JP6170215B2 - 防水構造 - Google Patents

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Description

本発明は、外部床および外部床の周縁部に沿って立ち上がるパラペットの防水構造に関するものである。
従来、ベランダや陸屋根等の略水平な外部床に防水シートを用いて防水層を形成する防水構造が知られている。この防水シートは、例えば、塩化ビニル等の軟質の合成樹脂素材からなっている。防水層を形成する際の代表的な工法として、次の2種類の工法が挙げられる。
そのひとつの工法は、特許文献1に記載されるように、防水シートを接着剤によって全面的に床下地に接着する工法である。この工法は、密着工法または接着工法と呼ばれる。もうひとつの工法は、特許文献2に記載されるように、防水シートと同一素材のコーティング層を表面に有する円板状の固定具を用い、この固定具を床下地上に点状に配置し、この固定具に対して防水シートを接着する工法である。防水シートは、熱による融着または溶剤による溶着によって固定具に接着される。この工法は、絶縁工法または機械式固定工法と呼ばれる。
特開2007−231044号公報 特開2007−154462号公報
しかしながら、特許文献1に記載の密着工法では、工程が天候の影響を受けやすいため、工程の管理が難しく、施工コストの増大を招きかねない。また、接着剤を床下地の全面に塗布するため、塗布量のムラが発生しやすく、品質の管理が難しいといった問題もある。一方、特許文献2に記載の絶縁工法では、天候の影響を受けにくく、品質も比較的安定するが、接着剤に代えて上記の固定具を用いるため、その分、材料費が高くなるといった問題がある。また、外部床の周縁部やその周縁部から立ち上がるパラペットが設けられる場合には、周縁部やパラペットの部分に固定具が配置されるよう長尺の固定具を用いる必要があり、材料費が更に高くなってしまう。その場合、施工の手間もかかってしまう。
本発明は、品質の管理が容易であり、かつ、施工コストの増大を抑えることができる防水構造を提供することを目的とする。
本発明に係る防水構造は、外部床および外部床の周縁部に沿って立ち上がるパラペットに防水シートが設けられた防水構造であって、防水シートが、外部床の周縁部を除く領域においては、外部床に載置されビスで固定された複数の固定具によって接着され、外部床が、鉄骨梁に掛け渡された複数のALCパネルと、複数のALCパネル間に形成された目地部に充填された目地モルタルと、を含む床下地を備え、ビスが、ALCパネルの内部における補強鉄筋で囲まれた領域に設けられ外部床の周縁部からパラペットの内側面にかけては、接着剤によって接着されたことを特徴とする。
また、防水シートが、外部床の周縁部からパラペットの内側面にかけては、接着剤によって接着されたことが好ましい。この防水構造によれば、外部床の周縁部を除く領域においては、防水シートが固定具によって接着される。また、外部床の周縁部からパラペットの内側面にかけては、防水シートが接着剤によって接着される。このように、外部床からパラペットの内側面にかけての狭い領域のみにおいて密着工法を採用しているので、全体として品質の管理が容易であり、品質の低下を防止することができる。さらには、天候の影響を受けにくく、また、外部床およびパラペットのすべての領域で絶縁工法を採用する場合に比して材料費を抑えることができるので、施工コストの増大を抑えることができる。
ここで、接着剤は、粘着剤であることが好ましい。この場合、粘着性のある粘着剤を用いて防水シートを接着することとなるため、例えば、断熱材押さえ板とビスとの間に段差が生じている場合や、地震時に両者の間にズレが生じた場合であっても、接着性能を確実に維持することができる。
この防水構造では、外壁パネルが鉄骨梁に沿って起立しており、外部床の床下地は、鉄骨梁に架け渡された複数のALCパネルと、これらの間の目地部および外壁パネルとの間の空隙に充填された目地モルタルと、からなる。ここで、固定具を固定するためのビスが、目地モルタルや、ALCパネル内の補強鉄筋で囲まれていない領域に設けられた場合、例えば目地モルタルやALCパネルの割れ等が生じて所定の機能を発揮できないおそれがある。しかし、上記の防水構造によれば、ビスは、ALCパネルの内部における補強鉄筋で囲まれた領域に設けられるので、ビスが適正に機能し、固定具および防水シートが確実に固定される。また、外部床の周縁部においては、防水シートは、固定具が用いられることなく、接着剤により確実に固定される。よって、品質を安定させることができる。
また、断熱材押さえ板のパラペット側の端部には勾配が設けられ、パラペットの内面に沿う集水溝が形成されたことが好ましい。この場合、断熱材押さえ板の端部を加工するだけで容易に集水溝を形成でき、雨水等を効果的に集水し外部に排出することができる。
また、断熱材押さえ板の目地部上部に目地テープが貼られたことが好ましい。この場合、断熱材押さえ板の目地部の隙間や段差が目地テープで覆われることとなるため、防水シート上を人が歩行した場合重量物を載置した際に、断熱材押さえ板の角部で防水シートを傷つけることを防止することができ、防水性能を維持することができる。
本発明によれば、品質の管理が容易であり、かつ、施工コストの増大を抑えることができる。
本発明の第1実施形態に係る防水構造の断面図である。 第2実施形態に係る防水構造の断面図である。 第3実施形態に係る防水構造の断面図である。 図3の要部を拡大して示す断面図である。 図3のV−V線に沿っての断面図である。 第4実施形態に係る防水構造の断面図である。 図6のVII−VII線に沿っての断面図である。 第5実施形態に係る防水構造の断面図である。 図8のIX−IX線に沿っての断面図である。 第6実施形態に係る防水構造の断面図である。 図10のXI−XI線に沿っての断面図である。 第7実施形態に係る防水構造の断面図である。 変形例に係る防水構造の平面図である。 従来の防水構造の断面図である。
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、図面の説明において同一要素には同一符号を付し、重複する説明は省略する。また、各図面は説明用のために作成されたものであり、説明の対象部位を特に強調するように描かれている。そのため、図面における各部材の寸法比率は、必ずしも実際のものとは一致しない。
図1は、第1実施形態に係る防水構造1の断面図である。図1に示すように、防水構造1は、ベランダや陸屋根等の建物の外部床2および外部床2の周縁部2aに沿って立ち上がるパラペット3に、防水シート20が設けられた構造である。防水構造1の防水シート20は、外部床2の全面および外部床2の周縁からパラペット3の内側面3aにおける所定の高さまでを覆うことにより、外部床2の防水層を形成している。
外部床2は、鉄骨梁9によって支持された床下地4と、床下地4上で2層に敷設された断熱材11,12と、断熱材12上に敷設された断熱材押さえ板13と、を有している。外部床2は、パラペット3近傍の帯状の領域である周縁部2aと、周縁部2aの内側の領域2bと、からなる。外部床2全体で見れば、周縁部2aは環状をなしており、領域2bは、周縁部2aによって囲まれている。
床下地4は、平坦な面を有しており、外部床2の自重および外部床2に作用する積載荷重等を受けて鉄骨梁9を含む架構に伝達するものである。床下地4は、例えばH形鋼からなる鉄骨梁9に架け渡された複数のALC(軽量気泡コンクリート)パネル6と、複数のALCパネル6間に形成された目地部に充填された目地モルタル7と、パラペット3を構成する外壁パネル10とALCパネル6との間の空隙に充填された目地モルタル8と、からなっている。ALCパネル6は、長方形板状をなしている。ALCパネル6の内部の略直方体状の領域6a(図1の二点鎖線参照)が、上下2段に配設された井桁状の補強鉄筋で囲まれている。
断熱材11,12は、建物内の温熱環境を改善するためのものである。断熱材11,12のそれぞれは、板状に成形された発泡プラスチック系の断熱材である。断熱材11,12は、例えば、フェノールフォーム、ポリスチレンフォーム、ポリエチレンフォーム等によって形成される。断熱材11,12は、床下地4に対して略全面的に敷設されている。
断熱材押さえ板13は、断熱材11,12を押さえると共に、防水シート20を固定するための下地となるものである。断熱材押さえ板13としては、各種の板材を用いることができる。例えば、断熱材押さえ板13として、集成材(GL)、単板積層材(LVL)、合板(PW)、構造用合板、配向性ストランドボード(OSB)、パーティクルボード(PB)、低密度パーティクルボード(LPB)、ハードボード(HB)、中密度ファイバーボード(MDF)、インシュレーションボード(IB)、珪酸カルシウム板、スレート板、スラグ石膏ボード、石膏パーティクルボード(GPB)、木片セメント板(CPB)、硬質木片セメント板(センチュリーボード)、パルプ混入セメント板、木毛セメント板などを用いることができる。断熱材押さえ板13としては、粘りがあり、面剛性の高い材料が適している。これは、負圧が作用するなどして断熱材押さえ板13に対し上向きの力が作用した場合に、ビスによって固定された部分が破壊されること(ビス抜け)を抑制できるようにするためである。断熱材押さえ板13は、断熱材12の上面に略全面的に敷設されている。
パラペット3は、周縁部2aの下方に位置する鉄骨梁9に沿って起立した外壁パネル10からなる。外壁パネル10は、例えばALCパネルである。外壁パネル10は、外部床2の上方に一定の長さ突出している。
外部床2およびパラペット3に設けられた防水シート20は、例えば、塩化ビニルシート、加硫ゴムシート、アスファルトシート、オレフィンシート等からなる。
本実施形態の防水構造1にあっては、外部床2の周縁部2aを除く領域2bにおいては、断熱材押さえ板13上に載置された複数の防水鋼板(固定具)14によって、防水シート20が接着されている。また、外部床2の周縁部2aからパラペット3の内側面3aにかけては、接着剤17によって、防水シート20が接着されている。すなわち、防水構造1では、防水シート20が設けられる領域の一部分において密着工法を採用すると共に、他の部分において絶縁工法を採用している。
複数の防水鋼板14は、断熱材押さえ板13上で水平方向に互いに離間して配置され、固定ビス16によって外部床2に固定されている。各防水鋼板14は、円板状の鋼板の表面に防水シート20と同一素材の塩ビコーティングが施されてなり、中央に固定ビス16を挿通する為のビス挿通穴が設けられている。ビス挿通穴の周囲には、固定ビス16の頭部(扁平な円錐形)のテーパに対応する凹部が形成され、防水鋼板14の上面と固定ビス16の頭部の上面とが略面一となるように構成されている。防水鋼板14は、溶剤を用いた溶着もしくは加熱による融着によって防水シート20を表面に接着し、これによって防水シート20を固定する。防水シート20は、防水鋼板14,14同士間においては、断熱材押さえ板13との間に隙間を有するいわゆる浮かし貼りの状態となる。なお、防水鋼板の形状は、円板状に限らず、例えば長尺状で所定のピッチ(例えば100〜500mm)でビス挿通穴が形成されたものを、所定のピッチで平行に配置し、固定してもよい。
防水鋼板14は、外部床2のうち、ALCパネル6内部の補強鉄筋で囲まれた領域6aの上方に固定されている。防水鋼板14を固定するための固定ビス16は、ALCパネル6内の補強鉄筋で囲まれた領域6aに設けられている。すなわち、固定ビス16の先端は、領域6aに到達している。これにより、固定ビス16を打ち込んだ際、その衝撃力によりALCパネル6に割れ等が生じるといった事が防止されており、防水鋼板14は、固定ビス16によって確実に固定されている。
接着剤17は、断熱材押さえ板13の周縁部およびパラペット3(外壁パネル10)の内側面3aと、防水シート20との間に塗布されて、防水シート20を接着・固定する。言い換えれば、接着剤17は、防水シート20の裏面側において、パラペット3が立ち上がる隅部近傍の平坦部分および鉛直部分に配置される。接着剤17としては、粘性を有する接着剤、すなわち粘着剤が用いられる。例えば、接着剤17としては、ネオプレーンゴム系、ニトリルゴム系、アクリルゴム系、ブチルゴム系、シリコンゴム系、ウレタンゴム系、ゴムアスファルト系などの接着剤を用いることができる。なお、接着剤17として、粘性を有しない(硬化する)接着剤、例えば、エポキシ系、アクリル系、ウレタン系の接着剤を用いてもよい。
パラペット3の内側面3aには、外部床2の上面から所定の高さ位置において、横方向に延在する溝部3bが形成されている。防水シート20は、この溝部3bの近傍まで敷設される。防水シート20の上端部20aは、内側面3aおよび溝部3bに沿って配置された防水鋼板18によって接着・固定される。この防水鋼板18は、防水鋼板14と同様の材料からなっており、溝部3bにおいて、ビス19によって外壁パネル10に対して固定される。
以上説明した本実施形態の防水構造1によれば、外部床2の周縁部2aを除く領域2bにおいては、防水シート20が防水鋼板14によって接着され、外部床2の周縁部2aからパラペット3の内側面3aにかけては、防水シート20が接着剤17によって接着される。このように、外部床2からパラペット3の内側面3aにかけての帯状の狭い領域のみにおいて密着工法を採用しており、大部分(領域2b)において絶縁工法を採用しているので、全体として品質の管理が容易になっており、品質の低下が防止されている。さらには、天候の影響を受けにくく、また、外部床2およびパラペット3のすべての領域で絶縁工法を採用する場合に比して材料費が抑えられ、よって、施工コストの増大が抑えられている。
また、接着剤17は、粘着剤である。よって、粘着性のある粘着剤を用いて防水シート20を接着することとなるため、断熱材押さえ板13と固定ビス16との間の段差や、地震時に両者の間にズレが生じた場合であっても、接着性能が確実に維持される。
ここで、仮に防水鋼板14を固定するための固定ビス16が、目地モルタル8や、ALCパネル6内の補強鉄筋で囲まれていない領域(図1の領域A)に設けられた場合、例えば目地モルタル8とALCパネル6のずれ等が生じて所定の機能を発揮できないおそれがある。しかし、防水構造1によれば、固定ビス16は、ALCパネル6の内部における補強鉄筋で囲まれた領域6aに設けられるので、固定ビス16が適正に機能し、防水鋼板14および防水シート20が確実に固定される。また、外部床2の周縁部2aにおいては、防水シート20は、固定ビス16を必要とする防水鋼板14が用いられることなく、接着剤17により確実に固定される。よって、品質を安定させることができる。
例えば、図14に示すような従来の防水構造100では、防水シート120を固定するにあたり、防水鋼板114を固定するための固定ビス116を領域Aに打てないため、固定ビス116がパラペット3から遠くならざるを得ず、結果として防水鋼板114の幅が広くなってしまっていた。この場合、材料費の増大は避けられなかった。
また、防水構造100におけるような材料費の増大を避けるため、ALCパネルをパラペットに当接するように配置し、固定ビスをパラペット近傍に打つことで防水鋼板を小型化する構造も考えられるが、この場合、剛床固定ができなくなるといった問題がある。
これに対し、防水構造1によれば、領域Aでは接着剤17を用いるため、その分、材料費が低減されており、施工コストの増大が抑えられている。
図2は、第2実施形態に係る防水構造1Aの断面図である。この防水構造1Aが図1に示した防水構造1と違う点は、断熱材押さえ板13に代えて、パラペット3側の端部13aに勾配が設けられた断熱材押さえ板13Aを用いた点である。断熱材押さえ板13Aの端部13aの厚みすなわち高さは、パラペット3に近づくにつれて漸減している。この防水構造1Aによれば、防水構造1と同様の作用・効果を得ることができると共に、雨水等を外部床2の周縁部2aに好適に排水する排水機能をもたせることができる。なお、図2以降の図面においては、目地モルタル7の図示は省略されている。
図3は、第3実施形態に係る防水構造1Bの断面図であり、図4は、図3の要部を拡大して示す断面図であり、図5は、図3のV−V線に沿っての断面図である。この防水構造1Bが図1に示した防水構造1と違う点は、断熱材11,12のパラペット3側に勾配断熱材21を配置した点と、勾配断熱材21上に敷設された断熱材押さえ板13の周縁部13bの浮き上がりを防止する押さえ金物22を設けた点である。勾配断熱材21は、断熱材11,12と同じ材料からなる。勾配断熱材21の厚みすなわち高さは、パラペット3から最も遠い部分(図3の右側端部)では断熱材11および断熱材12を合わせた高さに等しいが、パラペット3に近づくにつれて漸減している。また、勾配断熱材21の厚みすなわち高さは、パラペット3に沿う横方向においても漸減している(図5参照)。
押さえ金物22は、パラペット3の内側面3aに固定されている。押さえ金物22は、断面L字状のアングル材からなる。図4に示すように、押さえ金物22は、パラペット3の内側面3aに当接される垂直片22aと、垂直片22aの端縁に連設されて略水平に延びる水平片22bと、からなる。垂直片22aは、内側面3aと断熱材押さえ板13の周縁部13bとの間に配置されている。水平片22bは、断熱材押さえ板13の周縁部13bの裏面側に配置されている。垂直片22aは、ビス23によってパラペット3の内側面3aに固定され、水平片22bは、断熱材押さえ板13上から打ち込まれるビス24によって、断熱材押さえ板13の周縁部13bと勾配断熱材21との間で固定される。押さえ金物22は、パラペット3に沿う横方向に延在してもよいし、ビス23,24の位置においてスポットで設けられてもよい。断熱材押さえ板13の周縁部13bは、押さえ金物22およびビス24によって、勾配を有する勾配断熱材21の上面に沿うようにして下方に屈曲されている。
このような構成により、防水構造1Bでは、パラペット3に近づくにつれて下方に傾斜すると共に、パラペット3に沿う横方向においても傾斜した集水溝26(図5参照)が形成される。防水構造1Bでは、断熱材押さえ板13の端部(周縁部13bや勾配断熱材21)を加工するだけで容易に集水溝26を形成できる。
この防水構造1Bによれば、防水構造1,1Aと同様の作用・効果を得ることができる。ここで、パラペット3とALCパネル6との間の空隙に目地モルタル8が充填される場合、パラペット3に近い部分では、ビスが利きにくいため、断熱材11,12および断熱材押さえ板13の固定が難しいが、防水構造1Bによれば、断熱材押さえ板13の周縁部13bの浮き上がりを防止する押さえ金物22がパラペット3の内側面3aに固定されているため、風などによって断熱材押さえ板13の周縁部13bに負圧がはたらいた場合であっても、押さえ金物22によって、断熱材押さえ板13の周縁部13bの浮き上がりが防止される。また、断熱材押さえ板13や防水シート20が煽られて破損することを防止できる。さらにまた、図5に示すように、パラペット3に沿う横方向に(図5の右側から左側に向けて)雨水等を集水する機能をもたせ、雨水等を効果的に集水し外部に排出することができる。
図6は、第4実施形態に係る防水構造1Cの断面図であり、図7は、図6のVII−VII線に沿っての断面図である。この防水構造1Cが図3〜図5に示した防水構造1Bと違う点は、押さえ金物22の水平片22bを断熱材押さえ板13の周縁部13bの表面側に配置した点である。この水平片22bは、ビス24によって、防水シート20と断熱材押さえ板13の周縁部13bとの間で固定される。
この防水構造1Cによれば、防水構造1,1A,1Bと同様の作用・効果を得ることができる。図7に示すように、パラペット3に沿う横方向に(図7の右側から左側に向けて)雨水等を集水する機能をもたせ、雨水等を効果的に集水し外部に排出することができる。
図8は、第5実施形態に係る防水構造1Dの断面図であり、図9は、図8のIX−IX線に沿っての断面図である。この防水構造1Dが図3〜図5に示した防水構造1Bと違う点は、押さえ金物22の垂直片22aをパラペット3の内側面3aと勾配断熱材21との間に配置した点である。この垂直片22aは、勾配断熱材21の設置前に打ち込まれるビス23によって内側面3aに固定される。
この防水構造1Dによれば、防水構造1,1A,1Bと同様の作用・効果を得ることができる。図9に示すように、パラペット3に沿う横方向に(図9の右側から左側に向けて)雨水等を集水する機能をもたせ、雨水等を効果的に集水し外部に排出することができる。
図10は、第6実施形態に係る防水構造1Eの断面図であり、図11は、図10のXI−XI線に沿っての断面図である。この防水構造1Eが図3〜図5に示した防水構造1Bと違う点は、押さえ金物22の水平片22bを断熱材押さえ板13の周縁部13bの表面側に配置した点と、押さえ金物22の垂直片22aをパラペット3の内側面3aと勾配断熱材21および断熱材押さえ板13の周縁部13bとの間に配置した点である。この垂直片22aは、勾配断熱材21および断熱材押さえ板13の設置前に打ち込まれるビス23によって内側面3aに固定される。
この防水構造1Eによれば、防水構造1,1A,1Bと同様の作用・効果を得ることができる。図11に示すように、パラペット3に沿う横方向に(図11の右側から左側に向けて)雨水等を集水する機能をもたせ、雨水等を効果的に集水し外部に排出することができる。
図12は、第7実施形態に係る防水構造1Fの断面図である。この防水構造1Fが図1に示した防水構造1と違う点は、断熱材11,12に代えて三層構造の断熱材41,42,43を用いた点、防水鋼板44を用いた点、および目地テープ50を用いた点である。
断熱材41は、ポリスチレンフォームからなる発泡プラスチック系の断熱材であり、後述する断熱材42,43と比較して弾性に富む材質となっており、ALCパネル6および目地モルタル8上に凹凸が存在していても、破壊されることなく凹凸を吸収することができる。断熱材41は、外部床2に水勾配を形成する機能をも備えており、床下地4の上面の略全面に敷設されている。外部床2の周縁部2aにおける断熱材41は、略台形状の断面を有しており、その上面がパラペット3に近づくにつれて下方に傾斜している。具体的には、周縁部2aにおける断熱材41の高さは、パラペット3から最も遠い部分では、隣接する断熱材41の高さに等しく、パラペット3に近づくにつれて漸減している。周縁部2a以外の領域における断熱材41は、周縁部2aの断熱材41よりも傾斜が緩やかであり、全体として、図13に示すように、外部床2に寄棟形状の水勾配が形成されるように構成されている。
断熱材42,43は、断熱材11,12同様、それぞれ板状に成形された、フェノールフォーム、ポリエチレンフォーム等からなる発泡プラスチック系の断熱材であり、断熱材41と同等、または断熱材41よりも高い断熱性能を有する。断熱材42,43は断熱材41の上面の略全面に敷設されている。
断熱材押さえ板13は、断熱材43の上面の略全面に敷設されている。断熱材押さえ板13は、断熱材41、42、43を貫通して先端が床下地4に到達する固定ビス16で固定されており、断熱材41、42、43は、断熱材押さえ板13によって、接着剤を用いることなく床下地4に固定されている。
防水シート20は、断熱材押さえ板13上面の略全面、パラペット3の内側面3a、および、パラペット3の上面にわたって設けられており、周縁部2a、内側面3a、および、パラペット3の上面の内側部分においては、接着剤17によって、断熱材押さえ板13、防水鋼板14、およびパラペット3に接着されている。また、パラペット3の上端面の外周側部分には、防水鋼板44が設けられている。防水鋼板44は、略L字状のアングル材であり、表面に塩ビコーティングが施されてなる。防水鋼板44は、パラペット3の上面における接着剤17が塗布された部分に連続してパラペット3の外周側に延び、パラペット3の外周側の端部で下方に折り曲げられるように設けられている。
また、本実施形態の防水構造1Fにあっては、断熱材押さえ板13の目地部に、周縁部2aにおける断熱材42,43および断熱材押さえ板13と、それらの内側に隣接する断熱材42,43および断熱材押さえ板13との間に形成される隙間Sを覆うように、目地テープ50が貼られている。すなわち、目地テープ50は、断熱材押さえ板13の目地部上部に貼られている。目地テープ50は、例えばポリエチレン製であり、一方の面には接着剤が塗布されている。
このように、複数の断熱材押さえ板13の目地部が目地テープ50で覆われることで、例えば、歩行者や重力物によって防水シート20の上面に圧力が加わった場合に、断熱材押さえ板13の角部が防水シート20を傷つけることを防止することができる。
また、目地テープ50が貼られていない場合は、複数の断熱材押さえ板13が互いに伸縮して隙間Sの間隔が変化し、防水シート20に局部的な応力が繰り返し発生して損傷する、いわゆるゼロスパンテンションが発生する可能性があるが、本実施形態の防水構造1Fでは、目地テープ50によって断熱材押さえ板13間に形成された隙間Sが覆われているため、断熱材押さえ板13の伸縮によって防水シート20に局部的な応力が発生することが防止でき損傷を回避することができる。
また、目地テープ50が貼られていない場合は、隙間Sに接着剤17等が溜まることがあり、この接着剤17に残存する有機溶剤や水分により、防水シート20が膨潤して膨れ上がるという問題が発生することがあるが、本実施形態の防水構造1Fでは、目地テープ50が隙間Sの上部に貼られることによって、隙間Sに接着剤17が溜まらなくなるため、接着剤17によって防水シート20が膨れる問題を防止することができる。
さらに、目地テープ50を隙間S上に設けることにより、防水シート20と断熱材押さえ板13との間に空気が供給されないドーラ―工法を構成することが可能となるため、台風や強風時等における防水シート20のばたつきが無くなり、振動によって固定ビス16が抜けたり、固定ビス16が防水シート20を突き抜けて漏水したりするといった問題を確実に回避することができる。具体的には、防水構造1Fでは、図12に示すように、台風等による風圧Pが発生しても、ALCパネル6の下方から防水シート20に進入しようとする空気A1はALCパネル6によって遮断される。パラペット3のALC版間を介して内側面3aから防水シート20に進入しようとする空気A3は接着剤17によって遮断される。パラペット3のALC版間を介して断熱材41,42,43および隙間Sから防水シート20に進入しようとする空気A2は目地テープ50によって遮断される。このように、進入しようとする空気A1〜A3が遮断されるため、防水シート20と断熱材押さえ板13との間に完全に空気が入り込まなくなり真空状態を保つため、防水シート20がばたつく等といった問題を確実に防止することができる。
ところで、従来から、断熱材を多数重ねることが可能な高外断熱工法として機械固定工法(絶縁工法、浮かし貼り工法)が用いられてきたが、この機械固定方法では、例えばパラペット近傍等の周縁部2aに多くの防水鋼板を用いる必要があり、多大なコストがかかるという問題がある。また、複雑な形状の防水鋼板にシートを溶着することには高い技能を要するという問題もある。
これに対して、上記実施形態の防水構造1,1A〜1Fによれば、周縁部2aにおいて防水鋼板が不要となり、材料コストを抑えることができ、また、専門工が不要な工法とすることができる。
また、上記のような防水鋼板等の固定金具を使わない工法としては、接着剤を用いて断熱材等を接着させる接着工法が挙げられるが、接着工法は、接着剤の管理が難しく、また高外断熱工法を実現できず、機械固定工法と比較して断熱性が低いという点で改善の余地がある。さらに、施工を行う当日に雨等が降ると、接着剤を用いた施工ができなくなるため、施工を中止しなければならないという問題がある。
これに対して、上記実施形態の防水構造1,1A〜1Fによれば、ALCパネル6の上部に、断熱材11,12または断熱材41,42,43と断熱材押さえ板13とが設けられ、断熱材11,12または断熱材41,42,43と断熱材押さえ板13とが固定ビス16によって床下地4に対して固定されるため、接着剤の管理が容易になるとともに高外断熱工法を実現できる。さらに、一般的には、防水シート20の施工は、最初に周縁部2aの施工を行って、その後周縁部2a以外の部分の施工を行うが、防水構造1Fでは、周縁部2a以外の部分においては接着剤を使用せずに施工を行うため、たとえ施工の当日に雨等が降ったとしても、周縁部2a以外の部分の施工を行うことにより、施工を中止することなく継続させることができる。
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限られるものではない。例えば、断熱材は、2枚の断熱材11,12からなる二層構造や、3枚の断熱材41,42,43からなる三層構造に限られず、1枚の断熱材からなる一層構造や、4枚以上の断熱材からなる複層構造であってもよい。押さえ金物22を固定するためのビスは、ドリルネジであってもよいし、ナイロンプラグビスでもよい。床下地は、ALCパネル6からなる場合に限られず、PC(プレキャストコンクリート)パネルからなってもよい。また、鋼製のデッキプレートや折板屋根や、RC(鉄筋コンクリート造)建物においてはRCスラブ、木造建物においては構造用合板等の木質パネルからなってもよい。
なお、第2〜6実施形態において、押さえ金物22を断熱材押さえ板13の周縁部13bに配置した例について説明したが、第2実施形態のように断熱材押さえ板13の周縁部を屈曲させない形態であり、且つ、断熱材押さえ板13が所定の粘りと強度を有する場合(例えば、厚さ9mm以上の構造用合板、厚さ12mm以上のOSB、厚さ9mm以上のMDF、厚さ15mm以上のパーティクルボード、厚み12mm以上の硬質木片セメント板、厚み12mm以上のパルプ混入セメント板等)には、押さえ金物22は必要なく、第1実施形態のように、固定ビス16のみで断熱材押さえ板13を固定することができる。
また、第2〜第7実施形態の防水構造1A〜1Fでは、周縁部2aにおいて、断熱材41の上面がパラペット3に近づくにつれて下方に傾斜しているため、雨水等を周縁部2aに好適に排水する排水機能をもたせることができるが、周縁部2aのパラペットに沿う方向にも勾配を設けることにより、より好適に排水機能を発揮させることができる。
具体的には、例えば図13の変形例に示すように、断熱材41の高さをパラペット3に沿う横方向についても漸減するようにして、最水下部に設けたドレーンXに雨水が集まるように構成することで、周縁部2aの上面に水溜まりが形成されにくくなり、雨水等をより好適にドレーンXに排出させることができる。なお、周縁部2aの長さが長すぎることにより所定の勾配を有する周縁部2aの防水シート面の高さが限度を超えてしまうような場合は、周縁部2aの断熱材41の一部については、パラペット3に沿う横方向については傾斜させないようにしたり、ドレーンXを適宜増設することで対応することができる。
1,1A〜1F…防水構造、2…外部床、2a…周縁部、2b…領域、3…パラペット、3a…内側面、4…床下地、6…ALCパネル、7,8…目地モルタル、9…鉄骨梁、10…外壁パネル、11,12,41,42,43…断熱材、14…防水鋼板(固定具)、16…固定ビス(ビス)、17…接着剤、20…防水シート、50…目地テープ、S…隙間。

Claims (4)

  1. 外部床および外部床の周縁部に沿って立ち上がるパラペットに防水シートが設けられた防水構造であって、
    前記防水シートが、前記外部床の周縁部を除く領域においては、前記外部床に載置されビスで固定された複数の固定具によって接着され、
    前記防水シートが、前記外部床の周縁部から前記パラペットの内側面にかけては、接着剤によって接着され、
    前記外部床が、鉄骨梁に掛け渡された複数のALCパネルと、前記複数のALCパネル間に形成された目地部に充填された目地モルタルと、を含む床下地を備え、
    前記ビスが、前記ALCパネルの内部における補強鉄筋で囲まれた領域に設けられたことを特徴とする防水構造。
  2. 前記接着剤は、粘着剤であることを特徴とする請求項1記載の防水構造。
  3. 前記ALCパネル上に位置する断熱材の上に設けられた断熱材押さえ板の前記パラペット側の端部には勾配が設けられ、前記パラペットの内面に沿う集水溝が形成されたことを特徴とする請求項1または2に記載の防水構造。
  4. 前記断熱材押さえ板の目地部上部に目地テープが貼られたことを特徴とする請求項3記載の防水構造。
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