JP6158391B1 - エレベータ装置 - Google Patents

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【課題】心綱と鋼鉄製ストランドとの接触部分の損傷を抑制でき、ワイヤロープの寿命を延ばすことができるエレベータ装置を得ることにある。【解決手段】エレベータ装置は、複数本のワイヤロープ、第1および第2のそらせシーブを有する。第1のそらせシーブは、第1の回転軸線を中心に回転するとともに、ワイヤロープが巻き掛けられた第1のロープ溝を有する。第2のそらせシーブは、第1のそらせシーブの下方で第1の回転軸線と交差する方向に延びた第2の回転軸線を中心に回転するとともに、ワイヤロープが巻き掛けられた第2のロープ溝を有する。第1のそらせシーブから第2のそらせシーブに向かうワイヤロープのうち昇降路に沿って真っ直ぐに延びた中央のワイヤロープを除く他のワイヤロープは、所定のフリートアングルで第2のそらせシーブに進入するとともに、中央のワイヤロープを中心にストランドの撚り方向とは逆回りとなるような向きで第1のそらせシーブと第2のそらせシーブとの間に架け渡されている。【選択図】図3

Description

本発明の実施形態は、心綱の周囲に複数の鋼鉄製ストランドを撚り合わせたワイヤロープを有するエレベータ装置に関する。
エレベータの乗りかごおよび釣合錘を昇降路に吊り下げるワイヤロープは、心綱と、当該心綱の周囲に螺旋状に撚り合わされた複数の鋼鉄製ストランドと、を備えている。この種のワイヤロープをマシンルームレスエレベータに適用した場合、一列に並んだ複数本のワイヤロープの中間部が乗りかごのシーブ、巻上機のトラクションシーブおよび釣合錘のシーブに連続して巻き掛けられている。
さらに、ワイヤロープの中間部は、複数のそらせシーブを介して移動方向が案内されている。そらせシーブは、昇降路内のビームあるいはガイドレールに固定されて、昇降路の高さ方向に互いに離れている。ワイヤロープの中間部は、そらせシーブの間に跨るように巻き掛けられているとともに、そらせシーブの間を通過する過程でワイヤロープの配列方向が例えば90°捩じられている。
特開2011−46462号公報
乗りかごおよび釣合錘を吊り下げるワイヤロープに張力が加わると、ストランドが撚りを進める方向に強制的に絞られるので、ストランドが心綱に押し付けられる。
さらに、ワイヤロープが昇降路の高さ方向に離れたそらせシーブの間に巻き掛けられた状態では、上側のそらせシーブから下側のそらせシーブに向かう一部のワイヤロープにフリートアングルが生じるのを避けられない。この結果、一部のワイヤロープに関しては、張力によってストランドが心綱を絞ろうとする力が強く働き、心綱とストランドとの接触部分に加わる圧力が過大となる。これにより、心綱およびストランドが損傷し、ワイヤロープの寿命が短くなる。
本発明の目的は、心綱と鋼鉄製ストランドとの接触部分の損傷を抑制することができ、ワイヤロープの長寿命化および強度的な面での信頼性を高めることができるエレベータ装置を得ることにある。
実施形態によれば、エレベータ装置は、心綱の周囲に鋼鉄製ストランドを螺旋状に撚り合わせた複数本のワイヤロープ、第1のそらせシーブおよび第2のそらせシーブを有する。
前記第1のそらせシーブは、昇降路に固定的に設けられ、水平な第1の回転軸線を中心に回転するとともに、前記ワイヤロープが所定の張力で巻き掛けられた複数の第1のロープ溝を有する。第1のロープ溝は、前記第1の回転軸線の軸方向に間隔を存して配列されている。
前記第2のそらせシーブは、前記第1のそらせシーブの下方に位置するように前記昇降路に固定的に設けられ、前記第1の回転軸線と交差する方向に延びた水平な第2の回転軸線を中心に回転するとともに、前記ワイヤロープが所定の張力で巻き掛けられた複数の第2のロープ溝を有する。前記第2のロープ溝は、前記第2の回転軸線の軸方向に間隔を存して配列されている。
前記第1のそらせシーブから前記第2のそらせシーブに向かう前記ワイヤロープのうち、前記昇降路に沿って真っ直ぐに延びた中央のワイヤロープを除く他のワイヤロープは、所定のフリートアングルで前記第2のそらせシーブに進入するとともに、前記中央のワイヤロープを中心として前記ストランドの撚り方向とは逆回りとなるような向きで前記第1のそらせシーブと前記第2のそらせシーブとの間に架け渡されている。
第1の実施形態に係るマシンルームレスエレベータの斜視図である。 第1のそらせシーブから第2のそらせシーブに向かうメインロープにフリートアングルが生じた状態を示す側面図である。 メインロープが第1のそらせシーブと第2のそらせシーブとの間に巻き掛けられた状態を示す断面図である。 第1の実施形態で用いるメインロープの構成を示す側面図である。 第1の実施形態で用いるメインロープの断面図である。 比較例において、メインロープが第1のそらせシーブと第2のそらせシーブとの間に巻き掛けられた状態を示す断面図である。 第2の実施形態で用いるメインロープの断面図である。 第3の実施形態で用いるメインロープの断面図である。
[第1の実施形態]
以下、第1の実施形態について、図1ないし図5を参照して説明する。
図1は、専用の機械室を不要としたマシンルームレスエレベータ1を開示している。マシンルームレスエレベータ1は、エレベータ装置の一例である。
エレベータ1は、建屋に設けられた昇降路2を有している。乗りかご3および釣合錘4が昇降路2に配置されている。乗りかご3および釣合錘4は、夫々昇降体の一例である。乗りかご3は、昇降路2の内壁面に固定した第1のガイドレール5a,5bを介して昇降路2に昇降動可能に支持されている。釣合錘4は、昇降路2の内壁面に固定した第2のガイドレール6a,6bを介して昇降路2に昇降動可能に支持されている。
図1に示すように、昇降路2の上部に支持梁7が設置されている。支持梁7は、例えば一方の第1のガイドレール5aの上端と第2のガイドレール6a,6bの上端との間に跨って固定されている。さらに、トラクションシーブ8を有する巻上機9が支持梁7の上に据え付けられている。
本実施形態によると、乗りかご3および釣合錘4は、図2に示すように例えば五本のメインロープ10a,10b,10c,10d,10eで昇降路2に吊り下げられている。メインロープ10a,10b,10c,10d,10eは、ワイヤロープの一例であって、互いに間隔を存して一列に配列されている。各メインロープ10a,10b,10c,10d,10eの一端部11は、第1のガイドレール5bの上端に固定した第1のロープヒッチ12に連結されている。各メインロープ10a,10b,10c,10d,10eの他端部13は、支持梁7に固定した第2のロープヒッチ14に連結されている。
メインロープ10a,10b,10c,10d,10eは、一端部11と他端部13との間に跨る中間部15を有している。各メインロープ10a,10b,10c,10d,10eの中間部15は、乗りかご3の上に設けた一対のかご上シーブ17a,17b、巻上機9のトラクションシーブ8、および釣合錘4に設けた一対の錘シーブ18a,18bに連続的に巻き掛けられている。
このため、巻上機9のトラクションシーブ8でメインロープ10a,10b,10c,10d,10eを巻き上げたり、巻き戻すことで、乗りかご3および釣合錘4が昇降路2に沿ってつるべ式に駆動される。
図1ないし図3に示すように、各メインロープ10a,10b,10c,10d,10eは、第1のそらせシーブ20および一対の第2のそらせシーブ21a,21bを介して昇降路2内での移動方向が案内されている。
第1のそらせシーブ20は、昇降路2の内部の支持梁7に固定されているとともに、昇降路2の奥行き方向に延びた水平な第1の回転軸線O1を中心に回転する。複数の第1のロープ溝22a,22b,22c,22d,22eが第1のそらせシーブ20の外周面に形成されている。第1のロープ溝22a,22b,22c,22d,22eは、メインロープ10a,10b,10c,10d,10eが個々に巻き掛けられる要素であって、第1の回転軸線O1の軸方向に間隔を存して並んでいる。
第2のそらせシーブ21a,21bは、第1のガイドレール5aの上部と第2のガイドレール6aの上部との間に架け渡された梁23の上に固定されている。第2のそらせシーブ21a,21bは、第1のそらせシーブ20の下方で昇降路2の奥行き方向に並んでいるとともに、昇降路2の幅方向に延びた水平な回転軸線O2を中心に回転する。
そのため、本実施形態では、第1のそらせシーブ20の第1の回転軸線O1と第2のそらせシーブ21a,21bの第2の回転軸線O2とは、昇降路2内で互いに直交し合うような位置関係に保たれているとともに、一方の第2のそらせシーブ21aが第1のそらせシーブ20の直下に位置されている。
複数の第2のロープ溝24a,24b,24c,24d,24eが第2のそらせシーブ21a,21bの外周面に形成されている。第2のロープ溝24a,24b,24c,24d,24eは、メインロープ10a,10b,10c,10d,10eが個々に巻き掛けられる要素であって、第2の回転軸線O2の軸方向に間隔を存して並んでいる。
したがって、図3に示すように、第2のそらせシーブ21aの第2のロープ溝24a,24b,24c,24d,24eは、第1のそらせシーブ20の直下で第1のそらせシーブ20の第1のロープ溝22a,22b,22c,22d,22eと直交する方向に沿って一列に並んでいる。
図1に示すように、メインロープ10a,10b,10c,10d,10eの中間部15は、乗りかご3のかご上シーブ17a,17bからトラクションシーブ8を経て第2のそらせシーブ21a,21bに導かれている。第2のそらせシーブ21a,21bを通過したメインロープ10a,10b,10c,10d,10eの中間部15は、昇降路2に沿って上方に引き回された後、第1のそらせシーブ20に巻き掛けられている。第1のそらせシーブ20を通過したメインロープ10a,10b,10c,10d,10eの中間部15は、昇降路2に沿って下方に引き回された後、釣合錘4の錘シーブ18a,18bに導かれている。
このため、メインロープ10a,10b,10c,10d,10eの中間部15のうち、トラクションシーブ8から第2のそらせシーブ21a,21bを経て第1のそらせシーブ20に至る箇所は、昇降路2内で乗りかご3および釣合錘4が移動する領域を避けるように引き回されている。
メインロープ10a,10b,10c,10d,10eは、互いに共通の構成を有するため、一つのメインロープ10aを代表して説明する。図4および図5に示すように、本実施形態のメインロープ10aは、心綱25と、複数のストランド26とで構成されている。
心綱25は、複数の心綱素線25aを螺旋状に撚り合わすことで構成されている。心綱素線25aは、例えばサイザル麻のような天然繊維、あるいはポリプロピレンのような化学合成繊維で形成されている。
各ストランド26は、複数の鋼鉄製素線26aを撚り合わすことで構成されている。複数のストランド26は、心綱25の周囲に所定にピッチで螺旋状に撚り合わされている。ストランド26の撚り方向は、第1のそらせシーブ20から第2のそらせシーブ21aに向かって右ねじが進む方向と同一である。
さらに、本実施形態では、鋼鉄製素線26aとして強度レベルが2000N/mmを上回る高強度素線を用いている。
図2に示すように、第1のそらせシーブ20の第1の回転軸線O1と第2のそらせシーブ21a,21bの第2の回転軸線O2とは、昇降路2内で互いに直交し合う位置関係に保たれている。このため、メインロープ10a,10b,10c,10d,10eの中間部15は、第1のそらせシーブ20と第2のそらせシーブ21a,21bとの間を通過する過程において、メインロープ10a,10b,10c,10d,10eの配列方向が90°捩じられている。
図2および図3は、第1のそらせシーブ20と第2のそらせシーブ21aとの間に跨るメインロープ10a,10b,10c,10d,10eの引き回し経路を示している。本実施形態によると、五本のメインロープ10a,10b,10c,10d,10eのうち、配列方向に沿う中央に位置された三本目のメインロープ10cは、第1のそらせシーブ20の第1のロープ溝22cから第2のそらせシーブ21aの第2のロープ溝24cに向かうように昇降路2に沿って鉛直方向に真っ直ぐに延びている。さらに、三本目のメインロープ10cは、第1のロープ溝22cおよび第2のロープ溝24cに対し所定の張力で巻き掛けられている。
これに対し、三本目のメインロープ10cを除くその他のメインロープ10a,10b,10d,10eでは、第1のそらせシーブ20の第1のロープ溝22a,22b,22d,22eと第2のそらせシーブ21aの第2のロープ溝24a,24b,24d,24eとの間の相対的な位置関係から図2に示すような所定のフリートアングルαで第2のそらせシーブ21aに進入する。
したがって、本実施形態では、メインロープ10a,10b,10d,10eは、図3に矢印Aで示すように、昇降路2に沿って鉛直方向に延びた三本目のメインロープ10cを中心として、各メインロープ10a,10b,10d,10eのストランド26の撚り方向Bとは逆回りとなるような向きで第1のそらせシーブ20と第2のそらせシーブ21aとの間に架け渡されている。
具体的に述べると、メインロープ10a,10b,10c,10d,10eの配列方向に沿う一端に位置された一本目のメインロープ10aは、第1のそらせシーブ20の一つ目の第1のロープ溝22aから第2のそらせシーブ21aの五つ目の第2のロープ溝24eに向けて延びているとともに、第1のロープ溝22aおよび第2のロープ溝24eに対し所定の張力で巻き掛けられている。
二本目のメインロープ10bは、第1のそらせシーブ20の二つ目の第1のロープ溝22bから第2のそらせシーブ21aの四つ目の第2のロープ溝24dに向けて延びているとともに、第1のロープ溝22bおよび第2のロープ溝24dに対し所定の張力で巻き掛けられている。
四本目のメインロープ10dは、第1のそらせシーブ20の四つ目の第1のロープ溝22dから第2のそらせシーブ21aの二つ目の第2のロープ溝24bに向けて延びているとともに、第1のロープ溝22dおよび第2のロープ溝24bに対し所定の張力で巻き掛けられている。
五本目のメインロープ10eは、第1のそらせシーブ20の五つ目の第1のロープ溝22eから第2のそらせシーブ21aの一つ目の第2のロープ溝24aに向けて延びているとともに、第1のロープ溝22eおよび第2のロープ溝24aに対し所定の張力で巻き掛けられている。
したがって、一本目および二本目のメインロープ10a,10bは、第1のそらせシーブ20から第2のそらせシーブ21aに向かうに従い第1のそらせシーブ20の下方に入り込むように延びている。これに対し、四本目および五本目のメインロープ10d,10eは、第1のそらせシーブ20から第2のそらせシーブ21aに向かうに従い第1のそらせシーブ20の外周面から遠ざかるように延びている。
第1の実施形態によると、メインロープ10a,10b,10c,10d,10eが第1のそらせシーブ20と第2のそらせシーブ21aとの間に架け渡された状態では、三本目のメインロープ10cを除くその他のメインロープ10a,10b,10d,10eについては、フリートアングルαが生じている。そのため、メインロープ10a,10b,10d,10eは、それ自体に加わる張力の影響を受けて、第1のロープ溝22a,22b,22d,22eおよび第2のロープ溝23a,23b,23d,23eに巻き掛かる箇所で図3に矢印Cで示す方向の力を受ける。
矢印C方向の力がメインロープ10a,10b,10d,10eの自転トルクを拘束する方向に作用する場合、メインロープ10d,10eが第1のそらせシーブ20の第1のロープ溝22d,22eに巻き掛けられた箇所および第2のそらせシーブ21aの第2のロープ溝24a,24bに巻き掛けられた箇所では、矢印Cの方向に沿う自転拘束力は、メインロープ10d,10eに対しストランド26の撚りを進める方向に作用する。
一方、メインロープ10a,10bが第1のそらせシーブ20の第1のロープ溝22a,22bに巻き掛けられた箇所および第2のそらせシーブ21aの第2のロープ溝24d,24eに巻き掛けられた箇所では、矢印Cの方向に沿う自転拘束力は、メインロープ10a,10bに対しストランド26の撚りを戻す方向に作用する。
この結果、フリートアングルαが生じたメインロープ10a,10b,10d,10eに関しては、第1のそらせシーブ20と第2のそらせシーブ21aとの間に跨る一方の側でストランド26の撚りを進める方向に絞られるものの、他方の側ではストランド26の撚りを戻す方向に自転拘束力が働くことになる。
したがって、ストランド26と心綱25との接触部分に加わる圧力が緩和され、心綱25に対するストランド26の攻撃性を抑制することができる。よって、第1のそらせシーブ20の下方に位置された第2のそらせシーブ21aに対するメインロープ10a,10b,10d,10eの巻き掛け方向を変更するだけで、心綱25とストランド26との接触部分の損傷を抑制することができ、メインロープ10a,10b,10d,10eの長寿命化および強度的な面での信頼性を高めることができる。
特に本実施形態では、ストランド26を構成する鋼鉄製素線26aとして強度レベルが2000N/mmを上回る高強度素線を用いているので、メインロープ10a,10b,10c,10d,10eの張力が従来の一般強度ロープよりも格段に増加している。
しかるに、前記のようにフリートアングルαが生じたメインロープ10a,10b,10d,10eに関しては、三本目のメインロープ10cを中心にストランド26の撚り方向とは逆回りとなるような向きで第1のそらせシーブ20と第2のそらせシーブ21aとの間に架け渡されている。このため、メインロープ10a,10b,10c,10d,10eの張力が従来の一般強度ロープよりも格段に増加しているにも拘らず、ストランド26と心綱25との接触部分が受ける損傷の程度を従来の一般強度ロープと同レベルに抑制することができる。
一方、図6は、第1の実施形態の優位性を説明するための比較例を示している。図6に示す比較例では、昇降路2に沿って鉛直方向に延びた三本目のメインロープ10cを除くその他のメインロープ10a,10b,10d,10eは、図6に矢印Dで示すように、三本目のメインロープ10cを中心として、各メインロープ10a,10b,10d,10eのストランド26の撚り方向Eと一致するような向きで第1のそらせシーブ20と第2のそらせシーブ21aとの間に架け渡されている。
具体的に述べると、メインロープ10a,10b,10c,10d,10eの配列方向に沿う一端に位置された一本目のメインロープ10aは、第1のそらせシーブ20の一つ目の第1のロープ溝22aから第2のそらせシーブ21aの一つ目の第2のロープ溝24aに向けて延びているとともに、第1のロープ溝22aおよび第2のロープ溝24aに対し所定の張力で巻き掛けられている。
二本目のメインロープ10bは、第1のそらせシーブ20の二つ目の第1のロープ溝22bから第2のそらせシーブ21aの二つ目の第2のロープ溝24bに向けて延びているとともに、第1のロープ溝22bおよび第2のロープ溝24bに対し所定の張力で巻き掛けられている。
四本目のメインロープ10dは、第1のそらせシーブ20の四つ目の第1のロープ溝22dから第2のそらせシーブ21aの四つ目の第2のロープ溝24dに向けて延びているとともに、第1のロープ溝22dおよび第2のロープ溝24dに対し所定の張力で巻き掛けられている。
五本目のメインロープ10eは、第1のそらせシーブ20の五つ目の第1のロープ溝22eから第2のそらせシーブ21aの五つ目の第2のロープ溝24eに向けて延びているとともに、第1のロープ溝22eおよび第2のロープ溝24eに対し所定の張力で巻き掛けられている。
したがって、一本目および二本目のメインロープ10a,10bは、第1のそらせシーブ20から第2のそらせシーブ21aに向かうに従い第1のそらせシーブ20の外周面から遠ざかるように延びている。これに対し、四本目および五本目のメインロープ10d,10eは、第1のそらせシーブ20から第2のそらせシーブ21aに向かうに従い第1のそらせシーブ20の下方に入り込むように延びている。
このような比較例においても、メインロープ10a,10b,10c,10d,10eが第1のそらせシーブ20と第2のそらせシーブ21aとの間に架け渡された状態では、三本目のメインロープ10cを除くその他のメインロープ10a,10b,10d,10eについては、それ自体に加わる張力の影響を受けて、第1のロープ溝22a,22b,22d,22eおよび第2のロープ溝24a,24b,24d,24eに巻き掛かる箇所で第1の実施形態と同様に矢印Cで示す方向の力を受ける。
矢印C方向の力がメインロープ10a,10b,10d,10eの自転トルクを拘束する方向に作用する場合、メインロープ10d,10eが第1のそらせシーブ20の第1のロープ溝22d,22eに巻き掛けられた箇所および第2のそらせシーブ21aの第2のロープ溝24d,24eに巻き掛けられた箇所では、矢印Cの方向に沿う自転拘束力は、メインロープ10a,10b,10d,10eに対しストランド26の撚りを進める方向に作用する。
このため、メインロープ10d,10eでは、第1のそらせシーブ20に巻き掛けられた箇所および第2のそらせシーブ21aに巻き掛けられた箇所で夫々ストランド26の撚りを進める方向に絞られる。したがって、メインロープ10d,10eに関しては、ストランド26が心綱25に接触する力が過大となる。これにより、ストランド26と心綱25との接触部分が損傷し、メインロープ10d,10eの寿命が短くなるとともに、メインロープ10d,10eの強度低下を招く要因となる。
メインロープ10a,10bに関しては、第1のそらせシーブ20の第1のロープ溝22a,22bと第2のそらせシーブ21aの第2のロープ溝24a,24bとの間に跨る一方の箇所でストランド26の撚りを進める方向に絞られるものの、他方の箇所ではストランド26の撚りを戻す方向に自転拘束力が働くことになる。したがって、ストランド26が心綱25に接触する力が緩和され、心綱25に対するストランド26の攻撃性が低くなる。
以上のように、比較例では、ストランド26が心綱25を絞る力がメインロープ10d,10eの位置で過大となる。これに対し、第1の実施形態では、メインロープ10a,10b,10d,10eが第1のそらせシーブ20に巻き掛かる箇所および第2のそらせシーブ21aに巻き掛かる箇所の双方でストランド26の撚りを進める方向に強く絞られることが皆無となる。よって、全てのメインロープ10a,10b,10c,10d,10eにおいて、心綱25に対するストランド26の攻撃性を低く抑えることが可能となる。
[第2の実施形態]
図7は、第2の実施形態を開示している。第2の実施形態は、メインロープ10a,10b,10c,10d,10eの構成が第1の実施形態と相違している。メインロープ10a,10b,10c,10d,10eは、互いに共通の構成を有するので、一つのメインロープ10aを代表して説明する。
図7に示すように、第2の実施形態では、メインロープ10aの心綱31が複数の鋼鉄製素線31aを螺旋状に撚り合わすことで構成されている。鋼鉄製素線31aとしては、例えば強度レベルが2000N/mmを上回る高強度素線を用いている。
さらに、心綱31は、内部被覆層33で覆われている。内部被覆層33は、例えばポリエチレン樹脂により円筒状に形成されており、心綱31とストランド26との間に介在されている。そのため、内部被覆層33は、心綱31とストランド26とが直に接触し合うのを防いでいる。
第2の実施形態によると、全てのメインロープ10a,10b,10c,10d,10eにおいて、内部被覆層32に対するストランド26の攻撃性を低く抑えることが可能となる。そのため、メインロープ10a,10b,10c,10d,10eの寿命が長くなるとともに、メインロープ10a,10b,10c,10d,10eの強度的な面での信頼性を高めることができる。
[第3の実施形態]
図8は、第3の実施形態を開示している。第3の実施形態は、メインロープ10a,10b,10c,10d,10eの構成が第2の実施形態と相違している。メインロープ10a,10b,10c,10d,10eは、互いに共通の構成を有するので、一つのメインロープ10aを代表して説明する。
第3の実施形態では、複数本のストランド26が外部被覆層41によって全面的に被覆されている。外部被覆層41は、例えばポリウレタンのような耐摩耗性および高摩擦係数を有する熱可塑性の樹脂材により円筒状に形成されている。外部被覆層41は、メインロープ10aの外周面を規定する周面41aを有している。周面41aは、エレベータ1の各シーブ8、17a,17b、18a,18b、20、21a,21bに巻き掛けられた際に、各シーブ8、17a,17b、18a,18b、20、21a,21bに対し摩擦を伴いながら接触する。
第3の実施形態によると、外部被覆層41の存在により、各シーブ8、17a,17b、18a,18b、20、21a,21bに対するメインロープ10a,10b,10c,10d,10eの攻撃性を低く抑えることができる。このため、各シーブ8、17a,17b、18a,18b、20、21a,21bの摩耗を防止することができる。
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
例えば、ストランドの撚り方向は、第1のそらせシーブから第2のそらせシーブに向かって右ねじが進む方向であるZ撚りに特定されるものではなく、右ねじが進む方向とは逆方向であるS撚りであっても同様の効果が得られる。
2…昇降路、3,4…昇降体(乗りかご、釣合錘)、8…トラクションシーブ、10a,10b,10c,10d,10e…ワイヤロープ(メインロープ)、20…第1のそらせシーブ、21a…第2のそらせシーブ、22a,22b,22c,22d,22e…第1のロープ溝、24a,24b,24c,24d,24e…第2のロープ溝、25,31…心綱、26…ストランド、O1…第1の回転軸線、O2…第2の回転軸線。

Claims (6)

  1. 心綱の周囲に複数の鋼鉄製ストランドを螺旋状に撚り合わせた複数本のワイヤロープを有し、当該ワイヤロープを用いて昇降体を昇降路に吊り下げるとともに、前記ワイヤロープが巻き掛けられたトラクションシーブを介して前記昇降体をつるべ式に駆動するエレベータ装置であって、
    前記昇降路に固定的に設けられ、水平な第1の回転軸線を中心に回転するとともに、前記ワイヤロープが所定の張力で巻き掛けられた複数の第1のロープ溝が前記第1の回転軸線の軸方向に間隔を存して配列された第1のそらせシーブと、
    前記第1のそらせシーブの下方に位置するように前記昇降路に固定的に設けられ、前記第1の回転軸線と交差する方向に延びた水平な第2の回転軸線を中心に回転するとともに、前記ワイヤロープが所定の張力で巻き掛けられた複数の第2のロープ溝が前記第2の回転軸線の軸方向に間隔を存して配列された第2のそらせシーブと、を含み、
    前記第1のそらせシーブから前記第2のそらせシーブに向かう前記ワイヤロープのうち、前記昇降路に沿って真っ直ぐに延びた中央のワイヤロープを除く他のワイヤロープは、所定のフリートアングルで前記第2のそらせシーブに進入するとともに、前記中央のワイヤロープを中心として前記ストランドの撚り方向とは逆回りとなるような向きで前記第1のそらせシーブと前記第2のそらせシーブとの間に架け渡されたエレベータ装置。
  2. 前記ワイヤロープの前記心綱および前記ストランドは、夫々複数本の鋼鉄製素線を撚り合わすことで構成され、前記鋼鉄製素線の強度が2000N/mm2よりも大きい請求項1に記載のエレベータ装置。
  3. 前記ワイヤロープは、前記ストランドを被覆した樹脂製の外部被覆層をさらに備えた請求項1又は請求項2に記載のエレベータ装置。
  4. 前記ワイヤロープは、前記心綱と前記ストランドとの間に介在された内部被覆層をさらに備えた請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載のエレベータ装置。
  5. 前記ワイヤロープの前記心綱は、合成繊維又は樹脂材で形成され、前記ストランドを構成する複数本の鋼鉄製素線の強度が2000N/mm2よりも大きい請求項1に記載のエレベータ装置。
  6. 前記ワイヤロープが架け渡される前記第1のそらせシーブおよび前記第2のそらせシーブは、前記昇降路内で前記昇降体が移動する領域から外れた位置に固定された請求項1に記載のエレベータ装置。
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