JP2020152964A - 希薄均一散水による造粒方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】中粒鉱石を使用して造粒したときにおいて、「水の偏在」により起因する粗大粒子が生成されることを抑制して、その粗大粒子に起因する焼結鉱の生産性の低下を回避することができる希薄均一散水による造粒方法を提供する。【解決手段】本発明は、造粒の元となる原料2の滞留時間Tが150秒以上あるドラムミキサ8を用いて、粒度が1.0mm以下の粒子が全体の70質量%以上で且つ、粒度が0.5mm以上の粒子が全体の50質量%以上の中粒鉱石3を含む焼結用原料1を造粒するにあたり、原料2をドラムミキサ8に装入後、非散水で転動のみを60秒以上行い、60秒以上経過後に、転動と共に散水密度が0.25kg/s/m2以下(但し、0を除く)で且つ、原料2に応じた目標水分となるまで散水し、目標水分に到達した以降においては、散水を止めて90秒以上転動させて、ドラムミキサ8から焼結用原料1を排出する。【選択図】図18

Description

本発明は、焼結鉱製造時に用いられる原料を造粒する技術に関する。
焼結鉱とは、主たる高炉原料で、粉状の鉄鉱石に対して、石灰石などの溶剤を添加して、焼結機にて焼き固めたものである。
焼結機においては、鉄鉱石を主とする焼結鉱の原料(焼結用原料)をパレット台車上に充填し、その下方より大気を吸引して、原料中の粉コークスを連続的に燃焼させることで、カルシウムフェライト系の融液を生成させ、粉鉱石どうしを融液により結合させた焼結鉱を製造する。
そのため、充填された焼結原料の通気性は、パレットを通過する吸引大気量(酸素供給量)、すなわち、粉コークスの燃焼速度(生産性)に影響を及ぼす。
そこで、焼結プロセスでは、一般的に原料に水を添加し、造粒機(例えば、ドラムミキサ、パンペレタイザなど)を用いて、原料充填層内の空隙を閉塞させて、焼成時の通気性を悪化させる微粉鉱石を、核となる粗粒鉱石に付着させて擬似粒子(造粒物)とすることで、原料充填層(パレット台車上に充填された焼結用原料)の通気性を確保する。
焼結用原料を製造する技術としては、例えば、特許文献1〜3に開示されているものがある。
特許文献1は、粗大ペレットおよび核の無いペレットを低減して焼結用原料の粒度および賦存状態を改善させることで、焼結ベッドにおける通気性および歩留を改善して生産性を向上させることを目的としている。
具体的には、ドラムミキサを用いて焼結用原料を製造するにあたり、粒度が250μm以下の粒子が80%以上を占める微粉鉱石が40%以上占める。また、ドラムミキサ内に配備された散水口から散水する際に、ドラムミキサの回転数と散水距離と散水流量と噴霧角と散水立体角との関係が次式を満たすこととしている。
・0<(Q×tan(θ/2))/((√2)×d×ω×Ω×D)<1.10
特許文献2は、散水方法および装置に関する技術であって、原料の水分のバラツキを減少させることを目的としている。
具体的には、ドラムミキサの原料装入側と排出側のそれぞれに散水装置を配置し、ミキサ―の長さ方向任意の領域に散水する。原料は上流の混合部で混合された後に中流の調湿部で調湿され、下流で造粒されるため、各工程が効率よく行われ、結果として原料水分のバラツキが小さくなるとされている。
特許文献3は、コークスを配合した粉鉱石等を造粒して擬似粒子にする際に、造粒後に残存する微粉を抑制し、焼結機の通気性を改善して、焼結鉱の生産性や歩留を高めることを目的としている。
具体的には、コークスを配合した粉鉱石等をドラムミキサに装入し、攪拌を行って造粒する焼結原料の造粒方法において、造粒初期に水を添加して、予め前記粉鉱石の一部を疑似粒子に造粒してから、バインダーを添加して造粒することとしている。
特許文献4は、造粒機で塊状に造粒する際に、混練機への装入に先立って焼結原料に水を噴霧状態で添加し、原料中に均一に添加することで混合効率ならびに造粒効果を大幅に向上させることを目的としている。
具体的には、焼結原料を円柱状ロッドが振動的に円運動する混練機内に連続装入して高密度に混練してフレーク状化したのち、これを造粒機に装入して塊状造粒する際に、前記混練機に供給される焼結原料の表面および/または裏面に、高圧空気で水を噴霧したミスト流を吹きつけて水分を添加することとしている。
特開2016−172903号公報 特開2001−316730号公報 特開2000−273553号公報 特開平03−219026号公報
ところで、近年では、焼結原料の品位低下により、焼結鉱のAl2O3が上昇傾向にあり、歩留、強度および低温還元粉化の悪化に加え、高炉スラグ比増加による排滓性の悪化が懸念されている。
そこで、新たな低Al2O3源として、破砕および選鉱処理を行った高品位鉱石(例えば、カナダ産精鉱など)に注目が集まっている。しかしながら、この鉱石については、従来の原料と比較して中粒の粒子であり、また、濡れ性が高い表面性状のため、造粒時に水が偏在すると、粗大粒子になりやすいという課題がある。
この粗大粒子は、強度が弱く、搬送過程で粉化してしまう。それ故、発生した粉の粒径と、粗大粒子の粒径との差により、焼結機に供給後の原料充填層の空隙率を低下させてしまうこととなる。
このような空隙率の低下は、原料充填層の通気性を悪化させてしまうので、焼結鉱の生産性が低下することとなる。そのため、粒度分布が均一な造粒物を製造する手段が必要となってくる。
さて、特許文献1は、対象とする鉱石がペレットフィードと呼ばれる微粉鉱石であり、本発明が対象とする中粒鉱石とは性質が異なるものである。この本発明が対象とする中粒鉱石は濡れ性が高いため、特許文献1のような従来の条件で規定される原料の混合時間や散水密度では十分な水の分散が行われないので、造粒物の粒度分布適正化の効果が顕れるものとはなっていない。
また、特許文献2については、中粒鉱石を用いて焼結用原料を造粒するために必要な条件である混合時間や、散水時の散水密度および液滴径に関する記載や示唆が全く無いため、中粒鉱石を用いて焼結用原料を造粒するために必用な条件が明確ではない。
特許文献3については、ドラムミキサ装入直後に散水するため、原料の初期水分を分散させるために必要となる混合時間を、十分に確保することができない。また、散水密度や液滴径などの原料に対する加水方法に関する記載や示唆が全く無いため、中粒鉱石を用いて造粒する技術に対応するものとはなっていない。
特許文献4は、対象とするものが混練機であり、本発明が対象とする造粒機(ドラムミキサ)に適応可能な技術とはなっていない。また、ミストの液滴径も本発明の条件より細かく、中粒鉱石を用いて造粒する技術に対応するものとはなっていない。
そこで、本発明は、上記問題点に鑑み、中粒鉱石を使用して造粒したときにおいて、「水の偏在」により起因する粗大粒子の生成を抑制して、その粗大粒子に起因する焼結鉱の生産性の低下を回避することができる希薄均一散水による造粒方法を提供することを目的とする。
上記の目的を達成するため、本発明においては以下の技術的手段を講じた。
本発明にかかる希薄均一散水による造粒方法は、造粒の元となる原料の滞留時間が150秒以上あるドラムミキサを用いて、粒度が1.0mm以下の粒子が全体の70質量%以上で且つ、粒度が0.5mm以上の粒子が全体の50質量%以上の中粒鉱石を含む焼結用原料を造粒するにあたり、前記原料を前記ドラムミキサに装入後、非散水で転動のみを60秒以上行い、60秒以上経過後に、転動と共に散水密度が0.25kg/s/m2以下(但し、0を除く)で且つ、前記原料に応じた目標水分となるまで散水し、前記目標水分に到達した以降においては、散水を止めて90秒以上転動させて、前記ドラムミキサから前記焼結用原料を排出することを特徴とする。
本発明によれば、中粒鉱石を使用して造粒したときにおいて、「水の偏在」により起因する粗大粒子の生成を抑制して、その粗大粒子に起因する焼結鉱の生産性の低下を回避することができる。
本発明にかかる希薄均一散水による造粒方法の概要を模式的に示した図である。 ドラムミキサの各領域(1)〜(3)の概念を模式的に示した図である。 各鉱石の粒度分布を示したグラフである。 浸透速度測定装置の概要を模式的に示した図である。 中粒鉱石を配合した時における造粒物の粒度分布変化を示した図である。 原料充填層の通気性測定装置の概要を模式的に示した図である。 中粒鉱石の通気性への影響を示した図である。 並列配置のドラムミキサを有する焼結機の概要を模式的に示した図である。 ドラムミキサ転動中における原料の動きを模式的に示した図である。 焼結鍋試験装置の概要を模式的に示した図である。 ドラムミキサ内部における水分σの変化を示したグラフである。 スプレーノズルの散水時における散水範囲の概念を模式的に示した図である。 散水密度と粗大粒子の生成(存在)割合との関係を示したグラフである。 ドラムミキサ内の水分変化の模式的に示したグラフである。 擬似粒子の構造タイプを模式的に示した図である。 転動時間と擬似粒子の強度の関係を示したグラフである。 タンブラー試験機を模式的に示した図である。 本発明の規定範囲を満たすドラムミキサの概要を模式的に示した図である。 実機のドラムミキサにおける造粒物の粒度分布(中粒鉱石を30%使用した2系統側)を示したグラフである。 本発明での実機(ドラムミキサ)における生産性の改善効果を示した図である。
以下、本発明にかかる希薄均一散水による造粒方法の実施形態を、図を参照して説明する。
なお、以下に説明する実施形態は、本発明を具体化した一例であって、その具体例をもって本発明の構成を限定するものではない。
また、以降の説明において、ドラムミキサ8の転動により造粒される焼結用原料1を、擬似粒子又は造粒物と呼ぶこともある。その焼結用原料1の元となる原料2を、造粒原料と呼ぶこともある。
まず、本発明の希薄均一散水による造粒方法の概要について、述べる。
図1に示すように、本発明は、ドラムミキサ8を用いて焼結用原料1を造粒する場合において、造粒水7(添加水)を添加する「加水」の前工程として造粒原料2の混合領域(1)を設けておき、その混合領域(1)において初期水分6(付着水)の分散を促し、造粒領域(2)での造粒水7の添加を希薄で且つ均一に時間をかけて行って、造粒水7を分散させ、転動領域(3)で散水を止めて転動を行うことで、濡れ性の高い鉱石(中粒鉱石3)を使用した時であっても、造粒時の「水の偏在」により起因する粗大粒子を抑制して、均一な粒度分布を有する造粒物1を製造することができる。
すなわち、図1に示すように、本発明の希薄均一散水による造粒方法は、濡れ性の高い中粒鉱石3を含んだ造粒原料2を使用するときにおいて、「水の偏在」が生じないように、まず散水せずに一定時間ドラムミキサ8を転動して、造粒原料2の付着水6を分散させる。その後、ドラムミキサ8を転動させながら所定量の造粒水7を造粒原料2に対して均等に散水して添加する。さらに、散水を停止してドラムミキサ8をそのまま一定時間転動して、「水の偏在」が生じないように造粒水7を分散させて、粒径の揃った造粒物1を製造する。
例えば、高い散水密度(比較例)の場合、ドラムミキサ8には、初期の付着水6が偏在した状態で造粒原料2が装入される。その後に、付着水6が偏在したままで、局所的に短時間で高い散水密度の造粒水7が造粒原料2に添加されると、高水分部が凝集して粗大化し、ブロードな(粒径の不揃いな)粒度分布を有する造粒物が製造される。
一方、低い散水密度(本発明)の場合、ドラムミキサ8に造粒原料2を装入した後に、造粒水7を添加する前に造粒原料2を混合することで、付着水6の分散を促して「付着水6の偏在」の回避する。さらに、造粒水7の添加についても薄く且つ均一に時間をかけて低い散水密度で行うことで、造粒水7の分散を強化して「造粒水7の偏在」の回避し、シャープな(粒径の揃った)粒度分布を有する造粒物1を製造する。
次に、本発明の希薄均一散水による造粒方法について、詳しく説明する。
焼結鉱とは、主たる高炉原料で、粉状の鉄鉱石に対して、石灰石などの溶剤を添加して、焼結機15にて焼き固めたものである。
焼結機15では、鉄鉱石を主とする焼結鉱の原料(焼結用原料1)をパレット台車上に充填し、その下方より大気を吸引して、焼結用原料1中の粉コークスを連続的に燃焼させた燃焼熱で、カルシウムフェライト系の融液を生成させ、粉鉱石どうしを融液により結合させた焼結鉱を製造する。
そのため、充填された焼結用原料1の通気性は、パレットを通過する吸引大気量(酸素供給量)、すなわち粉コークスの燃焼速度(生産性)に影響を及ぼす。
そこで、焼結プロセスでは、一般的に、造粒機(例えば、ドラムミキサ8、パンペレタイザなど)を用いて、造粒原料2に造粒水7を添加し、焼結時に原料充填層内の空隙を閉塞させて、焼成時の通気性を悪化させる微粉鉱石を、核となる粗粒鉱石に付着させて擬似粒子化された造粒物1を造粒することで、原料充填層(パレット台車上に充填された造粒物1)の通気性を確保する。
焼結機15の大型化に伴って、処理能力の高いドラムミキサ8を採用することが、一般的である。なお、ドラムミキサ8の配列については、直列に2基配置して、主として1次で造粒原料2を混合し、2次で造粒物1を造粒することを目的としたものが多い。
一方で、1基のドラムミキサ8で、上記の操作(混合と造粒)を前半区間と後半区間とに分けて行わせる場合もある。この場合、造粒水7の添加の調整を行うことが重要な点となる(参考文献:鉄鉱便覧 焼結設備頁)。
なお、ドラムミキサ8内での造粒原料2の滞留時間T(s)については、ドラムミキサ8の長さや直径等の設備仕様によって異なり、次のように求められる。
例えば、参考文献(鈴木ら、鉄と鋼 73巻(1987)第15号 p130)では、300gの造粒原料2を布袋に詰め入れてドラムミキサ8の入口から投入して、出口から造粒物1として排出されるまでの時間を、滞留時間Tとして測定している。
また、滞留時間Tは、ドラムミキサ8内に滞留している原料重量W(kg)を測定した後に、原料処理量Q(kg/s)で除して算出することもできる。
即ち、造粒原料2の滞留時間:T=W÷Qで求めることもできる。
なお、原料重量W(kg)については、ドラムミキサ8内の原料2を払出して重量測定しても良い。また、原料重量Wは、堆積している造粒原料2の体積V(m3)を測定し、造粒原料2のかさ密度ρ(kg/m3)を掛けて求めることもできる。
即ち、堆積原料の重量:W=V×ρで求めることもできる。
また、焼結鉱製造用のドラムミキサ8のサイズについては、直径φ=2m〜5m、長さ=10m〜30mと様々である。このドラムミキサ8、1基あたりの滞留時間Tについては、90秒(例えば、特開2003−328042号公報参照)から、600秒(例えば、特開昭62−225238号公報参照)までと幅広いものとなっている。
ところで、1基のドラムミキサ8内で造粒原料2の混合と造粒を行う場合、ドラムミキサ8内部の役割は、次のように考えられる。
図2に、ドラムミキサ8内の各領域の概念を模式的に示す。
図2に示すように、ドラムミキサ8の入口部の「混合領域(1)」と、それに続くものであり、造粒水7を造粒原料2に添加して造粒を進める「加水造粒領域(2)」と、造粒水7の添加後に造粒物1を転動させて高強度に仕上げる「無加水転動領域(3)」との三つの領域に分けて考えることができる。
これら三つの領域(詳細は後述)において適正な滞留時間Tを確保するためには、ドラムミキサ8の滞留時間Tが最低でも150秒以上となるものが必要となる。
つまり、本発明においては、造粒の元となる造粒原料2の滞留時間Tが150秒以上あるドラムミキサ8を用いることとしている。
ここで、本発明で用いる中粒鉱石3の特徴について、述べる。
図3に、各鉱石の粒度分布を示す。
図3に示すように、高品位の中粒鉱石3は、山元で鉄品位向上のために破砕および選鉱工程を経るため、一般的な焼結用の鉱石(例えば、豪州産や南米産の鉱石など)と比較して、粒度に特徴を有している。
すなわち、中粒鉱石3は、焼結プロセスの造粒工程において、核(粒径が1mmより大きい(+1mm))になることが難しく、また単独では付着粉4(粒径が0.5mm以下(-0.5mm))にもなることが難しい、中間粒度を多く含むものであることが多い。すなわち、粒径が0.5mmより大きく、1.0mm以下の中粒鉱石3は、難処理原料である。
一方で、表1に示すように、中粒鉱石3は、選鉱によりAl2O3などの脈石成分が少なく、鉄品位が高いという特性を有している。
表1に、各鉱石の成分を示す。
また、中粒鉱石3は、水に濡れ易く、水の浸透速度を表す指標が5mm2/s以上の吸水性を有している。
そのため、造粒物1を造粒する時において、中粒鉱石3が存在している部分に水(付着水6、造粒水7)が偏在していると、中粒鉱石3を核としてその外周囲の微粉が付着して、粗大粒子になりやすいという性質を有している。
ここで、粒子径(mm)について、述べる。
例えば、粉体工学便覧(粉体工学会編,日刊工業新聞社,初版(昭和61年2月28日),P.1)によれば、「粉体は、色々な大きさを持つ多くの粒子からなるが、この構成粒子群の平均的な大きさの概念を粒度と呼び、個々の粒子の大きさの代表寸法を粒子径と呼ぶ。実際の粒子は複雑な形状を有するために、球や直方体などの単純なものに還元した代表寸法が用いられる。」と記載されている。このことから、粒径は、粒子径とも表し、粒子の大きさを指す代表寸法である。
また、粒子径を測定する方法の一つとして、「篩い分け法」が挙げられる。「篩い分け法」は、見開きの分かった大小2種の篩いによって粉体を分けると、細かい方の篩い網の上に残留した粒子群は二つの目開きの間の大きさを有する。ここで、篩い目の上に残留したものを篩目寸法を超える粒径とし、その篩い目を通過したものを篩目寸法以下の粒径と定義する。
粗大粒子の存在割合(%)については、以下の通りである。
前述の「篩い分け法」により、篩い分けた造粒物1中における、粒径が+5mmの粒子の存在割合を指す。粗大粒子は、強度が弱く、且つ、内部まで伝熱しにくいため、焼結機15への原料装入時の崩壊や、焼成過程での崩壊により粉を発生し、原料充填層の通気性を悪化させる。その結果、焼成時間が延長し、生産性は低下することとなる。そのため、粗大粒子は、少ないほど望ましい。
なお、水の浸透速度を測定する方法については、以下の通りである。
粉鉱石のような粉体と水の濡れ性を測定する手法には、例えば、「浸透速度法」が挙げられる。この手法の場合、粉体の充填層の空隙を毛細管の集合と考えて、以下の「Lucas-Washburnの式」を用いて、水の浸透速度を算出することができる。
・l2/t=(r×γ×cosθ)/2η
但し、l:粉体層への浸透高さ(m)、t:時間(s)、r:毛細管半径(m)、γ:液体の表面張力(m・N/m)、θ:濡れ角(°)、η:液体粘土(m・Pa・s) とする。
上式の左辺[l2/t]については、実測が可能な値であり、高精度表面張力計(例えば、界面協和化学株式会社製、型番:DY-700)や、浸透速度測定装置(例えば、ホソカワミクロン株式会社製ペネトアナライザ)などを使用して測定することができる。
また、簡易的には、図4に示すような浸透速度測定装置9を組み立てることでも測定することが可能である。
一方、上式の右辺[(r×γ×cosθ)/2η]のγ、ηについては、浸透する液体(本実施形態では水)の物性によって決まるため、鉱石層への水の浸透し易さはθ、rによって決まってくる。
例えば、濡れ性の極めて高いイソプロピルアルコール等を水の代わりに用いて、θ=0として、予め毛細管径rを求めることで、水と鉱石の濡れ性θを算出することもできる。
しかし、本実施形態では、鉱石の粒径に影響される毛細管径rも、造粒特性に影響するものと考え、鉱石層への水の浸透速度[l2/t]そのものを求めて、鉱石毎の差を比較した。
表2に、原料充填層の10mmから20mmの間に、水が浸透するまでの時間を測定し、水の浸透速度[l2/t]を計算した結果を示す。
表2に示すように、本発明の対象銘柄である中粒鉱石3は、他の鉱石と比較して、水の浸透速度が速いことが分かる。
なお、詳細は後述するが、「希薄均一散水(ドラムミキサ8内において造粒水7を希薄且つ均一に散水する)」の効果については、水の浸透速度が5mm2/s以下である中粒鉱石3以外の鉱石(豪州系鉱石Bと南米系鉱石A)のみを使用している場合、その効果は認められなかった。
すなわち、造粒水7(添加水)の偏在は、鉱石層への水の浸透し易さ(濡れ性に起因するもの)によって生じるので、水の浸透速度が高い中粒鉱石3を多用する場合においては、顕著に生じるものと言える。
図5に、中粒鉱石3を配合した時における造粒物1の粒度分布変化を示す。
図5に示すように、中粒鉱石3を配合しない条件(0質量%)では、粒径が5mmより大きい(+5mm)の粗大粒子が少なく、且つ、粒径が1mm以下(-1mm)の未造粒粉も少ないシャープな粒度分布、すなわち粒径の揃った粒度分布となっている。
それに対して、中粒鉱石3を増配すると(10質量%,30質量%)、粒径が-1mmの未造粒のものの増加は認められないが、粒径が+5mmの粗大粒子が増加してブロードな粒度分布、すなわち粒径の不揃いな粒度分布となっている。
この理由としては、中粒鉱石3の特徴である高い濡れ性により、造粒水7が中粒鉱石3の存在部位に偏在しやすくなるので、中粒鉱石3に微粉(付着粉4)が凝集した状態で核粒子5に付着することとなり、その付着層が肥大化した高水分の粗大粒子が形成されるためである。
図6に、原料充填層の通気性測定装置10の概要を模式的に示す。
図6に示すように、原料充填層の通気性を評価するため、通気性測定装置10として、アクリルの円筒形模型を使用して、内部に直径φ130mmの原料充填層を形成し、その原料充填層(厚さ=100mm)の圧力損失を測定して、以下の式(1)で示されるJ.P.U.指数を用いて原料充填層の通気性を評価した。
・J.P.U.=Q/A(h/ΔP)0.6 ・・・(1)
図7に、中粒鉱石3の通気性への影響を示す。
図7に示すように、粗大粒子が増加した結果、造粒物1の平均粒径は、約3.5mmから約4.8mmへと大きくなるが、空隙率の低下により原料充填層の通気性は、25から20へと低下した。
この原料充填層の通気性の低下は、先に述べたように、パレットを通過する吸引大気量(酸素供給量)の低下、すなわち粉コークスの燃焼速度(生産性)の低下に影響を及ぼすものとなる。
なお、中粒鉱石3の配合比とは、ドラムミキサ8、1基あたりの配合比のことである。
図8に、並列に配置されたドラムミキサ12,14を有する焼結機15の概要を模式的に示す。
本発明では、中粒鉱石3の配合比(%)を、図8に示すような1系統造粒設備11のドラムミキサ12(DM1)と、2系統造粒設備13のドラムミキサ14(DM2)の並列造粒設備において、次のように定義している。
平均と記載した場合における中粒鉱石3の配合比については、焼結機15(なお、ラボでの場合は焼結鍋試験装置18)に供給される全原料の合計量に対する、焼結機15に供給される中粒鉱石3の合計量の割合を意味する(図8では、10/100×100=100%)。
1系統と記載した場合における中粒鉱石3の配合比については、1系統のドラムミキサ12を通る造粒原料2に対する、1系統のドラムミキサ12を通る中粒鉱石3の割合を意味する(図8では、0/63×100=0%)。
2系統と記載した場合における中粒鉱石3の配合比については、2系統のドラムミキサ14を通る造粒原料2に対する、2系統のドラムミキサ14を通る中粒鉱石3の割合を意味する(図8では、10/37×100=27%)。
上記したことについては、例えば、ドラムミキサ12,14が2基以上、並列に配置されている場合であっても、直列に配置されている場合であっても、同様に考えることができる。
以上述べた中粒鉱石3の配合比の影響を調査するため、ラボにて焼結鍋試験を実施した。
表3に、ラボでの試験条件を示す。なお、表3の混合比の単位は重量%であり、粒子割合は質量%である。また、表3は、それぞれ一続きのものであり、見やすくするため、分割して上下に配置している。
ラボの実験装置については、以下の通りである。
図9に、ドラムミキサ8を転動させているときの造粒原料2の状況を模式的に示す。なお、図9中の破線矢印は、造粒原料2の動きを示す。
ラボにて実施される造粒操作試験の詳細については、以下の通りである。
試験装置として、ドラムミキサ8を用いた。ドラムミキサ8については、直径φ=820mm、長さ=800mm、回転速度=13rpmである。また、原料装入量については、65kgである。
なお、実機のドラムミキサ8については、長さが20m程度であり且つ、入口から出口に向かって2°程度傾斜している(例えば、図2参照)。
そのため、実機のドラムミキサ8は、造粒原料2が入口から出口に向かって移動する連続操作である。
それに対してラボでは、長さの短いドラムミキサ8を水平に設置し、造粒原料2については同じ場所を転動させて、バッチ操作で実機を再現している。
このとき、造粒原料2の混合時間、造粒水7の散水時間、散水後の造粒原料2の転動時間、および、Fr数を実機の条件と揃えることで、造粒条件を合わせた。
なお、Fr数については、ドラムミキサ8内の造粒原料2の挙動を決める指標であり、以下の式で計算される。
造粒手順の詳細については、以下の通りである。
1系統のドラムミキサ12と、2系統のドラムミキサ14(図8参照)のそれぞれにおいて、所定配合の造粒原料2を攪拌機(後述)で、混合を60秒間行った。
混合後の造粒原料2については、ドラムミキサ12,14に装入し、所定の散水密度で、造粒原料2に対して造粒水7を加水しながら、転動造粒した。なお、散水ノズルには、液滴径のザウター平均径が1.0mmとなるものを使用した。
散水終了後も、転動時間が2分間になるように、散水せずにドラムミキサ12,14を転動させた。その造粒後、湿潤した状態で篩い分けて、粗大粒子(+5mm)の割合を調査した。
ラボにて実施される造粒原料2の混合操作の詳細については、以下の通りである。
試験装置として、攪拌機を用いた。攪拌機については、容量=70L、回転速度=25rpmである。また、原料装入量については、45kgである。
前述した1系統と2系統の造粒物1を、1系統と2系統の配合比(1系統/2系統)に合わせて、合計45kgとなるように秤量した。
例えば、1系統/2系統=67/33ならば、1系統=30kgとし、2系統=15kgとする。
これら1系統と2系統の造粒物1を合わせて、実機のドラムミキサ12,14から焼結機15上までの搬送ベルト乗継での混合作用を模擬して、コンクリートミキサで30sec混合後、焼結鍋試験に供した。
ラボにて実施される焼結鍋試験の詳細については、以下の通りである。
図10に、焼結鍋試験装置18の概要を示す。
・試験装置:大型の焼結鍋(焼成面積=280mm×280mm)
・鉱石層厚:500mm
・原料装入量:80kg
・焼成条件:大気吸引(点火時=-1.0kPa、焼成時=-1.6kPa)
・点火時間:90sec
まず、角型で大型の焼結鍋19に、パレットの保護用床敷きとして、粒径が10mm〜20mmの焼結鉱を装入する。その焼結鉱の上に鉄鉱石、石灰石等の副原料、凝結材として粉コークスを疑似粒子化した焼結用原料1を装入した。
なお、配合条件としては、焼結後の成品中のSiO2が5.4質量%、塩基度[CaO/SiO2]が2.1となるように、調整した。
次いで、風箱20に接続された排風機21(吸引機)で、吸引圧=-1.0kPaの一定条件下において、点火バーナーで原料充填層の表面に着火した。その後、吸引圧=-1.6kPaの一定条件下で大気吸引して、焼結用原料1中の粉コークスを燃焼させた。
なお、焼成終了については、排ガス中CO2濃度が0.5%以下に到達した時刻とした。
焼成した焼結ケーキを、落下強度試験装置(JIS M8711:1993)を用いて、床敷きを除いた焼成物全量を2mの高さから4回落下させて、粒径が10mm以上として残留したものを成品とした。
その後、成品中の粒径が10mm〜50mmを、更に2mの高さから4回落下させて、落下試験を行った。
なお、焼成時間(min)については、点火バーナでの着火から、焼成終了(排ガス中CO2濃度が0.5%以下)までの時間と定義する。
また、生産性(t/h/m2)については、以下の式で求めることができる。
・生産性(t/h/m2)={成品重量(kg)÷1000(kg/t)}÷{焼成時間(min)/60(min/hr)}÷焼結鍋の焼成面積(m2)
また、落下強度(%)については、以下の式で求めることができる。
・落下強度(%)=落下試験後の10mm以上の残存量(kg)÷10mm〜50mmの成品重量(kg)×100
さて、ラボでの試験では、並列造粒設備11,13を模擬した設備(図8参照)において、1系統(全原料中の67質量%を占める)と、2系統(全原料中の33質量%を占める)とに造粒物1を作り分け、それら造粒物1を合わせて混合した後に、焼結鍋19に供して焼成を行った。
表3の比較例1は、中粒鉱石3を配合していない条件での造粒と焼成の結果である。本実施形態においては、比較例1をベースの条件としている。
比較例2〜4は、中粒鉱石3を1系統と2系統とに均等に増配した条件での造粒と焼成の結果である。
比較例5は、中粒鉱石3を2系統に片寄せして増配(より多く配合)した条件での造粒と焼成の結果である。
例えば、比較例2〜4に示すように、中粒鉱石3を含む造粒原料2を高い散水密度Sで造粒すると、粗大粒子が増加してしまい、原料充填層の通気性が悪化した。その結果、焼成時間の延長により、生産性が低下することとなった。
また、比較例5に示すように、1系統もしくは2系統のいずれか一方(片方の系統)に、中粒鉱石3を片寄せ(より多く)配合した条件でも、同様に生産性が低下することとなった。
つまり、中粒鉱石3を配合するときの課題である「水の偏在」による粗大粒子の形成を抑制し、粒度分布が均一な造粒物1を製造することが、本発明のポイントとなる。
以上より、本発明においては、粒度が1.0mm以下の粒子が全体の70質量%以上で且つ、粒度が0.5mm以上の粒子が全体の50質量%以上中粒鉱石3を含む焼結用原料1を造粒することとしている。
なお、例えば、粒度が0.7mmの中粒鉱石3の場合、全体の70質量%以上にカウントされると共に、全体の50質量%以上にもカウントされる(図3中の付着粉4と核の間の範囲)。すなわち、中粒鉱石3の粒度については、両方に含まれてカウントされる場合もある。
さて、造粒原料2は、積地(鉱山、港)や揚地(製鉄所)のストックヤードで、雨ざらしにされている。また、その造粒原料2については、前述の他に、発塵防止のために散水が行われる。そのため、鉱石銘柄によって異なるが、3%〜9%の付着水6(初期水分)を有している。
ドラムミキサ8の入口部(例えば、図2参照)では、これら水分の異なる造粒原料2が十分に混合されないままドラムミキサ8内に投入されるため、その造粒原料2中に付着水6が偏在した状態となっている。
そこで、ドラムミキサ8内では、造粒水7を添加する前の混合領域(1)において、付着水6を分散させるため、散水せずに混合のみを行うこととしている。
この水分(付着水6)の分散状態を評価する方法としては、ドラムミキサ8内において造粒原料2を局所的に複数採取して、それら造粒原料2における水分のバラツキを測定する方法が挙げられる。
例えば、造粒原料2を内部に残留させたままドラムミキサ8を停止し、造粒原料2を50gずつ幅方向(径方向)に満遍なく且つ、機長方向(全長方向)においても採取し、乾燥法により造粒原料2の水分を測定し、その水分の標準偏差を求める。
なお、乾燥法とは、乾燥前の原料重量W(g)と、乾燥後の原料重量D(g)から、以下の式(2)を用いて、水分Xを算出する方法である。
・水分X=(W-D)÷W×100 ・・・(2)
図11に、実機のドラムミキサ8内の造粒水7を添加する前段階の混合領域(1)における、水分σの変化を測定した結果を示す。
図11に示すように、ドラムミキサ8の入口部においては、水分σは高いものとなっているが、造粒原料2の混合時間が延びる、すなわち造粒原料2がドラムミキサ8の出口方向に移動することに伴って、水分σが低下していることがわかる。
造粒原料2の条件によっては、ドラムミキサ8の入口部における水分σについて大小異なるもの(σ=0.4〜1.1)となっている。しかし、本発明のように、ドラムミキサ8内の混合領域(1)において、60秒以上の混合時間を設けることで、水分σの低下が飽和することがわかった。
このように、造粒原料2の付着水6(初期水分)の偏在が大きいと、後に造粒水7を添加する過程において水分(付着水6を含む)の分散を図ったとしても、水の分散効果が弱まる。そのため、造粒原料2をドラムミキサ8に投入後60秒以上においては、散水をせずに混合のみを行うことで、付着水6の分散を促すこととしている。
以上より、本発明においては、造粒原料2をドラムミキサ8に装入後、非散水で転動のみを60秒以上行うこととしている。
ところで、ドラムミキサ8内の加水造粒領域(2)においては、スプレーノズル16(散水ノズル)より造粒水7を造粒原料2に添加する「希薄均一散水(薄く満遍なく造粒水7を散布)」を行うことが、水の分散に効果がある。
なお、造粒原料2が一度に受ける造粒水7の添加量については、面積当たりと時間当たりの散水密度で表すことができる。
図12に、スプレーノズル16の散水範囲の概念を模式的に示す。
図12に示すように、例えば、円錐状に広がるように散水するスプレーノズル16を使用した場合、散水密度は以下のように算出することができる。
つまり、散水密度S(kg/s/m2)は、スプレーノズル16、1本当たりの添加水量N(kg/s)、噴霧角θ(°) 、および、ドラムミキサ8内の造粒原料2とスプレーノズル16間の距離L(m)から、式(3)を用いて求めることができる。
・散水密度S=N÷(3.14×(L×tan(θ/2))2) ・・・(3)
このとき、造粒原料2の占積率(ドラムミキサ8の体積に対する、内部の造粒原料2が占める体積割合)が5%から15%であれば、転動中の造粒原料2については、ドラムミキサ8の正面視で、6時の方向から9時の方向の約90°で転動している。
また、スプレーノズル16の噴霧角θについては、移動している造粒原料2の幅以上に添加水7(造粒水)が広がらないような角度にする必要がある。
なお、図12に示す円錐形に造粒水7を噴霧するスプレーノズル16の構成は一例であり、本発明の散水密度Sを実現できるのであれば、楕円形や四角に噴霧するスプレーノズル16を採用しても良い。つまり、本発明の散水密度を満たすものであれば、スプレーノズル16の構成について、特に限定はしない。
図13に、中粒鉱石3の配合比が0質量%,10質量%,30質量%のときの散水密度Sの影響を示す。
図13に示すように、濡れ性が高く、水を偏在させる中粒鉱石3の配合比が0質量%である場合、粗大粒子(+5mm)の存在割合に対する散水密度Sの影響は認められなかった(◆印)。
しかしながら、中粒鉱石3を配合した場合(10質量%,30質量%)においては、散水密度Sが低いほど粗大粒子(+5mm)の存在割合は低減した(▲印、■印)。
このように、中粒鉱石3を使用する場合、粗大粒子(+5mm)の存在割合を元の状態、すなわち中粒鉱石3の配合無しの時(0質量%配合時)の均一な粒度分布レベルまで低減させるためには、散水密度Sを0.25kg/s/m2以下にする必要がある。
なお、水の分散を促す観点から、散水密度Sは低いほうが好ましく、0.25kg/s/m2以下で造粒を行っても良い。
ここでの散水密度Sは、対象の面積スケールにおいて均一であることが必要である。
例えば、同じ散水密度Sであっても、1m2に均一に分散させて(広い範囲に均一に)散水する場合と、1m2の中央に集中して(真ん中に多く)散水する場合とでは、当然、造粒原料2全体に対する水の分散状態は異なってくる。
散水対象である、平均粒径が3mm程度の造粒物1に対して、水の分散を高めるためには、十分に狭い領域(0.1cm2=平均粒径の造粒物の投影面積)において、先述の散水密度Sを制御する必要がある。
また、液滴径が小さいほど、水は分散しやすいと考えられるが、本実験で用いた散水ノズル16(液滴径のザウター平均径が1.0mm)においても、水の分散効果は十分であった。
なお、ザウター平均径(mm)とは、液滴大きさだけでなく、存在個数の分布も考慮した平均粒径である。
粒子のほとんどが中程度である場合と、小粒径から大粒径まで平均的に分布している場合とでは、同じ算術平均粒径となる場合がある。しかしながら、その平均の実態は異なっている。
そこで、直径diの液滴がni個存在する場合、ザウター平均径D(mm)は、式(4)により求めることができる。
・ザウター平均径D=Σ(ni×di3)÷Σ(ni×di 2) ・・・(4)
なお、液滴径を測定する方法については、レーザードップラー法が一般的である。この方法によれば、気体や液体中に浮遊する球形粒子、液滴、気泡などの粒径、速度および濃度を測定することができる。
また、レーザードップラー法とは、散水流に対して2本のレーザを交差させ、形成された緩衝縞を通過した粒子により生じた散乱光を複数の受光器で感知し、位相差から粒子径を算出する方法である(参考文献:豊田中央研究所R&Dレビューvol.28 No.2 p4)。
表4、表5に、中粒鉱石3の配合時における造粒試験の結果を示す。なお、表4、表5の混合比の単位は重量%であり、粒子割合は質量%である。また、表4、表5は、それぞれ一続きのものであり、見やすくするため、分割して上下に配置している。
表4、表5に示すように、散水密度Sに対する粗大粒子(+5mm)の存在割合の結果を基に、中粒鉱石3の配合比と造粒時の散水密度Sを変更した際の粗大粒子(+5mm)の存在割合の変化を試算した。
比較例6〜9は、中粒鉱石3を2系統側のドラムミキサ14に片寄せ(より多く)配合し、本発明の規定範囲より高い散水密度Sで造粒した条件での造粒結果である。
実施例1〜2は、中粒鉱石3を含む2系統側のドラムミキサ14を、適正な散水密度Sで造粒した条件での造粒結果である。
なお、1系統側のドラムミキサ12については、中粒鉱石3を含まないため、散水密度Sは0.5kg/s/m2とし、一定とした。
比較例10〜13は、中粒鉱石3を均等に配合し、本発明の規定範囲より高い散水密度Sで造粒した条件での造粒結果である。
実施例3〜4は、1系統のドラムミキサ12と、2系統のドラムミキサ14とともに、適正な散水密度Sで造粒した条件での造粒結果である。
比較例6〜9および比較例10〜13では、ベース条件である比較例1よりも、混合後の粗大粒子(+5mm)の存在割合が増加することから、焼成時の原料充填層の通気性悪化による生産性の低下が予想される。なお、ベース条件においては、混合後の粗大粒子の存在割合=16.7%である。
一方、実施例1〜4では、適正な散水密度Sでの造粒により、粗大粒子が抑制されたため、生産性低下の回避が期待できる。
そこで、比較例9および実施例2の条件で、ラボにて焼結鍋試験を実施した。なお、ラボの実験装置については、上で述べた通りである。
表6に、比較例9および実施例2の造粒と焼成の試験結果を示す。
このとき、並列造粒設備11,13を模擬した設備において、1系統(全原料中の67質量%を占める)と、2系統(全原料中の33質量%を占める)とに造粒物1を作り分け、それら造粒物1を合わせて混合した後に、焼結鍋19に供して焼成を行った(図8参照)。
比較例9は、中粒鉱石3を2系統のドラムミキサ14に片寄せ(より多く配合)し、本発明の規定範囲より高い散水密度Sで造粒した条件での焼成結果である。
実施例2は、中粒鉱石3を2系統のドラムミキサ14に片寄せ(より多く配合)し、適正な散水密度Sで造粒した条件での焼成結果である。
比較例9では、粗大粒子の抑制が不十分であり、焼成時間の延長にともない、生産性が低下することとなった。
一方、実施例2では、粗大粒子の抑制効果により、焼成時間の延長はなく、生産性が向上した。なお、ベース条件(比較例1)においては、生産性=1.51t/h/m2である。
このように、散水密度S=0.25kg/s/m2以下で中粒鉱石3を造粒することで、粗大粒子の生成を抑制し、生産性の向上が可能となる。
ところで、造粒時の水分は、低くなり過ぎると、未造粒粉(-1mm)が残留することとなる。一方、造粒時の水分が高くなり過ぎても、原料2がスラリー化することとなる。このように、どちらの場合でも原料充填層の空隙を閉塞させるので、原料充填層の通気性が低下してしまう。
造粒原料2に応じた造粒水7の目標水分を決定する方法については、様々なものが挙げられる。例えば、水分を変更した造粒試験を行い、先に述べた方法で原料充填層の通気性[J.P.U.指数]を測定して、最大となる水分を目標水分と決定する方法が挙げられる。
この目標水分は、当業者であれば、容易に決定できる値であり、通常では6%から8%程度である。
なお、本発明の実施条件においては、6.5±0.2%を目標水分とした。
即ち、ドラムミキサ8の入口部における原料付着水6が平均4.5%であれば、差分の2.0%に相当する水を、ドラムミキサ8内で造粒水7として添加することとなる。
図14に、ドラムミキサ8内の水分変化を示す。
このとき、図14に示すように、ドラムミキサ8内の造粒原料2の水分変化は、例えば、スプレーノズル16、2本で造粒水7を添加することで、目標水分に到達する時間が延び、散水密度Sは低くなる。
以上より、本発明においては、60秒以上経過後に、ドラムミキサ8を転動させると共に、散水密度Sが0.25kg/s/m2以下(但し、0を除く)で且つ、造粒原料2に応じた目標水分となるまで散水することとしている。
さて、ドラムミキサ8の無加水転動領域(3)の役割については、強度の弱い造粒物を転動させることによって崩壊させて、再造粒することにより、造粒物1全体の強度を向上させる点にある。
図15に、擬似粒子1の構造タイプの模式図を示す。
図15に示すように、一般的に、核粒子5の外周側に、均一に付着粉4が付着した疑似粒子1(C型と呼ばれるもの)については、骨材効果により強度が強い。
一方で、「水の偏在」により高水分部に生じる核粒子5の無い擬似粒子(P型と呼ばれるもの)や、核粒子5を有していても付着粉4により粗大化した疑似粒子(C型肥大)については、強度が弱い。
また、「水の偏在」によって生じる低水分の擬似粒子も強度が弱く、この無加水転動領域(3)で崩壊して、他の擬似粒子に取り込まれる形で再造粒される。
図16に、実機のドラムミキサ8内の擬似粒子1の強度変化を、アイ型のタンブラー試験機17を用いて調査した結果を示す。
図16に示すように、加水転動領域(2)にて散水造粒中に一度低下した疑似粒子1の強度については、転動時間が延びる、すなわち造粒原料2がドラムミキサ8の出口方向に移動すると向上することとなる。
ドラムミキサ8から排出された造粒物1は、複数の搬送ベルトの乗継を経て、焼結機15へ給鉱されるため、強度は高いほど望ましい。
したがって、無加水転動領域(3)により擬似粒子1の強度向上が飽和するように、散水完了(停止)後のドラムミキサ8の転動時間については、90秒以上とする。
ここで、造粒物1の強度測定方法について、述べる。
図17に、アイ型のタンブラー試験機17の概要を模式的に示す。
図17に示すように、造粒物1の強度については、アイ型のタンブラー試験機17で測定した。その測定の条件としては、落差500mm,20rpm,2minなどとした。
まず、造粒物1を粒径=(3mm〜5mm),(5mm〜10mm)ごとに篩分けて乾燥した後、それぞれ500gの試料をアイ型のタンブラー試験機17に装入し、試験後の(+3mm),(+5mm)の残存率をタンブラー強度として評価した。
この造粒物の強度が弱いと、焼結機15への造粒物1装入時の崩壊や、焼成過程での崩壊により粉を発生することとなり、通気性を悪化させる。その結果、焼成時間が延長されることとなり、生産性が低下してしまう。そのため、造粒物1の強度は、高いほど望ましい。
図18に、以上述べた本発明の規定を満たす「希薄均一散水」による造粒条件を示す。
図18に示すように、本発明の規定を満たすことで、濡れ性が高い中粒鉱石3を用いて造粒する時に生じる粗大粒子の生成を抑制し、造粒物1の粒度分布をシャープにする、すなわち粒径の揃ったものにすることで、生産性の低下を回避することができる。
最後に、実機での実施条件について、説明する。
図8に示すような、並列に配置されたドラムミキサ12、14を有する焼結機15において、中粒鉱石3を新原料中に10質量%配合したときにおける、本発明が発現する効果を以下に示す。
なお、滞留時間Tについては、360secである。
中粒鉱石3については、一方側のドラムミキサ14(以後、2系統(DM2)側とする)において集中して使用した。そのため、2系統のドラムミキサ14内の中粒鉱石3の配合比は27質量%となり、本発明の効果が発現する規定範囲となる。
スプレーノズル16(株式会社いけうち製、材質:アルミナ、形番:3/4MAJP90AL92)を、2系統のドラムミキサ14に2本設置し、散水密度Sを従来の2.5kg/s/m2から、0.25kg/s/m2まで低減させた。
なお、本実験で使用したスプレーノズル16の液滴は、ザウター平均径で950μm〜1250μmのものである。
このとき、散水前の混合時間が70秒、散水完了後のドラムミキサ14の転動時間が220秒となるように、散水ノズル16を配置した。なお、ドラムミキサ14の全滞留時間Tについては、360秒である。
さらに、図8について、補足する。
図8に示すブレンド粉とは、複数の鉄鉱石や製鉄所からの発生品(転炉スラグやスケールなど)をヤードでブレンドした原料のことを指し示す。
また、粉コークスおよび返鉱などについては、成品焼結鉱の品質や物量バランスに合わせて、1系統と2系統の造粒比率に合わせて配合している(図8の場合は、1系統/2系統=63/37)。
なお、返鉱は、新原料に対して、20%〜25%を外数で配合した。また、粉コークスは、新原料と返鉱を合わせた配合原料に対して、4.0%〜4.5%を外数で配合した。
図19に、実機のドラムミキサ14(中粒鉱石を30質量%使用した2系統側)における造粒物1の粒度分布を示す。
図20に、本発明での実機(ドラムミキサ14)における生産性の改善効果を示す。
図19に示すように、2系統のドラムミキサ14で造粒した造粒物1については、散水密度Sを低減させたことで、シャープな(粒径の揃った)粒度分布に変化した。
その結果、図20に示すように、中粒鉱石3を増配させる(30質量%)と、中粒鉱石3の配合無し(0質量%)のときより、生産性が低下してしまった(約1.63(t/h/m2)→約1.59(t/h/m2))。
一方で、本発明の規定に従って実施すると、生産性(生産効率)が元のレベル(中粒鉱石3の配合無し(0質量%)のとき)以上に、各段に改善する効果が得られた(約1.67(t/h/m2))。
まとめると、本発明にかかる希薄均一散水による造粒方法は、造粒の元となる造粒原料2の滞留時間Tが150秒以上あるドラムミキサ8を用いて、粒度が1.0mm以下の粒子が全体の70質量%以上で且つ、粒度が0.5mm以上の粒子が全体の50質量%以上の中粒鉱石3を含む焼結用原料1を造粒するにあたり、造粒原料2をドラムミキサ8に装入後、非散水で転動のみを60秒以上行い、60秒以上経過後に、転動と共に散水密度Sが0.25kg/s/m2以下(但し、0を除く)で且つ、造粒原料2に応じた目標水分となるまで散水し、目標水分に到達した以降においては、散水を止めて90秒以上転動させて、ドラムミキサ8から焼結用原料1を排出することを特徴としている。
以上、本発明に従って焼結用原料1を造粒すれば、中粒鉱石3を使用して造粒したときにおいて、「水の偏在」により起因する粗大粒子が生成されることを抑制して、その粗大粒子に起因する焼結鉱の生産性の低下を回避することができる。
なお、今回開示された実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。
特に、今回開示された実施形態において、明示されていない事項、例えば、運転条件や操業条件、各種パラメータ、構成物の寸法、重量、体積などは、当業者が通常実施する範囲を逸脱するものではなく、通常の当業者であれば、容易に想定することが可能な値を採用している。
1 焼結用原料(擬似粒子、造粒物)
2 原料(造粒原料)
3 中粒鉱石
4 付着粉
5 核粒子
6 付着水(初期水分)
7 造粒水(添加水)
8 ドラムミキサ
9 浸透速度測定装置
10 通気性測定装置
11 1系統造粒設備
12 1系統のドラムミキサ
13 2系統造粒設備
14 2系統のドラムミキサ
15 焼結機
16 ノズル(スプレーノズル)
17 タンブラー試験機
18 焼結鍋試験装置
19 焼結鍋
20 風箱
21 排風機

Claims (1)

  1. 造粒の元となる原料の滞留時間が150秒以上あるドラムミキサを用いて、粒度が1.0mm以下の粒子が全体の70質量%以上で且つ、粒度が0.5mm以上の粒子が全体の50質量%以上の中粒鉱石を含む焼結用原料を造粒するにあたり、
    前記原料を前記ドラムミキサに装入後、非散水で転動のみを60秒以上行い、
    60秒以上経過後に、転動と共に散水密度が0.25kg/s/m2以下(但し、0を除く)で且つ、前記原料に応じた目標水分となるまで散水し、
    前記目標水分に到達した以降においては、散水を止めて90秒以上転動させて、前記ドラムミキサから前記焼結用原料を排出する
    ことを特徴とする希薄均一散水による造粒方法。
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