JP6167491B2 - 二酸化チタン組成物とその製造方法、及びチタン酸リチウム - Google Patents
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Description
BET比表面積が1.5〜5.0m2/gである組成物に関する。
本発明の第1の態様は、二酸化チタンと、Li元素とを含む、粒子状ルチル型二酸化チタン組成物、好ましくはチタン酸リチウム合成用二酸化チタン組成物に関する。上記二酸化チタンは、ルチル型結晶を97質量%以上100質量%以下含み、アナタース型結晶をほとんど含まない。ルチル型とアナタース型を比較すると、第2のLi化合物との固相反応における反応速度はルチル型の方が遅いことから、アナタース型を一定量以上含むと、反応速度の早いアナタース型から生じる生成物と、反応速度の遅いルチル型から生じる生成物が混在し、その結果LTOの結晶状態における均一性が損なわれる傾向がある。アナタース型二酸化チタンは、高温に加熱するとルチル型へと不可逆的に転移することが知られているが、この温度はLTOを合成する際の焼成温度と重複している。
・700℃では、反応中間体のLi2TiO3が得られ、アナタース型二酸化チタンが残存する状態である。
・800℃でLi2TiO3が減少し、アナタース型二酸化チタンは消失する。代わりに目的のLi4Ti5O12とルチル型二酸化チタンが生成する。更に温度を上げるとLi2TiO3とルチル型二酸化チタンが消失し、Li4Ti5O12が得られる。
したがって、(1)Li2TiO3とアナタース型二酸化チタンから得られるLi4Ti5O12と(2)アナタース型二酸化チタンから転移したルチル型二酸化チタンとLi2TiO3の反応で得られるLi4Ti5O12がある。アナタース型から転移したルチル型の二酸化チタンは、反応速度がアナタース型に比べてさらに遅いので、ルチル型二酸化チタンが残留しやすくなる。また、アナタース型二酸化チタンとルチル型二酸化チタンの反応速度の違いにより、Li4Ti5O12の結晶状態の均一性が損なわれる可能性がある。
RC(質量%)=IR×1.32/(IR×1.32+IA)×100
「RC」は、ルチル型の含有割合(ルチルコンテント)を意味する。アナタース型酸化チタン粉末の回折ピーク(面指数101)のピーク高さIAは、ルチル型酸化チタン粉末の回折ピーク(面指数110)のピーク高さIRよりも1.32倍大きい値として検出されるため、上記計算式ではIRに1.32の係数を乗じて補正を行なっている。なお単位は質量%である。
次に、本発明の第2の態様である、二酸化チタン組成物の製造方法について説明する。本態様は、二酸化チタンと、Li元素とを含む、粒子状ルチル型二酸化チタン組成物、好ましくはチタン酸リチウム合成用の粒子状ルチル型二酸化チタン組成物を製造する方法に関する。
本発明の二酸化チタン組成物は、チタン酸リチウムの合成に特に好適な二酸化チタン組成物である。チタン酸リチウム(LTO)とは、一般的に、LixTiyO12で表され、xは3〜5、yは4〜6の範囲にあり、具体的にはLi4Ti5O12(Li4/3Ti5/3O4又はLi[Li1/3Ti5/3]O4で表される場合もある)で表されるスピネル型の結晶構造を有する化合物である。
BET法による比表面積は、BET1点法に従って測定した。具体的には、以下の様な手順で測定した。まず、試料0.5gを0.0001gの単位まで精秤し、測定用セルに入れた。N2気流中、130℃で15分間脱気処理してから、マウンテック社製Macsorb HM model−1201にセットした。130℃で5分間脱気処理してから測定し、試料の比表面積を算出した。
ルチル型の含有割合は以下のように測定した。銅管球をもつX線回折装置(UltimaIII、リガク社製)にて二酸化チタン組成物を分析し、得られた測定チャートのアナタース型二酸化チタンに相当する回折ピーク(面指数101)のピーク高さIAと、ルチル型二酸化チタンに相当する回折ピーク(面指数110)のピーク高さIRを求めた。
求めた値から以下の式に従って、二酸化チタン全体に占めるルチル型の含有割合を決定した。
RC(質量%)=IR×1.32/(IR×1.32+IA)×100
「RC」は、ルチル型の含有割合(ルチルコンテント)を意味する。アナタース型酸化チタン粉末の回折ピーク(面指数101)のピーク高さIAは、ルチル型酸化チタン粉末の回折ピーク(面指数110)のピーク高さIRよりも1.32倍大きい値として検出されるため、上記計算式ではIRに1.32の係数を乗じて補正を行なっている。なお単位は質量%である。
(TiO2調製)
二酸化チタンの製造方法の一つである硫酸法に従って、硫酸チタン(IV)を熱加水分解することで水酸化チタンを得た。得られた水酸化チタンをろ過し、水洗した。TiO2として50gに相当する量の上記水酸化チタンを量り取り、外径150mm、容量400mLの磁製蒸発皿に入れた。次に、その蒸発皿にイオン交換水100mLを添加して水酸化チタンをスラリー化し、さらにそのスラリーにLi2CO30.12g(Li2Oとして0.05g)を添加した。蒸発皿を水浴で加熱し、乳棒で良く攪拌しながら、内容物を蒸発乾固させた。得られた乾燥物のうち40gを外径90mm、容量120mLの容器に仕込み、電気マッフル炉内で焼成した。焼成条件は、700℃まで90分間で昇温し、次に900度まで200分間で昇温し、900℃に到達してから30分間その温度を保持する条件とした。その後、焼成物を電気マッフル炉から取り出した。得られた焼成物をライカイ機で粉砕した(焼成物のうち約20gを約10gずつ2回に分けてライカイ機に仕込み、それぞれ10分間粉砕した)。
得られた粉砕物のうち12gを3wt%H2SO4水溶液72mLに加え、マグネチックスターラーで20分間攪拌した。得られた懸濁液をろ過し、ろ別した固体をイオン交換水600mLで洗浄し、乾燥した。得られた焼成物をライカイ機で粉砕した(焼成物のうち約10gをライカイ機に仕込んで10分間粉砕した)。
得られた粉砕物10.0gと酢酸リチウム7.44gとをメノウ乳鉢内で混合し、坩堝に仕込み、電気マッフル炉内で焼成した。焼成条件は、850℃まで200℃/hの昇温速度で昇温し、850℃で10時間保持した。得られた焼成物をライカイ機で粉砕した(焼成物のうち約10gをライカイ機に仕込んで10分間粉砕した)。
Li2CO3の添加量を1.24g(Li2Oとして0.50g)とした以外は実施例1と同様にしてTiO2及びLTOを調製した。
Li2CO3の添加量を2.31g(Li2Oとして0.93g)とした以外は実施例1と同様にしてTiO2及びLTOを調製した。
(TiO2調製)
二酸化チタンの製造方法の一つである硫酸法に従って、硫酸チタン(IV)を熱加水分解することで水酸化チタンを得た。得られた水酸化チタンをろ過し、水洗した。TiO2として50gに相当する量の上記水酸化チタンを量り取り、外径150mm、容量400mLの磁製蒸発皿に入れた。次に、その蒸発皿にイオン交換水100mLを添加して水酸化チタンをスラリー化し、さらにそのスラリーに、Li2CO30.62g(Li2Oとして0.25g)を添加した。蒸発皿を水浴で加熱し、乳棒で良く攪拌しながら、蒸発乾固させた。得られた乾燥物のうち40gを外径90mm、容量120mLに仕込み、電気マッフル炉内で焼成した。焼成条件は、700℃まで90分間で昇温し、次に950℃まで250分間で昇温し、950℃に到達してから30分間その温度を保持する条件とした。その後、焼成物を電気マッフル炉から取り出した。得られた焼成物をライカイ機で粉砕した(焼成物のうち約20gを10gずつライカイ機に仕込み、それぞれ10分間粉砕した)。の後、実施例1の「洗浄工程」に記載の方法に従って焼成物を洗浄することにより、TiO2を得た。
Li2CO30.12gの代わりに、Li2CO30.37g(Li2Oとして0.15g)と、48wt%KOH水溶液0.30g(K2Oとして0.12g)とを添加した以外は実施例1と同様にしてTiO2及びLTOを調製した。
Li2CO30.12gの代わりに、Li2CO30.37g(Li2Oとして0.15g)と、4.9wt%KOH水溶液2.92g(K2Oとして0.12g)と、H3BO30.18g(B2O3として0.10g)とを添加した以外は実施例1と同様にしてTiO2及びLTOを調製した。
Li2CO30.12gの代わりに、Li2CO30.37g(Li2Oとして0.15g)と、3.0wt%NaOH水溶液3.44g(Na2Oとして0.08g)とを添加した以外は実施例1と同様にしてTiO2及びLTOを調製した。
Li2CO30.12gの代わりに、Li2CO30.19g(Li2Oとして0.08g)と、4.9wt%KOH水溶液2.92g(K2Oとして0.12g)と、35wt%Mg(OH)2スラリー0.83g(MgOとして0.20g)とを添加した以外は実施例1と同様にしてTiO2及びLTOを調製した。
(TiO2調製)
二酸化チタンの製造方法の一つである硫酸法に従って、硫酸チタン(IV)を熱加水分解することで水酸化チタンを得た。得られた水酸化チタンをろ過し、水洗した。TiO2として50gに相当する量の上記水酸化チタンを量り取り、外径150mm、容量400mLの磁製蒸発皿に入れた。次に、その蒸発皿にイオン交換水100mLを添加して水酸化チタンをスラリー化し、さらにそのスラリーに、Li2CO30.62g(Li2Oとして0.25g)と、4.9wt%KOH水溶液2.92g(K2Oとして0.12g)とを添加した。蒸発皿を水浴で加熱し、乳棒で良く攪拌しながら、蒸発乾固させた。得られた乾燥物のうち40gを外径90mm、容量120mLに仕込み、電気マッフル炉内で焼成した。焼成条件は、700℃まで90分間で昇温し、次に850℃まで150分間で昇温し、850℃に到達してから30分間その温度を保持する条件とした。その後、焼成物を電気マッフル炉から取り出した。得られた焼成物をライカイ機で粉砕した(焼成物のうち約20gを約10gずつライカイ機に仕込み、それぞれ10分間粉砕した)。その後、実施例1の「洗浄工程」に記載の方法に従って焼成物を洗浄することにより、TiO2を得た。
Li2CO30.12gの代わりに、Li2CO30.62g(Li2Oとして0.25g)と、35wt%Mg(OH)2スラリー2.75g(MgOとして0.67g)とを添加した以外は実施例1と同様にしてTiO2及びLTOを調製した。
Li2CO30.12gの代わりに、Li2CO30.37g(Li2Oとして0.15g)と、4.9wt%KOH水溶液5.83g(K2Oとして0.24g)とを添加した以外は実施例1と同様にしてTiO2及びLTOを調製した。
焼成条件を、700℃まで90分間加熱し、次に870℃まで170分間加熱し、870℃に到達してから60分間その温度を保持する条件とした以外は実施例9と同様にしてTiO2及びLTOを調製した。
TiO2調製時の焼成条件を、700℃まで90分間加熱し、次に930℃まで230分間加熱し、930℃に到達してから18分間保持する条件とした以外は実施例9と同様にしてTiO2及びLTOを調製した。
(TiO2調製)
二酸化チタンの製造方法の一つである硫酸法に従って、硫酸チタン(IV)を熱加水分解することで水酸化チタンを得た。得られた水酸化チタンをろ過し、水洗した。TiO2として50gに相当する量の上記水酸化チタンを量り取り、外径150mm、容量400mLの磁製蒸発皿に入れた。蒸発皿を水浴で加熱し、乳棒で良く攪拌しながら、蒸発乾固させた。得られた乾燥物のうち40gを外径90mm、容量120mLに仕込み、電気マッフル炉内で焼成した。焼成条件は、700℃まで90分間で昇温し、次に900℃まで200分間で昇温し、900℃に到達してから120分間その温度を保持する条件とした。その後、焼成物を電気マッフル炉から取り出した。得られた焼成物をライカイ機で粉砕した(焼成物のうち約20gを約10gずつライカイ機に仕込み、それぞれ10分間粉砕した)。その後、実施例1の「洗浄工程」に記載の方法に従って焼成物を洗浄することにより、TiO2を得た。
TiO2調製時の焼成条件を、700℃まで90分間加熱し、次に950℃まで250分間加熱し、950℃に到達してから180分間保持する条件とした以外は比較例1と同様にしてTiO2及びLTOを調製した。
Li2CO30.12gの代わりに、4.9wt%KOH水溶液2.55g(K2Oとして0.10g)を添加した以外は実施例1と同様にしてTiO2及びLTOを調製した。
Li2CO3の添加量を2.73g(Li2Oとして1.10g)とした以外は実施例1と同様にしてTiO2及びLTOを調製した。
(TiO2調製)
二酸化チタンの製造方法の一つである硫酸法に従って、硫酸チタン(IV)を熱加水分解することで水酸化チタンを得た。得られた水酸化チタンをろ過し、水洗した。TiO2として50gに相当する量の上記水酸化チタンを量り取り、外径150mm、容量400mLの磁製蒸発皿に入れた。次に、その蒸発皿にイオン交換水100mLを添加して水酸化チタンをスラリー化した。蒸発皿を水浴で加熱し、乳棒で良く攪拌しながら、内容物を蒸発乾固させた。得られた乾燥物のうち40gを外径90mm、容量120mLの容器に仕込み、電気マッフル炉内で焼成した。焼成条件は、500℃まで64分間で昇温し、500℃に到達してから30分間その温度を保持する条件とした。その後、焼成物を電気マッフル炉から取り出した。得られた焼成物をライカイ機で粉砕した(焼成物のうち約20gを約10gずつライカイ機に仕込み、それぞれ10分間粉砕した)。その後、実施例1の「洗浄工程」に記載の方法に従って焼成物を洗浄することにより、TiO2を得た。
既成の二酸化チタン10.0g(堺化学工業株式会社製、ルチル型微粒子二酸化チタンSTR−100N)と、酢酸リチウム7.44gとをメノウ乳鉢で混合し、坩堝に仕込み、電気マッフル炉で焼成した。焼成条件は、850℃まで200℃/hで昇温し、850℃で10時間保持した。得られた焼成物をライカイ機で粉砕した(焼成物のうち10gをライカイ機に仕込んで10分間粉砕した)。
得られたLTO1gと、アセチレンブラック(電気化学工業株式会社製、デンカブラック粒状品)0.06gと、ポリフッ化ビニリデン溶液(株式会社クレハ製、KFポリマーL#1120とN−メチル−2−ピロリドン重量比1/1溶液)1.16gとを混合し、乳鉢で2分間混練してペーストとした。このペーストを、20ミクロン厚のアルミニウム箔上に、乾燥後のLTO重量が0.01g/cm2となるように塗布した。塗布にはロールコータを用いた。塗布したペーストを120℃で真空乾燥した後、直径1.5cmの円板状に打ち抜いて正極とした。負極としてリチウム金属を用い、電極液として1M濃度のヘキサフルオロリン酸リチウムを支持塩とするエチレンカーボネートとジメチルカーボネートの等量混合溶液を用いた。露点が−80℃に管理されたアルゴン雰囲気のグローブボックス中でモデルセルを作製した。充放電は、正極に対する電流密度0.088mA/cm2、カットオフ電圧3.5V〜1.2Vとし、22℃で測定して、1サイクル目の放電容量を求めた。
LTO5.0gを10mlメスシリンダーに入れ、200回タッピングしてLTOの体積を測定した。その測定値からタップ密度を算出した。
Claims (10)
- 二酸化チタンと、
Li元素と、
を含む、粒子状ルチル型二酸化チタン組成物であって、
該二酸化チタン中、ルチル型結晶を97質量%以上100質量%以下含み、
BET比表面積1.5〜5.0m2/gであり、
該二酸化チタンの前駆体である水酸化チタン100質量部(TiO2換算)に対し、Li2O換算で0.10〜2.00質量部の第1のLi化合物を添加して得られる
組成物。 - 前記組成物は、チタン酸リチウム合成用の二酸化チタン組成物である、
請求項1に記載の組成物。 - 前記組成物は、水酸化チタンと前記添加量の第1のLi化合物とを含む混合物の焼成物である
請求項1又は2に記載の組成物。 - 請求項1〜3のいずれか記載の粒子状ルチル型二酸化チタン組成物の製造方法であって、
水酸化チタンを準備し、
該水酸化チタンに、第1のLi化合物を添加して、混合物を調製し、
該混合物を焼成する
工程を含み、
前記第1のLi化合物は、水酸化チタン100質量部(TiO2換算)に対し、Li2O換算で0.10〜2.00質量部添加される
製造方法。 - 前記混合物を700℃以上950℃以下の温度で10分以上60分以下焼成する
請求項4記載の製造方法。 - 前記第1のLi化合物と共に及び/又は別々に、B化合物、K化合物、Na化合物、及びMg化合物から選ばれる1種以上の化合物をさらに添加する
請求項4又は5記載の製造方法。 - 前記B化合物は、前記水酸化チタンの質量をTiO2に換算したものを100質量%とした場合、B2O3換算で0.01〜0.30質量%添加される
請求項6記載の製造方法。 - 前記K化合物は、前記水酸化チタンの質量をTiO2に換算したものを100質量%とした場合、K2O換算で0.05〜2.00質量%添加される
請求項6記載の製造方法。 - 前記Na化合物は、前記水酸化チタンの質量をTiO2に換算したものを100質量%とした場合、Na2O換算で0.03〜1.50質量%添加される
請求項6記載の製造方法。 - 前記Mg化合物は、前記水酸化チタンの質量をTiO2に換算したものを100質量%とした場合、MgO換算で0.05〜2.00質量%添加される
請求項6記載の製造方法。
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