JP6173247B2 - 造粒物の粒度・標準偏差の推定方法及び造粒プロセスの制御方法 - Google Patents
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Description
特許文献1は、造粒ペレットの粒度分布を自動的にかつ精度良く測定することを目的としたものである。この特許文献1では、流下するペレットをITVカメラで撮影するペレット撮影工程と、この撮影された画像を処理してペレットの粒度分布を求める画像処理工程により全ペレットの粒度分布から平均粒径を求めている。
本発明の造粒物の粒度・標準偏差の推定方法は、鉱石の造粒プロセスにおいて転動造粒機で原料を連続造粒する際において、前記転動造粒機で造粒した造粒物が当該転動造粒機から排出される位置から得られる排出角度及び前記転動造粒機で造粒中の造粒物群の表層が成す傾斜角の値と、前記造粒物の粒度及び/又は造粒物の粒度の標準偏差との関係を示す検量線を予め作成しておき、前記転動造粒機で造粒した造粒物が当該転動造粒機から排出される位置から得られる排出角度及び前記転動造粒機で造粒中の造粒物群の表層が成す傾斜角の値を測定し、測定した前記排出角度及び前記傾斜角の値を前記作成した検量線に当てはめることで、前記造粒物の粒度及び/又は造粒物の粒度の標準偏差を推定することを特徴とする。
本発明の造粒プロセスの制御方法は、上述した造粒物の粒度・標準偏差の推定方法を用いて推定した造粒物の粒度及び/又は造粒物の粒度の標準偏差に基づいて、鉱石の造粒プロセスを制御することを特徴とする。
高炉の原料として用いられる鉱石は、焼成、か焼、還元、化合などの利用目的によって、所定の大きさの塊にする必要がある。鉱石を所定の大きさの塊にする処理として、造粒プロセスというものがある。造粒プロセスとして、転動造粒プロセスや圧縮成形プロセスがある。
ここで、ディスクペレタイザから排出される生ボールの粒度の確認は、ディスクペレタイザから生ボールを排出後、造粒プロセスの後工程で生ボールをサンプリングし、篩などの分級することによって行われていた。つまり、ディスクペレタイザから排出される生ボールの粒度の確認は、数時間後であった。ゆえに、生ボールの粒度を製造中(転動造粒中)にフィードバックすることは困難であり、転動造粒を連続操業している間に、ディスクペレタイザの造粒物(生ボール)の粒度を調整することは難しい。
図1A、1Bに示すように、転動造粒機、即ち、ディスクペレタイザ1は、円形上の底部2と、この底部2から上方に起立する側壁3とを有していて、所定の角度に傾斜している。ここで、原料となる鉄鉱石粉を原料供給位置から転動造粒機1内に連続装入すると、微粉同士が合体して核となる小粒子を形成し、これら核粒子の周りに、新たに供給される微粉、或いは残りの微粉が付着して雪だるま状に粒成長していく。造粒物は目標の粒度にまで成長した後に、転動造粒機1の縁部(側壁3)を乗り越えて成品(生ボール)として排出される。工業規模の鉄鉱石ペレット造粒プロセスの転動造粒機1では、1台あたり、例えば80t/hもの速度で運転を継続させなければならない。転動造粒機1内の造粒物群(堆積層)5は、供給時点の微粉から排出される際の生ボールに至るまでの粒子径を有するが、核形成と粒成長の速度が互いにバランスした安定造粒条件にある時には、その安定状態を維持するために好適な粒度分布を有していると考えられる。逆に、核形成過多(生ボール成長不良)あるいはボール成長過多(核粒子不足)という造粒破綻時には、その状況に応じた粒度分布となっているはずである。
図2の第1例に示すように、核粒子(シード)10の生成が不足すると、生ボール11が成長過多となり、この状態を放置すると連続造粒が破綻する状況になりやすい。即ち、連続造粒が破綻する条件下では、第1例に示すように、転動造粒機1内の生ボール(粗大ボール)11の占有率が増大すると共に、堆積層5における造粒物の安息角が大きくなる。その結果、堆積層5の傾斜角が大きく、堆積層5の堆積状況は急激な勾配をもつ。また、連続造粒が破綻する条件下では、第1例に示すように、生ボールであって、粗大ボール11の排出角度θは小さくなる。
一方、図2の第3例に示すように、微粉原料が核粒子10に専ら使用されてしまうと、生ボール成長が進まず、小径造粒物13の占有率が増大する。その結果、堆積層の5傾斜角(排出位置及び回転中心を通る堆積層の角度)が緩やかになり、当該堆積層5は緩やかな勾配をもつ。さらに、生ボールの排出角度θは、第1例に比べて大きい。
本発明では、排出位置12及び堆積形状の測定結果と、造粒物の粒度及び/又は造粒物の粒度の標準偏差とを関係付けることにより、排出位置12及び堆積形状から造粒物の粒度や造粒物の粒度の標準偏差を求めることができる。
図3に示すように、転動造粒機をディスクペレタイザ1とした場合、底面2にXY平面を合致させ、この底部(底面)2と回転軸とが交差する部分を、座標の原点(0,0,0)とする。原点を通り底面2と鉛直方向にZ軸を設定し、Z軸上にレーザー距離計のセンサーを位置させる。レーザー距離計はZ軸に対して傾動した状態で水方向に走査し測距が完了すると、傾動角を変化させ水平走査を繰返す。このようにしてディスクペレタイザ1内の堆積層の表面までの距離を測定する。なお、ディスクペレタイザの半径をR[m]、側壁3の高さをH[m]とする。また、レーザー距離計のセンサーの設置位置は、Z軸上の(0,0,Zs)とする。
Yp=−L・sinθ ・・・(2)
Zp=Zs−L・cosθ・sinω ・・・(3)
堆積層の測定座標(Xp,Yp,Zp)を求めた際に、式(4)を満たす場合は、生ボール(造粒物)が側壁3に位置していると言える。
ここで、堆積層のZ座標である「Zp」が式(5)を満たす場合、生ボール(造粒物)
が側壁3を超えて、排出される位置にあると言える。
Zp > H ・・・式(5)
つまり、測定座標(Xp,Yp,Zp)が、式(4)及び式(5)を満たす場合、当該測定座標(Xp,Yp,Zp)は、生ボールが排出した排出位置12(Xout、Yout、Zout)となる。
レーザー距離計によって得られた排出角度θ及び表面形状ラインの傾きは、上述した通り、転動造粒機1で製造される生ボールの粒度に関係していて、図5に示すように、排出角度θ及び表面形状ラインの傾きから、生ボールの粒度を求めることができる。また、短時間(短周期)で測定値(排出角度θ、傾斜角)は、生ボールの粒度分布の変化に対応して発生することから、結果的には粒度分布の標準偏差も推定することができる。例えば、図6に示すように、排出角度θ及び表面形状ラインの傾きから、生ボールの標準偏差を求めることができる。特に、本発明では。排出角度θ及び表面形状ラインの傾きが同時・同タイミングで計測・計算できることから、両方の値を用いてバッチ測定結果を多重回帰することによって、図5及び図6に示したような更に正確な検量線を作成することができる。
図7は、製鉄用の造粒物を製造する造粒設備を例示したものである。
図7に示すように、造粒設備20では、原料槽Aから1mm以下の鉱石や石灰石等を切り出し、これら鉱石及び石灰石に水、バインダーを混合して、混合物を直径6mのディスクペレタイザ1に供給し、当該ディスクペレタイザ1を回転することにより、造粒物を製造する。なお、以下の説明では、原料(鉱石、石灰石、バインダー、水)をディスクペレタイザ1にて造粒したものを生ボールという。
図1に示すように、ディスクペレタイザ1は、例えば、直径6m、側壁(縁部)3の高さが0.8mの皿型の造粒機であって、傾斜角度は、40〜50°である。転動造粒時のディスクペレタイザの回転数は、5〜10rpmである。
生ボールの元原料(微粉原料)は、ディスクペレタイザ1の上部から供給する。微粉原料のブレーン指数は、2800cm2/gでJISR5201に基づく方法で測定した結果である。
微粉原料がディスクに供給されるとディスク転動に従い、上方へ運び上げられる。微粉原料はディスク底面2を転動しながら下方へ落下しつつ、微粉原料が合体して造粒物になる。ディスクの縁部3に到達した造粒物は、落下を停止して、ディスクの動きに従い、再び上方へ運ばれて、落下と転動、および合体を繰り返して造粒物が大きくなる。
粗大生ボール、小ボール、微粉原料の造粒物がディスクペレタイザの回転に従い、上に持ち上げられると、重力と遠心力の合力が下方へ引き下げようとする。このとき、大きな生ボールと微粉原料では落下し始める高さが異なる。これは造粒物の粒度ごとに安息角が異なっているためである。転動に従って上方に持ち上げられるときに大きな造粒物は、比較的低い位置で落下し始めるが、微粉原料は高い位置まで上昇する。この結果、ディスクペレタイザ内における造粒物の堆積層5の形は、微粉が多い場合、高い位置まで広がり、粗大ボールが多ければ比較的低い位置までしか堆積層5は広がらない。
ディスクペレタイザ1内では、上述したように、微粉原料は転動しつつ、合体と付着を繰り返し粗大生ボールに成長する。並行して、微粉原料が連続供給されるため、ディスクペレタイザの中には、微粉から粗大生ボールまで共存する。
ここで、図9に示すように、微粉原料の供給により堆積層5の高さが、縁部3を越えると、最上層の生ボール5cがディスクから排出される。即ち、上述したように、堆積層5の最上層には、微粉原料5a(第1材料)、小ボール5b(第2材料)、粗大生ボール5c(第3材料)のうち、粗大ボール5cが存在するため、大きな粗大ボールから排出される。
図10に示すように、ディスクペレタイザ1の上方であって、Z軸上にレーザ距離計8を設置する。レーザ距離計8は、ディスクペレタイザ1の回転軸9上の底面から3mの位置に設置されている。レーザ距離計8では、X軸及びY軸の方向に走査可能であって、走査範囲は、それぞれ120度である。レーザ距離計8からレーザ光を照射し、反射光の到達時間から造粒物や微粉原料の堆積上面までの距離を精度0.02mで測定する。なお、走査頻度は、X軸方向には28mm秒ごと、Y軸は250mm秒毎である。それぞれ方向
の分解能は、最大で0.04mである。
レーザ距離計8から得られる距離と、走査位置の情報とから求めた測定座標(Xp,Yp,Zp)を記録する。具体的には、ディスクペレタイザー1を用い、生産量80t/時で鉄鉱石ペレットを製造しつつ、レーザ距離計8により計測を開始する。そして、ペレットが安定して流れる状況を確認したうえで、測定座標と排出された造粒物のサンプルを採取する。造粒物のサンプルは、所定の篩を用いて分級し、造粒物の篩間の重量比率Xiを求めた。そして、篩間の平均値Yiを用いて、粒度は、粒度=ΣXi・Yiとした。また、粒度の標準偏差は、粒度Qをもちいて造粒物の篩間の重量比率Xiと篩間の平均値Yiを用いて、粒度の標準偏差は、√(ΣXi・(Yi−Q)2)と定義した。
図11は、ディスクペレタイザの堆積層の上面座標から堆積形状を描いた3次元図である。図12は、ディスクペレタイザを平面視した場合の堆積形状の二次元図である。図11及び図12の数値は、堆積層5の高さを示している。
生ボールの排出位置12と、基準点(0,0,0)とを通る直線上に位置する複数の堆積層の座標(x、y、z)、即ち、堆積層の上面における各座標(上面座標)を抽出する。このとき、堆積層の上面座標が底面の座標と一致する場合は、堆積層がないものとして判断する。そして、複数の堆積層の上面座標を用いて、ディスクペレタイザの径方向位置と、高さ成分(Z座標)との関係を求める。そして、図13に示すように、径方向位置と高さ方向との関係を示す複数のデータから、1次式の最少二乗法近似した線分(検量線)を求める。例えば、図13に示すように、高さと径方向位置との関係を示す検量線は、y=−0.235x+0.153となった。なお、図13の検量線における傾き(堆積形状係数)は、40枚分の3次元座標(3次元画像)を用いて、複数の検量線を求め、全ての検量線の平均値である。
さて、鉱石の造粒プロセスでは、上述したように、推定した造粒物の粒度や標準偏差に基づいて制御を行っている。つまり、造粒プロセスにおいて、時系列的に粒度を推定して、粒度が予め定められた管理値を逸脱した時に当該造粒プロセスにおける設定値等を変化させる。
粒度の標準偏差と、ディスク角度(ディスクペレタイザの角度)との関係図である。図18に示すように、ディスクペレタイザで生ボールを製造中に、生ボールの粒度及び標準偏差が上限の管理値を超えた場合、操作者は、これを見て粒度と標準偏差との両方を低下させる必要があると判断し、ディスク角度を52度から59度に変更した。そうすると、ディスクペレタイザ内の生ボールの粒度及び標準偏差は、管理値内に復帰した。
なお、今回開示された実施形態において、明示的に開示されていない事項、例えば、運転条件や操業条件、各種パラメータ、構成物の寸法、重量、体積などは、当業者が通常実施する領域を逸脱するものではなく、通常の当業者であれば、容易に想定することが可能な事項を採用している。
2 底部(底面)
3 側壁
5 造粒物群(堆積層)
5a 第1造粒物(第1原料)
5b 第2造粒物(第2原料)
5c 第3造粒物(第3原料)
8 レーザ距離計
9 回転軸
10 核粒子(シード)
11 生ボール
12 排出位置
13 小径造粒物
Claims (2)
- 鉱石の造粒プロセスにおいて転動造粒機で原料を連続造粒する際において、
前記転動造粒機で造粒した造粒物が当該転動造粒機から排出される位置から得られる排出角度及び前記転動造粒機で造粒中の造粒物群の表層が成す傾斜角の値と、前記造粒物の粒度及び/又は造粒物の粒度の標準偏差との関係を示す検量線を予め作成しておき、
前記転動造粒機で造粒した造粒物が当該転動造粒機から排出される位置から得られる排出角度及び前記転動造粒機で造粒中の造粒物群の表層が成す傾斜角の値を測定し、
測定した前記排出角度及び前記傾斜角の値を前記作成した検量線に当てはめることで、前記造粒物の粒度及び/又は造粒物の粒度の標準偏差を推定する
ことを特徴とする造粒物の粒度・標準偏差の推定方法。 - 請求項1に記載の造粒物の粒度・標準偏差の推定方法を用いて推定した造粒物の粒度及び/又は造粒物の粒度の標準偏差に基づいて、鉱石の造粒プロセスを制御することを特徴とする造粒プロセスの制御方法。
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