JP6155739B2 - 流路ユニット、液体噴射ヘッド、液体噴射装置、及び、流路ユニットの製造方法 - Google Patents
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Description
更に、本発明は、前記液体噴射ヘッドを搭載した、インクジェットプリンター等の液体噴射装置の態様を有する。
なお、染み出る液は、圧力室内の液体そのものに限られず、溶媒など液体の成分の一部を含む。
生成する固まりには、溶質と変性剤とが反応して生じた析出成分といった溶液の一部と変性剤とが結合した固まり、ゲルといった溶液全体を含む固まり、等が含まれる。
本発明は、液体の振動板通過を完全に防止することに限定されず、変性剤の無い場合と比べて液体の振動板通過が遅くなることも含まれる。
前記振動板のセラミック製の基材となる部分を少なくとも含む前駆体を加熱して前記基材を形成する形成工程と、
前記基材の内部に形成される隙間に、前記液体から固まりを生成する変性剤を含浸させる含浸工程と、
を含む、態様を有する。
なお、上記態様は、基材の内部にある隙間の全てが変性剤で充填されることに限定されず、隙間の一部のみ変性剤で充填されることも含まれる。
まず、流路ユニット及び液体噴射ヘッドの例を説明する。図1は、圧電素子3を設けた使用前後の流路ユニットU0を模式的に例示する断面図であり、使用前後のそれぞれについて振動板11の要部を拡大して下側に示している。分かり易く示すため、セラミック結晶粒子13を振動板11の厚みと比べて大きくし、隙間CL1を粒子13と比べて大きくしている。むろん、振動板の厚みに対するセラミック結晶粒子の大きさは特に限定されず、粒子に対する隙間の大きさも特に限定されず、粒子の形状も特に限定されない。図1の使用前後それぞれの上側では粒子13にハッチングを付し、下側では充填剤14,15にハッチングを付している。図2は、流路ユニットU0を含む液体噴射ヘッド1の構成の概略を例示している。図3(a)は、液体噴射ヘッド1を図2のA1−A1の位置での断面図を示している。図3(b)は、液体噴射ヘッド1を図2のA2−A2の位置での断面図を示している。
更に、染み出る液は、原液インクと染料又は顔料濃度が大きく異なる場合がある。これは、インク中の粒子がフィルタリングされるためである。故に、液漏れを生む隙間CL1は微小な隙間であり抑制が難しく、液漏れを一部抑制できてもばらつきにより液体噴射ヘッドの歩留まりの低下を招く。
なお、隙間CL1に充填剤14が充填されているか否かは、断面EDX(Energy Dispersive X-ray Spectroscopy)マッピング分析、XPS(X-ray Photoelectron Spectroscopy)、FT−IR(Fourier Transform Infrared)法、等により確認することができる。
なお、液体噴射ヘッド1は、封止プレート40やリザーバープレート50を必ずしも備える必要は無い。例えば、封止プレートが無い場合にはリザーバープレートを接合基板にすることができ、リザーバープレートも無い場合にはノズルプレートを接合基板にすることができる。また、液体噴射ヘッドはいわゆるコンプライアンスプレート等の他のプレートを備えていてもよく、例えば、コンプライアンスプレートがリザーバープレートとノズルプレートとの間に配置されてもよい。更に、これらのプレートが複数のプレートで構成されてもよいし、複数のプレートの機能を一枚のプレートが備えていてもよい。
振動板11は、スペーサー部20の一方の面(表面20a)を封止し、該スペーサー部20と接する裏面11bとは反対側の表面11aに圧電素子3、リード電極84、等が設けられている。振動板の裏面11bは、圧力室21の壁面の一部を構成する。すなわち、圧力室21の壁の一部である振動板11は、圧電素子3により駆動信号SG1に応じた変形をする。振動板11は、矩形板状でもよいし、矩形板状でなくてもよい。
各圧力室21は、長手方向を流路基板の短手方向D4に向けた長尺状に形成され、流路基板の長手方向D3へ複数並べられている。圧力室21同士の間は、隔壁22とされる。圧力室21内の液体には、壁の一部である振動板11の変形により圧力が加わる。圧力室21の幅や長さは、裏面20b側の長さが表面20a側の長さよりも短くされてもよい。流路基板の長手方向D3へ並んだ圧力室21の列は、流路基板の短手方向D4へ複数並べられてもよい。
リザーバープレート50には、厚み方向D1へ貫通したリザーバー51及びノズル連通孔52が形成されている。リザーバー51は、共通供給孔41と液体導入孔43とに連通した共通インク室である。各ノズル連通孔52は、封止プレートの各ノズル連通孔42に連通する位置に設けられている。
なお、上記プレート40,50,60を含む種々のプレートの材料には、例えば、ステンレスやニッケルといった金属、合成樹脂、セラミックス、等の一種以上を用いることができる。
次に、図1〜3とともに図4を参照して、液体噴射ヘッドの製造方法を例示する。図4は、流路基板の短手方向D4に沿った垂直断面図である。
以上が、振動板11のセラミック製の基材12となる部分を少なくとも含む前駆体100を形成する前駆体形成工程S1である。
なお、流路ユニット本体は、セラミック粉体とバインダーと溶媒を含むスラリーを用いるゲルキャスト法等により形成してもよい。
以上により、図3(a),(b)で示したような液体噴射ヘッド1が製造される。
次に、図5〜9を参照して、流路ユニットU0及びその製造方法の例を説明する。
図5(a)は、流路ユニットの製造工程を示している。まず、例えば、ジルコニア(ZrOx)に酸化イットリウム(YOx)をモル比で4〜8%添加した粉体をバインダー等に分散したペーストをシート状に成形してグリーンシートを形成し、必要に応じてグリーンシートを加工して、各前駆体111,120,130を形成して積層する(前駆体形成工程S11)。次いで、前駆体111,120,130を一体的に脱脂し(脱脂工程S12)、例えば1300〜1500℃程度で一体焼成する(焼成工程S13)。基材12とスペーサー部20と接続部30を接合した一体焼成物(101)の断面の様子を図5(b)の最上段に示している。この一体焼成物には、多数の結晶粒子13が形成され、粒子13間に隙間CL1が形成されている。
以上の工程S11〜S13は、基材12を形成する形成工程の例である。
減圧処理、加圧処理、及び、振動処理のうちの一つ以上を少なくとも行うことで変性剤を隙間に浸透させる浸透工程が含浸工程に含まれていると、変性剤の浸透効率が向上する。
なお、含浸工程は、焼成後であれば良く、他の部品組み込み後などでも処理が可能であれば後工程になるほど良い。
また、変性剤14aを基材12に含浸させると、含浸した液体の成分の変化(硬化等)により振動板の硬さ等が変化する。そこで、制御回路基板91から圧電素子3に駆動信号を供給して振動板11を振動させるとき、含浸した液体の成分の変化状況に応じて駆動信号を調整してもよい。この処理は、例えば、含浸回数、含浸時間、振動板の電気抵抗や残留振動や固有振動周期といった電気的状態、等に基づいて駆動信号の電圧や周波数等を調整することにより行うことができる。変化状況に応じて駆動信号を調整する例も、液漏れが抑制される好適な例となる。
以上の工程S14,S15は、変性剤14aを含浸させる含浸工程の例である。
更に、流路ユニットの他部品との接合面に変性剤が付着しても、パラキシリレン系のポリマーのような接着力の低下は生じ難い。従って、液体噴射ヘッドの歩留まり向上を図ることができる。
これらの場合、R1>R2となる。この例も、液漏れを抑制可能な好適な例となる。
上記の場合、R1<R2となる。この場合でも、振動板の表面11a側の変性剤14aによって液体Fから固まりが生成するので、液漏れを抑制可能な好適な例となる。
図10は、上述した液体噴射ヘッド1を記録ヘッドとして有するインクジェット式の記録装置である液体噴射装置200の外観を示している。液体噴射ヘッド1を記録ヘッドユニット211,212に組み込むと、液体噴射装置200を製造することができる。図10に示す液体噴射装置200は、記録ヘッドユニット211,212のそれぞれに、液体噴射ヘッド1が設けられ、外部インク供給手段であるインクカートリッジ221,222が着脱可能に設けられている。記録ヘッドユニット211,212を搭載したキャリッジ203は、装置本体204に取り付けられたキャリッジ軸205に沿って往復移動可能に設けられている。駆動モーター206の駆動力が図示しない複数の歯車及びタイミングベルト207を介してキャリッジ203に伝達されると、キャリッジ203がキャリッジ軸205に沿って移動する。図示しない給紙ローラー等により給紙される記録シート290は、プラテン208上に搬送され、インクカートリッジ221,222から供給され液体噴射ヘッド1から噴射されるインク滴により印刷がなされる。
本発明は、種々の変形例が考えられる。
例えば、記録装置は、印刷中に液体噴射ヘッドが移動しないように固定されて、記録シートを移動させるだけで印刷を行ういわゆるラインヘッド型のプリンターでもよい。
流体噴射ヘッドから吐出される液体は、液体噴射ヘッドから吐出可能な材料であればよく、染料等が溶媒に溶解した溶液、顔料や金属粒子といった固形粒子が分散媒に分散したゾル、等の流体が含まれる。このような流体には、インク、液晶、等が含まれる。液体噴射ヘッドは、プリンターといった画像記録装置の他、液晶ディスプレー等のカラーフィルタの製造装置、有機ELディスプレーやFED(電解放出ディスプレー)等の電極の製造装置、バイオチップ製造装置、等に搭載可能である。
圧力室に圧力を与えるための圧電素子は、図3(a),(b)で示したような薄膜型に限定されず、圧電材料と電極材料とを交互に積層させた積層型、縦振動させて各圧力室に圧力変化を与える縦振動型、等でもよい。また、圧電アクチュエーターは、発熱素子の発熱で生じる気泡によってノズルから液滴を噴射させるアクチュエーター、振動板と電極との間に発生させた静電気によって振動板を変形させてノズルから液滴を噴射させるいわゆる静電式アクチュエーター、等でもよい。更には、そのほかの様々な流路ユニットに適用することができる。
隙間CL1には、変性剤の作用により生成する充填剤と他の充填剤とを組み合わせて充填してもよい。他の充填剤には、光硬化樹脂、液体F等の溶液の水分が吸水剤に吸収されたときに残留する物質、熱硬化樹脂、等の一種以上を用いることができる。前記吸水剤には、グリセリンやジエチレングリコールといった多価アルコール、多糖類といった糖類、ポリアクリル酸のアルカリ金属塩といった吸水性樹脂、塩化カルシウムやシリカゲルといった無機吸水剤、等を一種以上含むものを用いることができる。溶液には、充填剤を生成するための専用の液体も含まれる。
充填剤の形成工程は、前駆体焼成直後や液体噴射ヘッド形成後の他、液体噴射ヘッド形成前における流路ユニット本体とプレートとの接合直後等に行ってもよい。
以上説明したように、本発明によると、種々の態様により、流路ユニット使用中に振動板からの液の染み出しを抑制することが可能な技術等を提供することができる。むろん、従属請求項に係る構成要件を有しておらず独立請求項に係る構成要件のみからなる技術等でも、上述した基本的な作用、効果が得られる。
また、上述した実施形態及び変形例の中で開示した各構成を相互に置換したり組み合わせを変更したりした構成、公知技術並びに上述した実施形態及び変形例の中で開示した各構成を相互に置換したり組み合わせを変更したりした構成、等も実施可能である。本発明は、これらの構成等も含まれる。
Claims (9)
- 変形可能な振動板と、
壁の一部である前記振動板の変形により液体に圧力が加わる圧力室と、
を備えた流路ユニットであって、
前記振動板は、前記液体から固まりを生成する変性剤を含む、流路ユニット。 - 前記変性剤は、前記液体に含まれる溶質と分散質の少なくとも一方を前記固まりに変える物質を含む、請求項1に記載の流路ユニット。
- 前記変性剤は、前記液体に含まれる物質と反応して析出する物質を含む、請求項1又は請求項2に記載の流路ユニット。
- 前記変性剤は、前記液体に含まれる溶媒又は分散媒を前記固まりに変える物質を含む、請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の流路ユニット。
- 前記振動板は、セラミック製の基材の内部にある隙間に前記変性剤を含む、請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載の流路ユニット。
- 請求項1〜請求項5のいずれか一項に記載の流路ユニットと、
前記圧力室に連通するノズルと、
を備える、液体噴射ヘッド。 - 請求項6に記載の液体噴射ヘッドを搭載した、液体噴射装置。
- 変形可能な振動板と、壁の一部である前記振動板の変形により液体に圧力が加わる圧力室と、を備えた流路ユニットの製造方法であって、
前記振動板のセラミック製の基材となる部分を少なくとも含む前駆体を加熱して前記基材を形成する形成工程と、
前記基材の内部に形成される隙間に、前記液体から固まりを生成する変性剤を含浸させる含浸工程と、
を含む、流路ユニットの製造方法。 - 前記含浸工程は、前記基材の環境を減圧すること、前記基材の環境を加圧すること、及び、前記振動板を振動させること、のうちの一つ以上を少なくとも行うことで前記変性剤を前記隙間に浸透させる浸透工程を含む、
請求項8に記載の流路ユニットの製造方法。
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