JP6112038B2 - エンジンのピストン構造及びその製造方法 - Google Patents

エンジンのピストン構造及びその製造方法 Download PDF

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Description

この発明は、シリンダ内で往復動するピストンと、小端部が上記ピストンに連結され、かつ大端部がクランクシャフトに連結されるコンロッドと、上記ピストンと上記コンロッドの小端部とを連結する断面中空のピストンピンと、上記ピストンピンの内部に設けられた動吸振器と、を備えたエンジンのピストン構造及びその製造方法に関する。
一般に、自動車等の車両に搭載されたエンジンでは、ピストンとコンロッドの小端部とがピストンピンにより連結されている。具体的には、コンロッドの小端部に形成されたピン挿通孔にピストンピンが挿通されて、コンロッドの小端部はピストンピンの中心軸方向の中央部に位置する。ピストンの裏面(頂面と反対側の面、つまり反燃焼室側の面)におけるピストンピン中心軸方向の両端部には、2つのボス部がコンロッドの小端部を挟むように形成され、これら2つのボス部には、ピストンピンの中心軸方向の両端部が挿入されて該両端部を支持するピン支持孔がそれぞれ形成されている(例えば、特許文献1参照)。
上記エンジンでは、該エンジンの基本構造で決まる共振により燃焼騒音が生じることが知られている(例えば、非特許文献1参照)。非特許文献1では、エンジン音が1.7kHz、3.3kHz、6kHzの3つのピークを持ち、そのうちの1つのピーク(3.3kHz)が、コンロッドの伸縮共振によるものであり、その共振の振幅低減の余地が殆どないとされている。
特開2004−353500号公報
大塚 雅也,「ディーゼル燃焼騒音のエンジン構造での低減方法」,自動車技術会学術講演会前刷集 No.36−05,社団法人 自動車技術会,2005年5月,p7−10
本発明者らは、ピストンおよびコンロッドのバネマスモデルについて鋭意研究を重ね、その結果、以下のようなことが判明した。
ピストンおよびコンロッドのバネマスモデルにおいて、ピストン、ピストンピン、およびコンロッドの小端部が全体として、質点(質量をM(単位kg)とする)に相当し、コンロッドにおける小端部と大端部とを連結する連結部が、上記質点を該大端部に対して支持するバネ(バネ定数をK(単位N/m)とする)に相当する。これにより、ピストン、ピストンピンおよびコンロッドの小端部が一体であるとすると、これらが一体でコンロッドの大端部に対して(1/2π)・(K/M)1/2Hzの共振周波数(例えば、3kHz〜4kHz)で共振することになる。この共振は、上記非特許文献1で云うところのコンロッドの伸縮共振に相当する。
ところで、ピストンピンとコンロッドのピン挿通孔との間には、潤滑油膜が形成される。この潤滑油膜は、ピストンピンとコンロッドの小端部とを連結するバネに相当する。また、ピストンピンをボス部およびコンロッドの小端部の双方に対して回動可能とするフルフロート式の組付方式が採用された場合には、ピストンピンとコンロッドのピン挿通孔との間に加えて、ピストンピンとピストンのボス部のピン支持孔との間にも、潤滑油膜が形成される。この潤滑油膜は、ピストンピンとピストンとを連結するバネに相当する。
ピストンピンとコンロッドのピン挿通孔との間の潤滑油膜(フルフロート式では、該潤滑油膜、および、ピストンピンとピストンのボス部のピン支持孔との間の潤滑油膜)が存在すれば、ピストンは、コンロッドの小端部に対してバネを介して支持されることとなり、ピストン、ピストンピンおよびコンロッドの小端部が一体でコンロッドの大端部に対して共振するようなことはない。燃焼行程(膨張行程)以外では、ピストンが大きな力で押圧されないため、上記潤滑油膜が存在し、よって、上記共振は生じない。
一方、燃焼行程では、ピストンが大きな力で押圧されるため、上記潤滑油膜が無くなり、この結果、ピストン、ピストンピンおよびコンロッドの小端部が一体となってコンロッドの大端部に対して共振することになる。
以上の観点から、燃焼行程でピストン、ピストンピンおよびコンロッドの小端部が一体となるので、その共振を抑制する(共振周波数における振動を低減する)ために、動吸振器を利用することが考えられる。しかし、動吸振器を単純に設けるだけでは、燃焼行程で上記共振による騒音を低減できても、ピストン、ピストンピンおよびコンロッドの小端部が一体とならない他の行程で、動吸振器の振動により騒音が増大してしまう。
また、動吸振器をピストンピン内部に組付けた後で狙いの吸振特性からずれていた場合、狙いの制振性能が得られないという問題を生じる。特に、ピストンピン内部に組付けられる動吸振器では、制振性能の調整を行うことが構造的に難しい状況にある。
また、動吸振器をピストンピン内部に組付けた後、狙いの吸振特性であるか否かを調べるには、動吸振器の固有振動数を計測することになるが、この場合、一般的には、加速度ピックアップ等の接触式の計測装置を用いて計測を行うことが考えられる。しかしながら、動吸振器としてはピストンピン内部への組付けを想定して小型軽量のものが用いられることから、仮に加速度ピックアップ等の接触式の計測装置を用いて計測を行うと、動吸振器に取付けた計測装置自身の質量が計測結果に影響を及ぼす虞がある。そこで、動吸振器の固有振動数を非接触で計測することが考えられるが、この場合においても、ピストンピン内部に組付けられる動吸振器に対していかに計測を行うかが大きな課題となる。
そこで、この発明は、燃焼行程においてピストン、ピストンピンおよびコンロッドの小端部が一体でコンロッドの大端部に対して共振するのを抑制すると共に、他の行程において騒音が増大するのを抑制することができ、しかも、ピストンピン内部に取付けられる動吸振器においても制振性能の調整を容易に行えるようにして、狙いの制振性能を得ることができ、非接触で固有振動数を計測する場合には、これを容易に行うことができるエンジンのピストン構造及びその製造方法の提供を目的とする。
この発明によるエンジンのピストン構造は、シリンダ内で往復動するピストンと、小端部が上記ピストンと連結され、かつ大端部がクランクシャフトに連結されるコンロッドと、上記ピストンと上記コンロッドの小端部とを連結する断面中空のピストンピンと、上記ピストンピンの内部に設けられた動吸振器と、を備えたエンジンのピストン構造であって、上記動吸振器は、上記ピストンおよび上記コンロッドの共振周波数での振動を抑制するように設定され、上記動吸振器が上記ピストンピンに固定される固定部と、上記ピストンピンの軸方向に延びる可動部と、上記可動部を上記固定部に対して揺動可能に支持する支持部とを備えると共に、上記可動部の端部が上記ピストンピンの軸方向端部よりも軸方向外部に位置するように組付けられていることを特徴とする。
またこの発明によるエンジンのピストン構造は、シリンダ内で往復動するピストンと、小端部が上記ピストンと連結され、かつ大端部がクランクシャフトに連結されるコンロッドと、上記ピストンと上記コンロッドの小端部とを連結する断面中空のピストンピンと、上記ピストンピンの内部に設けられた動吸振器と、を備えたエンジンのピストン構造であって、上記動吸振器は、中実部材で構成され、
上記動吸振器が上記ピストンピンに固定される固定部と、上記ピストンピンの軸方向に延びる可動部と、上記可動部を上記固定部に対して揺動可能に支持する支持部と、を備えると共に、上記可動部の端部が上記ピストンピンの軸方向端部よりも軸方向外部に位置するように組付けられていることを特徴とする。
上記構成によれば、燃焼行程で、ピストンピンとコンロッドとの間の潤滑油膜(フルフロート式では、該潤滑油膜、および、ピストンピンとピストンとの間の潤滑油膜)が無くなって、ピストン、ピストンピンおよびコンロッドの小端部が一体となった場合、動吸振器により、それらが一体で共振するのを抑制することができる。また、動吸振器がピストンピン内部に設けられているので、ピストンピンとコンロッドとの間に潤滑油膜が存在する場合、つまり吸気行程、圧縮行程および排気行程では、この潤滑油膜(バネ)により、動吸振器の振動がコンロッドに伝わることはなく、その振動により騒音が増大するようなことはない。また、ピストンピンの内部に動吸振器を設けることで、スペースを有効に利用することができ、ピストンが大きくならずに済む。
しかも、ピストンピンの軸方向端部よりも軸方向外部に位置するように可動部の端部を組付けることで、ピストンピン内部に設けられる動吸振器の端部を研削加工する作業が容易に行える。このため、動吸振器の固有振動数(共振周波数)の調整を容易に行うことができ、狙いの吸振性能を得ることができる。
また、非接触で動吸振器の固有振動数を計測する場合には、ピストンピンの軸方向端部よりも軸方向外部に位置する可動部の端部を計測対象とすることで、容易に固有振動数を計測することができる。
またこの発明によるエンジンのピストン構造は、シリンダ内で往復動するピストンと、小端部が上記ピストンと連結され、かつ大端部がクランクシャフトに連結されるコンロッドと、上記ピストンと上記コンロッドの小端部とを連結する断面中空のピストンピンと、上記ピストンピンの内部に設けられた動吸振器と、を備えたエンジンのピストン構造であって、上記動吸振器が上記ピストンピンに固定される固定部と、上記ピストンピンの軸方向に延び、上記固定部に支持される可動部と、を備えると共に、上記可動部は、その端部が上記ピストンピンの軸方向端部よりも軸方向外部に位置するように組付けられ、上記動吸振器が上記固定部から上記ピストンピンの軸方向に延びる軸部を備え、上記可動部は、上記軸部と、該軸部外周に固定され揺動可能な質量調整部とから構成され、上記動吸振器は、上記軸部の端部または上記質量調整部の端部が上記ピストンピンの軸方向端部よりも軸方向外部に位置するように組付けられていることを特徴とする。
上記構成によれば、上述した効果に加えて質量調整部の交換によって可動部の質量調整が可能で、製造誤差の修正等、利便性に優れる。
また、質量調整部による質量調整によって2つの動吸振器の可動部の質量を互いに異ならせた場合、質量の違いによって周波数特性のピーク、つまりは共振周波数を互いにずらすことができ、これによって、共振周波数における振動だけでなく、共振周波数を含む比較的広い範囲の周波数領域で振動を低減することができる。
またこの発明によるエンジンのピストン構造の製造方法は、シリンダ内で往復動するピストンと、小端部が上記ピストンと連結され、かつ大端部がクランクシャフトに連結されるコンロッドと、上記ピストンと上記コンロッドの小端部とを連結する断面中空のピストンピンと、上記ピストンピンの内部に設けられた動吸振器と、を備えたエンジンのピストン構造の製造方法であって、上記動吸振器が上記ピストンピンに固定される固定部と、上記ピストンピンの軸方向に延び、上記固定部に支持される可動部と、を備え、上記動吸振器を、上記可動部の端部が上記ピストンピンの軸方向端部よりも軸方向外部に位置するように組付ける組付け工程を有し、上記組付け工程は、上記動吸振器を上記ピストンピンに組み付けた後に、上記動吸振器の固有振動数を計測することを特徴とする。
この発明の一実施態様においては、上記組付け工程は、上記動吸振器の固有振動数計測により、該固有振動数が所定値からずれている際に上記可動部の端部を研削加工し固有振動数を調整するものである。
上記構成によれば、動吸振器の実際の固有振動数と所定値との差に基づいて調整を行うことで、固有振動数をより正確に調整することができる。
この発明の一実施態様においては、上記固定部から上記ピストンピンの軸方向に延びる軸部を備え、上記可動部は、上記軸部と、該軸部外周に固定されて揺動可能な質量調整部とから構成され、上記組付け工程において、上記動吸振器を、上記軸部の端部または上記質量調整部の端部が上記ピストンピンの軸方向端部よりも軸方向外部に位置するように組付けるものである。
この発明の一実施態様においては、上記動吸振器が2つ設けられており、上記組付け工程において、上記動吸振器の固有振動数を個別に計測して個別に調整するものである。
上記構成によれば、2つの動吸振のうち、共振周波数が所定値からずれている方を適宜調整することができる。
この発明によれば、燃焼行程においてピストン、ピストンピンおよびコンロッドの小端部が一体でコンロッドの大端部に対して共振するのを抑制すると共に、他の行程において騒音が増大するのを抑制することができ、しかも、ピストンピン内部に取付けられる動吸振器においても吸振性能の調整を容易に行えるようにして、狙いの吸振性能を得ることができ、非接触で固有振動数を計測する場合には、これを容易に行うことができる効果がある。
本発明のピストン構造が採用されたエンジンのピストンおよびコンロッドを示す図 図1のA−A線矢視断面図 図2の要部拡大断面図 ピストンおよびコンロッドのバネマスモデルを示す図 イナータンス検査用の計測設備を示す斜視図 イナータンス検査を説明するための説明図 (a)は組付型ダンパの研削加工を説明するための説明図、(b)は一体型ダンパの研削加工を説明するための説明図 エンジンのピストン構造の他の実施例を示す断面図 図8の要部拡大断面図 エンジンのピストン構造のさらに他の実施例を示す断面図 図10の要部拡大断面図 エンジンのピストン構造のさらに他の実施例を示す断面図 図12の要部拡大断面図
燃焼行程においてピストン、ピストンピンおよびコンロッドの小端部が一体でコンロッドの大端部に対して共振するのを抑制すると共に、他の行程において騒音が増大するのを抑制することができ、しかも、ピストンピン内部に取付けられる動吸振器においても吸振性能の調整を容易に行えるようにして、狙いの吸振性能を得ることができ、非接触で固有振動数を計測する場合には、これを容易に行うことができるようにするという目的を、シリンダ内で往復動するピストンと、小端部が上記ピストンと連結され、かつ大端部がクランクシャフトに連結されるコンロッドと、上記ピストンと上記コンロッドの小端部とを連結する断面中空のピストンピンと、上記ピストンピンの内部に設けられた動吸振器と、を備えたエンジンのピストン構造において、上記動吸振器がピストンピンに固定される固定部と、ピストンピンの軸方向に延びる可動部と、可動部を上記固定部に対して揺動可能に支持する支持部とを備えると共に、可動部の端部がピストンピンの軸方向端部よりも軸方向外部に位置するように組付けられるという構成にて実現した。
この発明の一実施例を以下図面に基づいて詳述する。
図面はディーゼルエンジンのピストン構造を示し、図1はエンジンのピストンおよびコンロッドを示す図、図2は図1のA−A線矢視断面図、図3は図2の要部拡大断面図である。
図1,図2において、ピストン1は、気筒サイクル(吸気行程、圧縮行程、燃焼行程(膨張行程)および排気行程)を繰返すことで、シリンダ(気筒)内でシリンダ軸心方向(図1、図2の上下方向)に往復動するように構成されている。
上記ピストン1は、ピストンピン2を介して、コンロッド10の一端部である小端部10a(いわゆるスモールエンド)と連結されている。このコンロッド10の他端部である大端部10b(いわゆるラージエンド)は、クランクシャフト(図示せず)と連結されている。コンロッド10の小端部10aと大端部10bとは、連結部10cによって連結されている。上記ピストン1の往復動は、コンロッド10を介して上記クランクシャフトに伝達されて該クランクシャフトが回転する。ピストンピン2の中心軸方向(図2の左右方向)は、上記クランクシャフトの軸方向と一致している。
コンロッド10の小端部10aには、ピストンピン2が挿通されるピン挿通孔10dが形成され、コンロッド10の大端部10bには、上記クランクシャフトが挿通されるシャフト挿通孔10eが形成されている。なお、図1では図示省略しているが、コンロッド10の大端部10bは、連結部10cの長手方向において、シャフト挿通孔10eの中央で2分割構成とされている。
コンロッド10の小端部10aにおけるピン挿通孔10dにピストンピン2が挿通されて、コンロッド10の小端部10aは、ピストンピン2の中心軸方向の中央部に位置している。また、コンロッド10の小端部10aは、ピストンピン2の中心軸方向において、ピストン1の中央に位置している。
ピストンピン2は、コンロッド10のピン挿通孔10dに対して回動可能に挿通されている。なお、コンロッド10のピン挿通孔10dの内周面には、ブッシュ11が固定されており、厳密には、このブッシュ11に対してピストンピン2が回動可能に挿通されていることになる。
ピストンピン2とコンロッド10のピン挿通孔10d(詳しくはブッシュ11)との間には、上記エンジンにおいて循環されている潤滑油が供給されることによって、潤滑油膜が形成され、この潤滑油膜と上記ブッシュ11とによって、ピストンピン2が、コンロッド10のピン挿通孔10dに対してスムーズに回動することになる。
ピストン1の頂面(ピストンヘッド)には、図2に示すように、キャビティ1aが形成され、ピストン1のランド部にはトップリング溝1b、セカンドリング溝1c、オイルリング溝1dが形成されると共に、ピストン1の内部にはクーリングチャンネル1eが形成されている。
そして上述の各リング溝1b、1c、1dには、図1に示すように、トップリング12、セカンドリング13、オイルリング14がそれぞれ装着されている。
ピストン1の裏面(頂面とは反対側の面、つまり反燃焼室側)におけるピストンピン2中心軸方向の両端部には、2つのボス部1fがコンロッド10の小端部10aを両側から挟むように上記クランクシャフト側に膨出形成されている。これら2つのボス部1fには、ピストンピン2の中心軸方向に延びるピン支持孔1gがそれぞれ形成されている。2つのボス部1fのピン支持孔1gに、ピストンピン2の中心軸方向の両端部がそれぞれ挿入されて支持されている。
この実施例では、ピストンピン2の組付方式としてフルフロート式が採用されている。
すなわち、ピストンピン2は、コンロッド10のピン挿通孔10dに対して回動可能であると共に、ピストン1のボス部1fのピン支持孔1gに対しても回動可能とされている。
ピストンピン2とコンロッド10のピン挿通孔10dとの間と同様に、ピストンピン2とピストン1のボス部1fのピン支持孔1gとの間にも潤滑油膜が形成され、この潤滑油膜によって、ピストンピン2が、ピストン1のボス部1fのピン支持孔1gに対してスムーズに回動することになる。
2つのボス部1fのピン支持孔1gにおけるピストン1外周面側の端部には、サークリップ15がそれぞれ挿入固定されており、これら2つのサークリップ15が、ピストンピン2の中心軸方向の両外端面にそれぞれ当接するように位置して、ピストンピン2の中心軸方向の移動を規制している。
上記ピストンピン2は断面中空であり、ピストンピン2の径方向中心部に、該ピストンピン2の中心軸方向に延びる貫通孔2aが形成されている。この貫通孔2aの内周面におけるピストンピン2の中心軸方向の中央部(つまりピストンピン2の長手方向中央部)には、後述する動吸振器20の固定部20aが圧入される圧入部2bが設けられている。圧入部2bにおける貫通孔2aの内径は、他の部分における貫通孔2aの内径よりも小さく設定されている。
詳しくは、貫通孔2aは、ピストンピン2の中心軸方向の中央部に位置し、小径の円筒状に形成された圧入部2bと、圧入部2bの両側に連なって、ピストンピン2の中心軸方向の両端部に位置し、大径の円筒状に形成された収容部2cとを有している。
圧入部2bと収容部2cとの間には、段差によってピストンピン2の中心軸方向に面する段差面2dが形成されている。圧入部2bを小径にすることで、ピストンピン2の剛性を向上させることができる。
上記ピストンピン2の内部(貫通孔2a内)には、燃焼行程においてピストン1、ピストンピン2およびコンロッド10の小端部10aが一体で、コンロッド10の大端部10bに対して共振するのを抑制する2つの動吸振器20(いわゆるダイナミックダンパのことで、以下単にダンパと略記する)が配設されている。これら2つのダンパ20は、図3にも示すように、ピストンピン2の中心軸方向の中央を通り、かつ、ピストンピン2の中心軸に対して垂直な面を挟んで両側にそれぞれ位置している。
ここで、ピストン1およびコンロッド10のバネマスモデルは、図4のようになる。すなわち、ピストン1、ピストンピン2およびコンロッド10の小端部10aが全体として、質点(質量をM(単位kg)とする)に相当し、コンロッド10の連結部10cが、上記質点をコンロッド10の大端部10bに対して支持するバネ(バネ定数をK(単位N/m)とする)に相当する。
ピストンピン2とコンロッド10のピン挿通孔10dとの間の潤滑油膜は、ピストンピン2とコンロッド10の小端部10aとを連結するバネに相当し、ピストンピン2とピストン1のボス部1fのピン支持孔1gとの間の潤滑油膜は、ピストンピン2とピストン1(ボス部1f)とを連結するバネに相当する。
燃焼行程では、ピストン1が大きな力で押圧されるため、ピストンピン2とコンロッド10のピン挿通孔10dとの間の潤滑油膜(ピストンピン2とコンロッド10の小端部10aとを連結するバネ)、および、ピストンピン2とピストン1のボス部1fのピン支持孔1gとの間の潤滑油膜(ピストンピン2とピストン1とを連結するバネ)は共に無くなり、この結果、ピストン1、ピストンピン2およびコンロッド10の小端部10aが一体となる。これにより、ピストン1、ピストンピン2およびコンロッド10の小端部10aが一体でコンロッド10の大端部10bに対して、(1/2π)・(K/M)1/2Hzの共振周波数で共振することになる。
この共振を抑制する(共振周波数における振動を低減する)ために、上記2つのダンパ20がピストンピン2の内部(貫通孔2a内)に設けられている。
図2、図3に示すように、各ダンパ20は、ピストンピン2の貫通孔2aの内周面に設けられた圧入部2bに固定される固定部20aと、ピストンピン2の内部において該ピストンピン2の中心軸方向に延びる可動部20bと、該可動部20bを上記固定部20aに対してピストンピン2の径方向に振動可能に支持する支持部20cとを有している。
この実施例では、部品点数の削減等の観点から、2つのダンパ20が一体に形成されている。そして、図示左側の一方のダンパ20は、固定部20a、可動部20b、および支持部20cが一体に形成されており(一体型ダンパ)、図示右側の他方のダンパ20は、複数の部材を組み付けて形成される組付型のダンパとなっている(組付型ダンパ)。
一体型ダンパ20および組付型ダンパ20は、それぞれの固定部20aで一体に連結されている。一体化された固定部20aは、圧入部2bに圧入されて固定されている。それにより、一体型ダンパ20の可動部20bは、一方の収容部2cの内部に収容され、組付型ダンパ20の可動部20bは、他方の収容部2cの内部に収容されている。そして、各ダンパ20は、可動部20bの端部20b1がピストンピン2の軸方向端部よりも軸方向外部に位置するように組付けられている。
可動部20bは、略円柱状に形成されており、その外径は、可動部20bが振動しても収容部2cの内周面に接触しないように、収容部2cの内径よりも小さい外径に寸法設計されている。そうして、可動部20bの外周面が収容部2cの内周面との間に僅かな隙間を隔てて対向するように、可動部20bは収容部2cの内部に配置されている。
しかも、上述の各ダンパ20,20はその軸方向移動を機械的に規制する規制手段を備えている。
すなわち、図3において図示左側の一体型ダンパ20は、ピストンピン2の段差面2dの最小径部の内径D4に対して、可動部20bの支持部20c側の外径D5を大きく形成(D5>D4)し、これにより規制手段30を構成している。
図3において図示右側の組付型ダンパ20は支持部20cに当該支持部20cからピストンピン軸方向に延びる軸部20dを一体形成し、この軸部20dの外周には質量調整部材としてのキャップ部40を固定して、上述の軸部20dと該キャップ部40とで可動部20bを形成している。組付型ダンパ20では、軸部20dの端部およびキャップ部40の端部が共にピストンピン2の軸方向端部よりも軸方向外部に位置するように組付けられており、この実施例では、軸部20dの端部がキャップ部40の軸方向端部よりも軸方向外部に位置している。
また、上述の軸部20dは支持部20cから外端側に向けて、外径がD3の第1軸部21と、外径がD1の第2軸部22と、外径がD2の第3軸部23と、外径がDOの第4軸部24とをこの順に一体形成し、DO<D1<D2<D3の関係式が成立するように各軸部21〜24の外径寸法を設定している。
そして、第4軸部24の支持部20c側の端部には、段差面25を形成すると共に、この段差面25の径方向外端と第3軸部23との間には、内側が大径で外側が小径となるテーパ部26を形成している。
上述のキャップ部40は、圧入方向先端側に位置する圧入部41と、第4軸部24の外周に遊嵌されるネック部42とを一体形成した2段円筒形状に形成されており、圧入部41の内外径と同一内外径の円筒部43と、ネック部42との間にはストッパ44を形成し、キャップ部40の圧入時に、該ストッパ44が段差面25に当接することで、圧入を完了すべく構成している。
また、キャップ部40の円筒部43の内径部と、軸部20dにおける第3軸部23の外径部との間にはクリアランスが形成されている。
而して、ピストンピン2の段差面2dの最小径部の内径D4に対して、キャップ部40の外径D6(可動部20bの外径)を大きく形成(D6>D4)し、これにより規制手段31を構成したものである。
ところで、支持部20cも、略円柱状に形成されており、可動部20bと固定部20aとの間に介在している。支持部20cの外径は可動部20bの外径および圧入部2bの内径よりも小さく、圧入部2bに挿通可能となっている。
そうして、支持部20cの外周面が圧入部2bの内周面との間に充分な隙間を隔てて対向するように、支持部20cは圧入部2bの内部に配置されている。それにより、支持部20cは、可動部20bを固定部20aに対してピストンピン2の径方向に振動可能に支持するものである。
固定部20aもまた、円柱状に形成されている。固定部20aの外径は、可動部20bの外径よりも小さいが、圧入部2bの内径よりも僅かに大きい。それにより、固定部20aは、圧入部2bに圧入可能となっている。固定部20a、可動部20b、および支持部20cは、中心軸を一致させた状態で直列に連なっている。
一体型ダンパ20の中心軸および組付型ダンパ20の中心軸は、ピストンピン2の中心軸と一致するように配置されている。また、2つのダンパ20,20の可動部20bの質量は略同じであり、2つのダンパ20,20における可動部20bの重心位置が、ピストンピン2の中心軸上に位置しているとともに、ピストンピン2の中心軸方向の中央を通る面(該中央を通りかつピストンピン2の中心軸に対して垂直な面)に対して互いに対称な位置に位置している。
各ダンパ20,20の支持部20cは、可動部20b(可動部20bの質量をm(単位kg)とする)を支持するバネに相当し、そのバネ定数をk(単位N/m)とすると、上記共振を抑制するためには、基本的には、k/mの値をK/Mと略同じになるように構成すればよい。このようなk/mの値が得られるように、可動部20bの長さ、および径、並びに、支持部20cの長さ、および径を設定する。厳密には、支持部20cの質量も考慮する必要があるが、支持部20cの質量は可動部20bの質量に比較してかなり小さいので、支持部20cの質量を無視することができる。なお、共振周波数以外の周波数で振動が大きくなってもよい場合には、k/mの値がK/Mと略同じである必要はない。
2つのダンパ20の可動部20bの質量を略同じにして、2つのダンパ20(支持部20c)のバネ定数を、互いに異ならせることが好ましい。これは、共振周波数における振動だけでなく、共振周波数を含む比較的広い範囲の周波数領域で振動を低減することができるからである。2つのダンパ20のバネ定数を互いに異ならせるには、2つのダンパ20における支持部20cの長さ、または径を互いに異ならせればよい。あるいは、2つのダンパ20における支持部20cの長さ、および径の両方を互いに異ならせてもよい。あるいは、2つのダンパ20における支持部20cの材料を互いに異ならせてもよい。なお、2つのダンパ20のバネ定数を略同じにしてもよい。
2つのダンパ20のバネ定数を互いに異ならせる場合、例えば、一方のダンパ20のバネ定数を、k/mの値がK/Mと略同じになるように設定し、他方のダンパ20のバネ定数を、一方のダンパ20のバネ定数よりも大きくするか、または小さくする。
上記のように、燃焼行程では、ピストンピン2とコンロッド10のピン挿通孔10dとの間の潤滑油膜(ピストンピン2とコンロッド10の小端部10aとを連結するバネ)、および、ピストンピン2とピストン1のボス部1fのピン支持孔1gとの間の潤滑油膜(ピストンピン2とピストン1とを連結するバネ)は共に無くなり、この結果、ピストン1、ピストンピン2および、コンロッド10の小端部10dが一体となって大端部10bに対して共振しようとする。しかし、この実施例では、ピストンピン2に設けられたダンパ20により、その共振が抑制され、共振による騒音を低減することができる。
一方、吸気行程、圧縮行程および排気行程では、ピストンピン2とコンロッド10のピン挿通孔10dとの間、および、ピストンピン2とピストン1のボス部1fのピン支持孔1gとの間に、それぞれ潤滑油膜が存在する。この結果、上記燃焼行程で生じるような共振は生じない。仮にダンパがコンロッドの小端部に設けられていたとすると、燃焼行程では上記共振を抑制することができるものの、共振が生じない吸気行程、圧縮行程および排気行程においても、ダンパが振動する。このため、吸気行程、圧縮行程および排気行程では、ダンパの振動により、却って騒音が大きくなってしまう。しかし、この実施例では、ダンパ20がピストンピン2に設けられているので、吸気行程、圧縮行程および排気行程では、ピストンピン2とコンロッド10のピン挿通孔10dとの間の潤滑油膜(ピストンピン2とコンロッド10の小端部10aとを連結するバネ)により、ダンパ20の振動がコンロッド10に伝わることはなく、その振動により騒音が増大するようなことはない。また、ピストンピン2の内部にダンパ20を設けることで、スペースを有効に利用することができ、ピストン1が大きくならずに済む。
さらに、ダンパ20が、質量調整部材としてのキャップ部40を固定部20aに組付けることによって可動部20bが形成される組付型ダンパ20を含むので、キャップ部40の交換によって可動部20bの質量調整が可能で、製造誤差の修正等、利便性に優れるものである。
ここで、キャップ部40による質量調整によって2つのダンパ20の可動部20bの質量を互いに異ならせてもよい。この場合、質量の違いによって周波数特性のピーク、つまりは共振周波数を互いにずらすことができ、これによって、共振周波数における振動だけでなく、共振周波数を含む比較的広い範囲の周波数領域で振動を低減することができる。
ところで、ダンパ20の組付け工程では、固定部20aを圧入部2bに圧入した後にイナータンス検査を行う。このイナータンス検査では、図5に示す計測設備50を用いて各ダンパ20の固有振動数(共振周波数)を計測する。
図5では、ダンパ20が組付けられたピストンピン2が計測テーブル51の上に載置されており、該計測テーブル51に取付けられた第1、第2のクランプ用シリンダ52、53によって、それぞれピストンピン軸方向(X方向)、ピストンピン軸方向と直交する方向(Y方向)の位置決めを行う。ここで、ピストンピン2の直ぐ上方には、加振器(インパルスハンマー)54が配設されており、上述の位置決めでは、ピストンピン2のX方向中央部の頂部に加振器54の下端が位置するようピストンピン2を位置決めする。
また、図5では、加振器54の上方に振動計55,55が配設されている。この振動計55,55としては、例えばレーザードップラ振動計等の非接触式の振動計が用いられ、図5,図6に示すように、加振器54のX方向両側に振動計55,55が位置するような配置となっている。
図5に示す計測設備50を用いたイナータンス検査では、図6に示すように、加振器54でピストンピン2を加振すると同時に、各ダンパ20の可動部20bの端部20b1に対して振動計55,55からそれぞれ所定周波数のレーザー光L0を照射する。このとき、振動計55,55は、ダンパ20の振動により発生するドップラ効果で偏移した反射光L1,L2の周波数を計測し、この反射光L1,L2の周波数に基づいて、各ダンパ20の自己イナータンス(ダンパ20に1Nの荷重を付加したときのダンパ20の振動の加速度)を算出する。各ダンパ20の共振周波数は、この自己イナータンスの周波数特性に基づいて個別に求められる。
ここで、上述のイナータンス検査の結果から、ダンパ20の共振周波数が所定値からずれていた場合、つまりは、狙いの吸振特性からずれていた場合には、ダンパ20の質量調整を行い、この質量調整によって共振周波数の調整を行う。
実際にダンパ20の質量調整を行う場合には、例えば、図7に示すような質量調整加工装置60を用いる。質量調整加工装置60は、ピストンピン2を把持するチャック部61と、該チャック部61と対向するように配置された研削砥石62と、該研削砥石62による研削量(寸法)を計測するための寸法測定装置63とにより構成されている。
図7に示す質量調整加工装置60を用いた質量調整では、ピストンピン2を把持したチャック部61および研削砥石62を互いに逆方向に回転駆動することで、各ダンパ20の可動部20bの端部20b1に対して研削加工を施す。ここで、組付型ダンパ20が狙いの吸振特性からずれていた場合には、図7(a)に示すように、端部20b1を構成する軸部20dの先端を研削加工し、一体型ダンパ20が狙いの吸振特性からずれていた場合には、図7(b)に示すように、端部20b1を構成する可動部20bの先端を研削加工する。
ところで、一般的には、物体の質量が減少する程その共振周波数は高くなる方向にシフトすることが知られている。このため、上述のように端部20b1の研削加工によって質量調整を行うことを考慮すれば、組付け当初の段階では、ダンパ20の共振周波数を所定値よりも低く(端部20b1の寸法を狙いの寸法よりも長く)設定しておくのが好ましい。
このように、図1〜図7で示した実施例1のエンジンのピストン構造は、シリンダ内で往復動するピストン1と、小端部10aが上記ピストン1に連結され、かつ大端部10bがクランクシャフトに連結されるコンロッド10と、上記ピストン1と上記コンロッド10の小端部10aとを連結する断面中空のピストンピン2と、上記ピストンピン2の内部に設けられたダンパ20と、を備えたエンジンのピストン構造であって、上記ダンパ20がピストンピン2に固定される固定部20aと、ピストンピン2の軸方向に延びる可動部20bと、可動部20bを上記固定部20aに対して揺動可能に支持する支持部20cとを備えると共に、可動部20bの端部20b1がピストンピン2の軸方向端部よりも軸方向外部に位置するように組付けられているものである(図1〜図3,図5〜図7参照)。
この構成によれば、燃焼行程で、ピストンピン2とコンロッド10との間の潤滑油膜(フルフロート式では、該潤滑油膜、および、ピストンピン2とピストン1との間の潤滑油膜)が無くなって、ピストン1、ピストンピン2、およびコンロッド10の小端部10aが一体となった場合、ダンパ20により、それらが一体で共振するのを抑制することができる。また、ダンパ20がピストンピン2内部に設けられているので、ピストンピン2とコンロッド10との間に潤滑油膜が存在する場合、つまり吸気行程、圧縮行程および排気行程では、この潤滑油膜(バネ)により、ダンパ20の振動がコンロッド10に伝わることはなく、その振動により騒音が増大するようなことはない。また、ピストンピン2の内部にダンパ20を設けることで、スペースを有効に利用することができ、ピストン1が大きくならずに済む。
しかも、ピストンピン2の軸方向端部よりも軸方向外部に位置するように可動部20bの端部20b1を組付けることで、ピストンピン2内部に設けられるダンパ20の端部を研削加工する作業が容易に行える。このため、ダンパ20の固有振動数(共振周波数)の調整を容易に行うことができ、狙いの吸振性能を得ることができる。
また、非接触でダンパ20の固有振動数を計測する場合には、ピストンピン2の軸方向端部よりも軸方向外部に位置する可動部20bの端部20b1を計測対象とすることで、容易に固有振動数を計測することができる。
また、この発明の一実施形態においては、ダンパ20が支持部20cからピストンピン2の軸方向に延びる軸部20dを備え、可動部20bは軸部20dと、該軸部20d外周に固定され支持部と共に揺動可能なキャップ部40とから構成され、ダンパ20は軸部20dの端部またはキャップ部40の端部がピストンピン2の軸方向端部よりも軸方向外部に位置するように組付けられたものである(図2,図3参照)。
この構成によれば、キャップ部40の交換によって可動部20bの質量調整が可能で、製造誤差の修正等、利便性に優れる。
また、キャップ部40による質量調整によって2つのダンパ20の可動部20bの質量を互いに異ならせた場合、質量の違いによって周波数特性のピーク、つまりは共振周波数を互いにずらすことができ、これによって、共振周波数における振動だけでなく、共振周波数を含む比較的広い範囲の周波数領域で振動を低減することができる。
また、この発明の一実施形態においては、ダンパ20の固有振動数(共振周波数)を計測し、該固有振動数が所定値からずれている際に可動部20bの端部20b1を研削加工し固有振動数を調整するように構成したものである(図6,図7参照)。
この構成によれば、ダンパ20の実際の固有振動数と所定値との差に基づいて調整を行うことで、固有振動数をより正確に調整することができる。
また、この発明の一実施形態においては、ダンパ20が2つ設けられており、固有振動数を個別に計測して個別に調整するように構成したものである(図2〜図4,図6,図7参照)。
この構成によれば、2つのダンパ20のうち、共振周波数が所定値からずれている方を適宜調整することができる。
図8はエンジンのピストン構造の他の実施例を示す断面図、図9は図8の要部拡大断面図である。
図8,図9に示すこの実施例2においては、上記実施例1と同様、ピストンピン2の軸方向端部よりも軸方向外部に位置するように各ダンパ20が組付けられており、このうち、組付型ダンパ20では、キャップ部40の軸方向端部が軸部20dの端部よりも軸方向外部に位置している。このため、図7に示す質量調整加工装置60を用いて質量調整を行う際には、端部20b1を構成するキャップ部40の端部に対して研削加工を施すことになる。
図8,図9で示したこの実施例2においても、その他の構成、作用、効果については先の実施例とほぼ同様であるから、図8,図9において、前図と同一の部分には同一符号を付して、その詳しい説明を省略する。
図10はエンジンのピストン構造のさらに他の実施例を示す断面図、図11は図10の要部拡大断面図である。
図1〜図9で示した実施例1,2においては、固定部20aを隔てた図示右側を組付型のダンパ20とし、固定部20aを隔てた図示左側を一体型ダンパ20としたが、図10,図11で示すこの実施例3においては、固定部20aを隔てた図示の左右両側をそれぞれ図9の図示右側の構成と同等の組付型のダンパ20,20としたものである。
そして、図10,図11に示す実施例3においては、上記各実施例1,2と同様、可動部20bの端部20b1がピストンピン2の軸方向端部よりも軸方向外部に位置するように各ダンパ20が組付けられており、軸部20dの端部がピストンピン2の軸方向端部よりも軸方向外部に位置して端部20b1を構成している。
また、図10,図11に示す実施例3においては、ダンパ20を2つ設け、図示の左右両側のダンパ20の支持部20cには、当該支持部20cからピストンピン軸方向に延びる軸部20dを一体形成し、該軸部20d外周にはキャップ部40を固定して、軸部20dとキャップ部40とで可動部20bを形成すると共に、規制手段32を、固定部20aを固定するピストンピン2小径部の段差面2dと、可動部20bの大径部(キャップ部40の外径部)にて構成したものである。
上述のキャップ部40は圧入方向先端側と圧入方向後端側とに圧入部44,45を有する円筒形状に形成されており、これらの各圧入部44,45間における軸部20dはキャップ部40の内径に対して小径に形成されており、この小径に形成された部分と圧入部44,45間のキャップ部40内周面との間には隙間46が形成されている。
また、上述のキャップ部40の軸方向外端は、軸部20dの対応部に装着したC形クリップ等の係止リング33で抜け止め固定している。
このように構成しても、可動部20bを大径化することができると共に、ピストンピン2の小径部における段差面2dと可動部20bの大径部(キャップ部40の外径部)との両者(つまり規制手段32)により、ダンパ20,20の抜止めを達成することができる。また、上記キャップ部40により質量調整が容易となる。
また、この構成によれば、2つのダンパ20を略同様または同一に構成することができると共に、キャップ部40の質量調整により周波数差の自由度増加を図ることができる。
図10,図11で示したこの実施例3においても、その他の構成、作用、効果については先の実施例とほぼ同様であるから、図10,図11において、前図と同一の部分には同一符号を付して、その詳しい説明を省略する。
図12はエンジンのピストン構造の他の実施例を示す断面図、図13は図12の要部拡大断面図である。
図12,図13に示す実施例4においては、固定部20aを隔てた図示の左右両側をそれぞれ図3の図示左側の構成と同等の一体型のダンパ20,20としたものである。
そして、図12,図13に示す実施例4においては、上記各実施例1〜3と同様、可動部20bの端部20b1がピストンピン2の軸方向端部よりも軸方向外部に位置するように各ダンパ20が組付けられている。
また、図12,図13に示す実施例4においては、ピストンピン2の中心軸方向の中央部に実施例1の圧入部2bに代えて挿入部2eを形成している。また固定部20aの外径に対して可動部20bの外径を小さく形成している。
また、上記実施例1と同様に形成された2つのダンパ20の互いに一体形成された固定部20a(実質的に1つである固定部20aのピストンピン2中心軸方向の中央部)に、環状の溝部20eを形成し、この溝部20eにC形クリップ34を嵌める。一方、ピストンピン2の挿入部2eの内周面には、溝部20eに対応する箇所に、環状の溝部2fを形成しておく。そして、上記C形クリップ34を嵌めたダンパ20を貫通孔2aの一方の開口から挿入すると、C形クリップ34は、内周面の溝部2fが形成されていない部分に接触している状態では縮径しているが、溝部2fに対向する位置で拡径して溝部2fに嵌まり、これにより、固定部20aがピストンピン2の挿入部2eに抜け止めされた状態で固定される。
要するに、図12,図13で示す実施例2においては、規制手段を、上記固定部20aに設けられるC形クリップ34にて構成したものであり、この構成によれば、簡単な構成でダンパ20の抜止めを達成することができる。また、ダンパ20の固定部20aを圧入することなく、C形クリップ34を用いて挿入固定することができるので、ダンパ20の組付け作業性の向上を図ることができる。
図12,図13で示したこの実施例2においても、その他の構成、作用、効果については先の実施例とほぼ同様であるから、図12,図13において、前図と同一の部分には同一符号を付して、その詳しい説明を省略する。
この発明の構成と、上述の実施例との対応において、
この発明の動吸振器は、実施例のダンパ20に対応し、
質量調整部は、キャップ部40に対応するも、
この発明は、上述の実施例の構成のみに限定されるものではない。
例えば、上記各実施例においては、ピストンピン2の組付方式としてフルフロート式を採用したが、これに限定されるものではなく、ピストンピン2が、コンロッド10のピン挿通孔10dに対して回動可能であり、かつ、ピストン1のボス部1fのピン支持孔1gに固定されたセミフロート式であってもよい。
また、図示実施例においては、ディーゼルエンジン用のピストン1を例示したが、本発明はガソリンエンジン用のピストンにも適用することができる。
以上説明したように、本発明は、シリンダ内で往復動するピストンと、小端部が上記ピストンに連結され、かつ大端部がクランクシャフトに連結されるコンロッドと、上記ピストンと上記コンロッドの小端部とを連結する断面中空のピストンピンと、上記ピストンピンの内部に設けられた動吸振器と、を備えたエンジンのピストン構造について有用である。
1…ピストン
2…ピストンピン
10…コンロッド
10a…小端部
10b…大端部
20…ダンパ(動吸振器)
20a…固定部
20b…可動部
20b1…端部
20c…支持部
20d…軸部
40…キャップ部

Claims (7)

  1. シリンダ内で往復動するピストンと、
    小端部が上記ピストンと連結され、かつ大端部がクランクシャフトに連結されるコンロッドと、
    上記ピストンと上記コンロッドの小端部とを連結する断面中空のピストンピンと、
    上記ピストンピンの内部に設けられた動吸振器と、を備えたエンジンのピストン構造であって、
    上記動吸振器は、上記ピストンおよび上記コンロッドの共振周波数での振動を抑制するように設定され、
    上記動吸振器が上記ピストンピンに固定される固定部と、
    上記ピストンピンの軸方向に延びる可動部と、
    上記可動部を上記固定部に対して揺動可能に支持する支持部とを備えると共に、
    上記可動部の端部が上記ピストンピンの軸方向端部よりも軸方向外部に位置するように組付けられていることを特徴とする
    エンジンのピストン構造。
  2. シリンダ内で往復動するピストンと、
    小端部が上記ピストンと連結され、かつ大端部がクランクシャフトに連結されるコンロッドと、
    上記ピストンと上記コンロッドの小端部とを連結する断面中空のピストンピンと、
    上記ピストンピンの内部に設けられた動吸振器と、を備えたエンジンのピストン構造であって、
    上記動吸振器は、中実部材で構成され、
    上記動吸振器が上記ピストンピンに固定される固定部と、
    上記ピストンピンの軸方向に延びる可動部と、
    上記可動部を上記固定部に対して揺動可能に支持する支持部とを備えると共に、
    上記可動部の端部が上記ピストンピンの軸方向端部よりも軸方向外部に位置するように組付けられていることを特徴とする
    エンジンのピストン構造。
  3. シリンダ内で往復動するピストンと、
    小端部が上記ピストンと連結され、かつ大端部がクランクシャフトに連結されるコンロッドと、
    上記ピストンと上記コンロッドの小端部とを連結する断面中空のピストンピンと、
    上記ピストンピンの内部に設けられた動吸振器と、を備えたエンジンのピストン構造であって、
    上記動吸振器が上記ピストンピンに固定される固定部と、
    上記ピストンピンの軸方向に延び、上記固定部に支持される可動部と、を備えると共に、
    上記可動部は、その端部が上記ピストンピンの軸方向端部よりも軸方向外部に位置するように組付けられ
    上記動吸振器が上記固定部から上記ピストンピンの軸方向に延びる軸部を備え、
    上記可動部は、上記軸部と、該軸部外周に固定されて揺動可能な質量調整部とから構成され、
    上記動吸振器は、上記軸部の端部または上記質量調整部の端部が上記ピストンピンの軸方向端部よりも軸方向外部に位置するように組付けられた
    エンジンのピストン構造。
  4. シリンダ内で往復動するピストンと、
    小端部が上記ピストンと連結され、かつ大端部がクランクシャフトに連結されるコンロッドと、
    上記ピストンと上記コンロッドの小端部とを連結する断面中空のピストンピンと、
    上記ピストンピンの内部に設けられた動吸振器と、を備えたエンジンのピストン構造の製造方法であって、
    上記動吸振器が上記ピストンピンに固定される固定部と、
    上記ピストンピンの軸方向に延び、上記固定部に支持される可動部と、を備え、
    上記動吸振器を、上記可動部の端部が上記ピストンピンの軸方向端部よりも軸方向外部に位置するように組付ける組付け工程を有し、
    上記組付け工程は、上記動吸振器を上記ピストンピンに組み付けた後に、上記動吸振器の固有振動数を計測す
    エンジンのピストン構造の製造方法
  5. 上記組付け工程は、上記動吸振器の固有振動数の計測により、該固有振動数が所定値からずれている際に上記可動部の端部を研削加工し固有振動数を調整する
    請求項4記載のエンジンのピストン構造の製造方法。
  6. 上記固定部から上記ピストンピンの軸方向に延びる軸部を備え、
    上記可動部は、上記軸部と、該軸部外周に固定されて揺動可能な質量調整部とから構成され、
    上記組付け工程において、上記動吸振器を、上記軸部の端部または上記質量調整部の端部が上記ピストンピンの軸方向端部よりも軸方向外部に位置するように組付ける
    請求項4または5記載のエンジンのピストン構造の製造方法。
  7. 上記動吸振器が2つ設けられており、
    上記組付け工程において、上記動吸振器の固有振動数を個別に計測して個別に調整す
    請求項4乃至6のうちいずれかに記載のエンジンのピストン構造の製造方法。
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