以下に、添付の図面に基づき、本発明の実施の形態の詳細について説明する。なお、同一の機能を有する構成には添付図面中、同一の番号を付与し、その説明を省略することがある。
本発明に係るインクや導電性材料を含む液体等を吐出する液体吐出ヘッドの製造方法の一実施形態について以下で説明する。
図1は、圧電基板1に溝4を形成する工程を説明するための概略図である。なお、圧電基板1は、下記の工程で割れが生じない程度の強度が必要である。
平板状の圧電基板1の2つの主面(圧電基板1の面のうちの、圧電基板1の厚み方向Xを向く面)のうちの一方の主面(以下、「第1の主面」と称す)1a上に第1の位置合わせマーク9、および第2の電極10を形成する。また、圧電基板1の2つの主面のうちの他方の主面(以下、「第2の主面」と称す)1b上に第2の位置合わせマーク13、第4の位置合わせマーク15を形成する。そして、圧電基板1と第1の支持基板2とを貼り合わせてから圧電基板1の第2の主面1b上に複数の溝4を形成し、溝4の側面および底面に、第1の電極5を形成する。
図1(a)に示すように、圧電基板1の第1の主面1a(一方の面)上に、位置合せマークとしての第1のマーク9を形成する。第1のマーク9は、機械加工やレーザ加工等によって形成することができる。フォトリソグラフィ工程を含む金属膜やのエッチング技術やリフトオフ技術によって形成した金属膜のパターンを第1のマーク9としてもよい。
また、圧電基板1の第1の主面1a上に、第2の電極10を形成する。第2の電極10の位置は、第1のマーク9を基準に定める。
第2の電極10の形成方法は、フォトリソグラフィ、金属の成膜、レジストの剥離工程を含む金属膜のリフトオフ技術が挙げられる。金属膜の形成方法としては、スパッタ法や化学気相堆積(CVD:Chemical Vapor Deposition)法などが好適である。金属膜のリフトオフによって薄いシード膜を圧電基板1に形成してから、めっきで比較的厚い金属膜を形成して第2の電極10としてもよい。シード層としては、例えばPd/Crの2層膜が挙げられ、比較的厚い金属膜としては、例えばAu/Niが挙げられる。
また、第1のマーク9と第2の電極10は同一方法で同時に形成されてもよい。
次に、図1(b)に示すように、圧電基板1の側端部の、圧電基板1の第2の主面1b(他方の面)上に第2の電極パッド11を形成する。第2の電極パッド11の形成方法は、第2の電極10を形成する方法と同じ方法でよい。
また、圧電基板1の側面1c(図1(a)参照)を含む圧電基板1の面上に電極配線12を形成し、第1の主面1a上の第2の電極10と、第2の主面1b上の第2の電極パッド11とを電気的に接続する。
第2の電極パッド11の形成と同時に第2の電極パッド11を形成する方法と同じ方法で電極配線12を形成することが好ましい。
さらに、第2の主面1b上に、圧電基板1の第1の主面1a上に設けられた第1のマーク9を基準に位置が定められた第2のマーク13、第4のマーク15を設ける。第2のマーク13および第4のマーク15を設ける方法は、第1のマーク9を設けた方法と同じ方法でよい。第2の電極パッド11の形成と同時に第2の電極パッド11を形成する方法と同じ方法で第2のマーク13および第4のマーク15を形成することが好ましい。
第2のマーク13および第4のマーク15を、第2の電極パッド11及び電極配線12の形成と同時に形成する例を下記に挙げる。
まず、フォトリソグラフィ工程を含む金属膜のリフトオフ技術で、第2の電極パッド11、電極配線12、第2のマーク13、及び第4のマーク15を形成するためのシード層を圧電基板1に形成する。
より具体的には、スパッタ法で20nm厚のCr層と150nm厚のPd層を順に圧電基板1の第2の主面1b及び側面1cに形成してシード層とする。スパッタ時、圧電基板1の第2の主面1bがスパッタのターゲットと対面するように配置する。これにより、スパッタの被覆性を利用して、第2のマーク13と、第4のマーク15と、第2の電極パッド11とを形成するためのシード層を圧電基板1に成膜すると同時に、電極配線12のシード層を圧電基板1の側面1cに成膜することができる。
次に、上記のシード層を利用して、無電解めっき法で約1μm厚のNiと約0.1μm厚のAuの薄膜を順番に形成し、第2の電極パッド11、電極配線12、第2のマーク13及び第4のマーク15とする。これで、圧電基板1の第1の主面1a上に形成された第2の電極10は、電極配線12及び第2の電極パッド11を用いて圧電基板1の第2の主面1b上に引出される。また、第1のマーク9を基準にした第2のマーク13及び第4のマーク15が形成される。
次に、図1(c)に示すように、まず、圧電基板1と第1の支持基板2とを、貼り合せ層3を介して貼り合せる。圧電基板1の、第1の支持基板2と貼り合わせられる面(一方の面)は、圧電基板1の第1の主面1aであり、第2の電極10および第1のマーク9が形成された面である。
第1の支持基板2の、圧電基板1と貼り合わせられる一方の面は第1の主面1aと同じ大きさかそれよりも大きく、第1の主面1aが当該一方の面と合致するようにまたは当該一方の面内に貼り合わせられることが好ましい。
圧電基板1としては、例えば、50mm×50mm×0.2mmのPZT基板が挙げられる。また、圧電基板1は、1枚の板材からなる基板に限られず、複数枚の板材が積層されてなる積層体基板であってもよい。積層体基板の一例として、厚さ方向に分極処理が施された2枚の圧電基板が、分極方向が対向または背向するように接合されてなるものがある。
第1の支持基板2としては、例えば、φ100mm、厚さ0.5mmの透明なガラス基板が挙げられる。
貼り合せ層3は、圧電基板1や第1の支持基板2から比較的容易に分離することができる物質で形成されている。例えば、貼り合せ層3は、液体によるエッチング、加熱またはレーザ照射等によって、溶解若しくは分解し、または圧電基板1との密着性が低下若しくは消失する特性を有するものである。レーザ照射等によって圧電基板1との密着性が低下または消失する特性を有するものとしては、光硬化性樹脂が挙げられる。
また、第1の支持基板2の一方の面に、剥離層(不図示)が形成されていてもよい。
剥離層は、例えば、液体によるエッチング、加熱またはレーザ照射等によって溶解もしくは分解し、または第1の支持基板2や貼り合せ層3のいずれかもしくは両方との密着性が低下または消失する特性をもつ。一例として、剥離層は、特許文献2に開示のWSSで用いられる光熱変換層によって実現される。この光熱変換層は、光吸収材及び熱分解性樹脂を含む。光熱変換層にレーザ光などの形態で照射された放射エネルギーは、光吸収剤によって吸収され、熱エネルギーに変換される。そして、発生した熱エネルギーによって樹脂が熱分解して、ガスが発生する。発生したガスは光熱変換層内でボイド層(空隙)となり、光熱変換層を2つに分離し、支持基板と被支持基板とが分離される。
次に、図1(d)に示すように、圧電基板1の第2の主面1b上に複数の溝4を形成する。溝4は、液体吐出ヘッドの圧力室、空気室及びインク流路として使用される。溝4の用途によって、厚み方向Xに関する各溝4の寸法(以下、「溝深さ」と称する)や、溝4が延びる長さ方向Y及び厚み方向Xと交わる幅方向Zに関する各溝4の寸法(以下、「溝幅」と称する)がそれぞれ異なっていてもよい。
具体的には、図1(d)に示される溝4は、第2の電極10が形成された領域とは反対側の第2の主面1bの領域に形成されることが好ましい。第2のマーク13の位置によって第2の電極10が形成された領域が把握されるため、第2のマーク13を基準にして溝4を形成することによって、第1の主面1aの中央付近の第2の電極10に対応した位置に溝4が形成される。溝4が第2の電極10に対応した位置に形成されることによって、少なくとも溝4の側面4aを含む圧電基板1の面に形成される第1の電極5(図1(e)参照)も、第2の電極10に対応した所望の位置に形成される。
本発明では、圧電基板1の第1の主面1a全体が第1の支持基板2で支持された状態で溝4が形成されるため、特許文献1に記載の方法とは異なり、圧電基板1の縁部が圧電基板1の厚み方向に曲げられることはない。そのため、より大判でより薄い圧電基板1であっても、圧電基板1の破損を招くことなく複数の溝4を圧電基板1に形成することができる。その結果、より高い密度で配置された吐出口を有し、大判印刷に対応可能な液体吐出ヘッドの製造が容易になる。
また、第1及び第2のマーク9、13によって、第1の主面1aに形成される第2の電極10と、第2の主面1bに形成される溝4や第2の主面1bの側に形成される第1の電極5と、の位置を比較的高い精度で合わせることができる。その結果、より高い吐出性能を有する液体吐出ヘッドの製造が容易になる。
ここで、吐出性能とは、より多くのインクを吐出する能力や、複数の吐出口間の吐出均一性を高める能力や、より高い位置精度で着弾させる能力である。このような能力は、第2の電極10の位置に対する溝4や第1の電極5の位置のずれを小さくすることによって向上することが知られている。
溝4の形成方法としては、超砥粒ホイールによる研削加工が好適である。一例として、複数の溝4は、長さ方向Yに関する溝4の寸法(以下、「溝長さ」と称する)を50mm、溝幅を0.1mm、溝深さを0.12mmとし、隣り合う溝間の間隔を0.2mmとして80本形成された周期溝である。この例では、溝4の底面と第1の主面1aとの間の寸法(以下、「溝底厚さ」という)は0.08mmとなる。
このように形成された複数の溝4を有する圧電基板1を、反射光及び透過光を照射して顕微鏡を用いて観察したが、圧電基板1にはひび割れは確認されなかった。
なお、圧電基板1と第1の支持基板2とを貼り合せることなく圧電基板1に溝加工を施すと、溝加工の途中または溝加工の前後のハンドリング(圧電基板1を比較的強い力で掴むことをいう)において、圧電基板1にひび割れが容易に発生する。このようなひび割れは、溝4の底面を起点に生じることが多い。
次に、図1(e)に示すように、溝4の側面4a(図1(d)参照)、溝4の底面4b(図1(d)参照)に第1の電極5を形成する。溝4を形成した後に残存した第2の主面1bのうちの少なくとも一部に第1の電極5を形成してもよい。溝4を形成した後に残存した第2の主面1bの一部に、第1の電極パッド6を形成する。
また、第1の電極5の形成と同時に第2の主面1b上に複数の電極配線(不図示)を形成する。当該複数の電極配線のうちのいくつかを用いて、第1の電極5のうち、いくつかの溝4の側面に形成された電極5aを第1の電極パッド6と電気的に接続する。
当該複数の電極配線のうちの、電極5aと接続されていない電極配線を用いて、第1の電極5のうち、当該いくつかの溝4と隣り合う溝4の側面に形成された電極5bを第2の電極パッド11と電気的に接続する。但し、第1の電極パッド6と第2の電極パッド11とは、電気的に分離されている。
第1の電極5、第1の電極パッド6、第2の電極パッド11及び第2の主面1b上の電極配線(不図示)の形成方法は、上述した、第2の電極10などと同じでよい。
続いて、第1の電極パッド6と第2の電極パッド11の間に電界をかけて、溝4の側部及び溝部に分極処理を施す。圧電基板1に分極処理を施す方法を、図2を用いて説明する。なお、図1に示されるものと同一の構成要素については、同一の符号を用いて簡単な説明にとどめることとする。
圧電基板1が第1の支持基板2に貼り合せる前に圧電基板1に分極処理が施されていない場合、圧電基板1に電極5、10を形成した後に圧電基板1に分極処理を施す必要がある。この場合、圧電基板1の分極は、圧電基板1に第1の支持基板2が貼り合わされた状態で行う。
図2(a)は、本実施形態の分極形態であり、図2(b)および図2(c)は、他の分極方法の一例を示している。
第1の電極5のうち、いくつかの溝4の側面及び底面に形成された電極5aは、電極配線(不図示)によって圧電基板1の第2の主面1b上に形成された第1の電極パッド6と電気的に接続されている。第1の電極5のうち、当該いくつかの溝4と隣り合う溝4の側面に形成された電極5bは、電極配線(不図示)によって圧電基板1の第2の主面1b上に形成された第2の電極パッド11と電気的に接続されている。
また、圧電基板1の第1の主面1a上には第2の電極10が形成されている。第2の電極10は、圧電基板1の側面1c(図1(a)参照)上に形成された電極配線12を介して第2の電極パッド11と電気的に接続されている。但し、第1の電極パッド6と第2の電極パッド11とは、電気的に分離されている。
第1の電極パッド6と第2の電極パッド11の間に電界をかけて、溝4の側部及び底部に分極処理を施す。分極の主方向は、図2(a)の矢印16で示されている方向である。
圧電基板1に分極処理を施す際、圧電基板1の材料の特性に合わせて、電界強度を設定する。例えば、電界強度を1.5kV/mmに設定する。また、必要に応じて、圧電基板1を昇温した状態で分極処理を施す。例えば、圧電基板1を100℃に保った状態で電界をかける。圧電基板1に分極処理を施す際の電界による圧電基板1の絶縁破壊を防ぐために、圧電基板1を絶縁性液体(例えば、シリコンオイル)に浸漬した状態で分極処理を施してもよい。
圧電基板1の分極後、必要に応じてエージング処理を行う。つまり、分極処理が施された圧電基板1を昇温した状態で一定の時間に保持することによって、その圧電特性を安定化させる。エージング処理は、例えば、100℃のオーブンに、分極処理が施された圧電基板1を10時間放置する。
次に、図2(b)を用いて2つ目の分極例を説明する。図2(b)に示される例では、溝4の両側面にのみ第1の電極5が形成されており、第1の主面1aには電極が形成されていない。また、第2の主面1bには第1の電極パッド6a、6bが形成されている。但し、第1の電極パッド6a、6bは互いに電気的に分離されている。
第1の電極5のうち、隣り合う溝4同士の間の壁の一方の側面に形成された電極5cは、第1の電極パッド6a,6bのうちの一方の電極パッド6aと電極配線(不図示)によって電気的に接続されている。第1の電極5のうち、隣り合う溝4同士の間の壁の他方の側面に形成された電極5dは、第1の電極パッド6a,6bのうちの他方の電極パッド6bと電極配線(不図示)によって電気的に接続されている。
第1の電極パッド6a,6bの間に電界をかけて、溝4の側部に分極処理を施す。分極の主方向は、図2(b)の矢印16で示されている方向である。分極条件及びエージング処理条件は、図2(a)に示す例で説明したものと同じである。
続いて、図2(c)を用いて3つ目の分極例を説明する。図2(c)に示される例では、隣り合う溝4同士の間に残存している第2の主面1bにのみ第1の電極5が形成されており、第1の主面1a全体に第2の電極10が形成されている。
第1の電極5は、電極配線(不図示)によって圧電基板1の第2の主面1b上に形成された第1の電極パッド6と電気的に接続されている。第2の電極10は、圧電基板1の側面1c(図1(a)参照)上に形成された電極配線12を介して第2の電極パッド11と電気的に接続されている。
第1の電極パッド6と第2の電極パッド11の間に電界をかけることによって、溝4の側部に分極処理を施す。分極の主方向は、図2(c)の矢印16で示されている。分極条件及びエージング処理条件は、図2(a)に示す例で説明したものと同じである。
本発明では、圧電基板1と第1の支持基板2とが貼り合わせられた状態で溝4の側部や底部に電界をかけることができるため、圧電基板1に割れが生じることなく圧電基板1に所望の圧電特性を持たせることが可能になる。
続いて、圧電基板1と第2の支持基板とを接合してから圧電基板1から第1の支持基板2を分離する方法について、図3を用いて説明する。
まず、図3(a)に示すように第2の支持基板7上に、第3のマーク14を形成する。第3のマーク14は、第1のマーク9(図1参照)の形成方法を用いて形成することができる。図3(a)では、第3のマーク14は、第2の支持基板7の厚さ方向で対向する面のどちらに形成されていてもよい。図3(a)では、図面で上方を向く面に形成されているが、図面で下方を向く面に形成されていてもよい。
次に、図1を用いて説明した工程まで行われた圧電基板1を用意し、図3(b)に示すように、圧電基板1の第2のマーク13と、第2の支持基板7の第3のマーク14を用いて、圧電基板1と第2の支持基板7との位置合わせを行う。
その後、圧電基板1と第2の支持基板7を図3(c)に示すように、圧電基板1の第2の主面1bと第2の支持基板7とを接合する。このとき、圧電基板1は、第2の支持基板7の一方の面に接合される。第2の支持基板7は、溝加工を施した圧電基板1よりも大きい曲げ剛性を有していることが好ましい。
第2の支持基板7の、圧電基板1と貼り合わせられる一方の面は第2の主面1bと同じ大きさかそれよりも大きく、第2の主面1bが一方の面と合致するようにまたは一方の面内に貼り合わせられることが好ましい。
溝加工後の圧電基板1の曲げ剛性の値については、最も剛性が低くなる、溝4の底部での曲げ剛性の値とすればよい。溝4の底部での曲げ剛性は、圧電基板1の材料定数と溝4の形状で簡単に算出することができる。
第2の支持基板7は平板で良い。平板の曲げ剛性は材料定数と板厚で決まるので、第2の支持基板7を平板とすることによって第2の支持基板7の曲げ剛性を簡単に算出することができる。
液体吐出ヘッドが製造されるまでに、第2の支持基板7と貼り合わされた圧電基板1を、第2の支持基板7とともに加工し、加熱することがある。このような工程での加工のしやすさや加熱時の熱膨張を考慮して、第2の支持基板7は、圧電基板1と同質な材料であることが好適である。一例として、第2の支持基板7は、圧電基板1と同質な材料で、厚さが2mmである。また、第2の支持基板7上に、インク流路や電極配線を形成してもよい。
圧電基板1と第2の支持基板7との接合は、例えば、接合層8を介して行う。接合層8としては、熱硬化性樹脂が挙げられる。
接合層8を介した第2の支持基板7と圧電基板1との接合強度は、貼り合せ層3を介した第1の支持基板2と圧電基板1との接合強度より十分に強いことが望ましい。一例として、接合層8を介した第2の支持基板7と圧電基板1との接合強度は、3MPa以上である。これは、市販の接着剤で簡単に実現できる強度である。接合の手順として、例えば、接合層8を圧電基板1の第2の主面1b上に転写方法で塗布してから圧電基板1と第2の支持基板7とを貼り合せて、加圧加熱条件下で接合する。
次に、図3(d)に示すように、圧電基板1から第1の支持基板2を分離する。一例として、特許文献2のWSSで用いられる分離方法が挙げられる。WSSの分離方法では、第1の支持基板2は透明なガラス基板であり、透明な第1の支持基板2の表面に、レーザ照射により分解する剥離層(不図示)が形成されている。当該剥離層は、透明な第1の支持基板2を透過するレーザ照射によって分解するので、透明な第1の支持基板2は貼り合せ層3から簡易に分離される。
貼り合せ層3は比較的低い剛性を有する樹脂である。したがって、貼り合せ層3は圧電基板1の第1の主面1aから簡易に剥がされる。貼り合せ層3を第1の主面1aから剥がすには、例えば、粘着テープを貼り合せ層3の表面に貼りつけて、当該粘着テープを引っ張ればよい。
圧電基板1と貼り合せ層3と分離した後、必要に応じて、圧電基板1の洗浄を行う。洗浄方法として、プラズマによるドライ洗浄、または溶剤或いはジェット流体によるウェット洗浄がある。
圧電基板1の第2の主面1b全体が、第2の支持基板7の一方の面に貼り合わされ、第2の支持基板7に支持されている。そのため、第1の支持基板2を圧電基板1から分離する際に、圧電基板1は厚み方向Xに曲がることがなく、圧電基板1は破損しない。
圧電基板1は、第2の支持基板7が貼られた状態で液体吐出ヘッドを構成する部品の1つとなる。圧電基板1により多くの溝4を形成すれば、圧電基板1により多くの圧力室を設けることができ、吐出口をより高い密度で設けることができる。その結果、より高い密度で配置された吐出口を有し、大判印刷に対応可能な液体吐出ヘッドの製造が容易になる。
図4は複数の圧電基板を積層して、2次元的に配列する圧力室を有する圧電基板モジュールを製造する工程を示している。まず、図4(a)に示すように、上述の工程で作成された、1つの溝4を有する第1の圧電基板11と、3つの溝4を有する第2の圧電基板12とを用意する。用いて説明する。なお、溝4は任意の数でよい。
第2の圧電基板12の第1の主面12aは第1の支持基板2と貼り合わせられており、第2の圧電基板12の、第1の主面12aとは反対側の第2の主面12bには、3つの溝4が形成されている。また、第2の圧電基板12には、第1、第2及び第4のマーク9,13,15が第1の圧電基板11と同じように形成されている。
第2の圧電基板12を用意したところで、第2の支持基板7上の第3のマーク14と、第2の圧電基板12の第4のマーク15とを用いて、第2の支持基板7と第2の圧電基板12との位置合わせを行う。このようにすることによって、第1の圧電基板11に形成された溝4や電極の位置と、第2の圧電基板12に形成された溝4や電極の位置とを合わせることができる。
その後、図4(b)に示すように、第2の圧電基板12の第2の主面12bと、第1の圧電基板11の第1の主面11aとを、接合層8を介して接合し、第1の圧電基板11と第2の圧電基板12とが積層されて、一体となる積層体17を形成する。第1の圧電基板11と第2の圧電基板12の溝4の延びる方向は一致している。
第2の圧電基板12の厚さや溝の形状、電極の位置といった構成は、液体吐出ヘッドの設計に応じて、第1の圧電基板11の構成と異なってもよい。以降の圧電基板1N(Nは2以上の整数)についても同様である。
次に、図4(c)に示すように、第2の圧電基板12から支持基板2(図4(d)参照)を分離する。
続いて、図4(d)に示すように、図4(b)及び図4(c)に示した接合及び剥離を第Nの圧電基板1N(Nは2以上の整数)まで複数回繰り返し(図4(d)ではN=5)、上述の工程で作成された圧電基板1を所定の枚数を積層する。その結果、N枚の圧電基板11,12,・・・,1Nが積層されてなる積層体17が得られる。
各圧電基板11,12,・・・,1Nの接合において、第2の支持基板7の第3のマーク14を共通のマークとして位置合せを行うので、溝や電極をより高い精度で位置合わせすることができる。
最後に接合される第Nの圧電基板1Nの溝4には、電極が形成されていなくてもよい。また、必要に応じて、図4(e)に示すように、積層体17を保護する保護基板18を第Nの圧電基板1Nの第1の主面1Naに接合する。一例として、保護基板18は、第Nの圧電基板1Nと同質の材料からなり、第2の支持基板7よりも厚みの薄いものである。保護基板18としては、例えば厚さ0.2mmの部材である。なお、上述したように、本発明では、圧電基板1の溝4を形成するときに、圧電基板1が損傷しにくいので、保護基板18の厚さは、特許文献1や特許文献2の方法で作成した圧電基板の積層体の補助基板より薄くすることができる。
第Nの圧電基板1Nと第N−1の圧電基板1N-1とを接合する際に、第Nの圧電基板1Nの第2のマーク13と、第N−1の圧電基板1N-1の第1のマーク9を利用して第Nの圧電基板1Nと第N−1の圧電基板1N-1とを位置合わせしてもよい。
例えば、第2の圧電基板12と第1の圧電基板11とを接合するとき、第1の圧電基板11の第1のマーク9と、第2の圧電基板12の第2のマーク13を用いて、第2の圧電基板12と第1の圧電基板11との位置を合わせる。同様に、第4の圧電基板14と第3の圧電基板13と接合するとき、第3の圧電基板13の第1のマーク9と第4の圧電基板14の第2のマーク13を用いて、第4の圧電基板14と第3の圧電基板13との位置を合わせる。
各圧電基板11,12,・・・,1Nの分極は、上述で説明したように各圧電基板11,12,・・・,1Nが積層される前に行われてもよく、図4(c)および図4(d)に示すように積層体17が形成された後で一括して行われてもよい。
図4(d)および(e)に示される積層体17において、例えば、他の溝4に挟まれた溝4(以降、「溝4P」とする)を液体吐出ヘッドの圧力室とし、その他の溝4(以降、「溝4A」とする)を液体吐出ヘッドの空気室とする。この場合、1つの圧力室の周囲に4つの空気室が形成されている。
本実施形態の場合、1つの溝4を有する第1の圧電基板1と、3つの溝4を有する第2の圧電基板1とを交互に配置している。そのため、各圧電基板11,12,・・・,1Nの主面に沿った方向に複数の溝4が各圧電基板11,12,・・・,1Nに周期的に配置されている。したがって、空気室に囲まれている圧力室が2次元に積層体17に配置されることになる。各圧力室に対応して吐出口を形成すれば、2次元に配置された吐出口を有する液体吐出ヘッドが製造される。
図4(d)および図4(e)に示すように、圧力室(溝4P)を囲む4つ面の壁は、例えば、矢印16で示されるような方向に分極処理が施されている。圧力室の壁に駆動信号を印加することによって、圧力室の壁を変位させて、圧力室内に充填されているインク(不図示)を吐出できる。圧力室の壁が厚み方向に同時に変位する場合、いわゆるグールド方式の駆動になる。
この方式は、分極方向が異なる2つの圧電部材からなる隔壁で隔てられ、この隔壁の表面には電極がそれぞれ設けられている。この電極にパルス電圧が印加されて隔壁が変形することで、圧力室内の容積および圧力が変化し、吐出口から圧力室内のインクが吐出される、いわゆるシェアモード方式の駆動になる圧電基板モジュールにも適用が可能である。
図4(d)および(e)では、積層方向において、圧力室(溝4P)は、圧力室の中心が積層方向と斜めに交差する直線上に来るように配置されている。例えば、第N−n−1の圧電基板1N-n-1と第N−nの圧電基板1N-nで形成された圧力室(溝4P)について考える。なお、nは2以上N−2以下の整数である。第N−n−1の圧電基板1N-n-1と第N−nの圧電基板1N-nで形成された圧力室の中心に対し、第N−n+1の圧電基板1N-n+1と第N−n+2の圧電基板1N-n+2で形成された圧力室の中心を、積層方向と直交する方向へ距離dだけをずらす。
より具体的には、第1の圧電基板11と第2の圧電基板12で形成された圧力室(溝4P)の中心に対し、第3の圧電基板13と第4の圧電基板14で形成された圧力室の中心を積層方向と直交する方向へ所望の距離dだけずらす。このようにすることによって、積層方向と直交する方向における印字密度は、各圧電基板11,12,・・・,1Nに形成された溝の配列密度よりもさらに高くなる。一例として、各圧電基板1の主面内における各圧力室(溝4P)を432μmの周期で複数に形成する。この圧電基板1を積層し、圧力室(溝4P)を10層とした場合、前記距離dを43.2μmにすると、圧電基板1の主面と直行する方向において、1インチ当たり600個の吐出口密度が得られる。これは、この方向において、600dpiの印字密度を得ることができることを意味している。
なお、必要に応じて、圧力室の中心が積層方向と所望の距離dだけずれた構成と、圧力室の中心が積層方向と平行な直線上に配置される構成とを組み合わせてもよい。
図5および図6は複数の圧電基板1を積層した積層体17を積層方向に切断して、複数の圧電基板モジュールを作成する工程を表す。ここでは、圧電基板1の切断方法を中心に説明する。
上述した圧電基板1の積層体17において、溝4の一部を圧電基板モジュールの圧力室にすることができる。例えば、長さが3mmの圧力室を有する液体吐出ヘッドを製造する場合、溝長さ50mmの溝が形成されている圧電基板1の積層体17を切断すれば1つの積層体17から圧電基板モジュールを最多で16個形成できる。
図5(a)は、圧電基板1が積層されてなる積層体17の斜視図であり、保護基板18がある場合を示す。図5(b)は、図5(a)の積層体を切断したときの斜視図である。
また、図6(a)は、圧電基板1が積層されてなる積層体17の斜視図であり、保護基板18がない場合を示す。図6(b)は、図6(a)の積層体を切断したときの斜視図である。
積層体17を、圧電基板1の積層方向に切断して複数の圧電基板モジュールに分割する。図6(b)に示される例では、積層体17、第2の支持基板7及び保護基板18は4つの圧電基板モジュール19、20、21、22に分割されている。
各圧電基板モジュール19、20、21、22の大きさは、液体吐出ヘッドの設計寸法に応じて決定される。積層体17の切断によって得られた各圧電基板モジュール19、20、21、22は、各圧電基板モジュール19、20、21、22の最終的な設計寸法よりも0.1mm〜2mm程度大きいことが好ましい。
積層体17を分割する方法として、超砥粒ホイールによる研削や、ワイヤソーによる切断などがある。
積層体17を分割して各圧電基板モジュール19、20、21、22とした後、必要に応じて、各圧電基板モジュール19、20、21、22の切断端面を研磨して、平面出しと同時に寸法調整を行う。また、研磨によって、圧電基板1上に形成された電極の端面を露出させる。
図5(c)は、図5(b)に示される圧電基板モジュール22の、破線Dで囲まれた断面部分を拡大した図である。図5(c)に示されるように、圧電基板モジュール22の切断端面には、圧力室(溝4P)、空気室(溝4A)、圧力室の内壁に形成された電極5a及び10aの端面、並びに圧力室の外壁に形成された電極5b,10bの端面が露出している。
図6(a)および図6(b)に示すように、保護基板18がない場合においても、上述の保護基板18がある場合と同じ工程を行うことで、複数の圧電基板モジュール19’、20’、21’、22’を得ることができる。
図7は複数の圧電基板モジュールを用いて、液体吐出ヘッド基板を製造する方法を示す斜視図である。図7(a)、図7(b)は、圧電基板モジュール22が保護基板18を有する場合、図7(c)、図7(d)は、圧電基板モジュール22が保護基板18を有していない場合である。
図7(a)に示すように、駆動信号を供給するための電極配線(不図示)を圧電基板モジュール22に形成する。電極配線は、圧電基板モジュール22の切断端面に金属の配線を設けることによって形成される。
電極配線は、例えば、次のように形成する。圧力室(溝4P、図5(c)参照)の内壁に形成された電極5aを1本の電極配線と電気的に接続する。それぞれの圧力室4Pの内壁の電極5aと接続された電極配線は、それぞれ電気的に分離されている。一方、各空気室(溝4A、図5(c)参照)に形成された電極5bをすべて連結して、共通の電極配線に接続する。
すると、各圧力室4Pの壁は、それぞれ独立して駆動される。もちろん、各圧力室4Pの内壁の電極5aに同じ電気信号を同時に与えて、各圧力室4Pを同時駆動させることも可能である。
電極配線は、圧電基板モジュール22(図5(b)参照)の切断端面に分散して形成すればよい。
次に、後方絞りプレート23を用意する。後方絞りプレート23は、例えば、圧電基板モジュール22の各圧力室4Pに対応する位置に各圧力室4Pへのインク供給と流抵抗制御機能を持つ貫通穴24が形成されたSi基板である。後方絞りプレート23の貫通穴24の開口は、圧力室4Pの開口よりも小さい。
また、後方絞り板23には、圧電基板モジュール22の切断端面に対応して配置された電極(不図示)と、引き出し配線(不図示)によって、圧電素子を駆動する電気入力用の配線部材と、接続するための電極パッド25が形成されている。
後方絞りプレート23を圧電基板モジュール22の一方の切断端面(例えば、図6(b)に示される圧電基板モジュール22の、紙面に対して奥側の端面)の電極配線が分散して形成された面に接合する。後方絞りプレート23は、例えば接着剤を用いて圧電基板モジュール22と接合される。圧電基板モジュール22の端面に後方絞りプレート23を接合する際に、電極同士が接続されて電気的につながる。なお、保護基板18の外側の表面と、後方絞りプレート23の端部とが重なるようにすることが好ましい。
次に、圧力室4Pの内壁に形成された電極5a、空気室4Aの内壁に形成された電極5b、及び電極配線の表面に絶縁膜を形成する。但し、電極配線のうち、配線部材の電極に接続される部分には絶縁膜を形成しない。絶縁膜は、例えば、パリレンの薄膜であり、化学気相堆積(CVD)法で絶縁膜を形成する。
次に、オリフィスプレート26を用意する。圧電基板モジュール22の他方の切断端面(例えば、図5(b)に示される圧電基板モジュール22の、紙面に対して手前側の端面)に接合する。オリフィスプレート26は、例えば接着剤を用いて圧電基板モジュール22と接合される。
オリフィスプレート26は、例えば、圧電基板モジュール22の各圧力室4Pに対応する位置にインク滴の吐出口となる貫通穴27が形成された板である。このようなオリフィスプレート26は、例えば、Ni電鋳により形成されている。一例として、吐出口の直径は10μmの円孔であり、オリフィスプレート26の厚さは20μmである。必要に応じて、オリフィスプレート26の全表面または一部の表面に撥水または親水処理する。
このようにして、図7(b)に示すような、液体吐出ヘッド基板28が出来上がる。
なお、図7(c)に示す、圧電基板モジュール22’が保護基板18を有していない場合でも、上述の圧電基板モジュール22が保護基板18を有する場合と同様な工程を行うことで、図7(d)に示す液体吐出ヘッド基板28’が出来上がる。
図8は、複数の液体吐出ヘッド基板を用いて、ワイドアレイヘッド配列ユニットを製造する方法を説明する平面図である。図8(a)は、液体吐出ヘッド基板が保護基板18を有する場合、図8(b)は、液体吐出ヘッド基板が保護基板18を有していない場合である。
図8(a)及び図8(b)に示すように、インクの導入口と排出口を持つ共通液室部(不図示)を有し、複数の液体吐出ヘッド基板28を所望の精度で配列、接合および固定するための略矩形状をしたベースプレート29を用意する。
ベースプレート29の液体吐出ヘッド基板28が貼り合わされる面は、貼り合わせ基準となるよう平面が形成されている。
保護基板18を有する液体吐出ヘッド基板28の場合、ベースプレート29の平面上に複数のヘッド基板28を、圧電基板モジュール22の保護部材18が接合された側を互いに対向させて、近接させて千鳥状に配列し接合する(図8(a)参照)。このとき、ベースプレート29の長手方向に向かって、液体吐出ヘッド基板28は複数配置されることになる。
保護基板18を有さない液体吐出ヘッド基板28’の場合、第1の支持基板7とは反対側に位置する圧電基板1同士を互いに対向させて、かつ、近接または当接させて千鳥状に配列し接合する。
液体吐出ヘッド基板28、28’をこのように配置することで、互いに近接または当接する液体吐出ヘッド基板28、28’の、オリフィスプレート26の貫通孔27が連続して配置されることになる。そのため、液体吐出ヘッドの、記録媒体の相対移動方向(液体吐出ヘッドの短手方向)に対して、ノズル列を狭く並べることが可能となる。したがって、印刷の高速化、高画質化に有利なワイドアレイ型液体吐出ヘッドを提供することが可能となる。
次に、液体吐出ヘッド基板の他の配置方法を、図9を用いて説明する。上述したように、圧力室(溝)4Pの配列を、圧電基板1の積層方向に対して斜めにすることで、記録媒体の相対移動方向に対し、ドットが同一ピッチであり、かつ高い印字密度を実現することができる。そこで、複数の液体吐出ヘッド基板28、28’を用いて、圧力室4Pの配列をさらに圧電基板1の積層方向に連続させることで、より高い印字密度を実現することができる。
図9(a)に示すように、向かい合う液体吐出ヘッド基板28’の一部が接触するように、液体吐出ヘッド基板28を、圧力室4Pにインクを供給用の孔を有するベースプレート29に貼り合わせる。このとき、向かい合う液体吐出ヘッド基板28’同士のつなぎ目の部分でも、圧力室4Pに対応する、吐出口である貫通孔27を同一ピッチあるいは所定の精度内で配置する。
複数の液体吐出ヘッド基板28’同士の貼合わせは、液体吐出ヘッド基板28のオリフィスプレート26に形成された貫通孔27または、位置合わせマーク(不図示)を基準にして行われる。なお、オリフィスプレート26に形成された位置合わせマークは貫通孔27と同時に同一プロセスで形成される。
一方、位置合わせマークを使わない方法として、図9(b)に示すように、保護基板18を用いる場合には、対向させて配列する液体吐出ヘッド基板28’の、互いに近接した液体吐出ヘッド基板28の角部に切欠き30を設ける。その切欠き30同士を付き当てて貫通孔27の配列精度を確保する方法があげられる。なお、位置合わせマークと同様、オリフィスプレート26に形成された切欠き部30は、オリフィス27と同時に同一プロセスで形成される。
図8に示すように、上述の工程で作成したワイドアレイ型液体吐出ヘッドでは、液体吐出ヘッド基板28の圧電素子を駆動する電気入力のための電極パッド25がベースプレート29の長手方向に沿って(外周に沿って)に並ぶ。この電極パッド25に、配線部材30(例えばフレキシブル基板)を接続させる(図10参照、保護基板なし)。接続方法は電極パッド25と配線部材30とをワイヤボンディングしてもよいし、異方性導電接着フィルム(ACF:Anisotropic conductive Film)で接続してもよい。配線部材30は、ベースプレート29の端部でおり曲げられ、ベースプレート29の形状に沿うように配設される。
最後に、インクの導入口、およびインクの排出口に接続するインク流路部品、またはその他の必要な部品を組み立てて、ワイドアレイ型液体吐出ヘッドが完成する。
次に、液体吐出ヘッドの、記録媒体の相対移動方向に対する幅寸法を、さらに狭くする方法を提供する。
圧電基板モジュール22に接合する配線付き後方絞りプレート23(図7参照)の、圧電素子を駆動する電気入力のための電極パッド25を、圧電基板1の積層方向と直交する方向に配置する。これにより、ベースプレート29に液体吐出ヘッド基板28が配列された状態で、電極パッド25はワイドアレイ型液体吐出ヘッドの短手方向に平行に並ぶ。
この構成で、配線部材30(例えばフレキシブル基板)を、電極パッド25に接続させる。接続方法は上記と同様である。
ベースプレート29には予め電極パッド25の並びと同一方向に長穴31が、電極パッド25にそれぞれ対応して設けられており、その長穴31を通して配線部材30がワイドアレイ型液体吐出ヘッドに配設される。
以上で説明したように、本発明の液体吐出ヘッドの製造方法によれば、大判でより薄い圧電基板を用いても、溝4の形成時に圧電基板の破損を抑えることができる。また、積層させた圧電基板を補強基板などで挟む必要がない。そのため、液体吐出ヘッド基板が小さくなり、液体吐出ヘッドを小型化することができる。また、液体吐出ヘッド基板を千鳥状に配置することで、より高い密度の記録を行うことができる。