JP4715508B2 - 左右駆動力配分装置 - Google Patents

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Description

本発明は、自動車における左右の車輪への駆動力配分(トルク移動)の調整に用いて好適の、左右駆動力配分装置に関する。
従来より、車両の左右輪の駆動力配分状態を変更できるようにした技術が知られている(例えば特許文献1参照)。このような技術では、左右の駆動輪の間にディファレンシャルギアとともに駆動力配分機構を設け、この駆動力配分機構の作動を制御することで駆動力配分状態が制御される。
駆動力配分機構としては、左右輪のうち一方の車輪を他方の車輪よりも増速及び減速する増減速機構と、増速側の回転を他方の車輪に伝達する第1クラッチ機構と減速側の回転を他方の車輪に伝達する第2クラッチ機構とを備えている。
しかしながら、このような構成では、右輪へトルク移動する場合と左輪にトルク移動する場合とでそれぞれ異なる制御対象(クラッチ機構)が存在することになり、重量増やコスト増の要因となる。特に、制御対象として油圧クラッチ機構を適用した場合には、油圧を供給する油圧源や油圧回路等が必要になり、さらなる重量増及びコスト増を招く。また、クラッチ機構を用いるためトルク移動時にトルク損失が生じる等の課題があった。
これに対して、例えば特許文献2には、クラッチ機構の代わりにモータを用いて左右輪のトルク配分を行うようにした技術が開示されている。そして、このようにモータを用いることにより、制御対象をモータの1つのみとすることができ、制御ロジック等を簡素化することができる。
特許第2738225号公報 特許第2687052号公報
しかしながら、特許文献2に開示された技術では、制御対象をモータのみの1つにすることが可能となるものの、ディファレンシャルギアを含めたユニット全体としては大型化してしまうという課題がある。特に、特許文献2の技術では、左右輪の駆動軸の径方向に大型化してしまうという課題がある。
なお、車両前部にエンジンを搭載し、後輪を駆動するような自動車では、後輪のディファレンシャルギアは地面とフロアパネルとの間の狭い空間に設けられており、このような狭い空間に駆動力配分機構を設ける場合には、径方向に空間的な余裕がほとんどない。このため、引用文献2に開示された技術では、駆動力配分機構を後輪側に設けるのが困難となる。
本発明は、このような課題に鑑み創案されたもので、特に車軸の径方向へのサイズの小型化及び軽量化を図り、種々の車両に容易に搭載できるようにした、左右駆動力配分装置を提供することを目的とする。
本発明の左右駆動力配分装置は、それぞれ並列に且つ同軸上に配設された第1歯車機構と第2歯車機構と電動機とをそなえ、該第1歯車機構が、左右輪の一方の車輪に接続された第1サンギアと、該第1サンギアの周囲に設けられ該第1サンギアに噛合する第1プラネタリギアと、該第1プラネタリギアと同軸上に設けられるとともに該第1プラネタリギアと一体に回転する第2プラネタリギアと、該第1プラネタリギア及び該第2プラネタリギアを回転自在に軸支する第1キャリアと、該第1サンギアと同軸上に設けられ、該第2プラネタリギアと噛合するとともに該2組の歯車機構を収納するケーシングに固定された第2サンギアとをそなえ、該第2歯車機構が、該左右輪の他方の車輪に接続された第3サンギアと、該第3サンギアの周囲に設けられ該第3サンギアに噛合する第3プラネタリギアと、該第3プラネタリギアと同軸上に設けられ該第3プラネタリギアと一体に回転する第4プラネタリギアと、該第3プラネタリギア及び該第4プラネタリギアを回転自在に軸支するとともに、該第1キャリアと一体に形成された第2キャリアと、該第3サンギアと同軸上に設けられ、該第4プラネタリギアと噛合するとともに該電動機の回転軸に接続された第4サンギアとをそなえることを特徴としている(請求項1)。
また、該第1サンギアと該第3サンギアとの間に、駆動源からの駆動力が入力されるとともに該左右輪の回転数差を吸収する差動装置が介装されているのが好ましい(請求項2)。
もう一つの本発明の左右駆動力配分装置は、それぞれ並列に且つ同軸上に配設された第1歯車機構と第2歯車機構と電動機とをそなえ、該第1歯車機構が、左右輪の一方の車輪にベベルギア式差動装置の入力ギアを介して接続された接続された第1サンギアと、該第1サンギアの周囲に設けられ該第1サンギアに噛合する第1プラネタリギアと、該第1プラネタリギアと同軸上に設けられるとともに該第1プラネタリギアと一体に回転する第2プラネタリギアと、該第1プラネタリギア及び該第2プラネタリギアを回転自在に軸支する第1キャリアと、該第1サンギアと同軸上に設けられ、該第2プラネタリギアと噛合するとともに該2組の歯車機構を収納するケーシングに固定された第2サンギアとをそなえ、該第2歯車機構が、該左右輪の他方の車輪に接続された第3サンギアと、該第3サンギアの周囲に設けられ該第3サンギアに噛合する第3プラネタリギアと、該第3プラネタリギアと同軸上に設けられ該第3プラネタリギアと一体に回転する第4プラネタリギアと、該第3プラネタリギア及び該第4プラネタリギアを回転自在に軸支するとともに、該第1キャリアと一体に形成された第2キャリアと、該第3サンギアと同軸上に設けられ、該第4プラネタリギアと噛合するとともに該電動機の回転軸に接続された第4サンギアとをそなえることを特徴としている(請求項3)。
また、駆動源が車両の前部に設けられるとともに、該車両の後側の左右輪に該第1及び該第3サンギアが接続されているのが好ましい(請求項)。
また、該電動機が該ケーシングに収納されるのが好ましい(請求項)。
また、該第1サンギアと該第3サンギアとが同一歯数及び同一径に形成され、該第1プラネタリギアと該第3プラネタリギアとが同一歯数及び同一径に形成され、該第2プラネタリギアと該第4プラネタリギアとが同一歯数及び同一径に形成され、且つ、該第2サンギアと該第4サンギアとが同一歯数及び同一径に形成されるのが好ましい(請求項)。
本発明の左右駆動力配分装置によれば、装置全体を小型化することが可能となる。特に第1歯車機構と第2歯車機構と電動機とを同軸上に並べて配置するので、装置の径方向への小型化を図ることができ、車両搭載性を大幅に高めることができる。したがって、空間的余裕の少ない車両、特に車両前部にエンジンを備えた自動車の後輪側に駆動力配分装置を容易に設けることができる。
以下、図面により、本発明の第1実施形態に係る左右駆動力配分装置について説明すると、図1はその要部構成を示す模式図、図2は本発明が適用される車両の構成を示す模式図、図3は本第1実施形態の変形例について示す模式図である。
図2において、符号1は本発明が適用される車両であって、2はエンジン、3はトランスミッションである。エンジン2の駆動力はトランスミッション3を介してセンタディファレンシャル(以下、センタデフ)5に伝達され、このセンタデフ5から前輪8と後輪14とに駆動力が配分されて伝達されるようになっている。
すなわち、センタデフ5に入力された駆動力のうち、一方はフロントディファレンシャル(以下、フロントデフという)6へ出力されて、ドライブシャフト7L,7Rを介して前側の左右輪8L,8Rに伝達されるようになっており、また、残りの一方はハイポイドギア機構9,プロペラシャフト10,ハイポイドギア機構11,リアディファレンシャル(以下、リアデフという)22及びドライブシャフト13L,13Rを介して後側の左右輪14R,14Lに伝達されるようになっている。
また、この車両1のセンタデフ5には前輪8と後輪14との差動を制限することで駆動力配分を行う前後輪駆動力配分機構19が付設されている。なお、本実施形態では、前後輪駆動力配分機構19は、フロントデフ6に隣接して設けられたクラッチ機構として構成され、クラッチ機構の係合度合いを変更することにより前輪8と後輪14との間の差動状態を制限して、エンジン2から出力されたトルクを前後輪8,14に対して可変に配分できるように構成されている。
ところで、リアデフ(差動装置)22には、左後輪14Lと右後輪14Rとに伝達される駆動力配分を調整可能な左右輪駆動力配分機構(駆動力調整手段)15が付設されている。以下、図1を用いて、リアデフ22及び左右輪駆動力配分機構15の構成について説明すると、この第1実施形態では差動装置としてベベルギア式のリアデフ22が設けられている。ここで、ベベルギア式のリアデフ22は従来より広く知られた機構であって、左右のサイドギア22a,22bとデフピニオン22c,22dと入力ギア22eとから構成されている。左右のサイドギア22a,22bは互いに対向し、且つ入力ギア22eと同軸上に設けられている。
また左右のサイドギア22a,22bの間にデフピニオン22c,22dが設けられるとともに、これらのデフピニオン22c,22dは自転可能に入力ギア22eに支持されている。そして、左側のサイドギア22aに左側ドライブシャフト13Lが接続され、右側のサイドギア22bに右側ドライブシャフト13Rが接続されている。
そして、直進時には、左右のサイドギア22a,22b及びデフピニオン22c,22dが相対回転することなく一体となって回転するとともに、旋回時には、各ギアが自転することで左右のドライブシャフト13L,13Rの回転数差が吸収されるようになっている。
また、左右輪駆動力配分機構15は、それぞれ並列に配設された2つの歯車機構16,17及びモータ(電動機)18から構成されており、これらの歯車機構16,17及びモータ18はいずれもリアデフ22の回転軸(即ち、入力ギア22eの回転中心軸)と同軸上に配設されている。
このうち左輪側に配設された一方の歯車機構(第1歯車機構)16は、リアデフ22の入力ギア22eに接続された第1サンギア161と、第1サンギア161の周囲に複数設けられ、上記第1サンギア161に噛合する第1プラネタリギア162と、第1プラネタリギア162に対し同軸上に設けられるとともに上記第1プラネタリギア162と一体回転する第2プラネタリギア163と、上記第1及び第2プラネタリギア162,163を回転自在に軸支する第1キャリア164と、上記第1サンギア161と同軸上に設けられ、第2プラネタリギア163と噛合するとともに2組の歯車機構を収納するケーシング4に固定された第2サンギア165とをそなえている。
また、第1サンギア161とリアデフ22の入力ギア22eとは中空軸166を介して接続されており、これにより第1サンギア161とリアデフ12の入力ギア22eとが一体回転するようになっている。
また、中空軸166の内部には、リアデフ22のサイドギア22bに接続された右側ドライブシャフト13Rが配設されており、このドライブシャフト13Rは、第1サンギア161,第2サンギア163及び中空軸166と同軸上に配設されている。
一方、第2歯車機構17は、右側のドライブシャフト13に接続された第3サンギア171と、第3サンギア171の周囲に複数設けられて第3サンギア171に噛合する第3プラネタリギア172と、第3プラネタリギア172と一体に回転する第4プラネタリギア173と、第3及び第4プラネタリギア172,173を回転自在に軸支するとともに、第1キャリア164と一体に形成された第2キャリアと174と、第3サンギア171と同軸上に設けられ、第4プラネタリギア173と噛合する第4サンギア175とをそなえている。
また、図示するように第4サンギア175は、モータ18のロータ(回転子)18bに接続される中空軸(モータ回転軸)18cに一体に形成されている。また、中空軸18cの内部には、右側ドライブシャフト13Rが同軸上に配設されている。
また、モータ18は、2つの歯車機構16,17の車軸方向(車幅方向に)に配設されており、本実施形態では、外周側にステータ(固定子)18aが配設され、ステータ18aの内側にロータ(回転子)18bが配設されている。なお、ロータ18bを外周側に配設しステータ18aを内側に配設しても良い。
また、本実施形態においては、第1サンギア161と第3サンギア171とは同一歯数及び同一径に形成され、また、第1プラネタリギア162と該第3プラネタリギア172とも同一歯数及び同一径に形成されている。
さらに、第2プラネタリギア163と第4プラネタリギア173とは同一歯数及び同一径に形成されるとともに、第2サンギア165と第4サンギア175とは同一歯数及び同一径に形成されている。
また,第1及び第3プラネタリギ162,172と,第2及び第4プラネタリギ163,173とでは第1及び第3プラネタリギ162,172のほうが歯数が多く且つ大径に形成されている。
そして、このように構成することにより、車両の走行状況等に応じてモータ18の作動を制御することにより左右輪14L,14Rの間で駆動力配分(トルク配分)の状態を適宜変更して、一方の車輪の駆動トルクを増大または減少させることができるようになっている。なお、左右輪駆動力配分機構15の動作については後述する。
また、図2に示すように、車両1には上記左右輪駆動力配分機構15及び前後輪駆動力配分機構19の作動状態を制御する駆動力配分制御手段(ECU)20がそなえられている。このECU20には、いずれも図示しないCPU,ROM,RAM,インタフェイス等がそなえられている。また、ECU20には、車両1の走行速度を検出する車速センサ、車両のヨーレイト(ヨー運動量)を検出するヨーレイトセンサ、車両のハンドル角(操舵角)を検出するハンドル角センサ、後輪14の左右輪の車輪速をそれぞれ検出する車輪速センサ等(いずれも図示省略)が接続されている。また、これらのセンサ以外にも、エンジン回転数センサ,前後Gセンサ,横Gセンサ,スロットルポジションセンサなどの種々のセンサ類が接続されている。
そして、ECU20では、これらの各種センサによって検出された情報に基づいて、車両の走行状態に応じて左右輪駆動力配分機構15、特にモータ18に対する制御信号を設定するようになっている。
例えば、ECU20では車速とハンドル角とに基づいて車両1の走行状態に応じた左右の車輪速差の目標値(目標車輪速差)を算出するとともに、実際の左右車輪速差(実車輪速差)が目標車輪速差となるようにモータ18に対する制御信号を設定し出力するようになっている。
本発明の第1実施形態に係る左右駆動力配分装置は上述のように構成されているので、以下のような作用及び効果を奏する。
車両の直進時にはモータ18は回転せずに静止状態となり、旋回状態となると左右輪の回転数差に応じて回転する。即ち、直進時においては、左右のドライブシャフト13L,13Rの回転数が一致しているので、第1及び第2歯車機構16,17の第1及び第3サンギア161,171の回転数は一致する。したがって、第1及び第3プラネタリギア162,172も互いに等速で自転する。
一方、第1プラネタリギア162と一体の第2プラネタリギア163は、ケーシング4に固定された第2サンギア165に噛合しているので、第1プラネタリギア162が自転するとその反力により、第1プラネタリギア162は第1サンギア161の周囲を自転しながら公転する。
また、この第1プラネタリギア162を支持する第1キャリア164は、第3プラネタリギア172を支持するキャリア174と一体に構成されたシャフトであるので、当然ながら、第3プラネタリギア172は第1プラネタリギア162と同様に公転し、第4プラネタリギア173に噛合している第4サンギア175は、ケーシング4に固定された第2サンギア165と同じ回転数、即ち停止状態となる。また、第4サンギア175はモータ回転軸18cに接続されているのでモータ18は停止状態となる。
また、モータ18を積極的に停止させる、即ちモータ18をロックすることで、2つのサンギア161,171は等速回転のみしか許容されなくなり、左右輪14L,14Rが直結状態となる。これにより、リミッテッドスリップデフ(LSD)として機能を持たせることができ、トラクション性能が向上する。
一方、旋回時には、左右輪の回転数差がリアデフ12により吸収される。このとき、左右輪の回転数差に応じて2つのサンギア161,171に回転数差が生じ、この差分だけモータ回転軸18cが回転することになる。具体的には左旋回時には、右輪14Rの回転数が左輪14Lより多くなるが、この回転数差分だけ第3及び第4プラネタリギア172173の自転速度が増速されることになり、結果的にモータ18が第3サンギア171及び右側ドライブシャフトの回転方向と同じ回転方向に回転する。また、右旋回時はこれとは逆に、左輪14Lの回転数が多くなり、モータ18は左右輪の回転数差に応じた速度で、第3サンギア171及び右側ドライブシャフト13Rとは逆方向に回転する。
そして、このような旋回時には、例えば旋回外輪側のサンギア(サンギア161,171のいずれか)が増速するようにモータ18の作動を制御することで外輪側にトルクを移動することができる。具体的にはモータ回転軸18cの回転数を増大させることで、車両の旋回方向に関係なく外輪側のサンギア(即ち外輪側のドライブシャフト)が増速される。例えば図1中左方向に旋回している場合には、モータ18を増速することで外輪側としての右輪側ドライブシャフト13R及び右輪14Rが増速されて左輪14Lから右輪14Rへトルクが移動する。また、右方向に旋回している場合には、モータ18を増速することで外輪としての左輪側ドライブシャフト13L及び左輪14Lが増速されて、右輪14Rから左輪14Lへトルクが移動する。
そして、このようにモータ18の回転数を増加させることにより、車両1に旋回を促進するようなヨーモーメントが発生してアンダステアが低減され、旋回性能を向上させることができる。
また、これとは逆に旋回内輪側のサンギア161,171が増速するようにモータ18の作動を制御することで内輪側にトルクを移動することができる。この場合は、モータ18の回転数を低減することで車両の旋回方向に関係なく内輪側のサンギア161,171が増速される。これにより、旋回を抑制するようなヨーモーメントが発生してオーバステアが低減され、旋回安定性を向上できる。
なお、モータ18の回転数を減速してモータ18を停止させると、上述したロック状態となり、内輪と外輪との回転数差がなくなる。
以上詳述したように、本発明の左右駆動力配分装置によれば、モータ18の作動を制御して旋回外輪にトルクを移動することにより、旋回促進モーメントを付与して旋回性能を向上させることができる。また、旋回内輪にトルクを移動することにより、旋回抑制モーメントを付与して旋回安定性を向上させることができる。また、モータ18の作動をロックすることでLSDとしての機能し、安定性やトラクション性能を向上させることができる。
また、仮にモータ18が使用できない状況に陥ってもリアデフ22の機能を損なうことがないのでフェールセーフを図ることができる。なお、油圧クラッチ機構を用いた従来の駆動力配分装置では、油圧系統に故障が生じたときに左右輪用の2つのクラッチが同時に係合しないようなフェールセーフシステムが必要なるが、本装置ではそのようなシステムを設けることなくフェールセーフを確保することができる。
また、1つの制御対象(モータ)を制御するのみで左右輪のいずれにもトルク移動が可能となり、油圧クラッチ機構を設けたものよりも大幅に小型軽量化を図ることができ、コスト低減も図ることができる。また、モータによりトルクを付加するのでトルク移動時にトルク損失が生じない。
また、2つの歯車機構16,17に隣接してモータ18を同軸上に設けることにより、更なる小型化を図ることができるほか、特に従来の技術に対して径方向へ小型化することができる。本実施形態のように、前方にエンジン1が搭載された車両1の後輪側の駆動力配分に本装置を適用する場合、車幅方向(車軸方向)には比較的空間に余裕があるものの径方向にはほとんど余裕がないため、従来の技術のように径方向に大型化する装置では搭載が困難であったが、本発明によれば、径方向への小型化を図ることができるので、搭載性が大幅に向上するという特有の利点がある。
次に、本第1実施形態の変形例について図3を用いて説明すると、図3は駆動力が伝達されない従動輪側に本発明を適用した場合の構成を示す図であって、第1実施形態からディファレンシャルギアを省略したものであり、これ以外の構成は上述した実施形態と同様に構成されている。
即ち、この変形例では、第1サンギア161と第3サンギア171との間にディファレンシャルギアが介装されておらず、第1サンギア161が直接左後輪14Lの車軸23Lに接続され、第3サンギア171が直接右後輪14Rの車軸23Rに接続されている。
この場合、左右輪14L,14Rにはエンジン1からの駆動力は入力されないが、モータ18の作動を制御することにより、路面から左右輪14L,14Rに入力される駆動力(トルク)を左右輪間で移動することができ、左右輪の駆動力配分状態を変更することができる。
なお、この変形例では、車両前部に駆動源(エンジン)を搭載して前輪を駆動するいわゆるFF車両の後輪側に駆動力配分機構15を適用した場合を示すが、車両前部に駆動源を搭載して後輪を駆動するいわゆるFR車両の前輪側、又は、車両後部に駆動源を搭載して後輪を駆動するいわゆるRR車両の前輪側等に駆動力配分機構15を適用してもよい。
そして、このように従動輪側に左右駆動力配分機構15を設けた場合にも、モータ18の作動を制御することで、ステア特性を変更することができる。また、この変形例においても、左右駆動力配分機構15の小型化、特に径方向の小型化を図ることができるので、種々の車両に容易に搭載することができるという利点がある。
次に、本発明の第2実施形態に係る左右駆動力配分装置について説明すると、図4はその要部構成を示す模式図であって、第1実施形態に対して適用されるディファレンシャルギアのタイプが異なっている。なお、これ以外は第1実施形態と同様に構成されているので、重複する部材については同じ符号を付し説明を極力省略する。
さて、図示するように、この第2実施形態では、差動装置として遊星歯車機構式のリアデフ12が適用されており、リングギア12aに駆動トルクが入力されるようになっている。また、遊星歯車機構は、上記のリングギア12a以外にも、リングギア12aの内側に噛合するプラネタリギア12b、プラネタリギア12bを回転(自転)可能に支持するプラネタリキャリア(以下、単にキャリアと称す)12c、上記プラネタリギア12bが噛合するサンギア12dを備えている。また、キャリア12cは左側のドライブシャフト13Lに接続されるとともに第1歯車機構のサンギア161に中空軸166により接続されている。中空軸166の内部には右側ドライブシャフト13Rが配設され、右側ドライブシャフト13Rとサンギア12dとが接続されている。
そして、直進時には、上記リングギア12a,プラネタリギア12b,キャリア12c及びサンギア12dが相対回転することなく一体となって回転するとともに、旋回時には、キャリア12cがサンギア12dに対して相対回転することで左右のドライブシャフト13L,13Rの回転数差が吸収されるようになっている。
そして、このように構成することにより、第1実施形態と同様の作用効果を得ることができる。つまり、モータ18の回転を増速させることで旋回外輪にトルクを移動することができ、旋回促進モーメントを付与することができる。したがって、この場合には旋回性能を向上させることができる。また、モータ18の回転を減速することで旋回内輪にトルクを移動することができ、旋回抑制モーメントを付与することができる。したがって、この場合には、旋回安定性を向上させることができる。さらにはモータ18の作動をロックすることで、トラクションを向上させることができる。
また、このように構成した場合であっても、従来の技術よりも径方向への小型化を図ることができ、車両への搭載性が向上する。
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能である。例えば図1及び図3において、モータ18を歯車機構16とリアデフ12,22との間に設けて、歯車機構16の第2サンギア165をモータ回転軸18cに接続するとともに、他方の歯車機構17の第4サンギア175をケーシング4に固定しても良い。なお、このように構成した場合には、歯車機構16が特許請求の範囲に記載された第2歯車機構となり、歯車機構17が特許請求の範囲に記載された第1歯車機構となる。
また、上述の実施形態では、歯車162,163,172,173及びシャフト164,174からなるアッセンブリ(ユニット)をケーシング4内に複数組設けた場合について説明したが、このような歯車のユニットは、1組であっても良い。
また、上述の実施形態では、第1歯車機構16及び第2歯車機構17は、いずれも第1及び第3サンギア161,171の回転数を減速して第2及び第4サンギア165,175に伝達する減速機構として機能しているが、第2及び第4サンギア165,175に伝達される回転数を等速で伝達する機構であっても良いし、増速して伝達する機構であってもよい。
本発明の第1実施形態に係る左右駆動力配分装置の要部構成を示す模式図である。 本発明の第1実施形態に係る左右駆動力配分装置が適用される車両の構成を示す模式図である。 本発明の第1実施形態に係る左右駆動力配分装置の変形例について示す模式図である。 本発明の第2実施形態に係る左右駆動力配分装置の要部構成を示す模式図である。
符号の説明
1 車両
2 エンジン(駆動源)
3 トランスミッション
4 ケーシング
5 センタディファレンシャル(センタデフ)
6 フロントディファレンシャル(フロントデフ)
7L,7R ドライブシャフト
8 前輪
9 ベベルギア機構
10 プロペラシャフト
11 ベベルギア機構
12,22 リアディファレンシャル(差動装置)
13L,13R ドライブシャフト
14 後輪
15 左右輪駆動力配分機構(駆動力調整手段)
16 第1歯車機構
17 第2歯車機構
18 モータ(電動機)
18a ステータ(固定子)
18b ロータ(回転子)
18c 中空軸(モータ回転軸)
19 前後輪駆動力配分機構
20 駆動力配分制御手段(ECU)
161 第1サンギア
162 第1プラネタリギア
163 第2プラネタリギア
164 第1キャリア(シャフト)
165 第2サンギア
166 中空軸
171 第3サンギア
172 第3プラネタリギア
173 第4プラネタリギア
174 第2キャリア(シャフト)
175 第4サンギア

Claims (6)

  1. それぞれ並列に且つ同軸上に配設された第1歯車機構と第2歯車機構と電動機とをそなえ、
    該第1歯車機構が、
    左右輪の一方の車輪に接続された第1サンギアと、
    該第1サンギアの周囲に設けられ該第1サンギアに噛合する第1プラネタリギアと、
    該第1プラネタリギアと同軸上に設けられるとともに該第1プラネタリギアと一体に回転する第2プラネタリギアと、
    該第1プラネタリギア及び該第2プラネタリギアを回転自在に軸支する第1キャリアと、
    該第1サンギアと同軸上に設けられ、該第2プラネタリギアと噛合するとともに該2組の歯車機構を収納するケーシングに固定された第2サンギアとをそなえ、
    該第2歯車機構が、
    該左右輪の他方の車輪に接続された第3サンギアと、
    該第3サンギアの周囲に設けられ該第3サンギアに噛合する第3プラネタリギアと、
    該第3プラネタリギアと同軸上に設けられ該第3プラネタリギアと一体に回転する第4プラネタリギアと、
    該第3プラネタリギア及び該第4プラネタリギアを回転自在に軸支するとともに、該第1キャリアと一体に形成された第2キャリアと、
    該第3サンギアと同軸上に設けられ、該第4プラネタリギアと噛合するとともに該電動機の回転軸に接続された第4サンギアとをそなえる
    ことを特徴とする、左右駆動力配分装置。
  2. 該第1サンギアと該第3サンギアとの間に、駆動源からの駆動力が入力されるとともに該左右輪の回転数差を吸収する差動装置が介装されている
    ことを特徴とする、請求項1記載の左右駆動力配分装置。
  3. それぞれ並列に且つ同軸上に配設された第1歯車機構と第2歯車機構と電動機とをそなえ、
    該第1歯車機構が、
    左右輪の一方の車輪にベベルギア式差動装置の入力ギアを介して接続された接続された第1サンギアと、
    該第1サンギアの周囲に設けられ該第1サンギアに噛合する第1プラネタリギアと、
    該第1プラネタリギアと同軸上に設けられるとともに該第1プラネタリギアと一体に回転する第2プラネタリギアと、
    該第1プラネタリギア及び該第2プラネタリギアを回転自在に軸支する第1キャリアと、
    該第1サンギアと同軸上に設けられ、該第2プラネタリギアと噛合するとともに該2組の歯車機構を収納するケーシングに固定された第2サンギアとをそなえ、
    該第2歯車機構が、
    該左右輪の他方の車輪に接続された第3サンギアと、
    該第3サンギアの周囲に設けられ該第3サンギアに噛合する第3プラネタリギアと、
    該第3プラネタリギアと同軸上に設けられ該第3プラネタリギアと一体に回転する第4プラネタリギアと、
    該第3プラネタリギア及び該第4プラネタリギアを回転自在に軸支するとともに、該第1キャリアと一体に形成された第2キャリアと、
    該第3サンギアと同軸上に設けられ、該第4プラネタリギアと噛合するとともに該電動機の回転軸に接続された第4サンギアとをそなえる
    ことを特徴とする、左右駆動力配分装置。
  4. 駆動源が車両の前部に設けられるとともに、該車両の後側の左右輪に該第1及び該第3サンギアが接続されている
    ことを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の左右駆動力配分装置。
  5. 該電動機が該ケーシングに収納されている
    ことを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載の左右駆動力配分装置。
  6. 該第1サンギアと該第3サンギアとが同一歯数及び同一径に形成され、
    該第1プラネタリギアと該第3プラネタリギアとが同一歯数及び同一径に形成され、
    該第2プラネタリギアと該第4プラネタリギアとが同一歯数及び同一径に形成され、
    且つ、該第2サンギアと該第4サンギアとが同一歯数及び同一径に形成されている
    ことを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載の左右駆動力配分装置。
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