本発明の実施の形態を、図面を参照しながら説明する。
<第1の実施形態>
〔マスターモールド〕
まずは、第1の実施形態に係るインプリントモールドの製造方法において用いられるマスターモールドについて説明する。図1は、第1の実施形態におけるマスターモールドの斜視図であり、図2は、図1に示すマスターモールドのA−A線断面図である。
図1及び図2に示すように、マスターモールド10は、例えば半導体ウェハ等のウェハ12の片側である一方の面10aに凹凸構造14が形成されている。
凹凸構造14は、例えば、後述する被転写材料にその形状を転写するための構造体である。図1及び図2においては、凹凸構造14として6本の凸状ラインが例示されているが、凹凸構造14の凸部の高さ(凹部の深さ)、ピッチ、数、配置面積(ウェハ12の一方の面10aに対する凹凸構造14の形成領域の占有面積)、形状(ライン状、ドット状等)等は特に限定されるものではなく、使用する場面に応じてそれらは適宜設定され得る。また、凹凸構造14の寸法(凹凸構造14がラインアンドスペース状である場合、ライン又はスペースの短手方向の幅)は、特に限定されるものではないが、例えば、40nm以下、好ましくは10〜30nmである。
半導体ウェハ等のウェハ12としては、一般に、電子線(EB)リソグラフィ法(電子線描画装置)にて使用可能なウェハを用いることができ、200mm(8インチ)ウェハ、又はそれよりも大きいウェハ(例えば300mm(12インチ)ウェハ等)を用いることもできる。なお、200mmウェハとは、直径の規格値が200mmのウェハであり、300mmウェハとは、直径の規格値が300mmのウェハである。直径の規格値が200mm又は300mmであるとは、厳密な意味での200mm又は300mmではなく、200mm又は300mmを中心として±1mmの許容範囲を有することを意味する。
ウェハ12の厚さは、特に制限されるものではないが、強度や取扱性を考慮して300μm〜1mmの範囲であるのが好ましい。ウェハ12を構成する材料としては、シリコン、ガリウム砒素、窒化ガリウム等の半導体、これらの積層体等が用いられ得る。凹凸構造14がドライエッチングにより形成されることから、微細加工を容易に、かつ高精度に行うことが可能なシリコンウェハが好適に用いられ得る。ウェハ12は、半導体基板にガラス等からなる支持基板が接合されたものであってもよい。なお、ウェハとは、円盤状の板体であって、例えば、組成管理された素材で作製された円柱状のインゴットを薄くスライスすることによって得られるものである。また、ウェハの周縁付近の側面にはノッチやオリフラが形成されていてもよい。
〔マスターモールドの作製方法〕
上述のようなウェハ12をベースとするマスターモールド10において、凹凸構造14は、電子線リソグラフィ法と、側壁法及び/又は自己組織化法との組み合わせにより形成される。具体的には、図3又は図4に示す工程を経て形成される。図3は、第1の実施形態におけるマスターモールド10の作製工程であって、電子線リソグラフィ法と側壁法との組み合わせにより凹凸構造14を形成する工程を概略的に示す断面図であり、図4は、第1の実施形態におけるマスターモールド10の作製工程であって、電子線リソグラフィ法と自己組織化法との組み合わせにより凹凸構造14を形成する工程を概略的に示す断面図である。
まず、電子線リソグラフィ法と側壁法との組み合わせにより凹凸構造14を形成する工程を説明する。最初に、電子線リソグラフィ法によりレジストパターンRpを形成する。図3(A)に示すように、ウェハ12の一方の面10a上に形成されたレジスト膜に、電子線描画装置を用いてパターン潜像を形成し、現像することでレジストパターンRpを形成する。なお、ウェハ12の一方の面10a上には、少なくとも一層のハードマスク層(図示せず)等が設けられていてもよい。
レジストパターンRpを形成するために用いられる電子線描画装置としては、特に限定されるものではなく、例えば、1本の電子線を用いてパターンを描画するシングルビーム方式の電子線描画装置、複数の電子線を用いてパターンを描画するマルチビーム方式の電子線描画装置等を用いることができる。なお、寸法が極微細なレジストパターンRpを形成するためには、電子線描画装置において極小スポットビームを走査させる必要があるため、パターン潜像を形成するのに膨大な時間を要し、マスターモールド10の生産性が低下するおそれがあるが、マルチビーム方式の電子線描画装置を用いることで、マスターモールド10の生産性を向上させることができる。
レジストパターンRpの寸法は、特に限定されるものではないが、マスターモールド10の凹凸構造14の寸法の約2倍程度に設定することができる。例えば、マスターモールド10の凹凸構造14の寸法が20nmである場合、レジストパターンRpの寸法は40nm程度である。
レジストパターンRpは、後述する側壁パターン形成工程(図3(D))により側壁パターンWpを形成するための芯材Cとしての役割を果たすものであり、側壁パターンWpは芯材Cの側壁に形成されることから、側壁パターン形成工程(図3(D))後の芯材C及び側壁パターンWpの高さ(厚さ)は略同一となる。
この側壁パターンWpは、後述するエッチング工程(図3(F))においてウェハ12をエッチングするためのエッチングマスクとしての役割を果たすものである。そのため、側壁パターンWpの高さ(厚さ)は、側壁パターンWp及びウェハ12のそれぞれを構成する材料のエッチング選択比にもよるが、ウェハ12のエッチング処理中に側壁パターンWpが消失してしまわない程度の高さ(厚さ)であることが要求される。
一方で、後述する芯材形成工程(図3(B))において、レジストパターンRpをスリミング処理に付することで芯材Cが形成されるため、芯材Cの高さ(厚さ)は、レジストパターンRpの高さ(厚さ)よりも低く(薄く)なる。したがって、レジストパターンRpの高さ(厚さ)は、後述する芯材形成工程(図3(B))におけるスリミング量等を考慮して、側壁パターンWpに要求される高さ(厚さ)よりも高く(厚く)しておく必要がある。
なお、第1の実施形態において、レジストパターンRpを構成するレジスト材料としては、電子線の照射面積を考慮して、ネガ型、ポジ型のいずれかを選択して使用することができ、またこれらの化学増幅型を使用してもよい。
続いて、側壁法により微細な側壁パターンWpを形成する。図3(B)に示すように、ウェハ12の一方の面10a上に形成したレジストパターンRpに対しスリミング処理を施して、当該レジストパターンRpを細らせた芯材Cを形成する(芯材形成工程)。レジストパターンRpのスリミング処理は、例えば、ウェットエッチング法、ドライエッチング法、それらの組み合わせ等により実施することができる。
レジストパターンRpのスリミング量は、特に限定されるものではないが、マスターモールド10の凹凸構造14がラインアンドスペース状である場合、当該凹凸構造14におけるスペース寸法(短手方向の幅)がレジストパターンRpのスリミング処理により形成される芯材Cの寸法に依存するため、当該凹凸構造14におけるスペース寸法に応じてレジストパターンのスリミング量を設定すればよい。通常、芯材Cの寸法がレジストパターンRpの約半分となるように、スリミング量が設定される。
続いて、図3(C)に示すように、芯材Cを含むウェハ12の一方の面10a上に、側壁パターンWpを構成する側壁材料膜Wmを形成し(側壁材料膜形成工程)、図3(D)に示すように、RIE(Reactive Ion Etching)等の異方性エッチングによりエッチバックして、芯材Cの側壁に側壁パターンWpを形成する(側壁パターン形成工程)。
側壁材料膜Wmは、シリコン系材料(シリコン酸化物等)の側壁材料をALD法(Atomic layer deposition)、CVD法、スパッタリング法等の従来公知の成膜法により堆積させることで形成され得る。第1の実施形態のように、芯材Cの構成材料としてレジスト材料を用いる場合、より低温で成膜可能であり、かつ原子層レベルで膜厚コントロールが可能なALD法により側壁材料膜Wmを形成するのが望ましい。
マスターモールド10における凹凸構造14の寸法(凹凸構造14がラインアンドスペース状である場合、ライン又はスペースの短手方向の幅)は、この側壁材料膜Wmの成膜厚さに依存するため、側壁材料膜Wmの成膜厚さは、凹凸構造14の設計寸法に応じて設定され得る。
エッチバックにより形成される側壁パターンWpは、ウェハ12のエッチングマスクとして用いられるものであるため、側壁パターンWpの高さTWP(ウェハ12の厚さ方向に平行な方向の長さ)は、ウェハ12の構成材料に対応したエッチング選択比等を考慮して適宜設定される。
その後、図3(E)に示すように、側壁に側壁パターンWpが形成された芯材Cをアッシング(酸素含有ガスを用いたプラズマアッシング等)により除去する(芯材除去工程)。これにより、芯材Cのみが除去され、ウェハ12の一方の面10a上に側壁パターンWpを残存させることができる。
続いて、図3(F)に示すように、側壁パターンWpをマスクとして用いてウェハ12をドライエッチング法により選択的にエッチングし、凹凸構造14を形成する(エッチング工程)。ウェハ12がシリコン製である場合、フッ素系のガスを用いたドライエッチングを行うのが好ましい。
このようにして、ウェハ12の一方の面10a上に凹凸構造14が形成されてなるマスターモールド10を得ることができる。そして、マスターモールド10用基板として石英基板よりも加工精度(エッチング精度)の優れたウェハ12を用いるため、従来に比して製造誤差の影響を抑え、高精度の凹凸構造14を有するマスターモールド10を作製することができる。また、図3に示すように、電子線リソグラフィ法と側壁法とを組み合わせることで、電子線リソグラフィ法により形成可能な凹凸構造の寸法の縮小化を図ることができ、電子線リソグラフィ法によっても形成困難又は形成不可能な寸法の凹凸構造14を高精度に形成することができる。
なお、上述した工程において、一例としてレジストパターンRpを芯材Cとして利用する態様を示したが、本発明はこのような態様に限定されるものではない。例えば、電子線描画装置により形成されたレジストパターンRpをもとに、シリコン酸化物等の無機材料により構成される芯材Cを形成してもよい。また、レジストパターンRpを芯材Cと略同一寸法で形成可能な限り、レジストパターンRpをスリミングする工程(図3(B)参照)を省略してもよい。
続いて、電子線リソグラフィ法と自己組織化法との組み合わせにより凹凸構造14を形成する工程を説明する。
まずは、電子線リソグラフィ法によりレジストパターンRpを形成する。図4(A)に示すように、ウェハ12の一方の面10a上に形成されたレジスト膜に、電子線描画装置を用いてパターン潜像を形成し、現像してレジストパターンRpを形成する。
レジストパターンRpを形成するために用いられる電子線描画装置としては、特に限定されるものではなく、例えば、1本の電子線を用いてパターンを描画するシングルビーム方式の電子線描画装置、複数の電子線を用いてパターンを描画するマルチビーム方式の電子線描画装置等を用いることができる。なお、寸法が極微細なレジストパターンRpを形成するためには、電子線描画装置において極小スポットビームを走査させる必要があるため、パターン潜像を形成するのに膨大な時間を要し、マスターモールド10の生産性が低下するおそれがあるが、マルチビーム方式の電子線描画装置を用いることで、マスターモールド10の生産性を向上させることができる。
得られるレジストパターンRpは、後述する自己組織化材料の相分離によるパターン形成のためのガイドパターンとしての役割を果たすものである。そのため、マスターモールド10の一方の面10aに形成される凹凸構造14が実質的に等ピッチのラインアンドスペース形状である場合、隣接するレジストパターンRp,Rpの間隔DRPが当該凹凸構造14の寸法(ライン又はスペースの短手方向の幅)の整数倍、好ましくは奇数の整数倍となるようにレジストパターンRpを形成する。
また、形成されるレジストパターンRpは、後述する工程においてエッチングにより除去され(図4(C)参照)、ウェハ12におけるレジストパターンRpの存在していた領域がエッチングされる(図4(D)参照)。そのため、上記凹凸構造14が実質的に等ピッチのラインアンドスペース形状である場合、レジストパターンRpの寸法(ラインの短手方向の幅)と凹凸構造14のスペース寸法(短手方向の幅)とは略同一であることを要する。したがって、レジストパターンRpの寸法がマスターモールド10の一方の面10aに形成される凹凸構造14の寸法と略同一となるようにレジストパターンRpを形成する。
なお、凹凸構造14の寸法と略同一寸法のレジストパターンRpは、上述した電子線リソグラフィ法により形成されてなるものであってもよいし、凹凸構造14の寸法よりも大きい寸法のレジストパターンを形成した後、ウェットエッチング法、ドライエッチング法、それらの組み合わせ等によるスリミング処理を当該レジストパターンに施すことで形成されてなるものであってもよい。
続いて、自己組織化法により微細なパターンを形成する。
図4(B)に示すように、ウェハ12の一方の面10a上のレジストパターンRp,Rp間に、異なる2成分を含む自己組織化材料を塗布し、所定の温度でベークすることにより、自己組織化材料の相分離を引き起こさせる。自己組織化材料の相分離の際にレジストパターンRpがガイドパターンとしての役割を果たすため、自己組織化材料は、ガイドパターンであるレジストパターンRpに対して親和性の高い一方の成分からなるパターンSA1と、他方の成分からなるパターンSA2とに相分離され、各パターンSA1,SA2がレジストパターンRpに沿って交互に整列する。
自己組織化材料としては、相互に溶解し難い構造を有する異なる2種類のポリマーからなるブロック共重合体を用いることができ、例えば、ポリスチレン−ポリメチルメタクリレート(PS−PMMA)、ポリスチレン−ポリジメチルシロキサン(PS−PDMS)等のブロック共重合体等を用いることができる。なお、ブロック共重合体を構成する2種類のポリマーは、エッチング耐性の異なるもの(特定のエッチャントに対するエッチング耐性の高いものと低いもの)であるのが好ましい。
自己組織化材料の相分離により形成されるパターンSA1,SA2の寸法は、自己組織化材料としてのブロック共重合体の分子量により決定される。そのため、マスターモールド10の凹凸構造14の寸法に応じて、自己組織化材料として用いるブロック共重合体の分子量は適宜設定され得る。
次に、図4(C)に示すように、レジストパターンRp及び他方の成分からなるパターンSA2をエッチングにより除去し、一方の成分からなるパターンSA1のみをウェハ12の一方の面10a上に残存させる。
続いて、図4(D)に示すように、パターンSA1をマスクとして用いてウェハ12をドライエッチング法により選択的にエッチングし、凹凸構造14を形成する(エッチング工程)。ウェハ12がシリコン製である場合、フッ素系のガスを用いたドライエッチングを行うのが好ましい。
このようにして、ウェハ12の一方の面10a上に凹凸構造14が形成されてなるマスターモールド10を得ることができる。そして、マスターモールド10用基板として石英基板よりも加工精度(エッチング精度)の優れたウェハ12を用いるため、従来に比して製造誤差の影響を抑え、高精度の凹凸構造14を有するマスターモールド10を作製することができる。また、図4に示すように、電子線リソグラフィ法と自己組織化法とを組み合わせることで、電子線リソグラフィ法により形成可能な凹凸構造の寸法の縮小化を図ることができ、電子線リソグラフィ法によっても形成困難又は形成不可能な寸法の凹凸構造14を高精度に形成することができる。
なお、上述のようにして得られるマスターモールド10は、凹凸構造14の形成領域全体が非凹凸構造の領域(凹凸構造14の非形成領域)に対して凸構造13となっている、いわゆるメサ構造を有していてもよい(図7(A)参照)。マスターモールド10がメサ構造(凸構造13)を有している場合、メサ構造(凸構造13)の段差の数は1段に限定されるものではなく、複数段であってもよい。メサ構造(凸構造13)を有するマスターモールド10についての詳細は後述する。
また、上述のようにして得られるマスターモールド10の凹凸構造14として、凸状の構造を例に挙げて説明しているが、このような態様に限定されるものではなく、当該凹凸構造14が凹状の構造であってもよい。
〔コピーモールドの製造方法〕
次に、上述のようにして得られるマスターモールド10を用いてインプリントモールド(コピーモールド)を製造する方法について説明する。図5は、第1の実施形態におけるマスターモールド10と第1基板22との関係を模式的に示す斜視図である。
(マスターモールド・第1基板準備工程)
図5に示すように、マスターモールド10の一方の面10aに形成された凹凸構造14が第1基板22の一方の面22aに対向するように、マスターモールド10を配置する。なお、第1基板22は、マスターモールド10の凹凸構造14を反転させた第1凹凸構造24が形成されてなるコピーモールド20(図10(E)参照)を構成する基板である。
第1の実施形態においては、マスターモールド10を用いて、マスターモールド10よりも寸法の小さい第1基板22の一方の面22a上に、凹凸構造14を反転させた第1凹凸構造パターン19が形成される(図10(C)参照)。すなわち、図6に示すように、マスターモールド10と第1基板22とは、マスターモールド10の一方の面10aの外形で規定されるエリアSmと、第1基板22の一方の面22aの外形で規定されるエリアSpとを対比したときに、エリアSmがエリアSpを物理的に包含する関係にある。
第1の実施形態において「エリアSmがエリアSpを物理的に包含する関係」とは、図6に示すように、マスターモールド10の一方の面10aの外形で規定されるエリアSmと、第1基板22の一方の面22aの外形で規定されるエリアSpとを重ね合わせたときに、エリアSpがエリアSmに完全に覆われ(包摂され)、かつエリアSmの面積(一方の面10a側から見たときの面積)が、エリアSpの面積(一方の面22a側から見たときの面積)よりも大きい関係を意味する。
図7に示すように、マスターモールド10に形成された凹凸構造14の領域全体が凸構造13となっている、いわゆるメサ構造である場合、マスターモールド10の一方の面10aの外形で規定されるエリアSmとは、メサ構造である凸構造13の外形(図示例の場合、寸法βの矩形)で規定されるエリアではなく、マスターモールド10の最外部の外形(図示例の場合、寸法αの円形)で規定されるエリアを意味する。メサ構造が複数段である場合も同様であって、エリアSmとは、最外部の外形(図示例の場合、寸法αの円形)で規定されるエリアを意味する。なお、図7(A)は、マスターモールド10と第1基板22との関係を模式的に示す断面図であり、図7(B)は、図6に相当する図面であって、マスターモールド10の一方の面10aの外形(図示例の場合、寸法αの円形)で規定されるエリアSmと、第1基板22の一方の面22aの外形(図示例の場合、寸法γの矩形)で規定されるエリアSpとの関係において、エリアSmがエリアSpを物理的に包含する関係にあることを説明する平面図である。
マスターモールド10の一方の面10aの外形と第1基板22の一方の面22aの外形とは、例えば相互に円形状(○形状)のような相似形であってもよいし、円形状(○形状)と矩形状(□形状)のような全く異なる外形であってもよい。特に好ましくは、ウェハにより構成されるマスターモールド10の一方の面10aの外形が円形状(○形状)であり、第1基板22の一方の面22aの外形が矩形状(□形状)である。すなわち、ウェハにより構成されるマスターモールド10の一方の面10aに形成された凹凸構造14が、矩形状の第1基板22の一方の面22aに転写されるのが好ましい。
第1基板22が矩形状(□形状)であることで、第1基板22により構成されるコピーモールド20をインプリント処理に用いるとき、第1基板22の側壁22b(図10(E)参照)を加圧して保持することができ、それによりコピーモールド20と他の基板(インプリント処理によりコピーモールド20の第1凹凸構造24が転写される基板)との位置合わせ精度を確保することができる。なお、矩形状とは、四辺が実質的に直線により構成された図形であって、頂点がラウンド形状になっている形状等も包含する。好適な外形を備える第1基板22としては、いわゆる「6025基板」を挙げることができる。「6025」基板とは、6インチ角で厚さが0.25インチの規格に沿って作製された基板である。
このように、第1の実施形態においては、ウェハ12に形成された凹凸構造14を、一般的なインプリント装置でモールドとして用いられる矩形状の基板(第1基板22)に転写することで、扱う基板の寸法及び外形を変換することができる。
第1基板22にマスターモールド10の凹凸構造14を転写してパターンを形成するに際しては、光インプリント法、熱インプリント法のいずれかを採用することができる。光インプリント法を採用する場合、マスターモールド10を構成するウェハ12として汎用の半導体ウェハが用いられている場合には光(紫外線)を透過することができないため、第1基板22として、例えば、石英ガラス、珪酸系ガラス、フッ化カルシウム、フッ化マグネシウム、アクリルガラス等のガラスや、ポリカーボネート、ポリプロピレン、ポリエチレン等の樹脂等、又はこれらの任意の積層材からなる透明基板を用いるのが好ましい。
一方、熱インプリント法を採用する場合には、第1基板22は必ずしも透明基板である必要はなく、例えば、ニッケル、チタン、アルミニウム等の金属基板、シリコン、窒化ガリウム等の半導体基板等を用いてもよい。
第1基板22の一方の面22a上には、図示しないハードマスク層が形成されていてもよい。ハードマスク層を構成する材料としては、Cr、Ti、Ta、Al等の金属材料、シリコン酸化物等を例示することができる。ハードマスク層は、蒸着法、スパッタ法、CVD法等を用いて形成され得る。
また、第1基板22は、その一方の面22a上に、マスターモールド10に形成された凹凸構造14に対向する凸構造27、いわゆるメサ構造を有するものであってもよい(図8参照)。このように、第1基板22の一方の面22a上に、マスターモールド10の凹凸構造14に対向する凸構造27が形成されていることで、後述する第1転写層形成工程(図10(B)参照)において、第1基板22が、被転写材料100を介してマスターモールド10の凹凸構造14のみに接触され得る。なお、メサ構造(凸構造27)の段差の数は、1段に限定されるものではなく、複数段であってもよい。
第1基板22がいわゆるメサ構造である凸構造27を有する場合、第1基板22の一方の面22aの外形で規定されるエリアSpは、メサ構造である凸構造27の外形で規定されるエリアではなく、第1基板22の最外部の外形(図8における寸法γの矩形)で規定されるエリアである。メサ構造(凸構造27)が複数段であっても同様である。
第1基板22の厚みは、特に制限されるものではなく、基板の強度、取扱適性等を考慮して設定され得るものであって、例えば、300μm〜10mm程度の範囲で適宜設定され得る。
さらに、第1基板22は、その一方の面22aに対向する他方の面22c側に凹構造28が形成されてなる、いわゆるザグリ構造を有するものであってもよい(図9(A)参照)。この場合において、凹構造28の平面視における大きさは、第1基板22の一方の面22a上における第1凹凸構造が形成されるべき領域AR1を他方の面22c側に投影した投影領域PA1が凹構造28の外形で規定される領域に物理的に包含される大きさであるのが好ましい(図9(B)参照)。さらにまた、第1基板22は、その一方の面22aに凸構造27が形成され、他方の面22cに凹構造28が形成されてなるものであってもよい(図9(C)参照)。この場合において、凹構造28の平面視における大きさは、第1基板22の一方の面22aに形成されている凸構造27の外形で規定される領域が凹構造28の外形で規定される領域に物理的に包含される大きさであるのが好ましい(図9(D)参照)。このように、第1基板22として、いわゆるザグリ構造を有する基板を用いることで、第1基板22により構成されるコピーモールド(第1モールド)20を、インプリント処理時における取扱性に優れたものとすることができる。
第1基板22が凹構造28を有する場合において、凹構造28の形成されている部分における第1基板22の厚みTh1は、基板の強度や剛性等を考慮して、500〜1500μmの範囲で適宜設定され得る。
なお、第1の実施形態に係るインプリントモールドの製造方法において、インプリント処理として光インプリントを例に挙げて説明するが、熱インプリントを採用してもよいことは上述したとおりである。
(被転写材料配設工程)
続いて、図10(A)に示すように、第1基板22の一方の面22a上に被転写材料100を配設する。被転写材料100としては、例えば、紫外線硬化性樹脂を用いることができる。なお、図10(A)においては、被転写材料100をインクジェット法により配設した例を示しているが、スピンコート法等の周知の塗布方法により被転写材料を配設してもよい。また、被転写材料100は、第1基板22側ではなくマスターモールド10の一方の面10a上に配設されてもよい。
(第1転写層形成工程)
次に、図10(B)に示すように、第1基板22の一方の面22a上の被転写材料100にマスターモールド10の一方の面10aを接触させる。被転写材料100の粘度にもよるが、毛管現象の働きによりマスターモールド10の凹凸構造14内に被転写材料100が充填される。なお、必要に応じて、マスターモールド10又は第1基板22を他方の面22a,10a側に押圧して、凹凸構造14内への被転写材料100の充填をアシストしてもよい。
このようにしてマスターモールド10と第1基板22との間に被転写材料100を介在させた状態で、第1基板22側から紫外線を照射して被転写材料100を硬化させ、凹凸構造14が転写された第1凹凸構造パターン19を有する第1転写層110を形成する。
上述したように、第1基板22は、その一方の面22a上に凸構造(いわゆるメサ構造)27を有するものであってもよい。この場合において、凸構造27がマスターモールド10の凹凸構造14に対向するようにして、マスターモールド10及び第1基板22が配置され、第1基板22は、マスターモールド10における転写されるべき構造としての凹凸構造14のみに被転写材料100を介して接触することになる(図8参照)。なお、第1基板22が凸構造27を有するメサ構造の基板として構成される場合、第1基板22の一方の面22aの外形で規定されるエリアSpは、メサ構造としての凸構造27の外形で規定されるエリアではなく、第1基板22の最外部の外形(図8における寸法γの矩形)で規定されるエリアである。メサ構造が複数段の場合も同様である。
(第1剥離工程)
次いで、図10(C)に示すように、被転写材料100を硬化させた後、マスターモールド10と第1転写層110とを引き離す。かかる引き離し操作の際、マスターモールド10側及び第1基板22側のいずれか一方から引き離しのための力を加えてもよいし、両方から引き離しのための力を加えてもよい。
マスターモールド10側に引き離しのための力を加える場合、第1転写層110に均一に力が伝わるようにしてもよいが、より引き離しを容易にするために第1転写層110に不均一に力が伝わるようにするのが好ましい。第1転写層110に不均一に力が伝わることで、マスターモールド10(第1転写層110)の剥離の開始点を作ることができ、それを起点としてスムーズな剥離操作を行うことができる。第1転写層110に不均一に力が伝わるような剥離方法として、以下の方法を好適に採用することができる。
(a)マスターモールド10側に引き離しのための力を加える力点の位置を調整する。
平面視において第1転写層110の最外周からの距離が異なる位置であって、マスターモールド側の位置に複数の力点を設定し、当該複数の力点に対して一律に引き離しのための力を加えることで、第1転写層110の最外周から最も離れた力点と第1転写層110の平面視における重心とを結ぶ線分上に剥離の起点が発生する。この剥離の起点から徐々にマスターモールド10と第1転写層110との剥離が進行する。
(b)マスターモールド10と第1基板22との合せ位置を調整する。
図10(B)〜(C)においては、マスターモールド10の中央部(平面視における中央部)に凹凸構造14が形成され、この凹凸構造14が第1基板22の中央部(平面視における中央部)に転写されるように、マスターモールド10と第1基板22とが配置されている。すなわち、第1転写層形成工程(図10(B)参照)において、マスターモールド10と第1基板22との互いの中央部が平面視にて実質的に一致している。これに対し、第1転写層形成工程(図10(B)参照)において、マスターモールド10と第1基板22との互いの中央部を平面視にてずらすようにする。例えば、凹凸構造14をマスターモールド10の中央部から少しずれた位置に形成し、この中央部からずれた凹凸構造14が第1基板の中央部に転写されるように第1基板22を配置する。そして、マスターモールド10の外周部に複数の力点を設定すると、第1転写層110の最外周から最も離れた力点と第1転写層110の平面視における重心とを結ぶ線分上に剥離の起点が発生する。この剥離の起点から徐々にマスターモールド10と第1転写層110との剥離が進行する。
(残膜除去工程)
マスターモールド10と第1転写層110とを引き離した後、第1転写層110の残膜部分をエッチングにより除去する。これにより、図10(D)に示すように、被転写材料の硬化物により構成されるマスク120が第1基板22の一方の面22a上に形成される。
(第1凹凸構造形成工程)
マスク120をエッチングマスクとして、第1基板22の一方の面22a上をエッチングする。所定のエッチングが終了した後、マスク120を除去することで、図10(E)に示すように、第1基板22の一方の面22aに第1凹凸構造24が形成されたコピーモールド(第1モールド)20を製造することができる。
第1モールド20の第1凹凸構造24と、マスターモールド10の凹凸構造14は、凹と凸、凸と凹がそれぞれ反転した関係にある。
なお、第1の実施形態に係るインプリントモールドの製造方法において、使用する被転写材料100によっては、上記の残膜除去工程(図10(D)参照)、第1凹凸構造形成工程(図10(E)参照)を必須の工程としなくてもよい。被転写材料100として、主鎖がケイ素原子のみからなる高分子、溶媒、高分子と溶媒とを相溶させるシリコーン化合物、高分子化合物のSi−Si結合間に効率よく酸素を挿入可能な増感剤、金属等の硬度調整材料を含むものを使用し、第1転写層110と第1基板22とを合わせて第1モールド20とすることもできる。
第1の実施形態におけるインプリントモールド(コピーモールド20)の製造方法によれば、マスターモールド10が石英基板よりも加工精度の優れたウェハ12により構成されることで高精度の凹凸構造14を有するため、コピーモールド20の製造工程における製造誤差の影響を抑えることができる。よって、高精度の第1凹凸構造24を有するコピーモールド(第1モールド)20を製造することができる。
第1の実施形態においては、図11に示すように、上述のようにして得られる第1モールド20を用い、第1モールド20の第1凹凸構造24をさらに反転させた第2凹凸構造34(マスターモールド10の凹凸構造14に対応する凹凸構造)を第2基板32上に形成してなるコピーモールド(第2モールド)30を製造してもよい。当該コピーモールド(第2モールド)30の製造方法を、以下に説明する。
(第1モールド・第2基板準備工程)
図11(A)に示すように、第1モールド20の第1凹凸構造24が第2基板32の一方の面32aに対向するように、第1モールド20を配置する。なお、第2基板32は、第1モールド20の凹凸構造24を反転させた第2凹凸構造34が形成されてなるコピーモールド30(図11(F)参照)を構成する基板である。
第2基板32の外形は、第1モールド20のベースとなる第1基板22の外形と一致するものであってもよいし、異なるものであっていてもよい。また、第2基板32を構成する材料、その厚さ等に関しては、第1基板22のそれらと略同様のものを例示することができる。
第2基板32の一方の面32a側には、図示しないハードマスク層が形成されていてもよい。ハードマスク層を構成する材料としては、Cr,Ti,Ta,Al等の金属材料、シリコン酸化物等が挙げられる。ハードマスク層は、蒸着法、スパッタ法、CVD法等を用いて形成され得る。
第2基板32は、第2凹凸構造34が形成される領域が凸構造となっている、いわゆるメサ構造を有する基板であってもよい。この場合において、1段の凸構造を有するものに限らず、複数段の凸構造を有するものであってもよい。
(被転写材料配設工程)
続いて、図11(B)に示すように、第2基板32の一方の面32a上に被転写材料200を配設する。被転写材料200としては、例えば、紫外線硬化性樹脂を用いることができる。なお、図11(B)においては、被転写材料200をインクジェット法により配設した例を示しているが、スピンコート法等の周知の塗布方法により被転写材料を配設してもよい。また、被転写材料200は、第2基板32側ではなく、第1モールド20における第1凹凸構造24の形成されている面(第1基板22における一方の面22a)上に配設されてもよい。
(第2転写層形成工程)
次に、図11(C)に示すように、第2基板32の一方の面32a上の被転写材料200に第1モールド20を接触させる。被転写材料200の粘度にもよるが、毛管現象の働きにより第1モールド20の第1凹凸構造24内に被転写材料200が充填される。なお、必要に応じて、第1モールド20又は第2基板32を他方の面側に押圧して、第1凹凸構造24内への被転写材料300の充填をアシストしてもよい。
特に、第1モールド20(第1基板22)がいわゆるザグリ構造を有する(他方の面22cに凹構造28を備える)場合(図9参照)、第2基板32の一方の面32a上の被転写材料200に第1モールド20を接触させる際に、第1モールド20(第1基板22)の一方の面22a側が凸になるように第1モールド20を湾曲させた状態で第2基板32の一方の面32a上の被転写材料200に接触させることができる(図12参照)。これにより、第1モールド20の接触により第2基板32の一方の面32a上に塗れ広がる被転写材料200内に気泡が取り込まれること等による転写欠陥の発生を抑制することができる。
このようにして第1モールド20と第2基板32との間に被転写材料200を介在させた状態で、第1モールド20側又は第2基板32側から紫外線を照射して被転写材料200を硬化させ、第1凹凸構造24が転写された第2凹凸構造パターン29を有する第2転写層210を形成する。
(第2剥離工程)
次いで、被転写材料200を硬化させた後、図11(D)に示すように、第1モールド20と第2転写層210とを引き離す。かかる引き離し操作の際、第1モールド20側及び第2基板32側のいずれか一方から引き離しのための力を加えてもよいし、両方から引き離しのための力を加えてもよい。
第1モールド20側に引き離しのための力を加える場合、第2転写層210に均一に力が伝わるようにしてもよいが、より引き離しを容易にするために第2転写層210に不均一に力が伝わるようにするのが好ましい。第2転写層210に不均一に力が伝わることで、第1モールド20(第2転写層210)の剥離の開始点を作ることができ、それを起点としてスムーズな剥離操作を行うことができる。
特に、第1モールド20(第1基板22)がいわゆるザグリ構造を有する(他方の面22cに凹構造28を備える)場合(図9参照)、第1モールド20と第2転写層210とを引き離す際に、第1モールド20(第1基板22)の一方の面22a側が凸になるように第1モールド20を湾曲させながら第1モールド20と第2転写層210とを引き離すことができる。これにより、第1モールド20(第2転写層210)の剥離の開始点を作ることができ、それを起点としたスムーズな剥離操作が可能となる。
(残膜除去工程)
第1モールド20と第2転写層210とを引き離した後、第2転写層210の残膜部分をエッチングにより除去する。これにより、図11(E)に示すように、被転写材料の硬化物により構成されるマスク220が第2基板32の一方の面32a上に形成される。
(第2凹凸構造形成工程)
マスク220をエッチングマスクとして、第2基板32の一方の面32a上をエッチングする。所定のエッチングが終了した後、マスク220を除去することで、図11(F)に示すように、第2基板32の一方の面32aに第2凹凸構造34が形成されたコピーモールド(第2モールド)30を製造することができる。
第2モールド30の第2凹凸構造34と、マスターモールド10の凹凸構造14は、凹と凹、凸と凸がそれぞれ対応した関係にある。
なお、第1の実施形態に係るインプリントモールドの製造方法において、使用する被転写材料200によっては、上記の残膜除去工程(図11(E)参照)、第2凹凸構造形成工程(図11(F)参照)を必須の工程としなくてもよい。被転写材料200として、主鎖がケイ素原子のみからなる高分子、溶媒、高分子と溶媒とを相溶させるシリコーン化合物、高分子化合物のSi−Si結合間に効率よく酸素を挿入可能な増感剤、金属等の硬度調整材料を含むものを使用し、第2転写層210と第2基板32とを合わせて第2モールド30とすることもできる。
上述したように、第1の実施形態に係るインプリントモールドの製造方法によれば、マスターモールド10が石英基板よりも加工精度の優れたウェハ12により構成されることで高精度の凹凸構造14を有するため、第1モールド20及び第2モールド30の製造工程における製造誤差の影響を抑えることができる。よって、高精度の第1凹凸構造24又は第2凹凸構造34を有する第1モールド20又は第2モールド30を製造することができる。また、製造された第1モールド20及び第2モールド30は、一般的なインプリント装置で使用可能であるため、インプリントの生産性向上が期待できる。さらに、ウェハにより構成されるマスターモールド10は、切断されることなくそのまま、第1モールド20を製造するためのインプリントモールドとして使用されるため、ウェハが有する平坦性を維持した状態で第1転写層形成工程(図10(B)参照)を実施することができ、より高精度なパターン形成が可能となる。
<第2の実施形態>
次に、図13を参照して、第2の実施形態に係るインプリントモールドの製造方法について説明する。
第2の実施形態に係るインプリントモールドの製造方法は、使用されるマスターモールド10’の凹凸構造14’は実質的に電子線リソグラフィ法のみによって形成され、当該凹凸構造14’を反転させて第1基板22の一方の面22aに転写する過程において、側壁法及び/又は自己組織化法を利用する点において第1の実施形態と異なるが、それ以外は第1の実施形態と略同様である。そのため、第1の実施形態におけるマスターモールド10、第1モールド20(第1基板22)及び第2モールド30(第2基板32)と同様の構成については同一の符号を付し、その詳細な説明を省略する。
まず、マスターモールド10’は、第1の実施形態とは異なり、ウェハ12の一方の面10a上に形成されたレジスト膜に、電子線描画装置を用いてパターン潜像を形成し、現像をしてレジストパターンRpを形成した後(図3(A)参照)、当該レジストパターンRpをマスクとして用いてウェハ12をドライエッチング法により選択的にエッチングし、凹凸構造14’を形成することで得られる。
上述のようにして得られるマスターモールド10’を用いて第1モールド20を製造する方法を説明する。図13は、第2の実施形態に係るインプリントモールド(コピーモールド,第1モールド20)を製造する工程を断面図にて示す工程フロー図である。
(マスターモールド・第1基板準備工程)
まず、マスターモールド10’の一方の面10aに形成された凹凸構造14’が第1基板22の一方の面22aに対向するように、マスターモールド10’を配置する(図5参照)。なお、第1の実施形態と同様に、マスターモールド10’と第1基板22とは、マスターモールド10’の一方の面10aの外形で規定されるエリアSmと、第1基板22の一方の面22aの外形で規定されるエリアSpとを対比したときに、エリアSmがエリアSpを物理的に包含する関係にある(図6、図7参照)。また、第1基板22としては、第1の実施形態において説明したものと同様のものを使用することができる。
(被転写材料配設工程)
続いて、第1基板22の一方の面22a上に被転写材料100を配設する(図10(A)参照)。
(第1転写層形成工程)
次に、図13(A)に示すように、第1基板22の一方の面22a上の被転写材料100にマスターモールド10’の一方の面10aを接触させる。このようにしてマスターモールド10’と第1基板22との間に被転写材料100を介在させた状態で、第1基板22側から紫外線を照射して被転写材料100を硬化させ、凹凸構造14’が転写された第1凹凸構造パターン19’を有する第1転写層110’を形成する。
(第1剥離工程)
次いで、図13(B)に示すように、被転写材料100を硬化させた後、マスターモールド10’と第1転写層110’とを引き離す。
(残膜除去工程)
マスターモールド10’と第1転写層110’とを引き離した後、第1転写層110’の残膜部分をエッチングにより除去する。これにより、図13(C)に示すように、被転写材料100の硬化物により構成されるパターン130が第1基板22の一方の面22a上に形成される。
続いて、以下のようにして側壁法を利用することで、マスターモールド10’の凹凸構造14’の寸法を縮小化してなる第1凹凸構造24を第1基板22の一方の面22a上に形成する。
図13(D)に示すように、第1基板22の一方の面22a上に形成したパターン130に対しスリミング処理を施して、当該パターン130を細らせた芯材C’を形成する。パターン130のスリミング処理は、例えば、ウェットエッチング法、ドライエッチング法、それらの組み合わせ等により実施することができる。
パターン130のスリミング量は、特に限定されるものではないが、通常、芯材C’の寸法がパターン130の約半分となるように、スリミング量が設定される。
なお、マスターモールド10’の凹凸構造14’が、図13(D)に示す芯材C’の凹部(溝部)に対応するように形成されていれば、上述のスリミング処理(図13(D)に示す工程)を省略することができる。
続いて、図13(E)に示すように、芯材C’を含む第1基板22の一方の面22a上に、側壁パターンWpを構成する側壁材料膜Wmを形成し、図13(F)に示すように、RIE(Reactive Ion Etching)等の異方性エッチングによりエッチバックして、芯材C’の側壁に側壁パターン(縮小凹凸構造)Wpを形成する。
側壁材料膜Wmは、シリコン系材料(シリコン酸化物等)の側壁材料をALD法(Atomic layer deposition)、CVD法、スパッタリング法等の従来公知の成膜法により堆積させることで形成され得る。第1の実施形態のように、芯材C’の構成材料としてレジスト材料を用いる場合、より低温で成膜可能であり、かつ原子層レベルで膜厚コントロールが可能なALD法により側壁材料膜Wmを形成するのが望ましい。
第1モールド20における第1凹凸構造24の寸法は、この側壁材料膜Wmの成膜厚さに依存するため、側壁材料膜Wmの成膜厚さは、第1凹凸構造24の設計寸法に応じて設定され得る。
エッチバックにより形成される側壁パターンWpは、第1基板22のエッチングマスクとして用いられるものであるため、側壁パターンWpの高さTWP(第1基板22の厚さ方向に平行な方向の長さ)は、第1基板22の構成材料に対応したエッチング選択比等を考慮して適宜設定される。
その後、図13(G)に示すように、側壁に側壁パターンWpが形成された芯材C’をアッシング(酸素含有ガスを用いたプラズマアッシング等)により除去する。これにより、芯材C’のみが除去され、第1基板22の一方の面22a上に側壁パターンWpを残存させることができる。
(第1凹凸構造形成工程)
最後に、図13(H)に示すように、側壁パターンWpをマスクとして用いて第1基板22をドライエッチング法により選択的にエッチングし、第1凹凸構造24を形成する。これにより、第1基板22の一方の面22aに第1凹凸構造24が形成されたコピーモールド(第1モールド)20を製造することができる。
上述したように、フォトリソグラフィ法により凹凸構造14’が形成されたマスターモールド10’を用いて第1モールド20を製造する過程において側壁法を利用することで、マスターモールド10’の凹凸構造14’よりも寸法が縮小されてなる第1凹凸構造24を形成することができる。
なお、第2の実施形態においては、以下のようにして自己組織化法を利用することで、マスターモールド10’の凹凸構造14’の寸法を縮小化してなる第1凹凸構造24を第1基板22の一方の面22a上に形成してもよい。
図13(D)に示すような、被転写材料の硬化物により構成されるパターン130を第1基板22の一方の面22a上に形成した後、図14(A)に示すように、第1基板22の一方の面22a上のパターン130,130間に、異なる2成分を含む自己組織化材料を塗布し、所定の温度でベークすることにより、自己組織化材料の相分離を引き起こす。自己組織化材料の相分離の際にパターン130がガイドパターンとしての役割を果たすため、自己組織化材料は、ガイドパターンであるパターン130に対して親和性の高い一方の成分からなるパターンSA1と、他方の成分からなるパターンSA2とに相分離され、各パターンSA1,SA2がパターン130に沿って交互に整列する。
自己組織化材料としては、相互に溶解し難い構造を有する異なる2種類のポリマーからなるブロック共重合体を用いることができ、例えば、ポリスチレン−ポリメチルメタクリレート(PS−PMMA)、ポリスチレン−ポリジメチルシロキサン(PS−PDMS)等のブロック共重合体等を用いることができる。なお、ブロック共重合体を構成する2種類のポリマーは、エッチング耐性の異なるもの(特定のエッチャントに対するエッチング耐性の高いものと低いもの)であるのが好ましい。
自己組織化材料の相分離により形成されるパターンSA1,SA2の寸法は、自己組織化材料としてのブロック共重合体の分子量により決定される。そのため、第1モールド20の第1凹凸構造24の寸法に応じて、自己組織化材料として用いるブロック共重合体の分子量は適宜設定され得る。
次に、図14(B)に示すように、パターン130及び他方の成分からなるパターンSA2をエッチングにより除去し、一方の成分からなるパターンSA1のみを第1基板22の一方の面22a上に残存させる。
最後に、パターン130をマスクとして用いて第1基板22をドライエッチング法により選択的にエッチングし、第1凹凸構造24を形成する(図13(H)参照)。これにより、第1基板22の一方の面22aに第1凹凸構造24が形成されたコピーモールド(第1モールド)20を製造することができる。
上述のようにして得られる第1モールド20の第1凹凸構造24は、凸状パターンであって、マスターモールド10’の凹凸構造14’よりも寸法が縮小されている。
なお、第2の実施形態において、上述のようにして得られる第1モールド20を用い、第1モールド20の第1凹凸構造24を反転させた第2凹凸構造34を第2基板32上に形成してなるコピーモールド(第2モールド)30を製造してもよい。当該コピーモールド(第2モールド)30の製造方法は、第1の実施形態と同様であるので、詳細な説明を省略する(図11参照)。
上述のように、第2の実施形態に係るインプリントモールドの製造方法によれば、マスターモールド10’用基板として石英基板よりも加工精度(エッチング精度)の優れたウェハ12を用いるため、従来に比して製造誤差の影響を抑え、高精度の凹凸構造14’を有するマスターモールド10’を作製することができる。また、一連の製造工程において電子線リソグラフィ法と側壁法又は自己組織化法とが組み合わせて利用されるため、電子線リソグラフィ法により形成困難又は形成不可能な寸法の第1凹凸構造24を有する第1モールド20の生産性向上に資する。さらに、製造された第1モールド20及び第2モールド30は、一般的なインプリント装置で使用可能であるため、インプリントの生産性向上が期待できる。さらにまた、ウェハにより構成されるマスターモールド10’は、切断されることなくそのまま、第1モールド20を製造するためのインプリントモールドとして使用されるため、ウェハが有する平坦性を維持した状態で第1転写層形成工程(図13(A)参照)を実施することができ、より高精度なパターン形成が可能となる。
<第3の実施形態>
次に、図15を参照して、第3の実施形態に係るインプリントモールドの製造方法について説明する。
第3の実施形態に係るインプリントモールドの製造方法において、マスターモールド10,10’と第1基板25とは、ともにシリコン単結晶基板により構成されている。そして、図15に示すように、マスターモールド10,10’の一方の面10aに形成された凹凸構造14,14’が、第1基板25の一方の面25aに対向するように、マスターモールド10,10’及び第1基板25が配置される。なお、図15において、実線矢印は劈開が起こる結晶方向を示している。
また、第1基板25上に描かれている点線Lは、マスターモールド10,10’を構成する基板の劈開が起こる結晶方向に沿った仮想線分を、第1基板25に投影して示したものである。なお、劈開が起こる結晶方向に沿った仮想線分とは、基板の主面と劈開面とが交わって形成される線分のことを意味する。
第3の実施形態においては、マスターモールド10,10’と第1基板25とが互いに口径の異なる半導体ウェハであり、第1基板25は、マスターモールド10,10’との間で、マスターモールド10,10’の所定のエリアSmが第1基板25の所定のエリアSpを物理的に包含する関係にある。さらに、第3の実施形態においては、互いに口径の異なる半導体ウェハの各主面の結晶面方位に対する劈開が起こる結晶方向に沿った仮想線分を平面視上互いに異ならせた状態で第1モールド20の作製工程が実施される。劈開が起こる結晶方向に沿った仮想線分を平面視上互いに異ならせることで、第1転写層形成工程(図10(B),図13(A)参照)における押付け(マスターモールド10,10’の第1基板25に対する押付け)や、第1剥離工程(図10(C),図13(B)参照)における引き離し力の印加時に、マスターモールド10,10’及び/又は第1基板25が破損するのを防止することができる。
例えば、各種面が結晶方位{100}のシリコン単結晶である場合には、結晶方向<110>に沿った仮想線分を互いに異ならせてマスターモールド10,10’と第1基板25とを対向させるのが好ましい。結晶面方位は{100}のように表され、これは(100)に代表され、結晶構造の対称性により(100)と等価となる面方位を表す。結晶方向は<100>のように表され、これは[100]に代表され、結晶構造の対称性により[100]と等価となる方向を表す。
<第4の実施形態>
次に、図16〜18を参照して、第4の実施形態に係るインプリントモールドの製造方法について説明する。図16は、第4の実施形態におけるマスターモールドを示す斜視図であり、図17は、第4の実施形態におけるマスターモールドの構成を示す、図16におけるB−B線断面図である。
第4の実施形態に係るインプリントモールドの製造方法においては、マスターモールド10,10’の所定のエリアSmが第1基板22の所定のエリアSpを物理的に包含する関係であることに加え、マスターモールド10,10’の凹凸構造14,14’の周囲に、被転写材料がマスターモールド10,10’の表面に沿って展開されやすい領域が設定されている。
図16及び図17に示すように、マスターモールド10,10’を構成するウェハ12の一方の面10aには、被転写材料にその形状を転写するための構造である凹凸構造14,14’を内側に含む第1領域16と、第1領域16の周囲に存在する第2領域18とが設定されている。第2領域18は、第1領域16に比べて被転写材料がマスターモールド10,10’の表面に沿って展開されやすい領域である。
第1領域16と第2領域18とは互いに離隔して配置されていてもよいし、両者が隣接していてもよい。このような双方の領域16,18の配置は、マスターモールド10,10’に対向させる第1基板22の外形や口径に応じて適宜設定されればよい。
第2領域18を被転写材料が展開されやすい領域とするために、第2領域18を、表面の濡れ性が第1領域16のそれよりも良好な領域とすることができる。例えば、第2領域18の表面を親水化処理することにより、第2領域18の表面の濡れ性を良好にすることができる。具体的には、ウェハ12の表面のうち少なくとも第2領域18に光触媒層が備えられ、当該光触媒層に光照射を行うことで、第2領域18の表面の水接触角を低下させることができる。また、第1領域16の表面に、選択的に疎水化処理を施してもよい。具体的には、第1領域16の表面に選択的に離型剤層を形成することで、第1領域16の表面を選択的に疎水化処理することができる。
また、第2領域18を被転写材料が展開されやすい領域とするために、第2領域18に流路が備えられていてもよい。流路による毛管現象を利用して、被転写材料がマスターモールド10,10’の表面に沿って展開されやすいものとすることができる。例えば、ダミーパターンのように被転写材料を内部に取り込むことのできる構造も、第4の実施形態における流路に含まれるものとする。このようなダミーパターンについて、図18を参照しつつ説明する。図18(A)は、マスターモールド10,10’の斜視図であり、図18(B)は、図18(A)のマスターモールド10,10’の一方の面10aに形成された凹凸構造14,14’が第1基板22の一方の面22aに対向するようにマスターモールド10,10’及び第1基板22を配置した後における、図18(A)のC−C線断面図である。
図18(A)及び(B)に示すように、第4の実施形態におけるマスターモールド10,10’は、一方の面10aに形成された、被転写材料に転写されるべき構造としての凹凸構造14,14’の周囲に、凹凸構造14,14’と同様のパターンからなるダミーパターン14’’が複数形成されている。このようなダミーパターン14’’は、マスターモールド10,10’を作製する過程において、凹凸構造14,14’を形成するためのマスクパターン(側壁パターンWp,パターンSA1等)と同時にダミーパターン14’’を形成するためのマスクパターン(側壁パターンWp,パターンSA1等)を形成し、エッチングにより凹凸構造14,14’とともに形成され得る。このエッチング時に、凹凸構造14,14’とともにダミーパターン14’’も形成されることにより、凹凸構造14,14’のエッチング精度を向上させることができる。また、形成されたダミーパターン14’’は、被転写材料を内部に取り込む流路としても活用され得る。
なお、図18(A)においては、凹凸構造14,14’の周囲に、4個のダミーパターン14’’を略均等に配置した構造を示しているが、ダミーパターン14’’の個数や配置形態に関し、このような態様に限定されるものではなく、種々の個数や配置形態を採択することができる。また、凹凸構造14,14’とダミーパターン14’’とのパターン形状は相互に同一であってもよいし、異なっていてもよい。
さらに、図18(B)において、第1基板22は、好ましい態様として、マスターモールド10,10’に形成された凹凸構造14,14’に対向させ得る凸構造13を有する基板(メサ構造の基板)として構成されている。そのため、第1転写層形成工程(図10(B),図13(A)参照)において、第1基板22は、転写されるべき構造としての凹凸構造14,14’のみに被転写材料100を介して接触することになる。
以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上記実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。
上記実施形態において、マスターモールド10の凹凸構造14又は第1モールド20の第1凹凸構造24を、電子線リソグラフィ法と、側壁法又は自己組織化法との組み合わせにより形成する例を示したが、本発明はこのような態様に限定されるものではなく、電子線リソグラフィ法と、側壁法と、自己組織化法とを組み合わせて凹凸構造14又は第1凹凸構造24を形成してもよい。
また、側壁法又は自己組織化法を2回以上繰り返して行い、凹凸構造14又は第1凹凸構造24を形成してもよい。この場合において、マスターモールド10及び第1モールド20の作製工程のいずれかにおいて、側壁法又は自己組織化法を2回以上繰り返し行ってもよいし、マスターモールド10及び第1モールド20の作製工程のそれぞれにおいて、側壁法又は自己組織化法を1回以上行ってもよい。特に、電子線リソグラフィ法により作製される凹凸構造14から、第1モールド20における第1凹凸構造24の目的寸法を得るために複数回の側壁法を実施する必要がある場合、マスターモールド10及び第1モールド20の作製工程のそれぞれに側壁法の必要回数を分散させることで、側壁パターンWpを構成する側壁材料の選択の幅を広げることも可能である。
上記第2の実施形態において、第1モールド20の第1凹凸構造24を、電子線リソグラフィ法と、側壁法又は自己組織化法との組み合わせにより、マスターモールド10’の凹凸構造14’の寸法を縮小化する方法を例に挙げて説明したが、本発明はこのような態様に限定されるものではなく、第1モールド20の第1凹凸構造24は、マスターモールド10’の凹凸構造14’と略同寸法のものとして形成され、第1モールド20を用いて第2モールド30を製造する際に、側壁法及び/又は自己組織化法を利用して、寸法を縮小させた第2凹凸構造34を形成してもよい。
上記実施形態において、マスターモールド10と第1基板22とが、マスターモールド10の一方の面10aの外形で規定されるエリアSmと、第1基板22の一方の面22aの外形で規定されるエリアSpとを対比したときに、エリアSmがエリアSpを物理的に包含する関係にある態様を例に挙げて説明したが、本発明はこのような態様に限定されるものではなく、マスターモールド10のエリアSmと第1基板22のエリアSpとが実質的に同一であってもよいし、エリアSpがエリアSmを物理的に包含する態様であってもよい。
上記実施形態においては、マスターモールド10,10’がウェハ12により構成されている態様を例に挙げて説明したが、本発明は少なくともマスターモールド10,10’がウェハ12により構成されている限りこのような態様に限定されるものではなく、第1基板22,25もウェハ12により構成されていてもよい。このような態様であれば、第1モールド20における製造誤差の影響をも抑えることができ、例えば石英基板により構成される第2モールド30における第2凹凸構造34の寸法のバラツキ等の製造誤差の影響を抑え、高精度の第2凹凸構造34を有する第2モールド30を製造することができる。
上記実施形態において、マスターモールド10が、いわゆるザグリ構造を有するウェハにより構成されていてもよい。