JP6003941B2 - エレベータ用巻上ロープ - Google Patents

Description

この発明は、エレベータで使用される巻上ロープに関する。

エレベータのかごは、巻上ロープによって昇降路内に懸架される。特許文献１に、エレベータで使用される巻上ロープの従来技術が開示されている。

特開２０１３−１７０３２２号公報

巻上ロープは、巻上機の駆動綱車、返し車、吊り車等に巻き掛けられる。巻上ロープは繰り返し曲げられるため、内部の芯綱が摩耗したり、芯綱を構成する繊維が千切れたりすることがあった。

この発明は、上述のような課題を解決するためになされた。この発明の目的は、剛性が高く且つ耐摩耗性に優れた芯綱を有するエレベータ用巻上ロープを提供することである。

この発明に係るエレベータ用巻上ロープは、芯綱と、芯綱の周囲に配置された子縄と、を備える。芯綱は、油を含み、融点が１５０℃以上であり且つ油の溶融温度より高い樹脂からなる繊維が撚られた第１糸と、スプリット加工されたポリエチレン製のシート材が撚られた第２糸と、を備える。
また、この発明に係るエレベータ用巻上ロープは、芯綱と、芯綱の周囲に配置された子縄と、を備える。芯綱は、油を含み、融点が油の溶融温度より高い樹脂からなる繊維が撚られた第１糸と、スプリット加工されたポリエチレン製のシート材が撚られた第２糸と、を備える。第２糸は、第１糸の周囲に配置される。第１糸は、芯綱の表面に露出しない。

この発明に係るエレベータ用巻上ロープであれば、芯綱の剛性を高め、芯綱の耐摩耗性を向上させることができる。

エレベータの全体構成を示す図である。 巻上ロープの断面を示す図である。 芯綱の断面を示す図である。 スプリット加工されたシート材を示す図である。 芯子縄の製造方法を説明するための図である。

添付の図面を参照し、本発明を説明する。重複する説明は、適宜簡略化或いは省略する。各図において、同一の符号は同一の部分又は相当する部分を示す。

実施の形態１．
図１は、エレベータの全体構成を示す図である。
エレベータのかご１は、巻上ロープ２によって昇降路３内に吊り下げられる。つり合いおもり４は、巻上ロープ２によって昇降路３内に吊り下げられる。図１は、１：１ローピング方式のエレベータを一例として示している。即ち、巻上ロープ２の一端は、かご１に接続される。巻上ロープ２の他端は、つり合いおもり４に接続される。また、巻上ロープ２は、巻上機の駆動綱車５及びそらせ車６に巻き掛けられる。図１に示されていないが、巻上ロープ２は、必要に応じて返し車或いは吊り車に巻き掛けられる。巻上ロープ２は、かご１が昇降路３内を昇降することによって繰り返し曲げられる。

図２は、巻上ロープ２の断面を示す図である。
巻上ロープ２は、図２に示すように、駆動綱車５の綱溝５ａに巻き掛けられる。駆動綱車５が回転すると、巻上ロープ２は、駆動綱車５の回転方向に合わせた方向に移動する。これにより、かご１が昇降路３内を上昇或いは下降する。

巻上ロープ２は、芯綱７と複数の子縄８とを備える。
芯綱７は、巻上ロープ２の中心部に巻上ロープ２の長手に沿って配置される。芯綱７は、巻上ロープ２の表面に露出しない。

子縄８は、芯綱７の表面を覆うように芯綱７の周囲に配置される。例えば、子縄８は、多数の鋼製の素線が撚り合わされることによって形成される。子縄８が芯綱７の周囲に巻き付けられることにより、芯綱７は子縄８によってその表面が押し潰され、図２に示すように変形する。以下に、芯綱７の構成について具体的に説明する。

芯綱７は、複数の芯子縄９を備える。芯綱７は、複数の芯子縄９が撚り合わされることによって形成される。図２は、芯綱７が３本の芯子縄９を備える場合を一例として示している。図３は、芯綱７の断面を示す図である。図３は、周囲に子縄８が巻き付けられる前の芯綱７を示している。

芯子縄９は、糸１０（第１糸）及び糸１１（第２糸）を備える。
糸１０は、芯子縄９の中心部に芯子縄９の長手に沿って配置される。糸１０は、芯子縄９の表面に露出しない。即ち、糸１０は、芯綱７の表面に露出しない。糸１０は、油（潤滑油）を含む。糸１０は、融点が潤滑油の溶融温度より高い樹脂からなる繊維が撚られることによって形成される。巻上ロープ２に使用される潤滑油の溶融温度は１１０℃程度である。このため、糸１０を構成する樹脂は、融点が１５０℃以上であることが好ましい。ポリエステル（ＰＥＴ）は安価であり、糸１０を構成する樹脂として好適である。ポリフェニレンサルファイド（ＰＰＳ）或いはナイロン等も糸１０を構成する樹脂として利用することができる。

糸１１は、糸１０の表面を覆うように糸１０の周囲に配置される。糸１１は、スプリット加工されたポリエチレン製のシート材が撚られることによって形成される。糸１０の周囲に、多数の糸１１が巻き付けられる。

図４は、スプリット加工されたシート材を示す図である。スプリット加工とは、素材に多数の切り込み（スリット）を入れる加工のことである。図４は、シート材に多数のスリット１２を規則正しく形成した場合を一例として示している。図４（ｂ）は、スプリット加工されたシート材を幅方向に伸ばした状態を示している。図４に示す例では、シート材を幅方向に伸ばした際に六角形の開口が形成されるように多数のスリット１２をシート材の長手に沿って形成している。糸１１は、図４に示すような１本或いは複数本のシート材が撚り合わされることによって形成される。

なお、ポリエチレン樹脂の融点は１００℃〜１３０℃程度であり、潤滑油を溶融する温度に近い。このため、芯綱７は、溶融した潤滑油に糸１１を浸すことなく製造される。
図５は、芯子縄９の製造方法を説明するための図である。図５に示すように、芯子縄９は糸１０と糸１１とが撚り合わされることによって製造される。潤滑油浴槽１３には、溶融した潤滑油が溜められている。糸１０は、溶融した潤滑油に浸漬される。糸１０は、溶融した潤滑油に浸漬された後、糸１１と撚り合わされる。なお、糸１１は、溶融した潤滑油に浸漬されない。

ポリエチレン樹脂は、摩擦係数が小さく、耐摩耗性に優れる。低摩擦のポリエチレン樹脂で芯綱７の大部分を構成するため、小さな径の駆動綱車５に対しても巻上ロープ２を容易に巻き掛けることができる。また、スプリット加工されたシート材を撚って糸１１を形成しているため、より硬く締まった芯綱７を実現できる。これにより、巻上ロープ２の形状を長期間安定させることができ、巻上ロープ２の長寿命化を図ることができる。なお、芯子縄９内の含油率は、潤滑油浴槽１３を通過させる糸１０と潤滑油浴槽１３を通過させない糸１１との割合を変更することによって容易に調整できる。

このように、上記構成を有する巻上ロープ２であれば、芯綱７の剛性を高めることができ、芯綱７の耐摩耗性を向上させることができる。かご１の昇降によって巻上ロープ２が繰り返し曲げられても、芯綱７の摩耗の進行及び芯綱７を構成する繊維の切断を抑制することが可能となる。

１ かご
２ 巻上ロープ
３ 昇降路
４ つり合いおもり
５ 駆動綱車
５ａ 綱溝
６ そらせ車
７ 芯綱
８ 子縄
９ 芯子縄
１０ 糸（第１糸）
１１ 糸（第２糸）
１２ スリット
１３ 潤滑油浴槽

Claims (3)

1. 芯綱と、
   前記芯綱の周囲に配置された子縄と、
   を備え、
   前記芯綱は、
   油を含み、融点が１５０℃以上であり且つ前記油の溶融温度より高い樹脂からなる繊維が撚られた第１糸と、
   スプリット加工されたポリエチレン製のシート材が撚られた第２糸と、
   を備えたエレベータ用巻上ロープ。
2. 前記第１糸を構成する樹脂は、ポリエステル、ポリフェニレンサルファイド或いはナイロンである請求項１に記載のエレベータ用巻上ロープ。
3. 芯綱と、
   前記芯綱の周囲に配置された子縄と、
   を備え、
   前記芯綱は、
   油を含み、融点が前記油の溶融温度より高い樹脂からなる繊維が撚られた第１糸と、
   スプリット加工されたポリエチレン製のシート材が撚られた第２糸と、
   を備え、
   前記第２糸は、前記第１糸の周囲に配置され、
   前記第１糸は、前記芯綱の表面に露出しない
   エレベータ用巻上ロープ。

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