JP3830463B2 - 建築物の防水工法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、コンクリート建築物あるいは木造建築物等の各種建築物(建造物も含む)の屋根や壁等の防水対象面の防水に用いるのに好適な建築物の防水工法に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、建築物の水のかかる部分例えば屋根には、ほとんど傾斜のない陸屋根(あるいは屋上)や傾斜した傾斜屋根が採用されており、いずれの屋根も雨水が直接かかる部位である。雨水が建築物本体に染み込んだときには、浸入した水により構造材および内装材等を傷めたり、室内壁面に結露を生じたりする等の悪影響がある。
【0003】
このような雨水の浸入を防止するため、建築物では傾斜屋根に瓦やスレートを葺くことにより建築物外に雨水を流し落とし建築物本体への水の浸入を防止しているが、瓦やスレートを葺く工程という工数および日数がかかる工程が必要になりコスト高になり易いので、大型の建築物、特に、コンクリート建築物では、防水工法を採用して雨水の浸入を防止している。
また、建築物の基礎や貯水槽等の構造物の壁面についても水の浸入を防止する必要がある。
【0004】
建築物あるいは各種構造物における防水技術には、代表的なものとして、アスファルト防水、シート防水が知られている(特許文献1、特許文献2、特許文献3等参照)。
【0005】
例えば図8に示すように、建築物の陸屋根の防水施工において、アスファルト防水を行う場合、熔解釜中で250℃程度でアスファルトを溶融させて躯体aの表面の下地上に流しながらアスファルトルーフィング(何らかの補強材層とアスファルト層から構成される)を下地に貼り付けるものであって、アスファルトルーフィングを複数層貼り重ねて防水層bを多層構造に形成する。
そして、その多層構造の防水層bの上面に断熱体cを密着させて設置する。
さらに、この断熱体cの表面に絶縁クロスdを介して、押さえコンクリートeを金網f入りで施工する。
屋根の躯体aの立ち上がり部分a1のコーナー部gには、防水層bが直角に曲がらないように、入隅部材hを設けて、その入隅部材hに施した防水層b1の表面部はさらに弾性体の保護部材iで押さえる。
防水層bは、その入隅部材h上面を経由して躯体aの立ち上がり部分a1の表面まで連続に形成している。
この立ち上がり部分a1内側に施された防水層bは、パネル体jを設けて押さえており、この防水層bの機械的、熱的な保護をしている。
【0006】
なお、防水工法には、上記の他、アスファルトにゴムまたは樹脂を混合させて改質したアスファルトを下地上に加熱下あるいは常温下等で施工する改質アスファルト工法がある。また、ゴムシート防水、塩ビ(塩化ビニール)シート防水等の防水シートを接着剤で下地上に施工するシート防水工法があり、この工法では通常シートをいく層も重ねて貼り合せ積層構造にし、その表面にそのままあるいは断熱層を介在させて保護層としての施工を行なう。
【0007】
前述のように、従来、建築物の防水構造を施すには、アスファルトを多層構造にしたり、ゴム、樹脂製のシートを多層に貼り付けたりしている。いずれの工法を採用してもシートを接着面に気泡が含まれないように貼り付ける作業は繊細な注意力を要するにもかかわらず、高温の溶融アスファルトの材料を使用したり、有機溶剤系の接着剤で貼り付け作業をしたりして何層にもわたって防水シート材料を貼り付けなければならないので、長時間作業環境の悪い中で困難な作業を行う必要があった。また、溶融アスファルトや有機溶剤から蒸発する臭気や有害ガスが作業場所周囲の環境に悪影響を及ぼし、市街地での作業は困難になって来ていた。
【0008】
また、コンクリート躯体の下地面は、アスファルト、シート防水のいずれの場合にも、湿気がごく少なく、乾燥していることが絶対的に要求されており、したがって、従来は防水施工を雨天の時に全く行うことができず、雨よけ用のシートを屋根に広げる等の対策が必要になる。しかも、雨に降られて一旦屋根の躯体下地面が濡れてしまったら、送風機で風を送ったりドライヤーの温風を送ったりして乾燥させる対策が必要になり、防水工事は、雨天のとき以後も施工作業ができない期間が生じる。
【0009】
さらに、建築物では、屋根の防水工事が終了しないと、建物内に水が浸入して天井や壁等の内装工事には取り掛かれず、工期自体を後送りする問題が生じる。このように従来の防水工事は、工期が天候に左右されやすくなって、工期を長引かせたり、工事計画の見直しの必要が生じたりして、人工(にんく)や作業負荷の点ばかりでなく経済的な問題を生じている。
【0010】
しかも、従来の防水工法では、防水層は厚さが2〜3mm程度であり、コンクリートの経年劣化等によるクラック発生等の挙動に追従できず、長年の間には防水層の破断が発生する可能性が高いという問題点があった。
【0011】
一方、木造の建築物において、外壁部に断熱材を設けた場合に断熱材に防水シートおよび防湿シートを設けて、内部への湿気の浸入を防止していた。
例えば図9に平面視図を示すように、木造の建築物の外壁部では、間柱mの外側部に構造用合板nを打ちつけ、その構造用合板nに気密シートoを介装して断熱材pを設けている。
この断熱材pの外側面に防湿シートqを張った上に竪胴縁rを取付、その竪胴縁rで外壁となる仕上げ部材sを支持し固定するようにしていた。仕上げ部材sとしては、所謂サイディングからなる仕上げ部材s1とタイルからなる仕上げ部材s2がある。タイルからなる仕上げ部材s2を張る場合は、ラスカット張りt1の上に下地モルタルt2を塗り、その下地モルタルt2の外面にモルタル等の接着剤により仕上げ部材s2としてのタイルを張り付けていた。
【0012】
ところが、木造の建築物では、外壁部に設けた仕上げ部材sあるいは下地モルタルや接着剤に振動や経年的劣化によってひびやクラック等の隙間が生じた場合、外壁部の内部に湿気や水分が浸入する。この外壁部内部に湿気や水分が浸入するとその湿気や水分により構造用合板nが膨潤し、あるいは室内側の壁に結露が生じる等の建築物が傷ついてしまう不具合が生じるので、断熱材pの内側面に気密シートoを張り、外側面に防湿シートqを張って、構造用合板n側に湿気や水が浸入することを防止している。
しかしながら、断熱材pで湿気や水分の浸入を防止するために、上記の防湿シートqや気密シートo等を張るのは、作業負荷が大きく工数および日数がかかりコスト高になり易いという問題点がある。
【0013】
【特許文献1】
特開平07−42326号公報(図1)
【特許文献2】
特開平09−273273号公報
【特許文献3】
特開2002−13253号公報
【0014】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記従来技術の問題点に着目してなされたもので、防水面にシートやアスファルトを接着しなくても簡易に防水工事を行い得るようにできると共に、防水作業自体を天候の影響が少ないものにして天候により工期が長期化することを防止でき、さらに、可撓性を有する材料を使用して破断防止を可能にして外壁材や躯体の経年劣化等によるクラックの挙動に対応できる防水材料で計画どおりの工期を実現できる防水工法を提供することを目的とする。
【0015】
【課題を解決するための手段】
各請求項記載の本発明は、上記課題を解決するため、以下の構成を有する。
請求項1記載の発明は、建築物の躯体を形成後、その躯体表面の防水対象面に複数の防水板を固定して防水する建築物の防水工法であって、
防水板には、炭酸カルシウムを主成分とした無機質充填剤55〜75重量部、有機系バインダー樹脂5〜10重量部、水酸化マグネシウム20〜30重量部、および適量の発泡剤を混合した混合物を発泡させてなる炭酸カルシウム系発泡板であって可撓性および断熱性が有りかつ透湿性が低く耐水性の高い、単層構造の独立気泡防水板を用い、
この独立気泡防水板または前記防水対象面の少なくとも片方に接着剤を塗った後に、複数の独立気泡防水板を前記防水対象面上に直接敷き並べて、それら複数の独立気泡防水板を防水対象面上に接着して固定する工程と、
各独立気泡防水板同士の突き合わせ部をシリコーン系の防水目地剤で接着・目地埋めする工程とを含むことを特徴とする建築物の防水工法である。
【0016】
請求項2記載の発明は、躯体を、型枠を用いてコンクリート打ち込みにより形成し、
その後、セメントペーストまたはモルタル等の自己硬化性のセメント系の接着剤を用いて、前記独立気泡防水板を前記躯体外面の防水対象面に直接接着することを特徴とする請求項1に記載の建築物の防水工法である。
【0017】
請求項3記載の発明は、躯体外面をALC板等のコンクリート製板材によって形成し、
その後、セメントペーストまたはモルタル等の自己硬化性のセメント系の接着剤を用いて、前記独立気泡防水板を前記コンクリート製板材外面の防水対象面に直接接着することを特徴とする請求項1に記載の建築物の防水工法である。
【0026】
【発明の実施の形態】
以下、図に基づき本発明の実施の形態を詳細に説明する。
図1は、本発明の防水工法の一実施形態(以下、第1実施形態という)をコンクリート建築物の陸屋根に適用したものを、この陸屋根を縦断面視して説明する図である。
図2は、本発明の防水工法の他の実施形態(以下、第2実施形態という)をコンクリート建築物の傾斜屋根に適用したものを、この傾斜屋根を縦断面視して説明する図である。
図3は、独立気泡防水板同士の突き合わせ部の詳細説明図である。
【0027】
第1実施形態に係る防水工法は、図1に示すように、コンクリート建築物の陸屋根において、コンクリートからなる躯体10の防水対象面10aに、可撓性があり透湿性が低く耐水性の高い独立気泡防水板12を密着固定する施工を行うものである。
【0028】
詳しくは、型枠等を用いてコンクリート打ち込みにより形成した躯体10の平坦な水平屋根部分10Aの上面を防水対象面10aとし、その面の汚れ等を取り除き、独立気泡防水板12を接着する。
接着剤14には例えばセメントペーストまたはモルタル等の自己硬化性のものを用い、独立気泡防水板12には例えば適宜の平面積の厚さt=50mmの炭酸カルシウム系発泡板を用いて、接着剤14を防水対象面10aおよび独立気泡防水板12に塗布し(必要接着強度が得られれば片方でも良い)、その後、独立気泡防水板12を防水対象面10aに敷き並べて貼り付ける。
【0029】
このように前記独立気泡防水板12を複数、防水対象面10aに敷き並べる際には、図3に詳細に示すように、上面側コーナー部を面取りした(面取り部分を符号12bで示す)独立気泡防水板12の端面12a,12a同士の突き合わせ部分(「突き付け部分」ともいう)に、シリコーン(変性シリコーン)からなるシール剤16を塗布して突き合わせる。このシール剤16を塗布する際には、独立気泡防水板12の端面12aのコーナー部にも塗りまわしてこのコーナー部のシールを完全にする。
そして、面取り部分12bでできた上面側の溝に、シール剤16を埋め込んで溝による段差を無くす。この溝を埋めたシール剤16には、上方から耐アルカリ性のガラス繊維(グラスファイバー)等からなるテープを貼り付ける補強貼り18を施す。
【0030】
また、躯体10の水平屋根部分10Aの周りを取り囲む立ち上がり部分10Bの内側壁面部分には、前記独立気泡防水板12を別の種類の接着剤20例えばエポキシ樹脂剤で接着をする。この場合の、独立気泡防水板12同士の突き合わせ部に前記シール剤16を埋め込み、かつその面取り部分12b、12b同士でできた溝にもシール剤16の埋め込みをして、その溝を埋める。そして、独立気泡防水板12同士で直角に形成されたコーナー下部には、前記独立気泡防水板12と同様の素材からなる断面概略直角二等辺三角形の柱状の入隅部22を前記接着剤20のエポキシ樹脂剤により接着し、その三角形底辺両端に相当する部分22a,22aと独立気泡防水板12との間にもシール剤16を埋め込んで、ファイバーテープ等の補強貼り18を曲がりに沿わせて施工する。
【0031】
前記のように、独立気泡防水板12を、防水対象面10aとしての水平屋根部分10A上面と立ち上がり部分10Bの内側壁面部分に貼り付けた後には、この独立気泡防水板12の表面に保護用モルタル26を例えば30mm厚で塗る。モルタルには、芯金を入れて強度を上げることが好ましい。
【0032】
独立気泡防水板12は、モルタルペーストで防水対象面10aに貼り付けており、モルタルペーストは自己硬化性を有するので独立気泡防水板12は透湿性が低いあるいは全く無くても良く、良好な貼り付け力が得られる。
【0033】
なお、前記立ち上がり部分10Bの上端にも前記独立気泡防水板12と同じ材質の上側防水板24を接着剤20で貼り付けて同様に防水している。符号24aは立ち上がり部上端の水きり用の被い金属板である。
また、躯体10の外壁面10Cには、前記独立気泡防水板12と同材質の外壁防水板28がコンクリート打ち込みで躯体10に固着されており、この外壁面10Cの防水処理が終了している。この場合のコンクリート打ち込みは、躯体10の外壁形成用の内・外対の型枠の外壁側に外壁防水板28を密着させて収め、この型枠内にコンクリートを流し込む。そして、打ち込んだコンクリートを1日〜7日程度常温下で放置して硬化・養生後に型枠を取り去ることにより、外壁防水板28が躯体10に密着し強固に接着した仕上がり状態になる。
【0034】
また、外壁防水板28は、躯体10の外壁面10C側にセメントペーストまたはモルタル等の自己硬化性の接着剤で貼り付けても良い。
また、外壁防水板28の表面には、モルタル等の接着剤を用いてタイル等の外壁仕上げ部材30を直接貼り付けるか、あるいは吹き付けタイル等の仕上げ処理を施す。外壁防水板28と上側防水板24との突き当て部の外側部は互いに面取りがとされており、その面取り部同士でできた溝に変性シリコーンからなるシール剤32を埋めておく。
【0035】
第2実施形態に係る防水工法を適用する建築物では、図2に示すように、傾斜の形成された躯体屋根部34を型枠で形成し、その上面を防水対象面36とし、その防水対象面36にセメントペーストまたはモルタル等の自己硬化性の接着剤14で独立気泡防水板12を貼り付ける。
独立気泡防水板12同士の突き合わせ部には、前記図3に示したように変性シリコーンからなるシール剤16を塗布して突き合わせ、上部の溝はシール剤16で埋め込み、上面から補強貼り18をする。
そして、第1実施形態と同様に、独立気泡防水板12の上面を保護用モルタル26で補強する。外壁防水板28の表面に外壁仕上げ部材を貼り付ける。外壁防水板28と独立気泡防水板12との突き当て部の外側部は互いに面取りがされており、その面取り部同士でできた溝に変性シリコーンからなるシール剤32を埋めておく。
その他は第1実施形態と同様のため、同様の部分に同一の符号を付してその説明を省略する。
【0036】
以上で説明した実施形態の独立気泡防水板12と、それと同様材質からなる入隅部22、上側防水板24および外壁防水板28は、可撓性のある炭酸カルシウム系発泡板を用いている。炭酸カルシウム系発泡板には、炭酸カルシウムを主成分とした無機質充填剤55〜75重量部、有機系バインダー樹脂5〜10重量部、水酸化マグネシウム20〜30重量部、および適量の発泡剤を混合した混合物を発泡させてなるものである。
【0037】
また、独立気泡防水板12の横縦厚さ等の大きさは、設計/施工に合わせて任意に選択できるが、厚さは20mm〜50mm程度、密度は80〜100kg/m3で縮強度が1.5〜2.0kgf/cm2が好ましい。
【0038】
なお、前記独立気泡防水板12を貼り付ける躯体は、コンクリートを打設した躯体であったが、ALC(軽量コンクリートボード)等のコンクリート製板材を用いた場合にその防水対象面にセメントペーストまたはモルタル等の自己硬化性の接着剤により独立気泡防水板を接着することができる。
【0039】
図4〜図6は、本発明の防水工法の比較例を説明する図であって、図4は比較例に係る防水工法が適用される木造建築物の縦断面図、図5は耐水合板45〜47と独立気泡防水板12との敷設状態の説明図、図6は外壁部の横断視説明図である。また、図7は、比較例の変形例であって、モルタル塗りの外壁部としたものの説明図である。
なお、以下の説明および図6〜図7では、第1実施形態と第2実施形態と同様部分には、同一の符号を付している。
【0040】
比較例に係る防水工法は、本発明の建築物の防水工法を木造建築物の陸屋根および外壁に適用するものである。
すなわち、図4〜図6に示すように、比較例は、木造建築物(建築物)38の木造の陸屋根(外側部)39および外壁部(外側部)40に耐水合板(構造用板材)45〜47を設け、この耐水合板45〜47の外面部を防水対象面39a,39b,40aとしてそこに可撓性があり透湿性が低く耐水性の高い独立気泡防水板12を接着により密着固定する建築物の工法である。
【0041】
詳しくは、木造建築物38の躯体は、主に、陸屋根39の上端付近まで延びる複数の縦柱41…と、この縦柱41…の陸屋根39の上面部39cよりやや低い位置41a…同士間を繋いで水平方向に延びる複数の梁(または桁)42…と、この複数の梁42…に乗せ掛けられる複数の垂木(たるき)43…と、縦柱41…の上端部41b…間を繋いで水平方向に延びる横架材(所謂頭つなぎ)44とを設けている。
【0042】
複数の垂木43…上には、構造用板材としての耐水合板45をその面方向をほぼ水平方向に沿わせ乗せて、固定している。この耐水合板45の上面が防水対象面39aになる。なお、この垂木43…の間には、耐水合板45の取付強度および支持強度を高めるための間柱51が多数設けられている。
【0043】
また、縦柱41…の外側部には、耐水合板46を立てかけてすなわちその面方向が上下方向に沿うようにして固定する。この耐水合板46の外側面が防水対象面40aになる。なお、縦柱41…の間には、耐水合板46の取付強度および支持強度を高めるための間柱51が多数設けられている。
【0044】
縦柱41…の上部であって陸屋根39の内部に面する部分(後述の水平屋根部分39Aを取り囲む立ち上がり部分39Bの内側に位置する部分)41cには、耐水合板47を立てかけてすなわちその面方向が上下方向に沿うにして固定する。この耐水合板47の陸屋根39内側を向く面が防水対象面39bになる。なお、この縦柱41…の間には、耐水合板47の取付強度および支持強度を高めるための間柱51が多数設けられている。
【0045】
なお、前記の耐水合板45の垂木43および間柱51への固定、並びに縦柱41および間柱51への耐水合板46、47の固定は釘52を打ち打ち込むこと(所謂釘打ち)により行う(図6参照)。釘52による固定は手間がかからず短工期になり好ましいが、この固定は釘52による他、適宜に他の例えば接着によりあるいはスクリュー(木ねじ)で固定することができる。
また、上記では構造用板材として耐水合板40〜42を挙げたが、本発明の構造用板材にはその他の木製あるいは樹脂製の構造用合板あるいは構造用板材を用いることができる。
【0046】
これらの耐水合板45〜47の防水対象面39a,39b,40aについての独立気泡防水板12を設置する工法を説明する。
防水対象面39a,39b,40aの汚れ等を取り除き、そこに独立気泡防水板12の接着面を合わせて接着する。この場合、接着剤48には例えばエポキシ樹脂製のものを用い、独立気泡防水板12には炭酸カルシウム系発泡板を用いる。接着剤48を防水対象面39a,39b,40aおよび独立気泡防水板12の双方に塗布し(必要接着強度が得られれば片方でも良い)、その後、独立気泡防水板12を防水対象面39a,39b,40aに敷き並べて貼り付ける。
【0047】
また、比較例は、それぞれ複数の耐水合板45…,46…,47…および独立気泡防水板12…をそれぞれ同士の縁部で突き合わせ、これら複数の耐水合板45…,46…,47…と独立気泡防水板12…を重ね合わせた状態で、耐水合板45…,46…,47…同士の突き合わせ部49と独立気泡防水板12…同士の突き合わせ部50は、同じ方向に沿った状態で重ならないようにしたものである(図5、図6参照)。
【0048】
つまり、独立気泡防水板12を防水対象面39a,39b,40aへ接着する際には、敷き並べた耐水合板45〜47同士の突き合わせ部49(図5では実線で示す)と独立気泡防水板12同士の突き合わせ部50(図5では一点鎖線で示す)が同じ方向に沿った状態で重ならないようにずらしている。
具体的には、図5、図6に示すように、耐水合板45〜47と独立気泡防水板12はその厚み以外の縦・横の大きさが同じになっており、耐水合板45〜47と独立気泡防水板12とを同じ位置にせずに互いに縦横半ピッチずつずらして耐水合板45〜47上に独立気泡防水板12を貼り付けている。
このように耐水合板45〜47と独立気泡防水板12とをずらすことにより、互いの突き合わせ部49と50とが一致しない構造なので、たとえ独立気泡防水板12の突き合わせ部50のシール剤16の劣化や不具合が生じても耐水合板45〜47上でくい止められるため、防水性、防湿性がより向上する。
【0049】
寸法の例を挙げれば、独立気泡防水板12は縦:1820(mm)、横:910(mm)、厚さ:50(mm)であり、耐水合板45〜47は縦:1820(mm)、横:910(mm)、厚さ:12(mm)である。横方向に半ピッチずらすのは、455(mm)ずらすことになり、縦方向に半ピッチずらすのは910(mm)ずらすことになる。
【0050】
また、耐水合板45〜47同士の突き合わせ部49と独立気泡防水板12同士の突き合わせ部50の位置にそれぞれ間柱51が位置するように、耐水合板45〜47と独立気泡防水板12を取付ており、各突き合わせ部49、50における強度の低下を間柱51の強度で補っている。
なお、図5に二点鎖線で示すように、独立気泡防水板12の突き合わせ部50に外側から重ねて補強貼り18を施してさらに強度を高めている。
また、独立気泡防水板12の外面には保護用モルタル26を施工している。
【0051】
この独立気泡防水板12を複数、防水対象面39a,39b,40aに敷き並べる際の独立気泡防水板12の端面12a、12a同士の突き合わせ部50にシール剤16を塗布してシールする点、独立気泡防水板12の上面側コーナー部の面取り12bを形成し上面側の溝にシール剤16を埋め込む点、耐アルカリ性のガラス繊維等からなるテープによる補強貼り18を施す点等は、前記第1、第2実施形態と同様であり同一の符号を付してその説明を略する。
【0052】
また、陸屋根39のほぼ水平な水平屋根部分(屋根の水はけのために緩い勾配が付けられている)39Aの周りを取り囲む立ち上がり部分39Bの内側壁面部分も、独立気泡防水板12をエポキシ樹脂剤からなる接着剤48で接着をする。立ち上がり部分39Bの上端部には、上述の上側防水板24を接着剤48で接着する。そして上側防水板24の上部の所謂パラペットまで保護用モルタル26を塗って保護する。もちろんそのモルタルの上に覆い金属板24aを施工することが好ましい。
独立気泡防水板12同士の突き合わせ部分と面取り部分12b,12b同士でできた溝へのシール剤16の埋め込みの点、補強貼り18を施す点、コーナー下部に入隅部22を接着する点、陸屋根39の水平屋根部分39Aと立ち上がり部分39Bの内側に保護用モルタル26を施す点等は、前記第1、2実施形態と同様であり同様の部分に同一の番号を付してその説明を略する。
【0053】
また、外壁部40について、前記第1実施形態と同様でモルタル等の接着剤を用いてタイル等の外壁仕上げ部材30を貼り付けている点等は、第1、第2実施形態と同様部分に同一の符号を付してその説明を略する。
【0054】
図7は、比較例の変形例の説明図であって、木造の建築物の外壁部に仕上げ部材を施工する状態を示している。
この変形例では仕上げ部材30として、独立気泡防水板12の外面部に直接モルタルを塗りモルタル層30aを形成したものである。このモルタル層30aの外面には防水ペイントを塗装したりあるいは吹き付けタイルを施工したりすることが好ましい。タイル張りの仕上げ部材に比較して簡易かつ低コストで仕上げ部材の施工ができる。
なお、その他は比較例と同様であるので、同様部分に同一符号を付して説明を略する。
【0055】
【発明の効果】
以上のように、請求項1記載の本発明によれば、防水対象面に簡易に防水工事を行い得るようにできると共に、防水作業自体を天候の影響が少ないものにして天候により工期が長期化することを防止でき、環境にも悪影響を与えないで計画どおりの工期を実現できる。
すなわち、防水板には、炭酸カルシウムを主成分とした無機質充填剤55〜75重量部、有機系バインダー樹脂5〜10重量部、水酸化マグネシウム20〜30重量部、および適量の発泡剤を混合した混合物を発泡させてなる炭酸カルシウム系発泡板であって可撓性および断熱性が有りかつ透湿性が低く耐水性の高い、単層構造の独立気泡防水板を用い、この独立気泡防水板または前記防水対象面の少なくとも片方に接着剤を塗った後に、複数の独立気泡防水板を前記防水対象面上に直接敷き並べて、それら複数の独立気泡防水板を防水対象面上に接着して固定する工程と、各独立気泡防水板同士の突き合わせ部をシリコーン系の防水目地剤で接着・目地埋めする工程とを含むのみで防水対象面の防水が可能になるため、シートを何層にも重ねたりアスファルトを溶融させたりする防水施工を必要とせずに、簡単に建築物躯体の防水ができる。
【0056】
また、請求項1記載の本発明によれば、独立気泡防水板は、炭酸カルシウムを主成分とした無機質充填剤55〜75重量部、有機系バインダー樹脂5〜10重量部、水酸化マグネシウム20〜30重量部、および適量の発泡剤を混合した混合物を発泡させてなる独立気泡の炭酸カルシウム系発泡板からなる発泡断熱板を用いたので、割れがなく下地面の凹凸への良好に追従して密着できる。
すなわち、炭酸カルシウムを主成分の発泡断熱板は、可撓性が良好で伸縮性もあり、コンクリート等からなる躯体が外気温により膨張・伸縮してもそれに良好に追従して割れることが無く、施工において凹凸のある躯体下地面に対しても適応して密着させやすい。しかも、炭酸カルシウムを主成分とした発泡断熱板は、透湿性が低く、防水性が良好なばかりか良好な断熱性も有しているので、これを防水板として施工することにより防水施工と同時に断熱材の施工もでき、従来のように、防水工事と断熱工事を別途に行なう必要が無く、材料を削減し、工程を単純化し、施工に伴う工期も短縮化でき、良好な施工ができる。
また、可撓性を有する独立気泡板を防水材料に使用するので、コンクリートの経年劣化等によるクラック等の挙動に対応できる。
ここで、炭酸カルシウム主成分の発泡断熱材の他、独立気泡断熱板には、樹脂系の発泡断熱板(フェノール樹脂製の独立気泡断熱板や、ポリスチレン樹脂製の独立気泡断熱板等)等があるが、この種のものは、炭酸カルシウム主成分の発泡板に比較して、可撓性が低いか無いものがほとんどで、経年によるコンクリート躯体のクラック等に対応できないので、防水板として使用できない。
本発明においては、独立気泡防水板に断熱性の機能を有する材料を用いるので、防水工事と同時に断熱工事もでき、工程が単純化し、工期が短くかつ経済的である。
また、前記独立気泡防水板は、建築物の躯体に対して接着剤で接着するので手間がかからず独立気泡防水板の取付け作業が短時間で行える。
また、本発明によれば、独立気泡防水板同士の突き付け箇所にはシリコーン系の防水目地剤で接着・目地埋めをしたので良好な防水特性が得られる。すなわち、このようにシリコーン系の防水目地剤はそれ自身伸縮性を有し、気候や天候による寒暖の変化で躯体および防水断熱板が膨張・収縮したり、独立気泡防水板同士がある程度ずれたりしても、それら変位に柔軟に対応して目地が切れて防水性能が低下することを確実に防止できる。
【0057】
請求項2記載の発明によれば、躯体を、型枠を用いてコンクリート打ち込みにより形成し、その後、セメントペーストまたはモルタル等の自己硬化性のセメント系の接着剤を用いて、前記独立気泡防水板を前記躯体外面の防水対象面に直接接着するので、防水施工においてアスファルトを溶かしてシートを貼り付ける手間が無い。しかも、コンクリート打ち込みよって形成した躯体には、セメント系の接着剤がなじみが良く、かつ、硬化するのに通気性が要求されないため、空隙や絶縁クロスを設けなくても前記セメント系の接着剤は完全に硬化でき低透湿性の独立気泡防水板を確実に接着できる。また、前記セメント系の接着剤を用いることにより、コンクリート躯体の不陸をも吸収できる(不陸調整が可能なる)。
【0058】
請求項3記載の発明によれば、躯体外面をALC板等のコンクリート製板材によって形成し、その後、独立気泡防水板を、ALC(人口軽量骨材コンクリート)板等のコンクリート製板材の防水対象面にセメントペーストまたはモルタル等の自己硬化性のセメント系の接着剤により接着するので、コンクリート製板材で一般的なALC板等にも直接貼り付け等で対応でき、取付け施工が容易でかつ施工期間を短縮化できる。しかもALC板は型枠を使用せずにそのまま取付けることができ、防水施工を独立気泡防水板をそのまま貼り付けることによって行うことができ、きわめて工期を短縮化できる。
【0061】
なお、独立気泡防水板の外面部にモルタル塗りによりモルタル層を形成すれば、モルタル層で独立気泡防水板に雨水や太陽光が直接かかることを防止でき、それらの影響を受けにくくすることができるので、独立気泡防水板や独立気泡防水板同士の突き合わせ部に埋め込むシール部等の経年的劣化を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の防水工法に係る第1実施形態をコンクリート建築物の陸屋根に適用したものをこの陸屋根を縦断面視して説明する図である。
【図2】 本発明の防水工法に係る第2実施形態をコンクリート建築物の傾斜屋根に適用したものを、この傾斜屋根を縦断面視して説明する図である。
【図3】 独立気泡防水板同士の突き合わせ部の詳細説明図である。
【図4】 本発明の防水工法の比較例を木造建築物の陸屋根および外壁に適用したものを説明する図であって、この木造建築物を縦断面視して説明するものである。
【図5】 図4の木造建築物の耐水合板と独立気泡防水板の敷設状態の説明図である。
【図6】 図4の木造建築物の外壁部の横断面視した説明図である。
【図7】 比較例の変形例であってモルタル塗りの外壁部としたものの説明図である。
【図8】 従来の防水工法を説明するための、躯体の陸屋根部分の説明図である。
【図9】 従来の防水工法を説明するための、木造建築物の外壁部を横断視した説明図である。
【符号の説明】
10 建築物の躯体
10a 防水対象面
12 独立気泡防水板
14 接着剤
16 シール剤
18 補強貼り
20 接着剤
26 保護用モルタル
28 外壁防水板
Claims (3)
- 建築物の躯体を形成後、その躯体表面の防水対象面に複数の防水板を固定して防水する建築物の防水工法であって、
防水板には、炭酸カルシウムを主成分とした無機質充填剤55〜75重量部、有機系バインダー樹脂5〜10重量部、水酸化マグネシウム20〜30重量部、および適量の発泡剤を混合した混合物を発泡させてなる炭酸カルシウム系発泡板であって可撓性および断熱性が有りかつ透湿性が低く耐水性の高い、単層構造の独立気泡防水板を用い、
この独立気泡防水板または前記防水対象面の少なくとも片方に接着剤を塗った後に、複数の独立気泡防水板を前記防水対象面上に直接敷き並べて、それら複数の独立気泡防水板を防水対象面上に接着して固定する工程と、
各独立気泡防水板同士の突き合わせ部をシリコーン系の防水目地剤で接着・目地埋めする工程とを含むことを特徴とする建築物の防水工法。 - 躯体を、型枠を用いてコンクリート打ち込みにより形成し、
その後、セメントペーストまたはモルタル等の自己硬化性のセメント系の接着剤を用いて、前記独立気泡防水板を前記躯体外面の防水対象面に直接接着することを特徴とする請求項1に記載の建築物の防水工法。 - 躯体外面をALC板等のコンクリート製板材によって形成し、
その後、セメントペーストまたはモルタル等の自己硬化性のセメント系の接着剤を用いて、前記独立気泡防水板を前記コンクリート製板材外面の防水対象面に直接接着することを特徴とする請求項1に記載の建築物の防水工法。
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