以下、基板検査装置および基板検査方法の実施の形態について、添付図面を参照して説明する。
最初に、基板検査装置の一例としての図1に示す基板検査装置1の構成について説明する。基板検査装置1は、図2〜4に示すように、2つ(複数)の導体パターン101a,101b(以下、区別しないときには「導体パターン101」ともいう)を有する回路基板100a〜100c(以下、区別しないときには「回路基板100」ともいう)における各導体パターン101の導通検査および導通検査を、後述する基板検査方法に従って実行可能に構成されている。この場合、この基板検査装置1では、2つ(n(nは2以上の整数)個の一例)の導体パターン101の導通検査を並行して実行することが可能となっている。
具体的には、基板検査装置1は、図1に示すように、2つ(n個の一例)の検査回路2a,2b(以下、区別しないときには「検査回路2」ともいう)、複数(例えば、4つ)のプローブユニット3、移動機構4、記憶部5および処理部6を備えて構成されている。
検査回路2a,2bは、図2に示すように、電源部11、電圧検出部12、第1電流検出部13aおよび第2電流検出部13b(以下、両電流検出部13a,13bを区別しないときには「電流検出部13」ともいう)をそれぞれ備えて構成されている。
電源部11は、処理部6の制御に従い、導通検査および導通検査を実行する際に用いる検査用電流S(例えば、直流電流)を出力する。電圧検出部12は、検査用電流Sが導体パターン101の一対の供給ポイント(供給箇所に相当する:図2に示す供給ポイントPs1〜Ps4であって、以下、区別しないときには「供給ポイントPs」ともいう)に供給されている供給状態における一対の供給ポイントPs間の電圧値Vmを検出する。
電流検出部13は、電源部11と導体パターン101との間に流れる電流の電流値Imを検出する。具体的には、この基板検査装置1では、第1電流検出部13aが、電源部11の高電位(一方の電位の一例)と1つの導体パターン101(例えば、導体パターン101a)における一対の供給ポイントPsの一方(例えば、供給ポイントPs1)との間の電流値Im(第1電流値Im1)を検出し、第2電流検出部13bが、その導体パターン101における一対の供給ポイントPsの他方(例えば、供給ポイントPs2)と電源部11の低電位(グランド電位:他方の電位の一例)との間の電流値Im(第2電流値Im2)を検出する。
プローブユニット3は、図1に示すように、プローブ31を支持する。また、プローブユニット3は、移動機構4に取り付けられて、移動機構4によって移動させられることにより、プローブ31が供給ポイントPsに接触(プロービング)させられる。この基板検査装置1では、4つのプローブユニット3を備えて構成され、導体パターン101の各供給ポイントPsにプローブ31が1つずつ接触させられて、各プローブ31を介して検査用電流Sの供給が行われる。
移動機構4は、処理部6の制御に従い、プローブユニット3を移動させることによってプロービングを実行する。
記憶部5は、回路基板100の導体パターン101における供給ポイントPsの位置を特定する情報を含んだ導体パターンデータDpを記憶する。また、記憶部5は、導通検査の際に用いる基準差分値Irおよび基準抵抗値Rrを記憶する。また、記憶部5は、導通検査および絶縁検査の結果を記憶する。
処理部6は、図外の操作部から出力される操作信号に従って基板検査装置1を構成する各部を制御する。具体的には、処理部6は、移動機構4によるプローブユニット3の移動を制御する。また、処理部6は、検査回路2a,2bの電源部11を制御して検査用電流Sの出力および出力停止を制御する。
また、処理部6は、導通検査処理および絶縁検査処理を実行する。この場合、処理部6は、導通検査処理において、電圧検出部12によって検出される電圧値Vmと、第1電流検出部13aによって検出される第1電流値Im1と、第2電流検出部13bによって検出される第2電流値Im2とに基づいて導体パターン101の導通状態の良否を判定する。また、処理部6は、絶縁検査処理において、各検査回路2a,2bによってそれぞれ検出される第1電流値Im1および第2電流値Im2に基づいて各導体パターン101の絶縁状態を検査する。
次に、一例として、図2〜図4に示す回路基板100a〜100cにおける各導体パターン101の導通検査および絶縁検査を基板検査装置1を用いて実行して各回路基板100a〜100cを検査する基板検査方法、およびその際の基板検査装置1の動作について、図面を参照して説明する。
最初に、検査対象の回路基板100aを図外の基板保持部に保持させ、次いで、図外の操作部を用いて検査開始操作を行う。この際に、処理部6が、操作部から出力された操作信号に従って処理を開始する。この場合、処理部6は、まず、記憶部5から導体パターンデータDpを読み出して、導体パターン101aの供給ポイントPs1,Ps2、および導体パターン101bの供給ポイントPs3,Ps4の位置を導体パターンデータDpに基づいて特定する。
続いて、処理部6は、移動機構4を制御して、図2に示すように、導体パターン101a,101bの各供給ポイントPs1〜Ps4に各プローブユニット3のプローブ31を接触(プロービング)させる。
次いで、処理部6は、検査回路2a,2bの各電源部11を制御して、検査用電流Sを出力させる。これにより、検査回路2aの電源部11から出力された検査用電流Sが導体パターン101aの供給ポイントPs1,Ps2に供給され、検査回路2bの電源部11から出力された検査用電流Sが導体パターン101bの供給ポイントPs3,Ps4に供給される。
また、検査回路2aの電圧検出部12が供給ポイントPs1,Ps2間の電圧値Vmを検出し、検査回路2bの電圧検出部12が供給ポイントPs3,Ps4間の電圧値Vmを検出する。また、検査回路2aの第1電流検出部13aが、電源部11の高電位と導体パターン101aの供給ポイントPs1との間の第1電流値Im1を検出し、検査回路2aの第2電流検出部13bが、電源部11の低電位と導体パターン101aの供給ポイントPs2との間の第2電流値Im2を検出する。
また、検査回路2bの第1電流検出部13aが、電源部11の高電位と導体パターン101bの供給ポイントPs3との間の第1電流値Im1を検出し、検査回路2bの第2電流検出部13bが、電源部11の低電位と導体パターン101bの供給ポイントPs3との間の第2電流値Im2を検出する。
続いて、処理部6は、導通検査処理を実行する。この導通検査処理では、処理部6は、第1電流検出部13aによって検出された第1電流値Im1から第2電流検出部13bによって検出された第2電流値Im2を差し引いた値(第1電流値および第2電流値を比較した比較値の一例であって、以下「差分値Id」ともいう)を算出する。
次いで、処理部6は、記憶部5から基準差分値Irを読み出す。この場合、基準差分値Irは、導通状態および絶縁状態が共に良好な導体パターン101について検出される第1電流値Im1から第2電流値Im2を差し引いた値よりもやや大きい値(正の値)に規定されているものとする。
続いて、処理部6は、算出した差分値Idが基準差分値Ir以下である(予め規定された基準に適合する)との第1条件を満たしているか否かを判別する。この場合、図2に示すように、導体パターン101aに他の導体パターン101(この例では、導体パターン101b)との短絡が存在しないために電流の漏れがないときには、第1電流値Im1と第2電流値Im2とが同じ値(または、第2電流値Im2が第1電流値Im1よりもやや小さい値)となって、差分値Idが基準差分値Ir以下となるため、検査部6は、第1条件を満たしていると判別する。
次いで、処理部6は、検査回路2aの電圧検出部12によって検出された電圧値Vmと、第1電流検出部13aによって検出された第1電流値Im1(第1電流値および第2電流値の少なくとも一方の一例)とに基づいて(電圧値Vmを第1電流値Im1で除算して)抵抗値Rmを算出する。
続いて、処理部6は、記憶部5から基準抵抗値Rr(予め規定された基準抵抗値)を読み出す。この場合、基準抵抗値Rrは、導通状態および絶縁状態が共に良好な導体パターン101について検出される電圧値Vmを第1電流値Im1で除算した値よりもやや大きい値に規定されているものとする。次いで、処理部6は、算出した抵抗値Rmが基準抵抗値Rr以下であるとの第2条件を満たしているか否かを判別する。この場合、図2に示すように、導体パターン101aに導通不良箇所がないときには、抵抗値Rmが基準抵抗値Rr以下となるため、検査部6は、第2条件を満たしていると判別する。
次いで、処理部6は、第1条件および第2条件の判別結果から、導体パターン101aの導通状態の良否を判定する。この場合、導体パターン101aについては、上記したように、第1条件を満たし、かつ第2条件を満たしている。この際には、処理部6は、導体パターン101aの導通状態を良好と判定する。
また、処理部6は、導体パターン101bの導通状態の良否を判定する。具体的には、検査回路2bによって検出された第1電流値Im1と第2電流値Im2との差分値Idが基準差分値Ir以下であるとの第1条件を満たしているか否かを判別すると共に、検査回路2bによって検出された電圧値Vmと第1電流値Im1とに基づいて算出した抵抗値Rmが基準抵抗値Rr以下であるとの第2条件を満たしているか否かを判別する。
この場合、図2に示すように、導体パターン101bに短絡が存在せず、差分値Idが基準差分値Ir以下となるため、検査部6は、第1条件を満たしていると判別する。また、導体パターン101bに導通不良箇所がなく、抵抗値Rmが基準抵抗値Rr以下となるため、検査部6は、第2条件を満たしていると判別する。
続いて、処理部6は、第1条件および第2条件の判別結果から、導体パターン101bの導通状態の良否を判定する。この場合、この回路基板100aでは、第1条件および第2条件の双方を満たしている。このため、処理部6は、導体パターン101bの導通状態を良好と判定する。
また、処理部6は、導体パターン101aに対する導通状態の良否の判定と、導体パターン101bに対する導通状態の良否の判定とを並行して実行する。つまり、処理部6は、検査回路2の数と同数(n個)の導体パターン101の導通検査を並行して実行する。次いで、処理部6は、各導体パターン101a,101bについての導通状態の検査結果を記憶部7に記憶させて、導通検査処理を終了する。
ここで、この基板検査装置1では、上記したように、2つ(n個)の検査回路2a,2bを備えて、2つ(n個)の導体パターン101a,101bの導通状態を並行して検査する。このため、1つの検査回路2だけを備えて導通状態の検査を導体パターン101a,101bに対して順番に1つずつ行う構成と比較して、検査効率を十分に向上させることが可能となっている。
続いて、処理部6は、絶縁検査処理を実行する。この絶縁検査処理では、処理部6は、導通検査処理と同様にして、各検査回路2a,2bによって各導体パターン101a,101bに検査用電流Sが供給されている状態において各検査回路2a,2bによってそれぞれ検出された第1電流値Im1および第2電流値Im2に基づいて導体パターン101a,101bの絶縁状態を検査する。
ここで、例えば、図4に示すように、導体パターン101a,101bが短絡し、かつ一方の導体パターン101aにおける短絡箇所Pbと供給ポイントPs2との間に導通不良箇所Pa(断線)が存在するときには、導体パターン101aに供給している検査用電流Sが他方の導体パターン101bに流れるため、検査回路2aによって検出される第2電流値Im2が第1電流値Im1よりも小さい値となる。また、導体パターン101bには電源部11から供給される検査用電流Sに加えて導体パターン101aからの検査用電流Sが中間部位に流れるため、検査回路2bによって検出される第2電流値Im2が第1電流値Im1よりも大きい値となる。
これに対して、図2に示すように、導体パターン101a,101bの導通状態が良好でかつ導体パターン101a,101bが短絡していないときには、検査回路2a,2bのいずれにおいても、第2電流値Im2は第1電流値Im1と同じ値、または小さい値となる。このように、各検査回路2によって検出される第1電流値Im1および第2電流値Im2の大小関係が導体パターン101a,101bの導通状態の良否および絶縁状態の良否に応じて異なることとなる。この第1電流値Im1では、各検査回路2a,2bの一方によって検出された第2電流値Im2が第1電流値Im1よりも小さく、かつ各検査回路2a,2bの他方によって検出される第2電流値Im2が第1電流値Im1よりも大きいとの大小関係が「予め決められた大小関係」として規定されている(以下、この大小関係を「規定された大小関係」ともいう)。処理部6は、検査回路2a,2bによってそれぞれ検出された第1電流値Im1および第2電流値Im2の大小関係が、上記の「規定された大小関係」に合致したときには、導体パターン101a,101bの絶縁状態を不良と判定する。
一方、上記の「予め決められた大小関係」に合致しない場合であっても、導体パターン101a,101bの絶縁状態が不良なことがある。具体的には、各導体パターン101a,101bの導通状態が良好でかつ導体パターン101a,101bが短絡しているときや、導体パターン101a,101bが短絡し、かつ導体パターン101aの短絡箇所Pbと供給ポイントPs2との間および導体パターン101bの短絡箇所Pbと供給ポイントPs4との間に導通不良箇所Paがそれぞれ存在するときには、検査回路2a,2bのいずれにおいても、第2電流値Im2が第1電流値Im1と同じ値、または小さい値となる。このため、処理部6は、検査回路2a,2bによってそれぞれ検出された第1電流値Im1および第2電流値Im2の大小関係が、上記の「予め決められた大小関係」に合致しない場合には、絶縁状態の良否判定を留保する。回路基板100aについては、上記したように検査回路2a,2bのいずれにおいても、第2電流値Im2が第1電流値Im1と同じ値(または、やや小さい値)となるため、処理部6は、絶縁状態の良否判定を留保し、その旨を記憶部7に記憶させて、絶縁検査処理を終了する。
なお、絶縁状態の良否判定を留保したときには、導体パターン101a,101b間に絶縁検査用の信号(電圧)を供給して導体パターン101a,101bの電流を検出し、その検出値に基づいて絶縁状態を検査する第2の絶縁検査(第2の絶縁検査の詳細な説明は省略する)を別途行う。
次に、図3に示す回路基板100bの検査を行う際には、上記したように、回路基板100bを基板保持部に保持させて検査開始操作を行う。この際に、処理部6が、移動機構4を制御して、同図に示すように、導体パターン101a,101bの各供給ポイントPs1〜Ps4に各プローブユニット3のプローブ31を接触させ、続いて、検査回路2a,2bの各電源部11を制御して、検査用電流Sを出力させる。
また、検査回路2a,2bの各電圧検出部12が電圧値Vmを検出し、検査回路2a,2bの各第1電流検出部13aおよび各第2電流検出部13bが、第1電流値Im1および第2電流値Im2をそれぞれ検出する。
次いで、処理部6は、導通検査処理を実行する。この導通検査処理では、処理部6は、電圧値Vm、第1電流値Im1および第2電流値Im2に基づいて上記した第1条件および第2条件を満たしているか否かを判別し、それらの判別結果から、導体パターン101a,101bの導通状態の良否を判定する。この場合、図3に示すように、導体パターン101aに導通不良箇所Pa(断線)が存在するときには、第1電流値Im1および第2電流値Im2の双方が小さい値(または、0A)となるため、両者が同じ値(または、ほぼ同じ値)となる。つまり、差分値Idが基準差分値Ir以下となる結果、検査部6は、第1条件を満たしていると判別する。また、導通不良箇所Paが存在しているため、供給ポイントPs1,Ps2間の抵抗値Rmが大きくなって基準抵抗値Rrを超えるため、検査部6は、第2条件を満たしていないと判別する。この際には、処理部6は、第2条件を満たしていないため(第1条件および第2条件の一方しか満たしていないため)、導体パターン101aの導通状態を不良と判定する。
また、図3に示すように、導体パターン101bには導通不良箇所が存在しないため、第1電流値Im1と第2電流値Im2とが同じ値(または、ほぼ同じ値)となって、差分値Idが基準差分値Ir以下となる。このため、検査部6は、第1条件を満たしていると判別する。また、抵抗値Rmが基準抵抗値Rr以下となるため、検査部6は、第1条件を満たしていると判別する。つまり、導体パターン101bについては、第1条件および第2条件の双方を満たしているため、処理部6は、導体パターン101bの導通状態を良好と判定する。続いて、処理部6は、各導体パターン101a,101bについての導通状態の検査結果を記憶部7に記憶させて、導通検査処理を終了する。
次いで、処理部6は、絶縁検査処理を実行する。この場合、この回路基板100bでは、上記したように検査回路2a,2bのいずれにおいても、第2電流値Im2が第1電流値Im1と同じ値(または、ほぼ同じ値)となる。このため、処理部6は、回路基板100bについては、導体パターン101a,101bの絶縁状態の良否判定を留保し、その旨を記憶部7に記憶させて、絶縁検査処理を終了する。また、処理部6は、別途第2の絶縁検査を実行して、導体パターン101a,101bの絶縁状態を検査する
次に、図4に示す回路基板100cの検査を行う際には、上記したように、回路基板100cを基板保持部に保持させて検査開始操作を行う。この際に、処理部6が、移動機構4を制御して、同図に示すように、導体パターン101a,101bの各供給ポイントPs1〜Ps4に各プローブユニット3のプローブ31を接触させ、次いで、検査回路2a,2bの各電源部11を制御して、検査用電流Sを出力させる。
また、検査回路2a,2bの各電圧検出部12が電圧値Vmを検出し、検査回路2a,2bの各第1電流検出部13aおよび各第2電流検出部13bが、第1電流値Im1および第2電流値Im2をそれぞれ検出する。
続いて、処理部6は、導通検査処理を実行する。この導通検査処理では、処理部6は、電圧値Vm、第1電流値Im1および第2電流値Im2に基づいて上記した第2条件および第1条件を満たしているか否かを判別し、それらの判別結果から、導体パターン101a,101bの導通状態の良否を判定する。
この場合、図4に示すように、導体パターン101aにおける供給ポイントPs1,Ps2の中間部位と導体パターン101bにおける供給ポイントPs3,Ps4の中間部位とが短絡し、かつ短絡箇所Pbよりも供給ポイントPs2側(電源部11の低電位側に接続される供給ポイントPs側)に位置する部位に導通不良箇所Paが存在するときには、導体パターン101aの供給ポイントPs1に供給されている検査用電流Sが短絡箇所Pbを介して導体パターン101bに流れるため、第1電流検出部13aによって検出される第1電流値Im1は、導通不良箇所がないときと同様の大きさとなる。
一方、導体パターン101aの供給ポイントPs1に供給されている検査用電流Sが導体パターン101bに流れ、また、導通不良箇所Paが存在しているため、供給ポイントPs2から電源部11の低電位側に流れる第2電流値Im2は導通不良箇所がないときよりも小さい値(または、0A)となる。このため、第1電流値Im1と第2電流値Im2との差分値Idが基準差分値Irよりも大きくなる結果、処理部6は、検査部6は、第1条件を満たしていないと判別する。
また、図4に示すように、供給ポイントPs1に供給された検査用電流Sが短絡箇所Pbを介して導体パターン101bに流れて電圧値Vmが小さい値となり、この結果、抵抗値Rmが基準抵抗値Rr以下となる。このため、検査部6は、第2条件を満たしていると判別する。この際には、処理部6は、第1条件を満たしていない(第1条件および第2条件の一方しか満たしてはいない)ため、導体パターン101aの導通状態を不良と判定する。
また、図4に示すように、導体パターン101bには、上記したように、導体パターン101aの供給ポイントPs1に供給されている検査用電流Sの一部または全部が流れるため、第1電流値Im1よりも第2電流値Im2が大きい値となって、差分値Idが負の値となる。このため、差分値Idが基準差分値Ir以下となる結果、検査部6は、第1条件を満たしていると判別する。また、導体パターン101bには導通不良箇所が存在しないため、抵抗値Rmが基準抵抗値Rr以下となる結果、検査部6は、第2条件を満たしていると判別する。つまり、導体パターン101bについては、第1条件および第2条件の双方を満たしているため、処理部6は、導体パターン101bの導通状態を良好と判定する。次いで、処理部6は、各導体パターン101a,101bについての導通状態の検査結果を記憶部7に記憶させて、導通検査処理を終了する。
ここで、第1電流値Im1と第2電流値Im2との比較を行うことなく、抵抗値Rmが基準抵抗値Rr以下であるか否かだけで導体パターン101の導通状態の良否を判定する従来の構成および方法では、上記した回路基板100cのように、導体パターン101aに導通不良箇所Paが存在し、かつ電源部11の高電位側に接続される供給ポイントPsと導通不良箇所Paとの間に短絡箇所Pbが存在するときには、電圧値Vmが小さい値に検出され、その電圧値Vmに基づいて算出した抵抗値Rmが基準抵抗値Rrよりも小さい値となる結果、導通不良箇所Paが存在しているにも拘わらず、導体パターン101aの導通状態が良好と誤判定されるおそれがある。
これに対して、この基板検査装置1および基板検査方法では、抵抗値Rmが基準抵抗値Rr以下であるか否か(第2条件を満たすか否か)を判別するのに加えて、第1電流値Im1および第2電流値Im2の差分値Idが基準差分値Ir以下であるか否か(第1条件を満たすか否か)を判別して双方の条件を満たしているときに導体パターン101の導通状態が良好であるとの判定をする。このため、この基板検査装置1および基板検査方法では、上記した回路基板100cのように、導体パターン101aに供給された検査用電流Sが短絡箇所Pbを介して導体パターン101bに流れたときには、第2電流値Im2が小さい値となって、差分値Idが基準差分値Irよりも大きくなり、第1条件を満たしていないと判別される結果、導体パターン101aの導通状態が不良と判定される。したがって、この基板検査装置1および基板検査方法では、導体パターン101に導通不良箇所Paが存在しているにも拘わらず、その導体パターン101の導通状態が良好と誤判定される事態が確実に防止されて、導体パターン101に導通不良箇所Paが存在しているときには、その導体パターン101の導通状態が不良であるとの判定が高精度で行われる。
続いて、処理部6は、絶縁検査処理を実行する。この場合、この回路基板100cでは、上記したように検査回路2aによって検出された第2電流値Im2が第1電流値Im1よりも小さい値となる。また、検査回路2bによって検出された第2電流値Im2が第1電流値Im1よりも大きい値となる。このため、処理部6は、検査回路2a,2bによってそれぞれ検出された第1電流値Im1および第2電流値Im2の大小関係が、上記の「規定された大小関係」に合致すると判別して、導体パターン101a,101bの絶縁状態を不良と判定する。次いで、処理部6は、各導体パターン101a,101bについての絶縁状態の検査結果を記憶部7に記憶させて、絶縁検査処理を終了する。
このように、この基板検査装置1および基板検査方法では、電源部11の一方の電位と各導体パターン101における一対の供給ポイントPsの一方との間の第1電流値Im1を検出すると共に、電源部11の他方の電位と各供給ポイントPsの他方との間の第2電流値Im2を検出し、第1電流値Im1、第2電流値Im2および各供給ポイントPs間の電圧値Vmに基づいて導体パターン101の導通検査を実行する。このため、この基板検査装置1および基板検査方法では、導通状態が良好であると判定する際に、抵抗値Rmが基準抵抗値Rr以下であることを条件とすることに加えて、例えば、第1電流値Im1と第2電流値Im2との差分値Id(比較値)が基準差分値Ir以下であることを条件することができる。したがって、この基板検査装置1および基板検査方法によれば、導体パターン101に導通不良箇所Paが存在しているにも拘わらず、その導体パターン101の導通状態が良好と誤判定される事態が確実に防止されて、導体パターン101に導通不良箇所Paが存在しているときには、その導体パターン101の導通状態が不良であるとの判定を高精度で行うことができる。
また、この基板検査装置1および基板検査方法では、第1電流値Im1から第2電流値Im2を差し引いた差分値Idが基準差分値Ir以下であるとの第1条件を満たし、かつ第1電流値Im1と電圧値Vmに基づいて算出される抵抗値Rmが基準抵抗値Rr以下であるとの第2条件を満たしているときに導体パターン101の導通状態を良好と判定する。このため、この基板検査装置1および基板検査方法によれば、簡易な判定手法でありながら導体パターン101の導通状態の良否を精度よく判定することができるため、導通検査の検査効率を十分に向上させることができる。
また、この基板検査装置1および基板検査方法では、各検査回路2a,2bによってそれぞれ検出された第1電流値Im1および第2電流値Im2の大小関係が予め決められた大小関係に合致するときに各導体パターン101の絶縁状態を不良と判定する。このため、この基板検査装置1および基板検査方法によれば、第1電流値Im1および第2電流値Im2の大小関係が予め決められた大小関係に合致するような絶縁不良の一部の形態については、導通検査に用いる検査回路2a,2bを用いて導通検査に引き続いて行う絶縁状態の良否判定で絶縁不良との判定をすることができる。したがって、このような絶縁不良の一部の形態については、別途行う第2の絶縁検査を省略することができるため、その分、検査効率を十分に向上させることができる。
なお、基板検査装置および基板検査方法は、上記した構成および方法に限定されない。例えば、図5に示す基板検査装置201、およびこの基板検査装置201を用いる基板検査方法を採用することもできる。なお、以下の説明において、上記した基板検査装置1と同じ構成要素については、同じ符号を付して、重複する説明を省略する。この基板検査装置201は、検査用電流(例えば、直流電流)を予め決められた第1電流値の定電流を出力する電源部としての定電流電源部211を備えて構成されている。また、この基板検査装置201では、基板検査装置1の第2電流検出部13bに相当する電流検出部213を備えて構成されている。また、この基板検査装置201では、基板検査装置1の第1電流検出部13aに相当する電流検出部が省略されている。
この基板検査装置201および基板検査装置201を用いた基板検査方法では、定電流電源部211から出力される検査用電流の電流値(予め規定された第1電流値)を第1電流値Im1として、処理部6が上記した導通検査処理および絶縁検査処理を実行する。具体的には、第1電流値Im1と電流検出部213によって検出される第2電流値Im2との差分値Idを算出して、基準差分値Irと比較して第1条件を満たしているか否かを判別する。また、電圧検出部12によって検出された電圧値Vmと第1電流値Im1とに基づいて抵抗値Rmを算出し、その抵抗値Rmと基準抵抗値Rrとを比較して第2条件を満たしているか否かを判別する。
この構成および方法においても、上記した基板検査装置1および基板検査方法と同様にして、導体パターン101に導通不良箇所Paが存在しているにも拘わらず、その導体パターン101の導通状態が良好と誤判定される事態が確実に防止されて、導体パターン101に導通不良箇所Paが存在しているときには、その導体パターン101の導通状態が不良であるとの判定を高精度で行うことができる。また、この構成および方法によれば、第1電流値Im1を検出する第1電流検出部13aを不要とすることができるため、基板検査装置201の構成を簡略化することができる。
また、上記の例では、第1電流値Im1と電圧値Vmとに基づいて抵抗値Rmを算出しているが、第2電流値Im2と電圧値Vmとに基づいて抵抗値Rmを算出する構成および方法を採用することもできる。
また、第1電流値Im1から第2電流値Im2を差し引いた差分値Idを比較値とする例について上記したが、第1電流値Im1と第2電流値Im2との比率を比較値とし、その比率が予め決められた基準比率以下であることを第1条件とする構成および方法を採用することもできる。
また、一例として2つの導体パターン101a,101bだけを有する回路基板100a〜100cを検査する例について上記したが、3つ以上の導体パターン101を有する回路基板100を検査することができるのは勿論であり、この際にも上記した各効果を実現することができる。
また、検査回路2を2つだけ備えて、2つの導体パターン101の導通検査を並行して実行する構成および方法について上記したが、3つ以上の検査回路2を備えて、3つ以上(検査回路2と同数)の導体パターン101の導通検査を並行して実行する構成および方法を採用することもでき、この場合においても、上記した各効果を実現することができる。
また、検査用電流Sとして直流電流を用いる構成および方法について上記したが、検査用電流Sとして交流電流を用いる構成および方法を採用することもできる。