JP6120050B2 - モータ制御装置およびそれを用いた電動パワーステアリング装置 - Google Patents
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iq=Ia・sinβ …(1)
id=Ia・cosβ …(2)
Iaは、回転磁界をつくるための電流ベクトルの大きさ(電機子電流)である。βは電流位相角であり、回転磁界をつくるための電流ベクトル(電機子電流ベクトル)とd軸との位相差である。
請求項3記載の発明は、U相、V相およびW相のステータ巻線(101,102,103)を有するステータ(105)と複数の突極部を有するロータ(100)(18)とを備えた操舵補助用のシンクロナスリラクタンスモータ(18)と、前記シンクロナスリラクタンスモータを制御するための請求項1または2に記載のモータ制御装置(12)とを備えた電動パワーステアリング装置(1)であって、操舵トルクを検出するための操舵トルク検出手段(11)をさらに含み、前記座標変換用回転角設定手段は、前記操舵トルク検出手段によって検出された操舵トルクに基づいて、前記αの値を制御するように構成されている、電動パワーステアリング装置である。
図1は、本発明の一実施形態に係るモータ制御装置が適用された電動パワーステアリング装置の概略構成を示す模式図である。
電動パワーステアリング装置1は、車両を操向するための操舵部材としてのステアリングホイール2と、このステアリングホイール2の回転に連動して転舵輪3を転舵する転舵機構4と、運転者の操舵を補助するための操舵補助機構5とを備えている。ステアリングホイール2と転舵機構4とは、ステアリングシャフト6および中間軸7を介して機械的に連結されている。
転舵機構4は、ピニオン軸13と、転舵軸としてのラック軸14とを含むラックアンドピニオン機構からなる。ラック軸14の各端部には、タイロッド15およびナックルアーム(図示略)を介して転舵輪3が連結されている。ピニオン軸13は、中間軸7に連結されている。ピニオン軸13は、ステアリングホイール2の操舵に連動して回転するようになっている。ピニオン軸13の先端には、ピニオン16が連結されている。
操舵補助機構5は、操舵補助用の電動モータ18と、電動モータ18の出力トルクを転舵機構4に伝達するための減速機構19とを含む。電動モータ18は、この実施形態では、シンクロナスリラクタンスモータ(SynRM)からなる。減速機構19は、ウォーム軸20と、このウォーム軸20と噛み合うウォームホイール21とを含むウォームギヤ機構からなる。減速機構19は、伝達機構ハウジングとしてのギヤハウジング22内に収容されている。
電動モータ18によってウォーム軸20が回転駆動されると、ウォームホイール21が回転駆動され、ステアリングシャフト6が回転する。そして、ステアリングシャフト6の回転は、中間軸7を介してピニオン軸13に伝達される。ピニオン軸13の回転は、ラック軸14の軸方向移動に変換される。これにより、転舵輪3が転舵される。すなわち、電動モータ18によってウォーム軸20を回転駆動することによって、転舵輪3が転舵されるようになっている。
図2は、ECU12の電気的構成を示す概略図である。
ECU12は、トルクセンサ11によって検出される操舵トルクThに応じて電動モータ18を駆動することによって、操舵状況に応じた適切な操舵補助を実現する。
ECU12は、マイクロコンピュータ31と、このマイクロコンピュータ31によって制御され、電動モータ18に電力を供給する駆動回路(インバータ回路)32と、電動モータ18の各相のステータ巻線101,102,103に流れる電流を検出する電流検出部33とを備えている。
マイクロコンピュータ31は、CPUおよびメモリ(ROM,RAMなど)を備えており、所定のプログラムを実行することによって、複数の機能処理部として機能するようになっている。この複数の機能処理部には、電流指令値設定部41と、電流位相角演算部42と、d軸電流指令値演算部43と、q軸電流指令値演算部44と、d軸電流偏差演算部45と、q軸電流偏差演算部46と、d軸PI(比例積分)制御部47と、q軸PI(比例積分)制御部48と、d軸指示電圧生成部49と、q軸指示電圧生成部50と、二相/三相座標変換部51と、PWM制御部52と、回転角演算部53と、座標変換用回転角設定部54と、三相/二相座標変換部55とが含まれている。
電流指令値設定部41は、たとえば、図4に示されるような操舵トルクThの絶対値|Th|と電流指令値Ia *との関係を記憶したマップまたはそれらの関係を表す演算式を用いて、操舵トルクThの絶対値|Th|に応じた電流指令値Ia *を設定する。電流指令値設定部41によって設定された電流指令値Ia *は、電流位相角演算部42に与えられるとともに、d軸電流指令値演算部43およびq軸電流指令値演算部44に与えられる。
電動モータ18を高効率で駆動するためには、電機子電流に対するモータトルクの比が大きくなるように電動モータ18を制御すればよい。
T=Pn・(Ld−Lq)・id・iq …(3)
Ldはd軸インダクタンス[H]であり、Lqはq軸インダクタンス[H]である。また、idはd軸電流[A]であり、iqはq軸電流[A]である。
T=(1/2)・Pn・(Ld−Lq)・Ia 2sin2β …(4)
したがって、d軸インダクタンスLdおよびq軸インダクタンスLqが電流位相角βによって変動しなければ、電流位相角βが45[deg]のときにモータトルクTは最大となる。しかしながら、SynRMでは、d軸インダクタンスLdおよびq軸インダクタンスLqがロータコアの磁気飽和の影響を受けて変動するため、モータトルクTは電流位相角βが45[deg]のときに必ずしも最大にならない。
図5は、複数の電機子電流Ia毎に取得した電流位相角βに対するモータトルクTの特性データの一例を示すグラフである。図5の特性データは、前記非特許文献1に掲載のデータを転用したものである。図5では、横軸に電流位相角βをとり、縦軸にモータトルクTをとり、各電機子電流Iaの電流位相角βに対するモータトルクTの特性を、それぞれ曲線で表している。
Iamaxは、電機子電流Iaの最大値(電流指令値Ia *の最大値)であり、この例では、Iamax=50[A]である。βmaxは、電機子電流Iaが最大値Iamaxである場合に、モータトルクTが最大値となる電流位相角βであり、この例では、βmax=66[deg]であるとする。βminは、電機子電流Iaが最小値(零)である場合に、モータトルクTが最大値となる電流位相角βであり、この例では、βmin=45[deg]であるとする。
β=(21/50)・Ia+45 …(6)
図6の折れ線aは、各電機子電流Iaに対してモータトルクTが最大となる電流位相角βの実測データを示すグラフである。図6の直線bは、前記式(6)で表される近似直線を示している。
β=(21/50)・Ia *+45 …(7)
したがって、この実施形態では、βは45[deg]以上66[deg]以下の角度となる。
id *=Ia *・cosβ …(8)
q軸電流指令値生成部44は、電流指令値設定部41から与えられた電機子電流指令値Ia *と電流位相角演算部42から与えられた電流位相角βとを用い、次式(9)に基づいてq軸電流の指令値iq *を演算する。
前述したように、この実施形態では、Ia *は零以上の値(Ia *≧0)であり、βは45[deg]以上66[deg]以下の角度(45≦β≦66)である。したがって、この実施形態では、d軸電流の指令値id *およびq軸電流の指令値iq *は、Ia *≧0でかつ45≦β≦66で規定される所定の範囲内の値となる。
回転角演算部53は、回転角センサ25の出力信号に基づいて、電動モータ18のロータの回転角(ロータ回転角)θを演算する。
座標変換用回転角設定部54は、回転角演算部53によって演算されたロータ回転角θと、トルクセンサ11によって検出される検出操舵トルクThとに基づいて、座標変換用回転角δを演算する。座標変換用回転角設定部54の動作の詳細について後述する。
d軸電流偏差演算部45は、d軸電流指令値id *に対するd軸電流idの偏差を演算する。d軸電流偏差演算部45によって演算された電流偏差は、d軸PI制御部47に与えられて、PI演算処理を受ける。d軸指示電圧生成部49は、d軸PI制御部47の演算結果に応じて、d軸指示電圧vd *を生成する。
駆動回路32は、U相、V相およびW相に対応した三相インバータ回路からなる。このインバータ回路を構成するパワー素子がPWM制御部52から与えられるPWM制御信号によって制御されることにより、三相指示電圧vU *,vV *,vW *に相当する電圧が電動モータ18の各相のステータ巻線に印加されることになる。
次に、座標変換用回転角設定部54の動作について詳しく説明する。座標変換用回転角設定部54は、座標変換用回転角δを設定する。座標変換用回転角δは、回転角演算部53によって演算されるロータ回転角をθとし、αを変数とすると、次式(10)で表わされる。
座標変換用回転角設定部54は、電動モータ18が起動されるときには、回転すべき方向に電動モータ18を確実に回転させるような値にαを設定する。具体的には、起動時において、回転すべき方向が左操舵方向に対応する正転方向である場合には、座標変換用回転角設定部54は、αを−45°に設定する。つまり、座標変換用回転角δを(θ−45°)とする。一方、起動時において、回転すべき方向が右操舵方向に対応する逆転方向である場合には、座標変換用回転角設定部54は、αを+45°に設定する。つまり、座標変換用回転角δを(θ+45°)とする。起動後においては、座標変換用回転角設定部54は、座標変換用回転角δを本来のロータ回転角θにするために、αの値が0になるまでαの絶対値を徐々に小さくする(漸減する)。
図7は、各座標変換部51,55が、回転角演算部53によって演算されたロータ回転角θをそのまま用いて座標変換した場合に発生する電機子電流ベクトルIaを示している。この場合には、d軸電流成分idがd軸電流指令値id *(≧0)に等しくなりかつq軸電流成分iqがq軸電流指令値iq *(≧0)に等しくなるように電流制御が行われるので、電機子電流Iaは図7に示すようになる。つまり、電機子電流ベクトルIaと+d軸とのなす角度βは、電流位相角演算部42によって演算された電流位相角β(45°≦β≦66°)となる。
次に、d軸電流指令値id *およびq軸電流指令値iq *を図7の場合と同じ大きさとし、座標変換用回転角δが(θ+45°)に設定された場合(α=+45°に設定された場合)を想定する。この場合、各座標変換部51,55は、ロータ回転角θの代わりに(θ+45°)を用いて座標変換を行う。つまり、各座標変換部51,55は、図8に示すように、d軸を+45度回転させたd’軸((d+45°)軸)と、q軸を+45度回転させたq’軸((q+45°)軸)とからなるd’ q’座標系で、座標変換を行うことになる。この際、d軸電流指令値id *の大きさがd’軸電流成分id’となり、q軸電流指令値id *の大きさがq’軸 電流成分iq’となるから、電機子電流ベクトルIaは図8に示すようになる。
図10および図11は、座標変換用回転角設定部54の動作を示すフローチャートである。図10は、主として、起動時においてαの値を電動モータ18を回転させるべき方向に応じた所定角度に設定するための処理の手順を示すフローチャートである。図11は、起動後においてαの絶対値を漸減するための処理の手順を示すフローチャートである。
座標変換用回転角設定部54は、検出操舵トルクThに基づいて、制御モードが、停止モード、右操舵モードおよび左操舵モードのうちのいずれであるかを判別する(ステップS1)。停止モードは、電動モータ18を停止させるモードである。右操舵モードは、電動モータ18を右操舵方向(逆転方向)に回転させるモードである。左操舵モードは、電動モータ18を左操舵方向(正転方向)に回転させるモードである。
この場合には、座標変換用回転角δを設定するためのステップS10の処理は行われない。
この場合には、座標変換用回転角δを設定するためのステップS10の処理は行われない。
座標変換用回転角設定部54は、αの値が0°あるか否かを判別する(ステップS21)。αの値が0°である場合には(ステップS21:YES)、今演算周期での処理を終了する。この場合には、αの値は変更されない。
検出操舵トルクThが0である場合には、αの値が0°にされる(図10のステップS1〜S3参照)ので、座標変換用回転角δはロータ回転角θと等しくなる(図10のステップS10参照)。
βが45[deg]以上90[deg]以下の角度となるように、d軸電流の指令値id *およびq軸電流の指令値iq *が設定されてもよい。また、βが0[deg]以上45[deg]以下の角度となるように、d軸電流の指令値id *およびq軸電流の指令値iq *が設定されてもよい。
Claims (3)
- U相、V相およびW相のステータ巻線を有するステータと複数の突極部を有するロータとを備えたシンクロナスリラクタンスモータを制御するモータ制御装置であって、
前記モータの回転角を検出する回転角検出手段と、
前記モータの各ステータ巻線に流れる電流を検出する電流検出手段と、
前記電流検出手段によって検出される三相の検出電流をdq座標系の二相検出電流に変換するための三相/二相座標変換手段と、
前記モータの電流の指令値を設定する電流指令値設定手段と、
前記電流指令値設定手段によって設定された電流指令値に基づいて、dq座標系の二相指示電流値を演算する二相指示電流演算手段と、
前記二相指示電流演算手段によって演算された二相指示電流値と、前記三相/二相座標変換手段によって得られた二相検出電流とに基づいて、dq座標系の二相指示電圧を演算する電流フィードバック手段と、
前記電流フィードバック手段によって演算された二相指示電圧を、UVW座標系の三相指示電圧に変換するための二相/三相座標変換手段と、
前記三相/二相座標変換手段および前記二相/三相座標変換手段において、座標変換のために用いられる座標変換用回転角を設定する座標変換用回転角設定手段とを含み、
前記回転角検出手段によって検出される回転角をθとし、αを変数とすると、前記座標変換用回転角設定手段によって設定される座標変換用回転角はθ+αで表され、
前記座標変換用回転角設定手段は、前記モータを起動するときには、前記αの値を、前記モータを回転させるべき方向に応じた所定角度(≠0)に設定し、前記モータを起動した後においては、前記αの絶対値を漸減していくように構成されている、モータ制御装置。 - 前記所定角度の絶対値が電気角の45度であり、前記所定角度の符号が前記モータを回転させるべき方向に応じて決定されている、請求項1に記載のモータ制御装置。
- U相、V相およびW相のステータ巻線を有するステータと複数の突極部を有するロータとを備えた操舵補助用のシンクロナスリラクタンスモータと、
前記シンクロナスリラクタンスモータを制御するための請求項1または2に記載のモータ制御装置とを備えた電動パワーステアリング装置であって、
操舵トルクを検出するための操舵トルク検出手段をさらに含み、
前記座標変換用回転角設定手段は、前記操舵トルク検出手段によって検出された操舵トルクに基づいて、前記αの値を制御するように構成されている、電動パワーステアリング装置。
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