JP6145400B2 - プライのジョイント構造および空気入りタイヤ - Google Patents

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Description

本発明は、空気入りタイヤ用材料であるプライの形成に際して設けられるプライのジョイント構造および前記ジョイント構造が設けられたプライを用いて製造された空気入りタイヤに関する。
空気入りタイヤの製造工程においては、平行に配列されたコードをトッピングゴムで被覆して形成された長尺のトップ反から所定の角度および幅で裁断されたプライ片の側縁部同士をジョイントして長尺のプライを形成することが行われている(特許文献1)。なお、ここでいう「側縁部」とは、プライ片において裁断面とは異なる側縁部を指す。
このとき、一般に、プライの側縁部同士をオーバーラップさせてジョイントを行っていた。しかし、このようにして形成されたジョイント構造の場合、ジョイント部とそれ以外の部分との間に剛性差が生じて、加硫時にジョイント部とその近傍が膨らまず、加硫後のサイドウォール部にラジアル方向の凹み(デント)が生じる恐れがある。
そこで、オーバーラップ量を小さくする極小ジョイントや、オーバーラップさせないジッパージョイント、爪ジョイントなどを適用し、ジョイント部近傍に生じる剛性差を小さくしてデントの発生を抑制することが行われている。
特開2010−111082号公報
しかしながら、これらのジョイントの適用に際しても、以下に示すような問題点があり、さらなる改善が求められていた。
即ち、極小ジョイントの場合、オーバーラップ量を小さくすることによりデントのレベルを改善することはできるものの、デントのレベルに対する市場の厳しい要求に応えるには未だ十分とまではいえない。また、オーバーラップ量を小さくするほど、工程におけるコントロールが難しくなり、生産性の低下を招いてしまう。
一方、ジッパージョイントや爪ジョイントの場合、デントのレベルは飛躍的に改善できるものの、ジョイント構造を形成するための機構が複雑となり、設備コストの上昇を招いてしまう。また、ジョイント作業に長時間を要するため、生産性の低下を招いてしまう。
このため、設備コストの上昇を招くことなく、短時間でジョイントを形成させながらも、ジョイント部とそれ以外の部分との剛性差を十分に小さくしてデントのレベルを改善し、市場の厳しい要求に十分に応えることができるプライのジョイント技術が望まれていた。
本発明者は、上記課題を解決するため鋭意検討を行った結果、以下に記載する発明により上記課題が解決できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
請求項1に記載の発明は、
所定のピッチで平行に配列されたコードをトッピングゴムで被覆して形成されるトップ反を裁断して得られるプライ片の側縁部同士をオーバーラップさせてジョイントすることにより形成されたプライのジョイント部におけるプライのジョイント構造であって、
前記ジョイント部に、前記ジョイント部を貫通するプリッキング穴が形成されており、
前記プリッキング穴の穴径Dと前記コードのピッチdとの関係が、0.5d≦D≦1.5dであり、
前記プリッキング穴が、前記ジョイント部におけるオーバーラップの幅をLとしたとき、前記ジョイント部の中心から前記プライの長手方向のそれぞれ両側1/6Lの範囲内に設けられている
ことを特徴とするプライのジョイント構造である。
請求項2に記載の発明は、
さらに、前記プリッキング穴が、加硫後の空気入りタイヤの径方向におけるブレーカーのエッジ位置からビードエイペックス上端位置までの間に1〜4個配置されるように設けられている
ことを特徴とする請求項1に記載のプライのジョイント構造である。
請求項3に記載の発明は、
請求項1または請求項2に記載のジョイント構造を有するカーカスプライが用いられていることを特徴とする空気入りタイヤである。
本発明によれば、設備コストの上昇を招くことなく、短時間でジョイントを形成させながらも、ジョイント部とそれ以外の部分との剛性差を十分に小さくすることができるプライのジョイント構造を提供することができ、また、このようなジョイント構造を設けることにより、デントのレベルが改善されて市場の厳しい要求に十分に応えた空気入りタイヤを提供することができる。
本発明の一実施の形態に係るプライのジョイント構造を模式的に示す平面図である。 本発明の一実施の形態に係るプライのジョイント構造を模式的に示す断面図である。 本発明の一実施の形態に係るプライのジョイント構造を模式的に示す断面図である。 本発明の一実施の形態に係るプライのジョイント構造を模式的に示す断面図である。 本発明の一実施の形態に係るプライのジョイント構造を有するカーカスプライを備えた空気入りタイヤの断面図である。
本発明者は、前記したプライのジョイント部近傍とその他の部分との剛性差を小さくすることができるジョイント構造について、鋭意検討を行い、ジョイント部にプリッキング穴を設けた場合、この剛性差を小さくすることができ、デントを抑制できることに思い至った。しかし、検討を進めていく中で、デントのレベルを適切に改善するには、この設けられるプリッキング穴にも適切なサイズと配置条件があることが分かった。そこで、これらのプリッキング穴を適切に形成させるための条件についてさらに検討を行い、以下に示す実施の形態によればよいことを見出した。以下、本発明の一実施の形態に基づいて、本発明を具体的に説明する。
図1は本実施の形態に係るプライのジョイント構造を模式的に示す平面図、図2〜図4は本実施の形態に係るプライのジョイント構造を模式的に示す断面図、図5は本実施の形態に係るプライのジョイント構造を有するカーカスプライを備えた空気入りタイヤの断面図である。
プライ片3は、所定のピッチで平行に配列されたコード1をトッピングゴム2で被覆して形成されるトップ反を裁断することにより得られる(図2参照)。図1に示すように、このプライ片3の裁断面ではない側縁部同士をオーバーラップさせてジョイント部4をジョイントすることにより、本実施の形態に係るジョイント構造が形成される。
そして、本実施の形態においては、図2に示すように、ジョイント部4を貫通するプリッキング穴6が形成されている。
このとき、プリッキング穴6は、以下の(1)および(2)に挙げる条件をすべて満たすように形成されている。
(1)プリッキング穴6の穴径Dは、プライ片3のコード1のピッチdとの関係において、0.5d≦D≦1.5dを満足するように設定されている。D<0.5dの場合、プリッキング穴6が小さ過ぎて剛性を小さくする効果を得ることができない。一方、D>1.5dの場合、デントのレベルの改善を図ることはできるものの、プリッキング穴6が大き過ぎて、タイヤ加硫時にプリッキング穴6に周囲のゴム部材が吸い上げられて内観に凹みが生じ、タイヤ厚さが局部的に薄くなるため、空気入りタイヤにおいて十分にエアーを保持することができなくなり、エアー保持性能の低下を招くという別の問題が発生する恐れがある。
(2)プリッキング穴6は、図3に示すように、ジョイント部4におけるオーバーラップの幅をLとしたとき、ジョイント部の中心Cからの距離Lxがプライの長手方向のそれぞれ両側1/6Lの範囲内になるように設けられている。両側1/6Lの範囲を超えてプリッキング穴6が設けられると、図4に示すように、プリッキング穴6が形成されていないエリアLaが大きくなり過ぎて、十分な効果を得ることができない。
即ち、プリッキング穴6は、図4に示すLaとLb、即ち、プリッキング穴6とジョイント両端部とのそれぞれの距離の間で、0.5≦La/Lb≦2の関係を満足するように設けられている。
上記(1)および(2)に示した条件を満たすようにして形成されたプリッキング穴6を設けることにより、ジョイント部4と他の部分との剛性差を適切に小さくして、デントの発生を適切に抑制できる。この結果、市場の要求に十分に応えたデントのレベルに形成された外観に優れた空気入りタイヤを提供することができる。
さらに、本実施の形態においては、以下に示す(3)の条件も満足しているとより好ましい。
(3)プリッキング穴6は、図5に示すように、加硫後の空気入りタイヤの径方向におけるブレーカー(1stブレーカー)7のエッジ位置からビードエイペックス8の上端位置までの間(距離A間)に1〜4個配置されるように設けられていることが好ましい。5個以上配置されていると多過ぎて、デントのレベルの改善を図ることはできるものの、加硫時にプライの目開きが発生し、ラジアルクラックが発生するという別の問題が発生する恐れがある。
そして、本実施の形態に係るジョイント構造は、従来のオーバーラップジョイントに基づいて形成されるため、極小ジョイントの場合のように工程におけるコントロールが難しくならず生産性の低下を招くことがない。また、ジッパージョイントや爪ジョイントの場合のような設備コストの上昇や作業時間の長期化を招くこともない。
なお、プリッキング穴6を形成する方法は特に限定されず、例えば、幅方向に列設される複数の針を有したプリッキング装置(図示せず)を用いることにより形成することができる。
(1)試験用タイヤの作製
表1に示すように、プリッキング穴径φD、プリッキング位置比La/Lb、プリッキングエリアA内のプリッキング個数がそれぞれ異なるプリッキング穴6がジョイント部4に形成された空気入りタイヤを作製し、実施例1〜実施例4、および比較例1〜比較例4の試験用タイヤとした。
また、ジョイント部4にプリッキング穴6を設けない空気入りタイヤを作製し、比較例5の試験用タイヤとした。
各試験用タイヤについての仕様は以下の通りである。
(a)タイヤサイズ:195/65R15 PCR
(b)カーカスプライ:1−0HTUのプライ構造
(c)トップ反スペック:
コード径φ :0.68mm
コードエンズ :5.0/5cm
コード構成 :1670dtex/2
トップ反ゲージ:0.95mm
(2)評価
(a)評価方法
各試験用タイヤの内圧を3.0kPaにして、FV測定用ドラムを回転させ、距離測定センサーにてショルダー部のデント量を測定した。測定結果を、プリッキング穴を設けなかった比較例5における測定結果を100とする指数で評価し、デント評価とした。指数が高いほどデントのレベルが改善され、低いほどデントのレベルが悪化したことを示す。
併せて、各試験用タイヤについて、インフレート後の内圧の時系列変化を調べるエア保持性試験により、内圧を測定した。測定結果を、プリッキング穴を設けなかった比較例5における測定結果を100とする指数で評価し、エアー保持性能とした。指数が高いほどエアー保持性能が改善され、低いほどエアー保持性能が悪化したことを示す。
また、各試験用タイヤについて、仕上げ検査工程での目視検査により、ラジアルクラックの発生の有無を観察した。
(b)評価結果
評価結果を表1に示す。
Figure 0006145400
表1より、上記の実施の形態に記載した(1)および(2)の条件を満たすプリッキング穴が形成された実施例1〜実施例4では、市場のシビアな要求にも対応できるデントのレベル110以上が確保されていることが分かる。そして、(3)の条件をも満たす実施例1〜実施例3では、エアー保持性能も悪化せず、ラジアルクラックも発生していない。しかし、プリッキング個数が多過ぎる実施例4では、タイヤで目開きが生じて、エアー保持性能の悪化、ラジアルクラックの発生を招いている。
これに対して、(2)の条件を満たす一方、プリッキング穴径φDが小さ過ぎるプリッキング穴が形成された比較例1では、ジョイント部の剛性が低下せず、デントのレベルが100に留まっている。
そして、(2)の条件を満たす一方、プリッキング穴径φDが大き過ぎるプリッキング穴が形成された比較例2では、ジョイント部の剛性が十分に低下せず、デントのレベルが105に留まっている。また、大き過ぎるプリッキング穴によりコード間が目開きしてインナーを吸い込むことにより、極部的にインナーゲージが薄くなり、エアー保持性能が95と悪化している。また、目開き部からのラジアルクラックも発生している。
そして、(1)の条件を満たす一方、プリッキング位置比La/Lbが小さ過ぎるプリッキング穴が形成された比較例3、およびプリッキング位置比La/Lbが大き過ぎるプリッキング穴が形成された比較例4では、プリッキング穴がジョイント部の端縁付近となるため、ジョイント部の剛性が十分低下せず、デントのレベルが100に留まっている。
以上、本発明を実施の形態に基づいて説明したが、本発明は上記の実施の形態に限定されるものではない。本発明と同一および均等の範囲内において、上記の実施の形態に対して種々の変更を加えることができる。
1 コード
2 トッピングゴム
3 プライ片
4 ジョイント部
6 プリッキング穴
7 ブレーカー
8 ビードエイペックス
10 押圧ローラー
11 突起
20 押し当て体
21 圧着面

Claims (3)

  1. 所定のピッチで平行に配列されたコードをトッピングゴムで被覆して形成されるトップ反を裁断して得られるプライ片の側縁部同士をオーバーラップさせてジョイントすることにより形成されたプライのジョイント部におけるプライのジョイント構造であって、
    前記ジョイント部に、前記ジョイント部を貫通するプリッキング穴が形成されており、
    前記プリッキング穴の穴径Dと前記コードのピッチdとの関係が、0.5d≦D≦1.5dであり、
    前記プリッキング穴が、前記ジョイント部におけるオーバーラップの幅をLとしたとき、前記ジョイント部の中心から前記プライの長手方向のそれぞれ両側1/6Lの範囲内に設けられている
    ことを特徴とするプライのジョイント構造。
  2. さらに、前記プリッキング穴が、加硫後の空気入りタイヤの径方向におけるブレーカーのエッジ位置からビードエイペックス上端位置までの間に1〜4個配置されるように設けられている
    ことを特徴とする請求項1に記載のプライのジョイント構造。
  3. 請求項1または請求項2に記載のジョイント構造を有するカーカスプライが用いられていることを特徴とする空気入りタイヤ。
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