を行うとともに、第2回転電機12で力行を行う。図7は、この場合における各種の回転要素の間の回転数の関係及びトルクの釣合関係を示している。図5を参照して前述したように、図7におけるTG1は、第1モータ制動トルクであり、RLG1及びRRG1はそれぞれ、第1回転電機11での回生に伴って左出力軸SL及び右出力軸SRに作用する反力トルクである。また、図4を参照して前述したように、図7におけるTM2は、第2モータ出力トルクであり、RLM2及びRRM2はそれぞれ、第2回転電機12での力行に伴って左出力軸SL及び右出力軸SRに作用する反力トルクである。
この場合、左出力軸伝達トルクは、−(RLG1+RLM2)で表されるとともに、右出力軸伝達トルクは、RRM2+RRG1で表される。このように、左出力軸SLに制動トルクが作用するとともに、右出力軸SRに駆動トルクが作用する結果、車両Vの右ヨーモーメントが低減される。この場合にも、操舵角θや車速VPに応じて、第1回転電機11で回生する電力及び第2ステータ12aに供給する電力が制御される。
また、上記の左出力軸伝達トルクのうちの−(RLG1+RLM2)は、−{TG1×(α+1)+TM2×β}で表され、右出力軸伝達トルクのうちのRRM2+RRG1は、TM2×(β+1)+TG1×αで表される。第1及び第2レバー比α、βが互いに同じ値に設定されているので、第1モータ制動トルクTG1及び第2モータ出力トルクTM2を介して、第1及び第2回転電機11、12から左右の出力軸SL、SRに分配されるトルクを、精度良くかつ容易に制御することができる。
なお、右ヨーモーメント低減用の第3トルク分配制御を実行するための実行条件は、例えば、次の第1低減条件又は第2低減条件である。
第1低減条件:車両Vの減速走行中(エンジン3のフューエルカット運転中)であり、かつバッテリ23の充電状態が上限値以上であること。
第2低減条件:車両Vの減速走行中であり、充電状態が上限値よりも小さく、かつ第1回転電機11に要求される制動トルクが所定の第2上限トルク以上であること。
この場合、第1低減条件の成立時で、バッテリ23の充電状態が上限値以上のときには、バッテリ23を充電できないので、第1回転電機11で回生した電力がすべて、バッテリ23に充電されずに、第2ステータ12aに供給される。一方、第2低減条件の成立時には、第1回転電機11で回生した電力の一部がバッテリ23に充電されるとともに、残りが第2ステータ12aに供給される。この場合、要求される制動トルクに対する第1モータ制動トルクTG1の不足分を補うように、第2モータ出力トルクTM2が制御される。
次に、右ヨーモーメント低減用の第4トルク分配制御について説明する。この第4トルク分配制御中には、第2回転電機12に対してゼロトルク制御を実行するとともに、第1回転電機11で回生を行い、第1回転電機11で回生した電力をバッテリ23に充電する。この場合、第1モータ制動トルクTG1のみが発生するので、図7から明らかなように、左出力軸伝達トルクは−RLG1で表されるとともに、右出力軸伝達トルクはRRG1で表される。このように、左出力軸SLに制動トルクが作用するとともに、右出力軸SRに駆動トルクが作用する結果、車両Vの右ヨーモーメントが低減される。この場合にも、操舵角θや車速VPに応じて、第1回転電機11で回生する電力が制御される。
なお、右ヨーモーメント低減用の第4トルク分配制御を実行するための実行条件は、例えば、車両Vの減速走行中であり、バッテリ23の充電状態が上限値よりも小さく、かつ第1回転電機11に要求される制動トルクが前記第2上限トルクよりも小さいという条件である。
なお、右ヨーモーメントを低減するために、第1回転電機11に対してゼロトルク制御を実行するとともに、第2回転電機12で力行を行ってもよい。この場合、第2モータ出力トルクTM2のみが発生するので、図7から明らかなように、左出力軸伝達トルクは−RLM2で表されるとともに、右出力軸伝達トルクはRRM2で表される。このように、左出力軸SLに制動トルクが作用するとともに、右出力軸SRに駆動トルクが作用する結果、車両Vの右ヨーモーメントが低減される。この場合にも、操舵角θや車速VP、アクセル開度APに応じて、第2ステータ12aに供給される電力が制御される。
なお、車両Vの前進中の左旋回時、車両Vを左旋回させる反時計回り方向のヨーモーメント(以下「左ヨーモーメント」という)を増大させるときには、左旋回時の左ヨーモーメント増大用の第1〜第4トルク分配制御が実行され、左ヨーモーメントを低減するときには、左旋回時の左ヨーモーメント低減用の第1〜第4トルク分配制御が実行される。これらの左旋回時の左ヨーモーメント増大用及び低減用の第1〜第4トルク分配制御はそれぞれ、前述した右旋回時の右ヨーモーメント増大用及び低減用の第1〜第4トルク分配制御と左右対称にして実行されるので、その詳細な説明については省略する。
また、第1実施形態における各種の要素と、本発明における各種の要素との対応関係は、次のとおりである。すなわち、第1実施形態における車両V及び左右の出力軸SL、SRが、本発明における輸送機関及び2つの被駆動部にそれぞれ相当するとともに、第1実施形態におけるエンジン3、第1及び第2回転電機11、12が、本発明におけるエネルギ出力装置、第1及び第2エネルギ入出力装置にそれぞれ相当する。また、第1実施形態におけるサンギヤSが、本発明における第4ギヤ及び第1外側回転要素に相当するとともに、第1実施形態におけるキャリヤ31が、本発明における第2外側回転要素に相当する。さらに、第1実施形態における第2リングギヤR2が、本発明における第2ギヤ及び第1準外側回転要素に相当し、第1実施形態における第1リングギヤR1が、本発明における第1ギヤ及び第2準外側回転要素に相当するとともに、第1実施形態における第3リングギヤR3が、本発明における第3ギヤ及び中央回転要素に相当する。
以上のように、第1実施形態によれば、差動装置GSが、キャリヤ31と、互いに一体の第1〜第3ピニオンギヤP1〜P3から成る3連ピニオンギヤ32と、サンギヤSと、第1〜第3リングギヤR1〜R3と、付加ピニオンギヤ33で構成されている(図2)。また、これらのサンギヤS、第2リングギヤR2、第3リングギヤR3、第1リングギヤR1及びキャリヤ31によって、5つの回転要素が構成されており、これらの5つの回転要素は、共線図において単一の直線上にこの順で並ぶ共線関係にある(図4〜図7)。このように、前述した特許文献2と同等の差動装置を、キャリヤ31、3連ピニオンギヤ32、サンギヤS、第1〜第3リングギヤR1〜R3及び付加ピニオンギヤ33により構成でき、特許文献2の16個の部品よりも少ない計7個の部品によって、構成することができる。したがって、動力装置全体の部品点数を削減でき、装置の小型化、軽量化及び製造コストの削減を図ることができる。
また、共線図において両外側にそれぞれ位置するサンギヤS及びキャリヤ31が、第1及び第2回転電機11、12(第1及び第2ロータ11b、12b)にそれぞれ機械的に連結されており、サンギヤS及びキャリヤ31の隣にそれぞれ位置する第2及び第1リングギヤR2、R1が、左右の出力軸SL、SRにそれぞれ機械的に連結されている。これにより、第1及び第2回転電機11、12から出力された回転エネルギを、差動装置GSを介して左右の出力軸SL、SRに伝達し、両者SL、SRを適切に駆動することができる。この場合、5つの回転要素(サンギヤS、第2リングギヤR2、第3リングギヤR3、第1リングギヤR1、キャリヤ31)の回転数が互いに共線関係にあるので、第1及び第2回転電機11、12における回転エネルギの入出力を制御することによって、左右の出力軸SL、SRに分配される回転エネルギ(トルク)を適切に制御することができる。
さらに、5つの回転要素のうち、共線図において中央に位置する第3リングギヤR3が、第1及び第2回転電機11、12と別個に設けられたエンジン3に機械的に連結されている。これにより、左右の出力軸SL、SRに、第1及び第2回転電機11、12からの回転エネルギに加え、エンジン3からの回転エネルギが伝達されるので、第1及び第2回転電機11、12に必要とされるトルクを低減でき、それにより両者11、12の小型化を図ることができる。
また、左右の出力軸SL、SRに、サンギヤSではなく、第2及び第1リングギヤR2、R1がそれぞれ機械的に連結されている。したがって、図20及び図21を用いて説明したように、第1及び第2リングギヤR1、R2の歯幅を比較的小さな値に設定することができ、それにより動力装置のさらなる小型化を図ることができる。同じ理由により、第1及び第2ピニオンギヤP1、P2を支持する軸受けの小型化を図ることができ、このことによっても、動力装置のさらなる小型化を図ることができる。
なお、第1実施形態では、サンギヤS及びキャリヤ31を、第1及び第2ロータ11b、12bにそれぞれ連結するとともに、第2及び第1リングギヤR2、R1を、左右の出力軸SL、SRにそれぞれ連結しているが、これとは逆に、キャリヤ及びサンギヤを、第1及び第2ロータにそれぞれ連結するとともに、第1及び第2リングギヤを、左右の出力軸にそれぞれ連結してもよい。また、第1実施形態では、サンギヤSを、第1ピニオンギヤP1に対応させて設けるとともに、付加ピニオンギヤ33を、サンギヤS及び第1ピニオンギヤP1に噛み合わせているが、サンギヤを、第2又は第3ピニオンギヤに対応させて設けるとともに、付加ピニオンギヤを、第2及び第3ピニオンギヤのうちのサンギヤが対応する1つとサンギヤとに噛み合わせてもよい。この場合にも、回転数の関係を表す共線図におけるサンギヤ、第2リングギヤ、第3リングギヤ、第1リングギヤ及びキャリヤの並び順は、図4〜図7に示す並び順と同じであり、第1ロータ、左出力軸、変速機出力軸、右出力軸及び第2ロータとの連結関係も同じである。
次に、図8及び図9を参照しながら、本発明の第2実施形態による動力装置について説明する。この動力装置の配分装置DS2は、第1実施形態と比較して、付加ピニオンギヤ53が、サンギヤSA及び第1ピニオンギヤP1Aではなく、第2ピニオンギヤP2A及び第2リングギヤR2Aに噛み合っている点が主に異なっている。図8及び図9において、第1実施形態と同じ構成要素については、同じ符号を付している。以下、第2実施形態による動力装置について、第1実施形態と異なる点を中心に説明する。
図8に示すように、配分装置DS2の差動装置GSAは、サンギヤSA、キャリヤ51、3連ピニオンギヤ52、付加ピニオンギヤ53、及び第1〜第3リングギヤR1A〜R3Aで構成されている。差動装置GSAと右前輪WRの間には第1回転電機11が、差動装置GSAと左前輪WLの間には第2回転電機12が、それぞれ配置されており、サンギヤSA及び第1〜第3リングギヤR1A〜R3Aは、左右の出力軸SL、SRと同軸状に配置されている。また、サンギヤSAは、外歯車で構成されるとともに、後述する第1ピニオンギヤP1Aに対応して、第1ピニオンギヤP1Aの内周側に設けられており、第1ピニオンギヤP1Aに噛み合っている。さらに、サンギヤSAは、軸受け(図示せず)に回転自在に支持された中空の第1回転軸54を介して、第2ロータ12bに同軸状に連結されており、第2ロータ12bと一体に回転自在である。第1回転軸54の内周側には、左出力軸SLが、同軸状かつ相対的に回転自在に配置されている。
キャリヤ51は、ドーナツ板状の基部51aと、基部51aに一体に設けられた第1支軸51b及び第2支軸51cで構成されており、軸受け(図示せず)に回転自在に支持されている。キャリヤ51の内周側には、サンギヤSA及び第1回転軸54が、相対的に回転自在に配置されている。第1及び第2支軸51b、51c、3連ピニオンギヤ52、ならびに付加ピニオンギヤ53の数はそれぞれ、3つである(それぞれ2つのみ図示)が、これに限られないことは、もちろんである。
上記の基部51aは、左右の出力軸SL、SRと同軸状に配置されている。また、基部51aには、外歯車であるギヤGAが一体に設けられており、ギヤGAは、前述した変速機出力軸のギヤ4aに噛み合っている。第1及び第2支軸51b、51cは、基部51aから右前輪WR側に、左右の出力軸SL、SRと平行に延びている。また、第1支軸51bは基部51aの径方向の内端部に、第2支軸51cは基部51aの径方向の外端部に、それぞれ位置している。さらに、3つの第1支軸51bは、基部51aの周方向に互いに等間隔に位置しており、このことは、3つの第2支軸51cについても同様である。
前記3連ピニオンギヤ52は、第1実施形態と同様、互いに一体に形成された外歯車である第1ピニオンギヤP1A、第2ピニオンギヤP2A及び第3ピニオンギヤP3Aで構成されており、第1支軸51bに、軸受け(図示せず)を介して回転自在に支持されている。第1〜第3ピニオンギヤP1A〜P3Aの位置関係は、第1実施形態の第1〜第3ピニオンギヤP1〜P3のそれと同様である。
第1〜第3リングギヤR1A〜R3Aは、第1実施形態の第1〜第3リングギヤR1〜R3と同様の内歯車で構成されており、第1〜第3ピニオンギヤP1A〜P3Aにそれぞれ対応して、第1〜第3ピニオンギヤP1A〜P3Aの外周側にそれぞれ設けられている。また、第1リングギヤR1Aは、第1ピニオンギヤP1Aに噛み合っており、軸受け(図示せず)に回転自在に支持された中空の第2回転軸55、フランジ、及び中空の第3回転軸56を介して、第1ロータ11bに同軸状に連結されており、第1ロータ11bと一体に回転自在である。第2回転軸55の内周側には後述する第4回転軸57が、第3回転軸56の内周側には右出力軸SRが、それぞれ相対的に回転自在に配置されている。
第2リングギヤR2Aは、軸受け(図示せず)に回転自在に支持された中空の第4回転軸57及びフランジを介して、右出力軸SRに同軸状に連結されており、右出力軸SRと一体に回転自在である。第4回転軸57の内周側には、後述する第5回転軸58が相対的に回転自在に配置されている。付加ピニオンギヤ53は、外歯車で構成され、第2支軸51cに、軸受け(図示せず)を介して回転自在に支持されており、第2ピニオンギヤP2A及び第2リングギヤR2Aの双方に噛み合っている。第3リングギヤR3Aは、第3ピニオンギヤP3Aに噛み合うとともに、軸受け(図示せず)に回転自在に支持された中空の第5回転軸58及びフランジを介して、左出力軸SLに同軸状に連結されており、左出力軸SLと一体に回転自在である。
また、第1〜第3ピニオンギヤP1A〜P3Aの歯数ZP1A〜ZP3A、及び第1〜第3リングギヤR1A〜R3Aの歯数ZR1A〜ZR3Aは、それらの間に次式(5)及び(6)が成立するように、設定されている。
ZR3A/ZP3A>ZR1A/ZP1A ……(5)
ZP2A/ZR2A=ZP3A/ZR3A ……(6)
以上の構成の動力装置では、差動装置GSAが上述したように構成されているため、サンギヤSA、第2リングギヤR2A、キャリヤ51、第3リングギヤR3A及び第1リングギヤR1Aは、互いの間で動力が伝達可能であり、それらの回転数が互いに共線関係にある。また、キャリヤ51を固定した状態で、サンギヤSAを回転させたときには、第2リングギヤR2Aは、サンギヤSAの回転方向と同方向に回転し、第1及び第3リングギヤR1A、R3Aは、サンギヤSAの回転方向と逆方向に回転する。この場合、各ギヤの歯数の関係から、サンギヤSAの回転数は、第2リングギヤR2Aの回転数よりも高くなり、第3リングギヤR3Aの回転数は、第1リングギヤR1Aの回転数よりも高くなる。以上から、回転数の関係を表す共線図において、サンギヤSA、第2リングギヤR2A、キャリヤ51、第3リングギヤR3A及び第1リングギヤR1Aは、この順で並ぶ。
また、サンギヤSA及び第2ロータ12bは、第1回転軸54を介して互いに連結されているので、サンギヤSAの回転数及び第2ロータ12bの回転数は、互いに等しい。さらに、第2リングギヤR2Aは、第4回転軸57及びフランジを介して右出力軸SRに連結されているので、第2リングギヤR2Aの回転数及び右出力軸SRの回転数は、互いに等しい。また、キャリヤ51は、ギヤGA及びギヤ4aを介して変速機4の変速機出力軸に連結されているので、これらのギヤGA及びギヤ4aによる変速を無視すれば、キャリヤ51の回転数及び変速機出力軸の回転数は、互いに等しい。さらに、第3リングギヤR3Aは、第5回転軸58及びフランジを介して左出力軸SLに連結されているので、第3リングギヤR3Aの回転数及び左出力軸SLの回転数は、互いに等しい。また、第1リングギヤR1Aは、第2回転軸55、フランジ及び第3回転軸56を介して第1ロータ11bに連結されているので、第1リングギヤR1Aの回転数及び第1ロータ11bの回転数は、互いに等しい。
以上から、動力装置における各種の回転要素の間の回転数の関係は、例えば図9に示す共線図のように表される。図9から明らかなように、左右の出力軸SL、SRは、互いに差回転が可能である。また、図9におけるαA及びβAはそれぞれ、第1レバー比及び第2レバー比(トルク比・速度比)であり、次式(7)及び(8)で表される。
αA=ZR2A(ZR3A×ZP1A−ZR1A×ZP3A)
/ZR1A(ZR2A×ZP3A+ZR3A×ZP2A)……(7)
βA=ZR3A(ZR2A×ZP1A−ZSA×ZP2A)
/ZSA(ZR2A×ZP3A+ZR3A×ZP2A) ……(8)
ここで、ZSAは、サンギヤSAの歯数である。
これらの第1〜第3リングギヤR1A〜R3Aの歯数ZR1A〜ZR3A、第1〜第3ピニオンギヤP1A〜P3Aの歯数ZP1A〜ZP3A、及びサンギヤSAの歯数ZSAは、前記式(5)及び(6)による条件に加え、左右の前輪WL、WRの差回転が可能な範囲内で第1及び第2ロータ11b、12bの一方が逆転しないことを条件として、第1及び第2レバー比αA、βAが比較的大きな値になるように、設定されている。
また、図9と図4〜図7との比較から明らかなように、配分装置DS2では、第1実施形態による配分装置DS1の動作が同様にして行われる。その詳細な説明については、省略する。
また、第2実施形態における各種の要素と、本発明における各種の要素との対応関係は、次のとおりである。すなわち、第2実施形態における第1リングギヤR1Aが、本発明における第1ギヤ及び第1外側回転要素に相当するとともに、第2実施形態におけるサンギヤSAが、本発明における第4ギヤ及び第2外側回転要素に相当する。また、第2実施形態における第3リングギヤR3Aが、本発明における第3ギヤ及び第1準外側回転要素に相当し、第2実施形態における第2リングギヤR2Aが、本発明における第2ギヤ及び第2準外側回転要素に相当するとともに、第2実施形態におけるキャリヤ51が、本発明における中央回転要素に相当する。その他の対応関係は、第1実施形態と同様である。
以上のように、第2実施形態によれば、差動装置GSAが、キャリヤ51と、互いに一体の第1〜第3ピニオンギヤP1A〜P3Aから成る3連ピニオンギヤ52と、サンギヤSAと、第1〜第3リングギヤR1A〜R3Aと、付加ピニオンギヤ53で構成されている(図8)。また、これらの第1リングギヤR1A、第3リングギヤR3A、キャリヤ51、第2リングギヤR2A及びサンギヤSAによって、5つの回転要素が構成されており、これらの5つの回転要素は、共線図において単一の直線上にこの順で並ぶ共線関係にある(図9)。このように、前述した特許文献2と同等の差動装置を、キャリヤ51、3連ピニオンギヤ52、サンギヤSA、第1〜第3リングギヤR1A〜R3A及び付加ピニオンギヤ53により構成でき、第1実施形態と同様、特許文献2の16個の部品よりも少ない計7個の部品によって、構成することができる。したがって、動力装置全体の部品点数を削減でき、装置の小型化、軽量化及び製造コストの削減を図ることができる。
また、共線図において両外側にそれぞれ位置する第1リングギヤR1A及びサンギヤSAが、第1及び第2回転電機11、12(第1及び第2ロータ11b、12b)にそれぞれ機械的に連結されており、第1リングギヤR1A及びサンギヤSAの隣にそれぞれ位置する第3及び第2リングギヤR3A、R2Aが、左右の出力軸SL、SRにそれぞれ機械的に連結されている。これにより、第1実施形態と同様、第1及び第2回転電機11、12から出力された回転エネルギを、差動装置GSAを介して左右の出力軸SL、SRに伝達し、両者SL、SRを適切に駆動することができるとともに、第1及び第2回転電機11、12における回転エネルギの入出力の制御によって、左右の出力軸SL、SRに分配される回転エネルギ(トルク)を適切に制御することができる。
さらに、5つの回転要素のうち、共線図において中央に位置するキャリヤ51が、エンジン3に機械的に連結されているので、第1実施形態と同様、第1及び第2回転電機11、12に必要とされるトルクを低減でき、それにより両者11、12の小型化を図ることができる。また、左右の出力軸SL、SRに、サンギヤSAではなく、第3及び第2リングギヤR3A、R2Aがそれぞれ機械的に連結されている。したがって、第1実施形態と同様、第2及び第3リングギヤR2A、R3Aの歯幅を比較的小さな値に設定することができ、それにより動力装置のさらなる小型化を図ることができる。同じ理由により、付加ピニオンギヤ53及び第3ピニオンギヤP3Aを支持する軸受けの小型化を図ることができ、このことによっても、動力装置のさらなる小型化を図ることができる。
なお、第2実施形態では、第1リングギヤR1A及びサンギヤSAを、第1及び第2ロータ11b、12bにそれぞれ連結するとともに、第3及び第2リングギヤR3A、R2Aを、左右の出力軸SL、SRにそれぞれ連結しているが、これとは逆に、サンギヤ及び第1リングギヤを、第1及び第2ロータにそれぞれ連結するとともに、第2及び第3リングギヤを、左右の出力軸にそれぞれ連結してもよい。また、第2実施形態では、付加ピニオンギヤ53を、第2ピニオンギヤP2A及び第2リングギヤR2Aの双方に噛み合わせているが、第1ピニオンギヤ及び第1リングギヤの双方、又は、第3ピニオンギヤ及び第3リングギヤの双方に噛み合わせてもよい。この場合、第2リングギヤは、第2ピニオンギヤに噛み合う。さらに、第2実施形態では、サンギヤSAを、第1ピニオンギヤP1Aに噛み合わせているが、第2又は第3ピニオンギヤに噛み合わせてもよい。
また、上述したバリエーションのいずれにおいても、サンギヤ、第1〜第3リングギヤ及びキャリヤから成る5つの回転要素のうち、回転数の関係を表す共線図において両外側にそれぞれ位置する第1及び第2外側回転要素が、第1及び第2ロータにそれぞれ連結されるとともに、第1及び第2外側回転要素の隣にそれぞれ位置する第1及び第2準外側回転要素が、左右の出力軸にそれぞれ連結される。さらに、5つの回転要素のうちの中央に位置する中央回転要素が、エンジンに連結される。また、上述したバリエーションにおいて、第1及び第2ロータなどとの連結関係を成立させるために、各ギヤの歯数を、前記式(5)及び(6)とは異なる関係に設定する必要が生じることがある。
また、第2実施形態では、回転数の関係を表す共線図におけるキャリヤ51から第2及び第3リングギヤR2A、R3Aまでの距離は、互いに等しいが、互いに異ならせてもよい。この場合、第2及び第3ピニオンギヤの歯数ならびに第2及び第3リングギヤの歯数の間に、前記式(6)が成立しなくてもよく、その分、その設定の自由度が大きくなるので、前述した第1及び第2レバー比が互いに等しくなるように、各ギヤの歯数を設定することが可能になる。
次に、図10及び図11を参照しながら、本発明の第3実施形態による動力装置について説明する。この動力装置の配分装置DS3は、第1実施形態と比較して、付加ピニオンギヤ33に代えて、第1及び第2付加ピニオンギヤ63、64を有する点が主に異なっている。図10及び図11において、第1実施形態と同じ構成要素については、同じ符号を付している。以下、第3実施形態による動力装置について、第1及び第2実施形態と異なる点を中心に説明する。
図10に示すように、配分装置DS3の差動装置GSBは、サンギヤSB、キャリヤ61、3連ピニオンギヤ62、第1及び第2付加ピニオンギヤ63、64、ならびに第1〜第3リングギヤR1B〜R3Bで構成されている。差動装置GSB、左右の前輪WL、WR、第1及び第2回転電機11、12の位置関係は、第2実施形態と同様であり、サンギヤSB及び第1〜第3リングギヤR1B〜R3Bは、左右の出力軸SL、SRと同軸状に配置されている。また、サンギヤSBは、外歯車で構成されるとともに、後述する第2ピニオンギヤP2Bに対応して、第2ピニオンギヤP2Bの内周側に設けられている。さらに、サンギヤSBは、軸受け(図示せず)に回転自在に支持された中空の第1回転軸65を介して、第1ロータ11bに同軸状に連結されており、第1ロータ11bと一体に回転自在である。第1回転軸65の内周側には、右出力軸SRが、同軸状かつ相対的に回転自在に配置されている。
キャリヤ61は、円板状の基部61aと、基部61aに一体に設けられた第1支軸61b、第2支軸61c及び第3支軸61dで構成されており、軸受け(図示せず)に回転自在に支持されている。キャリヤ61の内周側には、サンギヤSB及び第1回転軸65が、相対的に回転自在に配置されている。第1〜第3支軸61b、61c、61d、3連ピニオンギヤ62、第1及び第2付加ピニオンギヤ63、64の数はそれぞれ、3つである(それぞれ2つのみ図示)が、これに限られないことは、もちろんである。
上記の基部61aは、右出力軸SRに、同軸状に取り付けられており、それにより、キャリヤ61は、右出力軸SRと一体に回転自在である。第1〜第3支軸61b、61c、61dは、基部61aから右前輪WR側に、左右の出力軸SL、SRと平行に延びており、基部61aの径方向に、内側からこの順で並んでいる。また、3つの第1支軸61bは、基部61aの周方向に互いに等間隔に位置しており、このことは、3つの第2及び第3支軸61c、61dについても同様である。
前記3連ピニオンギヤ62は、第1実施形態と同様、互いに一体に形成された外歯車である第1ピニオンギヤP1B、第2ピニオンギヤP2B及び第3ピニオンギヤP3Bで構成されており、第2支軸61cに、軸受け(図示せず)を介して回転自在に支持されている。第1〜第3ピニオンギヤP1B〜P3Bの位置関係は、第1実施形態の第1〜第3ピニオンギヤP1〜P3のそれと同様である。
第1〜第3リングギヤR1B〜R3Bは、第1実施形態の第1〜第3リングギヤR1〜R3と同様の内歯車で構成されており、第1〜第3ピニオンギヤP1B〜P3Bにそれぞれ対応して、第1〜第3ピニオンギヤP1B〜P3Bの外周側にそれぞれ設けられている。また、第1リングギヤR1Bは、第1ピニオンギヤP1Bに噛み合うとともに、軸受け(図示せず)に回転自在に支持された中空の第2回転軸66及びフランジを介して、左出力軸SLに同軸状に連結されており、左出力軸SLと一体に回転自在である。第2リングギヤR2Bは、軸受け(図示せず)に回転自在に支持された中空の第3回転軸67、フランジ、及び中空の第4回転軸68を介して、第2ロータ12bに同軸状に連結されており、第2ロータ12bと一体に回転自在である。第3回転軸67の内周側には上記の第2回転軸66が、第4回転軸68の内周側には左出力軸SLが、それぞれ相対的に回転自在に配置されている。第3リングギヤR3Bは、第3ピニオンギヤP3Bに噛み合っており、その外周部には、外歯車であるギヤGBが形成されている。ギヤGBは、変速機出力軸のギヤ4aに噛み合っている。
第1付加ピニオンギヤ63は、外歯車で構成され、第1支軸61bに、軸受け(図示せず)を介して回転自在に支持されており、サンギヤSB及び第2ピニオンギヤP2Bの双方に噛み合っている。第2付加ピニオンギヤ64は、外歯車で構成され、第3支軸61dに、軸受け(図示せず)を介して回転自在に支持されており、第2ピニオンギヤP2B及び第2リングギヤR2Bの双方に噛み合っている。また、第1〜第3ピニオンギヤP1B〜P3Bの歯数ZP1B〜ZP3B、及び第1〜第3リングギヤR1B〜R3Bの歯数ZR1B〜ZR3Bは、それらの間に次式(9)及び(10)が成立するように、設定されている。
ZR3B/ZP3B>ZR1B/ZP1B>ZR2B/ZP2B……(9)
ZP1B/ZR1B=2×ZP3B/ZR3B ……(10)
以上の構成の動力装置では、差動装置GSBが上述したように構成されているため、サンギヤSB、第1リングギヤR1B、第3リングギヤR3B、キャリヤ61及び第2リングギヤR2Bは、互いの間で動力が伝達可能であり、それらの回転数が互いに共線関係にある。また、キャリヤ61を固定した状態で、サンギヤSBを回転させたときには、第1及び第3リングギヤR1B、R3Bは、サンギヤSBの回転方向と同方向に回転し、第2リングギヤR2Bは、サンギヤSBの回転方向と逆方向に回転する。この場合、各ギヤの歯数の関係から、サンギヤSBの回転数、第1及び第3リングギヤR1B、R3Bの回転数の間に、「サンギヤSBの回転数>第1リングギヤR1Bの回転数>第3リングギヤR3Bの回転数」の関係が成立する。以上から、回転数の関係を表す共線図において、サンギヤSB、第1リングギヤR1B、第3リングギヤR3B、キャリヤ61及び第2リングギヤR2Bは、この順で並ぶ。
また、サンギヤSB及び第1ロータ11bは、第1回転軸65を介して互いに連結されているので、サンギヤSBの回転数及び第1ロータ11bの回転数は、互いに等しい。さらに、第1リングギヤR1Bは、第2回転軸66及びフランジを介して左出力軸SLに連結されているので、第1リングギヤR1Bの回転数及び左出力軸SLの回転数は、互いに等しい。また、第3リングギヤR3Bは、ギヤGB及びギヤ4aを介して変速機4の変速機出力軸に連結されているので、これらのギヤGB及びギヤ4aによる変速を無視すれば、第3リングギヤR3Bの回転数及び変速機出力軸の回転数は、互いに等しい。さらに、キャリヤ61は、右出力軸SRに直結されているので、キャリヤ61の回転数及び右出力軸SRの回転数は、互いに等しい。また、第2リングギヤR2Bは、第3回転軸67、フランジ及び第4回転軸68を介して第2ロータ12bに連結されているので、第2リングギヤR2Bの回転数及び第2ロータ12bの回転数は、互いに等しい。
以上から、動力装置における各種の回転要素の間の回転数の関係は、例えば図11に示す共線図のように表される。図11から明らかなように、左右の出力軸SL、SRは、互いに差回転が可能である。また、図11におけるαB及びβBはそれぞれ、第1レバー比及び第2レバー比(トルク比・速度比)であり、次式(11)及び(12)で表される。
αB=ZR1B×ZP2B/(ZSB×ZP1B)−1 ……(11)
βB=ZR1B×ZP2B/(ZR2B×ZP1B) ……(12)
ここで、ZSBは、サンギヤSBの歯数である。
これらの第1及び第2リングギヤR1B、R2Bの歯数ZR1B、ZR2B、第1及び第2ピニオンギヤP1B、P2Bの歯数ZP1B、ZP2B、ならびにサンギヤSBの歯数ZSBは、前記式(9)及び(10)による条件に加え、左右の前輪WL、WRの差回転が可能な範囲内で第1及び第2ロータ11b、12bの一方が逆転しないことを条件として、第1及び第2レバー比αB、βBが互いに等しくなるとともに比較的大きな値になるように、設定されている。
また、図11と図4〜図7との比較から明らかなように、配分装置DS3では、第1実施形態による配分装置DS1の動作が同様にして行われる。その詳細な説明については、省略する。
また、第3実施形態における各種の要素と、本発明における各種の要素との対応関係は、次のとおりである。すなわち、第3実施形態におけるサンギヤSBが、本発明における第4ギヤ及び第1外側回転要素に相当し、第3実施形態における第2リングギヤR2Bが、本発明における第2ギヤ及び第2外側回転要素に相当するとともに、第3実施形態における第1及び第2付加ピニオンギヤ63、64が、本発明における付加ピニオンギヤに相当する。また、第3実施形態における第1リングギヤR1Bが、本発明における第1ギヤ及び第1準外側回転要素に相当し、第3実施形態におけるキャリヤ61が、本発明における第2準外側回転要素に相当するとともに、第3実施形態における第3リングギヤR3Bが、本発明における第3ギヤ及び中央回転要素に相当する。その他の対応関係は、第1実施形態と同様である。
以上のように、第3実施形態によれば、差動装置GSBが、キャリヤ61と、互いに一体の第1〜第3ピニオンギヤP1B〜P3Bから成る3連ピニオンギヤ62と、サンギヤSBと、第1〜第3リングギヤR1B〜R3Bと、第1及び第2付加ピニオンギヤ63、64で構成されている(図10)。また、これらのサンギヤSB、第1リングギヤR1B、第3リングギヤR3B、キャリヤ61及び第2リングギヤR2Bによって、5つの回転要素が構成されており、これらの5つの回転要素は、共線図において単一の直線上にこの順で並ぶ共線関係にある(図11)。このように、前述した特許文献2と同等の差動装置を、キャリヤ61、3連ピニオンギヤ62、サンギヤSB、第1〜第3リングギヤR1B〜R3B、第1及び第2付加ピニオンギヤ63、64により構成でき、特許文献2の16個の部品よりも少ない計8個の部品によって、構成することができる。したがって、動力装置全体の部品点数を削減でき、装置の小型化、軽量化及び製造コストの削減を図ることができる。
また、共線図において両外側にそれぞれ位置するサンギヤSB及び第2リングギヤR2Bが、第1及び第2回転電機11、12(第1及び第2ロータ11b、12b)にそれぞれ機械的に連結されており、サンギヤSB及び第2リングギヤR2Bの隣にそれぞれ位置する第1リングギヤR1B及びキャリヤ61が、左右の出力軸SL、SRにそれぞれ機械的に連結されている。これにより、第1及び第2実施形態と同様、第1及び第2回転電機11、12から出力された回転エネルギを、差動装置GSBを介して左右の出力軸SL、SRに伝達し、両者SL、SRを適切に駆動することができるとともに、第1及び第2回転電機11、12における回転エネルギの入出力の制御によって、左右の出力軸SL、SRに分配される回転エネルギ(トルク)を適切に制御することができる。
さらに、5つの回転要素のうち、共線図において中央に位置する第3リングギヤR3Bが、エンジン3に機械的に連結されているので、第1及び第2実施形態と同様、第1及び第2回転電機11、12に必要とされるトルクを低減でき、それにより両者11、12の小型化を図ることができる。また、左右の出力軸SL、SRに、サンギヤSBではなく、第1リングギヤR1B及びキャリヤ61がそれぞれ機械的に連結されている。したがって、第1及び第2実施形態と同様、第1リングギヤR1Bの歯幅を比較的小さな値に設定することができ、それにより動力装置のさらなる小型化を図ることができる。同じ理由により、第1ピニオンギヤP1Bを支持する軸受けの小型化を図ることができ、このことによっても、動力装置のさらなる小型化を図ることができる。
なお、第3実施形態では、サンギヤSB及び第2リングギヤR2Bを、第1及び第2ロータ11b、12bにそれぞれ連結するとともに、第1リングギヤR1B及びキャリヤ61を、左右の出力軸SL、SRにそれぞれ連結しているが、これとは逆に、第2リングギヤ及びサンギヤを、第1及び第2ロータにそれぞれ連結するとともに、キャリヤ及び第1リングギヤを、左右の出力軸にそれぞれ連結してもよい。また、第3実施形態では、サンギヤSBを、第2ピニオンギヤP2Bに対応させて設けるとともに、第1付加ピニオンギヤ63を、サンギヤSB及び第2ピニオンギヤP2Bに噛み合わせているが、サンギヤを、第1又は第3ピニオンギヤに対応させて設けるとともに、第1付加ピニオンギヤを、第1及び第3ピニオンギヤのうちのサンギヤが対応する1つとサンギヤとに噛み合わせてもよい。
さらに、第3実施形態では、第2付加ピニオンギヤ64を、第2ピニオンギヤP2B及び第2リングギヤR2Bの双方に噛み合わせているが、第1ピニオンギヤ及び第1リングギヤの双方、又は、第3ピニオンギヤ及び第3リングギヤの双方に噛み合わせてもよい。この場合、第2リングギヤは、第2ピニオンギヤに噛み合う。また、上述したバリエーションのいずれにおいても、サンギヤ、第1〜第3リングギヤ及びキャリヤから成る5つの回転要素のうち、回転数の関係を表す共線図において両外側にそれぞれ位置する第1及び第2外側回転要素が、第1及び第2ロータにそれぞれ連結されるとともに、第1及び第2外側回転要素の隣にそれぞれ位置する第1及び第2準外側回転要素が、左右の出力軸にそれぞれ連結される。さらに、5つの回転要素のうちの中央に位置する中央回転要素が、エンジンに連結される。また、上述したバリエーションにおいて、第1及び第2ロータなどとの連結関係を成立させるために、各ギヤの歯数を、前記式(9)及び(10)とは異なる関係に設定する必要が生じることがある。
次に、図12及び図13を参照しながら、本発明の第4実施形態による動力装置について説明する。この動力装置の配分装置DS4は、第1実施形態と比較して、前述した付加ピニオンギヤ33に代えて、第1及び第2付加ピニオンギヤ73、74を有する点が主に異なっている。図12及び図13において、第1実施形態と同じ構成要素については、同じ符号を付している。以下、第4実施形態による動力装置について、第1〜第3実施形態と異なる点を中心に説明する。
図12に示すように、配分装置DS4の差動装置GSCは、サンギヤSC、キャリヤ71、3連ピニオンギヤ72、第1及び第2付加ピニオンギヤ73、74、ならびに、第1〜第3リングギヤR1C〜R3Cで構成されている。差動装置GSC、左右の前輪WL、WR、第1及び第2回転電機11、12の位置関係は、第2実施形態と同様であり、サンギヤSC及び第1〜第3リングギヤR1C〜R3Cは、左右の出力軸SL、SRと同軸状に配置されている。また、サンギヤSCは、外歯車で構成されるとともに、後述する第1ピニオンギヤP1Cに対応して、第1ピニオンギヤP1Cの内周側に設けられており、第1ピニオンギヤP1Cに噛み合っている。さらに、サンギヤSCは、軸受け(図示せず)に回転自在に支持された中空の第1回転軸75を介して、第2ロータ12bに同軸状に連結されており、第2ロータ12bと一体に回転自在である。第1回転軸75の内周側には、左出力軸SLが、同軸状かつ相対的に回転自在に配置されている。
キャリヤ71は、ドーナツ板状の第1基部71aと、円板状の第2基部71bと、両基部71a、71bに一体に設けられた第1支軸71cと、第1基部71aに一体に設けられた第2支軸71dと、第2基部71bに一体に設けられた第3支軸71eで構成されており、軸受け(図示せず)に回転自在に支持されている。キャリヤ71の内周側には、サンギヤSC及び第1回転軸75が、相対的に回転自在に配置されている。第1〜第3支軸71c〜71e、3連ピニオンギヤ72、第1及び第2付加ピニオンギヤ73、74の数はそれぞれ、3つである(それぞれ2つのみ図示)が、これに限られないことは、もちろんである。
上記の第1及び第2基部71a、71bは、左右の出力軸SL、SRと同軸状に配置されており、その軸線方向において互いに対向している。また、第2基部71bは、第1基部71aよりも右前輪WR側に配置されており、左出力軸SLに取り付けられている。これにより、キャリヤ71は、左出力軸SLと一体に回転自在である。第1〜第3支軸71c、71d、71eは、第1及び第2基部71a、71bの間に設けられており、左右の出力軸SL、SRと平行に延びている。また、第1支軸71cは、第1基部71aの径方向の内端部で、かつ、第2基部71bの径方向の中央部に位置している。第2支軸71dは、第1基部71aの径方向の外端部に位置しており、第2基部71b側に延びている。第3支軸71eは、第2基部71bの径方向の外端部に位置しており、第1基部71a側に延びている。さらに、3つの第1支軸71cは、第1及び第2基部71a、71bの周方向に互いに等間隔に位置しており、このことは3つの第2及び第3支軸71d、71eについても同様である。
前記3連ピニオンギヤ72は、第1実施形態と同様、互いに一体に形成された外歯車である第1ピニオンギヤP1C、第2ピニオンギヤP2C及び第3ピニオンギヤP3Cで構成されており、第1支軸71cに、軸受け(図示せず)を介して回転自在に支持されている。第1〜第3ピニオンギヤP1C〜P3Cの位置関係は、第1実施形態の第1〜第3ピニオンギヤP1〜P3のそれと同様である。
第1〜第3リングギヤR1C〜R3Cは、第1実施形態の第1〜第3リングギヤR1〜R3と同様の内歯車で構成されており、第1〜第3ピニオンギヤP1C〜P3Cにそれぞれ対応して、第1〜第3ピニオンギヤP1C〜P3Cの外周側にそれぞれ設けられている。また、第1リングギヤR1Cの外周部には、外歯車であるギヤGCが形成されており、ギヤGCは、変速機出力軸のギヤ4aに噛み合っている。第1付加ピニオンギヤ73は、外歯車で構成され、第2支軸71dに、軸受け(図示せず)を介して回転自在に支持されており、第1ピニオンギヤP1C及び第1リングギヤR1Cの双方に噛み合っている。第2リングギヤR2Cは、第2ピニオンギヤP2Cに噛み合うとともに、軸受け(図示せず)に回転自在に支持された中空の第2回転軸76、フランジ及び中空の第3回転軸77を介して、第1ロータ11bに同軸状に連結されており、第1ロータ11bと一体に回転自在である。第2回転軸76の内周側には後述する第4回転軸78が、第3回転軸77の内周側には右出力軸SRが、それぞれ相対的に回転自在に配置されている。
第3リングギヤR3Cは、軸受け(図示せず)に回転自在に支持された中空の第4回転軸78及びフランジを介して、右出力軸SRに同軸状に連結されており、右出力軸SRと一体に回転自在である。第2付加ピニオンギヤ74は、外歯車で構成され、第3支軸71eに、軸受け(図示せず)を介して回転自在に支持されており、第3ピニオンギヤP3C及び第3リングギヤR3Cの双方に噛み合っている。また、第1〜第3ピニオンギヤP1C〜P3Cの歯数ZP1C〜ZP3C、及び第1〜第3リングギヤR1C〜R3Cの歯数ZR1C〜ZR3Cは、それらの間に次式(13)及び(14)が成立するように、設定されている。
ZR1C/ZP1C>ZR3C/ZP3C>ZR2C/ZP2C
……(13)
2×ZP1C/ZR1C=ZP3C/ZR3C ……(14)
以上の構成の動力装置では、差動装置GSCが上述したように構成されているため、サンギヤSC、第3リングギヤR3C、第1リングギヤR1C、キャリヤ71及び第2リングギヤR2Cは、互いの間で動力が伝達可能であり、それらの回転数が互いに共線関係にある。また、キャリヤ71を固定した状態で、サンギヤSCを回転させたときには、第1及び第3リングギヤR1C、R3Cは、サンギヤSCの回転方向と同方向に回転し、第2リングギヤR2Cは、サンギヤSCの回転方向と逆方向に回転する。この場合、各ギヤの歯数の関係から、サンギヤSCの回転数、第1及び第3リングギヤR1C、R3Cの回転数の間に、「サンギヤSCの回転数>第3リングギヤR3Cの回転数>第1リングギヤR1Cの回転数」の関係が成立する。以上から、回転数の関係を表す共線図において、サンギヤSC、第3リングギヤR3C、第1リングギヤR1C、キャリヤ71及び第2リングギヤR2Cは、この順で並ぶ。
また、サンギヤSC及び第2ロータ12bは、第1回転軸75を介して互いに連結されているので、サンギヤSCの回転数及び第2ロータ12bの回転数は、互いに等しい。さらに、第3リングギヤR3Cは、第4回転軸78及びフランジを介して右出力軸SRに連結されているので、第3リングギヤR3Cの回転数及び右出力軸SRの回転数は、互いに等しい。また、第1リングギヤR1Cは、ギヤGC及びギヤ4aを介して変速機4の変速機出力軸に連結されているので、これらのギヤGC及びギヤ4aによる変速を無視すれば、第1リングギヤR1Cの回転数及び変速機出力軸の回転数は、互いに等しい。さらに、キャリヤ71は左出力軸SLに直結されているので、キャリヤ71の回転数及び左出力軸SLの回転数は、互いに等しい。また、第2リングギヤR2Cは、第2回転軸76、フランジ及び第3回転軸77を介して第1ロータ11bに連結されているので、第2リングギヤR2Cの回転数及び第1ロータ11bの回転数は、互いに等しい。
以上から、動力装置における各種の回転要素の間の回転数の関係は、例えば図13に示す共線図のように表される。図13から明らかなように、左右の出力軸SL、SRは、互いに差回転が可能である。
また、図13におけるαC及びβCはそれぞれ、第1レバー比及び第2レバー比(トルク比・速度比)であり、次式(15)及び(16)で表される。
αC=ZR3C×ZP2C/(ZR2C×ZP3C) ……(15)
βC=ZR3C×ZP1C/(ZSC×ZP3C)−1 ……(16)
ここで、ZSCは、サンギヤSCの歯数である。
これらの第2及び第3リングギヤR2C、R3Cの歯数ZR2C、ZR3C、第1〜第3ピニオンギヤP1C〜P3Cの歯数ZP1C〜ZP3C、ならびに、サンギヤSCの歯数ZSCは、前記式(13)及び(14)による条件に加え、左右の前輪WL、WRの差回転が可能な範囲内で第1及び第2ロータ11b、12bの一方が逆転しないことを条件として、第1及び第2レバー比αC、βCが互いに等しくなるとともに比較的大きな値になるように、設定されている。
また、図13と図4〜図7との比較から明らかなように、配分装置DS4では、第1実施形態による配分装置DS1の動作が同様にして行われる。その詳細な説明については、省略する。
また、第4実施形態における各種の要素と、本発明における各種の要素との対応関係は、次のとおりである。すなわち、第4実施形態における第2リングギヤR2Cが、本発明における第2ギヤ及び第1外側回転要素に相当し、第4実施形態におけるサンギヤSCが、本発明における第4ギヤ及び第2外側回転要素に相当するとともに、第4実施形態における第1及び第2付加ピニオンギヤ73、74が、本発明における付加ピニオンギヤに相当する。また、第4実施形態におけるキャリヤ71が、本発明における第1準外側回転要素に相当し、第4実施形態における第3リングギヤR3Cが、本発明における第3ギヤ及び第2準外側回転要素に相当するとともに、第4実施形態における第1リングギヤR1Cが、本発明における第1ギヤ及び中央回転要素に相当する。その他の対応関係は、第1実施形態と同様である。
以上のように、第4実施形態によれば、差動装置GSCが、キャリヤ71と、互いに一体の第1〜第3ピニオンギヤP1C〜P3Cから成る3連ピニオンギヤ72と、サンギヤSCと、第1〜第3リングギヤR1C〜R3Cと、第1及び第2付加ピニオンギヤ73、74で構成されている(図12)。また、これらの第2リングギヤR2C、キャリヤ71、第1リングギヤR1C、第3リングギヤR3C及びサンギヤSCによって、5つの回転要素が構成されており、これらの5つの回転要素は、共線図において単一の直線上にこの順で並ぶ共線関係にある(図13)。このように、前述した特許文献2と同等の差動装置を、キャリヤ71、3連ピニオンギヤ72、サンギヤSC、第1〜第3リングギヤR1C〜R3C、第1及び第2付加ピニオンギヤ73、74により構成でき、第3実施形態と同様、特許文献2の16個の部品よりも少ない計8個の部品によって、構成することができる。したがって、動力装置全体の部品点数を削減でき、装置の小型化、軽量化及び製造コストの削減を図ることができる。
また、共線図において両外側にそれぞれ位置する第2リングギヤR2C及びサンギヤSCが、第1及び第2回転電機11、12(第1及び第2ロータ11b、12b)にそれぞれ機械的に連結されており、第2リングギヤR2C及びサンギヤSCの隣にそれぞれ位置するキャリヤ71及び第3リングギヤR3Cが、左右の出力軸SL、SRにそれぞれ機械的に連結されている。これにより、第1〜第3実施形態と同様、第1及び第2回転電機11、12から出力された回転エネルギを、差動装置GSCを介して左右の出力軸SL、SRに伝達し、両者SL、SRを適切に駆動することができるとともに、第1及び第2回転電機11、12における回転エネルギの入出力の制御によって、左右の出力軸SL、SRに分配される回転エネルギ(トルク)を適切に制御することができる。
さらに、5つの回転要素のうち、共線図において中央に位置する第1リングギヤR1Cが、エンジン3に機械的に連結されているので、第1〜第3実施形態と同様、第1及び第2回転電機11、12に必要とされるトルクを低減でき、それにより両者11、12の小型化を図ることができる。また、左右の出力軸SL、SRに、サンギヤSCではなく、キャリヤ71及び第3リングギヤR3Cがそれぞれ機械的に連結されている。したがって、第1〜第3実施形態と同様、第3リングギヤR3Cの歯幅を比較的小さな値に設定することができ、それにより動力装置のさらなる小型化を図ることができる。同じ理由により、第2付加ピニオンギヤ74を支持する軸受けの小型化を図ることができ、このことによっても、動力装置のさらなる小型化を図ることができる。
なお、第4実施形態では、第2リングギヤR2C及びサンギヤSCを、第1及び第2ロータ11b、12bにそれぞれ連結するとともに、キャリヤ71及び第3リングギヤR3Cを、左右の出力軸SL、SRにそれぞれ連結しているが、これとは逆に、サンギヤ及び第2リングギヤを、第1及び第2ロータにそれぞれ連結するとともに、第3リングギヤ及びキャリヤを、左右の出力軸にそれぞれ連結してもよい。また、第4実施形態では、サンギヤSCを、第1ピニオンギヤP1Cに噛み合わせているが、第2又は第3ピニオンギヤに噛み合わせてもよい。さらに、第4実施形態では、第1付加ピニオンギヤ73を第1ピニオンギヤP1C及び第1リングギヤR1Cの双方に、第2付加ピニオンギヤ74を第3ピニオンギヤP3C及び第3リングギヤR3Cの双方に、それぞれ噛み合わせているが、第1及び第2付加ピニオンギヤの一方を、第2ピニオンギヤ及び第2リングギヤの双方に噛み合わせてもよい。この場合において、第1付加ピニオンギヤを第2ピニオンギヤ及び第2リングギヤの双方に噛み合わせたときには、第1リングギヤは、第1ピニオンギヤに噛み合う。また、第2付加ピニオンギヤを第2ピニオンギヤ及び第2リングギヤの双方に噛み合わせたときには、第3リングギヤは、第3ピニオンギヤに噛み合う。
また、上述したバリエーションのいずれにおいても、サンギヤ、第1〜第3リングギヤ及びキャリヤから成る5つの回転要素のうち、回転数の関係を表す共線図において両外側にそれぞれ位置する第1及び第2外側回転要素が、第1及び第2ロータにそれぞれ連結されるとともに、第1及び第2外側回転要素の隣にそれぞれ位置する第1及び第2準外側回転要素が、左右の出力軸にそれぞれ連結される。さらに、5つの回転要素のうちの中央に位置する中央回転要素が、エンジンに連結される。また、上述したバリエーションにおいて、第1及び第2ロータなどとの連結関係を成立させるために、各ギヤの歯数を、前記式(13)及び(14)とは異なる関係に設定する必要が生じることがある。
次に、図14及び図15を参照しながら、本発明の第5実施形態による動力装置について説明する。この動力装置の配分装置DS5は、第4実施形態と比較して、第3付加ピニオンギヤ85をさらに有する点が主に異なっている。図14及び図15において、第1実施形態と同じ構成要素については、同じ符号を付している。以下、第5実施形態による動力装置について、第1〜第4実施形態と異なる点を中心に説明する。
図14に示すように、配分装置DS5の差動装置GSDは、サンギヤSD、キャリヤ81、3連ピニオンギヤ82、第1〜第3付加ピニオンギヤ83〜85、及び第1〜第3リングギヤR1D〜R3Dで構成されている。差動装置GSD、左右の前輪WL、WR、第1及び第2回転電機11、12の位置関係は、第1実施形態と同様であり、サンギヤSD、第1〜第3リングギヤR1D〜R3Dは、左右の出力軸SL、SRと同軸状に配置されている。また、サンギヤSDは、外歯車で構成されるとともに、後述する第1ピニオンギヤP1Dに対応して、第1ピニオンギヤP1Dの内周側に設けられており、第1ピニオンギヤP1Dに噛み合っている。さらに、サンギヤSDは、軸受け(図示せず)に回転自在に支持された中空の第1回転軸86を介して、第1ロータ11bに同軸状に連結されており、第1ロータ11bと一体に回転自在である。第1回転軸86の内周側には、右出力軸SRが、同軸状かつ相対的に回転自在に配置されている。
上記のキャリヤ81は、ドーナツ板状の第1及び第2基部81a、81bと、両基部81a、81bに一体に設けられた第1支軸81cと、第1基部81aに一体に設けられた第2支軸81dと、第2基部81bに一体に設けられた第3支軸81e及び第4支軸81fで構成されており、軸受け(図示せず)に回転自在に支持されている。キャリヤ81の内周側には、サンギヤSD及び第1回転軸86が、相対的に回転自在に配置されている。第1〜第4支軸81c〜81f、3連ピニオンギヤ82、及び第1〜第3付加ピニオンギヤ83〜85の数はそれぞれ、3つである(それぞれ2つのみ図示)が、これに限られないことは、もちろんである。
上記の第1及び第2基部81a、81bは、左右の出力軸SL、SRと同軸状に配置されており、その軸線方向において互いに対向している。また、第2基部81bは、第1基部81aよりも右前輪WR側に配置されており、軸受け(図示せず)に回転自在に支持された中空の第2回転軸87を介して、第2ロータ12bに同軸状に連結されている。これにより、キャリヤ81は、第2ロータ12bと一体に回転自在である。第2回転軸87の内周側には、第1回転軸86が相対的に回転自在に配置されている。第1〜第4支軸81c〜81fは、第1及び第2基部81a、81bの間に設けられており、左右の出力軸SL、SRと平行に延びている。
また、第1支軸81cは、第1及び第2基部81a、81bの径方向の内端部に位置しており、第2支軸81dは、第1基部81aの径方向の外端部に位置し、第2基部81b側に延びている。さらに、第3支軸81eは、第2基部81bの径方向の外端部に、第4支軸81fは、第2基部81bの第3支軸81eとの連結部分よりも径方向の内側の部位に、それぞれ位置しており、両支軸81e、81fは、第1基部81a側に延びている。さらに、3つの第1支軸81cは、第1及び第2基部81a、81bの周方向に互いに等間隔に位置しており、このことは3つの第2〜第4支軸81d〜81fのそれぞれについても同様である。また、第3及び第4支軸81e、81fは、第2基部81bの周方向の互いに異なる位置に、位置している。
前記3連ピニオンギヤ82は、第1実施形態と同様、互いに一体に形成された外歯車である第1ピニオンギヤP1D、第2ピニオンギヤP2D及び第3ピニオンギヤP3Dで構成されており、第1支軸81cに、軸受け(図示せず)を介して回転自在に支持されている。第1〜第3ピニオンギヤP1D〜P3Dの位置関係は、第1実施形態の第1〜第3ピニオンギヤP1〜P3のそれと同様である。
第1〜第3リングギヤR1D〜R3Dは、第1実施形態の第1〜第3リングギヤR1〜R3と同様の内歯車で構成されており、第1〜第3ピニオンギヤP1D〜P3Dにそれぞれ対応して、第1〜第3ピニオンギヤP1D〜P3Dの外周側にそれぞれ設けられている。また、第1リングギヤR1Dは、軸受け(図示せず)に回転自在に支持された中空の第3回転軸88、及びフランジを介して、右出力軸SRに同軸状に連結されており、右出力軸SRと一体に回転自在である。第1〜第3付加ピニオンギヤ83〜85は、外歯車で構成されている。また、第1付加ピニオンギヤ83は、第2支軸81dに、軸受け(図示せず)を介して回転自在に支持されており、第1ピニオンギヤP1D及び第1リングギヤR1Dの双方に噛み合っている。
第2リングギヤR2Dは、軸受け(図示せず)に回転自在に支持された中空の第4回転軸89及びフランジを介して、左出力軸SLに同軸状に連結されており、左出力軸SLと一体に回転自在である。第4回転軸89の内周側には、上記の第3回転軸88が相対的に回転自在に配置されている。第2付加ピニオンギヤ84は、第3支軸81eに、軸受け(図示せず)を介して回転自在に支持されており、第2ピニオンギヤP2D及び第2リングギヤR2Dの双方に噛み合っている。第3リングギヤR3Dの外周部には、外歯車であるギヤGDが形成されており、ギヤGDは、変速機出力軸のギヤ4aに噛み合っている。第3付加ピニオンギヤ85は、第4支軸81fに、軸受け(図示せず)を介して回転自在に支持されており、第3ピニオンギヤP3D及び第3リングギヤR3Dの双方に噛み合っている。
また、第1〜第3ピニオンギヤP1D〜P3Dの歯数ZP1D〜ZP3D、及び第1〜第3リングギヤR1D〜R3Dの歯数ZR1D〜ZR3Dは、第1実施形態と同様、それらの間に次式(17)及び(18)が成立するように、設定されている。
ZR1D/ZP1D>ZR3D/ZP3D>ZR2D/ZP2D
……(17)
ZP3D/ZR3D=(ZP1D/ZR1D+ZP2D/ZR2D)/2
……(18)
以上の構成の動力装置では、差動装置GSDが上述したように構成されているため、サンギヤSD、第2リングギヤR2D、第3リングギヤR3D、第1リングギヤR1D及びキャリヤ81は、互いの間で動力が伝達可能であり、それらの回転数が互いに共線関係にある。また、キャリヤ81を固定した状態で、サンギヤSDを回転させたときには、第1〜第3リングギヤR1D〜R3Dは、サンギヤSDの回転方向と同方向に回転する。この場合、各ギヤの歯数の関係から、サンギヤSDの回転数及び第1〜第3リングギヤR1D〜R3Dの回転数の間に、「サンギヤSDの回転数>第2リングギヤR2Dの回転数>第3リングギヤR3Dの回転数>第1リングギヤR1Dの回転数」の関係が成立する。以上から、回転数の関係を表す共線図において、サンギヤSD、第2リングギヤR2D、第3リングギヤR3D、第1リングギヤR1D及びキャリヤ81は、この順で並ぶ。
また、サンギヤSD及び第1ロータ11bは、第1回転軸86を介して互いに連結されているので、サンギヤSDの回転数及び第1ロータ11bの回転数は、互いに等しい。さらに、第2リングギヤR2Dは、第4回転軸89及びフランジを介して左出力軸SLに連結されているので、第2リングギヤR2Dの回転数及び左出力軸SLの回転数は、互いに等しい。また、第3リングギヤR3Dは、ギヤGD及びギヤ4aを介して変速機4の変速機出力軸に連結されているので、これらのギヤGD及びギヤ4aによる変速を無視すれば、第3リングギヤR3Dの回転数及び変速機出力軸の回転数は、互いに等しい。さらに、第1リングギヤR1Dは、第3回転軸88及びフランジを介して右出力軸SRに連結されているので、第1リングギヤR1Dの回転数及び右出力軸SRの回転数は、互いに等しい。また、キャリヤ81は、第2回転軸87を介して第2ロータ12bに連結されているので、キャリヤ81の回転数及び第2ロータ12bの回転数は、互いに等しい。
以上から、動力装置における各種の回転要素の間の回転数の関係は、例えば図15に示す共線図のように表される。図15から明らかなように、左右の出力軸SL、SRは、互いに差回転が可能である。また、図15におけるαD及びβDはそれぞれ、第1レバー比及び第2レバー比(トルク比・速度比)であり、次式(19)及び(20)で表される。
αD=ZR1D(ZR2D×ZP1D−ZSD×ZP2D)
/ZSD(ZR1D×ZP2D−ZR2D×ZP1D)……(19)
βD=ZR2D×ZP1D/(ZR1D×ZP2D−ZR2D×ZP1D)
……(20)
ここで、ZSDは、サンギヤSDの歯数である。
これらの第1及び第2リングギヤR1D、R2Dの歯数ZR1D、ZR2D、第1及び第2ピニオンギヤP1D、P2Dの歯数ZP1D、ZP2D、ならびに、サンギヤSDの歯数ZSDは、前記式(17)及び(18)による条件に加え、左右の前輪WL、WRの差回転が可能な範囲内で第1及び第2ロータ11b、12bの一方が逆転しないことを条件として、第1及び第2レバー比αD、βDが互いに等しくなるとともに比較的大きな値になるように、設定されている。
また、図15と図4〜図7との比較から明らかなように、配分装置DS5では、第1実施形態による配分装置DS1の動作が同様にして行われる。その詳細な説明については、省略する。
また、第5実施形態における各種の要素と、本発明における各種の要素との対応関係は、次のとおりである。すなわち、第5実施形態におけるサンギヤSDが、本発明における第4ギヤ及び第1外側回転要素に相当し、第5実施形態におけるキャリヤ81が、本発明における第2外側回転要素に相当するとともに、第5実施形態における第1〜第3付加ピニオンギヤ83〜85が、本発明における付加ピニオンギヤに相当する。また、第5実施形態における第2リングギヤR2Dが、本発明における第2ギヤ及び第1準外側回転要素に相当し、第5実施形態における第1リングギヤR1Dが、本発明における第1ギヤ及び第2準外側回転要素に相当するとともに、第5実施形態における第3リングギヤR3Dが、本発明における第3ギヤ及び中央回転要素に相当する。その他の対応関係は、第1実施形態と同様である。
以上のように、第5実施形態によれば、差動装置GSDが、キャリヤ81と、互いに一体の第1〜第3ピニオンギヤP1D〜P3Dから成る3連ピニオンギヤ82と、サンギヤSDと、第1〜第3リングギヤR1D〜R3Dと、第1〜第3付加ピニオンギヤ83〜85で構成されている(図14)。また、これらのサンギヤSD、第2リングギヤR2D、第3リングギヤR3D、第1リングギヤR1D及びキャリヤ81によって、5つの回転要素が構成されており、これらの5つの回転要素は、共線図において単一の直線上にこの順で並ぶ共線関係にある(図15)。このように、前述した特許文献2と同等の差動装置を、キャリヤ81、3連ピニオンギヤ82、サンギヤSD、第1〜第3リングギヤR1D〜R3D、及び第1〜第3付加ピニオンギヤ83〜85により構成でき、特許文献2の16個の部品よりも少ない計9個の部品によって、構成することができる。したがって、動力装置全体の部品点数を削減でき、装置の小型化、軽量化及び製造コストの削減を図ることができる。
また、共線図において両外側にそれぞれ位置するサンギヤSD及びキャリヤ81が、第1及び第2回転電機11、12(第1及び第2ロータ11b、12b)にそれぞれ機械的に連結されており、サンギヤSD及びキャリヤ81の隣にそれぞれ位置する第2リングギヤR2D及び第1リングギヤR1Dが、左右の出力軸SL、SRにそれぞれ機械的に連結されている。これにより、第1〜第4実施形態と同様、第1及び第2回転電機11、12から出力された回転エネルギを、差動装置GSDを介して左右の出力軸SL、SRに伝達し、両者SL、SRを適切に駆動することができるとともに、第1及び第2回転電機11、12における回転エネルギの入出力の制御によって、左右の出力軸SL、SRに分配される回転エネルギ(トルク)を適切に制御することができる。
さらに、5つの回転要素のうち、共線図において中央に位置する第3リングギヤR3Dが、エンジン3に機械的に連結されているので、第1〜第4実施形態と同様、第1及び第2回転電機11、12に必要とされるトルクを低減でき、それにより両者11、12の小型化を図ることができる。また、左右の出力軸SL、SRに、サンギヤSDではなく、第2及び第1リングギヤR2D、R1Dがそれぞれ機械的に連結されている。したがって、第1〜第4実施形態と同様、第1及び第2リングギヤR1D、R2Dの歯幅を比較的小さな値に設定することができ、それにより動力装置のさらなる小型化を図ることができる。同じ理由により、第1及び第2付加ピニオンギヤ83、84を支持する軸受けの小型化を図ることができ、このことによっても、動力装置のさらなる小型化を図ることができる。
なお、第5実施形態では、サンギヤSD及びキャリヤ81を、第1及び第2ロータ11b、12bにそれぞれ連結するとともに、第2及び第1リングギヤR2D、R1Dを、左右の出力軸SL、SRにそれぞれ連結しているが、これとは逆に、キャリヤ及びサンギヤを、第1及び第2ロータにそれぞれ連結するとともに、第1及び第2リングギヤを、左右の出力軸にそれぞれ連結してもよい。また、第5実施形態では、サンギヤSDを、第1ピニオンギヤP1Dに噛み合わせているが、第2又は第3ピニオンギヤに噛み合わせてもよい。この場合にも、回転数の関係を表す共線図におけるサンギヤ、第2リングギヤ、第3リングギヤ、第1リングギヤ及びキャリヤの並び順は、図15に示す並び順と同じであり、第1ロータ、左出力軸、変速機出力軸、右出力軸及び第2ロータとの連結関係も同じである。
次に、図16及び図17を参照しながら、本発明の第6実施形態による動力装置について説明する。この動力装置の配分装置DS6は、第5実施形態と比較して、第1付加ピニオンギヤ93が、第1ピニオンギヤP1E及び第1リングギヤR1Eの双方ではなく、サンギヤSE及び第1ピニオンギヤP1Eの双方に噛み合っている点が主に異なっている。図16及び図17において、第1実施形態と同じ構成要素については、同じ符号を付している。以下、第6実施形態による動力装置について、第1〜第5実施形態と異なる点を中心に説明する。
図16に示すように、配分装置DS6の差動装置GSEは、サンギヤSE、キャリヤ91、3連ピニオンギヤ92、第1〜第3付加ピニオンギヤ93〜95、及び第1〜第3リングギヤR1E〜R3Eで構成されている。差動装置GSEと左前輪WLの間には第1回転電機11が、差動装置GSEと右前輪WRの間には第2回転電機12が、それぞれ配置されており、サンギヤSE及び第1〜第3リングギヤR1E〜R3Eは、左右の出力軸SL、SRと同軸状に配置されている。また、サンギヤSEは、外歯車で構成されるとともに、後述する第1ピニオンギヤP1Eに対応して、第1ピニオンギヤP1Eの内周側に設けられている。さらに、サンギヤSEは、軸受け(図示せず)に回転自在に支持された中空の第1回転軸96を介して、第2ロータ12bに同軸状に連結されており、第2ロータ12bと一体に回転自在である。第1回転軸96の内周側には、右出力軸SRが、同軸状かつ相対的に回転自在に配置されている。
上記のキャリヤ91は、ドーナツ板状の第1及び第2基部91a、91bと、第1基部91aに一体に設けられた第1支軸91cと、第1及び第2基部91a、91bに一体に設けられた第2支軸91dと、第2基部91bに一体に設けられた第3支軸91e及び第4支軸91fで構成されており、軸受け(図示せず)に回転自在に支持されている。キャリヤ91の内周側には、サンギヤSE及び第1回転軸96が、相対的に回転自在に配置されている。第1〜第4支軸91c〜91f、3連ピニオンギヤ92、及び第1〜第3付加ピニオンギヤ93〜95の数はそれぞれ、3つである(それぞれ2つのみ図示)が、これに限られないことは、もちろんである。また、第1及び第2基部91a、91bは、左右の出力軸SL、SRと同軸状に配置されており、第2基部91bは、第1基部91aよりも右前輪WR側に配置されている。さらに、第2基部91bの径方向の外端部には、外歯車であるギヤGEが一体に設けられており、ギヤGEは、変速機出力軸のギヤ4aに噛み合っている。
また、第1〜第4支軸91c〜91fは、左右の出力軸SL、SRと平行に延びており、第1支軸91cは、第1基部91aの径方向の内端部に位置するとともに、第2基部91b側に延びている。第2支軸91dは、第1基部91aの径方向の外端部に位置するとともに、第2基部91bの径方向の内端部に位置しており、第1及び第2基部91a、91bの間に延びている。第3支軸91eは、第2基部91bの径方向の中央部に、第4支軸91fは、第2基部91bの第3支軸91eとの連結部分よりも径方向の外側の部位に、それぞれ位置しており、両支軸91e、91fは、第1基部91a側に延びている。さらに、3つの第1支軸91cは、第1及び第2基部91a、91bの周方向に互いに等間隔に位置しており、このことは3つの第2〜第4支軸91d〜91fのそれぞれについても同様である。また、第3及び第4支軸91e、91fは、第2基部91bの周方向の互いに異なる位置に、位置している。
前記3連ピニオンギヤ92は、第1実施形態と同様、互いに一体に形成された外歯車である第1ピニオンギヤP1E、第2ピニオンギヤP2E及び第3ピニオンギヤP3Eで構成されており、第2支軸91dに、軸受け(図示せず)を介して回転自在に支持されている。第1〜第3ピニオンギヤP1E〜P3Eの位置関係は、第1実施形態の第1〜第3ピニオンギヤP1〜P3のそれと同様である。
第1〜第3リングギヤR1E〜R3Eは、第1実施形態の第1〜第3リングギヤR1〜R3と同様の内歯車で構成されており、第1〜第3ピニオンギヤP1E〜P3Eにそれぞれ対応して、第1〜第3ピニオンギヤP1E〜P3Eの外周側にそれぞれ設けられている。また、第1リングギヤR1Eは、第1ピニオンギヤP1Eに噛み合うとともに、軸受け(図示せず)に回転自在に支持された中空の第2回転軸97、及びフランジを介して、右出力軸SRに同軸状に連結されており、右出力軸SRと一体に回転自在である。第1〜第3付加ピニオンギヤ93〜95は、外歯車で構成されている。また、第1付加ピニオンギヤ93は、第1支軸91cに、軸受け(図示せず)を介して回転自在に支持されており、サンギヤSE及び第1ピニオンギヤP1Eの双方に噛み合っている。
第2リングギヤR2Eは、軸受け(図示せず)に回転自在に支持された中空の第3回転軸98及びフランジを介して、左出力軸SLに同軸状に連結されており、左出力軸SLと一体に回転自在である。第3回転軸98の内周側には、上記の第2回転軸97が相対的に回転自在に配置されている。第2付加ピニオンギヤ94は、第3支軸91eに、軸受け(図示せず)を介して回転自在に支持されており、第2ピニオンギヤP2E及び第2リングギヤR2Eの双方に噛み合っている。第3リングギヤR3Eは、軸受け(図示せず)に回転自在に支持された中空の第4回転軸99、フランジ及び中空の第5回転軸100を介して、第1ロータ11bに同軸状に連結されており、第1ロータ11bと一体に回転自在である。第4回転軸99の内周側には上記の第3回転軸98が、第5回転軸100の内周側には左出力軸SLが、それぞれ相対的に回転自在に配置されている。
第3付加ピニオンギヤ95は、第4支軸91fに、軸受け(図示せず)を介して回転自在に支持されており、第3ピニオンギヤP3E及び第3リングギヤR3Eの双方に噛み合っている。また、第1〜第3ピニオンギヤP1E〜P3Eの歯数ZP1E〜ZP3E、及び第1〜第3リングギヤR1E〜R3Eの歯数ZR1E〜ZR3Eは、第1実施形態と同様、それらの間に次式(21)及び(22)が成立するように、設定されている。
ZR2E/ZP2E>ZR3E/ZP3E ……(21)
ZP1E/ZR1E=ZP2E/ZR2E ……(22)
以上の構成の動力装置では、差動装置GSEが上述したように構成されているため、サンギヤSE、第1リングギヤR1E、キャリヤ91、第2リングギヤR2E及び第3リングギヤR3Eは、互いの間で動力が伝達可能であり、それらの回転数が互いに共線関係にある。また、キャリヤ91を固定した状態で、サンギヤSEを回転させたときには、第1リングギヤR1Eは、サンギヤSEの回転方向と同方向に回転し、第2及び第3リングギヤR2E、R3Eは、サンギヤSEの回転方向と逆方向に回転する。この場合、各ギヤの歯数の関係から、サンギヤSEの回転数は、第1リングギヤR1Eの回転数よりも高くなり、第2リングギヤR2Eの回転数は、第3リングギヤR3Eの回転数よりも高くなる。以上から、回転数の関係を表す共線図において、サンギヤSE、第1リングギヤR1E、キャリヤ91、第2リングギヤR2E及び第3リングギヤR3Eは、この順で並ぶ。
また、サンギヤSE及び第2ロータ12bは、第1回転軸96を介して互いに連結されているので、サンギヤSEの回転数及び第2ロータ12bの回転数は、互いに等しい。さらに、第1リングギヤR1Eは、第2回転軸97及びフランジを介して右出力軸SRに連結されているので、第1リングギヤR1Eの回転数及び右出力軸SRの回転数は、互いに等しい。また、キャリヤ91は、ギヤGE及びギヤ4aを介して変速機4の変速機出力軸に連結されているので、これらのギヤGE及びギヤ4aによる変速を無視すれば、キャリヤ91の回転数及び変速機出力軸の回転数は、互いに等しい。さらに、第2リングギヤR2Eは、第3回転軸98及びフランジを介して左出力軸SLに連結されているので、第2リングギヤR2Eの回転数及び左出力軸SLの回転数は、互いに等しい。また、第3リングギヤR3Eは、第4回転軸99、フランジ及び第5回転軸100を介して第1ロータ11bに連結されているので、第3リングギヤR3Eの回転数及び第1ロータ11bの回転数は、互いに等しい。
以上から、動力装置における各種の回転要素の間の回転数の関係は、例えば図17に示す共線図のように表される。図17から明らかなように、左右の出力軸SL、SRは、互いに差回転が可能である。また、図17におけるαE及びβEはそれぞれ、第1レバー比及び第2レバー比(トルク比・速度比)であり、次式(23)及び(24)で表される。
αE=ZR1E(ZR2E×ZP3E−ZR3E×ZP2E)
/ZR3E(ZR1E×ZP2E+ZR2E×ZP1E)
……(23)
βE=ZR2E×ZP1E(ZR1E−ZSE)
/ZSE(ZR1E×ZP2E+ZR2E×ZP1E)……(24)
ここで、ZSEは、サンギヤSEの歯数である。
これらの第1〜第3リングギヤR1E〜R3Eの歯数ZR1E〜ZR3E、第1〜第3ピニオンギヤP1E〜P3Eの歯数ZP1E〜ZP3E、及びサンギヤSEの歯数ZSEは、前記式(21)及び(22)による条件に加え、左右の前輪WL、WRの差回転が可能な範囲内で第1及び第2ロータ11b、12bの一方が逆転しないことを条件として、第1及び第2レバー比αE、βEが比較的大きな値になるように、設定されている。
また、図17と図4〜図7との比較から明らかなように、配分装置DS6では、第1実施形態による配分装置DS1の動作が同様にして行われる。その詳細な説明については、省略する。
また、第6実施形態における各種の要素と、本発明における各種の要素との対応関係は、次のとおりである。すなわち、第6実施形態における第3リングギヤR3Eが、本発明における第3ギヤ及び第1外側回転要素に相当し、第6実施形態におけるサンギヤSEが、本発明における第4ギヤ及び第2外側回転要素に相当するとともに、第6実施形態における第1〜第3付加ピニオンギヤ93〜95が、本発明における付加ピニオンギヤに相当する。また、第6実施形態における第2リングギヤR2Eが、本発明における第2ギヤ及び第1準外側回転要素に相当し、第6実施形態における第1リングギヤR1Eが、本発明における第1ギヤ及び第2準外側回転要素に相当するとともに、第6実施形態におけるキャリヤ91が、本発明における中央回転要素に相当する。その他の対応関係は、第1実施形態と同様である。
以上のように、第6実施形態によれば、差動装置GSEが、キャリヤ91と、互いに一体の第1〜第3ピニオンギヤP1E〜P3Eから成る3連ピニオンギヤ92と、サンギヤSEと、第1〜第3リングギヤR1E〜R3Eと、第1〜第3付加ピニオンギヤ93〜95で構成されている(図16)。また、これらの第3リングギヤR3E、第2リングギヤR2E、キャリヤ91、第1リングギヤR1E及びサンギヤSEによって、5つの回転要素が構成されており、これらの5つの回転要素は、共線図において単一の直線上にこの順で並ぶ共線関係にある(図17)。このように、前述した特許文献2と同等の差動装置を、キャリヤ91、3連ピニオンギヤ92、サンギヤSE、第1〜第3リングギヤR1E〜R3E、及び第1〜第3付加ピニオンギヤ93〜95により構成でき、第5実施形態と同様、特許文献2の16個の部品よりも少ない計9個の部品によって、構成することができる。したがって、動力装置全体の部品点数を削減でき、装置の小型化、軽量化及び製造コストの削減を図ることができる。
また、共線図において両外側にそれぞれ位置する第3リングギヤR3E及びサンギヤSEが、第1及び第2回転電機11、12(第1及び第2ロータ11b、12b)にそれぞれ機械的に連結されており、第3リングギヤR3E及びサンギヤSEの隣にそれぞれ位置する第2リングギヤR2E及び第1リングギヤR1Eが、左右の出力軸SL、SRにそれぞれ機械的に連結されている。これにより、第1〜第5実施形態と同様、第1及び第2回転電機11、12から出力された回転エネルギを、差動装置GSEを介して左右の出力軸SL、SRに伝達し、両者SL、SRを適切に駆動することができるとともに、第1及び第2回転電機11、12における回転エネルギの入出力の制御によって、左右の出力軸SL、SRに分配される回転エネルギ(トルク)を適切に制御することができる。
さらに、5つの回転要素のうち、共線図において中央に位置するキャリヤ91が、エンジン3に機械的に連結されているので、第1〜第5実施形態と同様、第1及び第2回転電機11、12に必要とされるトルクを低減でき、それにより両者11、12の小型化を図ることができる。また、左右の出力軸SL、SRに、サンギヤSEではなく、第2及び第1リングギヤR2E、R1Eがそれぞれ機械的に連結されている。したがって、第1〜第5実施形態と同様、第1及び第2リングギヤR1E、R2Eの歯幅を比較的小さな値に設定することができ、それにより動力装置のさらなる小型化を図ることができる。同じ理由により、第2及び第3付加ピニオンギヤ94、95を支持する軸受けの小型化を図ることができ、このことによっても、動力装置のさらなる小型化を図ることができる。
なお、第6実施形態では、第3リングギヤR3E及びサンギヤSEを、第1及び第2ロータ11b、12bにそれぞれ連結するとともに、第2及び第1リングギヤR2E、R1Eを、左右の出力軸SL、SRにそれぞれ連結しているが、これとは逆に、サンギヤ及び第3リングギヤを、第1及び第2ロータにそれぞれ連結するとともに、第1及び第2リングギヤを、左右の出力軸にそれぞれ連結してもよい。また、第6実施形態では、サンギヤSEを、第1ピニオンギヤP1Eに対応させて設けるとともに、第1付加ピニオンギヤ93を、サンギヤSE及び第1ピニオンギヤP1Eに噛み合わせているが、サンギヤを、第2又は第3ピニオンギヤに対応させて設けるとともに、第1付加ピニオンギヤを、第2及び第3ピニオンギヤのうちのサンギヤが対応する1つとサンギヤとに噛み合わせてもよい。
さらに、第6実施形態では、第2付加ピニオンギヤ94を、第2ピニオンギヤP2E及び第2リングギヤR2Eの双方に、第3付加ピニオンギヤ95を、第3ピニオンギヤP3E及び第3リングギヤR3Eの双方に、それぞれ噛み合わせているが、第2及び第3付加ピニオンギヤの一方を、第1ピニオンギヤ及び第1リングギヤの双方に噛み合わせてもよい。この場合において、第2付加ピニオンギヤを第1ピニオンギヤ及び第1リングギヤの双方に噛み合わせたときには、第2リングギヤは、第2ピニオンギヤに噛み合う。また、第3付加ピニオンギヤを第1ピニオンギヤ及び第1リングギヤの双方に噛み合わせたときには、第3リングギヤは、第3ピニオンギヤに噛み合う。
また、上述したバリエーションのいずれにおいても、サンギヤ、第1〜第3リングギヤ及びキャリヤから成る5つの回転要素のうち、回転数の関係を表す共線図において両外側にそれぞれ位置する第1及び第2外側回転要素が、第1及び第2ロータにそれぞれ連結されるとともに、第1及び第2外側回転要素の隣にそれぞれ位置する第1及び第2準外側回転要素が、左右の出力軸にそれぞれ連結される。さらに、中央に位置する中央回転要素が、エンジンに連結される。また、上述したバリエーションにおいて、第1及び第2ロータなどとの連結関係を成立させるために、各ギヤの歯数を、前記式(21)及び(22)とは異なる関係に設定する必要が生じることがある。
また、第6実施形態では、回転数の関係を表す共線図におけるキャリヤ91から第2及び第1リングギヤR2E、R1Eまでの距離は、互いに等しいが、互いに異ならせてもよい。この場合、第1及び第2ピニオンギヤの歯数ならびに第1及び第2リングギヤの歯数の間に、前記式(22)が成立しなくてもよく、その分、その設定の自由度が大きくなるので、前述した第1及び第2レバー比が互いに等しくなるように、各ギヤの歯数を設定することが可能になる。
また、第1〜第6実施形態では、本発明における第1〜3ギヤを、第1〜第3リングギヤR1〜R3、R1A〜R3A、R1B〜R3B、R1C〜R3C、R1D〜R3D、R1E〜R3Eでそれぞれ構成するとともに、第4ギヤを、サンギヤS、SA、SB、SC、SD、SEで構成しているが、第1〜第4ギヤを次のようにして構成してもよい。すなわち、第1〜第3ギヤの少なくとも1つを、第1〜第3ピニオンギヤに対応する第1〜第3サンギヤの少なくとも1つで構成するとともに、第4ギヤを、第1〜第3サンギヤ及び第1〜第3リングギヤのうちの第1〜第3ギヤ以外の1つで構成してもよい。この場合、付加ピニオンギヤの数は、任意であるが、本発明による前述した効果(装置の小型化など)を得る上で、3つ以下が好ましい。
次に、図18及び図19を参照しながら、本発明の第7実施形態による動力装置について説明する。この動力装置は、第1実施形態と比較して、エンジン及び変速機(いずれも図示せず)が、配分装置DS7を介して左右の前輪WL、WRに連結されておらず、車両の左右の後輪に連結されている点が主に異なっている。図18及び図19において、第1実施形態と同じ構成要素については、同じ符号を付している。以下、第7実施形態による動力装置について、第1〜第6実施形態と異なる点を中心に説明する。
図18に示すように、配分装置DS7の差動装置GSFは、第1実施形態による差動装置GSと異なり、第3リングギヤR3を有しておらず、サンギヤSは、第1ピニオンギヤP1ではなく、第3ピニオンギヤP3に対応して、第3ピニオンギヤP3の内周側に設けられており、付加ピニオンギヤ33は、第1ピニオンギヤP1ではなく、第3ピニオンギヤP3及びサンギヤSの双方に噛み合っている。
また、第1及び第2ピニオンギヤP1、P2の歯数ZP1、ZP2、ならびに第1及び第2リングギヤR1、R2の歯数ZR1、ZR2は、それらの間に次式(25)が成立するように、設定されている。
ZR1/ZP1>ZR2/ZP2 ……(25)
以上の構成の動力装置では、差動装置GSFが上述したように構成されているため、サンギヤS、第2リングギヤR2、第1リングギヤR1及びキャリヤ31は、互いの間で動力が伝達可能であり、それらの回転数が互いに共線関係にある。また、キャリヤ31を固定した状態で、サンギヤSを回転させたときには、第1及び第2リングギヤR1、R2は、サンギヤSの回転方向と同方向に回転する。この場合、各ギヤの歯数の関係から、サンギヤSの回転数、第1及び第2リングギヤR1、R2の回転数の間に、「サンギヤSの回転数>第2リングギヤR2の回転数>第1リングギヤR1の回転数」の関係が成立する。以上から、回転数の関係を表す共線図において、サンギヤS、第2リングギヤR2、第1リングギヤR1、及びキャリヤ31は、この順で並ぶ。
また、サンギヤS、第2リングギヤR2、第1リングギヤR1及びキャリヤ31と、第1ロータ11b、左右の出力軸SL、SR及び第2ロータ12bとの連結関係は、第1実施形態と同様である。以上から、動力装置における各種の回転要素の間の回転数の関係は、例えば図19に示す共線図のように表される。図19から明らかなように、左右の出力軸SL、SRは、互いに差回転が可能である。
また、図19におけるαF及びβFはそれぞれ、第1レバー比及び第2レバー比(トルク比・速度比)であり、次式(26)及び(27)で表される。
αF=ZR1(ZR2×ZP3−ZS×ZP2)
/ZS(ZR1×ZP2−ZR2×ZP1) ……(26)
βF=ZR2×ZP1/(ZR1×ZP2−ZR2×ZP1)……(27)
これらの第1及び第2リングギヤR1、R2の歯数ZR1、ZR2、第1〜第3ピニオンギヤP1〜P3の歯数ZP1〜ZP3、ならびにサンギヤSの歯数ZSは、前記式(25)による条件に加え、左右の前輪WL、WRの差回転が可能な範囲内で第1及び第2ロータ11b、12bの一方が逆転しないことを条件として、第1及び第2レバー比αF、βFが互いに等しくなるとともに比較的大きな値になるように、設定されている。
また、図19と図4〜図7との比較から明らかなように、配分装置DS7では、第1実施形態による配分装置DS1の動作が同様にして行われる。その詳細な説明については、省略する。
また、第7実施形態における各種の要素と、本発明における各種の要素との対応関係は、次のとおりである。すなわち、第7実施形態におけるサンギヤSが、本発明における第3ギヤ及び第1外側回転要素に相当するとともに、第7実施形態におけるキャリヤ31が、本発明における第2外側回転要素に相当する。また、第7実施形態における第2リングギヤR2が、本発明における第2ギヤ及び第1準外側回転要素に相当するとともに、第7実施形態における第1リングギヤR1が、本発明における第1ギヤ及び第2準外側回転要素に相当する。
以上のように、第7実施形態によれば、差動装置GSFが、キャリヤ31と、互いに一体の第1〜第3ピニオンギヤP1〜P3から成る3連ピニオンギヤ32と、サンギヤSと、第1及び第2リングギヤR1、R2と、付加ピニオンギヤ33で構成されている(図18)。また、これらのサンギヤS、第2リングギヤR2、第1リングギヤR1及びキャリヤ31によって、4つの回転要素が構成されており、これらの4つの回転要素は、共線図において単一の直線上にこの順で並ぶ共線関係にある(図19)。このように、前述した特許文献1と同等の差動装置を、キャリヤ31、3連ピニオンギヤ32、サンギヤS、第1及び第2リングギヤR1、R2、ならびに付加ピニオンギヤ33により構成でき、特許文献1の10個の部品よりも少ない計6個の部品によって、構成することができる。したがって、動力装置全体の部品点数を削減でき、装置の小型化、軽量化及び製造コストの削減を図ることができる。
また、共線図において両外側にそれぞれ位置するサンギヤS及びキャリヤ31が、第1及び第2回転電機11、12(第1及び第2ロータ11b、12b)にそれぞれ機械的に連結されており、サンギヤS及びキャリヤ31の隣にそれぞれ位置する第2及び第1リングギヤR2、R1が、左右の出力軸SL、SRにそれぞれ機械的に連結されている。これにより、第1実施形態と同様、第1及び第2回転電機11、12から出力された回転エネルギを、差動装置GSFを介して左右の出力軸SL、SRに伝達し、両者SL、SRを適切に駆動することができるとともに、第1及び第2回転電機11、12における回転エネルギの入出力の制御によって、左右の出力軸SL、SRに分配される回転エネルギ(トルク)を適切に制御することができる。
さらに、第1実施形態と同様、左右の出力軸SL、SRに、サンギヤSではなく、第2及び第1リングギヤR2、R1がそれぞれ機械的に連結されている。したがって、第1及び第2リングギヤR1、R2の歯幅を比較的小さな値に設定することができ、それにより動力装置のさらなる小型化を図ることができる。同じ理由により、第1及び第2ピニオンギヤP1、P2を支持する軸受けの小型化を図ることができ、このことによっても、動力装置のさらなる小型化を図ることができる。
また、第7実施形態と異なり、3連ピニオンギヤ32に代えて、互いに一体の第1及び第2ピニオンギヤから成る2連ピニオンギヤを用いるとともに、これらの第1及び第2ピニオンギヤの一方(以下「一方のピニオンギヤ」という)に、付加ピニオンギヤを噛み合わせ、キャリヤ、サンギヤ、第1及び第2リングギヤによって4つの回転要素を構成した場合には、次のような不具合がある。すなわち、各ギヤを噛み合わせるには、サンギヤと、付加ピニオンギヤと、一方のピニオンギヤと、一方のピニオンギヤが噛み合う第1及び第2リングギヤの一方(以下「一方のリングギヤ」という)を、同一平面上に、径方向に並ぶように配置しなければならない。このため、サンギヤ及び一方のリングギヤの歯数の設定には、ある程度の制約がある。また、共線図において、キャリヤから一方のリングギヤまでの距離は、一方のピニオンギヤと一方のリングギヤのギヤ比で定まり、サンギヤまでの距離は、一方のピニオンギヤとサンギヤのギヤ比で定まる。このように、一方のピニオンギヤの歯数は、共線図におけるキャリヤに対するサンギヤの位置及び一方のリングギヤの位置の双方に影響を及ぼす。以上から、2連ピニオンギヤを用いた場合には、共線図におけるキャリヤに対するサンギヤと一方のリングギヤとの位置関係の設定の自由度が低くなってしまう。このような不具合は、2連ピニオンギヤを用いた場合において、第1及び第2リングギヤの一方をサンギヤとして構成し、4つの回転要素を2つのサンギヤ、キャリヤ及び1つのリングギヤで構成したときにも、同様に生じる。
これに対して、第7実施形態によれば、3連ピニオンギヤ32の第1〜第3ピニオンギヤP1〜P3が、第1リングギヤR1、第2リングギヤR2及び付加ピニオンギヤ33にそれぞれ噛み合っている。これにより、共線図において、キャリヤ31から第1リングギヤR1までの距離は、第1ピニオンギヤP1と第1リングギヤR1のギヤ比で定まり、第2リングギヤR2までの距離は、第2ピニオンギヤP2と第2リングギヤR2のギヤ比で、サンギヤSまでの距離は、第3ピニオンギヤP3とサンギヤSのギヤ比で、それぞれ定まる。このように、上述した2連ピニオンギヤを用いた場合と異なり、第1〜第3ピニオンギヤP1〜P3の歯数はそれぞれ、共線図におけるキャリヤ31に対する第1リングギヤR1、第2リングギヤR2及びサンギヤSの位置に影響を及ぼすだけで、これらの3つのギヤR1、R2、Sのうちの2つの位置に影響を及ぼすことがない。したがって、共線図におけるキャリヤ31に対するサンギヤS、第1及び第2リングギヤR1、R2の間の位置関係の設定の自由度を高めることができる。
なお、第7実施形態では、サンギヤS及びキャリヤ31を、第1及び第2ロータ11b、12bにそれぞれ連結するとともに、第2及び第1リングギヤR2、R1を、左右の出力軸SL、SRにそれぞれ連結しているが、これとは逆に、キャリヤ及びサンギヤを、第1及び第2ロータにそれぞれ連結するとともに、第1及び第2リングギヤを、左右の出力軸にそれぞれ連結してもよい。また、第7実施形態では、サンギヤSを、第3ピニオンギヤP3に対応させて設けるとともに、付加ピニオンギヤ33を、サンギヤS及び第3ピニオンギヤP3に噛み合わせているが、サンギヤを、第1又は第2ピニオンギヤに対応させて設けるとともに、付加ピニオンギヤを、第1及び第2ピニオンギヤのうちのサンギヤが対応する1つとサンギヤとに噛み合わせてもよい。
さらに、第7実施形態では、付加ピニオンギヤ33の数は1つであるが、2つ以上でもよい。ただし、本発明の効果を得る上では、2つ以下が好ましい。付加ピニオンギヤを2つ設けた場合には、もう1つの付加ピニオンギヤは、第1ピニオンギヤ及び第1リングギヤの双方、又は第2ピニオンギヤ及び第2リングギヤの双方に噛み合う。また、第7実施形態では、本発明における第1及び第2ギヤを、第1及び第2リングギヤR1、R2でそれぞれ構成しているが、第1及び第2ギヤの少なくとも1つを、この少なくとも1つに対応する第1及び第2サンギヤの少なくとも1つで構成してもよい。さらに、第7実施形態では、本発明における第3ギヤを、サンギヤSで構成しているが、第3ピニオンギヤに対応する第3リングギヤで構成してもよい。これらのバリエーションのいずれにおいても、付加ピニオンギヤの数は任意であるが、本発明の効果を得る上で、2つ以下が好ましい。
なお、本発明は、説明した第1〜第7実施形態(以下、総称して「実施形態」という)に限定されることなく、種々の態様で実施することができる。例えば、実施形態では、本発明における2つの被駆動部は、エンジン3及び変速機4が連結される左右の前輪WL、WRにそれぞれ連結された左右の出力軸SL、SRであるが、エンジン及び変速機が連結されない車両の左右の後輪にそれぞれ連結された左右の出力軸でもよく、車両の前輪及び後輪にそれぞれ連結された前後の出力軸でもよい。また、実施形態では、本発明における第1及び第2エネルギ入出力装置は、第1及び第2回転電機11、12であるが、回転エネルギを入出力可能な他の装置、例えば、油圧モータなどでもよい。さらに、実施形態では、第1及び第2回転電機11、12として、ACモータを用いているが、回転エネルギと電気エネルギの間でエネルギを変換可能な他の装置、例えばDCモータを用いてもよい。
また、実施形態では、バッテリ23が第1及び第2回転電機11、12に共用されているが、バッテリを別個に設けてもよい。さらに、実施形態では、第1及び第2回転電機11、12で回生した電力を、バッテリ23に充電しているが、キャパシタに充電してもよい。あるいは、第1及び第2回転電機11、12とは異なる他の回転電機と、この他の回転電機に連結されたフライホイールとを用い、第1及び第2回転電機11、12で回生した電力を他の回転電機で動力に変換するとともに、変換された動力を、運動エネルギとしてフライホイールに蓄積してもよい。あるいは、第1及び第2回転電機11、12で回生した電力を、他の回転電機やアクチュエータに直接、供給してもよい。あるいは、第1及び第2回転電機11、12に代えて、上述したように回転エネルギを圧力エネルギに変換可能な油圧モータを用いるとともに、この油圧モータで変換された圧力エネルギをアキュームレータに蓄積してもよい。
また、実施形態では、本発明におけるエネルギ出力装置として、ガソリンエンジンであるエンジン3を用いているが、回転エネルギを出力可能な他の装置、例えば、ディーゼルエンジンや、LPGエンジン、CNG(Compressed Natural Gas)エンジン、外燃機関、油圧モータなどを用いてもよい。あるいは、回転エネルギの出力に加え、回転エネルギの入力が可能な装置、例えば、回転電機などを用いてもよい。さらに、実施形態では、動力装置の動力源としてエンジン(3)を用いているが、エンジンを省略してもよいことはもちろんである。また、実施形態は、本発明による動力装置を、車両Vに適用した例であるが、本発明はこれに限らず、船舶や航空機などの他の輸送機関にも適用してもよい。その他、本発明の趣旨の範囲内で、細部の構成を適宜、変更することが可能である。