JP6136424B2 - 流路ユニット、液体噴射ヘッド、液体噴射装置、及び、流路ユニットの製造方法 - Google Patents

流路ユニット、液体噴射ヘッド、液体噴射装置、及び、流路ユニットの製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、流路ユニット、液体噴射ヘッド、液体噴射装置、及び、流路ユニットの製造方法に関する。
インクジェットヘッド等の液体噴射ヘッドを構成する流路ユニットとして、例えば、液体流路用の空所を形成したグリーンシートと振動板用のグリーンシートとを一体焼成したものが知られている(特許文献1参照。)。液体流路には、例えば、壁の一部である振動板の変形によりインク等の液体に圧力が加わる圧力室、この圧力室への液体の供給路、及び、圧力室からノズルに連通する連通路が含まれる。液体噴射ヘッドは、前述の流路基板とノズルプレート等の接合基板とを接合することにより形成される。
特許第3144948号公報
近年のノズルは、印刷物等の出力物の高画質化及び高速化に向けて高密度化が進んでいる。また、この高密度化と相反する低コスト化も要求されている。ノズルを高密度化するには、ノズルのピッチを狭くする必要がある。ノズルピッチを狭くするには、圧力室の幅を狭くする必要がある。圧力室の幅が狭くなると、インク滴を吐出するための振動板の変位量が低下する。この変位量の低下を抑えるためには、振動板を薄くする必要がある。しかし、セラミック製の振動板を薄くすると、液体噴射ヘッドの使用中に薄い振動板から液の染み出しが発生することが判った。
上述した液漏れの問題は、液体噴射ヘッドに限らず、種々の流路ユニットにも同様に存在する。
以上を鑑み、本発明の目的の一つは、流路ユニットの使用中に振動板からの液の染み出しを抑制することが可能な技術を提供することにある。
本発明の態様の一つとして、本発明は、変形可能な振動板と、壁の一部である前記振動板の変形により液体に圧力が加わる圧力室と、を備えた流路ユニットであって、前記振動板は、該振動板の内部にある隙間に吸水剤を含む、態様を有する。
また、本発明は、前記流路ユニットと、前記圧力室に連通するノズルと、を備える、インクジェットヘッド等の液体噴射ヘッドの態様を有する。
更に、本発明は、前記液体噴射ヘッドを搭載した、インクジェットプリンター等の液体噴射装置の態様を有する。
上述した態様において、振動板に含まれる吸水剤は、該吸水剤に対して水分が飽和状態でないときには圧力室内の液体から水分を引き寄せるが、水分が飽和状態になると圧力室内の液体から水分を引き寄せない。その結果、流路ユニット使用中に圧力室内の液体に由来する液の振動板を通る染み出しが抑制される。従って、本態様は、流路ユニット使用中に振動板からの液の染み出しを抑制することが可能な技術を提供することができる。
なお、染み出る液は、圧力室内の液体そのものに限られず、溶媒など液体の成分の一部を含む。
本発明は、液体の振動板通過を完全に防止することに限定されず、吸水剤の無い場合と比べて液体の振動板通過が遅くなることも含まれる。
ところで、本発明は、変形可能な振動板と、壁の一部である前記振動板の変形により液体に圧力が加わる圧力室と、を備えた流路ユニットであって、前記振動板は、セラミック製の基材の内部にある隙間に吸水剤を含む、態様も有する
更に、本発明は、変形可能な振動板と、壁の一部である前記振動板の変形により液体に圧力が加わる圧力室と、を備えた流路ユニットであって、前記振動板は、吸水剤を含み、前記吸水剤は、多価アルコールと糖類の少なくとも一方を含む、態様も有する。
また、本発明は、変形可能な振動板と、壁の一部である前記振動板の変形により液体に圧力が加わる圧力室と、を備えた流路ユニットの製造方法であって、
前記振動板のセラミック製の基材となる部分を少なくとも含む前駆体を加熱して前記基材を形成する形成工程と、
前記基材の内部に形成される隙間に吸水剤を含浸させる含浸工程と、
を含む、態様を有する。
更に、本発明は、液体噴射ヘッドの製造方法、液体噴射装置の製造方法、等の態様を有する。
上述した態様において、セラミック製の基材の内部にある隙間に含まれる吸水剤は、該吸水剤に対して水分が飽和状態になると圧力室内の液体から水分を引き寄せない。その結果、流路ユニット使用中に圧力室内の液体に由来する液の隙間を通る染み出しが抑制される。従って、本態様は、セラミック製の基材を有する振動板からの液の染み出しを抑制することが可能な技術を提供することができる。
なお、上記態様は、基材の内部にある隙間の全てが吸水剤で充填されることに限定されず、隙間の一部のみ吸水剤で充填されることも含まれる。
また、吸水剤が多価アルコールと糖類の少なくとも一方を含む態様は、振動板からの液の染み出しを抑制することが可能な好適な例を提供することができる。
なお、上述した流路ユニットの製造方法の含浸工程は、前記基材の環境を減圧すること、前記基材の環境を加圧すること、及び、前記振動板を振動させること、のうちの一つ以上を少なくとも行うことで前記吸水剤を前記隙間に浸透させる浸透工程を含んでもよい。本態様は、吸水剤の浸透効率を向上させることができる。
使用前後の流路ユニットU0を模式的に例示する断面図。 液体噴射ヘッド1の構成を模式的に例示する分解斜視図。 (a)は図2のA1−A1の位置における液体噴射ヘッド1の断面図、(b)は図2のA2−A2の位置における液体噴射ヘッド1のす断面図。 (a)〜(c)は液体噴射ヘッド1の製造工程を模式的に例示するための断面図。 (a)は流路ユニット製造工程を例示する図、(b)は流路ユニットU0の製造途中及び使用中の様子を模式的に例示する断面図。 含浸装置300を模式的に例示する図。 含浸処理を例示する図。 振動板振動処理時の様子を模式的に例示する断面図。 (a)はインク組成を例示する図、(b),(c)は振動板11における吸水剤14aの濃度分布を例示する図。 液体噴射装置200の構成の概略を例示する図。
以下、本発明の実施形態を説明する。むろん、以下の実施形態は本発明を例示するものに過ぎず、実施形態に示す特徴の全てが発明の解決手段に必須になるとは限らない。
(1)流路ユニット及び液体噴射ヘッドの概要の例示:
まず、流路ユニット及び液体噴射ヘッドの例を説明する。図1は、圧電素子3を設けた使用前後の流路ユニットU0を模式的に例示する断面図であり、使用前後のそれぞれについて振動板11の要部を拡大して下側に示している。分かり易く示すため、セラミック結晶粒子13を振動板11の厚みと比べて大きくし、隙間CL1を粒子13と比べて大きくしている。むろん、振動板の厚みに対するセラミック結晶粒子の大きさは特に限定されず、粒子に対する隙間の大きさも特に限定されず、粒子の形状も特に限定されない。図1の使用前後それぞれの上側では粒子13にハッチングを付し、下側では充填剤14,15にハッチングを付している。図2は、流路ユニットU0を含む液体噴射ヘッド1の構成の概略を例示している。図3(a)は、液体噴射ヘッド1を図2のA1−A1の位置での断面図を示している。図3(b)は、液体噴射ヘッド1を図2のA2−A2の位置での断面図を示している。
上述した図中、符号D1は振動板11及び流路ユニットU0の厚み方向を示している。符号D3は、流路ユニットU0の長手方向を示し、例えば、長尺状の圧力室21の併設方向であり、圧力室21の幅方向とされる。符号D4は、流路ユニットU0の短手方向を示し、例えば、圧力室21の長手方向とされる。各方向D1,D3,D4は、互いに直交するものとするが、互いに交わっていれば直交していなくてもよい。分かり易く示すため、各方向D1,D3,D4の拡大率は異なることがあり、圧電素子3の面積率も異なることがあり、各図は整合していないことがある。
なお、本明細書で説明する位置関係は、発明を説明するための例示に過ぎず、発明を限定するものではない。従って、圧力室の上以外の位置、例えば、下、左、右、等に振動板が配置されることも、本発明に含まれる。また、方向や位置等の同一、直交、等は、厳密な同一、直交、等のみを意味するのではなく、製造時等に生じる誤差も含む意味である。更に、接すること、及び、接合することは、間に接着剤等の介在するものが有ることと、間に介在するものが無いこととの両方を含む。
図1等に示す流路ユニットU0は、変形可能な振動板11と、壁の一部である振動板11の変形により液体Fに圧力が加わる圧力室21と、を備える。振動板11は、吸水剤14aを含む。例えば、振動板11は、セラミック製の基材12の内部12cにある隙間CL1に吸水剤14aを含む。この吸水剤14aの作用により生成する充填剤15は、基材12の内部12cにある隙間CL1を充填し、液体Fの通過を抑制する。
ここで、隙間CL1に充填剤が無い場合に圧力室21内に液体Fを満たしたときに振動板11の圧力室21とは反対側の第二の面(表面11a)から染み出る液の流量(単位時間当たりの液の重量)をQc(Qc>0)、隙間CL1に充填剤を充填した場合に圧力室21内に液体Fを満たしたときに振動板11の第二の面(表面11a)から染み出る液の流量をQs(Qs≧0)とする。液体Fの通過を抑制するとは、Qs<Qcであることを意味する。むろん、Qs=0が理想である。また、基材の内部12cにある隙間CL1の全てが充填剤で充填されることが理想であるが、隙間CL1の一部のみ充填剤で充填されてもよい。振動板11の圧力室21側の第一の面(裏面11b)と反対の第二の面(表面11a)との厚み方向D1における中間位置11mの隙間CL1に充填剤が充填されていると、充填剤が長期間残り易いので好ましい。従って、厚み方向の少なくとも中間位置に吸水剤が含まれた振動板を有する流路ユニットは、高耐久性を有する。
図1に示す基材12は、グリーンシート、スラリー、といったセラミック前駆体から焼成されて形成され、多数のセラミック結晶粒子13が含まれている。粒子13同士の間には、僅かな隙間CL1が形成されている。基材12は、振動板11から隙間CL1を除いた部分を指すものとする。すなわち、基材の内部12cには、厚み方向D1へ繋がるような隙間CL1が形成されている。この隙間CL1に充填剤が充填されていない場合、圧力室内のインク等の少なくとも一部の成分が裏面11b(第一の面)から隙間CL1を通って表面(第二の面)11aに染み出してしまう。特に、圧電素子の駆動により基材が振動すると、液が染み出し易くなる。
図3(b)等を参照して、高画質化及び高速化に向けたノズルの高密度化と低コスト化との両立と液漏れについて説明する。ノズル62を高密度化するには、ノズル62のピッチPを狭くする必要がある。ノズルピッチPを狭くするには、圧力室21の幅Wを狭くする必要がある。圧力室の幅Wが狭くなると、液滴を吐出するための振動板の変位量が低下する。この変位量の低下を抑えるためには、振動板厚Tを例えば1〜3μm程度と薄くしなければならない。しかし、セラミック製の振動板を薄くすると、振動板から液の染み出しが発生する。隙間CL1は非常に狭いため、多くの場合、圧力室内の溶液のうち溶媒といった一部の成分が染み出す。グリーンシート、スラリー、といったセラミック製の振動板の前駆体は、粉体の形状を留めるためにバインダーが多く含まれている。また、粉体の焼成であるために焼成後の結晶粒界部に隙間CL1が発生し易い。このような隙間CL1による「液漏れ」は振動板が厚い場合には、途中で液が止まり、顕在化していなかったので、液漏れは振動板の厚みについて薄く極限を追求するようになって顕在化した問題と言える。
また、振動板を薄くしても液漏れが生じないようにするためSiウエハーを使うと、高価な半導体製造装置を用いる必要があり、液体噴射ヘッドのコストアップとなる。また、圧力室に面した振動板の表面をパラキシリレン系のポリマーでコーティングする方法は、使用中にコーティングが剥がれるという耐久性の問題と、パラキシリレン系のポリマーの付着により接合基板との接着強度が低下するという問題とがある。
更に、染み出る液は、原液インクと染料又は顔料濃度が大きく異なる場合がある。これは、インク中の粒子がフィルタリングされるためである。故に、液漏れを生む隙間CL1は微小な隙間であり抑制が難しく、液漏れを一部抑制できてもばらつきにより液体噴射ヘッドの歩留まりの低下を招く。
そこで、本流路ユニットU0は、使用前に吸水剤14aを振動板11に含ませておき、この吸水剤14aの作用により液漏れを抑制している。吸水剤14aは、該吸水剤14aに対して水分が飽和状態でないときには圧力室21内の液体から水分を引き寄せるが、水分が飽和状態になると圧力室21内の液体から水分を引き寄せない。基材12の内部12cにある隙間CL1に吸水剤14aが含まれる場合、吸水剤14aの作用により生成する充填剤15が隙間CL1を充填して液体Fの通過を抑制する。その結果、流路ユニット使用中に圧力室21内の液体Fに由来する液の振動板11を通る染み出しが抑制されると考えられる。従って、本技術は、流路ユニット使用中に圧力室21内の液体Fに由来する液の振動板11からの染み出しを抑制することが可能である。
なお、隙間CL1に充填剤14が充填されているか否かは、断面EDX(Energy Dispersive X-ray Spectroscopy)マッピング分析、XPS(X-ray Photoelectron Spectroscopy)、FT−IR(Fourier Transform Infrared)法、等により確認することができる。
図2に例示する液体噴射ヘッド1は、符号10,20,30の各部を有する流路ユニットU0と、圧力室21に連通するノズル62と、を備え、インク(液体)を噴射(吐出)するインクジェット式記録ヘッドである。図10に例示する液体噴射装置200は、前述のような液体噴射ヘッドを搭載したインクジェットプリンター(記録装置)である。
なお、液体噴射ヘッド1は、封止プレート40やリザーバープレート50を必ずしも備える必要は無い。例えば、封止プレートが無い場合にはリザーバープレートを接合基板にすることができ、リザーバープレートも無い場合にはノズルプレートを接合基板にすることができる。また、液体噴射ヘッドはいわゆるコンプライアンスプレート等の他のプレートを備えていてもよく、例えば、コンプライアンスプレートがリザーバープレートとノズルプレートとの間に配置されてもよい。更に、これらのプレートが複数のプレートで構成されてもよいし、複数のプレートの機能を一枚のプレートが備えていてもよい。
振動板部10は、振動板11、圧電素子3、リード電極84、等を有する圧電アクチュエーターである。振動板部10は、駆動信号SG1に応じて変形して圧力室21内の液体に圧力を加える。
振動板11は、スペーサー部20の一方の面(表面20a)を封止し、該スペーサー部20と接する裏面11bとは反対側の表面11aに圧電素子3、リード電極84、等が設けられている。振動板の裏面11bは、圧力室21の壁面の一部を構成する。すなわち、圧力室21の壁の一部である振動板11は、圧電素子3により駆動信号SG1に応じた変形をする。振動板11は、矩形板状でもよいし、矩形板状でなくてもよい。
圧電素子3は、圧電体層82と、該圧電体層の圧力室21側に設けられた下電極(第一電極)81と、圧電体層82の他方側に設けられた上電極(第二電極)83とを有する圧力発生部である。図2に示す各圧電素子3は、各圧力室21に対応した位置にある。圧電素子3を駆動制御するための制御回路基板91は、例えば、上電極83に対してフレキシブル基板等といったケーブル類92を介して接続される。電極81,83の一方は、共通電極にされてもよい。上下電極の構成金属には、例えば、Pt(白金)、Au(金)、Ir(イリジウム)、Ti(チタン)、等の一種以上を用いることができる。圧電体層82には、例えば、PZT(チタン酸ジルコン酸鉛、Pb(Zrx,Ti1-x)O3)といった強誘電体、非鉛系ペロブスカイト型酸化物、といったペロブスカイト構造を有する材料等を用いることができる。リード電極84は、下電極81に接続されてもよいし、上電極83に接続されてもよい。リード電極の構成金属には、Au、Pt、Al(アルミニウム)、Cu(銅)、Ni(ニッケル)、Cr(クロム)、Ti、等の一種以上を用いることができる。
スペーサー部20には、厚み方向D1へ貫通した圧力室21が形成されている。このスペーサー部20が振動板11と接続部30とに挟まれることにより、圧力室21が流路ユニットU0の内部に設けられる。スペーサー部20は、矩形板状でもよいし、矩形板状でなくてもよい。
各圧力室21は、長手方向を流路基板の短手方向D4に向けた長尺状に形成され、流路基板の長手方向D3へ複数並べられている。圧力室21同士の間は、隔壁22とされる。圧力室21内の液体には、壁の一部である振動板11の変形により圧力が加わる。圧力室21の幅や長さは、裏面20b側の長さが表面20a側の長さよりも短くされてもよい。流路基板の長手方向D3へ並んだ圧力室21の列は、流路基板の短手方向D4へ複数並べられてもよい。
接続部30には、各圧力室21に連通する位置で厚み方向D1へ貫通した液体の供給孔31及びノズル連通孔32が形成されている。すなわち、接続部30は、孔31,32を除いてスペーサー部20における表面20aとは反対側の他方の面(裏面20b)を封止する。接続部30は、矩形板状でもよいし、矩形板状でなくてもよい。各供給孔31は各圧力室21の長手方向(D4)の一端に対応する位置に設けられ、各ノズル連通孔32は各圧力室21の長手方向(D4)の他端に対応する位置に設けられている。孔31,32及び圧力室21は、流路ユニットU0の液体流路F1となる。
なお、振動板11、スペーサー部20及び接続部30には、例えば、ジルコニア(ZrOx)、酸化イットリウム(YOx)、アルミナ(AlOx)、といったセラミックス等の一種以上の絶縁性材料を用いることができる。
接続部30の裏面30bに接合される封止プレート40には、厚み方向D1へ貫通した液体の共通供給孔41、ノズル連通孔42、及び、リザーバー51への液体導入孔43(図3(a)参照)が形成されている。共通供給孔41は、長手方向を封止プレート40の長手方向D3に向けた長尺状に形成され、接続部の複数の供給孔31に連通する位置に設けられている。各ノズル連通孔42は、接続部の各ノズル連通孔32に連通する位置に設けられている。液体導入孔43は、流路ユニットU0に接しない位置に設けられている。封止プレートの裏面40bは、リザーバー51の壁面の一部を構成する。
リザーバープレート50には、厚み方向D1へ貫通したリザーバー51及びノズル連通孔52が形成されている。リザーバー51は、共通供給孔41と液体導入孔43とに連通した共通インク室である。各ノズル連通孔52は、封止プレートの各ノズル連通孔42に連通する位置に設けられている。
ノズルプレート60には、各ノズル連通孔52に連通する位置で厚み方向D1へ貫通したノズル62が形成されている。ノズルプレート60の裏面は、ノズル62から液滴を噴射するノズル面60bとされる。図2に示すノズルプレート60は、各圧力室21に連通するノズル62が所定方向(D3)へ所定間隔で並べられたノズル列を有している。複数のノズルは、千鳥状に配置されてもよい。
なお、上記プレート40,50,60を含む種々のプレートの材料には、例えば、ステンレスやニッケルといった金属、合成樹脂、セラミックス、等の一種以上を用いることができる。
上述した液体噴射ヘッド1において、インク等の液体は、液体導入孔43から導入されてリザーバー51内を満たし、共通供給孔41及び個別の供給孔31を通って圧力室21内を満たす。制御回路基板91からの駆動電圧(駆動信号SG1)に応じて振動板11を圧力室21側へ膨らませるように圧電素子3が変形すると、それに応じて振動板11も変形し、振動板11の変形により圧力室21内の液体の圧力が高まり、ノズル連通孔32,42,52を介してノズル62から液滴が噴射される。
(2)液体噴射ヘッド製造方法の概要の例示:
次に、図1〜3とともに図4を参照して、液体噴射ヘッドの製造方法を例示する。図4は、流路基板の短手方向D4に沿った垂直断面図である。
まず、例えばジルコニア等といったセラミック粉体とバインダーと溶媒を含むペーストから所望の厚みのグリーンシートを成形する。この成形には、ドクターブレード装置やリバースロールコーター装置等といった一般的な装置を用いることができる。スペーサー部20用のグリーンシート、及び、接続部30用のグリーンシートには、切断や切削や打ち抜き等といった機械加工やレーザー加工を施す。これにより、圧力室21を有するシート状のスペーサー部前駆体120が得られ、孔31,32を有するシート状の接続部前駆体130が得られる。振動板11用のグリーンシートは、必要無ければ加工は不要である。得られる振動板前駆体111とスペーサー部前駆体120と接続部前駆体130とを積層すると、図4(a)に示すような前駆体100となる。
以上が、振動板11のセラミック製の基材12となる部分を少なくとも含む前駆体100を形成する前駆体形成工程S1である。
次いで、上記前駆体100を一体焼成し、図4(b)に示すようにセラミック製の基材12を含む流路ユニット本体101を形成する(加熱工程S2)。焼成温度は、一体化されたセラミック製流路ユニット本体が形成される温度であれば特に限定されず、例えば、1300〜1500℃程度とすることができる。焼成前に、焼成温度よりも低い脱脂温度で加熱して前駆体100を脱脂してもよい。更に、脱脂前に、脱脂温度よりも低い乾燥温度で加熱して前駆体を乾燥させてもよい。得られる流路ユニット本体101は、特別な接着処理等を加える必要が無く、各部12,20,30の重ね合わせ面のシール性が得られる。
なお、流路ユニット本体は、セラミック粉体とバインダーと溶媒を含むスラリーを用いるゲルキャスト法等により形成してもよい。
前駆体を焼成すると、多数のセラミック結晶粒子が形成される。これらの粒子同士の間には、隙間が形成されることがある。ノズルを高密度化するため振動板を薄くすると、液体噴射ヘッド使用中に振動板の基材の内部に形成される隙間を通った圧力室内の液が圧電素子側に染み出す現象が生じる。この現象を抑制するため、液体噴射ヘッドの製造工程の途中で振動板に吸水剤を含ませることにしている。図4(c)の例では吸水剤を含ませた振動板11を形成した後に圧電素子3を形成しているが、圧電素子形成後に吸水剤の含浸工程を行うことも可能である。含浸工程の詳細は、後述する。
含浸工程を経て、振動板11を含む流路ユニットU0を形成した後、図4(c)に示すように、振動板11上に下電極81、リード電極84(図3(a)参照)、圧電体層82、及び、上電極83を形成する(圧電素子形成工程S3)。電極81,83,84は、スパッタ法等といった気相法で形成してもよいし、スピンコート法等といった液相法で形成した塗布膜を加熱する方法等で形成してもよい。スピンコート法等といった液相法によって圧電体層を形成する場合、例えば、PZTを構成する金属の有機物を分散媒に分散した前駆体溶液の塗布工程、例えば170〜180℃程度の乾燥工程、例えば300〜400℃程度の脱脂工程、及び、例えば550〜800℃程度の焼成工程の組合せを複数回行えばよい。不要箇所の電極や圧電体層は、パターニングにより除去してもよい。また、レジストパターンを振動板上に形成し、振動板全面上に電極や圧電体層を形成した後にレジストパターンとともに電極や圧電体層を除去してもよい。
その後、流路ユニットU0、封止プレート40、リザーバープレート50、及び、ノズルプレート60を接合し、制御回路基板91をケーブル類92で圧電素子3に接続する(ヘッド形成工程)。部材U0,40,50,60間の接合は、プレートと略同じ孔を形成した熱圧着用接着シートを部材間に挟んだ状態で部材同士を熱圧着する方法、液状の接着剤を部材間に塗布する方法、熱圧着性(自己圧着性)を有する部材を用いて部材同士を熱圧着する方法、等が可能である。制御回路基板91の接続は、部材U0,40,50,60間の一部又は全部を接合する前に行ってもよい。
以上により、図3(a),(b)で示したような液体噴射ヘッド1が製造される。
(3)流路ユニット及びその製造方法の例:
次に、図5〜9を参照して、流路ユニットU0及びその製造方法の例を説明する。
図5(a)は、流路ユニットの製造工程を示している。まず、例えば、ジルコニア(ZrOx)に酸化イットリウム(YOx)をモル比で4〜8%添加した粉体をバインダー等に分散したペーストをシート状に成形してグリーンシートを形成し、必要に応じてグリーンシートを加工して、各前駆体111,120,130を形成して積層する(前駆体形成工程S11)。次いで、前駆体111,120,130を一体的に脱脂し(脱脂工程S12)、例えば1300〜1500℃程度で一体焼成する(焼成工程S13)。基材12とスペーサー部20と接続部30を接合した一体焼成物(101)の断面の様子を図5(b)の最上段に示している。この一体焼成物には、多数の結晶粒子13が形成され、粒子13間に隙間CL1が形成されている。
以上の工程S11〜S13は、基材12を形成する形成工程の例である。
次いで、吸水剤14aを一体焼成物の少なくとも振動板になる部分の基材12に含浸させる(吸水剤含浸工程S14)。図5(b)の上から2段目には、吸水剤14aを含む充填剤14が基材内部の隙間CL1に充填されていることが示されている。この充填剤14は、吸水剤14aに対して水分が飽和状態でない。
吸水剤14aには、グリセリンやジエチレングリコールといった多価アルコール、多糖類といった糖類、ポリアクリル酸のアルカリ金属塩といった吸水性樹脂、塩化カルシウムやシリカゲルといった無機吸水剤、等を一種以上含むものを用いることができる。含浸のため吸水剤を分散又は溶解する場合、分散媒又は溶媒は、水でもよいし、水でなくてもよい。
例えば、多価アルコール類は、水分を吸収する(抱き込む)性質を有しており、保湿剤としてインク溶媒に用いることにより微細なノズル開口の目詰まりを防止する性能を発揮する。図9(a)は、特許第3384448号公報に示される印刷用インクの組成を示している。図9(a)は、左から順にブラック(Black)、シアン(Cyan)、マゼンタ(Magenta)、イエロー(Yellow)の各インクの重量比を示し、下3行に多価アルコールと水分との関係を示している。このインクの多価アルコール含有比は、9.8〜20.0重量%である。インクから水分を吸収する場合、インクから水分を吸収可能な含有比(例えばインクの多価アルコール含有比の1.5倍程度以上)の多価アルコールを吸水剤14aに含ませるとよい。
吸水剤の含浸処理は、大気圧下で溶液槽380に入れた吸水剤に流路ユニット本体101をディッピングする(図6参照)だけでもよいが、減圧処理と加圧処理の少なくとも一方を組み合わせてもよい。これらの処理とディッピングとの組合せで含浸処理を行うのは、比較的容易なプロセスで比較的有効な効果を得るためである。より強い効果、更なる適正化を進める場合は、図6に示すような含浸装置300を用い図7の例1〜5に示すような含浸処理も可能である。
図6は、上記処理を実行可能な含浸装置300を模式的に例示している。この含浸装置300は、圧力調整バルブ322を介して減圧用ポンプ320を接続した減圧チャンバー310と、圧力調整バルブ342を介して加圧用窒素ボンベ340を接続した加圧チャンバー330とを備えている。減圧チャンバー310には、外部との間で流路ユニット本体101又は溶液槽380を出し入れ可能な移動口兼開閉バルブ312が設けられている。加圧チャンバー330には、外部との間で流路ユニット本体101又は溶液槽380を出し入れ可能な移動口兼開閉バルブ332が設けられている。減圧チャンバー310と加圧チャンバー330との間には、チャンバー310,330間で流路ユニット本体101又は溶液槽380を移動可能な移動口兼開閉バルブ334が設けられている。
図7は、含浸処理の例1〜7を示している。もちろん含浸処理は、これら7つの例に限られるものではない。例1は、大気圧下で溶液槽380に流路ユニット本体101を入れてから所定時間後、溶液槽380から流路ユニット本体101を取り出して減圧チャンバー310内で所定時間減圧処理(例えば絶対圧0.1〜0.5気圧程度)を行う含浸処理を示している。減圧処理を行う工程は、基材の環境を減圧することで吸水剤を隙間に浸透させる工程である。例2は、例1の処理後、流路ユニット本体101を減圧チャンバー310内から加圧チャンバー330内に移して所定時間加圧処理(例えば絶対圧2〜9気圧程度)を行う含浸処理を示している。加圧処理を行う工程は、基材の環境を加圧することで吸水剤を隙間に浸透させる工程であり、減圧処理と組み合わせることも可能である。例3は、大気圧下で溶液槽に流路ユニット本体を入れてから所定時間後、溶液槽から流路ユニット本体を取り出して加圧チャンバー内で所定時間加圧処理を行う含浸処理を示している。これにより、浸透効率が向上する。例4は、減圧チャンバー内に入れた溶液槽に流路ユニット本体を入れてから所定時間減圧処理を行う含浸処理を示している。例5は、加圧チャンバー内に入れた溶液槽に流路ユニット本体を入れてから所定時間加圧処理を行う含浸処理を示している。例6は、流路ユニット本体101を用いて液体噴射ヘッドの状態に組み立て、吸水剤14aを含む充填剤14を圧力室21内に供給した後、圧電素子3を繰り返し駆動させる駆動電圧(駆動信号SG1)を制御回路基板91から出して振動板を振動させる振動処理を行う含浸処理を示している。振動処理を行う工程は、振動板を振動させることで吸水剤を隙間に浸透させる工程であり、減圧処理や加圧処理と組み合わせることも可能である。例7は、大気圧下で溶液槽に流路ユニット本体を入れて所定時間ディッピング処理を行う含浸処理を示している。
減圧処理、加圧処理、及び、振動処理のうちの一つ以上を少なくとも行うことで吸水剤を隙間に浸透させる浸透工程が含浸工程に含まれていると、吸水剤の浸透効率が向上する。
図8は、上記例6の振動板振動処理時の様子を模式的に例示している。この例の圧電素子3は、制御回路基板91からの駆動電圧が”L”(ロー)である場合に撓みの少ない状態となり、前記駆動電圧が”H”(ハイ)である場合に撓みの多い状態となっている。この圧電素子3の変形により基材12が圧力室21側に撓むと、裏面11b側の隙間CL1が若干拡がる。駆動電圧”H”を繰り返し供給して基材12を繰り返し撓ませると、隙間CL1が拡がったり狭まったりするので、隙間CL1に溶液槽の液が入り込み易くなる。また、繰り返しの撓みは圧力室21に繰り返しの加圧と減圧も生じさせる。従って、振動板を振動させながら溶液槽の液を浸透させる例6は、浸透効率が向上する。また、直流電圧”H”の印加を維持して図8の下段に示す状態を保っても、隙間CL1が拡がっているため、浸透効率が向上する。
なお、含浸工程は、焼成後であれば良く、他の部品組み込み後などでも処理が可能であれば後工程になるほど良い。
また、吸水剤14aを基材12に含浸させると、含浸した液体の成分の変化(硬化等)により振動板の硬さ等が変化する。そこで、制御回路基板91から圧電素子3に駆動信号を供給して振動板11を振動させるとき、含浸した液体の成分の変化状況に応じて駆動信号を調整してもよい。この処理は、例えば、含浸回数、含浸時間、振動板の電気抵抗や残留振動や固有振動周期といった電気的状態、等に基づいて駆動信号の電圧や周波数等を調整することにより行うことができる。変化状況に応じて駆動信号を調整する例も、液漏れが抑制される好適な例となる。
含浸工程の後、流路内における吸水剤の余分な付着を除去する洗浄を行った後に流路ユニット本体を乾燥させ、流路ユニットU0を完成させる(洗浄工程S15)。このときの様子を図5(b)の上から3段目に示している。その後、液体噴射ヘッドの状態に組み立てていない場合には、図4(c)で示したように圧電素子3を振動板11上に形成し、図3で示したようにノズルプレート等を接合すると、液体噴射ヘッド1が形成される。
以上の工程S14,S15は、吸水剤14aを含浸させる含浸工程の例である。
液体噴射ヘッド1の使用を開始して圧電素子3を駆動すると、インク等の液体Fは、液体導入孔43、リザーバー51、共通供給孔41及び個別の供給孔31を介して圧力室21内に供給される。そして、図5(b)の最下段に示すように、圧力室21内に液体Fが充填され、ノズル62から液滴が噴射されるようになる。
インク等の液体Fには、例えば、Ca(カルシウム)、Mg(マグネシウム)、Ba(バリウム)といったアルカリ土類金属の塩、K(カリウム)といったアルカリ金属の塩、Cu(銅)、Zn(亜鉛)といった金属の塩、等を一種以上含む水溶液が用いられる。このような水溶液を液体Fに用いる場合、液体Fの水分が吸水剤14aに吸収されると、Ca塩といったアルカリ土類金属塩、K塩といったアルカリ金属塩、Cu塩といった金属塩、等の析出物又は濃縮液が残留する。
液体Fが振動板11の裏面11bに接すると、セラミック製の基材12の内部にある隙間CL1に含まれる吸水剤14aは、該吸水剤に対して水分が飽和状態でない初期には圧力室21内の液体Fから水分を引き寄せる。その後、吸水剤14aに対して水分が飽和状態になる。図1の下半分、及び、図5(b)の最下段には、水分を引き寄せた吸水剤14aを含む充填剤15が基材内部の隙間CL1に充填されていることが示されている。この充填剤15は、吸水剤14aに対して水分が飽和状態である。すると、圧力室21内の液体Fから水分を引き寄せない。すなわち、液体噴射ヘッド1の使用中に液漏れ抑制の変化が生じる。その結果、液体噴射ヘッド使用中に圧力室21内の液体Fに由来する液の隙間CL1を通る染み出しが抑制される。
また、液体Fの少なくとも一部の成分が基材内部の隙間CL1に入ると、液体Fの水分が吸水剤14aに吸収され、液体Fの水分が吸水剤14aに吸収されたときに残留する物質を含む材料(15)が基材内部の隙間CL1に充填された状態になる。例えば、溶媒が水である液体Fがアルカリ土類金属塩やアルカリ金属塩や金属塩を含むインクである場合、インクから水分が吸水剤14aに吸収されると、インクに含まれる塩が析出する。このインク残留物である析出物が隙間CL1を閉塞し、液体Fの流通を抑制する。
以上説明したように、本技術は、流路ユニット使用中に圧力室21内の液体Fに由来する液の薄い振動板11からの染み出しを抑制することが可能である。むろん、吸水剤に糖類、吸水性樹脂、無機吸水剤、等を用いても、同様の作用により液の染み出しを抑制することが可能である。
また、薄い振動板からの液漏れが抑制されることにより、ノズルの高密度化、ひいては印刷物等の出力物の高画質化及び高速化を図ることができる。また、シンプルなプロセスで液体噴射ヘッドを製造することができるので、相反する要素である低コストとノズル高密度化の両立を図ることができる。更に、充填剤により振動板の強度を補強することができると、耐久性、及び、耐溶媒性といった信頼性の向上を図ることができる。
更に、流路ユニットの他部品との接合面に吸水剤が付着しても、パラキシリレン系のポリマーのような接着力の低下は生じ難い。従って、液体噴射ヘッドの歩留まり向上を図ることができる。
なお、主目的である液漏れの抑制により耐久性や信頼性の向上を図ることができるので、民生のプリンターだけでなく、商業用や工業用の液体噴射装置への発展が期待される。
ところで、振動板11の裏面(第一の面)11b側から吸水剤14aを含浸させると、図9(b)に例示するように、吸水剤14aの濃度分布が振動板の裏面11b側に偏ることがある。なお、図9(b),(c)において、横軸は振動板の厚み方向D1における位置を表し、縦軸は前記位置による吸水剤14aの濃度を表す。濃度分布はあくまでも例示であり、必ずしもこのような特性になるとは限らない。例えば、振動板の表面11a側まで吸水剤14aが浸透しておらず、振動板の途中(11bと11aの間)で吸水剤14aの濃度が0になる可能性もある。
吸水剤の濃度は、振動板の単位体積当たりの吸水剤の重量等で表される。ここで、表面11aと裏面11bとの中点から裏面11bまでの充填剤濃度の相加平均を平均濃度Cb、中点から表面11aまでの充填剤濃度の相加平均を平均濃度Caとする。第一の面(11b)側における充填剤の存在比R1は、R1=Cb/(Ca+Cb)となる。第二の面(11a)側における充填剤の存在比R2は、R2=Ca/(Ca+Cb)となる。なお、中点よりも裏面11b寄りの位置から裏面11bまでの吸水剤濃度の相加平均を平均濃度Cbとし、中点よりも表面11a寄りの位置から表面11aまでの吸水剤濃度の相加平均を平均濃度Caとしてもよい。
これらの場合、R1>R2となる。この例も、液漏れを抑制可能な好適な例となる。
なお、予め液体Fを圧力室21内に供給すると、振動板の裏面(第一の面)11b側における吸水剤14aが圧力室21へ流出し、図9(c)に例示するように吸水剤14aの濃度分布が振動板11の圧力室21とは反対側の表面(第二の面)11a側に偏ることがある。
上記の場合、R1<R2となる。この場合、振動板の裏面11b側が先に水分の飽和状態となって液体Fから水分を引き寄せなくなるので、液漏れを抑制可能な好適な例となる。
(4)液体噴射装置の例:
図10は、上述した液体噴射ヘッド1を記録ヘッドとして有するインクジェット式の記録装置である液体噴射装置200の外観を示している。液体噴射ヘッド1を記録ヘッドユニット211,212に組み込むと、液体噴射装置200を製造することができる。図10に示す液体噴射装置200は、記録ヘッドユニット211,212のそれぞれに、液体噴射ヘッド1が設けられ、外部インク供給手段であるインクカートリッジ221,222が着脱可能に設けられている。記録ヘッドユニット211,212を搭載したキャリッジ203は、装置本体204に取り付けられたキャリッジ軸205に沿って往復移動可能に設けられている。駆動モーター206の駆動力が図示しない複数の歯車及びタイミングベルト207を介してキャリッジ203に伝達されると、キャリッジ203がキャリッジ軸205に沿って移動する。図示しない給紙ローラー等により給紙される記録シート290は、プラテン208上に搬送され、インクカートリッジ221,222から供給され液体噴射ヘッド1から噴射されるインク滴により印刷がなされる。
(5)応用、その他:
本発明は、種々の変形例が考えられる。
例えば、記録装置は、印刷中に液体噴射ヘッドが移動しないように固定されて、記録シートを移動させるだけで印刷を行ういわゆるラインヘッド型のプリンターでもよい。
流体噴射ヘッドから吐出される液体は、液体噴射ヘッドから吐出可能な材料であればよく、染料等が溶媒に溶解した溶液、顔料や金属粒子といった固形粒子が分散媒に分散したゾル、等の流体が含まれる。このような流体には、インク、液晶、等が含まれる。液体噴射ヘッドは、プリンターといった画像記録装置の他、液晶ディスプレー等のカラーフィルタの製造装置、有機ELディスプレーやFED(電解放出ディスプレー)等の電極の製造装置、バイオチップ製造装置、等に搭載可能である。
圧力室に圧力を与えるための圧電素子は、図3(a),(b)で示したような薄膜型に限定されず、圧電材料と電極材料とを交互に積層させた積層型、縦振動させて各圧力室に圧力変化を与える縦振動型、等でもよい。また、圧電アクチュエーターは、発熱素子の発熱で生じる気泡によってノズルから液滴を噴射させるアクチュエーター、振動板と電極との間に発生させた静電気によって振動板を変形させてノズルから液滴を噴射させるいわゆる静電式アクチュエーター、等でもよい。更には、そのほかの様々な流路ユニットに適用することができる。
振動板は、液体流路を形成するスペーサー部や接続部とは別に焼成されて形成されてからスペーサー部に接合されてもよい。スペーサー部や接続部は、金属、合成樹脂、等、セラミック製でなくてもよい。また、振動板がセラミック製でなくても、本発明を適用可能である。
隙間CL1には、吸水剤の作用により生成する充填剤と他の充填剤とを組み合わせて充填してもよい。他の充填剤には、光硬化樹脂、液体F等の溶液から固まりを生成する変性剤、熱硬化樹脂、等の一種以上を用いることができる。前記固まりには、溶質と変性剤とが反応して生じた析出成分といった溶液の一部と変性剤とが結合した固まり、ゲルといった溶液全体を含む固まり、等が含まれる。溶液には、充填剤を生成するための専用の液体も含まれる。
充填剤の形成方法も、様々考えられる。
充填剤の形成工程は、前駆体焼成直後や液体噴射ヘッド形成後の他、液体噴射ヘッド形成前における流路ユニット本体とプレートとの接合直後等に行ってもよい。
また、吸水剤は、焼成前の前駆体に含まれていてもよい。例えば、吸水剤14aが無機金属塩など耐熱性の物質である場合、この耐熱性物質を前駆体に混入しておけば、焼成後の基材12に吸水剤14aが存在することになる。吸水剤14aが存在する場合、圧力室21内に液体Fを供給すると、基材表面の吸水剤14aは、該吸水剤に対して水分が飽和状態でない初期には圧力室21内の液体Fから水分を引き寄せる。吸水剤14aに対して水分が飽和状態になると、圧力室21内の液体Fから水分を引き寄せない。また、基材内部の隙間CL1に入ったインクから水分が吸水剤14aに吸収されると、残留物質を含む充填剤(15)が隙間CL1に充填される。従って、この場合も、液漏れを抑制することが可能である。
(6)結び:
以上説明したように、本発明によると、種々の態様により、流路ユニット使用中に振動板からの液の染み出しを抑制することが可能な技術等を提供することができる。むろん、従属請求項に係る構成要件を有しておらず独立請求項に係る構成要件のみからなる技術等でも、上述した基本的な作用、効果が得られる。
また、上述した実施形態及び変形例の中で開示した各構成を相互に置換したり組み合わせを変更したりした構成、公知技術並びに上述した実施形態及び変形例の中で開示した各構成を相互に置換したり組み合わせを変更したりした構成、等も実施可能である。本発明は、これらの構成等も含まれる。
1…液体噴射ヘッド、3…圧電素子、10…振動板部、11…振動板、11a…表面(第二の面)、11b…裏面(第一の面)、12…基材、12c…内部、13…粒子、14,15…充填剤、14a…吸水剤、20…スペーサー部、21…圧力室、30…接続部、31…供給孔、32…ノズル連通孔、40…封止プレート、50…リザーバープレート、51…リザーバー、60…ノズルプレート、62…ノズル、100…前駆体、101…流路ユニット本体、111…振動板前駆体、120…スペーサー部前駆体、130…接続部前駆体、200…液体噴射装置、300…含浸装置、CL1…隙間、D1…厚み方向、F…液体、F1…液体流路、SG1…駆動信号、U0…流路ユニット。

Claims (7)

  1. 変形可能な振動板と、
    壁の一部である前記振動板の変形により液体に圧力が加わる圧力室と、
    を備えた流路ユニットであって、
    前記振動板は、該振動板の内部にある隙間に吸水剤を含む、流路ユニット。
  2. 変形可能な振動板と、
    壁の一部である前記振動板の変形により液体に圧力が加わる圧力室と、
    を備えた流路ユニットであって、
    前記振動板は、セラミック製の基材の内部にある隙間に吸水剤を含む、流路ユニット。
  3. 変形可能な振動板と、
    壁の一部である前記振動板の変形により液体に圧力が加わる圧力室と、
    を備えた流路ユニットであって、
    前記振動板は、吸水剤を含み、
    前記吸水剤は、多価アルコールと糖類の少なくとも一方を含む、流路ユニット。
  4. 請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の流路ユニットと、
    前記圧力室に連通するノズルと、
    を備える、液体噴射ヘッド。
  5. 請求項4に記載の液体噴射ヘッドを搭載した、液体噴射装置。
  6. 変形可能な振動板と、壁の一部である前記振動板の変形により液体に圧力が加わる圧力室と、を備えた流路ユニットの製造方法であって、
    前記振動板のセラミック製の基材となる部分を少なくとも含む前駆体を加熱して前記基材を形成する形成工程と、
    前記基材の内部に形成される隙間に吸水剤を含浸させる含浸工程と、
    を含む、流路ユニットの製造方法。
  7. 前記含浸工程は、前記基材の環境を減圧すること、前記基材の環境を加圧すること、及び、前記振動板を振動させること、のうちの一つ以上を少なくとも行うことで前記吸水剤を前記隙間に浸透させる浸透工程を含む、
    請求項6に記載の流路ユニットの製造方法。
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