JP2014079112A - モータ制御装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】新たな制御方式でシンクロナスリラクタンスモータを制御することができるモータ制御装置を提供する。
【解決手段】二相/三相座標変換部51は、座標変換モードとして、第1回転角(θ+α)を用いて二相/三相座標変換を行う第1座標変換モードと、第2回転角(θ−α)を用いて二相/三相座標変換を行う第2座標変換モードとを有している。三相/二相座標変換部54は、座標変換モードとして、第1回転角(θ+α)を用いて三相/二相座標変換を行う第1座標変換モードと、第2回転角(θ−α)を用いて三相/二相座標変換を行う第2座標変換モードとを有している。各座標変換部51,54は、回転方向指令値Di *に応じて、座標変換モードを切り替える。
【選択図】図2
【解決手段】二相/三相座標変換部51は、座標変換モードとして、第1回転角(θ+α)を用いて二相/三相座標変換を行う第1座標変換モードと、第2回転角(θ−α)を用いて二相/三相座標変換を行う第2座標変換モードとを有している。三相/二相座標変換部54は、座標変換モードとして、第1回転角(θ+α)を用いて三相/二相座標変換を行う第1座標変換モードと、第2回転角(θ−α)を用いて三相/二相座標変換を行う第2座標変換モードとを有している。各座標変換部51,54は、回転方向指令値Di *に応じて、座標変換モードを切り替える。
【選択図】図2
Description
この発明は、モータ制御装置に関し、特にシンクロナスリラクタンスモータを制御するモータ制御装置に関する。
電磁エネルギーの位置に対する変化によって発生するリラクタンストルクのみを利用して、ロータを回転させるリラクタンスモータが知られている。リラクタンスモータには、ステータおよびロータが突極部を有するスイッチトリラクタンスモータ(SRM:Switched Reluctance Motor)と、ステータがブラシレスモータと同様の構造のシンクロナスリラクタンスモータ(SynRM:Synchronous Reluctance Motor)とがある。
長谷川 勝(中部大学)、道木 慎二(名古屋大学)、佐竹 明善(オークマ)、王 道洪(岐阜大学)、「永久磁石電動機・リラクタンスモータの駆動回路技術とドライブ制御技術 −6.リラクタンスモータ制御技術− 」、平成16年電気学会産業応用部門大会論文集、I−119〜I−124(2004)
シンクロナスリラクタンスモータ(SynRM)は、ステータおよびロータのうち、ロータのみに突極部を有している。SynRMでは、ロータの突極部により、磁束の流れやすい突極部の方向(以下、「d軸方向」という)と磁束が流れにくい非突極部の方向(以下、「q軸方向」という)とがある。このため、d軸方向のインダクタンス(以下、「d軸インダクタンス」という)とq軸方向のインダクタンス(以下、「q軸インダクタンス」という)の差によりリラクタンストルクが発生し、このリラクタンストルクによってロータが回転する。
SynRMをブラシレスモータと同様な方法で制御することが考えられる。つまり、電機子電流の指令値である電流指令値Ia *を設定し、設定された電流指令値Ia *からq軸電流指令値iq *およびd軸電流指令値id *を演算し、q軸電流指令値iq *と実q軸電流との偏差およびd軸電流指令値id *と実d軸電流との偏差に基づいて、SynRMを電流フィードバック制御することが考えられる。
SynRMでは、q軸電流iqおよびd軸電流idは、それぞれ次式(1),(2)で表される。
iq=Ia・sinβ …(1)
id=Ia・cosβ …(2)
Iaは、回転磁界をつくるための電流ベクトルの大きさ(電機子電流)である。βは電流位相角であり、回転磁界をつくるための電流ベクトル(電機子電流ベクトル)とd軸との位相差である。
iq=Ia・sinβ …(1)
id=Ia・cosβ …(2)
Iaは、回転磁界をつくるための電流ベクトルの大きさ(電機子電流)である。βは電流位相角であり、回転磁界をつくるための電流ベクトル(電機子電流ベクトル)とd軸との位相差である。
また、Ldをd軸インダクタンス、Lqをq軸インダクタンスとすると、極対数PnのSynRMの発生トルクTは、次式(3) で表される。
T=Pn・(Ld−Lq)・id・iq
=1/2{Pn・(Ld−Lq)・Ia 2sin2β} …(3)
式(3)からわかるように、SynRMにおいては、ブラシレスモータと異なり、電流指令値Ia *の極性を反転してもトルクの方向は逆にならない。したがって、SynRMにおいては、電流指令値Ia *の極性を変えることによって、回転方向を反転させることができない。
T=Pn・(Ld−Lq)・id・iq
=1/2{Pn・(Ld−Lq)・Ia 2sin2β} …(3)
式(3)からわかるように、SynRMにおいては、ブラシレスモータと異なり、電流指令値Ia *の極性を反転してもトルクの方向は逆にならない。したがって、SynRMにおいては、電流指令値Ia *の極性を変えることによって、回転方向を反転させることができない。
この発明の目的は、新たな制御方式でシンクロナスリラクタンスモータを制御することができるモータ制御装置を提供することである。
請求項1記載の発明は、U相、V相およびW相のステータ巻線(101,102,103)を有するステータ(105)と複数の突極部を有するロータ(100)とを備えたシンクロナスリラクタンスモータ(18)を制御するモータ制御装置(12)であって、前記モータの回転角を検出する回転角検出手段(25)と、前記モータの各ステータ巻線に流れる電流を検出する電流検出手段(33)と、前記電流検出手段によって検出される三相の検出電流をdq座標系の二相検出電流に変換する三相/二相座標変換手段(54)と、前記モータの電流の指令値と前記モータの回転方向の指令値とを設定する指令値設定手段(41)と、前記指令値設定手段によって設定された電流指令値に基づいて、dq座標系の二相指示電流値を演算する二相指示電流演算手段(43,44)と、前記二相指示電流演算手段によって演算された二相指示電流値と、前記三相/二相座標変換手段によって得られた二相検出電流とに基づいて、dq座標系の二相指示電圧を演算する電流フィードバック手段(45〜50)と、前記電流フィードバック手段によって演算された二相指示電圧を、UVW座標系の三相指示電圧に変換する二相/三相座標変換手段(51)とを含み、前記三相/二相座標変換手段および前記二相/三相座標変換手段は、それぞれ前記回転角検出手段によって検出された回転角に所定角度α(0<α)が加算された第1回転角を用いて座標変換を行う第1座標換モードと、前記回転角検出手段によって検出された回転角から所定角度α(0<α)が減算された第2回転角を用いて座標変換を行う第2座標変換モードとを有し、前記指令値設定手段によって設定された回転方向指令値に応じて、第1座標変換モードと第2座標変換モードとを切り換えるように構成されている、モータ制御装置である。なお、括弧内の英数字は、後述の実施形態における対応構成要素等を表すが、むろん、この発明の範囲は当該実施形態に限定されない。以下、この項において同じ。
この構成では、二相指示電流演算手段によって演算されるdq座標系の二相指示電流値がとりうる範囲を所定範囲に設定しておくとともに角度αを所定値に設定しておくと、三相/二相座標変換手段および二相/三相座標変換手段が第1標変換モードで座標変換を行ったときには、正転方向または逆転方向のうちの一方の方向(以下「第1方向」という。)にシンクロナスリラクタンスモータが回転される。一方、両座標変換手段が第2標変換モードで座標変換を行ったときには、他方の方向(以下「第2方向」という。)にシンクロナスリラクタンスモータが回転される。したがって、指令値設定手段によって設定された回転方向指令値が第1方向を表す指令値である場合に、両座標変換手段が第1標変換モードで座標変換を行うようにすると、シンクロナスリラクタンスモータを第1方向に回転させることができる。一方、指令値設定手段によって設定された回転方向指令値が第2方向を表す指令値である場合に、両座標変換手段が第2標変換モードで座標変換を行うようにすると、シンクロナスリラクタンスモータを第2方向に回転させることができる。これにより、シンクロナスリラクタンスモータを、回転方向指令値に応じた回転方向に回転させることができる。
前記所定角度αは、電気角の45[deg]であることが好ましい。
以下では、この発明の実施形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係るモータ制御装置が適用された電動パワーステアリング装置の概略構成を示す模式図である。
電動パワーステアリング装置1は、車両を操向するための操舵部材としてのステアリングホイール2と、このステアリングホイール2の回転に連動して転舵輪3を転舵する転舵機構4と、運転者の操舵を補助するための操舵補助機構5とを備えている。ステアリングホイール2と転舵機構4とは、ステアリングシャフト6および中間軸7を介して機械的に連結されている。
図1は、本発明の一実施形態に係るモータ制御装置が適用された電動パワーステアリング装置の概略構成を示す模式図である。
電動パワーステアリング装置1は、車両を操向するための操舵部材としてのステアリングホイール2と、このステアリングホイール2の回転に連動して転舵輪3を転舵する転舵機構4と、運転者の操舵を補助するための操舵補助機構5とを備えている。ステアリングホイール2と転舵機構4とは、ステアリングシャフト6および中間軸7を介して機械的に連結されている。
ステアリングシャフト6は、ステアリングホイール2に連結された入力軸8と、中間軸7に連結された出力軸9とを含む。入力軸8と出力軸9とは、トーションバー10を介して同一軸線上で相対回転可能に連結されている。すなわち、ステアリングホイール2が回転されると、入力軸8および出力軸9は、互いに相対回転しつつ同一方向に回転するようになっている。
ステアリングシャフト6の周囲には、トルクセンサ11が設けられている。トルクセンサ11は、入力軸8および出力軸9の相対回転変位量に基づいて、ステアリングホイール2に与えられた操舵トルクを検出する。トルクセンサ11によって検出される操舵トルクは、ECU(電子制御ユニット:Electronic Control Unit)12に入力される。
転舵機構4は、ピニオン軸13と、転舵軸としてのラック軸14とを含むラックアンドピニオン機構からなる。ラック軸14の各端部には、タイロッド15およびナックルアーム(図示略)を介して転舵輪3が連結されている。ピニオン軸13は、中間軸7に連結されている。ピニオン軸13は、ステアリングホイール2の操舵に連動して回転するようになっている。ピニオン軸13の先端には、ピニオン16が連結されている。
転舵機構4は、ピニオン軸13と、転舵軸としてのラック軸14とを含むラックアンドピニオン機構からなる。ラック軸14の各端部には、タイロッド15およびナックルアーム(図示略)を介して転舵輪3が連結されている。ピニオン軸13は、中間軸7に連結されている。ピニオン軸13は、ステアリングホイール2の操舵に連動して回転するようになっている。ピニオン軸13の先端には、ピニオン16が連結されている。
ラック軸14は、自動車の左右方向(直進方向に直交する方向)に沿って直線状に延びている。ラック軸14の軸方向の中間部には、ピニオン16に噛み合うラック17が形成されている。このピニオン16およびラック17によって、ピニオン軸13の回転がラック軸14の軸方向移動に変換される。ラック軸14を軸方向に移動させることによって、転舵輪3を転舵することができる。
ステアリングホイール2が操舵(回転)されると、この回転が、ステアリングシャフト6および中間軸7を介して、ピニオン軸13に伝達される。そして、ピニオン軸13の回転は、ピニオン16およびラック17によって、ラック軸14の軸方向移動に変換される。これにより、転舵輪3が転舵される。
操舵補助機構5は、操舵補助用の電動モータ18と、電動モータ18の出力トルクを転舵機構4に伝達するための減速機構19とを含む。電動モータ18は、この実施形態では、シンクロナスリラクタンスモータ(SynRM)からなる。減速機構19は、ウォーム軸20と、このウォーム軸20と噛み合うウォームホイール21とを含むウォームギヤ機構からなる。減速機構19は、伝達機構ハウジングとしてのギヤハウジング22内に収容されている。
操舵補助機構5は、操舵補助用の電動モータ18と、電動モータ18の出力トルクを転舵機構4に伝達するための減速機構19とを含む。電動モータ18は、この実施形態では、シンクロナスリラクタンスモータ(SynRM)からなる。減速機構19は、ウォーム軸20と、このウォーム軸20と噛み合うウォームホイール21とを含むウォームギヤ機構からなる。減速機構19は、伝達機構ハウジングとしてのギヤハウジング22内に収容されている。
ウォーム軸20は、電動モータ18によって回転駆動される。また、ウォームホイール21は、ステアリングシャフト6とは同方向に回転可能に連結されている。ウォームホイール21は、ウォーム軸20によって回転駆動される。
電動モータ18によってウォーム軸20が回転駆動されると、ウォームホイール21が回転駆動され、ステアリングシャフト6が回転する。そして、ステアリングシャフト6の回転は、中間軸7を介してピニオン軸13に伝達される。ピニオン軸13の回転は、ラック軸14の軸方向移動に変換される。これにより、転舵輪3が転舵される。すなわち、電動モータ18によってウォーム軸20を回転駆動することによって、転舵輪3が転舵されるようになっている。
電動モータ18によってウォーム軸20が回転駆動されると、ウォームホイール21が回転駆動され、ステアリングシャフト6が回転する。そして、ステアリングシャフト6の回転は、中間軸7を介してピニオン軸13に伝達される。ピニオン軸13の回転は、ラック軸14の軸方向移動に変換される。これにより、転舵輪3が転舵される。すなわち、電動モータ18によってウォーム軸20を回転駆動することによって、転舵輪3が転舵されるようになっている。
電動モータ18のロータの回転角(ロータ回転角)は、レゾルバ等の回転角センサ25によって検出される。回転角センサ25の出力信号は、ECU12に入力される。電動モータ18は、モータ制御装置としてのECU12によって制御される。
図2は、ECU12の電気的構成を示す概略図である。
ECU12は、トルクセンサ11によって検出される操舵トルクThに応じて電動モータ18を駆動することによって、操舵状況に応じた適切な操舵補助を実現する。
図2は、ECU12の電気的構成を示す概略図である。
ECU12は、トルクセンサ11によって検出される操舵トルクThに応じて電動モータ18を駆動することによって、操舵状況に応じた適切な操舵補助を実現する。
電動モータ18は、前述したようにシンクロナスリラクタンスモータであり、図3に図解的に示すように、周方向に間隔をおいて配置された複数の突極部を有するロータ100と、電機子巻線を有するステータ105とを備えている。電機子巻線は、U相のステータ巻線101、V相のステータ巻線102およびW相のステータ巻線103が星型結線されることにより構成されている。
各相のステータ巻線101,102,103の方向にU軸、V軸およびW軸をとった三相固定座標(UVW座標系)が定義される。また、ロータ100の回転中心側から外周部へ磁束の流れやすい突極部の方向にd軸方向をとり、ロータ100の回転中心側から外周部へ磁束が流れにくい非突極部の方向にq軸方向をとった二相回転座標系(dq座標系。実回転座標系)が定義される。dq座標系は、ロータ100の回転角(ロータ回転角)θに従う実回転座標系である。ロータ回転角θ(電気角)は、この実施形態では、隣接する2つの突起部(d軸)のうちの基準となる一方の突極部(d軸)のU軸から反時計回りの回転角として定義される。基準となる前記一方の突極部の方向を+d軸方向といい、それに隣接する他方の突極部の方向を−d軸方向ということにする。+d軸に対して電気角で+90度回転した軸を+q軸とい、+d軸に対して電気角で−90度回転した軸を−q軸ということにする。ロータ100(突極部)に生じる磁極(N極およびS極)は、dq座標系における電流ベクトルIaの方向によって決定される。この実施形態では、電動モータ18の正転方向は、図3におけるロータ100の反時計方向に対応し、電動モータ18の逆転方向は、図3におけるロータ100の時計方向に対応するものとする。
通常は、ロータ回転角θを用いることによって、UVW座標系とdq座標系との間での座標変換が行われる(たとえば、特開2009−137323号公報の式(1),(2)参照)。ただし、この実施形態では、後述するように、ロータ回転角θの代わりに、θ+α(α>0)または角度θ−α(α>0)を用いて座標変換が行われる。
ECU12は、マイクロコンピュータ31と、このマイクロコンピュータ31によって制御され、電動モータ18に電力を供給する駆動回路(インバータ回路)32と、電動モータ18の各相のステータ巻線101,102,103に流れる電流を検出する電流検出部33とを備えている。
ECU12は、マイクロコンピュータ31と、このマイクロコンピュータ31によって制御され、電動モータ18に電力を供給する駆動回路(インバータ回路)32と、電動モータ18の各相のステータ巻線101,102,103に流れる電流を検出する電流検出部33とを備えている。
電流検出部33は、電動モータ18の各相のステータ巻線に流れる相電流iU,iV,iW(以下、総称するときには「三相検出電流iU,iV,iW」という)を検出する。これらは、UVW座標系における各座標軸方向の電流値である。
マイクロコンピュータ31は、CPUおよびメモリ(ROM,RAMなど)を備えており、所定のプログラムを実行することによって、複数の機能処理部として機能するようになっている。この複数の機能処理部には、指令値設定部41と、電流位相角演算部42と、d軸電流指令値演算部43と、q軸電流指令値演算部44と、d軸電流偏差演算部45と、q軸電流偏差演算部46と、d軸PI(比例積分)制御部47と、q軸PI(比例積分)制御部48と、d軸指示電圧生成部49と、q軸指示電圧生成部50と、二相/三相座標変換部51と、PWM制御部52と、回転角演算部53と、三相/二相座標変換部54とが含まれている。
マイクロコンピュータ31は、CPUおよびメモリ(ROM,RAMなど)を備えており、所定のプログラムを実行することによって、複数の機能処理部として機能するようになっている。この複数の機能処理部には、指令値設定部41と、電流位相角演算部42と、d軸電流指令値演算部43と、q軸電流指令値演算部44と、d軸電流偏差演算部45と、q軸電流偏差演算部46と、d軸PI(比例積分)制御部47と、q軸PI(比例積分)制御部48と、d軸指示電圧生成部49と、q軸指示電圧生成部50と、二相/三相座標変換部51と、PWM制御部52と、回転角演算部53と、三相/二相座標変換部54とが含まれている。
指令値設定部41は、電動モータ18の回転方向の指令値である回転方向指令値と、電動モータ18の電機子電流の大きさの指令値である電流指令値Ia *とを設定する。具体的には、指令値設定部41は、トルクセンサ11によって検出される操舵トルク(検出操舵トルクTh)に基づいて、回転方向指令値を設定する。検出操舵トルクThは、たとえば左方向への操舵のためのトルクが正の値にとられ、右方向への操舵のためのトルクが負の値にとられている。左方向への操舵を補助するためのモータトルクの方向は、電動モータ18の正転方向に対応し、右方向への操舵を補助するためのモータトルクの方向は、電動モータ18の逆転方向に対応するものとする。
指令値設定部41は、検出操舵トルクThが正の値である場合には、電動モータ18を正転方向に回転させるための指令値(正転方向指令値)を回転方向指令値Di *として設定する。一方、検出操舵トルクThが負の値である場合には、指令値設定部41は、電動モータ18を逆転方向に回転させるための指令値(逆転方向指令値)を回転方向指令値Di *として設定する。指令値設定部41によって設定された回転方向指令値Di *は、二相/三相座標変換部51および三相/二相座標変換部54に与えられる。
また、指令値設定部41は、検出操舵トルクThの絶対値|Th|に基づいて電流指令値Ia *を設定する。検出操舵トルクThの絶対値|Th|に対する電流指令値Ia *の設定例は、図4に示されている。電流指令値Ia *は、0または正の値をとり、検出操舵トルクThの絶対値|Th|が大きくなるほど大きな値に設定される。これにより、検出操舵トルクThの絶対値|Th|が大きくなるほど、操舵補助力を大きくすることができる。
電流指令値設定部41は、たとえば、図4に示されるような操舵トルクThの絶対値|Th|と電流指令値Ia *との関係を記憶したマップまたはそれらの関係を表す演算式を用いて、操舵トルクThの絶対値|Th|に応じた電流指令値Ia *を設定する。電流指令値設定部41によって設定された電流指令値Ia *は、電流位相角演算部42に与えられるとともに、d軸電流指令値演算部43およびq軸電流指令値演算部44に与えられる。
電流位相角演算部42は、電流指令値設定部41から与えられた電流指令値Ia *と予め設定された電流位相角演算式とに基づいて、当該電流指令値Ia *に対してモータトルクが最大値に近い値となる電流位相角β(電気角)[deg]を演算する。電流位相角演算式の作成方法について説明する。
電動モータ18を高効率で駆動するためには、電機子電流に対するモータトルクの比が大きくなるように電動モータ18を制御すればよい。
電動モータ18を高効率で駆動するためには、電機子電流に対するモータトルクの比が大きくなるように電動モータ18を制御すればよい。
極対数がPnであるシンクロナスリラクタンスモータにおけるモータトルクTは、次式(4)で表される。
T=Pn・(Ld−Lq)・id・iq …(4)
Ldはd軸インダクタンス[H]であり、Lqはq軸インダクタンス[H]である。また、idはd軸電流[A]であり、iqはq軸電流[A]である。
T=Pn・(Ld−Lq)・id・iq …(4)
Ldはd軸インダクタンス[H]であり、Lqはq軸インダクタンス[H]である。また、idはd軸電流[A]であり、iqはq軸電流[A]である。
電機子電流の大きさをIa[A]とし、電流位相差をβ[deg]とすると、iq=Ia・sinβ,id=Ia・cosβとなるので、モータトルクTは、次式(5)で表される。なお、電流位相差βは、回転磁界をつくるための電流ベクトル(電機子電流ベクトル)とd軸との位相差である。
T=(1/2)・Pn・(Ld−Lq)・Ia 2sin2β …(5)
したがって、d軸インダクタンスLdおよびq軸インダクタンスLqが電流位相角βによって変動しなければ、電流位相角βが45[deg]のときにモータトルクTは最大となる。しかしながら、SynRMでは、d軸インダクタンスLdおよびq軸インダクタンスLqがロータコアの磁気飽和の影響を受けて変動するため、モータトルクTは電流位相角βが45[deg]のときに必ずしも最大にならない。
T=(1/2)・Pn・(Ld−Lq)・Ia 2sin2β …(5)
したがって、d軸インダクタンスLdおよびq軸インダクタンスLqが電流位相角βによって変動しなければ、電流位相角βが45[deg]のときにモータトルクTは最大となる。しかしながら、SynRMでは、d軸インダクタンスLdおよびq軸インダクタンスLqがロータコアの磁気飽和の影響を受けて変動するため、モータトルクTは電流位相角βが45[deg]のときに必ずしも最大にならない。
そこで、この実施形態では、電動モータ18に対して予め実験を行うことにより、使用する電機子電流Ia(電流指令値Ia *)の範囲において、複数の電機子電流Ia毎に電流位相角βに対するモータトルクTの特性データを取得する。
図5は、複数の電機子電流Ia毎に取得した電流位相角βに対するモータトルクTの特性データの一例を示すグラフである。図5の特性データは、前記非特許文献1に掲載のデータを転用したものである。図5では、横軸に電流位相角βをとり、縦軸にモータトルクTをとり、各電機子電流Iaの電流位相角βに対するモータトルクTの特性を、それぞれ曲線で表している。
図5は、複数の電機子電流Ia毎に取得した電流位相角βに対するモータトルクTの特性データの一例を示すグラフである。図5の特性データは、前記非特許文献1に掲載のデータを転用したものである。図5では、横軸に電流位相角βをとり、縦軸にモータトルクTをとり、各電機子電流Iaの電流位相角βに対するモータトルクTの特性を、それぞれ曲線で表している。
図5のグラフにおいて、各電機子電流Iaに対応する電流位相角−モータトルク特性曲線上の最大トルク値を結ぶ曲線を直線近似することにより、電機子電流Iaとその電機子電流Iaに対してモータトルクが最大値に近い値となる電流位相角βとの関係を表す近似式を求める。具体的には、次式(6)に基づいて、電機子電流Iaと電流位相角βとの関係を表す近似式を求める。なお、電機子電流Iaが零のときにモータトルクが最大となる電流位相角βは45度になるものとする。
β={(βmax−βmin)/Iamax}・Ia+βmin …(6)
Iamaxは、電機子電流Iaの最大値(電流指令値Ia *の最大値)であり、この例では、Iamax=50[A]である。βmaxは、電機子電流Iaが最大値Iamaxである場合に、モータトルクTが最大値となる電流位相角βであり、この例では、βmax=66[deg]であるとする。βminは、電機子電流Iaが最小値(零)である場合に、モータトルクTが最大値となる電流位相角βであり、この例では、βmin=45[deg]であるとする。
Iamaxは、電機子電流Iaの最大値(電流指令値Ia *の最大値)であり、この例では、Iamax=50[A]である。βmaxは、電機子電流Iaが最大値Iamaxである場合に、モータトルクTが最大値となる電流位相角βであり、この例では、βmax=66[deg]であるとする。βminは、電機子電流Iaが最小値(零)である場合に、モータトルクTが最大値となる電流位相角βであり、この例では、βmin=45[deg]であるとする。
前記式(5)に、Iamax=50[A]、βmax=66[deg]およびβmax=45[deg]を代入すると、次式(7)で表されるような近似式が得られる。
β=(21/50)・Ia+45 …(7)
図6の折れ線aは、各電機子電流Iaに対してモータトルクTが最大となる電流位相角βの実測データを示すグラフである。図6の直線bは、前記式(7)で表される近似直線を示している。
β=(21/50)・Ia+45 …(7)
図6の折れ線aは、各電機子電流Iaに対してモータトルクTが最大となる電流位相角βの実測データを示すグラフである。図6の直線bは、前記式(7)で表される近似直線を示している。
前記近似式(7)内のIaを電流指令値Ia *に置き換えることにより、次式(8)で示されるように、電流指令値Ia *から電流位相角βを演算するための演算式(電流位相角演算式)が得られる。
β=(21/50)・Ia *+45 …(8)
したがって、この実施形態では、βは45[deg]以上66[deg]以下の角度となる。
β=(21/50)・Ia *+45 …(8)
したがって、この実施形態では、βは45[deg]以上66[deg]以下の角度となる。
電流位相角演算部42には、前述のようにして求められた電流位相角演算式(例えば前記式(8))が予め設定されている。電流位相角演算部42は、予め設定されている電流位相角演算式と、電流指令値設定部41から与えられた電流指令値Ia *とに基づいて、電流指令値Ia *に対してモータトルクが最大値に近い値となる電流位相角βを演算する。電流位相角演算部42によって演算された電流位相角βは、d軸電流指令値演算部43およびq軸電流指令値演算部44に与えられる。
d軸電流指令値演算部43は、電流指令値設定部41から与えられた電機子電流指令値Ia *と電流位相角演算部42から与えられた電流位相角βとを用い、次式(9)に基づいてd軸電流の指令値id *を演算する。
id *=Ia *・cosβ …(9)
q軸電流指令値生成部44は、電流指令値設定部41から与えられた電機子電流指令値Ia *と電流位相角演算部42から与えられた電流位相角βとを用い、次式(10)に基づいてq軸電流の指令値iq *を演算する。
id *=Ia *・cosβ …(9)
q軸電流指令値生成部44は、電流指令値設定部41から与えられた電機子電流指令値Ia *と電流位相角演算部42から与えられた電流位相角βとを用い、次式(10)に基づいてq軸電流の指令値iq *を演算する。
iq *=Ia *・sinβ …(10)
前述したように、この実施形態では、Ia *は零以上の値(Ia *≧0)であり、βは45[deg]以上66[deg]以下の角度(45≦β≦66)である。したがって、この実施形態では、d軸電流の指令値id *およびq軸電流の指令値iq *は、Ia *≧0でかつ45≦β≦66で規定される所定の範囲内の値となる。
前述したように、この実施形態では、Ia *は零以上の値(Ia *≧0)であり、βは45[deg]以上66[deg]以下の角度(45≦β≦66)である。したがって、この実施形態では、d軸電流の指令値id *およびq軸電流の指令値iq *は、Ia *≧0でかつ45≦β≦66で規定される所定の範囲内の値となる。
d軸電流指令値id *およびq軸電流指令値iq *を総称して、「二相指示電流id *,iq *」という場合がある。
回転角演算部53は、回転角センサ25の出力信号に基づいて、電動モータ18のロータの回転角(ロータ回転角)θを演算する。
電流検出部33によって検出された三相検出電流iU,iV,iWは、三相/二相座標変換部54に与えられる。三相/二相座標変換部54は、座標変換モードとして、第1座標変換モードと第2座標変換モードとを有している。第1座標変換モードは、回転角演算部53によって演算されたロータ回転角θにα(α>0)が加算された値(以下、「第1回転角(θ+α)」という。)をロータ回転角θの代わりに用いて、三相検出電流iU,iV,iWをdq座標上でのd軸電流idおよびq軸電流iqに変換するモードである。
回転角演算部53は、回転角センサ25の出力信号に基づいて、電動モータ18のロータの回転角(ロータ回転角)θを演算する。
電流検出部33によって検出された三相検出電流iU,iV,iWは、三相/二相座標変換部54に与えられる。三相/二相座標変換部54は、座標変換モードとして、第1座標変換モードと第2座標変換モードとを有している。第1座標変換モードは、回転角演算部53によって演算されたロータ回転角θにα(α>0)が加算された値(以下、「第1回転角(θ+α)」という。)をロータ回転角θの代わりに用いて、三相検出電流iU,iV,iWをdq座標上でのd軸電流idおよびq軸電流iqに変換するモードである。
第2座標変換モードは、回転角演算部53によって演算されたロータ回転角θからα(α>0)が減算された第2回転角(θ−α)をロータ回転角θの代わりに用いて、三相検出電流iU,iV,iWをdq座標上でのd軸電流idおよびq軸電流iqに変換するモードである。以下、d軸電流idおよびq軸電流iqを総称するときには「二相検出電流id,iq」という。この実施形態では、αは電気角の45[deg]に設定されている。
この実施形態では、三相/二相座標変換部54は、指令値設定部41から与えられた回転方向指令値Di *が逆転方向指令値である場合には、第1座標変換モードで、三相検出電流iU,iV,iWを二相検出電流id,iqに座標変換する。一方、指令値設定部41から与えられた回転方向指令値Di *が正転方向指令値である場合には、三相/二相座標変換部54は、第2座標変換モードで、三相検出電流iU,iV,iWを二相検出電流id,iqに座標変換する。
三相/二相座標変換部54によって得られたd軸電流idは、d軸電流偏差演算部45に与えられる。三相/二相座標変換部54によって得られたq軸電流iqは、q軸電流偏差演算部46に与えられる。
d軸電流偏差演算部45は、d軸電流指令値id *に対するd軸電流idの偏差を演算する。d軸電流偏差演算部45によって演算された電流偏差は、d軸PI制御部47に与えられて、PI演算処理を受ける。d軸指示電圧生成部49は、d軸PI制御部47の演算結果に応じて、d軸指示電圧vd *を生成する。
d軸電流偏差演算部45は、d軸電流指令値id *に対するd軸電流idの偏差を演算する。d軸電流偏差演算部45によって演算された電流偏差は、d軸PI制御部47に与えられて、PI演算処理を受ける。d軸指示電圧生成部49は、d軸PI制御部47の演算結果に応じて、d軸指示電圧vd *を生成する。
q軸電流偏差演算部46は、q軸電流指令値iq *に対するq軸電流iqの偏差を演算する。q軸電流偏差演算部46によって演算された電流偏差は、q軸PI制御部48に与えられて、PI演算処理を受ける。q軸指示電圧生成部50は、q軸PI制御部48の演算結果に応じて、q軸指示電圧vq *を生成する。以下、d軸指示電圧vd *およびq軸指示電圧vq *を総称するときには「二相指示電圧vd *,vq *」という。
二相指示電圧vd *,vq *は、二相/三相座標変換部51に与えられる。二相/三相座標変換部51は、座標変換モードとして、第1座標変換モードと第2座標変換モードとを有している。第1座標変換モードは、第1回転角(θ+α)をロータ回転角θの代わりに用いて、d軸指示電圧vd *およびq軸指示電圧vq *を、UVW座標系の指示電圧、すなわち、U相,V相およびW相の指示電圧vU *,vV *,vW *に変換するモードである。
第2座標変換モードは、第2回転角(θ−α)をロータ回転角θの代わりに用いて、d軸指示電圧vd *およびq軸指示電圧vq *を、U相,V相およびW相の指示電圧vU *,vV *,vW *に変換するモードである。この実施形態では、αは、電気角の45[deg]に設定されている。以下、U相,V相およびW相の指示電圧vU *,vV *,vW *を総称するときには「三相指示電圧vU *,vV *,vW *」という。
この実施形態では、二相/三相座標変換部51は、指令値設定部41から与えられた回転方向指令値Di *が逆転方向指令値である場合には、第1座標変換モードで、二相指示電圧vd *,vq *を三相指示電圧vU *,vV *,vW *に座標変換する。一方、指令値設定部41から与えられた回転方向指令値Di *が正転方向指令値である場合には、二相/三相座標変換部51は、第2座標変換モードで、二相指示電圧vd *,vq *を三相指示電圧vU *,vV *,vW *に座標変換する。
PWM制御部52は、U相指示電圧vU *、V相指示電圧vV *およびW相指示電圧vW *にそれぞれ対応するデューティ比のU相PWM制御信号、V相PWM制御信号およびW相PWM制御信号を生成し、駆動回路32に供給する。
駆動回路32は、U相、V相およびW相に対応した三相インバータ回路からなる。このインバータ回路を構成するパワー素子がPWM制御部52から与えられるPWM制御信号によって制御されることにより、三相指示電圧vU *,vV *,vW *に相当する電圧が電動モータ18の各相のステータ巻線に印加されることになる。
駆動回路32は、U相、V相およびW相に対応した三相インバータ回路からなる。このインバータ回路を構成するパワー素子がPWM制御部52から与えられるPWM制御信号によって制御されることにより、三相指示電圧vU *,vV *,vW *に相当する電圧が電動モータ18の各相のステータ巻線に印加されることになる。
電流偏差演算部45,46およびPI制御部47,48は、電流フィードバック制御手段を構成している。この電流フィードバック制御手段の働きによって、電動モータ18に流れるモータ電流が、d軸およびq軸電流指令値演算部43,44によって演算される二相指示電流id *,iq *に近づくように制御される。
この実施形態では、指令値設定部41が回転方向指令値Di *として逆転方向指令値を設定しているときには、各座標変換部51,54は、第1回転角(θ+45°)を用いて座標変換を行っている。一方、指令値設定部41が回転方向指令値Di *として正転方向指令値を設定しているときには、各座標変換部51,54は、第2回転角(θ−45°)を用いて座標変換を行っている。以下、図7〜図9を参照して、この理由について説明する。
この実施形態では、指令値設定部41が回転方向指令値Di *として逆転方向指令値を設定しているときには、各座標変換部51,54は、第1回転角(θ+45°)を用いて座標変換を行っている。一方、指令値設定部41が回転方向指令値Di *として正転方向指令値を設定しているときには、各座標変換部51,54は、第2回転角(θ−45°)を用いて座標変換を行っている。以下、図7〜図9を参照して、この理由について説明する。
図7は、各座標変換部51,54が、回転角演算部53によって演算されたロータ回転角θをそのまま用いて座標変換した場合に発生する電機子電流ベクトルIaを示している。この場合には、d軸電流成分idがd軸電流指令値id *(≧0)に等しくなりかつq軸電流成分iqがq軸電流指令値iq *(≧0)に等しくなるように電流制御が行われるので、電機子電流Iaは図7に示すようになる。つまり、電機子電流ベクトルIaと+d軸とのなす角度βは、電流位相角演算部42によって演算された電流位相角β(45°≦β≦66°)となる。
ロータ100には磁石が設けられてないので電動モータ18が駆動されていないときには無極性である。ステータ巻線101〜103に電流が流れるとロータ100に磁界が発生する。この際、ロータ100の極性は、ステータ巻線101〜103に流れる電流の方向によって決まる。図7において、電機子電流ベクトルIaの終点がdq座標系の第1象限または第4象限にある場合には、ロータ100における+d軸方向に対応する突極部の極性がN極となり、−d軸方向に対応する突極部の極性がS極となる。電機子電流ベクトルIaの終点がdq座標系の第2象限または第3象限にある場合には、ロータ100における+d軸方向に対応する突極部の極性がS極となり、−d軸方向に対応する突極部の極性がN極となる。
そして、極性がN極である突極部が、電機子電流ベクトルIa側に引き付けられる。したがって、図7の例では、+d軸方向に対応する突極部が矢印Aで示すように電機子電流ベクトルIa側に引き付けられるので、ロータ100は反時計方向に回転する。
次に、d軸電流指令値id *およびq軸電流指令値iq *を図7の場合と同じ大きさとし、各座標変換部51,54が第1座標変換モードで座標変換を行う場合を想定する。この場合、各座標変換部51,54は、第1回転角(θ+45°)を用いて座標変換を行う。つまり、各座標変換部51,54は、図8に示すように、d軸を+45度回転させたd’軸((d+45°)軸)と、q軸を+45度回転させたq’軸((q+45°)軸)とからなるd’ q’座標系で、座標変換を行うことになる。この際、d軸電流指令値id *の大きさがd’軸電流成分id’となり、q軸電流指令値id *の大きさがq’軸 電流成分iq’となるから、電機子電流ベクトルIaは図8に示すようになる。
次に、d軸電流指令値id *およびq軸電流指令値iq *を図7の場合と同じ大きさとし、各座標変換部51,54が第1座標変換モードで座標変換を行う場合を想定する。この場合、各座標変換部51,54は、第1回転角(θ+45°)を用いて座標変換を行う。つまり、各座標変換部51,54は、図8に示すように、d軸を+45度回転させたd’軸((d+45°)軸)と、q軸を+45度回転させたq’軸((q+45°)軸)とからなるd’ q’座標系で、座標変換を行うことになる。この際、d軸電流指令値id *の大きさがd’軸電流成分id’となり、q軸電流指令値id *の大きさがq’軸 電流成分iq’となるから、電機子電流ベクトルIaは図8に示すようになる。
この電機子電流ベクトルIaの終点はdq座標系の第2象限にあるので、ロータ100における+d軸方向に対応する突極部の極性がS極となり、−d軸方向に対応する突極部の極性がN極となる。したがって、−d軸方向に対応する突極部が矢印Bで示すように電機子電流ベクトルIa側に引き付けられるのでロータ100は時計方向(逆転方向)に回転する。
次に、d軸電流指令値id *およびq軸電流指令値iq *を図7の場合と同じ大きさとし、各座標変換部51,54が第2座標変換モードで座標変換を行う場合を想定する。この場合、各座標変換部51,54は、第2回転角(θ−45°)を用いて座標変換を行う。つまり、各座標変換部51,54は、図9に示すように、d軸を−45度回転させたd”軸((d−45°)軸)と、q軸を−45度回転させたq”軸((q−45°)軸)とからなるd” q”座標系で、座標変換を行うことになる。この際、d軸電流指令値id *の大きさがd”軸電流成分id”となり、q軸電流指令値id *の大きさがq”軸 電流成分iq”となるから、電機子電流ベクトルIaは図9に示すようになる。
この電機子電流ベクトルIaの終点はdq座標系の第1象限にあるので、ロータ100における+d軸方向に対応する突極部の極性がN極となり、−d軸方向に対応する突極部の極性がS極となる。したがって、+d軸方向に対応する突極部が矢印Cで示すように電機子電流ベクトルIa側に引き付けられるのでロータ100は反時計方向(正転方向)に回転する。
つまり、この実施形態では、各座標変換部51,54が第1座標変換モードで座標変換を行った場合には、ロータ100の回転方向は逆転方向となり、各座標変換部51,54が第2座標変換モードで座標変換を行った場合では、ロータ100の回転方向が正転方向となる。回転方向指令値Di *が逆転方向指令値である場合には、各座標変換部51,54は第1座標変換モードで座標変換を行うので、ロータ100は逆転方向に回転する。一方、回転方向指令値Di *が正転方向指令値である場合には、各座標変換部51,54は第2座標変換モードで座標変換を行うので、ロータ100は正転方向に回転する。これにより、ロータ100を、回転方向指令値Di *に応じた方向に回転させることができる。
以上、この発明の一実施形態について説明したが、この発明はさらに他の形態で実施することもできる。たとえば、前述の実施形態では、βが45[deg]以上66[deg]以下の角度となるように、d軸電流の指令値id *およびq軸電流の指令値iq *が設定されているが、βが45[deg]以上90[deg]以下の角度となるように、d軸電流の指令値id *およびq軸電流の指令値iq *が設定されてもよい。また、βが0[deg]以上45[deg]以下の角度となるように、d軸電流の指令値id *およびq軸電流の指令値iq *が設定されてもよい。
また、前述の実施形態では、電流位相角演算部42は、電流指令値設定部41から与えられた電流指令値Ia *と、予め設定された電流位相角演算式(例えば式(8)参照)とに基づいて、当該電流指令値Ia *に対してモータトルクが最大値に近い値となる電流位相角βを演算している。しかし、電流位相角演算部42は、前記電流位相角演算式によって表される電流指令値Ia *と電流位相角βとの関係を記憶したマップと、電流指令値設定部41から与えられた電流指令値Ia *とに基づいて、当該電流指令値Ia *に対してモータトルクが最大値に近い値となる電流位相角βを演算してもよい。
また、前述の実施形態では、前記式(6)に基づいて、各電機子電流Iaに対応する電流位相角−モータトルク特性曲線上の最大トルク値を結ぶ曲線を直線近似し、得られた近似式に基づいて電流位相角演算式を求めている。しかし、最小二乗法等の他の方法によって、各電機子電流Iaに対応する電流位相角−モータトルク特性曲線上の最大トルク値を結ぶ曲線を直線近似し、得られた近似式に基づいて電流位相角演算式を求めるようにしてもよい。
その他、特許請求の範囲に記載された事項の範囲で種々の設計変更を施すことが可能である。
12…ECU、18…電動モータ、25…回転角センサ、31…マイクロコンピュータ、33…電流検出部、41…指令値設定部、42…電流位相角演算部、43…d軸電流指令値演算部、44…q軸電流指令値演算部、45…d軸電流偏差演算部、46…q軸電流偏差演算部、47…d軸PI制御部、48…q軸PI制御部、49…d軸指示電圧生成部、 50…q軸指示電圧生成部、51…二相/三相座標変換部、54…三相/二相座標変換部、100…ロータ、101,102,103…ステータ巻線、105…ステータ
Claims (2)
- U相、V相およびW相のステータ巻線を有するステータと複数の突極部を有するロータとを備えたシンクロナスリラクタンスモータを制御するモータ制御装置であって、
前記モータの回転角を検出する回転角検出手段と、
前記モータの各ステータ巻線に流れる電流を検出する電流検出手段と、
前記電流検出手段によって検出される三相の検出電流をdq座標系の二相検出電流に変換する三相/二相座標変換手段と、
前記モータの電流の指令値と前記モータの回転方向の指令値とを設定する指令値設定手段と、
前記指令値設定手段によって設定された電流指令値に基づいて、dq座標系の二相指示電流値を演算する二相指示電流演算手段と、
前記二相指示電流演算手段によって演算された二相指示電流値と、前記三相/二相座標変換手段によって得られた二相検出電流とに基づいて、dq座標系の二相指示電圧を演算する電流フィードバック手段と、
前記電流フィードバック手段によって演算された二相指示電圧を、UVW座標系の三相指示電圧に変換する二相/三相座標変換手段とを含み、
前記三相/二相座標変換手段および前記二相/三相座標変換手段は、それぞれ前記回転角検出手段によって検出された回転角に所定角度α(0<α)が加算された第1回転角を用いて座標変換を行う第1座標変換モードと、前記回転角検出手段によって検出された回転角から所定角度α(0<α)が減算された第2回転角を用いて座標変換を行う第2座標変換モードとを有し、前記指令値設定手段によって設定された回転方向指令値に応じて、第1座標変換モードと第2座標変換モードとを切り換えるように構成されている、モータ制御装置。 - 前記所定角度αが電気角の45[deg]である請求項1に記載のモータ制御装置。
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