JP5976360B2 - 動力装置 - Google Patents

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Description

本発明は、移動装置を移動させるために、互いに差回転が可能に構成された2つの回転軸を駆動する動力装置に関する。
従来、この種の動力装置として、例えば特許文献1に開示されたものが知られている。この従来の動力装置は、四輪車両に適用されたものであり、動力源としての内燃機関と、内燃機関のトルクを左右の出力軸に分配する差動装置と、回転自在のキャリア部材と、キャリア部材に回転自在に支持された3連ピニオンギヤと、油圧式の増速用クラッチおよび減速用クラッチを備えている。左右の出力軸は、左右の駆動輪にそれぞれ連結されている。また、3連ピニオンギヤは、互いに異なるピッチ円を有する第1ピニオンギヤ、第2ピニオンギヤおよび第3ピニオンギヤで構成されており、これらの第1〜第3ピニオンギヤは、一体に形成されている。第1ピニオンギヤは、右出力軸と一体の第1サンギヤと噛み合っており、第2ピニオンギヤは左出力軸と一体の第2サンギヤと噛み合っている。また、第3ピニオンギヤは、回転自在の第3サンギヤと噛み合っている。さらに、増速用クラッチによって、第3サンギヤと不動のケーシングの間が接続・遮断され、減速用クラッチによって、キャリア部材とケーシングの間が接続・遮断される。
以上の構成の従来の動力装置では、その直進時、増速用クラッチの解放により第3サンギヤとケーシングの間が遮断され、減速用クラッチの解放によりキャリア部材とケーシングの間が遮断されるとともに、内燃機関のトルクが、差動装置を介して左右の出力軸に分配される。それに伴い、キャリア部材、第3サンギヤ、増速用および減速用クラッチは、内燃機関からの回転伝達に伴って空転する。また、車両の左右の旋回時、増速用および減速用クラッチの締結力を制御することによって、左右の出力軸へのトルクの分配が制御される。具体的には、車両の右旋回時には、増速用クラッチの解放により第3サンギヤとケーシングの間を遮断するとともに、減速用クラッチの締結によりキャリア部材とケーシングの間を接続することによって、キャリア部材を減速させる。これにより、右出力軸のトルクの一部が、第1サンギヤ、第1ピニオンギヤ、第2ピニオンギヤおよび第2サンギヤを介して左出力軸に伝達される結果、左出力軸に分配されるトルクが、右出力軸に対して増大する。この場合、減速用クラッチの締結度合を制御することによって、左出力軸に分配されるトルクが制御される。
一方、車両の左旋回時には、減速用クラッチの解放によりキャリア部材とケーシングの間を遮断するとともに、増速用クラッチの締結により第3サンギヤとケーシングの間を接続することによって、キャリア部材を増速させる。これにより、左出力軸のトルクの一部が、第2サンギヤ、第2ピニオンギヤ、第1ピニオンギヤおよび第1サンギヤを介して右出力軸に伝達される結果、右出力軸に分配されるトルクが、左出力軸に対して増大する。この場合、増速用クラッチの締結度合を制御することによって、右出力軸に分配されるトルクが制御される。
特許第3104157号
上述したように、従来の動力装置では、左右の出力軸へのトルクの分配制御のために、増速用および減速用クラッチが用いられており、これらの増速用および減速用クラッチは、内燃機関からの回転伝達に伴って空転する。このため、増速用および減速用クラッチとして、湿式の摩擦クラッチを用いた場合には、その潤滑油の粘性によるせん断抵抗によって、大きな引きずり損失が発生してしまう。
さらに、油圧式の増速用および減速用クラッチに油圧を供給するために、内燃機関を動力源とする油圧ポンプを用いた場合には、内燃機関の運転中、左右の出力軸へのトルクの分配制御にかかわらず、常に油圧ポンプが駆動されるため、その分、内燃機関のトルクが無駄に消費されてしまう。さらに、増速用および減速用クラッチを駆動するためのスプール弁や、ソレノイド、ストレーナなどが必要になるため、その分、装置の大型化および搭載性の低下を招いてしまう。
また、従来の動力装置では、例えば車両が高速で直進走行しているときに、その直進安定性を高めるために左右の出力軸の間の差回転を制限するには、検出された両出力軸の回転数に基づき、増速用および減速用クラッチの締結度合を制御することによって、左右の出力軸に分配されるトルクを精度良く制御しなければならない。そのため、このトルクの制御が非常に困難であるとともに、制御の高い応答性を得ることができない。
本発明は、以上のような課題を解決するためになされたものであり、損失を抑制でき、装置の小型化および搭載性の向上を図れるとともに、2つの回転軸の間の差回転の制限を容易かつ高い応答性で行うことによって、移動装置の挙動安定性を高めることができる動力装置を提供することを目的とする。
上記の目的を達成するために、請求項1に係る発明は、移動装置(実施形態における(以下、本項において同じ)車両VFR、車両VAW)を移動させるために、互いに差回転が可能に構成された2つの回転軸(左右の出力軸SRL、SRR、左右の出力軸SFL、SFR)を駆動する動力装置1、1A〜1Eであって、回転自在のキャリア部材13と、互いに一体に設けられた第1ピニオンギヤP1、第2ピニオンギヤP2および第3ピニオンギヤP3で構成され、キャリア部材13に回転自在に支持された3連ピニオンギヤ14と、第1ピニオンギヤP1に噛み合う回転自在の第1サンギヤS1と、第2ピニオンギヤP2に噛み合う回転自在の第2サンギヤS2と、第3ピニオンギヤP3に噛み合う回転自在の第3サンギヤS3と、を備え、3連ピニオンギヤ14および第1〜第3サンギヤS1〜S3は、キャリア部材13が固定された状態で3連ピニオンギヤ14が回転しているときに、第2サンギヤS2の回転数が第1サンギヤS1の回転数よりも高くなるとともに、第3サンギヤS3の回転数が第2サンギヤS2の回転数よりも高くなるように構成されており、正トルクおよび負トルクを発生可能な第1トルク発生装置(第1回転電機11)と、正トルクおよび負トルクを発生可能な第2トルク発生装置(第2回転電機12)と、をさらに備え、第3サンギヤS3は、第1トルク発生装置に連結され、第2サンギヤS2は、2つの回転軸の一方(左出力軸SRL、SFL)に連結され、第1サンギヤS1は、2つの回転軸の他方(右出力軸SRR、SFR)に連結されるとともに、キャリア部材13は、第2トルク発生装置に連結されており、第3サンギヤS3およびキャリア部材13に連結され、第3サンギヤS3とキャリア部材13の間を接続・遮断することによって2つの回転軸の間の差回転を制限するための差動制限機構16、41をさらに備えることを特徴とする。
この構成によれば、回転自在のキャリア部材に、3連ピニオンギヤが回転自在に支持されるとともに、3連ピニオンギヤを構成する互いに一体の第1〜第3ピニオンギヤに、回転自在の第1〜第3サンギヤがそれぞれ噛み合っている。また、これらの3連ピニオンギヤおよび第1〜第3サンギヤは、キャリア部材が固定された状態で3連ピニオンギヤが回転しているときに、第2サンギヤの回転数が第1サンギヤの回転数よりも高くなるとともに、第3サンギヤの回転数が第2サンギヤの回転数よりも高くなるように構成されている。以上の構成により、第3〜第1サンギヤおよびキャリア部材によって、回転数が互いに共線関係にある4つの回転要素が構成される。ここで、共線関係とは、共線図において、それらの回転数が互いに一つの同じ直線上に位置する関係のことである。また、上述した第1〜第3サンギヤの回転数の関係から、この共線図において、第3サンギヤ、第2サンギヤ、第1サンギヤおよびキャリア部材は、この順で並ぶ。
さらに、第3サンギヤは、第1トルク発生装置に連結され、第2および第1サンギヤは、2つの回転軸の一方(以下「一方の回転軸」という)および他方(以下「他方の回転軸」という)にそれぞれ連結されるとともに、キャリア部材は、第2トルク発生装置に連結されている。以上により、第1および第2トルク発生装置で発生した正トルクおよび負トルク(負荷トルク)を、第3〜第1サンギヤやキャリア部材を介して2つの回転軸に伝達し、両回転軸を適切に駆動することができる。この場合、上述したように第3〜第1サンギヤおよびキャリア部材の回転数が互いに共線関係にあるので、第1および第2トルク発生装置で発生する正トルクおよび負トルクを制御することによって、2つの回転軸に分配されるトルクを適切に制御することができる。なお、第1および第2トルク発生装置の負トルクとは、第1および第2トルク発生装置にそれぞれ連結された第3サンギヤおよびキャリア部材に対し、負荷として作用するトルクのことである。
また、前述した従来の場合と異なり、2つの回転軸に分配されるトルクを制御するために、湿式の摩擦クラッチで構成された増速用および減速用クラッチではなく、第1および第2トルク発生装置を用いるので、大きな引きずり損失が発生することがなく、したがって、損失を抑制することができる。それに加え、増速用および減速用クラッチに油圧を供給するための油圧ポンプは不要である。さらに、両クラッチを駆動するためのスプール弁や、ソレノイド、ストレーナなども不要であり、その分、動力装置の小型化および搭載性の向上を図ることができる。
また、前述した構成によれば、第3〜第1サンギヤおよびキャリア部材から成る4つの回転要素のうち、共線図において両外側に位置する回転要素、すなわち第3サンギヤとキャリア部材の間が、差動制限機構によって接続・遮断される。第3〜第1サンギヤおよびキャリア部材の回転数が共線関係にあるため、この差動制限機構による第3サンギヤとキャリア部材の間の接続によって、第3〜第1サンギヤおよびキャリア部材が一体に回転するようになるので、第2サンギヤが連結された一方の回転軸と、第1サンギヤが連結された他方の回転軸との間の差回転を制限でき、それにより、移動装置の挙動安定性を高めることができる。この場合、差動制限機構を単に接続するだけでよいので、2つの回転軸の間の差回転の制限を容易に行うことができるとともに、その高い応答性を得ることができる。
さらに、図15は、他方の回転軸の回転数が一方の回転軸の回転数よりも高い場合において、差動制限機構により第3サンギヤとキャリア部材の間を接続したときの各種の回転要素の間の回転数の関係およびトルクの釣り合い関係の一例を示す共線図である。図15では、値0を示す横線から縦線上の白丸までの距離が、各回転要素の回転数に相当する。このことは、後述する他の共線図についても同様である。図15において、RC1は、差動制限機構の接続に伴って差動制限機構から第3サンギヤに作用する反力トルクであり、RLC1およびRRC1は、この反力トルクRC1が第3サンギヤに作用するのに伴って一方の回転軸および他方の回転軸にそれぞれ作用する反力トルクである。また、RC2は、差動制限機構の接続に伴って差動制限機構からキャリア部材に作用する反力トルクであり、RLC2およびRRC2は、この反力トルクRC2がキャリア部材に作用するのに伴って一方の回転軸および他方の回転軸にそれぞれ作用する反力トルクである。
この場合、差動制限機構の接続に伴い、一方の回転軸に伝達されるトルクは、RLC1+RLC2=RC1×(X+1)+RC2×Yで表され、他方の回転軸に伝達されるトルクは、−{RRC1+RRC2}=−{RC1×X+RC2×(Y+1)}で表される。このように、回転数が低い一方の回転軸に伝達されるトルクが増大するとともに、回転数が高い他方の回転軸に制動トルクが作用する結果、2つの回転軸の間の差回転が低減され、制限される。また、第3サンギヤとキャリア部材の間を接続することから明らかなように、差動制限機構から第3サンギヤおよびキャリア部材にそれぞれ作用する反力トルクRC1およびRC2は、その方向が互いに反対であるだけで、互いに同じ大きさである。
以上から、差動制限機構の接続により2つの回転軸の間の差回転を制限するように両回転軸にそれぞれ作用する差動制限トルクの総和(以下「総差動制限トルク」という)は、これらの反力トルクRC1およびRC2を代表してRC1を用いると、RC1×(X+1)+RC1×Y+{RC1×X+RC1×(Y+1)}=2×RC1×(X+Y+1)で表される。
また、図16は、他方の回転軸の回転数が一方の回転軸の回転数よりも高い場合において、上述した本発明と異なり、前述した4つの回転要素のうち、一方の回転軸に連結された第2サンギヤと、他方の回転軸に連結された第1サンギヤとの間を差動制限機構によって接続したと仮定したときの各種の回転要素の間の回転数の関係およびトルクの釣り合い関係の一例を示す共線図である。図16において、RC1およびRC2は、差動制限機構の接続に伴って、差動制限機構から第2および第1サンギヤにそれぞれ作用する反力トルクである。
この場合、差動制限機構の接続に伴い、一方の回転軸および他方の回転軸に伝達されるトルクは、RC1および−RC2でそれぞれ表される。このように、回転数が低い一方の回転軸に伝達されるトルクが増大するとともに、回転数が高い他方の回転軸に制動トルクが作用する結果、2つの回転軸の間の差回転が制限される。また、第1および第2サンギヤの間を接続することから明らかなように、差動制限機構から第2および第1サンギヤにそれぞれ作用する反力トルクRC1およびRC2は、その方向が互いに反対であるだけで、互いに同じ大きさである。
以上から、第2および第1サンギヤの間の差動制限機構の接続により作用する総差動制限トルクは、これらの反力トルクRC1およびRC2を代表してRC1を用いると、RC1+RC1=2×RC1で表される。これに対して、前述したように、本発明(図15)の総差動制限トルクは、2×RC1×(X+Y+1)で表されることから明らかなように、第2および第1サンギヤの間を接続した場合(図16)よりも大きくなる。
さらに、図17は、他方の回転軸の回転数が一方の回転軸の回転数よりも高い場合において、本発明と異なり、4つの回転要素のうち、第3サンギヤと第1サンギヤの間を差動制限機構によって接続したと仮定したときの各種の回転要素の間の回転数の関係およびトルクの釣り合い関係の一例を示す共線図である。図17において、RC1は、差動制限機構の接続に伴って差動制限機構から第3サンギヤに作用する反力トルクであり、RLC1およびRRC1は、この反力トルクRC1が第3サンギヤに作用するのに伴って一方の回転軸および他方の回転軸にそれぞれ作用する反力トルクである。また、RC2は、差動制限機構の接続に伴って差動制限機構から第1サンギヤを介して他方の回転軸に作用する反力トルクであり、RLC2およびRSC2は、この反力トルクRC2が第1サンギヤに作用するのに伴って一方の回転軸および第3サンギヤにそれぞれ作用する反力トルクである。
この場合、差動制限機構の接続に伴い、一方の回転軸に伝達されるトルクは、RLC1−RLC2=RC1×(X+1)−RC2×(X+1)/Xで表され、他方の回転軸に伝達されるトルクは、−(RC2+RRC1)=−(RC2+RC1×X)で表される。このように、回転数が低い一方の回転軸に伝達されるトルクが増大するとともに、回転数が高い他方の回転軸に制動トルクが作用する結果、2つの回転軸の間の差回転が制限される。また、第3および第1サンギヤの間を接続することから明らかなように、差動制限機構から第3サンギヤおよび第1サンギヤにそれぞれ作用する反力トルクRC1およびRC2は、その方向が互いに反対であるだけで、互いに同じ大きさである。
以上から、第3および第1サンギヤの間の差動制限機構の接続により2つの回転軸に作用する総差動制限トルクは、これらの反力トルクRC1およびRC2を代表してRC1を用いると、RC1×(X+1)−RC1×(X+1)/X+(RC1+RC1×X)=2×RC1×{X+1−(X+1)/(2×X)}で表される。これに対して、本発明(図15)における総差動制限トルクは、2×RC1×(X+Y+1)で表されることから明らかなように、第3および第1サンギヤの間を差動制限機構で接続した場合(図17)よりも大きくなる。このことは、図示しないものの、4つの回転要素(第3〜第1サンギヤおよびキャリア部材)のうちの、これまでに述べた2つの回転要素の組合わせ以外の組合わせに係る2つの回転要素を差動制限機構で接続した場合にも、同様に当てはまる。また、図15〜図17は、他方の回転軸の回転数が一方の回転軸の回転数よりも高い場合の例であるが、これとは逆に、一方の回転軸の回転数が他方の回転軸の回転数よりも高い場合にも、本発明における総差動制限トルクは、より大きくなる。
以上のように、4つの回転要素のうち、共線図において両外側に位置する回転要素である第3サンギヤとキャリア部材の間を接続することによって、最も大きな総差動制限トルクを得ることができる。これにより、2つの回転軸の間の差回転を制限するために差動制限機構に必要とされる反力トルクを低減できるので、差動制限機構の小型化を図ることができ、それにより、動力装置のさらなる小型化および搭載性の向上を図ることができる。
また、本発明によれば、回転数が互いに共線関係にある4つの回転要素を構成するために、3連ピニオンギヤ、第1〜第3サンギヤおよびキャリア部材から成る歯車装置を用いている。このため、例えば、これらの4つの回転要素を構成するために、シングルピニオンタイプの2つの遊星歯車装置の組合わせを用いた場合と比較して、部品点数を削減できるとともに、リングギヤを有していない分、歯車装置の径方向の寸法を小さくすることができる。
請求項2に係る発明は、請求項1に記載の動力装置1A、1Dにおいて、第3サンギヤS3と差動制限機構41の間の動力伝達経路上に設けられ、差動制限機構41による第3サンギヤS3とキャリア部材13の間の接続に伴って発生した差動制限機構41の反力トルクを、増大させた状態で第3サンギヤS3に伝達する第1動力伝達機構(ギヤ51、ギヤ52)と、キャリア部材13と差動制限機構41の間の動力伝達経路上に設けられ、差動制限機構41による第3サンギヤS3とキャリア部材13の間の接続に伴って発生した差動制限機構41の反力トルクを、増大させた状態でキャリア部材13に伝達する第2動力伝達機構(ギヤ53、ギヤ54)と、をさらに備えることを特徴とする。
図15を用いた請求項1に係る発明の説明から明らかなように、差動制限機構による第3サンギヤとキャリア部材の間の接続に伴って発生した差動制限機構の反力トルクが大きいほど、前述した総差動制限トルク(2つの回転軸の差回転を制限するトルク)は、より大きくなる。上述した構成によれば、この差動制限機構の反力トルクが、第1動力伝達機構によって増大した状態で第3サンギヤに伝達されるとともに、第2動力伝達機構によって増大した状態でキャリア部材に伝達される。したがって、総差動制限トルクを増大させることができるので、2つの回転軸の間の差回転を制限するために差動制限機構に必要とされる反力トルクをさらに低減することができ、それにより、差動制限機構のさらなる小型化を図ることができる。この場合、例えば、第1および第2動力伝達機構として、ギヤなどの比較的小型の機構を採用したときには、両者を設けるために必要なスペースは、上記の差動制限機構の小型化によって削減されるスペースよりも小さい。したがって、差動制限機構の小型化により、動力装置のさらなる小型化および搭載性の向上を図ることができる。
請求項3に係る発明は、請求項1または2に記載の動力装置1C〜1Eにおいて、互いに差回転が可能な第1回転体(サンギヤSD)、第2回転体(キャリアCD)および第3回転体(リングギヤRD)を有する差動装置Dと、正トルクを発生可能であり、第1および第2トルク発生装置とは別個に設けられた第3トルク発生装置(エンジン3)と、をさらに備え、第1回転体は第2サンギヤS2に連結され、第2回転体は、第1サンギヤS1と2つの回転軸の他方の間の動力伝達経路上に設けられるとともに、第3回転体は、第3トルク発生装置に連結されることを特徴とする。
この構成によれば、差動装置の第1〜第3回転体が、互いに差回転が可能に構成されている。また、第1回転体は、前述した第2サンギヤに連結され、第2サンギヤを介して一方の回転軸に連結されている。第2回転体は、第1サンギヤと他方の回転軸との間の動力伝達経路上に設けられており、第3回転体は、第3トルク発生装置に連結されている。さらに、この第3トルク発生装置は、第1および第2トルク発生装置とは別個に設けられている。以上により、2つの回転軸に、第1および第2トルク発生装置からの正トルクに加え、第3トルク発生装置からの正トルクが伝達されるので、第1および第2トルク発生装置に必要とされるトルクを低減でき、それにより両装置の小型化を図ることができる。
請求項4に係る発明は、請求項1ないし3のいずれかに記載の動力装置1、1A〜1Eにおいて、第1および第2トルク発生装置が回転電機であることを特徴とする。
この構成によれば、第1および第2トルク発生装置として一般的な回転電機を用いるので、格別の装置を用いることなく、動力装置を容易かつより安価に構成することができる。また、前述したように2つの回転軸へのトルクの分配を制御する場合において、第1および第2トルク発生装置で負トルクを発生させるにあたり、回転電機により動力を電力に変換することができる。このため、例えば、動力装置を車両に適用した場合には、変換した電力を車両用の補機に供給することによって、補機の電源を充電するための発電機の作動負荷および作動頻度を低下させることができる。
前記目的を達成するために、請求項5に係る発明は、移動装置(実施形態における(以下、本項において同じ)車両VFR、車両VAW)を移動させるために、互いに差回転が可能に構成された2つの回転軸(左右の出力軸SRL、SRR、左右の出力軸SFL、SFR)を駆動する動力装置1、1A〜1Eであって、互いの間で動力を伝達可能な第1要素(第3サンギヤS3)、第2要素(第2サンギヤS2)、第3要素(第1サンギヤS1)および第4要素(キャリア部材13)を有し、第1〜第4要素の回転数が共線図において互いに同じ一つの直線上に位置する所定の共線関係にあり、第1要素を固定した状態で第2〜第4要素を回転させたときに、第2〜第4要素が同方向に回転するとともに、第4要素の回転数が第2および第3要素の回転数よりも高くなるように構成された歯車装置GSと、正トルクおよび負トルクを発生可能な第1トルク発生装置(第1回転電機11)と、正トルクおよび負トルクを発生可能な第2トルク発生装置(第2回転電機12)と、を備え、第1要素は、第1トルク発生装置に連結され、第2要素は、2つの回転軸の一方(左出力軸SRL、SFL)に連結され、第3要素は、2つの回転軸の他方(右出力軸SRR、SFR)に連結されるとともに、第4要素は、第2トルク発生装置に連結されており、第1および第4要素に連結され、第1要素と第4要素の間を接続・遮断することによって2つの回転軸の間の差回転を制限するための差動制限機構16、41をさらに備えることを特徴とする。
この構成によれば、歯車装置の第1〜第4要素が、互いの間で動力を伝達可能になっている。また、第1〜第4要素の回転数は、共線図において互いに同じ一つの直線上に位置する所定の共線関係にあり、第1要素を固定した状態で第2〜第4要素を回転させたときに、第2〜第4要素が同方向に回転するとともに、第4要素の回転数が第2および第3要素の回転数よりも高くなる。さらに、第1要素は、第1トルク発生装置に連結され、第2および第3要素は、2つの回転軸の一方(以下「一方の回転軸」という)および他方(以下「他方の回転軸」という)にそれぞれ連結されるとともに、第4要素は、第2トルク発生装置に連結されている。
以上により、第1および第2トルク発生装置で発生した正トルクおよび負トルクを、歯車装置を介して2つの回転軸に伝達し、両回転軸を適切に駆動することができる。この場合、上述したように第1〜第4要素の回転数が互いに共線関係にあるので、第1および第2トルク発生装置で発生する正トルクおよび負トルクを制御することによって、2つの回転軸に分配されるトルクを適切に制御することができる。なお、第1および第2トルク発生装置の負トルクとは、第1および第2トルク発生装置にそれぞれ連結された第1要素および第4要素に対し、負荷として作用するトルクのことである。
また、前述した従来の場合と異なり、2つの回転軸に分配されるトルクを制御するために、湿式の摩擦クラッチで構成された増速用および減速用クラッチではなく、第1および第2トルク発生装置を用いるので、大きな引きずり損失が発生することがなく、したがって、損失を抑制することができる。それに加え、増速用および減速用クラッチに油圧を供給するための油圧ポンプは不要である。さらに、両クラッチを駆動するためのスプール弁や、ソレノイド、ストレーナなども不要であり、その分、動力装置の小型化および搭載性の向上を図ることができる。
また、前述した構成によれば、回転数が共線関係にある第1〜第4要素のうちの第1要素と第4要素の間が、差動制限機構によって接続・遮断される。これにより、第1〜第4要素が一体に回転するようになるので、第2要素が連結された一方の回転軸と、第3要素が連結された他方の回転軸の間の差回転を制限でき、それにより、移動装置の挙動安定性を高めることができる。この場合、差動制限機構を単に接続するだけでよいので、2つの回転軸の間の差回転の制限を容易に行うことができるとともに、その高い応答性を得ることができる。
また、第1〜第4要素の回転数が共線関係にあることと、前述したように第1要素を固定した状態で第2〜第4要素を回転させたときに、第2〜第4要素が同方向に回転するとともに、第4要素の回転数が第2および第3要素の回転数よりも高くなることから明らかなように、第1〜第4要素の回転数の関係を表す共線図において、第1要素および第4要素は両外側に位置する。したがって、これらの第1要素と第4要素の間を差動制限機構で接続することによって、前述した請求項1に係る発明の作用・効果の説明から明らかなように、総差動制限トルク(2つの回転軸の間の差回転を制限するように両回転軸にそれぞれ作用する差動制限トルクの総和)を最も大きくすることができる。これにより、2つの回転軸の間の差回転を制限するために差動制限機構に必要とされる反力トルクを低減できるので、差動制限機構の小型化を図ることができ、それにより、動力装置のさらなる小型化および搭載性の向上を図ることができる。
請求項6に係る発明は、請求項5に記載の動力装置1A、1Dにおいて、第1要素と差動制限機構41の間の動力伝達経路上に設けられ、差動制限機構41による第1要素と第4要素の間の接続に伴って発生した差動制限機構41の反力トルクを、増大させた状態で第1要素に伝達する第1動力伝達機構(ギヤ51、ギヤ52)と、第4要素と差動制限機構41の間の動力伝達経路上に設けられ、差動制限機構41による第1要素と第4要素の間の接続に伴って発生した差動制限機構41の反力トルクを、増大させた状態で第4要素に伝達する第2動力伝達機構(ギヤ53、ギヤ54)と、をさらに備えることを特徴とする。
請求項5に係る発明は、請求項1に係る発明の第3〜第1サンギヤおよびキャリア部材を第1〜第4要素にそれぞれ上位概念化したものである。このため、請求項1に係る発明と同様、差動制限機構による第1要素と第4要素の間の接続に伴って発生した差動制限機構の反力トルクが大きいほど、総差動制限トルクはより大きくなる。上述した構成によれば、この差動制限機構の反力トルクが、第1動力伝達機構によって増大した状態で第1要素に伝達されるとともに、第2動力伝達機構によって増大した状態で第4要素に伝達される。したがって、総差動制限トルクを増大させることができるので、2つの回転軸の間の差回転を制限するために差動制限機構に必要とされる反力トルクをさらに低減することができ、それにより、差動制限機構のさらなる小型化を図ることができる。この場合、例えば、第1および第2動力伝達機構として、ギヤなどの比較的小型の機構を採用したときには、両者を設けるために必要なスペースは、上記の差動制限機構の小型化によって削減されるスペースよりも小さい。したがって、差動制限機構の小型化により、動力装置のさらなる小型化および搭載性の向上を図ることができる。
請求項7に係る発明は、請求項5または6に記載の動力装置1C〜1Eにおいて、互いに差回転が可能な第5要素(サンギヤSD)、第6要素(キャリアCD)および第7要素(リングギヤRD)を有する差動装置Dと、正トルクを発生可能であり、第1および第2トルク発生装置とは別個に設けられた第3トルク発生装置(エンジン3)と、をさらに備え、第5要素は、第2要素に連結され、第6要素は、第3要素と2つの回転軸の他方との間の動力伝達経路上に設けられるとともに、第7要素は、第3トルク発生装置に連結されることを特徴とする。
この構成によれば、差動装置の第5〜第7要素が、互いに差回転が可能に構成されている。また、第5要素は、前述した歯車装置の第2要素に連結され、第2要素を介して一方の回転軸に連結されている。第6要素は、歯車装置の第3要素と他方の回転軸との間の動力伝達経路上に設けられており、第7要素は、第3トルク発生装置に連結されている。さらに、この第3トルク発生装置は、第1および第2トルク発生装置とは別個に設けられている。以上により、2つの回転軸に、第1および第2トルク発生装置からの正トルクに加え、第3トルク発生装置からの正トルクが伝達されるので、第1および第2トルク発生装置に必要とされるトルクを低減でき、それにより両装置の小型化を図ることができる。
請求項8に係る発明は、請求項5ないし7のいずれかに記載の動力装置1、1A〜1Eにおいて、第1および第2トルク発生装置が回転電機であることを特徴とする。
この構成によれば、第1および第2トルク発生装置として一般的な回転電機を用いるので、格別の装置を用いることなく、動力装置を容易かつより安価に構成することができる。また、前述したように2つの回転軸へのトルクの分配を制御する場合において、第1および第2トルク発生装置で負トルクを発生させるにあたり、回転電機により動力を電力に変換することができる。このため、例えば、動力装置を車両に適用した場合には、変換した電力を車両用の補機に供給することによって、補機の電源を充電するための発電機の作動負荷および作動頻度を低下させることができる。
本発明の第1実施形態による動力装置を、これを適用した車両の後輪とともに概略的に示す図である。 図1に示す動力装置のECUなどを示すブロック図である。 図1に示す動力装置における各種の回転要素の間の回転数の関係およびトルクの釣り合い関係を、車両の直進時で且つ減速走行以外の走行状態について示す共線図である。 図1に示す動力装置における各種の回転要素の間の回転数の関係およびトルクの釣り合い関係を、車両の直進時で且つ減速走行中について示す共線図である。 図1に示す動力装置における各種の回転要素の間の回転数の関係およびトルクの釣り合い関係を、右旋回用の第3ヨーモーメント増大制御中について示す共線図である。 図1に示す動力装置における各種の回転要素の間の回転数の関係およびトルクの釣り合い関係を、右旋回用の第3ヨーモーメント低減制御中について示す共線図である。 本発明の第2実施形態による動力装置を、これを適用した車両の左右の後輪とともに概略的に示す図である。 本発明の第3実施形態による動力装置を、これを適用した車両の左右の後輪とともに概略的に示す図である。 本発明の第4実施形態による動力装置を、これを適用した車両の左右の前輪とともに概略的に示す図である。 図9に示す動力装置における各種の回転要素の間の回転数の関係およびトルクの釣り合い関係を、右旋回用の第3ヨーモーメント増大制御について示す共線図である。 本発明の第5実施形態による動力装置を、これを適用した車両の左右の前輪とともに概略的に示す図である。 本発明の第6実施形態による動力装置を、これを適用した車両の左右の前輪とともに概略的に示す図である。 本発明の第4〜第6実施形態の第1変形例による動力装置を適用したFR式の車両を概略的に示す図である。 本発明の第4〜第6実施形態の第2変形例による動力装置を適用した全輪駆動式の車両を概略的に示す図である。 本発明における各種の回転要素の間の回転数の関係およびトルクの釣り合い関係の一例を示す共線図である。 本発明と対比される比較例における各種の回転要素の間の回転数の関係およびトルクの釣り合い関係の一例を示す共線図である。 図16とは別の比較例における各種の回転要素の間の回転数の関係およびトルクの釣り合い関係の一例を示す共線図である。
以下、図面を参照しながら、本発明の好ましい実施形態について詳細に説明する。図1に示す第1実施形態による動力装置1は、四輪の車両(図示せず)の左右の出力軸SRL、SRRを駆動するためのものであり、車両の後部に搭載されている。これらの左右の出力軸SRL、SRRは、互いに同軸状に配置されるとともに、左右の後輪WRL、WRRにそれぞれ連結されている。また、車両の前部には、動力源としての内燃機関(以下「エンジン」という。図示せず)が搭載されている。このエンジンは、ガソリンエンジンであり、車両の左右の前輪に変速機(いずれも図示せず)などを介して連結されており、左右の前輪を駆動する。
動力装置1は、歯車装置GS、動力源としての第1回転電機11および第2回転電機12を備えている。歯車装置GSは、第1および第2回転電機11、12と左右の出力軸SRL、SRRとの間でトルクを伝達するためのものであり、キャリア部材13、3連ピニオンギヤ14、第1サンギヤS1、第2サンギヤS2および第3サンギヤS3などで構成されている。
キャリア部材13は、ドーナツ板状の基部13aと、3連ピニオンギヤ14を支持するための4つの支軸13b(2つのみ図示)で構成されている。キャリア部材13は、軸受け(図示せず)に回転自在に支持されており、左右の出力軸SRL、SRRの周りに配置されている。各支軸13bは、基部13aに一体に取り付けられており、基部13aから軸線方向に延びている。また、4つの支軸13bは、基部13aの円周方向に等間隔で配置されている。
3連ピニオンギヤ14は、互いに一体に形成された第1ピニオンギヤP1、第2ピニオンギヤP2および第3ピニオンギヤP3で構成されている。3連ピニオンギヤ14の数Nは、値4であり(2つのみ図示)、各3連ピニオンギヤ14は、支軸13bに回転自在に支持されている。第1〜第3ピニオンギヤP1〜P3は、キャリア部材13の軸線と平行な同一軸線上に、右側からこの順で配置されている。なお、3連ピニオンギヤ14の数Nおよび支軸13bの数は値4に限らず、任意である。
第1〜第3ピニオンギヤP1〜P3は、互いに異なるピッチ円直径を有しており、第1ピニオンギヤP1の歯数(以下「第1ピニオン歯数」という)ZP1、第2ピニオンギヤP2の歯数(以下「第2ピニオン歯数」という)ZP2、および第3ピニオンギヤP3の歯数(以下「第3ピニオン歯数」という)ZP3は、それらの最小歯数Mに正の整数を乗算した値(M、2M、3M…のいずれか)に、設定されている。具体的には、第1および第2ピニオン歯数ZP1、ZP2は、最小歯数M=17に設定されており、第3ピニオン歯数ZP3は、2M=34に設定されている。これにより、第1〜第3ピニオンギヤP1〜P3の歯の位相を、周方向に互いに揃えることができる。それにより、3連ピニオンギヤ14の組付時に、第1〜第3ピニオンギヤP1、P2およびP3をそれぞれ、後述する第1サンギヤS1、第2サンギヤS2および第3サンギヤS3に噛み合わせる際に、3連ピニオンギヤ14の周方向(回転方向)の位置決めが不要になり、組付性を向上させることができる。
また、第1〜第3ピニオンギヤP1、P2およびP3には、前記第1サンギヤS1、第2サンギヤS2および第3サンギヤS3がそれぞれ噛み合っており、第1〜第3サンギヤS1〜S3は、互いに異なるピッチ円直径を有している。第1サンギヤS1は右出力軸SRRに、第2サンギヤS2は左出力軸SRLに、それぞれ一体に取り付けられており、第3サンギヤS3は、回転軸15に一体に取り付けられている。この回転軸15は、軸受け(図示せず)に回転自在に支持されており、その内側には、左出力軸SRLが、相対的に回転自在に配置されている。
また、第1サンギヤS1の歯数(以下「第1サンギヤ歯数」という)ZS1、第2サンギヤS2の歯数(以下「第2サンギヤ歯数」という)ZS2、および第3サンギヤS3の歯数(以下「第3サンギヤ歯数」という)ZS3は、3連ピニオンギヤ14の数N(本実施形態では値4)に正の整数を乗算した値(N、2N、3N…のいずれか)に、設定されている。具体的には、第1および第3サンギヤ歯数ZS1、ZS3は、8N=32に設定されており、第2サンギヤ歯数ZS2は、7N=28に設定されている。これにより、第1〜第3サンギヤS1〜S3の歯の位相を、4つの3連ピニオンギヤ14と噛み合う位置において、互いに一致させることができる。それにより、第1〜第3ピニオンギヤP1〜P3の歯の位相を互いに異ならせずに済むので、3連ピニオンギヤ14の製造コストを削減することができる。
なお、互いに噛み合う第1ピニオンギヤP1および第1サンギヤS1のモジュールを互いに一致させ、第2ピニオンギヤP2および第2サンギヤS2のモジュールを互いに一致させるとともに、第3ピニオンギヤP3および第3サンギヤS3のモジュールを互いに一致させるのであれば、第1〜第3ピニオンギヤP1〜P3および第1〜第3サンギヤS1〜S3のモジュールをすべて一致させる必要はない。
前記第1回転電機11は、ACモータであり、複数の鉄芯やコイルなどで構成された第1ステータ11aと、複数の磁石などで構成された第1ロータ11bを有している。この第1ステータ11aは、不動のケースCAに固定されている。第1ロータ11bは、第1ステータ11aに対向するように配置され、前述した回転軸15に一体に取り付けられており、回転軸15および第3サンギヤS3とともに回転自在である。第1回転電機11では、第1ステータ11aに電力が供給されると、供給された電力は、動力に変換され、第1ロータ11bに出力される(力行)。また、第1ロータ11bに動力が入力されると、この動力は、電力に変換され、第1ステータ11aに出力される(回生)。
さらに、第1ステータ11aは、第1パワードライブユニット(以下「第1PDU」という)21を介して、充電・放電可能なバッテリ23に電気的に接続されており、バッテリ23との間で電気エネルギを授受可能である。この第1PDU21は、インバータなどの電気回路で構成されている。図2に示すように、第1PDU21には、後述するECU2が電気的に接続されている。このECU2は、第1PDU21を制御することによって、第1ステータ11aに供給する電力と、第1ステータ11aで発電する電力と、第1ロータ11bの回転数を制御する。
また、第2回転電機12も、第1回転電機11と同様、ACモータであり、第2ステータ12aおよび第2ロータ12bを有している。これらの第2ステータ12aおよび第2ロータ12bはそれぞれ、第1ステータ11aおよび第1ロータ11bと同様に構成されている。さらに、第2ロータ12bは、前述したキャリア部材13の基部13aに一体に取り付けられており、キャリア部材13とともに回転自在である。さらに、第2回転電機12は、第1回転電機11と同様、第2ステータ12aに供給された電力を動力に変換し、第2ロータ12bに出力可能であり、第2ロータ12bに入力された動力を電力に変換し、第2ステータ12aに出力可能である。
また、第2ステータ12aは、第2パワードライブユニット(以下「第2PDU」という)22を介して、バッテリ23に電気的に接続されており、バッテリ23との間で電気エネルギを授受可能である。この第2PDU22は、第1PDU21と同様、インバータなどの電気回路で構成されており、第2PDU22には、ECU2が電気的に接続されている。ECU2は、第2PDU22を制御することによって、第2ステータ12aに供給する電力と、第2ステータ12aで発電する電力と、第2ロータ12bの回転数を制御する。
以下、第1ステータ11a(第2ステータ12a)に供給された電力を動力に変換し、第1ロータ11b(第2ロータ12b)から出力することを適宜「力行」という。また、第1ロータ11b(第2ロータ12b)に入力された動力を用いて第1ステータ11a(第2ステータ12a)で発電し、当該動力を電力に変換することを適宜「回生」という。
以上の構成の動力装置1では、キャリア部材13に回転自在に支持された3連ピニオンギヤ14の第1〜第3ピニオンギヤP1〜P3に、第1〜第3サンギヤS1〜S3がそれぞれ噛み合っていることと、第1〜第3ピニオン歯数ZP1〜ZP3および第1〜第3サンギヤ歯数ZS1〜ZS3が前述したように設定されていることから、キャリア部材13、および第1〜第3サンギヤS1〜S3は、互いの間で動力を伝達可能であるとともに、それらの回転数が互いに共線関係にある。ここで、共線関係とは、共線図において回転数が互いに一つの同じ直線上に位置する関係のことである。また、キャリア部材13を固定した状態で、3連ピニオンギヤ14を回転させたときには、第1〜第3サンギヤS1〜S3はいずれも、3連ピニオンギヤ14の回転方向と反対方向に回転するとともに、第3サンギヤS3の回転数は第2サンギヤS2の回転数よりも高くなり、第2サンギヤS2の回転数は第1サンギヤS1の回転数よりも高くなる。したがって、共線図において、第3〜第1サンギヤS3〜S1およびキャリア部材13は、この順で並ぶ。
また、第1ロータ11bおよび第3サンギヤS3は、回転軸15を介して互いに連結されている。したがって、第1ロータ11bおよび第3サンギヤS3の回転数は互いに等しい。さらに、第2サンギヤS2は、左出力軸SRLに直結されているので、両者S1、SRLの回転数は互いに等しく、第1サンギヤS1は、右出力軸SRRに直結されているので、両者S1、SRRの回転数は互いに等しい。また、キャリア部材13および第2ロータ12bは、互いに直結されているので、両者13、12bの回転数は互いに等しい。
以上から、第3〜第1サンギヤS3〜S1、キャリア部材13、左右の出力軸SRL、SRR、第1および第2ロータ11b、12bの間の回転数の関係は、例えば、図3に示す共線図のように表される。図3から明らかなように、左右の出力軸SRL、SRRは、互いに差回転が可能である。
また、図3におけるαおよびβはそれぞれ、第1レバー比および第2レバー比であり、次式(1)および(2)で表される。
α={1-(ZP2/ZS2)×(ZS3/ZP3)}/{(ZP2/ZS2)×(ZS3/ZP3)-(ZP1/ZS1)×(ZS3/ZP3)} ……(1)
β=(ZP1×ZS2)/(ZS1×ZP2−ZP1×ZS2) ……(2)
さらに、動力装置1には、左右の出力軸SRL,SRRの間の差回転を制限するための差動制限機構16が設けられている。この差動制限機構16は、油圧式の摩擦クラッチで構成されており、ドーナツ板状のインナー16aおよびアウター16bを有している。これらのインナー16aおよびアウター16bは、キャリア部材13や第1〜第3サンギヤS1〜S3と同軸状に配置されており、インナー16aは前述した回転軸15に、アウター16bはキャリア部材13の4つの支軸13bに、それぞれ一体に取り付けられている。差動制限機構16の締結度合はECU2によって制御され、それにより、回転軸15とキャリア部材13の間、すなわち、第3サンギヤS3とキャリア部材13の間が、接続・遮断される。
また、図2に示すように、ECU2には、操舵角センサ31から車両のハンドル(図示せず)の操舵角θを表す検出信号が、車速センサ32から車両の車速VPを表す検出信号が、アクセル開度センサ33から車両のアクセルペダル(図示せず)の操作量(以下「アクセル開度」という)APを表す検出信号が、入力される。ECU2にはさらに、電流電圧センサ34から、バッテリ23に入出力される電流・電圧値を表す検出信号が入力される。ECU2は、電流電圧センサ34からの検出信号に基づいて、バッテリ23の充電状態を算出する。
ECU2は、I/Oインターフェース、CPU、RAMおよびROMなどから成るマイクロコンピュータで構成されている。ECU2は、上述した各種のセンサ31〜34からの検出信号に応じ、ROMに記憶された制御プログラムに従って、差動制限機構16、第1および第2回転電機11、12を制御する。これにより、動力装置1の各種の動作が行われる。以下、車両の直進時および左右の旋回時における動力装置1の動作について説明する。
・直進時
車両の直進時で、かつ定速走行中または加速走行中には、第1および第2回転電機11、12の双方で力行を行うとともに、バッテリ23から第1および第2ステータ11a、12aに供給される電力を制御する。図3は、この場合における各種の回転要素の間の回転数の関係およびトルクの釣り合い関係を示している。同図において、TM1およびTM2はそれぞれ、第1および第2回転電機11、12での力行に伴って第1および第2ロータ11b、12bに発生した出力トルク(以下、それぞれ「第1モータ出力トルク」「第2モータ出力トルク」という)である。また、RLM1およびRRM1はそれぞれ、第1回転電機11での力行に伴って左出力軸SRLおよび右出力軸SRRに作用する反力トルクであり、RLM2およびRRM2はそれぞれ、第2回転電機12での力行に伴って左出力軸SRLおよび右出力軸SRRに作用する反力トルクである。
この場合、左出力軸SRLに伝達されるトルク(以下「左出力軸伝達トルク」という)は、RLM1−RLM2(RLM1>RLM2)で表されるともに、右出力軸SRRに伝達されるトルク(以下「右出力軸伝達トルク」という)は、RRM2−RRM1(RRM2>RRM1)で表され、左右の出力軸SRL、SRRが、左右の後輪WRL、WRRとともに正転方向に駆動される。また、左右の出力軸伝達トルクが互いに同じ要求トルクになるように、第1および第2ステータ11a、12aに供給する電力が制御される。この要求トルクは、検出されたアクセル開度APに応じ、所定のマップ(図示せず)を検索することによって算出される。さらに、上述した第1および第2回転電機11、12の力行を実行するための実行条件として、例えば、第1および第2回転電機11、12によるエンジンのアシスト中(以下「モータアシスト中」という)、または、エンジンを用いずに第1および第2回転電機11、12のみによる車両の駆動中(以下「EV走行中」という)であり、かつ、算出されたバッテリ23の充電状態が下限値よりも大きいという条件が用いられる。この場合、バッテリ23の充電状態が下限値よりも大きいということは、バッテリ23が放電可能であることを表している。
また、車両の直進時で、かつ減速走行中には、第1および第2回転電機11、12の双方で回生を行い、回生した電力をバッテリ23に充電するとともに、当該回生電力を制御する。図4は、この場合における各種の回転要素の間の回転数の関係およびトルクの釣り合い関係を示している。同図において、TG1およびTG2はそれぞれ、第1および第2回転電機11、12での回生に伴って第1および第2ロータ11b、12bに発生した制動トルク(以下、それぞれ「第1モータ制動トルク」「第2モータ制動トルク」という)である。また、RLG1およびRRG1はそれぞれ、第1回転電機11での回生に伴って左出力軸SRLおよび右出力軸SRRに作用する反力トルクであり、RLG2およびRRG2はそれぞれ、第2回転電機12での回生に伴って左出力軸SRLおよび右出力軸SRRに作用する反力トルクである。
この場合、左出力軸伝達トルクは、−RLG1+RLG2(RLG1>RLG2)で表されるとともに、右出力軸伝達トルクは、−RRG2+RRG1(RRG2>RRG1)で表され、左右の出力軸SRL、SRRに制動トルクが作用し、車両が減速される。また、左右の出力軸SRL、SRRに作用する制動トルクが互いに同じになるように、第1および第2回転電機11、12で回生する電力が制御される。さらに、上述した第1および第2回転電機11、12の回生を実行するための実行条件として、例えば、バッテリ23の充電状態が上限値よりも小さいという条件が用いられる。この場合、バッテリ23の充電状態が上限値よりも小さいということは、バッテリ23が充電可能であることを表している。
・右旋回時
車両の右旋回時において、車両を右旋回させる右回りのヨーモーメントを増大させるときには、右旋回用のヨーモーメント増大制御が実行され、このヨーモーメント増大制御として、第1〜第4ヨーモーメント増大制御が用意されている。以下、これらの第1〜第4ヨーモーメント増大制御について順に説明する。まず、第1ヨーモーメント増大制御中には、第1および第2回転電機11、12の双方で力行を行うとともに、第1モータ出力トルクTM1が第2モータ出力トルクTM2よりも大きくなるように、第1および第2ステータ11a、12aに供給される電力を制御する。
これにより、前述した図3に示すトルクの釣り合い関係から明らかなように、左出力軸伝達トルクが右出力軸伝達トルクよりも大きくなる結果、車両の右回りのヨーモーメントが増大する。この場合、第1および第2ステータ11a、12aに供給する電力は、検出された操舵角θや車速VP、アクセル開度APに応じて制御される。なお、第1ヨーモーメント増大制御を実行するための実行条件として、例えば、モータアシスト中(第1および第2回転電機11、12によるエンジンのアシスト中)またはEV走行中(第1および第2回転電機11、12のみでの車両の駆動中)であり、かつバッテリ23の充電状態が下限値よりも大きいという条件が用いられる。
第2ヨーモーメント増大制御中には、第1および第2回転電機11、12の双方で回生を行うとともに、第2モータ制動トルクTG2が第1モータ制動トルクTG1よりも大きくなるように、第1および第2回転電機11、12で回生される電力を制御する。
これにより、前述した図4に示すトルクの釣り合い関係から明らかなように、右出力軸SRRに作用する制動トルクが左出力軸SRLのそれよりも大きくなる結果、車両の右回りのヨーモーメントが増大する。この場合、第1および第2回転電機11、12で回生する電力は、操舵角θや車速VPなどに応じて制御される。なお、第2ヨーモーメント増大制御を実行するための実行条件として、例えば、車両の減速走行中であり、かつバッテリ23の充電状態が上限値よりも小さいという条件が用いられる。
第3ヨーモーメント増大制御中には、第1回転電機11で力行を行うとともに、第2回転電機12で回生を行う。図5は、この場合における各種の回転要素の間の回転数の関係およびトルクの釣り合い関係を示している。図3を用いて前述したように、図5におけるTM1は、第1モータ出力トルクであり、RLM1およびRRM1はそれぞれ、第1回転電機11での力行に伴って左出力軸SRLおよび右出力軸SRRに作用する反力トルクである。また、図4を用いて前述したように、図5におけるTG2は、第2モータ制動トルクであり、RLG2およびRRG2はそれぞれ、第2回転電機12での回生に伴って左出力軸SRLおよび右出力軸SRRに作用する反力トルクである。
この場合、左出力軸伝達トルクは、RLM1+RLG2で表されるとともに、右出力軸伝達トルクは、−(RRM1+RRG2)で表される。このように、左出力軸伝達トルクが増大するとともに、右出力軸SRRに制動トルクが作用する結果、車両の右回りのヨーモーメントが増大する。この場合にも、操舵角θや車速VP、アクセル開度APに応じて、第1ステータ11aに供給する電力および第2回転電機12で回生する電力が制御される。
なお、第3ヨーモーメント増大制御を実行するための実行条件として、例えば、次の第1増大条件または第2増大条件が用いられる。
第1増大条件:エンジンによる車両の駆動中であり、かつバッテリ23の充電状態が上限値以上であること。
第2増大条件:エンジンによる車両の駆動中であり、充電状態が上限値よりも小さく、かつ第2回転電機12に要求される制動トルクが所定の第1上限トルク以上であること。
この場合、第1増大条件の成立時であり、バッテリ23の充電状態が上限値以上のときには、バッテリ23を充電できないので、第2回転電機12で回生した電力がすべて、バッテリ23に充電されずに、第1ステータ11aに供給される。一方、第2増大条件の成立時には、第2回転電機12で回生した電力の一部がバッテリ23に充電されるとともに、残りが第1ステータ11aに供給される。この場合、要求される制動トルクに対する第2モータ制動トルクTG2の不足分を補うように、第1モータ出力トルクTM1が制御される。
第4ヨーモーメント増大制御中には、第1回転電機11に対してゼロトルク制御を実行するとともに、第2回転電機12で回生を行い、回生した電力をバッテリ23に充電する。このゼロトルク制御は、第1回転電機11で回生が行われることによる引きずり損失が発生するのを回避するためのものである。この場合、第2モータ制動トルクTG2のみが発生するので、図5から明らかなように、左出力軸伝達トルクはRLG2で表されるとともに、右出力軸伝達トルクは−RRG2で表される。このように、左出力軸伝達トルクが増大するとともに、右出力軸SRRに制動トルクが作用する結果、車両の右回りのヨーモーメントが増大する。換言すれば、右出力軸SRRのトルクの一部が、第2モータ制動トルクTG2を反力として、左出力軸SRLに伝達される。この場合にも、操舵角θや車速VP、アクセル開度APに応じて、第2回転電機12で回生する電力が制御される。なお、第4ヨーモーメント増大制御を実行するための実行条件として、例えば、エンジンによる車両の駆動中であり、バッテリ23の充電状態が上限値よりも小さく、かつ第2回転電機12に要求される制動トルクが前記第1上限トルクよりも小さいという条件が用いられる。
また、車両の右旋回時において、車両を右旋回させる右回りのヨーモーメントを低減するときには、右旋回用のヨーモーメント低減制御が実行され、このヨーモーメント低減制御として、第1〜第4ヨーモーメント低減制御が用意されている。以下、これらの第1〜第4ヨーモーメント低減制御について順に説明する。まず、第1ヨーモーメント低減制御中には、第1および第2回転電機11、12の双方で力行を行うとともに、第2モータ出力トルクTM2が第1モータ出力トルクTM1よりも大きくなるように、第1および第2ステータ11a、12aに供給される電力を制御する。
これにより、前述した図3に示すトルクの釣り合い関係から明らかなように、右出力軸伝達トルクが左出力軸伝達トルクよりも大きくなる結果、車両の右回りのヨーモーメントが低減される。この場合、第1および第2ステータ11a、12aに供給する電力は、操舵角θや車速VP、アクセル開度APに応じて制御される。なお、第1ヨーモーメント低減制御を実行するための実行条件として、例えば、モータアシスト中またはEV走行中であり、かつバッテリ23の充電状態が下限値よりも大きいという条件が用いられる。
第2ヨーモーメント低減制御中には、第1および第2回転電機11、12の双方で回生を行うとともに、両回転電機11、12で回生した電力をバッテリ23に充電する。この場合、第1モータ制動トルクTG1が第2モータ制動トルクTG2よりも大きくなるように、第1および第2回転電機11、12で回生される電力を制御する。
これにより、前述した図4に示すトルクの釣り合い関係から明らかなように、左出力軸SRLに作用する制動トルクが右出力軸SRRに作用する制動トルクよりも大きくなる結果、車両の右回りのヨーモーメントが低減される。この場合、第1および第2回転電機11、12で回生する電力は、操舵角θや車速VPに応じて制御される。なお、第2ヨーモーメント低減制御を実行するための実行条件として、例えば、車両の減速走行中であり、かつバッテリ23の充電状態が上限値よりも小さいという条件が用いられる。
第3ヨーモーメント低減制御中には、第1回転電機11で回生を行うとともに、第2回転電機12で力行を行う。図6は、この場合における各種の回転要素の間の回転数の関係およびトルクの釣り合い関係を示している。図4を用いて前述したように、図6におけるTG1は、第1モータ制動トルクであり、RLG1およびRRG1はそれぞれ、第1回転電機11での回生に伴って左出力軸SRLおよび右出力軸SRRに作用する反力トルクである。また、図3を用いて前述したように、図6におけるTM2は、第2モータ出力トルクであり、RLM2およびRRM2はそれぞれ、第2回転電機12での力行に伴って左出力軸SRLおよび右出力軸SRRに作用する反力トルクである。
この場合、左出力軸伝達トルクは、−(RLG1+RLM2)で表されるとともに、右出力軸伝達トルクは、RRG1+RRM2で表される。このように、左出力軸SRLに制動トルクが作用するとともに、右出力軸伝達トルクが増大する結果、車両の右回りのヨーモーメントが低減される。この場合にも、操舵角θや車速VPに応じて、第1回転電機11で回生する電力および第2ステータ12aに供給する電力が制御される。
なお、第3ヨーモーメント低減制御を実行するための実行条件として、例えば、次の第1低減条件または第2低減条件が用いられる。
第1低減条件:車両の減速走行中であり、かつバッテリ23の充電状態が上限値以上であること。
第2低減条件:車両の減速走行中であり、充電状態が上限値よりも小さく、かつ第1回転電機11に要求される制動トルクが所定の第2上限トルク以上であること。
この場合、第1低減条件の成立時で、バッテリ23の充電状態が上限値以上のときには、バッテリ23を充電できないので、第1回転電機11で回生した電力がすべて、バッテリ23に充電されずに、第2ステータ12aに供給される。一方、第2低減条件の成立時には、第1回転電機11で回生した電力の一部がバッテリ23に充電されるとともに、残りが第2ステータ12aに供給される。この場合、要求される制動トルクに対する第1モータ制動トルクTG1の不足分を補うように、第2モータ出力トルクTM2が制御される。
第4ヨーモーメント低減制御中には、第1回転電機11で回生を行うとともに、第2回転電機12に対してゼロトルク制御を実行する。この場合、第1モータ制動トルクTG1のみが発生するので、図6から明らかなように、左出力軸伝達トルクは−RLG1で表されるとともに、右出力軸伝達トルクはRRG1で表される。このように、左出力軸SRLに制動トルクが作用するとともに、右出力軸伝達トルクが増大する結果、車両の右回りのヨーモーメントが低減される。換言すれば、左出力軸SRLのトルクの一部が、第1モータ制動トルクTG1を反力として、右出力軸SRRに伝達される。この場合にも、操舵角θや車速VPに応じて、第1回転電機11で回生する電力が制御される。なお、第4ヨーモーメント低減制御を実行するための実行条件として、例えば、車両の減速走行中であり、バッテリ23の充電状態が上限値よりも小さく、かつ第1回転電機11に要求される制動トルクが前記第2上限トルクよりも小さいという条件が用いられる。
なお、車両の左旋回時、車両を左旋回させる左回りのヨーモーメントを増大させるときには、左旋回用のヨーモーメント増大制御が実行され、左回りのヨーモーメントを低減するときには、左旋回用のヨーモーメント低減制御が実行される。これらの左旋回用のヨーモーメント増大制御およびヨーモーメント低減制御はそれぞれ、前述した右旋回用のヨーモーメント増大制御およびヨーモーメント低減制御とほぼ同様にして実行されるので、その詳細な説明については省略する。
また、上述した車両の直進時、および左右の旋回時、基本的には、前述した差動制限機構16によって、第3サンギヤS3とキャリア部材13の間を遮断した状態に保持する。これにより、図3に示す共線図から明らかなように、第3サンギヤS3およびキャリア部材13は、同図に示す共線関係を満たす範囲で、互いに差回転可能に保持され、同様に、左右の出力軸SRL、SRRも互いに差回転可能に保持される。
一方、例えば、車両の急旋回時や、高速直進走行時には、車両の挙動安定性を高めるべく、左右の出力軸SRL,SRRの間の差回転を制限するために、第3サンギヤS3とキャリア部材13の間を接続するように、差動制限機構16を制御する。図3などに示すように、第3〜第1サンギヤS3〜S1およびキャリア部材13の回転数が共線関係にあるため、この差動制限機構16の接続に伴って差動制限機構16から第3サンギヤS3およびキャリア部材13にそれぞれ作用する反力トルクは、第3〜第1サンギヤS3〜S1およびキャリア部材13を一体に回転させるように作用し、左右の出力軸SRL、SRRに対して、両出力軸SRL、SRRの間の差回転を制限するように作用する。その結果、左右の出力軸SRL、SRRの間の差回転が制限されるので、車両の急旋回時にはオーバーステアが抑制されるとともに、車両の高速直進走行時には直進性が高められ、車両の挙動安定性が高められる。
この場合、前述した図15を用いた本発明の説明から明らかなように、差動制限機構16から第3サンギヤS3およびキャリア部材13に作用する反力トルクが大きいほど、左右の出力軸SRL、SRRの間の差回転を制限するように両出力軸SRL、SRRに作用する差動制限トルクの総和(以下「総差動制限トルク」という)は、より大きくなる。したがって、差動制限機構16の締結度合の制御により、差動制限機構16の反力トルクを調整することによって、総差動制限トルクを制御することができるので、左右の出力軸SRL、SRRの間の差回転の制限度合を制御することができる。
また、第1実施形態における各種の要素と、本発明における各種の要素との対応関係は、次のとおりである。すなわち、第1実施形態における左右の出力軸SRL、SRRが、本発明における2つの回転軸の一方および他方にそれぞれ相当するとともに、第1実施形態における第1および第2回転電機11、12が、本発明における第1および第2トルク発生装置にそれぞれ相当する。また、第1実施形態における第3〜第1サンギヤS3〜S1およびキャリア部材13が、本発明における歯車装置の第1〜第4要素にそれぞれ相当する。さらに、第1実施形態における第1および第2モータトルクTM1、TM2が、本発明における正トルクに相当するとともに、第1実施形態における第1および第2モータ制動トルクTG1、TG2が、本発明における負トルクに相当する。
以上のように、第1実施形態によれば、回転自在のキャリア部材13に、3連ピニオンギヤ14が回転自在に支持されるとともに、3連ピニオンギヤ14を構成する互いに一体の第1〜第3ピニオンギヤP1〜P3に、回転自在の第1〜第3サンギヤS1〜S3がそれぞれ噛み合っている。また、第3〜第1サンギヤS3〜S1およびキャリア部材13は、それらの回転数が互いに共線関係にあり、共線図において、この順で並ぶ(図3など参照)。
さらに、第3サンギヤS3は、第1回転電機11に連結され、第2および第1サンギヤS2、S1は、左右の出力軸SRL、SRRにそれぞれ連結されるとともに、キャリア部材13は、第2回転電機12に連結されている。以上により、第1および第2モータ出力トルクTM1、TM2ならびに第1および第2モータ制動トルクTG1、TG2を、第3〜第1サンギヤS3〜S1やキャリア部材13を介して左右の出力軸SRL、SRRに伝達し、両出力軸SRL、SRRを適切に駆動することができる。この場合、第3〜第1サンギヤS3〜S1およびキャリア部材13の回転数が互いに共線関係にあるので、図3〜図6を用いて説明したように、第1および第2モータ出力トルクTM1、TM2ならびに第1および第2モータ制動トルクTG1、TG2を制御することによって、左右の出力軸SRL、SRRに分配されるトルクを適切に制御することができる。
また、前述した従来の場合と異なり、左右の出力軸SRL、SRRに分配されるトルクを制御するために、湿式の摩擦クラッチで構成された増速用および減速用クラッチではなく、第1および第2回転電機11、12を用いるので、前述したゼロトルク制御によって大きな引きずり損失が発生することがなく、したがって、損失を抑制することができる。それに加え、増速用および減速用クラッチに油圧を供給するための油圧ポンプは不要である。さらに、両クラッチを駆動するためのスプール弁や、ソレノイド、ストレーナなども不要であり、その分、動力装置1の小型化および搭載性の向上を図ることができる。
さらに、回転数が互いに共線関係にある第3〜第1サンギヤS3〜S1およびキャリア部材13のうち、第3サンギヤS3とキャリア部材13の間が、差動制限機構16によって接続・遮断される。これにより、第3〜第1サンギヤS3〜S1およびキャリア部材13が一体に回転するようになるので、第2サンギヤS2が連結された左出力軸SRLと、第1サンギヤS1が連結された右出力軸SRRとの間の差回転を制限でき、それにより、車両の挙動安定性を高めることができる。この場合、差動制限機構16を単に接続するだけでよいので、左右の出力軸SRL、SRRの間の差回転の制限を容易に行うことができるとともに、その高い応答性を得ることができる。
さらに、第3〜第1サンギヤS3〜S1およびキャリア部材13のうち、共線図において両外側に位置する第3サンギヤS3とキャリア部材13の間を接続するので、最も大きな総差動制限トルクを得ることができる。これにより、左右の出力軸SRL、SRRの間の差回転を制限するために差動制限機構16に必要とされる反力トルクを低減できるので、差動制限機構16の小型化を図ることができ、それにより、動力装置1のさらなる小型化および搭載性の向上を図ることができる。
また、回転数が互いに共線関係にある4つの回転要素を構成するために、キャリア部材13、3連ピニオンギヤ14および第1〜第3サンギヤS1〜S3から成る歯車装置GSが用いられる。このため、例えば、これらの4つの回転要素を構成するために、シングルピニオンタイプの2つの遊星歯車装置の組合わせで歯車装置を構成した場合と比較して、部品点数を削減できるとともに、リングギヤを有していない分、歯車装置GSの径方向の寸法を小さくすることができる。
さらに、第1および第2回転電機11、12を用いるので、格別の装置を用いることなく、動力装置1を容易かつより安価に構成することができる。さらに、前述したように左右の出力軸SRL、SRRへのトルクの分配を制御する場合において、第1および第2モータ制動トルクTG1、TG2を発生させるにあたり、第1および第2回転電機11、12により動力を電力に変換することができる。このため、例えば、変換した電力を車両用の補機に供給することによって、補機の電源を充電するための発電機の作動負荷および作動頻度を低下させることができる。
次に、図7を参照しながら、本発明の第2実施形態による動力装置1Aについて説明する。この動力装置1Aは、第1実施形態と比較して、第1ロータ11bおよび差動制限機構41と第3サンギヤS3との間の動力伝達経路、および、第2ロータ12bおよび差動制限機構41とキャリア部材13との間の動力伝達経路に、減速装置がそれぞれ設けられている点のみが異なっている。図7において、第1実施形態と同じ構成要素については、同じ符号を付している。以下、第1実施形態と異なる点を中心に説明する。
第1ロータ11bは、前述した回転軸15には取り付けられておらず、第1ロータ11bおよび回転軸15にはそれぞれ、ギヤ51およびギヤ52が一体に取り付けられており、これらのギヤ51、52は互いに噛み合っている。ギヤ51の歯数は、ギヤ52の歯数よりも小さな値に設定されている。第1回転電機11の動力は、両ギヤ51、52によって減速された状態で、第3サンギヤS3に伝達される。また、第2ロータ12bは、キャリア部材13には取り付けられておらず、第2ロータ12bおよびキャリア部材13の基部13aにはそれぞれ、ギヤ53およびギヤ54が一体に取り付けられており、これらのギヤ53、54は互いに噛み合っている。ギヤ53の歯数は、ギヤ54の歯数よりも小さな値に設定されている。第2回転電機12の動力は、両ギヤ53、54によって減速された状態で、キャリア部材13に伝達される。上記のギヤ51および52のギヤ比と、ギヤ53および54のギヤ比は、互いに同じ値に設定されている。
また、差動制限機構41は、第1実施形態と同様、摩擦式のクラッチで構成されており、インナー41aおよびアウター41bを有している。第1実施形態と異なり、このインナー41aは、回転軸15ではなく、第1ロータ11bに一体に取り付けられており、アウター41bは、キャリア部材13の4つの支軸13bではなく、第2ロータ12bに一体に取り付けられている。
さらに、差動制限機構41の締結度合は前述したECUによって制御され、それにより、第1および第2ロータ11b、12bの間が接続・遮断される。この場合、第1ロータ11bが、ギヤ51、ギヤ52および回転軸15を介して第3サンギヤS3に連結されていることと、第2ロータ12bが、ギヤ53およびギヤ54を介してキャリア部材13に連結されていることから明らかなように、差動制限機構41により、第1および第2ロータ11b、12bの間が接続・遮断されるのに伴って、第3サンギヤS3とキャリア部材13の間が、接続・遮断される。
また、第2実施形態における各種の要素と、本発明における各種の要素との対応関係は、次のとおりである。すなわち、第2実施形態におけるギヤ51および52が、本発明における第1動力伝達機構に相当するとともに、第2実施形態におけるギヤ53および54が、本発明における第2動力伝達機構に相当する。その他の対応関係については、第1実施形態と同様である。
以上のように、第2実施形態によれば、第1回転電機11が、ギヤ51およびギヤ52から成る減速装置を介して第3サンギヤS3に連結されており、第2回転電機12が、ギヤ53およびギヤ54から成る減速装置を介してキャリア部材13に連結されている。これにより、第1および第2モータ出力トルクTM1、TM2ならびに第1および第2モータ制動トルクTG1、TG2を、増大させた状態で第3サンギヤS3およびキャリア部材13にそれぞれ伝達できるので、第1および第2回転電機11、12の小型化を図ることができる。
また、第1実施形態と同様、例えば、車両の急旋回時や、高速直進走行時には、左右の出力軸SRL,SRRの間の差回転を制限するために、第3サンギヤS3とキャリア部材13の間を接続するように、差動制限機構41を制御する。それに伴い、差動制限機構41からの反力トルクは、第3〜第1サンギヤS3〜S1およびキャリア部材13を一体に回転させるように作用し、左右の出力軸SRL、SRRに対して、両出力軸SRL、SRRの間の差回転を制限するように作用する。したがって、左右の出力軸SRL、SRRの間の差回転を制限でき、ひいては、車両の挙動安定性を高めることができる。この場合にも、第1実施形態と同様、差動制限機構41の締結度合を制御することによって、総差動制限トルク(左右の出力軸SRL、SRRの間の差回転を制限するように作用する差動制限トルクの総和)を制御することができるので、両出力軸SRL、SRRの間の差回転の制限度合を制御することができる。
さらに、第1実施形態と異なり、差動制限機構41が、ギヤ51および52を介して第3サンギヤS3に、ギヤ53および54を介してキャリア部材13に、連結されている。第1実施形態の説明で述べたように、総差動制限トルクは、差動制限機構41から第3サンギヤS3およびキャリア部材13に作用する反力トルクが大きいほど、より大きくなる。第2実施形態によれば、これらのギヤ51〜54によって、差動制限機構41からの反力トルクを増大させた状態で第3サンギヤS3およびキャリア部材13に伝達できるので、左右の出力軸SRL、SRRの間の差回転を制限するために差動制限機構41に必要とされる反力トルクを低減でき、それにより、差動制限機構41のさらなる小型化を図ることができる。この場合、ギヤ51〜54を設けるために必要なスペースは、上記の差動制限機構41の小型化によって削減されるスペースよりも小さい。したがって、差動制限機構41の小型化により、動力装置1Aのさらなる小型化および搭載性の向上を図ることができる。その他、第1実施形態による効果、すなわち損失の抑制などの効果を、同様に得ることができる。
次に、図8を参照しながら、本発明の第3実施形態による動力装置1Bについて説明する。この動力装置1Bは、第1実施形態と比較して、第1ロータ11bと第3サンギヤS3の間の動力伝達経路、および、第2ロータ12bとキャリア部材13の間の動力伝達経路に、遊星歯車式の第1減速装置RG1および第2減速装置RG2がそれぞれ設けられている点のみが異なっている。図8において、第1実施形態と同じ構成要素については、同じ符号を付している。以下、第1実施形態と異なる点を中心に説明する。
この第1減速装置RG1は、シングルピニオンタイプの遊星歯車装置であり、第1サンギヤSR1と、第1サンギヤSR1の外周に設けられた第1リングギヤRR1と、両ギヤSR1、RR1に噛み合う複数の第1ピニオンギヤPR1と、第1ピニオンギヤPR1を回転自在に支持する第1キャリアCR1を有している。
第1サンギヤSR1は、中空の回転軸17に一体に取り付けられている。この回転軸17は、軸受け(図示せず)に回転自在に支持されており、その内側には、左出力軸SRLが、相対的に回転自在に配置されている。また、第1ロータ11bは、前述した回転軸15ではなく、回転軸17に一体に取り付けられており、回転軸17および第1サンギヤSR1とともに回転自在である。さらに、第1リングギヤRR1は、ケースCAに固定されている。第1キャリアCR1は、前述した回転軸15に一体に取り付けられており、回転軸15および第3サンギヤS3とともに回転自在である。以上の構成の第1減速装置RG1によって、第1回転電機11の動力は、減速された状態で第3サンギヤS3に伝達される。
前記第2減速装置RG2は、第1減速装置RG1と同様、シングルピニオンタイプの遊星歯車装置であり、第2サンギヤSR2と、第2サンギヤSR2の外周に設けられた第2リングギヤRR2と、両ギヤSR2、RR2に噛み合う第2ピニオンギヤPR2を有している。
第2サンギヤSR2は、中空の回転軸18に一体に取り付けられている。この回転軸18は、軸受け(図示せず)に回転自在に支持されており、その内側には、右出力軸SRRが、相対的に回転自在に配置されている。また、第2ロータ12bは、キャリア部材13ではなく、回転軸18に一体に取り付けられており、回転軸18および第2サンギヤSR2とともに回転自在である。さらに、第2リングギヤRR2は、ケースCAに固定されている。第2ピニオンギヤPR2は、3連ピニオンギヤ14と同じ個数(4つ。2つのみ図示)であり、キャリア部材13の支軸13bに回転自在に支持されている。以上の構成の第2減速装置RG2によって、第2回転電機12の動力は、減速された状態でキャリア部材13に伝達される。
以上のように、第3実施形態では、第1回転電機11が、第1減速装置RG1を介して第3サンギヤS3に連結されており、第2回転電機12が、第2減速装置RG2を介してキャリア部材13に連結されている。これにより、第2実施形態と同様、第1および第2モータ出力トルクTM1、TM2ならびに第1および第2モータ制動トルクTG1、TG2を、増大させた状態で第3サンギヤS3およびキャリア部材13にそれぞれ伝達することができるので、第1および第2回転電機11、12の小型化を図ることができる。その他、第1実施形態による効果を同様に得ることができる。
また、3連ピニオンギヤ14および第2ピニオンギヤPR2を支持するキャリア部材13を共用しているので、その分、動力装置1Bの小型化および搭載性の向上を図ることができる。
なお、第1〜第3実施形態では、左右の前輪をエンジンで駆動するとともに、左右の後輪WRL、WRR(左右の出力軸SRL、SRR)を動力装置1、1A、1Bで駆動するように車両を構成しているが、これとは逆に、左右の前輪にそれぞれ連結された左右の出力軸を動力装置で駆動するとともに、左右の後輪WRL、WRRをエンジンで駆動するように、車両を構成してもよい。また、第1〜第3実施形態は、エンジンが搭載された車両に、本発明による動力装置1、1A、1Bを適用した例であるが、本発明は、これに限らず、エンジンが搭載されていない車両にも適用可能である。
次に、図9を参照しながら、本発明の第4実施形態による動力装置1Cについて説明する。この動力装置1Cは、第1実施形態と異なり、左右の後輪WRL、WRRにそれぞれ連結された左右の出力軸SRL、SRRではなく、左右の前輪WFL、WFRにそれぞれ連結された左右の出力軸SFL、SFRを駆動するためのものであり、第1実施形態と比較して、前述した歯車装置GSなどに加え、動力源としてのエンジン3と、変速機4および差動装置Dをさらに備えることが、主に異なっている。図9において、第1実施形態と同じ構成要素については、同じ符号を付している。以下、第1実施形態と異なる点を中心に説明する。
エンジン3は、ガソリンエンジンであり、四輪の車両の前部に搭載されている。エンジン3のクランク軸(図示せず)には、変速機4が連結されている。変速機4は、有段式の自動変速機であり、その動作が前述したECU2により制御されることによって、エンジン3の動力を変速した状態で出力軸4aに出力する。
差動装置Dは、いわゆるダブルピニオン式の遊星歯車装置であり、サンギヤSDと、サンギヤSDの外周に設けられたリングギヤRDと、サンギヤSDに噛み合う複数の第1ピニオンギヤPD1と、第1ピニオンギヤPD1およびリングギヤRDに噛み合う複数の第2ピニオンギヤPD2と、第1および第2ピニオンギヤPD1,PD2を回転自在に支持するキャリアCDを有している。差動装置D、第2回転電機12、歯車装置GSおよび第1回転電機11は、左右の出力軸SFL、SFRと同軸状に配置されており、左右の前輪WFL、WFRの間に右側からこの順で並んでいる。
また、差動装置DのリングギヤRDの外周部には、外歯ギヤGが形成されており、この外歯ギヤGは、変速機4の出力軸4aに一体に取り付けられたギヤ4bに噛み合っている。このように、リングギヤRDは、変速機4を介してエンジン3に連結されている。差動装置DのサンギヤSDは、軸受け(図示せず)に回転自在に支持された回転軸61を介して、歯車装置GSの第2サンギヤS2に連結されている。第2サンギヤS2は、左出力軸SFLに一体に取り付けられている。
また、差動装置DのキャリアCDの右端部は、右出力軸SFRに一体に取り付けられており、キャリアCDの左端部は、中空の回転軸62の右端部に一体に取り付けられている。この回転軸62の左端部には、第1サンギヤS1が一体に取り付けられている。また、回転軸62は、軸受け(図示せず)に回転自在に支持されており、その内側には、上記の回転軸61が、相対的に回転自在に配置されている。このように、キャリアCDは、第1サンギヤS1と右出力軸SFRの間の動力伝達経路上に設けられている。
以上の構成の差動装置Dでは、エンジントルクが、変速機4を介してリングギヤRDに伝達されると、リングギヤRDに伝達されたトルクは、第2および第1ピニオンギヤPD2,PD1を介して、サンギヤSDおよびキャリアCDに、1:1のトルク分配比で分配される。サンギヤSDに分配されたトルクは、左出力軸SFLを介して左前輪WFLに伝達され、キャリアCDに分配されたトルクは、右出力軸SFRを介して右前輪WFRに伝達される。
以上のように、動力装置1Cでは、第2サンギヤS2およびサンギヤSDは、回転軸61を介して互いに連結されており、第2サンギヤS2は左出力軸SFLに直結されている。したがって、第2サンギヤS2、サンギヤSDおよび左出力軸SFLの回転数は、互いに等しい。また、第1サンギヤS1およびキャリアCDは、回転軸62を介して互いに連結されており、キャリアCDは、右出力軸SFRに直結されている。したがって、第1サンギヤS1、キャリアCDおよび右出力軸SFRの回転数は、互いに等しい。
さらに、歯車装置GSの第3〜第1サンギヤS3〜S1、キャリア部材13、第1および第2ロータ11b、12bの間の回転数の関係は、第1実施形態と同様である。また、差動装置Dがダブルピニオン式の遊星歯車装置であることから明らかなように、サンギヤSD、リングギヤRDおよびキャリアCDは、互いに差回転が可能であり、共線図において、それらの回転数が一つの同じ直線上に位置する共線関係にあり、この順で並ぶ。
以上から、動力装置1Cにおける各種の回転要素の間の回転数の関係は、例えば図10に示す共線図のように表される。同図に示すように、差動装置DのサンギヤSD、リングギヤRD、キャリアCD、歯車装置GSの第3〜第1サンギヤS3〜S1、およびキャリア部材13によって、回転数が互いに共線関係にある5つの回転要素が構成される。また、図10から明らかなように、左右の出力軸SFL、SFRは、互いに差回転が可能である。
さらに、図10は、右旋回用の第3ヨーモーメント増大制御における各種の回転要素の間の回転数の関係およびトルクの釣り合い関係を示している。同図において、TEは、エンジン3から変速機4を介してリングギヤRDに伝達されるトルクであり、RLEおよびRREは、エンジン3からリングギヤRDへのトルクの伝達に伴って左出力軸SFLおよび右出力軸SFRにそれぞれ作用する反力トルクである。その他のパラメータ(第1モータ出力トルクTM1など)については、第1実施形態と同様である。前述したようにリングギヤRDに伝達されたトルクがサンギヤSDおよびキャリアCDに1:1のトルク分配比で分配されることから明らかなように、これらの反力トルクRLEおよびRREは互いに等しい。
この場合、左出力軸SFLに伝達されるトルクは、RLE+RLM1+RLG2で表されるとともに、右出力軸SFRに伝達されるトルクは、RRE−(RRM1+RRG2)で表される。このように、左出力軸SFL(左前輪WFL)に伝達されるトルクが右出力軸SFR(右前輪WFR)に伝達されるトルクよりも大きくなり、それにより、車両の右回りのヨーモーメントが増大する。
この図10と、前述した第1実施形態の右旋回用の第3ヨーモーメント増大制御におけるトルクの釣り合い関係などを示す図5との比較から明らかなように、第3ヨーモーメント増大制御における動作は、第1実施形態と比較して、変速機4で変速されたエンジン3のトルクが差動装置Dによって左右の出力軸SFL、SFRに分配されることだけが異なっている。このことは、直進時や第1ヨーモーメント増大制御などにおける各種の動作についても同様であるので、動力装置1Cの動作の説明については省略する。
また、第4実施形態における各種の要素と、本発明における各種の要素との対応関係は、次のとおりである。すなわち、第4実施形態における左右の出力軸SFL、SFRが、本発明における2つの回転軸の一方および他方にそれぞれ相当し、第4実施形態におけるサンギヤSD、キャリアCDおよびリングギヤRDが、本発明における差動装置の第1〜第3回転体または第5〜第7要素にそれぞれ相当するとともに、第4実施形態におけるエンジン3が、本発明における第3トルク発生装置に相当する。その他の対応関係については、第1実施形態と同様である。
以上のように、第4実施形態によれば、差動装置DのサンギヤSDが、第2サンギヤS2に連結され、キャリアCDが、第1サンギヤS1と右出力軸SFRの間の動力伝達経路上に設けられるとともに、リングギヤRDがエンジン3に連結されている。これにより、左右の出力軸SFL、SFRに、第1および第2モータ出力トルクTM1、TM2に加え、エンジン3のトルクが伝達されるので、第1および第2回転電機11、12に必要とされるトルクを低減でき、それにより両者11、12の小型化を図ることができる。その他、第1実施形態による効果、すなわち、損失の抑制や車両の挙動安定性の向上などの効果を同様に得ることができる。
次に、図11を参照しながら、本発明の第5実施形態による動力装置1Dについて説明する。この動力装置1Dは、図9に示す第4実施形態と比較して、第1ロータ11bおよび差動制限機構41と第3サンギヤS3との間の動力伝達経路、および、第2ロータ12bおよび差動制限機構41とキャリア部材13との間の動力伝達経路に、第2実施形態で述べた減速装置がそれぞれ設けられている点のみが異なっている。図11において、第2および第4実施形態と同じ構成要素については、同じ符号を付している。
以上の構成により、第5実施形態によれば、第2実施形態と同様、上記の減速装置すなわちギヤ51〜54によって、差動制限機構41からの反力トルク、第1および第2モータ出力トルクTM1、TM2、ならびに第1および第2モータ制動トルクTG1、TG2を増大させた状態で第3サンギヤS3およびキャリア部材13に伝達することができる。したがって、差動制限機構41、第1および第2回転電機11、12の小型化を図ることができ、ひいては、動力装置1Dの小型化および搭載性の向上を図ることができる。その他、第4実施形態による効果を同様に得ることができる。
なお、第5実施形態における各種の要素と、本発明における各種の要素との対応関係は、第2および第4実施形態と同様である。
次に、図12を参照しながら、本発明の第6実施形態による動力装置1Eについて説明する。この動力装置1Eは、図9に示す第4実施形態と比較して、第1ロータ11bと第3サンギヤS3の間の動力伝達経路、および、第2ロータ12bとキャリア部材13の間の動力伝達経路に、第3実施形態で述べた第1減速装置RG1および第2減速装置RG2がそれぞれ設けられている点のみが異なっている。図12において、第3および第4実施形態と同じ構成要素については、同じ符号を付している。
以上の構成により、第6実施形態によれば、第3実施形態と同様、第1および第2減速装置RG1、RG2によって、第1および第2モータ出力トルクTM1、TM2、ならびに第1および第2モータ制動トルクTG1、TG2を増大させた状態で第3サンギヤS3およびキャリア部材13にそれぞれ伝達することができるので、それにより第1および第2回転電機11、12の小型化を図ることができる。その他、第4実施形態による効果を同様に得ることができる。
また、図13は、前述した第4〜第6実施形態の第1変形例を示しており、この第1変形例は、動力装置をFR(フロントエンジン−リヤドライブ)式の車両VFRに適用した例である。この車両VFRでは、差動装置D、歯車装置GS、差動制限機構、第1および第2回転電機(いずれも図示せず)は、車両VFRの後部に配置されており、差動装置Dの前述したリングギヤ(図示せず)は、プロペラシャフトPSを介して変速機4に連結されている。また、左右の出力軸SRL、SRR、差動装置D、歯車装置GS、差動制限機構、第1および第2回転電機の間の連結関係は、第4〜第6実施形態と比較して、前側の左右の出力軸SFL、SFRを後ろ側の左右の出力軸SRL、SRRに置き換えた点のみが異なっており、その他は同様である。
以上の構成により、エンジン3のトルクは、変速機4、プロペラシャフトPS、および差動装置Dを介して左右の出力軸SRL、SRRに伝達され、さらに左右の後輪WRL、WRRに伝達される。また、第1および第2モータ出力トルクならびに第1および第2モータ制動トルクは、歯車装置GSおよび差動装置Dを介して左右の出力軸SRL、SRRに伝達され、さらに左右の後輪WRL、WRRに伝達される。さらに、差動制限機構による第3サンギヤとキャリア部材(いずれも図示せず)の間の接続によって、左右の出力軸SRL、SRRの間の差回転が制限される。したがって、この第1変形例においても、第4〜第6実施形態による効果を同様に得ることができる。
さらに、図14は、第4〜第6実施形態の第2変形例を示しており、この第2変形例は、動力装置を全輪駆動式の車両VAWに適用した例である。この車両VAWでは、前側の左右の出力軸SFL、SFRは、フロントデフDF、センターデフDCおよび変速機4を介して、エンジン3に連結されている。また、差動装置D、歯車装置GS、差動制限機構、第1および第2回転電機(いずれも図示せず)は、車両VAWの後部に配置されており、差動装置Dのリングギヤ(図示せず)は、プロペラシャフトPSおよびセンターデフDCを介して変速機4に連結されている。さらに、左右の出力軸SRL、SRR、差動装置D、歯車装置GS、第1および第2回転電機の間の連結関係は、上述した第1変形例と同様である。
以上の構成により、エンジン3のトルクは、変速機4を介してセンターデフDCに伝達され、フロントデフDFおよびプロペラシャフトPSに分配される。フロントデフDFに分配されたトルクは、左右の出力軸SFL、SFRに伝達され、さらに左右の前輪WFL、WFRに伝達される。プロペラシャフトPSに分配されたトルクは、差動装置Dを介して左右の出力軸SRL、SRRに伝達され、さらに左右の後輪WRL、WRRに伝達される。また、第1および第2モータ出力トルクならびに第1および第2モータ制動トルクは、歯車装置GSおよび差動装置Dを介して左右の出力軸SRL、SRRに伝達され、さらに左右の後輪WRL、WRRに伝達される。さらに、差動制限機構による第3サンギヤとキャリア部材(いずれも図示せず)の間の接続によって、左右の出力軸SRL、SRRの間の差回転が制限される。したがって、この第2変形例においても、第4〜第6実施形態による効果を同様に得ることができる。
なお、第4〜第6実施形態の第1および第2変形例の車両VFR、VAWが、本発明における移動装置に相当する。また、これらの第1および第2変形例では、エンジン3および変速機4を、車両VFR、VAWの前部に配置しているが、車両の後部に配置してもよい。
なお、本発明は、説明した第1〜第6実施形態(変形例を含む。以下、総称して「実施形態」という)に限定されることなく、種々の態様で実施することができる。例えば、実施形態では、第1サンギヤS1を右出力軸SRR(SFR)に、第2サンギヤS2を左出力軸SRL(SFL)に、それぞれ連結しているが、これとは逆に、第1サンギヤS1を左出力軸SRL(SFL)に、第2サンギヤS2を右出力軸SRR(SFR)に、それぞれ連結してもよい。この場合、第4〜第6実施形態で述べた差動装置DのキャリアCDは、第1サンギヤS1と左出力軸SRL(SFL)の間の動力伝達経路上に設けられる。また、実施形態では、第1〜第3ピニオンギヤP1〜P3を、互いに一体に形成しているが、別個に形成した後に、互いに一体に連結してもよい。
さらに、実施形態では、本発明における第1〜第4要素として、第3〜第1サンギヤS3〜S1およびキャリア部材13を用いているが、回転数が互いに共線関係にある他の4つの回転要素を用いてもよい。例えば、遊星歯車装置のサンギヤ、キャリアおよびリングギヤのうちの任意の2つの回転要素と、これとは別の遊星歯車装置のサンギヤ、キャリアおよびリングギヤのうちの任意の2つの回転要素とをそれぞれ互いに連結し、それにより構成された4つの回転要素を用いてもよい。この場合の遊星歯車装置は、シングルピニオンタイプおよびダブルピニオンタイプのいずれでもよい。あるいは、いわゆるラビニョウタイプの遊星歯車装置(シングルピニオンタイプおよびダブルピニオンタイプの遊星歯車装置においてキャリアとリングギヤが共用化されたもの)の4つの回転要素を用いてもよい。
あるいは、次のように構成された4つの回転要素を用いてもよい。すなわち、互いに一体の第1および第2ピニオンギヤで構成された2連ピニオンギヤを、回転自在のキャリア部材で回転自在に支持し、この第1ピニオンギヤに噛み合う回転自在の第1サンギヤおよび第1リングギヤと、第2ピニオンギヤに噛み合う回転自在の第2サンギヤおよび第2リングギヤとから成る4つの回転要素から3つの回転要素を選択するとともに、これらの3つの回転要素に上記のキャリア部材を加えた4つの回転要素を用いてもよい。この場合、選択されなかった残りの回転要素は、省略可能である。また、第1サンギヤまたは第1リングギヤを、第1ピニオンギヤに直接、噛み合わせずに、別のピニオンギヤを介して噛み合わせてもよい。このことは、第2サンギヤおよび第2リングギヤについても同様である。
また、実施形態では、本発明における第1および第2トルク発生装置は、第1および第2回転電機11、12であるが、正トルクおよび負トルクを発生可能な他の装置、例えば、油圧モータなどでもよい。さらに、実施形態では、第1および第2回転電機11、12として、ACモータを用いているが、回転エネルギと電気エネルギの間でエネルギを変換可能な他の装置、例えば、DCモータを用いてもよい。また、実施形態では、差動制限機構16、41を、油圧式のクラッチで構成しているが、第3サンギヤS3(第1要素)とキャリア部材13(第4要素)の間を接続・遮断する機能を有する他の機構、例えば、電磁式のクラッチで構成してもよい。
さらに、実施形態では、バッテリ23が第1および第2回転電機11、12に共用されているが、バッテリを別個に設けてもよい。また、実施形態では、第1および第2回転電機11、12で回生した電力を、バッテリ23に充電しているが、キャパシタに充電してもよい。あるいは、第1および第2回転電機11、12とは異なる他の回転電機と、この他の回転電機に連結されたフライホイールとを用い、第1および第2回転電機11、12で回生した電力を他の回転電機で動力に変換するとともに、変換された動力を、運動エネルギとしてフライホイールに蓄積してもよい。あるいは、第1および第2回転電機11、12で回生した電力を、他の回転電機やアクチュエータに直接、供給してもよい。あるいは、第1および第2回転電機11、12に代えて、上述したように回転エネルギを圧力エネルギに変換可能な油圧モータを用いるとともに、この油圧モータで変換された圧力エネルギをアキュームレータに蓄積してもよい。
さらに、実施形態では、本発明における第1動力伝達機構としてギヤ51および52を、第2動力伝達機構としてギヤ53および54を、それぞれ用いているが、差動制限機構からの反力を増大した状態で伝達可能な他の機構、例えば、一対のプーリと両者に巻き掛けられたベルトから成る動力伝達機構や、一対のスプロケットや両者に巻き掛けられたチェーンから成る動力伝達機構を用いてもよい。また、実施形態では、ダブルピニオン式の遊星歯車装置である差動装置Dを用いているが、互いに差回転が可能な第1〜第3回転体(第5〜第7要素)を有する他の装置、例えば、シングルピニオン式の遊星歯車装置や、次のようなタイプの差動装置を用いてもよい。すなわち、一対のサイドギヤと、両サイドギヤに噛み合う複数のピニオンギヤと、これらのピニオンギヤを回転自在に支持するキャリアを有し、キャリアに伝達されたトルクを一対のサイドギヤの各々に1:1の分配比で分配するタイプの差動装置を用いてもよい。
さらに、実施形態では、本発明におけるエネルギ出力装置として、ガソリンエンジンであるエンジン(3)を用いているが、正トルクを発生可能な他の装置、例えば、ディーゼルエンジンや、LPGエンジン、CNG(Compressed Natural Gas)エンジン、外燃機関、回転電機、油圧モータなどを用いてもよい。また、実施形態では、本発明による動力装置1、1A〜1Eを、左右の出力軸SRL、SRR(SFL、SFR)を駆動するように構成しているが、車両の前後の駆動輪に連結された前後の出力軸を駆動するように構成してもよい。さらに、実施形態は、本発明を車両に適用した例であるが、本発明は、これに限らず、例えば船舶や航空機などにも適用可能である。その他、本発明の趣旨の範囲内で、細部の構成を適宜、変更することが可能である。
VFR 車両(移動装置)
VAW 車両(移動装置)
SRL 左出力軸(2つの回転軸の一方)
SRR 右出力軸(2つの回転軸の他方)
SFL 左出力軸(2つの回転軸の一方)
SFR 右出力軸(2つの回転軸の他方)
1 動力装置
1A 動力装置
1B 動力装置
1C 動力装置
1D 動力装置
1E 動力装置
3 エンジン(第3トルク発生装置)
11 第1回転電機(第1トルク発生装置)
12 第2回転電機(第2トルク発生装置)
GS 歯車装置
13 キャリア部材(第4要素)
14 3連ピニオンギヤ
P1 第1ピニオンギヤ
P2 第2ピニオンギヤ
P3 第3ピニオンギヤ
S1 第1サンギヤ(第3要素)
S2 第2サンギヤ(第2要素)
S3 第3サンギヤ(第1要素)
16 差動制限機構
41 差動制限機構
51 ギヤ(第1動力伝達機構)
52 ギヤ(第1動力伝達機構)
53 ギヤ(第2動力伝達機構)
54 ギヤ(第2動力伝達機構)
D 差動装置
SD サンギヤ(第1回転体、第5要素)
CD キャリア(第2回転体、第6要素)
RD リングギヤ(第3回転体、第7要素)
TM1 第1モータトルク(正トルク)
TG1 第1モータ制動トルク(負トルク)
TM2 第2モータトルク(正トルク)
TG2 第2モータ制動トルク(負トルク)

Claims (8)

  1. 移動装置を移動させるために、互いに差回転が可能に構成された2つの回転軸を駆動する動力装置であって、
    回転自在のキャリア部材と、
    互いに一体に設けられた第1ピニオンギヤ、第2ピニオンギヤおよび第3ピニオンギヤで構成され、前記キャリア部材に回転自在に支持された3連ピニオンギヤと、
    前記第1ピニオンギヤに噛み合う回転自在の第1サンギヤと、
    前記第2ピニオンギヤに噛み合う回転自在の第2サンギヤと、
    前記第3ピニオンギヤに噛み合う回転自在の第3サンギヤと、を備え、
    前記3連ピニオンギヤおよび前記第1〜第3サンギヤは、前記キャリア部材が固定された状態で前記3連ピニオンギヤが回転しているときに、前記第2サンギヤの回転数が前記第1サンギヤの回転数よりも高くなるとともに、前記第3サンギヤの回転数が前記第2サンギヤの回転数よりも高くなるように構成されており、
    正トルクおよび負トルクを発生可能な第1トルク発生装置と、
    正トルクおよび負トルクを発生可能な第2トルク発生装置と、をさらに備え、
    前記第3サンギヤは、前記第1トルク発生装置に連結され、前記第2サンギヤは、前記2つの回転軸の一方に連結され、前記第1サンギヤは、前記2つの回転軸の他方に連結されるとともに、前記キャリア部材は、前記第2トルク発生装置に連結されており、
    前記第3サンギヤおよび前記キャリア部材に連結され、前記第3サンギヤと前記キャリア部材の間を接続・遮断することによって前記2つの回転軸の間の差回転を制限するための差動制限機構をさらに備えることを特徴とする動力装置。
  2. 前記第3サンギヤと前記差動制限機構の間の動力伝達経路上に設けられ、前記差動制限機構による前記第3サンギヤと前記キャリア部材の間の接続に伴って発生した当該差動制限機構の反力トルクを、増大させた状態で前記第3サンギヤに伝達する第1動力伝達機構と、
    前記キャリア部材と前記差動制限機構の間の動力伝達経路上に設けられ、前記差動制限機構による前記第3サンギヤと前記キャリア部材の間の接続に伴って発生した当該差動制限機構の反力トルクを、増大させた状態で前記キャリア部材に伝達する第2動力伝達機構と、をさらに備えることを特徴とする、請求項1に記載の動力装置。
  3. 互いに差回転が可能な第1回転体、第2回転体および第3回転体を有する差動装置と、
    正トルクを発生可能であり、前記第1および第2トルク発生装置とは別個に設けられた第3トルク発生装置と、をさらに備え、
    前記第1回転体は前記第2サンギヤに連結され、前記第2回転体は、前記第1サンギヤと前記2つの回転軸の前記他方との間の動力伝達経路上に設けられるとともに、前記第3回転体は、前記第3トルク発生装置に連結されることを特徴とする、請求項1または2に記載の動力装置。
  4. 前記第1および第2トルク発生装置が回転電機であることを特徴とする、請求項1ないし3のいずれかに記載の動力装置。
  5. 移動装置を移動させるために、互いに差回転が可能に構成された2つの回転軸を駆動する動力装置であって、
    互いの間で動力を伝達可能な第1要素、第2要素、第3要素および第4要素を有し、当該第1〜第4要素の回転数が共線図において互いに同じ一つの直線上に位置する所定の共線関係にあり、前記第1要素を固定した状態で前記第2〜第4要素を回転させたときに、当該第2〜第4要素が同方向に回転するとともに、前記第4要素の回転数が前記第2および第3要素の回転数よりも高くなるように構成された歯車装置と、
    正トルクおよび負トルクを発生可能な第1トルク発生装置と、
    正トルクおよび負トルクを発生可能な第2トルク発生装置と、を備え、
    前記第1要素は、前記第1トルク発生装置に連結され、前記第2要素は、前記2つの回転軸の一方に連結され、前記第3要素は、前記2つの回転軸の他方に連結されるとともに、前記第4要素は、前記第2トルク発生装置に連結されており、
    前記第1および第4要素に連結され、前記第1要素と前記第4要素の間を接続・遮断することによって前記2つの回転軸の間の差回転を制限するための差動制限機構をさらに備えることを特徴とする動力装置。
  6. 前記第1要素と前記差動制限機構の間の動力伝達経路上に設けられ、前記差動制限機構による前記第1要素と前記第4要素の間の接続に伴って発生した当該差動制限機構の反力トルクを、増大させた状態で前記第1要素に伝達する第1動力伝達機構と、
    前記第4要素と前記差動制限機構の間の動力伝達経路上に設けられ、前記差動制限機構による前記第1要素と前記第4要素の間の接続に伴って発生した当該差動制限機構の反力トルクを、増大させた状態で前記第4要素に伝達する第2動力伝達機構と、をさらに備えることを特徴とする、請求項5に記載の動力装置。
  7. 互いに差回転が可能な第5要素、第6要素および第7要素を有する差動装置と、
    正トルクを発生可能であり、前記第1および第2トルク発生装置とは別個に設けられた第3トルク発生装置と、をさらに備え、
    前記第5要素は、前記第2要素に連結され、前記第6要素は、前記第3要素と前記2つの回転軸の前記他方との間の動力伝達経路上に設けられるとともに、前記第7要素は、前記第3トルク発生装置に連結されることを特徴とする、請求項5または6に記載の動力装置。
  8. 前記第1および第2トルク発生装置が回転電機であることを特徴とする、請求項5ないし7のいずれかに記載の動力装置。
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