JP6113640B2 - 積層体 - Google Patents

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Description

本発明はポリビニルアセタールを含む積層体に関する。
ポリビニルアセタール及び可塑剤を含むシートは、ガラスとの接着性や透明性、また力学強度および柔軟性に優れることから合わせガラス用中間膜として広範に利用されている。
合わせガラス用中間膜は、その含水率が高くなると可塑剤のブリード(滲み出し)が起こることがあり、また倉庫等で保管する際、夏場など外気温が25℃〜40℃のように高くなると、そのような高温下では、該中間膜が変形したり、中間膜同士のブロッキングが起こったりしやすくなる。通常は空調設備などによって可塑剤のブリード、変形やブロッキングが起こらないように低温かつ低湿度に調節された倉庫等で保管される。
しかし、合わせガラス用中間膜の保管を行う際に、例えば空調設備の故障によって倉庫内が高温かつ高湿度になり、合わせガラス用中間膜の含水率が著しく高くなってしまうことがある。含水率の高い合わせガラス用中間膜をそのままにしておくと、該中間膜中で水や可塑剤が相分離したり、また、該中間膜の表面に可塑剤がブリードしたりして合わせガラス用中間膜の透明性や力学特性が低下することがある。
ところで、近年、遮音性を有する合わせガラス用中間膜として、多層合わせガラス用中間膜の検討がなされている。遮音性合わせガラス用中間膜としては、力学強度の発現またはガラスとの接着性の発現を目的とした可塑剤含有量の低い層と、遮音性の発現のための可塑剤含有量の高い層とが積層された、遮音性多層合わせガラス用中間膜が一般的に使用されている(特許文献1、2参照)。
多層合わせガラス用中間膜も含水率の高い状態で長時間保管すると含水率が著しく高くなり、該中間膜中で水や可塑剤が相分離したり、また該中間膜の表面に可塑剤がブリードしたりするため、かかる含水率の高くなった多層合わせガラス用中間膜は低温かつ低湿度の雰囲気下で乾燥させる必要がある。ところが、高含水率の多層合わせガラス用中間膜を低温かつ低湿度の雰囲気で急激に乾燥させると、該中間膜中で水や可塑剤がポリビニルアセタールと相分離して該中間膜が不透明になったり、また該中間膜の層間に水や可塑剤がブリードして層間剥離や透明性低下を引き起こしたりすることがある。これらを回避するためには温度および湿度を段階的に低下させながら乾燥を行う方法が挙げられるが、乾燥に長時間を要するという問題がある。
また、合わせガラス用中間膜は一般的に可塑剤を含有しており、合わせガラスの端部で該中間膜がむき出しとなった部分に付着した水により可塑剤が抽出され、ガラスと該中間膜が剥離したり気泡が生じたりして合わせガラスの外観が損なわれる場合があった。また可塑剤の種類によっては、合わせガラスの製造の際に減圧工程を経る場合や、長期使用した場合に合わせガラスの端部から可塑剤が揮発することがあった。
また、積層遮音中間膜は、ガラスとの接着性や力学強度を発現するa層と、遮音性能を発現するb層とを積層してなるものであり、これらの特性をバランスよく発現させるためにa層に含まれるポリビニルアセタールと、b層に含まれるポリビニルアセタールとは、それぞれ平均残存水酸基量の異なるものを使用している。積層遮音中間膜を、短時間で温度が大きく変化する環境下(一日の寒暖差が大きい環境)において長期間使用した場合に、合わせガラス用中間膜の層間剥離が発生し、合わせガラスとしての安全性が損なわれたり、外観が損なわれたりすることがあった。
特開2007−331959号公報 国際公開第2010/038801号
本発明は上記課題を解決するものであり、積層体に含まれる可塑剤が水によって抽出されにくくかつ揮発しにくく、含水率の高い積層体を低温および低湿度の雰囲気で急激に乾燥させても積層体中で水や可塑剤がポリビニルアセタールと相分離しにくく、また水や可塑剤の層間へのブリードが起こりにくい積層体を提供することを目的とする。また、本発明は、合わせガラス用中間膜として使用した場合にガラスとの接着性や力学強度および遮音性能に優れ、温度変化の著しい環境下で長期間使用しても層間剥離が生じにくい積層体を提供することを目的とする。
本発明によれば、上記の課題は、平均残存水酸基量がX(モル%)であるポリビニルアセタール(A)、可塑剤(Ap)及び分散剤(Ad)を含むA層と、平均残存水酸基量がY(モル%)であるポリビニルアセタール(B)及び可塑剤(Bp)を含み、分散剤(Bd)を含んでいても良いB層とを備え、X≧Yであり、式(1):
Figure 0006113640
[式中、(a2)は内径4mm、長さ1cmのオクタデシルシリル基で表面修飾された球状シリカゲルを固定相として充填したカラムを用いた高速液体クロマトグラフィー分析におけるポリビニルアセタール(A)に由来するピークの検出終わりの時間(分)を表し、(b1)は前記高速液体クロマトグラフィー分析におけるポリビニルアセタール(B)に由来するピークの検出初めの時間(分)を表す。]を満たし、A層中の可塑剤(Ap)の含有量に対する分散剤(Ad)の含有量の質量比が、B層中の可塑剤(Bp)の含有量に対する分散剤(Bd)の含有量の質量比より大きく、可塑剤(Ap)がm価アルコール1分子(mは2〜4の自然数を表す)と炭素数8〜20の一価カルボン酸m分子とのエステル化反応で得られる化学構造を有するエステル化合物であり、分散剤(Ad)が可塑剤(Ap)の少なくとも1つのエステル結合を加水分解して得られる化学構造を有しかつ(m−1)〜1個の水酸基と1〜(m−1)個のエステル結合を有する化合物であり、可塑剤(Bp)がn価アルコール1分子(nは2〜4の自然数を表す)と炭素数8〜20の一価カルボン酸n分子とのエステル化反応で得られる化学構造を有するエステル化合物であり、分散剤(Bd)が可塑剤(Bp)の少なくとも1つのエステル結合を加水分解して得られる化学構造を有しかつ(n−1)〜1個の水酸基と1〜(n−1)個のエステル結合を有する化合物である、積層体により解決される。
(b1)分から(a2)分の範囲に存在するポリビニルアセタール(A)のピーク面積が、ポリビニルアセタール(A)の全ピーク面積の30〜100%であることが好ましい。
(b1)分から(a2)分の範囲に存在するポリビニルアセタール(B)のピーク面積が、ポリビニルアセタール(B)の全ピーク面積の10〜100%であることが好ましい。
ポリビニルアセタール(B)の上記高速液体クロマトグラフィー分析において、ピークが極大となる点が少なくとも2つ検出されることが好ましい。
ポリビニルアセタール(B)のピークが極大となる点の少なくとも1つが(b1)分から(a2)分の間に検出されることが好ましい。
ポリビニルアセタール(A)の前記高速液体クロマトグラフィー分析において、ピークが極大となる点が少なくとも2つ検出されることが好ましい。
ポリビニルアセタール(A)のピークが極大となる点の少なくとも1つが(b1)分から(a2)分の間に検出されることが好ましい。
m価アルコールは縮合度が3〜20であるエチレングリコールの縮合体であることが好ましい。
n価アルコールは縮合度が3〜20であるエチレングリコールの縮合体であることが好ましい。
ポリビニルアセタール(A)の平均残存水酸基量Xは20〜40モル%であることが好ましい。
ポリビニルアセタール(B)の平均残存水酸基量Yは10〜35モル%であり、平均残存ビニルエステル基量は0.01〜25モル%であることが好ましい。
A層におけるポリビニルアセタール(A)100質量部に対する可塑剤(Ap)の含有量が、B層におけるポリビニルアセタール(B)100質量部に対する可塑剤(Bp)の含有量より少ないことが好ましい。
A層における可塑剤(Ap)の含有量は、ポリビニルアセタール(A)100質量部に対して20〜60質量部が好ましい。
B層における可塑剤(Bp)の含有量は、ポリビニルアセタール(B)100質量部に対して30〜80質量部が好ましい。
前記一価カルボン酸は、カルボキシル基に隣接する炭素にカルボニル基以外の有機基が少なくとも2つ結合していることが好ましい。
三層以上の層からなる積層体であり、積層体の外層の二層のうち少なくとも一層がA層であることが好ましい。
A層の任意の10cm四方の範囲において、任意の相異なる25点の厚さを測定したとき、最も厚い部分の厚さに対する最も薄い部分の厚さの比が0.90〜0.97であることが好ましい。また、B層の任意の10cm四方の範囲において、任意の相異なる25点の厚さを測定したとき、最も厚い部分の厚さに対する最も薄い部分の厚さの比が0.90〜0.97であることが好ましい。
本発明によると、上記の目的は、前記積層体を含む合わせガラスを提供することで好適に達成される。
本発明によれば、積層体に含まれる可塑剤が水によって抽出されにくくかつ揮発しにくく、含水率の高い積層体を低温および低湿度の雰囲気で急激に乾燥させても積層体中で水や可塑剤がポリビニルアセタールと相分離しにくく、また水や可塑剤の層間へのブリードが起こりにくい積層体を提供できる。また、本発明は、合わせガラス用中間膜として使用した場合にガラスとの接着性や力学強度および遮音性能に優れ、温度変化の著しい環境下で長期間使用しても層間剥離が生じにくい積層体を提供できる。
本発明の実施の形態にかかる高速液体クロマトグラフィー(HPLC)分析において得られるチャート(クロマトグラム)の例を示す図である。 HPLC分析におけるサンプル注入からの経過時間(横軸)に対する各時刻における移動相に占める移動相Bの割合を示す図である。 本発明の実施の形態にかかるHPLC分析において得られるチャート(クロマトグラム)の例を示す図である。 本発明の実施の形態にかかるHPLC分析において得られるチャート(クロマトグラム)の例を示す図である。
本発明の積層体は、平均残存水酸基量がX(モル%)であるポリビニルアセタール(A)、可塑剤(Ap)及び分散剤(Ad)を含むA層と、平均残存水酸基量がY(モル%)であるポリビニルアセタール(B)及び可塑剤(Bp)を含み、分散剤(Bd)を含んでいても良いB層とを備える。
まず、本発明で使用するポリビニルアセタールについて説明する。
本発明で使用するポリビニルアセタール(A)の平均残存水酸基量X(モル%)は特に限定されないが、通常20〜40モル%が好ましく、23〜38モル%がより好ましく、25〜36モル%がさらに好ましく、26〜29モル%が特に好ましい。平均残存水酸基量Xが20モル%未満であると、得られる積層体の力学強度やガラスとの接着性が低下することがあり、また40モル%を超えると、可塑剤(Ap)との相溶性が著しく低下することがある。
ポリビニルアセタール(A)の平均アセタール化度は限定されないが、通常50〜78モル%が好ましく、60〜74モル%がより好ましく、65〜73モル%がさらに好ましい。平均アセタール化度が50モル%未満であると、可塑剤(Ap)との相溶性が著しく低下することがあり、また78モル%を超えると、得られる積層体の力学強度が低下することがある。
ポリビニルアセタール(A)の平均残存ビニルエステル基量は特に限定されないが、通常0.01〜15モル%が好ましく、0.01〜10モル%がより好ましく、0.01〜5モル%がさらに好ましい。平均残存ビニルエステル基量が0.01モル%未満のものは工業的に安価に生産することが困難であり、また15モル%を超えると、得られる積層体を長期間使用するとビニルエステル基が加水分解することに起因して積層体が着色しやすくなる。
本発明で使用するポリビニルアセタール(B)の平均残存水酸基量Y(モル%)は特に限定されないが、通常10〜35モル%が好ましく、13〜33モル%がより好ましく、15〜30モル%がさらに好ましい。平均残存水酸基量Yが10モル%未満であると力学強度やガラスとの接着性が著しく低下することがあり、また35モル%を超えると可塑剤(Bp)との相溶性が低下することがある。
ポリビニルアセタール(B)の平均アセタール化度は限定されないが、通常60〜84モル%が好ましく、65〜82モル%がより好ましく、70〜80モル%がさらに好ましい。平均アセタール化度が60モル%未満であると可塑剤(Bp)との相溶性が低下することがあり、また84モル%を超えると、得られる積層体の力学強度が低下することがある。
ポリビニルアセタール(B)の平均残存ビニルエステル基量は特に限定されないが、通常0.01〜25モル%が好ましく、3〜16モル%がより好ましく、3〜15モル%がさらに好ましく、4〜13モル%が特に好ましい。平均残存ビニルエステル基量が0.01モル%未満のものは工業的に安価に生産することが困難であり、また可塑剤(Bp)との相溶性が低下することがある。また25モル%を超えると、得られる積層体を長期間使用するとビニルエステル基が加水分解することに起因して積層体が着色しやすくなる。
ポリビニルアセタール(A)の平均残存水酸基量Xはポリビニルアセタール(B)の平均残存水酸基量Yと同じかまたはYよりも大きく、6〜20モル%大きいことがより好ましく、8〜15モル%大きいことがより好ましい。このような平均残存水酸基量の関係を満たすと、含水率の高い積層体を低温および低湿度の雰囲気で急激に乾燥させても積層体中で水や可塑剤がポリビニルアセタールと相分離しにくく、また水や可塑剤の層間へのブリードが起こりにくく好適であり、また積層体を遮音性合わせガラス用中間膜として使用する場合に遮音性能発現の観点から好適である。ただし、後述する積層体構造において最外層にする層の少なくとも一方の層の平均残存水酸基量が、内層となる層の平均残存水酸基量と同じかまたは内層のものよりも大きい条件であれば、各層における平均残存水酸基量が本発明の範囲を満たし、また、その他の要件が本発明を満たす限り、本発明の範囲から排除されるものではない。
本発明の積層体は、内径4mm、長さ1cmのオクタデシルシリル基で表面修飾された球状シリカゲルを固定相として充填したカラム(以下、ODSカラムと表すことがある)の高速液体クロマトグラフィー(以下、HPLCと表すことがある)の分析において、ポリビニルアセタール(A)のピークの検出初めの時間(分)を(a1)とし、検出終わりの時間(分)を(a2)とし、ポリビニルアセタール(B)のピークの検出初めの時間(分)を(b1)とし、検出終わりの時間(分)を(b2)とした場合に、式(1):
Figure 0006113640
を満たすものである。
(a2)−(b1)≧1.5であることが好ましく、(a2)−(b1)≧2であることがより好ましく、(a2)−(b1)≧3であることがさらに好ましい。((a2)−(a1))が1より小さいと、A層とB層に含まれる、同程度の極性を有するポリビニルアセタールの割合が少なくなり、A層とB層の層間接着性が十分でなくなる。
本発明における、内径4mm、長さ1cmのODSカラムを用いた高速液体クロマトグラフィーの分析において、ポリビニルアセタール(A)に由来するピークの検出初めの時間(a1)及びピークの検出終わりの時間(a2)について図1を用いて説明する。図1中、ピーク1はポリビニルアセタール(A)に由来するピークであり、ピーク2はポリビニルアセタール(B)に由来するピークである。
ポリビニルアセタール(A)に由来するピークの検出初めの時間(a1)とは、図1に示すように、ポリビニルアセタール(A)の溶出時間のうち、検出強度が、ピーク1の検出強度の最大値(ピーク1の極大となる点11の検出強度)の100分の1以上となる最小の溶出時間(分)である。ポリビニルアセタール(A)のピークの検出終わりの時間(a2)とは、ポリビニルアセタール(A)の溶出時間のうち、検出強度が、ピーク1の検出強度の最大値の100分の1以上となる最大の溶出時間(分)である。
ポリビニルアセタール(B)の検出初めの時間(b1)とは、ポリビニルアセタール(B)の溶出時間のうち、検出強度が、ピーク2の検出強度の最大値(ピーク2の極大となる点21の検出強度)の100分の1以上となる最小の溶出時間(分)である。ポリビニルアセタール(B)のピークの検出終わりの時間(b2)とは、ポリビニルアセタール(B)の溶出時間のうち、検出強度が、ピーク2の検出強度の最大値の100分の1以上となる最大の溶出時間(分)である。
本発明においてポリビニルアセタールを特定するために使用するHPLC装置としては、例えば、高圧グラジエントHPLCシステム「Prominence」(株式会社島津製作所製)が挙げられる。また、ODSカラムとしては、例えば、「Shim−pack G−ODS(4)(内径4mm×長さ1cm)」(株式会社島津製作所製)が挙げられる。これらと同様の機能を有するHPLC装置、ODSカラムであれば任意のものを用いることができる。また、検出器としては、例えば、蒸発光散乱検出器「ELSD−LTII」(株式会社島津製作所製)が挙げられるが、これと同様の機能を有する装置を検出器として用いることができる。
本発明におけるポリビニルアセタール(A)およびポリビニルアセタール(B)それぞれのHPLC分析は、以下の手順で行う。移動相Aとして体積比でエタノール/水が4/1である混合溶剤、および移動相Bとしてエタノールを使用する。サンプル注入前の時点においては、HPLCシステム内部は移動相Aで満たされた状態である。この状態でサンプルを注入する。そして、サンプル注入の直後から20分かけて移動相中における移動相Bの割合を一定速度(5vol%/分)で増加させる。サンプル注入から20分後(この時点で移動相は完全に移動相Bに置換される)から注入したサンプルの全量が溶出するまで移動相Bを流す。図2は、HPLC分析においてサンプル注入からの経過時間(横軸)と、各時刻における移動相に占める移動相Bの割合を表す。
温度変化が著しい環境下でもA層とB層との層間接着性に優れる観点から、(b1)分から(a2)分の範囲に存在するポリビニルアセタール(A)のピーク面積が、ポリビニルアセタール(A)の全ピーク面積に占める割合は、30〜100%であることが好ましく、40〜100%であることがより好ましく、50〜100%であることがさらに好ましく、60〜100%であることがさらにより好ましく、70〜100%であることが特に好ましい。なお、(b1)分から(a2)分の範囲に存在するポリビニルアセタール(A)のピーク面積とは、図3において、斜線部分で示す面積であり、ポリビニルアセタール(A)の全ピーク面積とは、(a1)分から(a2)分の範囲におけるポリビニルアセタール(A)のピーク面積である。
A層とB層の層間接着性の観点から、(b1)分から(a2)分の範囲に存在するポリビニルアセタール(B)のピーク面積が、ポリビニルアセタール(B)の全ピーク面積に占める割合は、10〜100%であることが好ましく、15〜100%であることがより好ましく、20〜100%であることがさらに好ましく、25〜100%であることが特に好ましい。なお、(b1)分から(a2)分の範囲に存在するポリビニルアセタール(B)のピーク面積とは、図4において、斜線部分で示す面積である。
ポリビニルアセタール(A)の内径4mm、長さ1cmのODSカラムを用いてのHPLC分析において、ピークが極大となる点の少なくとも1つが、溶出時間(b1)分から(a2)分の間に検出されることが好ましい。このような溶出時間にピークが極大となる点を有するポリビニルアセタール(A)を使用することで、A層とB層の層間接着性はより高くなる。
また、A層とB層の層間接着性の観点から、ポリビニルアセタール(A)の内径4mm、長さ1cmのODSカラムを用いてのHPLC分析において、ピークが極大となる点が少なくとも2つ検出されることが好ましい。
ポリビニルアセタール(B)を内径4mm、長さ1cmのODSカラムを用いてのHPLC分析において、ピークが極大となる点の少なくとも1つが、溶出時間(b1)分から(a2)分の間に検出されることが好ましい。このような溶出時間にピークが極大となる点を有するポリビニルアセタール(B)を使用することで、A層とB層の層間接着性はより高くなる。
また、A層とB層の層間接着性の観点から、ポリビニルアセタール(B)の内径4mm、長さ1cmのODSカラムを用いてのHPLC分析において、ピークが極大となる点が少なくとも2つ検出されることが好ましい。
本発明におけるポリビニルアセタール(A)およびポリビニルアセタール(B)は、本発明の規定を満たすものであれば、その入手方法は特に限定されない。以下にその方法を例示する。
本発明におけるポリビニルアセタール(A)およびポリビニルアセタール(B)は、一つの態様として、ポリビニルアルコールをアセタール化する方法で得られる。その方法を例示すると、濃度3〜20質量%のポリビニルアルコールの水溶液を、80〜100℃の温度範囲で保持した後、その温度を10〜60分かけて徐々に冷却する。温度が0〜30℃まで低下したところで、アルデヒド及び塩酸や硝酸などの酸触媒を添加し、温度を一定に保ちながら30〜300分間アセタール化反応を行う。この反応中、アセタール化度が一定水準に達したポリビニルアルコールが析出する(この時の反応温度を、析出反応温度とする)。その後、反応液を30〜200分かけて30〜80℃の温度まで昇温して、その温度を10〜200分保持しながら反応する(この時の反応温度を、追い込み反応温度とする)。次に、反応溶液に、必要に応じてアルカリなどの中和剤を添加して酸触媒を中和して水洗、乾燥することにより、ポリビニルアセタールが得られる。
本発明におけるポリビニルアセタール(A)は、例えば、平均残存水酸基量が異なる2種以上のポリビニルアセタールを混合して得る方法が挙げられる。この場合、例えば、平均残存水酸基量25〜40モル%、好ましくは27〜34モル%、さらに好ましくは28〜33モル%のポリビニルアセタールと、平均残存水酸基量15〜30モル%、好ましくは15〜26モル%、さらに好ましくは15〜24モル%のポリビニルアセタールであって、互いの平均残存水酸基量が1モル%以上、好ましくは2モル%以上、さらに好ましくは4モル%以上異なるものを、混合したポリビニルアセタールの平均残存水酸基が20〜40モル%になるように、適切な比率で混合して使用できる。平均残存水酸基量25〜40モル%のポリビニルアセタールと、平均残存水酸基量15〜30モル%のポリビニルアセタールとの混合比率は、99/1〜1/99であることが好ましく、99/1〜70/30であることがより好ましく、99/1〜50/50であることがさらに好ましい。平均残存水酸基量が異なる2種以上のポリビニルアセタールを混合する前記方法は、特に本発明におけるポリビニルアセタール(A)として、ポリビニルアセタール(A)の前記HPLC分析において、ピークが極大となる点が少なくとも2つ検出されるものを得るのに好適な方法である。
また、前記ポリビニルアルコールをアセタール化する方法として析出反応温度を20〜30℃にする、あるいは追い込み反応温度を75〜80℃にするなどの方法;得られるポリビニルアセタールの粒子径が大きくなるような条件でアセタール化反応を実施する方法;または、アセタール化度が一定水準に達したポリビニルアセタールが析出する前に、反応に使用する全アルデヒドの30〜90%を添加し、析出した後に全アルデヒドの10〜70%を添加するなどの方法を用いると、平均残存水酸基量が特定の値を満たしつつ、残存水酸基量の分布が広い、すなわち、ポリビニルアセタール(B)に極性の近いポリビニルアセタールを含むものを得ることができ、それゆえ、B層との層間接着性に優れる。このようなポリビニルアセタールをポリビニルアセタール(A)として使用することで、本発明の要件を満たす積層体を得ることができる。
またポリビニルアセタール(B)として、例えば、平均残存水酸基量が異なる2種以上のポリビニルアセタールを混合する方法が挙げられる。この場合、例えば、平均残存水酸基量25〜35モル%、好ましくは25〜33モル%、さらに好ましくは25〜31モル%のポリビニルアセタールと、平均残存水酸基量14〜28モル%、好ましくは15〜25モル%、さらに好ましくは16〜27モル%のポリビニルアセタールであって、互いの平均残存水酸基量が1モル%以上、好ましくは2モル%以上、さらに好ましくは4モル%以上異なるものを、混合したポリビニルアセタールの平均残存水酸基が10〜35モル%になるように、適切な比率で混合して使用することができる。平均残存水酸基量25〜35モル%のポリビニルアセタールと、平均残存水酸基量14〜28モル%のポリビニルアセタールとの混合比率は、99/1〜1/99であることが好ましく、70/30〜1/99であることがより好ましく、50/50〜1/99であることがさらに好ましい。平均残存水酸基量が異なる2種以上のポリビニルアセタールを混合する前記方法は、特に本発明のポリビニルアセタール(B)として、ポリビニルアセタール(B)の前記HPLC分析において、ピークが極大となる点が少なくとも2つ検出されるものを得るのに好適な方法である。
さらに、前記ポリビニルアルコールをアセタール化する方法で、析出反応温度を20〜30℃にする、あるいは追い込み反応温度を75〜80℃にするなどの方法により、得られるポリビニルアセタールの粒子径が大きくなるような条件でアセタール化反応を実施する方法、又は、アセタール化度が一定水準に達したポリビニルアセタールが析出する前に、反応に使用する全アルデヒドの30〜90%を添加し、析出した後に全アルデヒドの10〜70%を添加するなどの方法により、平均残存水酸基量が特定の値を満たしつつ、残存水酸基量の分布が広い、すなわち、ポリビニルアセタール(A)に極性の近いポリビニルアセタールを含むものを得ることができる。このため、A層との層間接着性に優れる。このようなポリビニルアセタールをポリビニルアセタール(B)として使用することで、本発明の要件を満たす積層体を得ることができる。このような方法によれば、平均残存水酸基量が10〜35モル%であり、内径4mm、長さ1cmのODSカラムでHPLC分析をした際、ピークが極大となる点が少なくとも2つ検出される、ポリビニルアセタール(B)を得ることができる。
アセタール化反応に用いるアルデヒドは特に限定されないが、公知の炭素数1〜8のアルデヒドでアセタール化することが好ましい。中でも炭素数4〜6のアルデヒドを用いることが好ましく、n−ブチルアルデヒドを用いることが特に好ましい。本発明においては、アルデヒドを2種類以上併用して得られるポリビニルアセタールを使用することもできる。
本発明の積層体を構成するA層が含有する可塑剤(Ap)は、m価アルコール1分子と炭素数8〜20の一価カルボン酸m分子とのエステル化反応で得られる化学構造を有するエステル化合物である。ここで、mは2〜4の自然数を表す。ただし可塑剤(Ap)は、m価アルコール1分子と炭素数8〜20の一価カルボン酸m分子とのエステル化反応により得られる化学構造を有していれば良く、m価アルコール1分子と炭素数8〜20の一価カルボン酸m分子とをエステル化反応する以外の方法により得られたものを使用してもよい。
m価アルコールとしては、例えばエチレングリコール、エチレングリコールの縮合体、プロピレングリコール、プロピレングリコールの縮合体、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノールなどの二価アルコール;グリセリンなどの三価アルコール;エリトリトール、ペンタエリトリトールなどの四価アルコールなどが挙げられる。中でも、得られる可塑剤(Ap)がポリビニルアセタール(A)との相溶性及び可塑化効果に優れ、高沸点であり、さらに積層体が水と接触した場合でも水で抽出されにくい観点から二価アルコールが好ましく、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコールなどのエチレングリコールの縮合体がより好ましく、縮合度が3〜20であるエチレングリコールがさらに好ましく、縮合度が3〜10であるエチレングリコールの縮合体が特に好ましく、縮合度が3または4のエチレングリコールの縮合体が最も好ましい。
炭素数8〜20の一価カルボン酸としては、例えばオクタン酸、2−エチルヘキサン酸、ノナン酸、デカン酸、ドデカン酸、ヘキサデカン酸、2−メチルヘプタン酸、2−エチルヘプタン酸、2,2−ジメチルヘキサン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸などが挙げられる。中でも、炭素数8〜12、特に炭素数8〜10の一価カルボン酸が、得られる可塑剤(Ap)のポリビニルアセタール(A)との相溶性及び可塑化効果に優れ、高沸点であり、さらに積層体が水と接触した場合でも水で抽出されにくい観点から好ましい。また、カルボキシル基に隣接する炭素に、カルボキシル基以外の有機基が少なくとも2つ結合している一価カルボン酸が、可塑剤(Ap)の耐加水分解性を高める観点で好ましい。このような一価カルボン酸としては、2−エチルヘキサン酸、2−メチルヘプタン酸、2−エチルヘプタン酸、2,2−ジメチルヘキサン酸などが挙げられる。
m価アルコール1分子と炭素数8〜20の一価カルボン酸m分子とのエステル化反応で得られる化学構造を有するエステル化合物としては、例えばトリエチレングリコールジ2−エチルヘキサノエート、テトラエチレングリコールジ2−エチルヘキサノエート、トリエチレングリコールジノナノエート、トリエチレングリコールジデカノエート、トリエチレングリコールジドデカノエート、デカエチレングリコールジ2−エチルヘキサノエート、グリセリントリ2−エチルヘキサノエート等が挙げられる。中でも、トリエチレングリコールジ2−エチルヘキサノエート、テトラエチレングリコールジ2−エチルヘキサノエート、トリエチレングリコールジノナノエート、グリセリントリ2−エチルヘキサノエートが、ポリビニルアセタール(A)との相溶性及び可塑化効果に優れ、高沸点であり、さらに積層体が水と接触した場合でも水で抽出されにくいという観点から好ましい。これらは1種を単独でも、2種以上を混合して用いてもよい。
本発明の積層体を構成するA層における可塑剤(Ap)の含有量は特に限定されないが、ポリビニルアセタール(A)100質量部に対して通常20〜60質量部が好ましく、25〜55質量部がより好ましく、30〜50質量部がさらに好ましい。可塑剤(Ap)の含有量がポリビニルアセタール(A)100質量部に対して20質量部より少ないと、得られる積層体の柔軟性が不十分となる傾向となり、合わせガラス用中間膜としての衝撃吸収性が問題になる場合がある。また60質量部より多いと、得られる積層体の力学強度が不十分となる傾向となる。
本発明の積層体を構成するB層が含有する可塑剤(Bp)は、n価アルコール1分子と炭素数8〜20の一価カルボン酸n分子とのエステル化反応で得られる化学構造を有するエステル化合物である。ここで、nは2〜4の自然数を表す。ただし可塑剤(Bp)は、n価アルコール1分子と炭素数8〜20の一価カルボン酸n分子とのエステル化反応により得られる化学構造を有していれば良く、n価アルコール1分子と炭素数8〜20の一価カルボン酸n分子とをエステル化反応する以外の方法により得られたものを使用してもよい。
n価アルコールとしては、m価アルコールとして例示した化合物と同様の化合物が挙げられ、好ましい化合物も同様である。
n価アルコール1分子と炭素数8〜20の一価カルボン酸n分子とのエステル化反応で得られる化学構造を有するエステル化合物としては、例えばトリエチレングリコールジ2−エチルヘキサノエート、テトラエチレングリコールジ2−エチルヘキサノエート、トリエチレングリコールジノナノエート、トリエチレングリコールジデカノエート、トリエチレングリコールジドデカノエート、デカエチレングリコールジ2−エチルヘキサノエート、グリセリントリ2−エチルヘキサノエート等が挙げられる。中でも、トリエチレングリコールジ2−エチルヘキサノエート、テトラエチレングリコールジ2−エチルヘキサノエート、トリエチレングリコールジノナノエート、グリセリントリ2−エチルヘキサノエートが、ポリビニルアセタール(B)との相溶性及び可塑化効果に優れ、高沸点であり、さらに積層体が水と接触した場合でも水で抽出されにくいという観点から好ましい。これらは1種を単独でも、2種以上を混合して用いてもよい。
本発明の積層体を構成するB層における可塑剤(Bp)の含有量は特に限定されないが、ポリビニルアセタール(B)100質量部に対して通常30〜80質量部が好ましく、33〜75質量部がより好ましく、40〜70質量部がさらに好ましい。可塑剤(Bp)の含有量がポリビニルアセタール(B)100質量部に対して30質量部より少ないと、得られる積層体を遮音性合わせガラス用中間膜に使用する場合に所望の遮音性を発現できない場合がある。また80質量部より多いと、得られる積層体の力学強度が不十分となる傾向となる。
本発明において、A層における可塑剤(Ap)の含有量とB層における可塑剤(Bp)の含有量との関係に厳密な意味での限定はないが、A層におけるポリビニルアセタール(A)100質量部に対する可塑剤(Ap)の含有量がB層におけるポリビニルアセタール(B)100質量部に対する可塑剤(Bp)の含有量より少ないことが好ましい。本発明の積層体を用いた合わせガラスにおいて遮音性を発現できる観点から、ポリビニルアセタール(A)100質量部に対する可塑剤(Ap)の含有量が、ポリビニルアセタール(B)100質量部に対する可塑剤(Bp)の含有量より5〜60質量部少ないことが好ましく、10〜40質量部少ないことがより好ましい。
次に、分散剤(Ad)について説明する。分散剤(Ad)は可塑剤(Ap)の少なくとも1つのエステル結合を加水分解して得られる化学構造を有し、かつ(m−1)〜1個の水酸基と1〜(m−1)個のエステル結合を有する化合物である。ただし、分散剤(Ad)は可塑剤(Ap)の少なくとも1つのエステル結合を加水分解して得られる化学構造を有していればよく、可塑剤(Ap)を加水分解する以外の方法により得られたものを用いてもよい。分散剤(Ad)としては、例えばトリエチレングリコールモノ2−エチルヘキサノエート(トリエチレングリコールジ2−エチルヘキサノエートの1つのエステル結合を加水分解した化学構造)、テトラエチレングリコールモノ2−エチルヘキサノエート(テトラエチレングリコールジ2−エチルヘキサノエートの1つのエステル結合を加水分解した化学構造)、トリエチレングリコールモノデカノエート(トリエチレングリコールジデカノエートの1つのエステル結合を加水分解した化学構造)、トリエチレングリコールモノドデカノエート(テトラエチレングリコールジドデカノエートの1つのエステル結合を加水分解した化学構造)、デカエチレングリコールモノ2−エチルヘキサノエート(デカエチレングリコールジ2−エチルヘキサノエートの1つのエステル結合を加水分解した化学構造)、トリエチレングリコールモノノナノエート(トリエチレングリコールジノナノエートの1つのエステル結合を加水分解した化学構造)、グリセリンジ2−エチルヘキサノエート(グリセリントリ2−エチルヘキサノエートの1つのエステル結合を加水分解した化学構造)、グリセリンモノ2−エチルヘキサノエート(グリセリントリ2−エチルヘキサノエートの2つのエステル結合を加水分解した化学構造)などが挙げられる。中でも特にトリエチレングリコールモノ2−エチルヘキサノエート、テトラエチレングリコールモノ2−エチルヘキサノエート、トリエチレングリコールモノノナノエートが、常温で液体であり、取り扱い性に優れ、またポリビニルアセタール(A)および可塑剤(Ap)との相溶性に特に優れるため好適である。
本発明の積層体を構成するA層における分散剤(Ad)の含有量は特に限定されないが、ポリビニルアセタール(A)100質量部に対して通常0.01〜6質量部が好ましく、0.06〜4質量部がより好ましく、0.09〜2.4質量部がさらに好ましい。分散剤(Ad)の含有量が0.01質量部より少ないと、含水率の高い積層体を低温かつ低湿度の雰囲気で急激に乾燥させた場合に積層体中で水や可塑剤がポリビニルアセタールと相分離して積層体が不透明になったり、また積層体の層間に水や可塑剤がブリードして層間剥離や透明性低下を引き起こしたりすることがある。一方、6質量部を超えると分散剤(Ad)が揮発したりA層が水に接触した場合に分散剤(Ad)が水で抽出されたりして、A層の物性が変化することがある。
分散剤(Bd)は可塑剤(Bp)の少なくとも1つのエステル結合を加水分解して得られる化学構造を有し、かつ(n−1)〜1個の水酸基と1〜(n−1)個のエステル結合を有する化合物である。ただし、分散剤(Bd)は可塑剤(Bp)の少なくとも1つのエステル結合を加水分解して得られる化学構造を有していればよく、可塑剤(Bp)を加水分解する以外の方法により得られたものを用いてもよい。分散剤(Bd)としては、例えばトリエチレングリコールモノ2−エチルヘキサノエート、テトラエチレングリコールモノ2−エチルヘキサノエート、トリエチレングリコールモノデカノエート、トリエチレングリコールモノドデカノエート、デカエチレングリコールモノ2−エチルヘキサノエート、トリエチレングリコールモノノナノエート、グリセリンジ2−エチルヘキサノエート、グリセリンモノ2−エチルヘキサノエートが挙げられる。中でも、特にトリエチレングリコールモノ2−エチルヘキサノエート、テトラエチレングリコールモノ2−エチルヘキサノエート、トリエチレングリコールモノノナノエートが、常温で液体で取り扱い性に優れ、またポリビニルアセタール(B)および可塑剤(Bp)との相溶性に特に優れるため好適である。
本発明の積層体を構成するB層における分散剤(Bd)の含有量は特に限定されないが、ポリビニルアセタール(B)100質量部に対して通常0〜4質量部が好ましく、0.01〜3質量部がより好ましく、0.03〜2.2質量部がさらに好ましい。なお、分散剤(Bd)の含有量が0質量部であるとは、B層に分散剤(Bd)を含まないことを意味する。分散剤(Bd)の含有量が4質量部を超えると、分散剤(Bd)が揮発したりB層が水に接触した場合に分散剤(Bd)が水で抽出されたりして、B層の物性が変化することがある。
本発明では、A層中の可塑剤(Ap)の含有量に対する分散剤(Ad)の含有量の質量比(以後、質量比Wと表わす)が、B層中の可塑剤(Bp)の含有量に対する分散剤(Bd)の含有量の質量比(以後、質量比Wと表わす)より大きいことが必要である。好ましくは質量比Wが0、又は質量比Wが質量比Bの1.05倍以上である。より好ましくは質量比Wが質量比Wの1.1倍以上、さらに好ましくは1.25倍以上、特に好ましくは1.5倍以上である。質量比Wが質量比W以下である積層体は、含水率の高い積層体を低温かつ低湿度の雰囲気で急激に乾燥させた場合に積層体中で水や可塑剤がポリビニルアセタールと相分離して不透明になったり、また積層体の層間に水や可塑剤がブリードして層間剥離や透明性低下を引き起こしたりする。
本発明において可塑剤(Ap)と可塑剤(Bp)は同一でも異なっていても良いが、A層及びB層の製造においてコストを削減する観点から同一であることが好ましい。
本発明の積層体は、酸化防止剤、紫外線吸収剤、接着性改良剤、その他添加剤をさらに含有していても良い。
本発明の積層体が含有していてもよい酸化防止剤の種類に特に限定はない。例えば、公知のフェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤などを使用できる。中でもフェノール系酸化防止剤が好ましい。酸化防止剤は単独でも2種以上を組み合わせて用いてもよい。酸化防止剤を含有させる場合、その量は特に限定されないが、積層体の質量に対して通常0.0001〜5質量%が好ましく、0.001〜1質量%がより好ましい。0.0001質量%より少ないと酸化防止剤としての十分な効果が得られないことがあり、また5質量%より多くしても格段の効果は望めない。
本発明の積層体が含有していてもよい紫外線吸収剤の種類に特に限定はない。例えば、公知のベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、シュウ酸アニリド系紫外線吸収剤、ベンゾエート系紫外線吸収剤などを使用できる。紫外線吸収剤は単独でも2種以上を組み合わせて用いてもよい。紫外線吸収剤を含有させる場合、その量は特に限定されないが、積層体の質量に対して通常0.0001〜5質量%が好ましく、0.001〜1質量%がより好ましい。0.0001質量%より少ないと紫外線吸収剤としての十分な効果が得られないことがあり、また5質量%より多くしても格段の効果は望めない。
本発明の積層体は合わせガラス用中間膜として特に好適に使用される。その場合、ガラスと接着する層には接着性調整剤が添加されていることが好ましい。接着性調整剤としては、例えば酢酸、プロピオン酸、ブタン酸、ヘキサン酸、2−エチルブタン酸、2−エチルヘキサン酸などの有機酸のナトリウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩などが用いられ、これらは2種類以上が添加されていてもよい。
特に、ガラスと接着する層がA層である場合、A層に酢酸マグネシウム、酢酸マグネシウム4水和物、ブタン酸マグネシウム、2−エチルブタン酸マグネシウム、2−エチルヘキサン酸マグネシウムなどのマグネシウム塩が添加されていることが好ましい。接着性調整剤の添加量は、合わせガラスの耐貫通性及び合わせガラス破損時のガラス破片飛散防止性の観点から、ポリビニルアセタール(A)100質量部に対して0.001〜0.1質量部が好ましく、0.005〜0.08質量部がより好ましく、0.01〜0.06質量部がさらに好ましく、0.03〜0.055質量部が特に好ましい。マグネシウム塩はカリウム塩やナトリウム塩に比べて水を吸収しにくく、従ってA層に接着力調整剤としてマグネシウム塩が添加されていると、含水率の高い積層体を低温かつ低湿度の雰囲気で急激に乾燥させた場合でも、積層体中で水や可塑剤がポリビニルアセタールと相分離しにくく、また積層体の層間に水や可塑剤がブリードしにくくなる。
本発明の積層体を製造する方法は特に限定されず、公知の方法を適用できる。例えばA層を構成する成分、B層を構成する成分をそれぞれ押出機で溶融混練した後、引き続き多層製膜機で共押出する方法;溶融混練後に熱プレスまたはキャストなどで個別に作製したA層およびB層を重ねて、必要に応じて熱プレス等により接着して積層する方法などが挙げられる。
本発明の積層体の含水率に特に限定はないが、含水率が高すぎると積層体から可塑剤がブリードすることがあるため、通常0.01〜0.9質量%が好ましく、0.2〜0.8質量%がより好ましく、0.2〜0.7質量%がさらに好ましい。
本発明の積層体におけるA層およびB層の厚さに特に限定はない。A層の厚さは通常0.05〜1.2mmが好ましく、0.07〜1mmがより好ましく、0.1〜0.7mmがさらに好ましい。0.05mmよりも薄いと本発明の積層体の力学強度が低下する傾向となり、1.2mmよりも厚いと本発明の積層体の柔軟性が不十分となる傾向となり、合わせガラス用中間膜としての使用において、得られる合わせガラスの安全性が低下する場合がある。
B層の厚さは通常0.01〜1mmが好ましく、0.02〜0.8mmがより好ましく、0.05〜0.5mmがさらに好ましい。0.01mmよりも薄いと本発明の積層体を中間膜とする合わせガラスの遮音性能が低下することがあり、1mmよりも厚くしても本発明の積層体の力学強度がそれ以上向上しない傾向にある。
また、A層の厚さとB層の厚さの比は特に限定されないが、力学強度や遮音性発現の観点から0.05〜4が好ましく、0.07〜2がより好ましく、0.1〜0.8がさらに好ましい。また本発明の積層体に含まれるA層の厚さは均一であっても不均一であっても構わないが、工業的な生産においては一定以上に均一にするには厳密な生産管理が必要となり生産コストの観点で好ましくなく、さらに均一であればあるほどA層、B層間の実質的な接触面積は少なくなり、積層体の単位面積当たりの接着性は低下する傾向がある。また一定以上に不均一な場合には、本発明の積層体を使用して得られる合わせガラス用中間膜の透明性、とりわけ自動車ヘッドライトのような比較的強い可視光照射下に観察した際の透明性が低下することがある。このような観点から本発明の積層体に含まれるA層においては、任意の10cm四方の範囲における、任意の相異なる25点の厚さを測定したとき、最も厚い部分(測定位置、以下同じ。)の厚さに対する最も薄い部分の厚さの比が0.90〜0.97であることが好ましく、0.92〜0.97であることがより好ましく、0.94〜0.97であることがさらに好ましい。また同様の理由により、B層においては、任意の10cm四方の範囲における、任意の相異なる25点の厚さを測定したとき、最も厚い部分の厚さに対する最も薄い部分の厚さの比が0.90〜0.97であることが好ましく、0.92〜0.97であることがより好ましく、0.94〜0.97であることがさらに好ましい。任意の相異なる25点の厚さを測定する簡便な方法としては、任意の10cm四方の範囲を縦5マス×横5マスの等間隔に分けて、その中心点を測定する方法が挙げられる。
本発明の積層体は、積層体の最外層の少なくとも1層がA層であることが好ましい。かかる積層体の例としては、A層/B層/A層、A層/B層/A層/B層/A層などの最外層がともにA層である積層体、A層/B層、A層/B層/A層/B層などの最外層の1層がA層である積層体が挙げられる。特に、本発明の積層体を合わせガラス用中間膜として使用する場合には、最外層がともにA層であると、積層体とガラスとの接着性を適切に調節できる点から好ましい。
本発明の積層体を合わせガラス用中間膜として使用する場合、積層体の厚さに特に限定はないが、通常0.2〜2mmが好ましく、0.25〜1.8mmがより好ましく、0.3〜1.5mmがさらに好ましい。積層体の厚さが0.2mmよりも薄いと力学強度が不十分になる傾向となり、2mmよりも厚いと柔軟性が不十分となる傾向となる。
本発明の積層体を合わせガラス用中間膜として使用する場合のガラス材質は特に限定されず、フロート板ガラス、熱強化ガラス、化学強化ガラスなどの無機ガラス;ポリメタクリル酸メチル、ポリカーボネートなどの有機ガラスなどの従来公知のガラスを使用できる。これらは無色もしくは有色、または透明もしくは非透明のいずれでもよく、また2種以上を併用してもよい。ガラスの厚さに特に限定はないが、通常20mm以下が好ましく、10mm以下がより好ましい。
本発明の積層体を合わせガラス用中間膜として使用する場合、積層体の最表面の形状は特に限定されないが、合わせガラスを製造する際の取り扱い性(例えばラミネートにおける泡抜け性)を考慮すると、積層体の最表面にメルトフラクチャーやエンボスなどの公知の方法で凹凸構造を形成したものが好ましい。
本発明の積層体を合わせガラス用中間膜として用いて合わせガラスを製造する方法は特に限定されず、例えば真空ラミネーター装置やバキュームバッグを用いた減圧工程を経る方法;ニップロールで仮接着した後にオートクレーブで処理する方法などの公知の方法が挙げられる。
真空ラミネーター装置を用いる場合の作製条件の一例を示すと、1×10−6〜3×10−2MPaの減圧下、100〜200℃の温度で、好ましくは130〜160℃の温度でガラスと合わせガラス用中間膜がラミネートされる。バキュームバッグを用いる方法は、例えば、欧州特許第1235683号明細書に記載されている。例えば、約2×10−2MPaの圧力下、130〜145℃でラミネートされる。
ニップロールで仮接着した後にオートクレーブで処理する方法において、ニップロールの運転条件の一例は、ガラスと積層体を赤外線ヒーターなどで30〜70℃に加熱した後、ロールで挟んで脱気し、さらに50〜120℃に加熱した後、ロールで圧着して仮接着させる。オートクレーブで処理する工程は、例えば1.0〜1.5MPaの圧力下、130〜145℃の温度で30分〜200分実施される。
以下、実施例等により本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例によって何ら限定されない。
(PVB−1の調製)
還流冷却器、温度計、イカリ型攪拌翼を備えた10L(リットル)のガラス製容器に、イオン交換水8100g、ポリビニルアルコール(PVA−1)(粘度平均重合度1700、けん化度99モル%)660gを仕込み(PVA濃度7.5%)、内容物を95℃に昇温して完全に溶解させた。次に、120rpmで攪拌下、5℃まで約30分かけて徐々に冷却した後、ブチルアルデヒド384gと20%の塩酸540mLを添加し、ブチラール化反応を150分間行った(ポリビニルアセタールの析出は、ブチルアルデヒド添加終了後であった)。その後、60分かけて50℃まで昇温し、50℃にて120分間保持した後、室温まで冷却した。析出した樹脂をイオン交換水で洗浄した後、過剰量の水酸化ナトリウム水溶液を添加して残存する酸を中和し、さらに過剰のイオン交換水で洗浄し、脱水し、乾燥してポリビニルブチラール(PVB−1)を得た。得られたPVB−1をJIS K6728−1977(以下、JIS K6728と表わす)にしたがって測定したところ、表1に示すとおり、平均アセタール化度は69モル%、平均残存酢酸ビニル基量(平均残存ビニルエステル基量、以下同じ。)は1モル%、平均残存水酸基量は30モル%であった。
(PVB−2の調製)
PVB−1の調製において、ブチルアルデヒドの使用量を395gに変更した以外は同様にして反応を行い、ポリビニルブチラール(PVB−2)を得た。なお、ポリビニルアセタールの析出は、ブチルアルデヒドの添加が終了した後に起こった。得られたPVB−2の特性をJIS K6728にしたがって測定したところ、表1に示すとおり、平均アセタール化度は71モル%、平均残存酢酸ビニル基量は1モル%、平均残存水酸基量は28モル%であった。
(PVB−3の調製)
還流冷却器、温度計、イカリ型攪拌翼を備えた10Lのガラス製容器に、イオン交換水8100g、ポリビニルアルコール(PVA−2:粘度平均重合度1700、けん化度90モル%)723gを仕込み(PVA濃度8.2%)、内容物を95℃に昇温して、ポリビニルアルコールを完全に溶解させた。次に、120rpmで攪拌下、5℃まで約30分かけて徐々に冷却した後、ブチルアルデヒド398gと20%の塩酸540mLを添加し、ブチラール化反応を150分間行った。ポリビニルアセタールの析出は、ブチルアルデヒドの添加が終了した後に起こった。その後、60分かけて50℃まで昇温し、50℃にて120分間保持した後、室温まで冷却した。析出した樹脂をイオン交換水で洗浄後、過剰量の水酸化ナトリウム水溶液を添加して残存する酸を中和し、さらに過剰の水で洗浄、乾燥してポリビニルブチラール(PVB−3)を得た。得られたPVB−3の特性をJIS K6728に従って測定したところ、平均アセタール化度は74モル%、平均残存酢酸ビニル基の含有量は9モル%、平均残存水酸基の含有量は17モル%であった。結果を表1に示す。
(PVB−4の調製)
還流冷却器、温度計、イカリ型攪拌翼を備えた10Lのガラス製容器に、イオン交換水8100g、ポリビニルアルコール(PVA−3:粘度平均重合度1700、けん化度93モル%)705gを仕込み(PVA濃度8.0%)、内容物を95℃に昇温して、ポリビニルアルコールを完全に溶解させた。次に120rpmで攪拌下、8℃まで約30分かけて徐々に冷却した後、ブチルアルデヒド415gと20%の塩酸660mLを添加し、ブチラール化反応を150分間行った。その後、60分かけて68℃まで昇温し、68℃にて220分間保持した後、室温まで冷却した。析出した樹脂をイオン交換水で洗浄後、過剰量の水酸化ナトリウム水溶液を添加して残存する酸を中和し、さらに過剰の水で洗浄、乾燥してポリビニルブチラール(PVB−4)を得た。得られたPVB−4の特性をJIS K6728に従って測定したところ、平均アセタール化度は74モル%、平均残存酢酸ビニル基の含有量は7モル%、平均残存水酸基の含有量は19モル%であった。結果を表1に示す。
(PVB−5の調製)
20質量部のPVB−1と、80質量部のPVB−3を混合し、ポリビニルアセタール(PVB−5)を得た。得られたPVB−5の特性をJIS K6728に従って測定したところ、平均アセタール化度は73モル%、平均残存酢酸ビニル基の含有量は7モル%、平均残存水酸基の含有量は20モル%であった。結果を表1に示す。
(PVB−6の調製)
20質量部のPVB−1と、80質量部のPVB−4を混合し、ポリビニルアセタール(PVB−6)を得た。得られたPVB−6の特性をJIS K6728に従って測定したところ、平均アセタール化度は73モル%、平均残存酢酸ビニル基の含有量は6モル%、平均残存水酸基の含有量は21モル%であった。結果を表1に示す。
(PVB−7の調製)
20質量部のPVB−2と、80質量部のPVB−3を混合し、ポリビニルアセタール(PVB−7)を得た。得られたPVB−7の特性をJIS K6728に従って測定したところ、平均アセタール化度は74モル%、平均残存酢酸ビニル基量は7モル%、平均残存水酸基量は19モル%であった。結果を表1に示す。
(PVB−8の調製)
40質量部のPVB−2と、60質量部のPVB−3を混合し、ポリビニルアセタール(PVB−8)を得た。得られたPVB−8の特性をJIS K6728に従って測定したところ、平均アセタール化度は73モル%、平均残存酢酸ビニル基の含有量は6モル%、平均残存水酸基の含有量は21モル%であった。結果を表1に示す。
(PVB−9の調製)
10質量部のPVB−2と、90質量部のPVB−4を混合し、ポリビニルアセタール(PVB−9)を得た。得られたPVB−9の特性をJIS K6728に従って測定したところ、平均アセタール化度は74モル%、平均残存酢酸ビニル基の含有量は8モル%、平均残存水酸基の含有量は18モル%であった。結果を表1に示す。
(PVB−1〜PVB−9のHPLCによる分析)
(1)分析サンプルの調製
PVB−1〜PVB−9それぞれについて、耐圧試験管にポリビニルアセタール100mg、エタノール(99.5%)20mLを量りとり、完全に密閉した後、耐圧試験管を振とう式恒温水槽に浸漬した。そして、70℃で、4時間、振とうを行って、ポリビニルアセタールをエタノールに溶解させた。なお、3.5時間の時点で、いずれのポリビニルアセタールも完全にエタノールに溶解した。室温で放冷後、孔径0.45μm、直径13mmの浸水化PTFEメンブレンフィルターでろ過して、HPLC検液を得た。
(2)HPLC測定
HPLCシステムとして株式会社島津製作所製「Prominence」、HPLCカラムとして、株式会社島津製作所製「Shim−pack G−ODS(4)」(内径4mm、長さ1cmのODSカラム)を使用し、検出器として、株式会社島津製作所製「ELSD−LT II」を使用した。分析は、以下の手順で行った。移動相Aとしてエタノール/水(体積比)が4/1である混合溶剤、および移動相Bとしてエタノールを使用した。当初はHPLCシステム内部を移動相Aで満たした状態である。この状態でサンプル(HPLC検液)を注入する。そして、サンプル注入直後から20分かけて移動相中の移動相Bの割合を一定速度(5vol%/分)で増加させた。20分後(この時点で移動相は完全に移動相Bに置換される)から注入したサンプルの全量が溶出するまで移動相Bを流した。その際、サンプル注入量は30μL、移動相の流量は0.4mL/分であった。カラム温度は45℃で、検出器のネブライザーガスとして、窒素ガスを使用した(ガス供給圧力=350kPa、噴霧温度35℃。得られたデータの解析を、株式会社島津製作所製「LabSolutions LC(ver. 5.42 SP3)」を使用し、下記条件で解析した。
Width:試料注入直後からは30秒、5分後から終了までは200秒
Slope:50μm
Drift:0μV/分
T.DBL:0分
最小面積:10,000カウント
なお、ベースラインの決定は、ポリビニルアセタールを溶解すること以外は前記分析サンプルの調製と同様の方法で準備した空試験液を分析して行った。結果を表1に示す。
Figure 0006113640
(実施例1)
(積層体の作製)
100質量部のPVB−1、可塑剤(Ap)として39質量部のトリエチレングリコールジ2−エチルヘキサノエート、および分散剤(Ad)として0.4質量部のトリエチレングリコールモノ2−エチルヘキサノエートをラボプラストミルで160℃、8分間混練した。得られた混練物を厚さ0.38mmの型枠で160℃、12kg/cmの条件で90分間プレスしてシートAを得た。一方、100質量部のPVB−5、可塑剤(Bp)として60質量部のトリエチレングリコールジ2−エチルヘキサノエート、および分散剤(Bd)として0.2質量部のトリエチレングリコールモノ2−エチルヘキサノエートをラボプラストミルで160℃、8分間混練した。得られた混練物を厚さ0.15mmの型枠で160℃、12kg/cmの条件で90分間プレスしてシートBを得た。シートA及びシートBを、シートA/シートB/シートAの順に重ね、厚さ0.9mmの型枠で135℃、10kg/cmの条件でプレスして、A層/B層/A層からなる積層体−1を得た。積層体−1を−20℃に保持した恒温槽で冷却後、A層とB層を剥離した。A層の10cm×10cmの領域内について、縦5マス×横5マスの25マスに分けて、厚さ計(小野測器社製ゲージスタンド ST−022)を使用して各マスの中心点の合計25点につき厚さを測定した。それらのうち最も厚い部分の厚さは387μm、最も薄い部分の厚さは372μmであり、最も厚い部分の厚さに対する最も薄い部分の厚さの比は0.96であった。またB層について同様に測定したところ、最も厚い部分の厚さは161μm、最も薄い部分の厚さは154μmであり、最も厚い部分の厚さに対する最も薄い部分の厚さの比は0.96であった。
(高含水率積層体の調湿)
上記で得られた積層体−1を恒温恒湿器内で、35℃、80%RHの雰囲気で12時間調湿した。調湿した積層体−1をさらに下記(a)、(b)のそれぞれの条件で調湿を行い、以下の基準で調湿時間を評価したところ「12時間」であった。
(条件)
条件(a):23℃、28%RHで12時間処理。
条件(b):28℃、55%RHで8時間処理、23℃、28%RHで8時間処理。
(基準)
「12時間」:条件(a)で積層体が白濁および層間剥離を起こさず、含水率が0.7%以下になっているもの。
「16時間」:条件(a)で積層体が白濁や層間剥離を生じてしまうが、条件(b)では白濁および層間剥離を起こさず、含水率が0.7%以下になっているもの。
「不良」:条件(a)、条件(b)のいずれでも、白濁や層間剥離が生じてしまうか、または含水率が0.7%以下になっていない。
上記基準の「12時間」は、急激に乾燥させても、積層体中で水や可塑剤がポリビニルアセタールと相分離しにくく、また水や可塑剤の層間へのブリードが起こりにくいことを示す。また、「16時間」は「12時間」よりもより緩やかな乾燥が必要になることを示し、「不良」はより緩やかな乾燥が必要か、もしくは乾燥が困難であることを示す。
(高含水率時の耐可塑剤ブリード試験)
上記で得られた積層体−1を23℃、28%RHで5日間乾燥した後、35℃、80%RHでの雰囲気で処理した。積層体−1の処理を開始してから12時間後、24時間後、48時間後に目視で確認し、12時間後に可塑剤ブリードが無く、24時間後に可塑剤ブリードが発生しているものを「12時間」、24時間後に可塑剤ブリードが無く、48時間後に可塑剤ブリードが発生しているものを「24時間」、48時間後にも可塑剤ブリードが無いものを「48時間」として評価したところ、「48時間」であった。
(合わせガラスの作製)
30cm×30cmの積層体−1を23℃、28%RHの雰囲気下で5日間保管して調湿後、速やかに2枚のフロートガラス(30cm×30cm×2.2mm)で挟み、これを115℃に加熱後、ニップロールを用いて仮接着した。得られた仮接着体をオートクレーブに入れて135℃、1.2MPaの条件で60分間処理して合わせガラス−1を得た。
(合わせガラスの透明性評価)
JIS T7309で規定されるランドルト環を使用して測定した視力が0.8〜2.0の作業者20名(メガネ、コンタクトレンズによる矯正視力が0.8〜2.0の人を16人含む)それぞれについて、合わせガラス−1の面に対して垂直な方向、30cmの距離から2000ルーメンのライトを照射し、光が照射されている部分の曇り発生有無を合わせガラス斜め15°上方、合わせガラスの面から距離1mの点から目視で透明性を確認した(第一の目視確認)。また同一の作業者20人それぞれについて、厚さ3mmのフロートガラスの面に対して垂直な方向、30cmの距離から2000ルーメンのライトを照射し、光が照射されている部分の曇り発生有無を合わせガラス斜め15°上方、合わせガラスの面から距離1mの点から目視で透明性を確認した(第二の目視確認)。なお、前記20人には、第一の目視確認、第二の目視確認で使用する合わせガラス、フロートガラスの内容を事前には開示しなかった。第一の目視確認における透明性が、第二の目視確認における透明性よりも劣ると感じた人の人数をカウントしたところ、2人であった。
(合わせガラスの熱水ボイル試験)
合わせガラス−1を60℃の熱水で12時間処理した後、23℃、28%RHの雰囲気下で108時間処理した(この処理を1サイクルとする)。当該処理を10回繰り返した後、合わせガラスの各端部から、積層体に含まれる成分抽出による欠点(ガラスと合わせガラス用中間膜の剥がれ、中間膜の層間の剥がれ)の発生の有無を目視により確認し、「無し」、「若干有」、「有」の3段階で評価したところ、「無し」であった。
(合わせガラスのサイクル試験)
積層体−1を30cm×30cmの大きさに切断し、これを2枚の30cm×30cm×2mmのガラスに挟み、ニップロールで仮接着した後、オートクレーブで140℃、1.2MPa、60分間処理して合わせガラスとした。得られた合わせガラスを、40℃、90%RHで10時間保持した後、40℃から−40℃まで2時間かけて冷却し(湿度未調整)、−40℃で10時間保持し(湿度未調整)、さらに、−40℃から40℃まで2時間かけて加熱(湿度未調整)する処理を1サイクルとし、当該サイクルを50サイクル繰り返した。50サイクルを繰り返した後の合わせガラス中のA層とB層の層間剥離の様子を確認した。また合わせガラス−1の端部15mmの領域に存在する気泡の数をカウントし、気泡の数が3個未満であるものをA評価、4〜10個であるものをB評価、11個を超えるものをC評価とした。
(実施例2〜43、比較例1〜22)
表2、表3および表6、表7に示すようにA層およびB層の組成を変更した以外は実施例1と同様にして積層体及び合わせガラスを作製し、同様に評価した。結果を表4、表5および表8、表9に示す。なお実施例22〜29、40、42では、シートA,シートBの作製時の熱プレスの条件を、「160℃、12kg/cm、90分」から、「160℃、12kg/cm、3分」に変更した(すなわちシートA、シートBの作製時間を短縮した)以外は実施例1と同様にして実施した。実施例30、31、41、43では、シートA,シートBの作製時の熱プレスを、「160℃、12kg/cm、90分」から、「160℃、12kg/cm、300分」に変更した(すなわちシートA、シートBの作製時間を延長した)以外は実施例1と同様にして実施した。
Figure 0006113640
Figure 0006113640
Figure 0006113640
Figure 0006113640
Figure 0006113640
Figure 0006113640
Figure 0006113640
Figure 0006113640
実施例および比較例で示されるように、本発明の積層体は高温かつ高湿度で含水率が高くなった後に、低温かつ低湿度の雰囲気で急激に乾燥させた場合でも、積層体中で水や可塑剤がポリビニルアセタールと相分離しにくく、また積層体の層間に水や可塑剤のブリードを起こさない。
本発明の積層体がそのような特性を示す理由は不明だが、A層における可塑剤(Ap)の含有量に対する分散剤(Ad)の含有量の質量比が、B層における可塑剤(Bp)の含有量に対する分散剤(Bd)の含有量の質量比より大きいことに起因して、好適には最外層が共にA層である積層体の含水率が高くなっている場合に、A層からの水の揮発に伴ってB層からA層へ水分が移行する結果、相分離やブリードが発生する前にB層の含水率も低下するためと考えられる。
実施例および比較例で示されるように、本発明の積層体は、短時間で温度が大きく変化する環境下において長期間使用した場合であっても、層間剥離が発生していない。
本発明の積層体は、積層体に含まれる可塑剤が水によって抽出されにくくかつ揮発しにくく、含水率の高い積層体を低温および低湿度の雰囲気で急激に乾燥させても積層体中で水や可塑剤がポリビニルアセタールと相分離しにくく、また水や可塑剤の層間へのブリードが起こりにくい。本発明の積層体は、合わせガラス用中間膜として使用した場合にガラスとの接着性や力学強度および遮音性能に優れ、温度変化の著しい環境下で長期間使用しても層間剥離が生じにくい。
1 ポリビニルアセタール(A)のHPLC分析ピーク
11 ポリビニルアセタール(A)のHPLC分析ピークの極大となる点
2 ポリビニルアセタール(B)のHPLC分析ピーク
21 ポリビニルアセタール(B)のHPLC分析ピークの極大となる点

Claims (19)

  1. 平均残存水酸基量がX(モル%)であるポリビニルアセタール(A)、可塑剤(Ap)及び分散剤(Ad)を含むA層と、平均残存水酸基量がY(モル%)であるポリビニルアセタール(B)及び可塑剤(Bp)を含み、分散剤(Bd)を含んでいても良いB層とを備え、
    X≧Yであり、
    式(1):
    Figure 0006113640
    [式中、(a2)は内径4mm、長さ1cmのオクタデシルシリル基で表面修飾された球状シリカゲルを固定相として充填したカラムを用いた高速液体クロマトグラフィー分析におけるポリビニルアセタール(A)に由来するピークの検出終わりの時間(分)を表し、(b1)は前記高速液体クロマトグラフィー分析におけるポリビニルアセタール(B)に由来するピークの検出初めの時間(分)を表す。]
    を満たし、
    A層中の可塑剤(Ap)の含有量に対する分散剤(Ad)の含有量の質量比が、B層中の可塑剤(Bp)の含有量に対する分散剤(Bd)の含有量の質量比より大きく、
    可塑剤(Ap)がm価アルコール1分子(mは2〜4の自然数を表す)と炭素数8〜20の一価カルボン酸m分子とのエステル化反応で得られる化学構造を有するエステル化合物であり、
    分散剤(Ad)が可塑剤(Ap)の少なくとも1つのエステル結合を加水分解して得られる化学構造を有しかつ(m−1)〜1個の水酸基と1〜(m−1)個のエステル結合を有する化合物であり、
    可塑剤(Bp)がn価アルコール1分子(nは2〜4の自然数を表す)と炭素数8〜20の一価カルボン酸n分子とのエステル化反応で得られる化学構造を有するエステル化合物であり、
    分散剤(Bd)が可塑剤(Bp)の少なくとも1つのエステル結合を加水分解して得られる化学構造を有しかつ(n−1)〜1個の水酸基と1〜(n−1)個のエステル結合を有する化合物である、
    積層体。
  2. (b1)分から(a2)分の範囲に存在するポリビニルアセタール(A)のピーク面積が、ポリビニルアセタール(A)の全ピーク面積の30〜100%である、請求項1記載の積層体。
  3. (b1)分から(a2)分の範囲に存在するポリビニルアセタール(B)のピーク面積が、ポリビニルアセタール(B)の全ピーク面積の10〜100%である、請求項1または2に記載の積層体。
  4. ポリビニルアセタール(B)の前記高速液体クロマトグラフィー分析において、ピークが極大となる点が少なくとも2つ検出される、請求項1〜3のいずれかに記載の積層体。
  5. ポリビニルアセタール(B)のピークが極大となる点の少なくとも1つが(b1)分から(a2)分の間に検出される、請求項4記載の積層体。
  6. ポリビニルアセタール(A)の前記高速液体クロマトグラフィー分析において、ピークが極大となる点が少なくとも2つ検出される、請求項1〜5のいずれかに記載の積層体。
  7. ポリビニルアセタール(A)のピークが極大となる点の少なくとも1つが(b1)分から(a2)分の間に検出される、請求項6記載の積層体。
  8. m価アルコールが縮合度が3〜20であるエチレングリコールの縮合体である、請求項1〜7のいずれかに記載の積層体。
  9. n価アルコールが縮合度が3〜20であるエチレングリコールの縮合体である、請求項1〜8のいずれかに記載の積層体。
  10. ポリビニルアセタール(A)の平均残存水酸基量Xが20〜40モル%である、請求項1〜9のいずれかに記載の積層体。
  11. ポリビニルアセタール(B)の平均残存水酸基量Yが10〜35モル%であり、平均残存ビニルエステル基量が0.01〜25モル%である、請求項1〜10のいずれかに記載の積層体。
  12. A層におけるポリビニルアセタール(A)100質量部に対する可塑剤(Ap)の含有量が、B層におけるポリビニルアセタール(B)100質量部に対する可塑剤(Bp)の含有量より少ない、請求項1〜11のいずれかに記載の積層体。
  13. A層における可塑剤(Ap)の含有量がポリビニルアセタール(A)100質量部に対して20〜60質量部である、請求項1〜12のいずれかに記載の積層体。
  14. B層における可塑剤(Bp)の含有量がポリビニルアセタール(B)100質量部に対して30〜80質量部である、請求項1〜13のいずれかに記載の積層体。
  15. 前記一価カルボン酸が、カルボキシル基に隣接する炭素にカルボニル基以外の有機基が少なくとも2つ結合している、請求項1〜14のいずれかに記載の積層体。
  16. 三層以上の層からなる積層体であり、積層体の外層の二層のうち少なくとも一層がA層である、請求項1〜15のいずれかに記載の積層体。
  17. A層の任意の10cm四方の範囲において、任意の相異なる25点の厚さを測定したとき、最も厚い部分の厚さに対する最も薄い部分の厚さの比が0.90〜0.97である、請求項1〜16のいずれかに記載の積層体。
  18. B層の任意の10cm四方の範囲において、任意の相異なる25点の厚さを測定したとき、最も厚い部分の厚さに対する最も薄い部分の厚さの比が0.90〜0.97である、請求項1〜17のいずれかに記載の積層体。
  19. 請求項1〜18のいずれかに記載の積層体を含む合わせガラス。
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