図1は、この発明に係るコンバータ機構の制御装置が前提とする無段変速機の断面図である。
図1において符号10は自動変速機を示す。自動変速機10は車両(図示せず)に搭載され、駆動源(エンジン(内燃機関)。以下「エンジン」という)12の回転を変速して左右の駆動輪(図示せず)に伝達する。後述する如く、自動変速機10はベルト式の無段変速機(以下「CVT」という)からなる。
図1に示す如く、自動変速機10は、互いに平行に設けられた入力軸(従動軸)14と出力軸16と中間軸20を備え、エンジン12の出力はトルクコンバータ(コンバータ機構)22を介して入力軸14から入力される。
トルクコンバータ22は、エンジン12の駆動軸(クランクシャフト)12aに固定されたドライブプレートを含むカバー部材24に結合されるポンプインペラ22aと、入力軸14に結合されるタービンランナ22bと、カバー部材24とタービンランナ22bの間に配置されてカバー部材24とタービンランナ22bを係合・解放自在なロックアップクラッチ(LC)22cからなる。
ロックアップクラッチ22cはピストン22c1を備え、ピストン22c1とカバー部材24との間には背圧室22c2が形成されると共に、ピストン22c1の背圧室22c2と反対側にはポンプインペラ22aとタービンランナ22bで構成されるコンバータ室22dが配置される。
トルクコンバータ22はコンバータ室22dを流動する作動流体を介してエンジン12の回転駆動力を変換して入力軸14に伝達する。この実施例で作動流体は作動油(具体的にはATF)を、流体圧は油圧(作動流体の圧力)を示す。
入力軸14と出力軸16の間には、CVT26が設けられる。
CVT26は、入力軸14に配設されたドライブプーリ30と出力軸16に配設されたドリブンプーリ32と、その間に巻き掛けられた金属製のベルト34からなる。ドライブプーリ30とドリブンプーリ32はそれぞれ対向配置された2個のシーブからなる。
ドライブプーリ30は入力軸14に相対回転不能で軸方向移動不能に設けられた固定側ドライブプーリ半体30aと、入力軸14に相対回転不能で固定側ドライブプーリ半体30aに対して軸方向移動自在に設けられた可動側ドライブプーリ半体30bからなる。
ドリブンプーリ32は、出力軸16に相対回転不能で軸方向移動不能に設けられた固定側ドリブンプーリ半体32aと、出力軸16に相対回転不能で固定側ドリブンプーリ半体32aに対して軸方向移動自在に設けられた可動側ドリブンプーリ半体32bからなる。
可動側ドライブプーリ半体30bと可動側ドリブンプーリ半体32bにはピストン室30b1,32b1が設けられ、可動側プーリ半体30b,32bはピストン室30b1,32b1に供給された油圧(側圧)に応じて固定側ドライブプーリ半体30aと固定側ドリブンプーリ半体32aに接近あるいは離間する。
ドライブプーリ30とドリブンプーリ32の間にはベルト34が巻き掛けられる。ベルト34は多数のエレメント(ブロック)34aとその両側に嵌められた2本のリング34bからなり、エレメント34aに形成されたV字面がドライブプーリ30とドリブンプーリ32のプーリ面と接触し、両側から強く挟持(押圧)された状態でエンジン12の回転駆動力をドライブプーリ30からドリブンプーリ32に伝達する。
入力軸14上には前後進切換機構36が設けられる。前後進切換機構36は遊星歯車機構40と前進クラッチ42と後進ブレーキクラッチ44からなる。
遊星歯車機構40は、固定側ドライブプーリ半体30aにスプライン結合されるサンギヤ40aと、入力軸14に結合されて入力軸14と一体に回転するリングギヤ40bと、入力軸14に対して相対回転自在に設けられたキャリヤ40cと、キャリヤ40cに回転自在に支承されたピニオンギヤ40dを有する。
各ピニオンギヤ40dは、サンギヤ40aとリングギヤ40bの双方と常時噛合する。サンギヤ40aとリングギヤ40bの間には前進クラッチ42が設けられ、キャリヤ40cと変速機ケース10cとの間には後進ブレーキクラッチ44が設けられる。
前進クラッチ42は、ピストン室42aに油圧が供給されるとき、クラッチピストンをリターンスプリングのばね力に抗して移動させることにより、サンギヤ40a側の摩擦板とリングギヤ40b側の摩擦板とを係合させてサンギヤ40aとリングギヤ40bを結合することで係合(インギヤ)され、車両を前進走行可能にする。
後進ブレーキクラッチ44は、ピストン室44aに油圧が供給され、ブレーキピストンをリターンスプリングのばね力に抗して移動させることにより、変速機ケース側10cの摩擦板とキャリヤ40c側の摩擦板とを係合させて変速機ケース10cとキャリヤ40cを結合することで係合され、車両を後進走行可能にする。
出力軸16には中間軸ドライブギヤ50が設けられると共に、中間軸20にはそれに噛合される中間軸ドリブンギヤ52とファイナルドライブギヤ54とが設けられる。ファイナルドライブギヤ54はディファレンシャル機構56のケースに固定されたファイナルドリブンギヤ60と常時噛合する。
ディファレンシャル機構56には左右のアクスルシャフト58が固定されると共に、その端部には駆動輪が取り付けられる。ファイナルドリブンギヤ60はファイナルドライブギヤ54と常時噛合し、中間軸20の回転に伴ってディファレンシャルケース全体を左右のアクスルシャフト58回りに回転させる。
CVT26にあっては、ドライブプーリ30とドリブンプーリ32の両プーリ側圧を増減させることによってプーリ幅を変化させ、ベルト34の両プーリ30,32に対する巻き掛け半径を変化させることで巻き掛け半径の比(プーリ比)に応じた所望の変速比(レシオ)を無段階に得ることができ、エンジン12の回転を無段階に変速することができる。
このように、CVT26は車両に搭載されるエンジン12の出力をトルクコンバータ22から入力し、ドライブプーリ30とドリブンプーリ32で変速して駆動輪に伝達して車両を走行させる。
そのとき、中間軸ドライブギヤ50は出力軸16と連結されて一体となって回転し、出力軸16に伝達された回転がさらに中間軸ドライブギヤ50から中間軸ドリブンギヤ52に伝達され、中間軸20が回転する。中間軸20の回転はディファレンシャル機構56とアクスルシャフト58を介して左右の駆動輪に伝達され、左右の駆動輪を駆動する。
上記したトルクコンバータ22のロックアップクラッチ22cの係合量、ドライブプーリ30などのプーリ幅、前進クラッチ42あるいは後進ブレーキクラッチ44の係合・非係合などは、背圧室22c2、ピストン室30b1,32b1,42a,44aに供給される油圧(流体圧)を調整することで制御される。
図2はCVT26の流体圧ポンプの固着判定装置の油圧回路図である。尚、図2に小さく示すx,Hxはドレンを示す。
以下、図2を参照して説明すると、符号64は油圧(流体圧)ポンプを示す。油圧ポンプ64はエンジン12により駆動され、油路66とストレーナ70を介してリザーバ72内の作動油(作動流体)を2個(複数)の吸入ポート64a,64bから汲み上げ、2個の吐出ポート64c,64dのうちの一方64cから油路(流体路)74を介してPHレギュレータバルブ76に送る。PHレギュレータバルブ76は油圧ポンプ64の吐出圧を車両の走行状態に応じて調整し、PH圧(ライン圧。高圧制御油圧)を生成して油路80に供給する。
油路80は一方では可動側ドライブプーリ半体30bと可動側ドリブンプーリ半体32bのピストン室30b1,32b1に接続されると共に、他方では分岐油路82を介してCRバルブ84に接続される。CRバルブ84は分岐油路82から供給されたPH圧を減圧してCR圧(低圧制御油圧)を生成する。
CRバルブ84が生成したCR圧はMODバルブ86に送られる。MODバルブ86はCR圧をさらに減圧したMOD圧を生成して油路90に出力する。
プーリ側の説明に戻ると、油路80には第1調圧バルブ92と第2調圧バルブ94が介挿される。第1、第2調圧バルブ92,94の内部には移動自在なスプールが収容される。スプールは一端側(図で右端)でスプリングによって他端側に付勢される。
第1、第2調圧バルブ92,94はスプールの一端側で油路96,100を介して第1、第2電磁ソレノイドバルブ(リニアソレノイドバルブ)102,104に接続される。第1、第2電磁ソレノイドバルブ102,104はCRバルブ84の出力端と第1、第2調圧バルブ92,94を接続する油路106に介挿される。
第1、第2電磁ソレノイドバルブ102,104においてその内部にそれぞれ収容されるスプールは通電量に応じた距離だけ変位し、CR圧を調整してDRC圧あるいはDNC圧を出力する。
出力されたDRC圧あるいはDNC圧は第1、第2調圧バルブ92,94のスプールの一端側に供給されて一部を排出ポート92a,94aから排出させることでスプールを変位させ、それによってPH圧を調圧して得た油圧PDR,PDNが油路110,112を介して可動側ドライブプーリ半体30bのピストン室30b1と可動側ドリブンプーリ半体32bのピストン室32b1に供給される。
このように油圧ポンプ64の吐出ポート64cとドライブプーリ30の可動側ドライブプーリ半体30bのピストン室30b1、ドリブンプーリ32の可動側ドリブンプーリ半体32bのピストン室32b1を接続する油路110,112を介して油圧ポンプ64によって生成された油圧がピストン室30b1,32b1に供給され、第1、第2電磁ソレノイドバルブ102,104への通電量が制御されることによってドライブプーリ30とドリブンプーリ32の側圧が増減されて変速比が制御される。
尚、可動側ドライブプーリ半体30bのピストン室30b1にはピストンが2個設けられ、ピストン室30b1も2つ形成される結果、受圧面積は2倍となり、DRC圧がDNC圧と同一のとき、軸推力は2倍となり、よって変速比は減少(OD側)となる。
トルクコンバータ22のロックアップクラッチ(LC)22cについて説明すると、CRバルブ84の出力端は油路114を介して第3電磁ソレノイドバルブ(リニアソレノイドバルブ(第2電磁弁))116に接続され、それから油路120を介してLC制御バルブ122とTC制御バルブ(制御弁)124に接続されると共に、油路114を介して切換バルブ126に接続される。
また、MODバルブ86の出力端は油路90を通じて切換バルブ126に接続され、切換バルブ126は油路130を介してLCシフトバルブ(切換弁)132に接続され、LCシフトバルブ132のスプールの一端(図で右端)にMOD圧を作用させ、図で左方に押圧する。
また、MODバルブ86の出力端はLCオン・オフ制御用の第4電磁ソレノイドバルブ(オン/オフソレノイドバルブ(第1電磁弁)。常開型)134にも接続され、その出力は油路136を介してLCシフトバルブ132のスプールの他端に作用させられ、スプールをMOD圧に抗して図で右方に押圧する。
LCシフトバルブ132はTC制御バルブ124に直列に接続される。TC制御バルブ124はPHレギュレータバルブ76から油路(第1流体路)142を介してライン圧を供給され、供給されたライン圧を油路144からLCシフトバルブ132に供給する。
即ち、LCシフトバルブ132は、油路130,136からの油圧で決定されるスプール位置で調整される開度に応じた油圧(作動油)を油路144から受け、油路(第2流体路)146を介してロックアップクラッチ22cの背面室22c2からコンバータ室22dに導入して油路150から排出させる(LC解放(オフ)時)解放位置と/あるいは逆に背圧室22c2に導入された油圧を油路146から排出させる(LC係合(オン)時)係合位置の間で切換自在に構成される。
最初にLC解放時を説明すると、その場合、第3、第4電磁ソレノイドバルブ116,134が共に消磁される。その結果、第3電磁ソレノイドバルブバルブ116の出力(LCC圧)は零となる一方、第4電磁ソレノイドバルブ134は常開型であるために出力は変化しない。
よってLCシフトバルブ132は図示の位置にあり、ライン圧は油路144からLCシフトバルブ132を介して油路146から背圧室22c2に送られ、次いでコンバータ室22dを通って油路150からLCシフトバルブ132を経て油路148に沿って排出される。これにより、ロックアップクラッチ22cはカバー部材24から離間させられて解放される。
次にLC係合時を説明すると、その場合、第3、第4電磁ソレノイドバルブ116,134が共に励磁される。第4電磁ソレノイドバルブ134は常開型であることから、励磁されることで油路136への出力は零となるため、LCシフトバルブ132のスプールを図で左動させる。その結果、ロックアップクラッチ22cの背圧室22c2に導入されていた作動油は油路146からLCシフトバルブ132を経て油路152を通ってLC制御バルブ122に流れ、その排出ポートから排出される。これにより、ロックアップクラッチ22cはカバー部材24に押圧されて係合される。
また、第3、第4電磁ソレノイドバルブ116,134が共に励磁される結果、第3電磁ソレノイドバルブ116からLCC圧が出力され、油路120を介してLC制御バルブ122とTC制御バルブ124に送られ、それらのスプールを図で左動させる。LC制御バルブ122のスプールの位置(排出ポートの大きさ)はLCC圧の多寡によって調整され、それに応じた量の作動油が背圧室22c2から排出されることでロックアップクラッチ22cの係合量が調整される。
また、TC制御バルブ124において、LCC圧で増圧されたライン圧は油路144からLCシフトバルブ132を通り、油路150からトルクコンバータ22のコンバータ室22dに送られ、次いで油路154を通って排出される。
このように、第3、第4電磁ソレノイドバルブ116,134の通電を制御することで、LCシフトバルブ132のスプール位置が調整され、油路146,150を介しての油圧の供給・排出が逆転させられてロックアップクラッチ22cの解放と係合が制御される。
次いで、前後進切換機構36の前進クラッチ/後進ブレーキクラッチ42,44の係合について説明すると、CRバルブ84の出力端は油路114から第5電磁ソレノイドバルブ(リニアソレノイドバルブ)156に接続され、それから油路160を介して切換バルブ126に接続される一方、油路114から直接切換バルブ126に接続される。
切換バルブ126は油路162を介してマニュアルバルブ164に接続される。マニュアルバルブ164のスプールは運転者のシフトレバー操作によるP,N,R,D,S,Lからなる変速レンジ(ポジション)の選択に応じて移動する。
マニュアルバルブ164の選択位置に応じて第5電磁ソレノイドバルブ156を励磁・消磁することでマニュアルバルブ164から油路166を介して前進クラッチ42のピストン室42a、あるいは油路170を介して後進ブレーキクラッチ44のピストン室44aに接続される。それによって前進クラッチ42あるいは後進ブレーキクラッチ44が係合される。
尚、切換バルブ126は油路172を介して第1調圧バルブ92のスプールの他端側に接続され、スプールを前記した一端側に付勢する。
また、切換バルブ126は油路174を介してポンプ容量バルブ(切換弁)176に接続され、MOD圧を供給してポンプ容量バルブ176のスプールを図で右方に移動させる。
ポンプ容量バルブ176は油路178を介して全吐出・半吐出切換制御用の第6電磁ソレノイドバルブ(オン/オフソレノイドバルブ。電磁弁)180に接続されると共に、油圧ポンプ64の出力ポート64cは油路74の手前で分岐油路182に接続され、分岐油路182を介してポンプ容量バルブ176に接続される。
第6電磁ソレノイドバルブ180が開弁指令に応じて消磁されると、ポンプ容量バルブ176のスプールは図示の開弁位置となり、油圧ポンプ64の2個の吐出ポート64cと64dとが接続され、油圧ポンプ64の吐出は全吐出とされる。
他方、第6電磁ソレノイドバルブ180が閉弁指令(励磁)されると、ポンプ容量バルブ176のスプールが図で右端側に変位されて閉弁位置となり、油圧ポンプ64の吐出ポート64cともう一つの吐出ポート64dとの接続は遮断され、油圧ポンプ64の吐出は半吐出とされる。
TC制御バルブ124はリリーフバルブ186、油圧ポンプ64の油路66との接続部位66aとストレーナ70を介してリザーバ72に接続されると共に、リリーフバルブ186との間には潤滑系(CVT26、前後進切換機構36、遊星歯車機構40などの潤滑を必要とする部位)に作動油(オイル)を潤滑油として供給する噴射パイプ190(噴射パイプ190は複数個からなるが、図示の便宜のため1個で示す)が設けられる。
噴射パイプ190は油路192を介してPHレギュレータバルブ76の出力ポートに接続され、PH圧に比して低い油圧(いわゆる捨て圧)が潤滑用として還流(供給)される。油路192は途中で分岐し、油路(連通路)194を介して第1、第2調圧バルブ92,94の排出ポート92a,94aに接続される。即ち、第1、第2調圧バルブ92,94の排出ポート92a,94aを油圧ポンプ64の吸入ポート64a,64bに連通させる連通路194が設けられる。
符号200はECU(電子制御ユニット)を示す。ECU200はCPU,ROM,RAM,I/Oなどで構成されるマイクロコンピュータを備え、図示しないセンサ群を通じて得た車速とアクセル開度とからLOW(最小変速比)からOD(最大変速比)までのレシオ(変速比)を規定する変速マップを検索して目標NDR(ドライブプーリ30の回転数NDRの目標値)を算出し、算出された目標NDRと検出されるNDRの偏差が減少するようにレシオを制御する。
より具体的には、ECU200は、目標NDRを実現するレシオを目標レシオとし、それと実レシオとの偏差が減少するように、油圧指令値PDRCMD,PDNCMDを算出し、それに基づいて第1、第2電磁ソレノイドバルブ102,104を励磁・消磁してDRC圧、DNC圧を調整して圧力センサ202から得られる検出値PDRが油圧指令値PDRCMDに一致するようにフィードバック制御する。
また、ECU200は、車両の走行状態に応じて第3から第5電磁ソレノイドバルブ116,134,156を励磁・消磁し、トルクコンバータ22のロックアップクラッチ22cの係合・非係合を制御すると共に、運転者のシフトレバー操作によるマニュアルバルブ164の選択位置に応じて前進クラッチ42あるいは後進ブレーキクラッチ44の係合・非係合を制御する。図示の便宜のため図2においてECU200から電磁ソレノイドバルブ群への信号は一部のみ示す。
また、ECU200はエンジン12の動作を制御する第2のECU204と通信自在に接続され、エンジン12の運転状態を示すエンジン回転数NE、冷却水温TWなどの運転パラメータを取得するように構成される。
さらに、入力軸14の適宜位置には回転数センサ206が設けられて入力軸回転数、換言すればタービン回転数(トルクコンバータ(コンバータ機構)22の出力回転数)NTを示す信号を出力すると共に、ファイナルドリブンギヤ60の付近には車速センサ210が設けられ、車速(車両の走行速度)Vを示す信号を出力する。マニュアルバルブ164のスプールに接続されると共に、運転席のシフトレバーに接続されるコントロールシャフト(共に図示せず)の付近にはポジションセンサ212が設けられ、運転者によって操作される変速レンジ(ポジション)を示す信号を出力する。これらセンサ206,210,212(図1で図示省略)の出力もECU200に入力される。
さらに、ECU200は、トルクコンバータ22の動作を制御する。
図3はそのECU200の動作を示すフロー・チャート、図4は図3フロー・チャートの処理を説明するタイム・チャートである。図3のプログラムはエンジン12の始動時に所定時間ごとに実行される。
以下説明すると、S10で長期ソークか、即ち車両が所定期間以上停止されていたソーク状態にあったか否か判断(判定)する。
これは、第2のECU204と通信して得たエンジン12の冷却水温TWの値と、図2においてリザーバ72に配置される温度センサ214の出力から検出される作動油の温度を適宜設定されるしきい値と比較することで判定する。尚、それに代え、エンジン12が停止されてからの経過時間を計測して適宜設定されるしきい値と比較することで判定しても良い。
S10で否定されるときは以降の処理をスキップする一方、車両が所定期間以上停止されていたソーク状態にあったと判断されて肯定されるときは、S12に進んで第3電磁ソレノイドバルブ116を励磁してLCC圧を出力させ、S14に進んで第4電磁ソレノイドバルブ134を消磁してLCシフトバルブ132をLC解放位置に切り換える。
図4タイム・チャートを参照して説明すると、時刻t1でエンジン12が始動され、時刻t2で車両がソーク状態にあったと判定されるときは第3電磁ソレノイドバルブ116を励磁する。
第3電磁ソレノイドバルブバルブ116はS10で否定される通常のエンジン始動時においても励磁されるが、S12においては通常のエンジン始動時に比して増加させられたLCC圧が出力されるように第3電磁ソレノイドバルブバルブ116が励磁される。
図5は第3電磁ソレノイドバルブ116の通電量に対する出力(LCC圧、より詳しくはLCC指令圧)の特性を示す特性図である。第3電磁ソレノイドバルブ116への通電量は通常のエンジン始動時の場合には同図の「中」とすると共に、S12での通電量は同図の「大」とする。
その結果、TC制御バルブ124のスプールは図2で左動させられ、通常のエンジン始動時に比して高いLCC圧で増圧されたライン圧が油路144からLCシフトバルブ132を通り、油路146からトルクコンバータ22の背圧室22c2を通ってコンバータ室22dに送られる。
このように、車両がソーク状態にあると判断されるとき、第3電磁ソレノイドバルブ116を励磁、より具体的には通常のエンジン始動時に比して高いLCC圧となるように第3電磁ソレノイドバルブ116を励磁することで、コンバータ室22dに充填されていた作動油が抜けていた場合でも、コンバータ室22dに作動油を迅速に充填でき、コンバータ機能を素早く実現することができる。
次いでS16に進み、第2のECU204と通信して得たエンジン回転数NEが所定回転数NEL(図4タイム・チャートに示す)以下となったか否か判断(判定)する。所定回転数NELはエンジン12がストールする少し前の値に設定される。
S16で肯定されてエンジン回転数NEが所定回転数NEL以下となったと判断されるときはS18に進み、図4タイム・チャートの時刻t7に示す如く、第3電磁ソレノイドバルブ116を消磁して(通電量を零にして)LCC圧の出力を停止させ、LCC圧によるライン圧の増加を停止(増加させた圧力の停止)させる。
他方、S16で否定されるときはS20に進み、車速(車両の走行速度)Vが所定車速VREF以上か、あるいはエンジン12の始動開始(図4タイム・チャートの時刻t1)からの経過時間を示す第1のタイマカウンタt1の値が所定時間tref1(図4タイム・チャートの時刻t7に相当)以上か否かを判断する。この判断は換言すれば、トルクコンバータ22のコンバータ室22dに作動油が充填されたか否かを判定(推定)することに相当する。
S20で肯定されるときはS18に進み、第3電磁ソレノイドバルブ116を消磁してLCC圧の出力を停止させる(通電量を零にしてLCC圧を零にする)。
他方、S20で否定されるときはS22に進み、エンジン12の回転数NEがタービン回転数NTと一致、より詳しくは完全に一致あるいは略一致する回転数となったか否か判断し、否定されるときは以降の処理をスキップする。
他方、図4タイム・チャートの時刻t3に示すような状況にあって肯定されるときはS24に進み、運転者のシフトレバーの操作によって変速レンジが非走行レンジから走行レンジに変化したか、具体的には図4タイム・チャートに示す如く、P,N(非走行レンジ)からR,D,S,L(走行レンジ)のいずれかに変化したか否か、前記したポジションセンサ212の出力から判断する。
S24で否定されるときは以降の処理をスキップする一方、肯定されるときはS26に進み、フラグFのビットが1にセットされているか否か判断し、否定されるときはS28に進み、第3電磁ソレノイドバルブ116への通電量を減少させ、LCC圧を減少させる(図4タイム・チャートの時刻t4)。
より具体的には、前記した温度センサ214の出力から作動油の温度が所定温度(作動油の粘度を大きく低下させる程度の温度に設定される)と比較し、所定温度以下と判断されるとき、第3電磁ソレノイドバルブ116への通電量を例えば図5特性図で「中」から「低」に減少させる。同時に、フラグFのビットを1にセットする。このフラグFのビットを1にセットすることは通電量の低下を開始したことを意味する。
また、作動油の温度の他にエンジン回転数NEの変化量を検出し、作動油の温度と併せて使用することも有用である。例えば、作動油の温度に対するエンジン回転数の変化量からなるしきい値であって低油温時には小回転量側、高油温時には大回転量側となるようなしきい値を予め設定しておき、S24の処理においてレンジ変化判断に加え、検出された作動油の温度とエンジン回転数NEの変化量がそのしきい値を超えるか否か判断し、レンジが走行レンジに変化すると共に、しきい値を超えると判断されるとき、S26に進むようにしても良い。
次いでS30に進み、第2のタイマカウンタt2の値を1つインクリメントし、S32に進み、第2のタイマカウンタt2の値が第2の所定時間tref2(図4タイム・チャートの時刻t5に相当)以上か否かを判断する。
最初のプログラムループでは当然に否定されるが、次回以降のプログラムループではS26で肯定される度にS28をスキップしてS30に進み、カウンタt2の値をインクリメントする。
その結果、S32で第2のタイマカウンタt2の値が第2の所定時間tref2以上と判断されると(図4タイム・チャートの時刻t5)、S34に進み、第3電磁ソレノイドバルブ116の通電量を増加、具体的には図4タイム・チャートに示す如く、元の値(図5特性図で「大」の値)まで所定の傾きとなるように徐々に増加させる。
次いでS36に進み、第3電磁ソレノイドバルブ116への通電量が元の値のまで回復したか否か判断し、否定されるときは以降の処理をスキップする一方、肯定されるときはS38に進み、フラグFのビットを0にリセットしてプログラムループを終了する。
上記した如く、この実施例にあっては、車両に搭載される駆動源(エンジン)12の回転駆動力で駆動されてリザーバ72から作動流体(作動油)を汲み上げて第1流体路(油路)142に吐出する流体圧(油圧)ポンプ64と、前記駆動源の駆動軸12aと前記車両の駆動輪に接続される従動軸(入力軸)14との間に配置され、前記駆動軸に固定されたカバー部材24に結合されるポンプインペラ22aと、前記従動軸に連結されつつ前記ポンプインペラに対向して配置されるタービンランナ22bと、前記カバー部材とタービンランナの間に配置されたピストン22c1を有し、前記カバー部材とタービンランナを係合・解放自在なロックアップクラッチ22cと、前記ポンプインペラとタービンランナで構成されるコンバータ室22dと、前記ピストンと前記カバー部材の間に形成される背圧室22c2とを少なくとも備え、前記コンバータ室22dを流動する作動流体(作動油)を介して前記駆動軸から入力される回転駆動力を変換して前記従動軸に伝達するコンバータ機構(トルクコンバータ)22と、前記第1流体路に配置され、第1電磁弁(第4電磁ソレノイドバルブ134)の動作に応じて前記第1流体路を通じて供給される作動流体を第2流体路(油路146)を通じて背圧室22c2からコンバータ室22dに導入して前記ロックアップクラッチ22cの係合を解放させる解放位置と前記背圧室に導入される作動流体を排出、より具体的には第2流体路から排出させて前記ロックアップクラッチ22cを係合させる係合位置との間で切換可能な切換弁(LCシフトバルブ)132と、前記第1流体路に配置され、第2電磁弁(第3電磁ソレノイドバルブ)116の動作に応じて作動流体の圧力を増加可能な制御弁(TC制御バルブ)124とを有する流体圧供給機構とを備えたコンバータ機構の制御装置において、前記駆動源を始動させるとき、前記車両が所定期間以上停止されていたソーク状態にあるか否か判定するソーク状態判定手段(ECU200,S10)と、前記ソーク状態にあると判定されるとき、前記第1電磁弁によって、より具体的には前記第1電磁弁(第4電磁ソレノイドバルブ134)が常開型であるときは励磁、常閉型であるときは消磁させて前記切換弁を前記解放位置に切り換えると共に、前記第2電磁弁によって、より具体的には前記第2電磁弁を励磁させて前記制御弁を介して前記第2流体路から導入される作動流体の圧力を増加させる圧力増加手段(ECU200,S12,S14)と、前記圧力を増加させた後、前記駆動源の回転数(エンジン回転数NE)が所定回転数NEL以下あるいは前記コンバータ機構の出力回転数(タービン回転数)NTと一致する回転数となったか否か判定し、前記所定回転数以下あるいは前記コンバータ機構の出力回転数と一致する回転数ととなったとき、前記増加させた作動流体の圧力を低下させる圧力低下手段(ECU200,S16,S18,S22からS38)とを備える如く構成したので、ソーク後の始動時にトルクコンバータ(コンバータ機構)22から作動油(作動流体)が抜けていた場合でも、LCシフトバルブ(切換弁)132を解放位置にすると共に、油路(第2流体路)146から背圧室22c2を通ってコンバータ室22dに導入される作動油を積極的に増加、好ましくは通常のエンジン始動時に比して高圧の作動油を増加させることで、コンバータ室22dに作動油を迅速に充填させることができ、よって駆動力の発生の遅れを回避することができる。また、作動油が油路146から背圧室22c2を通ることでロックアップクラッチ22cは解放位置とされ、ロックアップクラッチ22cが直結されることがないので、エンジン12の負荷とならず、エンジン12がストールすることがない。よって、車両の発進の遅れも回避することが可能となる。
ただし、そのような場合、LCシフトバルブ(切換弁)132を解放位置に切り換える第4電磁ソレノイドバルブ(第1電磁弁)134(あるいはLCシフトバルブ132あるいはTC制御バルブ(制御弁)124)が異物などを噛み込んで係合位置側に固着(オン固着)する可能性もあり、そのような固着が生じると、作動油を油路146から背圧室22c2に導入できないのみならず、背圧室22c2に導入される(されていた)作動油が排出されることになるため、ロックアップクラッチ22が係合位置に切り換えられ、所謂直結状態となって負荷が増加することで、エンジン12がストールする恐れがある。
しかしながら、もしそのような固着が生じたとしたとしても、係合位置に固着したことで別の油路(流体路)150からコンバータ室22dに導入されることになる作動油の圧力を一旦増加させた後、エンジン12の回転数が所定回転数以下となったか否か判定し、所定回転数以下となったとき、増加させた作動油の圧力を低下、より具体的には零あるいは低い値まで低下させる如く構成したので、ロックアップクラッチ22cが完全に係合位置に切り換えられるのを抑制することができ、エンジン12がストールするのを回避することができる。
また、前記コンバータ室22に作動流体(作動油)が充填されたか否か判定する充填判定手段(ECU200,S20)を備え、前記圧力低下手段は、前記コンバータ室22dに作動流体(作動油)が充填されたと判定されるとき、前記増加させた作動流体の圧力を低下させる如く構成したので、上記した効果に加え、作動油の圧力を不要に増加し続けることがない。
また、前記充填判定手段は、前記車両の走行速度(車速V)または前記駆動源の始動開始からの経過時間tの少なくともいずれかから前記コンバータ室22dに作動流体が充填されたか否かを判定する如く構成したので、上記した効果に加え、作動油の充填を的確に判定することができる。
また、前記圧力低下手段は、運転者によって選択された車両の変速レンジを検出するレンジ検出手段(ポジションセンサ212,ECU200,S24)を備え、前記駆動源の回転数(エンジン回転数NE)が前記コンバータ機構の出力回転数(タービン回転数NT)と一致する回転数となったと判定されると共に、前記運転者によって選択された車両の変速レンジが非走行レンジ(P,N)から走行レンジ(R,D,S,L)に変化したことが検出されたとき、前記増加させた作動流体の圧力を低下させる(S22からS38)如く構成したので、非走行レンジである場合にはロックアップクラッチ22cが係合(締結)した状態であっても、前後進クラッチ42,44で動力が絶たれているため、エンジン12のストールの発生はないものの、走行レンジに変化した場合には通常通りに前後進クラッチ42,44が接続されることにより、エンジン12から駆動輪までの動力経路が直結となり得る。従って、非走行レンジから走行レンジに移行する際に、エンジン12がストールするのを確実に回避することができる。
また、前記圧力低下手段は、運転者によって選択された車両の変速レンジを検出するレンジ検出手段(ポジションセンサ212,ECU200,S24)を備え、前記駆動源の回転数(エンジン回転数NE)が前記コンバータ機構の出力回転数(タービン回転数NT)と(完全にあるいは略)一致する回転数となったと判定されると共に、前記運転者によって選択された車両の変速レンジが非走行レンジ(P,N)から走行レンジ(R,D,S,L)に変化したことが検出されたとき、前記増加させた作動流体の圧力を所定時間tre2低下させ、次いで再び増加、より具体的には徐々に低下させる(S22からS38)如く構成したので、エンジン回転数NEがタービン回転数NTと(完全にあるいは略)一致する回転数となったと判定されたことで第4電磁ソレノイドバルブ134のロックアップ係合位置側への固着(オン固着)の発生が疑われる状況において一旦作動流体の圧力を低下させることで、実際に固着が発生したとしてもストールを回避できると共に、回転数の一致が一過性の事象であるときは、圧力を再び増加させることで本来意図している駆動力の発生の遅れも回避することができる。
尚、上記において流体あるいは流体圧として作動油あるいはその圧力(油圧)を用いたが、それに限られるものではない。