以下に、図面を参照して本発明に係る光信号選択装置および光信号選択装置の制御方法の実施形態を詳細に説明する。なお、以下で説明する実施形態により本発明が限定されるものではない。また、各図面において、同一または対応する要素には適宜同一の符号を付している。さらに、図面は模式的なものであり、各要素の寸法の関係などは、現実のものとは異なる場合があることに留意する必要がある。図面の相互間においても、互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれている場合がある。
(基本実施形態)
図1は、基本実施形態に係る光信号選択装置10の模式的な構成図である。光信号選択装置10は、入出力光ファイバアレイ20と、波長分光器30と、集光レンズ40と、光偏向器50と、制御部60とを備えている。
ここで、説明を容易ならしめるために、光偏向器50の素子面に平行にXY座標軸を定義する。X軸は、光偏向器50の素子面に照射される光信号が波長ごとに分光される方向である。Y軸は、光信号が光偏向器50の素子面にて反射する方向が切換えられる方向である。なお、以下の説明では、X軸を分光軸または分光軸(X軸)と適宜記載し、Y軸はスイッチ軸またはスイッチ軸(Y軸)と適宜記載する。
図1に示されるように、入出力光ファイバアレイ20は、スイッチ軸(Y軸)方向にN本の光ファイバ211,…,21Nをアレイ状に配列して構成されている。ここで、Nは光ファイバの本数を示す正の整数である。光ファイバのそれぞれの先端にはコリメータレンズ付のフェルール221,…,22Nが取り付けられている。N本の光ファイバは、それぞれが光信号選択装置10の入出力ポートとして機能する。したがって、Nは光ファイバの本数を示すのみならず、光信号選択装置10が備えるポート数にも対応している。
波長分光器30は、例えば回折格子を用いて構成されている。波長分光器30は、入出力光ファイバアレイ20から入射された光信号を分光軸(Y軸)方向に分光するように配置されている。入出力光ファイバアレイ20は、スイッチ軸(Y軸)方向に配列されているので、各光ファイバ211,…,21Nから波長分光器30に照射された平行な光信号は、波長分光器30にて、互いに平行な平面状に分光されることになる。
集光レンズ40は、前側焦点位置が波長分光器30となり、後側焦点位置が光偏向器50となるように、入出力光ファイバアレイ20と光偏向器50との間に配置されている。したがって、入出力光ファイバアレイ20の各光ファイバ211,…,21Nから入射された互いに平行な光信号は、光偏向器50の素子表面にて集光する。一方、波長分光器30にて分光された各波長の信号光は、互いに平行な信号光に分離されて光偏向器50の素子表面に照射される。なお、集光レンズ40は、図面上は単一のレンズとなっているが、複数の球面レンズおよびシリンドリカルレンズ等を組み合わせた集光光学系として構成されてもよい。
光偏向器50は、電圧を印加することによって光入射面に配列されたマイクロミラーを傾斜させることができるMEMSミラーアレイ、または、屈折率を変化させることができる位相変調素子アレイである。位相変調素子アレイは、たとえば位相変調素子として液晶素子を用いた反射型のLCOS(Liquid Crystal On Silicon)を用いて構成することができる。
光偏向器50は、少なくとも分光軸方向に対して配列された複数の光偏向素子を有する。ここで光偏向素子とは、例えば光偏向器50がMEMSミラーアレイの場合はマイクロミラーであり、光偏向器50が位相変調素子アレイの場合は位相変調素子である。光偏向素子の各々は、波長分光器30からの光信号をスイッチ方向に関して所定の角度に偏向して反射する。そして、光偏向器50にて反射された光信号は、集光レンズ40および波長分光器30を介して入出力光ファイバアレイ20の光ファイバに入射される。
制御部60は、記憶部61と演算部62と駆動部63とを有し、光偏向器50を構成する各光偏向素子に所望の電圧を印加するように接続されている。制御部60は、外部から入力された入出力ポート間の結合に関する指示により、各光ファイバ211,…,21Nの間における光信号の経路を切換える制御を行う。
記憶部61は、光偏向器50を適切に制御するために必要な制御パラメータを記憶しておくためのものである。ここで、制御パラメータとは、光偏向器50としてMEMSミラーを用いる場合、例えば各マイクロミラーの傾斜角度や当該傾斜角度を実現するための制御電圧であり、光偏向器50として位相変調素子アレイを用いる場合、各位相変調素子に印加する位相変調量のパターンに関するパラメータである。その他、記憶部61は、演算部62が用いる各種パラメータも記憶している。
演算部62は、外部から入力された入出力ポート間の結合に関する情報から、駆動部63に対する指示となる変数を演算するためのものである。演算部62は、この演算を実行するために、記憶部61に記憶されているパラメータを参照することができるよう構成されている。なお、記憶部61、演算部62、および駆動部63の具体的機能については、後に各実施形態の説明において詳述する。
ここで、光信号選択装置10の動作について説明する。以下では、光ファイバ211から光信号ch1,ch2,ch3が入力され、光ファイバ21kから光信号ch1が出力され、光ファイバ21lから光信号ch2が出力され、光ファイバ21Nから光信号ch3が出力される例を用いるが、入力される光信号の数および経路の組み合わせはこの例に限るものではない。なお、k,lは、1<k,l≦Nとなる正の整数である。
まず、入出力光ファイバアレイ20の光ファイバ211から光信号ch1,ch2,ch3が光信号選択装置10に入射される。ここで、光信号ch1,ch2,ch3は、例えば異なるチャネルに割り当てられた異なる波長の光線である。光信号ch1,ch2,ch3の波長は例えば1520nm〜1620nmの範囲における光通信に使用される波長である。光信号ch1,ch2,ch3はフェルール221のコリメータレンズによって平行光とされて波長分光器30に照射される。図1中、光ファイバ211から波長分光器30までの光信号ch1,ch2,ch3の光路は、実線により記載されている。
波長分光器30に照射された光信号ch1,ch2,ch3は、それぞれの波長に応じた異なる回折角で回折し、3つの光信号ch1、光信号ch2、および光信号ch3に分離される。図1中、分離された3つの光信号ch1、光信号ch2、および光信号ch3は、それぞれ、破線、点線、および、一点鎖線により記載されている。
波長分光器30にて分離された3つの光信号ch1、光信号ch2、および光信号ch3は、それぞれの波長に応じて異なる角度で回折するので、集光レンズ40を介して光偏向器50の素子表面に入射される際には、それぞれの波長に応じた異なる位置に入射される。
光偏向器50は、分光軸方向に対して複数の光偏向素子を有しているので、それぞれの波長に応じた異なる位置に照射された3つの光信号ch1、光信号ch2、および光信号ch3を、それぞれ独立した方向に偏向することが可能である。そこで、制御部60により、光偏向器50における光偏向素子の偏向角度を制御し、3つの光信号ch1、光信号ch2、および光信号ch3を、それぞれスイッチ軸方向の所定の角度へ偏向して反射する。
異なるスイッチ軸方向へ偏向して反射された3つの光信号ch1、光信号ch2、および光信号ch3は、集光レンズ40を介して波長分光器30に投影される際に、光偏向器50における光偏向素子の偏向角度に応じた異なる位置に照射される。その後、波長分光器30にて回折された3つの光信号ch1、光信号ch2、および光信号ch3は、スイッチ軸方向に沿って配列された入出力光ファイバアレイ20の光ファイバ211,…,21Nに入射される。
図1に示される例では、光信号ch1が光ファイバ21kに入射され、光信号ch2が光ファイバ21lに入射され、光信号ch3が光ファイバ21Nに入射されているが、光偏向器50光偏向素子の偏向角度によっては、様々な組み合わせが実現される。
以上のように、基本実施形態に係る光信号選択装置10では、制御部60が光偏向器50の各光偏向素子を駆動制御することにより、入出力光ファイバアレイ20の各光ファイバ211,…,21Nの間における光信号の経路の切換を自由に実現することができる。すなわち、入出力光ファイバアレイ20の各光ファイバ211,…,21Nのうちから任意の2つの光ファイバを第1光ファイバおよび第2光ファイバとして選択し、第1光ファイバから第2光ファイバへの光信号の経路を実現することが可能である。
ここで、図2を参照しながら、光偏向器50としてMEMSミラーアレイを用いた場合の、光信号が結合する入力ポートPiおよび出力ポートPoと光偏向器50の偏向素子の傾斜角度(θ)との関係を説明する。なお、ここでは、説明を容易にするため、光偏向器50としてMEMSミラーアレイを用いた例を説明に用いるが、光偏向器50として位相変調素子アレイを用いた場合も同様の説明が成り立つ。
また、図2は、図1における光偏向器50における1つの光偏向素子51にのみ着目した光信号選択装置10の概略光路図となっている。そこで、図2では、光偏向素子51における光信号の反射角度に影響のない波長分光器30などの他の構成は省略されている。
図2は、光軸Aに対する光信号の入射角度(Θi)および反射角度(Θo)と、光信号が結合する入力ポートPiおよび出力ポートPoの光軸Aに対する位置座標の組(di,do)と、偏向素子の傾斜角度(θ)との関係を示す光路図である。ここで、光軸Aは、集光レンズ40の光軸のことであり、光軸Aのスイッチ軸(Y軸)座標をY軸の基準(ゼロ点)と定義する。また、入射角度(Θi)、反射角度(Θo)、および傾斜角度(θ)は、Y軸の正方向と整合するように符号付けられた角度である。入力ポートPiおよび出力ポートPoの光軸Aに対する位置座標の組(di,do)は、入力ポートPiおよび出力ポートPoの物理的実体である光ファイバの入出射点の位置をY軸の座標で数値化したものである。
図2に示されるように、入力ポートPiから入力された信号光は、集光レンズ40により屈折され、光軸Aに対する角度(Θi)で光偏向素子51に入射される。このとき、入射角度(Θi)と集光レンズ40の焦点距離(D)と入力ポートPiの光軸Aに対する位置座標(di)との間に、下記式(1)の関係が成立する。
ここで、正接関数(tan)の逆関数(arctan)の級数展開をすると、入射角度(Θi)は、下記式(2)のように表現される。
この級数展開は、集光レンズ40の焦点距離に対して入力ポートが小さい場合(di<<D)には、高次の項が無視できる程に小さくなるので、下記式(3)のように簡略できる。
以上から解るように、入出力ポートの間隔を集光レンズ40の焦点距離(D)に対して十分小さくなるように構成すれば、入射角度(Θi)と入力ポートPiの位置座標が比例の関係で表現できる。同様に、反射角度(Θo)と出力ポートPoの位置座標も、下記式(4)のように、比例の関係で表現できる。
ここで、光軸Aに対する光信号の入射角度(Θi)および反射角度(Θo)と光偏向素子51の傾斜角度(θ)との関係は、下記式(5)にて表現できることに留意する。
すると、入力ポートP
iおよび出力ポートP
oの光軸Aに対する位置座標の組(d
i,d
o)と光偏向素子51の傾斜角度(θ)との関係は、下記式(6)で表現できることが解る。
以上により、集光レンズ40の焦点距離(D)は、装置に固有の定数であるので、入力ポートPiおよび出力ポートPoの光軸Aに対する位置座標の和(di+do)が等しい組み合わせは、同じ光偏向素子51の傾斜角度(θ)にて、光信号が結合されることが解る。
以下で説明する光信号選択装置およびその制御方法に係る各種実施形態は、上記性質を利用して、スイッチ軸に関する位置座標の和が等しい入力ポートと出力ポートの組み合わせにおいては、同じ制御パラメータを用いて光偏向器を制御するものである。
(第1実施形態)
図3は、第1実施形態に係る光信号選択装置110の概略光路図である。図3は、入出力ポートPort(1)〜(7)から入出力される光信号が集光レンズ140を介して光偏向素子151へ照射し、光偏向素子151に反射されて入出力ポートPort(1)〜(7)に結合するまでの光路を示している。
図3に示されるように、第1実施形態に係る光信号選択装置110では、入出力ポートPort(1)〜(7)が等間隔である必要はない。また、図3に示されている例では、入出力ポートPott(4)が光軸A上に配置されているが、必ずしも光軸A上に入出力ポートを配置する必要はなく、光軸Aに関して対称となる位置に配置される必要もない。なお、入出力ポートPort(1)〜(7)のY軸における座標は、入出力ポートPort(4)と入出力ポートPort(5)との間の距離を1単位(d)とした相対的座標で数値化している。
図3に示されるように、入出力ポートPort(3)のY軸における座標は−1dであり、入出力ポートPort(6)のY軸における座標は+3dであり、入出力ポートPort(3)および入出力ポートPort(6)の座標の和は、+2dとなる。一方、入出力ポートPort(2)のY軸における座標は−3dであり、入出力ポートPort(7)のY軸における座標は+5dであり、入出力ポートPort(2)および入出力ポートPort(7)の座標の和も、+2dとなる。
したがって、基本実施形態を用いて説明した原理によれば、入出力ポートPort(3)と入出力ポートPort(6)との経路を結合しようとした場合と、入出力ポートPort(2)と入出力ポートPort(7)との経路を結合しようとした場合とでは、光偏向素子151の傾斜角度に同じ角度(θ+2d)を用いることができる。
なお、上記説明した入出力ポートの組み合わせは、1つの例であり、入出力ポートPort(1)〜(7)の座標の和が同じとなる他の組み合わせにおいても、光偏向素子151の傾斜角度に同じ角度を用いることができる。
図4は、第1実施形態に係る光信号選択装置110の制御方法を実行する制御部160の概略構成を示すブロック図である。
図4に示されるように、制御部160は、記憶部161と演算部162と駆動部163とを備え、入出力ポート間の結合に関する情報(m,n)を入力として、光偏向素子151に印加する電圧(V)を出力するものである。ここで、入出力ポート間の結合に関する情報(m,n)は、ポート番号(m)とポート番号(n)との入出力ポートを結合する指示を意味している。
記憶部161は、光偏向素子151を適切に制御するために必要な所定のパラメータを記憶している。例えば、記憶部161は、光信号選択装置110が備える入出力ポートの光軸に対する位置座標を、ポート番号を引数として参照し得るように記憶している。さらに、記憶部161は、光偏向素子151の傾斜角度を、2つの入出力ポートについての位置座標の和を引き数とし参照し得るように記憶している。
演算部162は、入出力ポート間の結合に関する情報(m,n)を引き数とし、記憶部161に記憶されたポート番号(m)およびポート番号(n)の光軸Aに対する位置座標の組(dm,dn)を参照する。その後、演算部162は、ポート番号(m)およびポート番号(n)の光軸Aに対する位置座標の組(dm,dn)からその和(dm+dn)を演算する。
さらに、演算部162は、ポート番号(m)およびポート番号(n)の光軸Aに対する位置座標の和(dm+dn)を引き数とし、光偏向素子151の傾斜角度(θ)を参照する。そして、演算部162は、得られた光偏向素子151の傾斜角度(θ)を駆動部163に対する指示として出力する。
駆動部163は、光偏向素子151が傾斜角度(θ)となるように、光偏向素子151に印加する電圧(V)を出力する。なお、図4に示される例では、駆動部163が制御部160に設けられた構成としているが、駆動部163は、光偏向素子151やこれらを集積した光偏向器に設ける構成としてもよい。
以上のように、第1実施形態に係る制御部160では、演算部162が、入出力ポート間の結合に関する情報(m,n)から光軸Aに対する位置座標の和(dm+dn)を演算し、記憶部161への問い合わせに用いる引き数の数を削減している。これにより、記憶部161は、2つの入出力ポートの組み合わせに関する光偏向素子151の傾斜角度(θ)を、1つの引き数によって参照し得るように記憶すればよいので、記憶部161における必要な記憶容量を削減することができる。
(第2実施形態)
図5は、第2実施形態に係る光信号選択装置210の概略光路図である。図5は、入出力ポートPort(1)〜(11)から入出力される光信号が集光レンズ240を介して光偏向素子251へ照射し、光偏向素子251に反射されて入出力ポートPort(1)〜(11)に結合するまでの光路を示している。
図5に示されるように、第2実施形態に係る光信号選択装置210では、入出力ポートPort(1)〜(11)がスイッチ軸(Y軸)方向に等間隔に配置されている。そこで、第2実施形態に係る光信号選択装置210では、入出力ポートPort(1)〜(11)におけるポート番号(1〜11)を、入出力ポートの位置座標の代わりに用いることができる。
図5に示されるように、入出力ポートPort(5)のポート番号(5)と入出力ポートPort(9)のポート番号(9)との和は、5+9=14である。一方、入出力ポートPort(3)のポート番号(3)と入出力ポートPort(11)のポート番号(11)との和は、3+11=14である。このとき、入出力ポートPort(1)〜(11)が等間隔に配置されていることを考慮すると、入出力ポートPort(5)と入出力ポートPort(9)とにおける光軸Aに対する位置座標の和と、入出力ポートPort(3)と入出力ポートPort(11)とにおける光軸Aに対する位置座標の和とが等しいことが解かる。
したがって、基本実施形態を用いて説明した原理によれば、入出力ポートPort(5)と入出力ポートPort(9)との経路を結合しようとした場合と、入出力ポートPort(3)と入出力ポートPort(11)との経路を結合しようとした場合とでは、光偏向素子251の傾斜角度が同じ角度(θ14)を用いることができる。
なお、上記説明した入出力ポートの組み合わせは、1つの例であり、入出力ポートPort(1)〜(11)のポート番号(1〜11)の和が同じとなる他の組み合わせにおいても、光偏向素子251の傾斜角度に同じ角度を用いることができる。
また、図5に示されたポート番号の割り振り方も単なる一例であり、これに限定されるものではない。例えば、図5とは逆に、Y軸の座標が最小のポートをPort(11)として、Y軸方向の降順にポート番号を割り振ってもよいし、光軸A上に位置座標するポートをPort(0)として、Port(0)を基準にY軸に対しての正の方向にPort(1)からPort(5)を割り振り、負の方向にPort(−1)からPort(−5)を割り振ってもよい。
図6は、第2実施形態に係る光信号選択装置210の制御方法を実行する制御部260の概略構成を示すブロック図である。
図6に示されるように、制御部260は、記憶部261と演算部262と駆動部263とを備え、入出力ポート間の結合に関する情報(m,n)を入力として、光偏向素子251に印加する電圧(V)を出力するものである。ここで、入出力ポート間の結合に関する情報(m,n)は、ポート番号(m)とポート番号(n)との入出力ポートを結合する指示を意味している。
記憶部261は、光偏向素子251を適切に制御するために必要な所定のパラメータを記憶している。例えば、記憶部261は、光偏向素子151の傾斜角度を、2つの入出力ポートについてのポート番号の和を引き数とし参照し得るように記憶している。
演算部262は、入出力ポート間の結合に関する情報(m,n)からその和(m+n)を演算する。そして、演算部262は、ポート番号(m)とポート番号(n)との和(m+n)を引き数とし、光偏向素子251の傾斜角度(θ)を参照する。そして、演算部262は、得られた光偏向素子251の傾斜角度(θ)を駆動部263に対する指示として出力する。
駆動部263は、光偏向素子251が傾斜角度(θ)となるように、光偏向素子251に印加する電圧(V)を出力する。
以上のように、第2実施形態に係る制御部260では、演算部262が、入出力ポート間の結合に関する情報(m,n)からポート番号の和(m+n)を演算し、記憶部261への問い合わせに用いる引き数の数を削減している。これにより、記憶部261は、2つの入出力ポートの組み合わせに関する光偏向素子251の傾斜角度(θ)を、1つの引き数によって参照し得るように記憶すればよいので、記憶部261における必要な記憶容量を削減することができる。
さらに、第2実施形態に係る制御部260では、入出力ポート間の結合に関する情報(m,n)から入出力ポートの光軸Aに対する位置座標を演算する必要がないので、演算部262における演算量も少ないというメリットもある。
(第3実施形態)
第3実施形態に係る光信号選択装置は、基本実施形態に係る光信号選択装置の構成において、光偏向器として位相変調素子アレイを用いた実施形態である。そこで、位相変調素子アレイの光信号に対する回折作用について説明する。
図7は、光偏向器350としての位相変調素子アレイの素子面に光信号ch1,ch2,chnが照射されている状態を示す図である。図7に示されるように、各光信号ch1,ch2,chnは分光軸(X軸)に沿って位相変調素子アレイの素子面の異なる領域に照射される。また、図7に示されるように、各光信号ch1,ch2,chnは、位相変調素子アレイにおける複数の位相変調素子上にビームが広がって照射されている。
図8は、光信号ch1,ch2,chnの経路の切り替えを行う場合の位相変調素子アレイの位相変調の設定を説明する図である。図8に示されるように、位相変調素子アレイの素子面のうち、光信号ch1,ch2,chnが入射する各領域A1,A2,Anには、スイッチ軸(Y軸)に沿った傾きがそれぞれ異なる略線形の位相変調が印加され、位相変調素子アレイの素子面に位相変調量のパターンが形成されている。
図9は、位相変調素子アレイの素子面上に形成された位相変調量のパターンの例を示す図である。図9に示されるように、光信号ch1,ch2,chnが入射する各領域A1,A2,Anは、それぞれ異なる位相変調量のパターンが形成されている。
図10は、位相変調素子アレイのY軸方向の断面における位相変調のパターンの例を示す図である。図10は、位相変調素子アレイのY軸方向に多数配列された各位相変調素子における位相変調量を、各位相変調素子間で少しずつ変化させて全体の位相変調量の分布形状を鋸刃状にした状態を示している。
なお、図10に示される位相変調量が0から2πまでであり、位相変調量の分布形状が鋸刃状になっている理由は、位相の周期性に従い、2π以上の位相変調量を印加する場合も0から2πの範囲で折り返した位相変調量を印加しても同等の作用が得られるからである。そして、この位相の周期性に従う位相変調量の分布形状のパターンの周期をLとする。すなわち、位相変調量の傾き(Δφ)と周期(L)との間には、Δφ=2π/Lという関係が成立する。
ここで、位相変調素子アレイに照射される光信号の入射角度を角度(Θi)とし、反射角度を角度(Θo)とすると、位相変調量の傾き(Δφ)および周期(L)と、入射角度(Θi)および反射角度(Θo)との間には、下記式(7)の関係が成立する。
ここで、Θが十分小さい場合、sinΘ≒Θが成立し、先述の式(3)および(4)を用いると、上記式(7)は、下記式(8)に変形することができる。
上記式(8)から解るように、位相変調素子アレイを光偏向器350として用いた場合でも、入力ポートPiおよび出力ポートPoの光軸Aに対する位置座標の和(di+do)が等しい組み合わせでは、位相変調素子アレイに対する同一の制御パラメータを用いることができる。
したがって、位相変調素子アレイを光偏向器350として用いた第3実施形態に係る光信号選択装置は、基本実施形態と略同様の構成において、基本実施形態と略同様の効果を得ることができる。本実施形態の説明では光信号選択装置自体の構成の説明を略省略したが、光偏向器350以外の構成は、基本実施形態と同一の構成またはこれの適切な変形構成とすればよい。
図11は、第3実施形態に係る光信号選択装置の制御方法を実行する制御部360の概略構成を示すブロック図である。
図11に示されるように、制御部360は、記憶部361と演算部362と駆動部363とを備え、入出力ポート間の結合に関する情報(m,n)を入力として、位相変調素子に印加する電圧(V)を出力するものである。ここで、入出力ポート間の結合に関する情報(m,n)は、ポート番号(m)とポート番号(n)との入出力ポートを結合する指示を意味している。
記憶部361は、位相変調素子アレイの位相変調素子を適切に制御するために必要な所定のパラメータを記憶している。例えば、記憶部361は、光信号選択装置が備える入出力ポートの光軸に対する位置座標を、ポート番号を引数として参照し得るように記憶している。さらに、記憶部361は、位相変調素子アレイにおける位相変調量の分布形状のパターンの周期(L)を、2つの入出力ポートについての位置座標の和を引き数とし参照し得るように記憶している。
演算部362は、入出力ポート間の結合に関する情報(m,n)を引き数とし、記憶部361に記憶されたポート番号(m)およびポート番号(n)の光軸Aに対する位置座標の組(dm,dn)を参照する。その後、演算部362は、ポート番号(m)およびポート番号(n)の入出力ポートの光軸Aに対する位置座標の組(dm,dn)からその和(dm+dn)を演算する。
さらに、演算部362は、ポート番号(m)およびポート番号(n)の光軸Aに対する位置座標の和(dm+dn)を引き数とし、位相変調素子アレイにおける位相変調量の分布形状のパターンの周期(L)を参照する。そして、演算部362は、得られた位相変調素子アレイにおける位相変調量の分布形状のパターンの周期(L)を駆動部363に対する指示として出力する。
駆動部363は、位相変調素子アレイにおける位相変調量の分布形状のパターンが周期(L)となるように、位相変調素子アレイに印加する電圧(V)を出力する。なお、図11に示される例では、駆動部363が制御部360に設けられた構成としているが、駆動部363は、光偏向素子351やこれらを集積した光偏向器に設ける構成としてもよい。
さらに、上記説明した制御部360の例では、位相変調素子アレイの位相変調素子を適切に制御するために必要な所定のパラメータとして、位相変調素子アレイにおける位相変調量の分布形状のパターンの周期(L)を記憶部361に記憶しているが、位相変調素子アレイにおける位相変調量の分布形状のパターンの傾き(Δφ)を記憶部361に記憶する構成としてもよい。
また、本実施形態においても、第2実施形態と同様に入出力ポートをスイッチ軸方向に等間隔に配置する構成とした場合、演算部362が、入出力ポート間の結合に関する情報(m,n)からポート番号の和(m+n)を演算し、記憶部361への問い合わせに用いる引き数とする構成を採用することができる。その場合、入出力ポート間の結合に関する情報(m,n)から入出力ポートの光軸Aに対する位置座標を演算する必要がないので、第3実施形態においても、演算部362における演算量も少ないというメリットを得ることができる。
(第4実施形態)
第4実施形態に係る光信号選択装置は、経路切替の機能に加えて、伝送路の損失を調整するためのアテネーション機能を有する。アテネーション機能を実現する方法としては、例えば光偏向器としてMEMSミラーを用いる場合、分光軸またはスイッチ軸方向に対する光信号の反射角度をマイクロミラーにおいて調整することにより、ポートとの結合効率を制御する方法が一般的である。
また、光偏向器として位相変調素子アレイを用いる場合には、様々な方式が提案されており、MEMSミラーの場合と同様に光信号の反射角度を調整する方法や、位相変調素子アレイ上に曲率を持った位相変調を与えることで光信号の集光位置を調整してポートとの結合効率を制御する方法、もしくは周期的に不連続な位相変調を与えることにより光信号の一部を散乱させる方法などが知られている。
以下では、位相変調素子アレイに周期的に不連続な位相変調を与える方式を一例として、本実施形態を説明する。
図12は、光信号に対してアテネーションとして作用する位相変調量のパターンの例を示す図である。図12に示される例は、2つの位相変調量がスイッチ軸(Y軸)方向の周期性を持って配置される位相変調量のパターンとなっている。図12に示される位相変調量のパターンでは、位相変調素子アレイに垂直方向から照射された光信号に対して、散乱角度(α)で散乱光が発生する。また、2つの位相変調量の位相差を変更することにより、散乱光の発生量を調整することができるので、図12に示される位相変調量のパターンは、光信号に対してアテネーションとして作用する。なお、散乱角度(α)と位相変調量のパターンの周期(l)との関係は、下記式(9)に示される関係となる。
図13は、光信号に対して反射角度の制御とアテネーションとの2つの作用を両立する位相変調量のパターンの例を示す図である。図13に示される例は、図10に示される位相変調量のパターンと図12に示される位相変調量のパターンとを合成したものである。図13に示される位相変調量のパターンでは、位相変調素子アレイに入射角度(Θi)で照射された光信号が反射角度(Θo)で反射され、かつ、当該反射角度(Θo)の反射方向に対し散乱角度(α)の方向に散乱光が発生される。
図13に示されるように、光信号に対して反射角度の制御とアテネーションとの2つの作用を両立させる場合、反射角度を制御するための位相変調量の周期(L)がアテネーションを制御するための位相変調量の周期(l)の整数倍であれば、位相変調量の不連続点が少なくて済む。位相変調量の不連続点は、光信号に対する位相変調に歪みを生じさせるので、位相変調量の不連続点が少ない方が好ましい。
反射角度を制御するための位相変調量の周期(L)は、先述のように、入力ポートPiおよび出力ポートPoの光軸Aに対する位置座標の和(di+do)が等しい組み合わせでは同一の値を用いることができる。したがって、アテネーションを制御するための位相変調量の周期(l)も入力ポートPiおよび出力ポートPoの光軸Aに対する位置座標の和(di+do)に従って設定すれば、反射角度を制御するための位相変調量の周期(L)がアテネーションを制御するための位相変調量の周期(l)の整数倍となる関係が維持されるものとなる。
図14は、第4実施形態に係る光信号選択装置の制御方法を実行する制御部460の概略構成を示すブロック図である。
図14に示されるように、制御部460は、記憶部461と演算部462と駆動部463とを備え、入出力ポート間の結合に関する情報(m,n)を入力として、位相変調素子に印加する電圧(V)を出力するものである。ここで、入出力ポート間の結合に関する情報(m,n)は、ポート番号(m)とポート番号(n)との入出力ポートを結合する指示を意味している。
記憶部461は、位相変調素子アレイの位相変調素子を適切に制御するために必要な所定のパラメータを記憶している。例えば、記憶部461は、光信号選択装置が備える入出力ポートの光軸に対する位置座標を、ポート番号を引数として参照し得るように記憶している。さらに、記憶部461は、位相変調素子アレイにおける位相変調量の分布形状のパターンの周期(L)およびアテネーションを制御するための位相変調量の周期(l)を、2つの入出力ポートについての位置座標の和を引き数とし参照し得るように記憶している。
演算部462は、入出力ポート間の結合に関する情報(m,n)を引き数とし、記憶部461に記憶されたポート番号(m)およびポート番号(n)の光軸Aに対する位置座標の組(dm,dn)を参照する。その後、演算部462は、ポート番号(m)およびポート番号(n)の入出力ポートの光軸Aに対する位置座標の組(dm,dn)からその和(dm+dn)を演算する。
さらに、演算部462は、ポート番号(m)およびポート番号(n)の光軸Aに対する位置座標の和(dm+dn)を引き数とし、位相変調素子アレイにおける反射角度を制御するための位相変調量の周期(L)およびアテネーションを制御するための位相変調量の周期(l)の2つを参照する。そして、演算部462は、得られた反射角度を制御するための位相変調量の周期(L)およびアテネーションを制御するための位相変調量の周期(l)を駆動部463に対する指示として出力する。
駆動部463は、位相変調素子アレイにおける位相変調量の分布形状のパターンが所望の形状となるように、位相変調素子アレイに印加する電圧(V)を出力する。
なお、本実施形態においても、第3実施形態と同様に、位相変調量の分布形状のパターンの周期(L)の代わりに、位相変調量の分布形状のパターンの傾き(Δφ)を記憶部461に記憶する構成とすることや、入出力ポートをスイッチ軸方向に等間隔に配置する構成とすることができる。
ここで、本実施形態におけるアテネーションの効果について検証する。図15〜図18に係る検証実験では、入出力ポートをスイッチ軸方向に等間隔に配置する構成とし、アテネーションのための位相変調の設定を出力ポートのポート番号に対して最適化した場合と、入力ポートおよび出力ポートのポート番号の和に対して最適化した場合とで、アテネーション量に違いが観測されるかを検証した。
図15は、アテネーションのための位相変調の設定を出力ポートのポート番号に対して最適化した場合において、位相変調量に対するアテネーション量を併記したグラフであり、図16は、図15に示される2つの位相変調量に対するアテネーション量の差異を表したグラフである。なお、図15および図16に示されるグラフにおいて、横軸の位相変調量は、πラジアンを1単位とした位相変調量で記載し、縦軸は入射される光信号と反射される光信号の強度比をデシベル表記で記載している。
図15に示されるグラフには、ポート番号が24の入出力ポートからポート番号が22の入出力ポートへ光信号を結合させる場合のアテネーション量と、ポート番号が26の入出力ポートからポート番号が22の入出力ポートへ光信号を結合させる場合のアテネーション量とが記載されている。図16に示されるグラフには、ポート番号が24の入出力ポートからポート番号が22の入出力ポートへ光信号を結合させる場合のアテネーション量を基準とした場合の、ポート番号が26の入出力ポートからポート番号が22の入出力ポートへ光信号を結合させる場合のアテネーション量が記載されている。
図15および図16に係る検証実験では、出力ポートが同じ場合はアテネーションを制御するための位相変調量の周期(l)を同じものとしている。したがって、図15に示される2つアテネーション量は出力ポートが同じであるので、アテネーション量を制御するための位相変調量の周期(l)が同じである。一方、図15に示される2つアテネーション量はポート番号の和が異なるので、反射角度を制御するための位相変調量の周期(L)は異なるものになっている。
図15および図16に示されるグラフを参照すると解るように、ポート番号が24の入出力ポートからポート番号が22の入出力ポートへ光信号を結合させる場合のアテネーションと、ポート番号が26の入出力ポートからポート番号が22の入出力ポートへ光信号を結合させる場合のアテネーションとでは、差異が生じている。これは、ポート番号が24の入出力ポートからポート番号が22の入出力ポートへ光信号を結合させる場合のアテネーションに位相変調量の周期(l)を最適化しても、その周期(l)は、ポート番号が26の入出力ポートからポート番号が22の入出力ポートへ光信号を結合させる場合のアテネーションとしては最適とはならないからである。
一方、図17は、アテネーションのための位相変調の設定を入力ポートおよび出力ポートのポート番号の和に対して最適化した場合において、位相変調量に対するアテネーション量を併記したグラフであり、図18は、図17に示される位相変調量に対するアテネーション量の差異を表したグラフである。なお、図17および図18に示されるグラフにおける横軸および縦軸の表記は、図15および図16に示されるグラフと同じとしている。
図17に示されるグラフには、ポート番号が24の入出力ポートからポート番号が23の入出力ポートへ光信号を結合させる場合のアテネーション量と、ポート番号が21の入出力ポートからポート番号が26の入出力ポートへ光信号を結合させる場合のアテネーション量とが記載されている。図18に示されるグラフには、ポート番号が24の入出力ポートからポート番号が23の入出力ポートへ光信号を結合させる場合のアテネーション量を基準とした場合の、ポート番号が21の入出力ポートからポート番号が26の入出力ポートへ光信号を結合させる場合のアテネーションが記載されている。
図17および図18に係る検証実験では、入力ポートおよび出力ポートのポート番号の和が同じ場合はアテネーションを制御するための位相変調量の周期(l)を同じものとしている。したがって、図17に示される2つアテネーション量は、アテネーション量を制御するための位相変調量の周期(l)が同じである。また、図17に示される2つアテネーション量は、入力ポートおよび出力ポートのポート番号の和が同じなので、反射角度を制御するための位相変調量の周期(L)も同じものとなっている。
図17および図18に示されるグラフを参照すると解るように、ポート番号が24の入出力ポートからポート番号が23の入出力ポートへ光信号を結合させる場合のアテネーションと、ポート番号が21の入出力ポートからポート番号が26の入出力ポートへ光信号を結合させる場合のアテネーションとでは、差異がほとんど生じていない。これは、入力ポートおよび出力ポートのポート番号の和が同じ場合に、アテネーションを制御するための位相変調量の周期(l)および反射角度を制御するための位相変調量の周期(L)の両方を同じものとしているので、アテネーションを制御するための位相変調量の周期(l)と反射角度を制御するための位相変調量の周期(L)との整合性が維持されているからである。
なお、上記検証実験では、説明を容易にならしめるために、入出力ポートをスイッチ軸方向に等間隔に配置する構成としたが、上記効果を得るためには、必ずしも入出力ポートをスイッチ軸方向に等間隔に配置する必要はない。入出力ポートをスイッチ軸方向に等間隔にしなくても、入出力ポートの光軸に対する位置座標の和が同じ場合に、位相変調素子アレイにおける反射角度を制御するための位相変調量の周期(L)およびアテネーションを制御するための位相変調量の周期(l)を対にして選択することにより、アテネーションを制御するための位相変調量の周期(l)と反射角度を制御するための位相変調量の周期(L)との整合性が維持されるからである。
したがって、第4実施形態に係る光信号選択装置は、ポート番号(m)およびポート番号(n)の光軸に対する位置座標の和(dm+dn)を引き数とし、位相変調素子アレイにおける反射角度を制御するための位相変調量の周期(L)およびアテネーションを制御するための位相変調量の周期(l)の両方を参照するので、より精度の高いアテネーション機能を備えることができる。
(第5実施形態)
第5実施形態は、第4実施形態の拡張に係る実施形態となっている。したがって、第5実施形態の説明では、第4実施形態と相違する点のみ説明する。
位相変調素子アレイにアテネーションの機能を追加した場合、位相変調素子アレイのアテネーションの際に発生する散乱光が意図しないポートに結合しクロストーク光となる場合がある。
図19は、散乱光が入力ポートの方向へ反射してしまう位相変調量のパターンの例を示す図である。先述のように、散乱光は、反射角度(Θo)の方向を中心として散乱角度(α)の方向へ散乱する。したがって、反射角度(Θo)が大きくなると、散乱光が意図しないポートの方向へ散乱してしまう可能性が出てくる。例えば、入射角度(Θi)と反射角度(Θo)との和(Θi+Θo)が散乱角度(α)に近づくと、散乱光が入力ポートに結合してしまう。
このような問題点を解決するために、第5実施形態に係る光信号選択装置では、位相変調量の周期(l)などのアテネーションを制御するパラメータに出力ポート依存性を持たせる。
例えば、第5実施形態に係る光信号選択装置は、ポート番号(m)およびポート番号(n)の光軸に対する位置座標の和(dm+dn)を引き数とし、位相変調素子アレイにおける反射角度を制御するための位相変調量の周期(L)およびアテネーションを制御するための位相変調量の周期の組(l,...,lN)を参照し、その後、出力ポートの光軸に対する位置座標に基づいて、位相変調量の周期の組(l,...,lN)の中から、散乱光が意図しないポートに結合しない(lk)を選択する方法が考えられる。ここで、位相変調量の周期の組(l,...,lN)は、反射角度を制御するための位相変調量の周期(L)を割り切るものを選択しておけば、アッテネーション制御の精度とクロストーク光の抑制とを両立することが可能になる。
なお、第5実施形態に係る光信号選択装置のすべての出力ポートに対して、アテネーションを制御するパラメータに出力ポート依存性を持たせることとしてもよいが、例えば中心付近や両端付近など一部の出力ポートをいくつかのグループに分けて、アテネーションを制御するパラメータに出力ポートの依存性を持たせることとしてもよい。
以上、本発明を実施形態に基づいて説明してきたが、上記実施形態により本発明が限定されるものではない。上述した各構成要素を適宜組み合わせて構成したものも本発明に含まれる。また、さらなる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。
例えば、光偏向器などの光学系が持つ波長依存性や温度依存性、および偏波依存性などの各種特性を吸収するための、補正係数やオフセットなどのパラメータを、記憶部に持たせることがあるが、それらのパラメータに対しても前述したような入出力ポートの組み合わせに応じてパラメータを共通化することで、メモリ容量を削減することが可能である。
また上記説明した実施形態では、光軸を基準とした位置座標の和(dm+dn)またはポート番号の和(m+n)を引き数として用いたが、(dm+dn−A)や(dm+dn)×Bなどの引き数(A,Bは定数)を用いても本発明と同様の効果が得られることは言うまでもない。これらの引き数も、光軸を基準とした位置座標の和(dm+dn)またはポート番号の和(m+n)を含む引き数として、本発明の範疇に含まれる。
また、上記実施形態では、光信号選択装置として、波長ごとに光信号を選択し得る波長選択スイッチ(Wavelength Selective Switch:WSS)の例を用いているが、波長ごとの選択をしない光スイッチに対しても本発明を適用することが可能である。
このように、本発明のより広範な態様は、上記の実施形態に限定されるものではなく、様々な変更が可能である。