JP6172906B2 - 樹脂組成物、およびそれから形成される塗膜 - Google Patents
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Description
すなわち本発明の要旨は、以下の通りである。
本発明の樹脂組成物は、アクリル変性ポリエステル共重合体と、平均粒子径が1〜30μmである架橋ポリメタクリル酸メチル微粒子とを含有する樹脂組成物であって、該架橋ポリメタクリル酸メチル微粒子の含有量が1〜40質量%であることを特徴とするものである。
本発明の樹脂組成物に含有されるアクリル変性ポリエステル共重合体は、バインダー樹脂としての役割を担うものである。該共重合体は、多価カルボン酸成分とグリコール成分とを含むポリエステル樹脂に対して、変性成分としてのアクリル系モノマーを重合させて変性することで得られたものであり、主鎖であるポリエステルポリマーにアクリル系モノマーが導入されてなるものである。
まず、主鎖であるポリエステルポリマーとなるポリエステル樹脂を、例えば、以下のような方法にて製造する。すなわち、多価カルボン酸やグリコールなどの原料モノマーを反応缶に投入した後、エステル化反応をおこなう。次いで、公知の方法で所望の分子量に達するまで重縮合させることにより、ポリエステル樹脂を製造することができる。エステル化反応は、例えば、180℃以上の温度において4時間以上おこなわれる。
架橋ポリメタクリル酸メチル微粒子は、塗膜とされた場合の硬度を向上させるために、本発明の樹脂組成物に含有されるものである。該微粒子を構成するポリメタクリル酸メチルに含有されるアクリル成分としては、アクリル系樹脂に由来するものが挙げられる。アクリル系樹脂としては、例えば、アクリル酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸ソーダ、アクリル酸アンモニウム、メタクリル酸、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸グリシジル、2−ヒドロキシエチルアクリレート、アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メトキシメチルアクリルアミドおよびN−メチロールアクリルアミドなどから選ばれた1種以上を挙げることができる。
すなわち、上述のようにして得られたポリエステル樹脂に対してアクリル系モノマーを重合させることによりアクリル変性ポリエステル共重合体を得、このアクリル変性ポリエステル共重合体に対し、架橋ポリメタクリル酸メチル微粒子を均一に分散させる。ここで、該微粒子の含有割合が、得られる樹脂組成物において1〜40質量%となるように分散させる。架橋ポリメタクリル酸メチル微粒子を分散する方法としては、アクリル変性ポリエステル共重合体を汎用の有機溶剤に溶解した後、該微粒子を添加し、これを撹拌することにより分散してもよい。あるいは、押出機などを用い、アクリル変性ポリエステル共重合体中に架橋ポリメタクリル酸メチル微粒子を直接練り込むことにより分散してもよい。なお、アクリル変性ポリエステル共重合体を溶解するための汎用の有機溶剤とは、特に限定されるものではなく、トルエン、メチルエチルケトン、アルコール、あるいはこれらの水溶液などが挙げられる。
(1)アクリル変性ポリエステル共重合体の酸価
得られたアクリル変性ポリエステル共重合体1gをジオキサン50mlに室温で完全に溶解させた後、クレゾールレッドを指示薬として、0.1モル/Lの水酸化カリウムメタノール溶液で滴定をおこなった。そして、中和に消費されたKOHのmg数を、アクリル変性ポリエステル共重合体のg数で割った値を酸価として求めた。
送液ユニット(島津製作所社製、「LC−10ADvp型」)および紫外−可視分光光度計(島津製作所社製、「SPD−6AV型」)を用い、GPC分析により、ポリスチレン換算でアクリル変性ポリエステル共重合体の数平均分子量を求めた。なお、GPC分析条件としては、検出波長を254nmとし、溶媒としてテトラヒドロフランを用いた。
NMR測定装置(日本電子社製、「JNM−LA400型」)を用い、1H−NMR測定をおこなって、それぞれのモノマー成分のピーク強度からアクリル変性ポリエステル共重合体の組成を求めた。なお、測定溶媒としては、重水素化トリフルオロ酢酸を用いた。
JIS−K 7121に従って、入力補償型示差走査熱量測定装置(パーキンエルマー社製、「ダイヤモンドDSC」)を用い、−40℃から100℃まで、10℃/分で昇温させたチャートから、アクリル変性ポリエステル共重合体のガラス転移温度(Tg)を読み取った。
下記式により求めた。
アクリル変性ポリエステル共重合体層の厚みに対する架橋ポリメタクリル酸メチル微粒子の突出高さの割合(%)={(架橋ポリメタクリル酸メチル微粒子の平均粒子径−アクリル変性ポリエステル共重合体層の厚み)/アクリル変性ポリエステル共重合体層の厚み}×100
実施例、参考例および比較例にて得られた樹脂組成物を、その固形分濃度が30質量%になるように、トルエンとメチルエチルケトンの混合溶剤[(トルエン)/(メチルエチルケトン)=8/2、質量比)に溶解させ、該混合溶剤を1時間振とう機で振った後、微粒子の分散状況を目視で観察し、下記の基準で評価した。
○:混合溶剤中において、微粒子が均一に分散していた。
△:混合溶剤中において、微粒子の一部が分散していた。
×:混合溶剤中において、微粒子のほとんどが浮遊または沈降し、分散しなかった。
なお、上記の混合溶剤中の微粒子の分散性に優れることは、アクリル変性ポリエステル共重合体と微粒子との相溶性に優れることを意味し、これは、得られる樹脂組成物中および塗膜中における微粒子の分散性に優れることの指標となる。
本発明においては、○または△であるものが実用上の分散性を備えていると判断し、×であるものは分散性に劣るため実用性を有しないと判断した。
実施例、参考例および比較例にて得られた樹脂組成物を、その固形分濃度が30質量%になるように、トルエンとメチルエチルケトンの混合溶剤[(トルエン)/(メチルエチルケトン)=8/2、質量比]に溶解させて溶解液を得た。該溶解液を、卓上型コーティング装置(安田精機社製、フィルムアプリケータNo.542−AB型、バーコータ装置)を用いて銅板に塗布した。その後、100℃で30秒間熱処理することで、所定の厚みの塗膜を形成した。この塗膜を、各種の硬度を有する鉛筆(三菱鉛筆社製、「UNI」シリーズ)を用いて引っ掻き、塗膜が破損して鉛筆の先端が基板に達したときの該鉛筆の硬度により、下記の基準で評価した。
◎:鉛筆の硬度が3H以上であった。
○:鉛筆の硬度が2H以上3H未満であった。
△:鉛筆の硬度がH以上2H未満であった。
×:鉛筆の硬度がH未満であった。
本発明においては、△以上の評価であるものが実用性を有するものであると判断し、×であるものは硬度に劣るため実用性を有しないと判断した。
基材としてPET基材(ポリエチレンテレフタレート基材)上に(7)と同様の方法で塗膜を形成した。この塗膜を、180°方向に折り曲げ、開いた際の塗膜の状態を目視にて観察した。そして、下記の基準で評価した。
◎:塗膜は割れず、かつ折り曲げた跡も残らなかった。
○:塗膜は割れなかったが、折り曲げた跡が少し残った。
△:塗膜は割れなかったが、折り曲げた跡が強く残った。
×:塗膜が割れた。
本発明においては、△以上の評価であるものが実用性を有するものであると判断し、×であるものは可とう性に劣るため実用性を有しないと判断した。
基材としてPET基材(ポリエチレンテレフタレート基材)および銅箔上に、(7)と同様の方法で塗膜を形成した。これらの塗膜において、JIS K5600−5−6に規定されたクロスカット法に従って切込みを入れ、マス目を100個形成した。その後、JIS Z1522に規定された粘着テープ(幅18mm)を、切り込み方向の一方向に平行な方向に端部を残して貼りつけ、該粘着テープの上から消しゴムでこすって十分に接着させた。次いで、該粘着テープを貼付面に対して60°の角度の方向に引っ張って、瞬間的に引き剥がした。粘着テープを引き剥がした後、塗膜に残るマス目の数を目視で計測し、下記の基準で評価した。
◎:残ったマス目が95枚以上であった。
○:残ったマス目が90枚以上95枚未満であった。
△:残ったマス目が70枚以上90枚未満であった。
×:残ったマス目が70枚未満であった。
本発明においては、△以上の評価であるものが実用性を有するものであると判断し、×であるものは塗膜の密着性に劣るため実用性を有しないと判断した。
○:上記の(6)〜(9)の評価結果において×の評価が無い。
×:上記の(6)〜(9)の評価結果のうち、1つ以上の×の評価がある。
調製例1
テレフタル酸83g(50モル%)、イソフタル酸83g(50モル%)、エチレングリコール43g(70モル%)、ネオペンチルグリコール68g(65モル%)、および重合触媒としてテトラブチルチタネート0.1gを反応器に仕込み、系内を窒素に置換した。そして、これらの原料を1000rpmで撹拌しながら、反応器を245℃で加熱し溶融させた。なお、反応器内温度が245℃に到達してから、3時間エステル化反応を進行させた。3時間経過後、系内の温度を250℃にし、系内を減圧した。系内が高真空(圧力:0.1〜10−5Pa)に到達してから、さらに3時間重合反応を行い、ポリエステル樹脂Aを得た。次いで、該ポリエステル樹脂Aの存在下で、アクリル酸14g(20モル%)を用い、80℃で6時間重合に付することで、主鎖であるポリエステルポリマーにアクリル系モノマーが導入されてなる調製例1のアクリル変性ポリエステル共重合体を得た。
表1に示すように、仕込組成および重合時間を変更して複数種のポリエステル樹脂を調整し、該ポリエステル樹脂の種類、アクリル系樹脂の種類および含有割合を変更した以外は、調製例1と同様にし、調製例2〜21のアクリル変性ポリエステル共重合体、および調製例22のアクリル変性されていないポリエステル共重合体を得た。
調製例1〜21で得られたアクリル変性ポリエステル共重合体および調製例22で得られたアクリル変性されていないポリエステル共重合体の組成と特性とを表1にて示す。
(I):アクリル酸
(II):アクリル酸メチル
(III):メタクリル酸
(IV):メタクリル酸メチル
TPA:テレフタル酸
IPA:イソフタル酸
EG:エチレングリコール
PG:プロピレングリコール
NPG:ネオペンチルグリコール
PTMG1000:ポリテトラメチレングリコール
(i):架橋ポリメタクリル酸メチル微粒子(綜研化学社製、「MX−1000」、平均粒子径:10μm)
(ii):架橋ポリメタクリル酸メチル微粒子(積水化成品工業社製、「SSX−101」、平均粒子径:1μm)
(iii):架橋ポリメタクリル酸メチル微粒子(積水化成品工業社製、「MBX−20」、平均粒子径:30μm)
(iv):架橋ポリメタクリル酸メチル微粒子(積水化成品工業社製、「エポスターMX200W」、平均粒子径:0.4μm)
(v):架橋ポリメタクリル酸メチル微粒子(積水化成品工業社製、「MBX−40」、平均粒子径:40μm)
(vi):メチロールメラミン微粒子(日本カーバイド工業社製、「ニカレジンS−260」、平均粒子径:10μm)
調製例1にて得られたアクリル変性ポリエステル共重合体30gを、その固形分濃度が30質量%になるように、トルエンとメチルエチルケトンの混合溶剤[(トルエン)/(メチルエチルケトン)=8/2、質量比]70gに溶解させ、6gの架橋ポリメタクリル酸メチル微粒子(i)(樹脂固形分に対し20質量%)を添加した後、1時間振とう機で振り、該微粒子を均一に分散させ、実施例1の樹脂組成物を得た。得られた樹脂組成物から、上記評価方法における(7)の手法により、PETフィルム上と銅箔上とに、それぞれ、アクリル変性ポリエステル共重合体層の厚みが8μmである塗膜を形成し評価に付した。実施例1の評価結果を表2に示す。
アクリル変性ポリエステル共重合体の種類、および微粒子の種類と含有量を、表2〜3に示すように変更した以外は、実施例1と同様の操作を行って樹脂組成物を得た。得られた樹脂組成物から、表2および表3に示すようにアクリル変性ポリエステル共重合体層の厚みを変えた塗膜を形成し、実施例1と同様の手法により評価に付した。その結果を表2および表3に示す。
2 基材
3 アクリル変性ポリエステル共重合体層の厚み
4 アクリル変性ポリエステル共重合体層
5 架橋ポリメタクリル酸メチル微粒子
6 架橋ポリメタクリル酸メチル微粒子の突出高さ
Claims (6)
- アクリル変性ポリエステル共重合体と、平均粒子径が10〜30μmである架橋ポリメタクリル酸メチル微粒子とを含有する樹脂組成物であって、該架橋ポリメタクリル酸メチル微粒子の含有量が5〜35質量%であって、アクリル変性ポリエステル共重合体は、数平均分子量が10000〜35000であり、かつ、ガラス転移温度が−10〜66℃であることを特徴とする樹脂組成物。
- 硬化剤を1質量%以下の割合で含有することを特徴とする請求項1に記載の樹脂組成物。
- 請求項1または2に記載の樹脂組成物を製造する方法であって、ポリエステル樹脂に対してアクリル系モノマーを重合させることによりアクリル変性ポリエステル共重合体を得た後、該アクリル変性ポリエステル共重合体に対し、架橋ポリメタクリル酸メチル微粒子を分散させることを特徴とする樹脂組成物の製造方法。
- 請求項1または2に記載の樹脂組成物から形成され、アクリル変性ポリエステル共重合体からなる層および平均粒子径が10〜30μmである架橋ポリメタクリル酸メチル微粒子を含有することを特徴とする塗膜。
- アクリル変性ポリエステル共重合体からなる層の厚みが3〜20μmであることを特徴とする請求項4に記載の塗膜。
- アクリル変性ポリエステル共重合体からなる層の厚みが架橋ポリメタクリル酸メチル微粒子の平均粒子径よりも薄く、塗膜表面に架橋ポリメタクリル酸メチル微粒子の一部が露出していることを特徴とする請求項4または5に記載の塗膜。
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