JP6103473B2 - ロジン系エポキシ組成物およびその製造方法ならびに硬化性エポキシ樹脂組成物 - Google Patents

ロジン系エポキシ組成物およびその製造方法ならびに硬化性エポキシ樹脂組成物 Download PDF

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Description

本発明は、ロジン系エポキシ組成物およびその製造方法ならびに硬化性エポキシ樹脂組成物に関する。
近年、化学原料や化学素材に対して、バイオマス利用の要求が一層高まっている。バイオマスとしては、例えば、天然ロジン、これを変性して得られる各種の変性ロジン、該誘導体などが知られている。
ロジン誘導体としては、例えばロジン金属塩、ロジンアルコール、ロジンエステルなどが挙げられる。ロジンエステルの一例として、ロジングリシジルエステルがあるが、該化合物は、反応性希釈剤、アルキド樹脂やポリエステルなどの合成樹脂用の原料や改質剤、塗料や接着剤の配合成分など各種用途に適用されている。
ところで、エポキシ化合物としては、グリシジルエステル型の他にも、例えばグリシジルエーテル型があり、一般的には後者が耐加水分解性の点で優位とされている。グリシジルエーテル型エポキシ化合物の代表例として、多価フェノール系グリシジルエーテル類や脂肪族グリシジルエーテル類などが知られている。多価フェノール系グリシジルエーテル類としては、より具体的には、ノボラック型エポキシ樹脂、トリスフェノールエポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂などが挙げられる。該エポキシ樹脂の製造法としては、例えば特許文献1を参照できる。
前記の脂肪族グリシジルエーテル類としては、例えばグリコールやグリセリンなどから得られるグリシジルエーテル類が知られており、それら製造法としては例えば特許文献2、3を参照できる。
これらのグリシジルエーテル類は、反応性希釈剤、塗料や接着剤用の配合材料、成形材用の原料や改質剤などとして賞用されている。
しかしながら、該グリシジルエーテル類は、いずれもバイオマス利用の要求に必ずしも合致せず、またビスフェノール系グリシジルエーテル化合物の中には環境安全性評価による懸念物質(内分泌攪乱作用)も含まれている。
従って、バイオマス利用などの環境配慮要請に合致するとともに、性能面で特色のある新たなグリシジルエーテル化合物の開発が求められている。
特開平2−202511号公報 特開昭63−115877号公報 特開平5−271211号公報
本発明は、環境負荷が低減され、硬化性などに優れたグリシジルエーテル型化合物および該化合物の製造方法を提供することを目的とする。
本発明者は、環境配慮型で高性能なエポキシ樹脂となりうるグリシジルエーテルにつき鋭意検討を重ねた結果、特定のロジン系エポキシ組成物がかかる課題を解決しうることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち本発明は、
(1)一般式(1):
Figure 0006103473
(式中、Roはロジンアルコールグリシジルエーテル残基を表す。)で表わされる成分を60重量%以上含有するロジン系エポキシ組成物、
(2)一般式(2):Ro−CHOH(式中、Roはロジンアルコール残基を表す。)で表されるロジンアルコールとエピハロヒドリンとを、触媒の存在下に反応させ、脱ハロゲン化水素するロジン系エポキシ組成物の製造方法、および
(3)前記ロジン系エポキシ組成物を含有する硬化性エポキシ樹脂組成物に係る。
本発明により、環境配慮型で優れた硬化性を有するロジン系エポキシ組成物を提供できる。該ロジン系エポキシ組成物は、アルキド樹脂やポリエステルなどの合成樹脂用の原料、改質剤、反応性希釈剤などとして、また接着剤、塗料、成形材用の配合剤などとして使用できる他、環境配慮型のエポキシ樹脂として各種用途に適用できる。
本発明のロジン系エポキシ組成物は、一般式(1):
Figure 0006103473
(式中、Roはロジンアルコールグリシジルエーテル残基を表す。)で表される成分を60重量%以上、より好ましくは80重量%以上含有するものである。該グリシジルエーテルの性状・物性については、格別限定されないが、目的用途に応じて、その色調、軟化点およびエポキシ当量のうちの少なくとも1つが特定されたものを、好ましく用いることができる。
ロジン系エポキシ組成物の性状は、その原料であるロジンアルコールの種類により変動するため一義的に決定しがたいが、通常は色調がガードナー3以下、好ましくは2以下であり、軟化点が50〜100℃、好ましくは55〜90℃であり、エポキシ当量が180〜400g/eq、好ましくは200〜350g/eqであるものを、より好適に使用できる。なお、色調は、JIS 5902により測定した値であり、軟化点は、JIS K2207(環球法)により測定した値であり、エポキシ当量はJIS K7236:2001により測定した値である。
ロジン系エポキシ組成物が前記性状を有するためには、その原料であるロジンアルコールや、更には該ロジンアルコールの原料であるロジンが、それぞれ以下のような特定性状を有していることが望ましい。
原料として用いるロジンアルコールは、一般式(2):Ro−CHOH(式中、Roはロジンアルコール残基を表す。)で表される。また、ロジンアルコールの性状は、その原料であるロジンの種類により変動するため一義的に決定しがたいが、通常は色調がガードナー2以下、軟化点が55〜110℃、水酸基価が180〜450mgKOH/g、二量体含有率が60重量%以上、より好ましくは80重量%以上のものとされる(以下、特定ロジンアルコールという)。なお、水酸基価はJIS K0070により測定した値である。
特定ロジンアルコールを得るために用いる原料ロジンとしては、天然ロジンを蒸留や再結晶などの方法により得られる精製ロジンや、天然ロジンや精製ロジンを不均化または水素化してなる不均化ロジンや水素化ロジン、更には精製ロジンと不飽和カルボン酸(例えば、無水マレイン酸、フマル酸、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸など)とをディールス・アルダー反応させてなる酸変性ロジンなどを挙げることができる。これらの原料ロジンの色調は、ガードナー2以下、より好ましくはガードナー1以下であり、更に好ましくはハーゼン水準(JIS K0071−1による)のものとされる。
特定ロジンアルコールは、各種公知の水素化方法を適用して、前記ロジン中の不飽和結合およびカルボキシル基を水素化還元することにより収得できる。工業的水素化方法を例示すると、重金属触媒の存在下に樹脂酸メチルエステルを水素添加する方法、300℃程度の高温かつ高圧下に、銅クロム触媒により樹脂酸メチルエステルを水素添加する方法、溶解したロジンをラネーニッケルで直接水素添加する方法、銅、コバルト、ニッケル系触媒を用いて高温、高圧下で水素添加しアルコールに還元する方法などを挙げることができる。このようにして得られるロジンアルコールは、テトラヒドロアビエチルアルコール、ジヒドロアビエチルアルコール、デヒドロアビエチルアルコールなどを含む混合物である。なお、例えば、アクリル変性ロジンやマレイン酸変性ロジンを原料として得られる酸変性ロジンアルコールでは、それらに対応する多価アルコールが得られることになる。
特定ロジンアルコールの色調は、より好ましくはガードナー1以下、更に好ましくはハーゼン水準のものとされる。また、該水酸基価は、より好ましくは190〜330mgKOH/gとされる。また、該軟化点はより好ましくは60〜90℃とされる。
前記特定ロジンアルコールから得られるロジン系エポキシ組成物の軟化点が50℃未満である場合は、貯蔵時にブロッキングしやすくなり、また100℃を超える場合は有機溶剤に対する溶解性が低下する傾向がある。
得られるロジン系エポキシ組成物のエポキシ当量が180g/eq未満の場合は、理論上その製造が困難となる場合がある。また、エポキシ当量が400g/eqを超えるロジン系エポキシ組成物であって酸変性ロジン由来でないものは、硬化性が低下する傾向があり、またエポキシ当量が400g/eqを超えるロジン系エポキシ組成物であって酸変性ロジン由来のものは、有機溶剤に対する溶解性が低下しやすい。
本発明のロジン系エポキシ組成物は、前記ロジンアルコールとエピハロヒドリンとを、触媒の存在下に反応させ、脱ハロゲン化水素することにより製造される。より具体的には、以下に示す二段法と一段法を挙げることができる。二段法は、ロジンアルコールとエピハロヒドリンとを、触媒の存在下に反応させて相当するハロヒドリンエーテルとし、ついで該エーテルをアルカリにより脱ハロゲン化水素する方法である。以下、必要に応じて、ハロヒドリンエーテルの製造工程を第一工程といい、脱ハロゲン化水素する工程を第二工程という。
二段法の第一工程で用いるエピハロヒドリンとしては、例えばエピクロルヒドリン、エピブロムヒドリン、エピヨードヒドリン、エピフルオロヒドリンが挙げられるが、工業的にはエピクロルヒドリンが好ましい。エピハロヒドリンの使用量は、ロジンアルコールの水酸基が反応生成物中に残存しなくなるように適宜決定する必要があり、通常は、ロジンアルコールの水酸基と等モル数以上とされるが、好ましくは1〜10倍モル程度とされる。10倍モルを超えて用いた場合は、不経済であるだけでなく、副反応により、反応生成物のエポキシ当量が大きくなる傾向がある。
二段法の第一工程で用いる触媒としては、各種のルイス酸、第3級アミン塩および第4級アンモニウム塩から選ばれる少なくとも1種が、好ましく用いられる。
前記ルイス酸としては、例えば塩化アルミニウム、塩化アンチモン、塩化スズ、塩化鉄、塩化亜鉛、三フッ化ホウ素、三フッ化ホウ素錯体などが挙げられる。三フッ化ホウ素錯体としては、例えば三フッ化ホウ素・エチルエーテル錯体、三フッ化ホウ素・フェノール錯体などが挙げられる。
前記の第3級アミン塩としては、例えばトリメチルアミン、トリエチルアミン、N,N−ジメチルアニリン、ジメチルベンジルアミンなどの第3級アミンの塩酸塩、臭化水素酸塩、フッ化水素酸塩、硫酸塩などが挙げられる。また第4級アンモニウム塩の具体例としては、例えばテトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、ベンジルトリメチルアンモニウム、アリルトリエチルアンモニウム、テトラブチルアンモニウムなどの各種第4級アミンの塩素化物、臭素化物、フッ素化物、硫酸塩などが挙げられる。
第一工程で用いる前記触媒の使用量は、ロジンアルコールに対して0.01〜10重量%、好ましくは0.05〜1重量%である。該使用量が0.01重量%未満である場合は、第一工程の完結に長時間を要する傾向があり、また10重量%を超える場合は反応上の優位性はなく不経済となる。
第一工程における反応条件は、前記ハロヒドリンエーテルの収率を考慮して適宜決定されるが、通常は反応温度が50〜120℃、好ましくは80〜100℃であり、反応時間は1〜10時間、好ましくは1〜4時間である。反応の終点はHLC(高速液体カラムクロマトグラフィー)測定法により容易に確認できるが、第二工程への移行は、未反応ロジンアルコールがほとんど残存せず、該水酸基がほぼ完全にハロヒドリンエーテルに転化したことを確認した後に行うのがよい。
第二工程で用いるアルカリとしては、アルカリ金属の水酸化物が好ましく、その具体例としては水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウムなどが挙げられる。アルカリの使用形態は特に限定されないが、通常は固形のまま反応系に添加するのが好ましいが、水溶液として添加してもよい。アルカリ水溶液を用いる場合は、その濃度が40重量%以上となるよう調整するのがよく、40重量%に満たない場合は、副反応が進むため、目的物の収量が低下する傾向がある。
アルカリの使用量は、前記ハロヒドリンエーテルの該エーテル基1当量に対して少なくとも1当量、好ましくは1.0〜1.2倍当量とするのがよい。該使用量が1当量未満の場合は反応が完結しない傾向があり、また1.2倍当量を超えて使用しても反応上の優位性はなく、却って不経済となる。
第二工程における反応条件は、目的生成物であるロジン系エポキシ組成物の収率を考慮して適宜決定されるが、通常は反応温度が50〜120℃、好ましくは100〜120℃であり、反応時間は1〜10時間、好ましくは1〜2時間である。反応の終点は、前記と同様にHLC測定法により確認すればよい。該反応中、アルカリとともに添加される水または反応により生成した水は、反応系から共沸などの方法で除去すればよい。
反応終了後、例えば減圧蒸留等の操作により反応系内から過剰のエピハロヒドリンを除去する。ついで、得られた残留物に適当な溶媒を添加し溶解させることにより副生塩を濾別した後、該溶媒を留去して目的物であるロジン系エポキシ組成物を収得することができる。
本発明のロジン系エポキシ組成物を製造するための前記一段法は、ロジンアルコールとエピハロヒドリンとを、アルカリおよび層間移動触媒の存在下に反応させる方法である。
一段法で用いるアルカリとしては、二段法で用いる前記アルカリを区別なく使用できる。一段法で用いるアルカリの使用量も、二段階法におけると同様である。
一段法で用いる層間移動触媒としては、二段法の第一工程で用いる前記触媒のうち、第3級アミン塩および第4級アンモニウムを好ましく使用できる。該触媒の使用量は、特に限定されないが、一般には、ロジンアルコールとエピハロヒドリンの合計量に対して、0.1〜10重量%、好ましくは0.5〜5重量%とされる。該使用量が上記範囲の下限未満の場合には反応速度が遅くなり、副反応が進行して反応生成物のエポキシ当量が小さくなりやすい。また上限を超えて用いても不経済なだけである。
また、一段法においては、層間移動触媒に次のような金属触媒を併用することができる。該金属触媒としては、銅、亜鉛、鉄、マグネシウム、銀、カルシウム、スズから選ばれるメタロイドまたはアンモニウムイオン、ならびにBF 、PF およびSiF 2−から選ばれる対イオンから形成される金属化合物を好ましく例示でき、より具体的には、Sn(BF、Fe(BF、Ca(BF、Zn(BF、Mg(BF、Cu(BF、MgSiF、AgSiFが好ましい。
該金属触媒の使用量は、格別限定されないが、一般には、ロジンアルコールとエピハロヒドリンの合計量に対して、0.01〜10重量%、好ましくは0.1〜5重量%とされる。該金属触媒の使用量が上記範囲の下限未満の場合には反応速度が遅くなるため実用的ではなく、また上限を超えても反応速度の向上は見られない。
一段法で用いるエピハロヒドリンの使用量は、二段階法におけると同様であり、通常は、ロジンアルコールの水酸基と等モル数以上であるが、好ましくは1〜10倍モル程度とされる。
前記のようにして得られる本発明のロジン系エポキシ組成物は、環境配慮型で且つ優れた性状・物性を有するものである。該ロジン系エポキシ組成物は、アルキド樹脂やポリエステルなどの合成樹脂用の原料、改質剤、反応性希釈剤などとして、また接着剤、塗料、成形材用の配合剤として使用できる他、環境配慮型のエポキシ樹脂として各種用途に適用できる。
本発明のロジン系エポキシ組成物は、ロジン部位由来のバルキーな構造であるため、高性能なエポキシ樹脂として利用価値は大きいものである。
本発明のロジン系エポキシ組成物は、硬化性樹脂組成物、例えばエポキシ樹脂組成物を調製するため有用である。該組成物には溶剤、顔料、エポキシ樹脂用硬化剤、エポキシ樹脂などの各種配合物を用途に応じて単独でまたは複数を適宜に配合できる。
ロジン系エポキシ組成物の含有率は、エポキシ樹脂組成物中のエポキシ化合物の総量(固形分換算100重量部)に対し、通常5〜50重量%程度(固形分換算)、好ましくは10〜40重量%とされる。ロジン系エポキシ組成物と併用可能なエポキシ樹脂としては、格別限定されず公知各種のエポキシ樹脂が使用でき、例えばノボラック型エポキシ樹脂、トリスフェノールエポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂などが挙げられる。
前記エポキシ樹脂組成物に配合されるエポキシ樹脂用硬化剤としては、各種公知の硬化剤を格別限定なく使用でき、例えば、2−メチルイミダゾール、2−エチルイミダゾールなどのイミダゾール系化合物、2−(ジメチルアミノメチル)フェノールなどの第3級アミン系化合物、トリフェニルフォスフィン化合物などが挙げられる。
前記エポキシ樹脂組成物においては、各種公知の溶剤を格別限定なく使用でき、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン類;エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノール、2−エチルヘキシルアルコール、ベンジルアルコールなどのアルコール類;エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテルなどのアルキレングリコールアルキルエーテル類;プロピレングリコールアセテート、セロソルブアセテート、酢酸エチル、酢酸ブチルなどの酢酸エステル類;トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素などが挙げられる。
ロジン系エポキシ組成物を含有してなる前記エポキシ樹脂組成物は、例えば塗料、接着剤、成形材料など各種の用途に適用することができる。
以下に実施例および比較例をあげて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。尚、部および%は特記しない限り重量基準である。なお、本発明におけるロジンアルコールの色調、軟化点、水酸基価、および二量体含有率の測定・算出、ならびにロジン系エポキシ組成物の色調、軟化点、エポキシ当量および一般式(1)で表される成分の含有率の測定・算出は、以下の方法による。
(色調)
JIS 5902に準拠してガードナー色度を、JIS K0071−1に準拠してハーゼン色度を目視測定した。
(軟化点)
JIS K2207(環球法)に準拠して測定した。
(水酸基価)
JIS K0070に準拠して測定した。
(エポキシ当量(g/eq))
JIS K7236:2001に準拠して測定した。
(二量体、一般式(1)成分の含有率)
HLC測定法により求めた。測定条件は以下の通りである。
カラム:ODS(山村化学研究所製、商品名YMC Pack A−312)
溶媒:メチルアルコール/0.01%リン酸=9/1(容量比)
流速:1ml/分、
検出器:示差屈折計(日本ウオーターズリミテッド社製)
実施例1(ロジン系エポキシ組成物の合成;一段法)
攪拌機、温度計および分離器付き冷却管を備えた反応容器に、精製ロジンから得られたロジンアルコール(色調ガードナー2、水酸基価190mgKOH/g、軟化点70℃)286部(1モル部)、塩化ベンジルトリメチルアンモニウム2.5部、Sn(BF(スタナステトラフルオロボレート)の45%水溶液1.3部、およびエピクロルヒドリン370部(4モル部)を加え、窒素気流下に80℃に昇温し同温度に保ちながら、水酸化ナトリウム40部を1時間かけて5分割添加し、更に3時間反応を続けた。この間、生成水はエピクロルヒドリンと共沸留去した。ついで、残余のエピクロルヒドリンを減圧下に留去することによりロジン系エポキシ組成物を得た。該性状・物性を表1に示す。
実施例2(ロジン系エポキシ組成物の合成;一段法)
実施例1において、前記ロジンアルコールに代えて、不均化ロジンから得られたロジンアルコール(色調ガードナー1、水酸基価185mgKOH/g、軟化点75℃)286部(1モル部)を用いた他は、同様に反応を行い、ロジン系エポキシ組成物を得た。該性状・物性を表1に示す。
実施例3(ロジン系エポキシ組成物の合成;二段法)
前記反応容器に、実施例1で用いたロジンアルコール286部、塩化テトラメチルアンモニウム6部およびエピクロルヒドリン600部を加え、窒素気流下に80℃に昇温し、3時間保温した。ついで、水酸化ナトリウム40部を1時間かけて5分割添加し、更に3時間反応を続けた。この間、生成水はエピクロルヒドリンと共沸留去した。ついで、残余のエピクロルヒドリンを減圧下に留去することによりロジン系エポキシ組成物を得た。該性状・物性を表1に示す。
実施例4(ロジン系エポキシ組成物の合成;二段法)
実施例3において、前記ロジンアルコールに代えて、水素化ロジンから得られたロジンアルコール(色調ハーゼン150、水酸基価190mgKOH/g、軟化点65℃)を用いた他は、同様に反応を行い、ロジン系エポキシ組成物を得た。該性状・物性を表1に示す。
比較例1(比較用ロジングリシジルエステルの合成)
特開昭64−69680号公報の実施例1に準じて反応を行い、比較用ロジングリシジルエステルを得た。該性状・物性を表1に示す。
Figure 0006103473
(エポキシ樹脂組成物の調製および試験板の作成)
実施例1〜4で得られたロジン系エポキシ組成物および比較例1で得られたロジングリシジルエステルからなる各供試用サンプル70部(固形分換算)、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン(株)製、製品名「EP1001」、エポキシ当量約475g/eq、不揮発分100%)30部、アミン系硬化剤(大都産業(株)製、MXDA系変性アミン、活性水素当量95g/eq)15部、酸化チタン30部、リン酸アルミニウム系防錆顔料10部、および沈降性硫酸バリウム60部を混合した後、ペイントシェーカーで30分間混練し、次いで所要量のエチレングリコールモノエチルエーテルを加えることにより、固形分50%のエポキシ樹脂塗料を調製した。該塗料をそれぞれ脱脂鋼板にスプレー塗布し、常温で7日間放置して、試験板を調製した。
(評価方法)
1)鉛筆硬度:JIS K5400に準拠。評価結果を表2に示す。
2)防錆性:JIS K5400の耐塩水噴霧試験
前記試験板に塩水噴霧し、120時間後の錆の発生状態を目視観察した。評価基準は、クロスカット部の剥離幅をいう。評価結果を表2に示す。
3)耐水性
前記試験板を40℃の水中に240時間浸漬した後、JIS K5400の碁盤目試験に準拠し、カッターを用いて2mm幅の碁盤目100個を作成し、次いでセロハンテープ剥離して、剥離状態を目視判定した。評価結果を表2に示す。なお、碁盤目試験結果の100/100とは、100個(分子)が全く剥離せず、全てが残存したことを示す。結果を表2に示す。
Figure 0006103473
表1から、本発明のロジン系エポキシ組成物は、比較用のロジングリシジルエステルに比べて性状・物性(色調、軟化点、エポキシ当量および二量体含有率)で優れることが分かる。また表2から、本発明のロジン系エポキシ組成物を用いたエポキシ系塗料が、比較用のロジングリシジルエステルを用いたエポキシ系塗料に比べて、塗膜性能に優れることが分かる。従って、本発明のロジン系エポキシ組成物は、環境配慮型のエポキシ樹脂などとして各種用途に好適であることが明らかである。

Claims (14)

  1. 一般式(1):
    Figure 0006103473
    (式中、Roはテトラヒドロアビエチルアルコールグリシジルエーテル残基、ジヒドロアビエチルアルコールグリシジルエーテル残基およびデヒドロアビエチルアルコールグリシジルエーテル残基からなる群から選択される残基を表す。)で表わされる成分を60重量%以上含有するロジン系エポキシ組成物。
  2. 一般式(1):
    Figure 0006103473
    (式中、Roはテトラヒドロアビエチルアルコールグリシジルエーテル残基、ジヒドロアビエチルアルコールグリシジルエーテル残基およびデヒドロアビエチルアルコールグリシジルエーテル残基からなる群から選択される残基を表す。)で表される成分の含有率が80重量%以上である請求項1に記載のロジン系エポキシ組成物。
  3. 色調がガードナー3以下、軟化点が50〜100℃、およびエポキシ当量が180〜400g/eqである請求項1または2に記載のロジン系エポキシ組成物。
  4. 一般式(2):Ro−CHOH(式中、Roはテトラヒドロアビエチルアルコール残基、ジヒドロアビエチルアルコール残基およびデヒドロアビエチルアルコール残基からなる群から選択される残基を表す。)で表されるロジンアルコールとエピハロヒドリンとを、触媒の存在下に反応させ、脱ハロゲン化水素するロジン系エポキシ組成物の製造方法。
  5. 触媒の存在下に反応させて相当するハロヒドリンエーテルとし、ついで該エーテルをアルカリにより脱ハロゲン化水素する請求項4に記載の製造方法。
  6. アルカリおよび層間移動触媒の存在下に反応させる請求項4または5に記載の製造方法。
  7. 色調がガードナー2以下、軟化点が55〜110℃、および水酸基価が180〜450mgKOH/gであるロジンアルコールを用いてなる請求項4〜6のいずれかに記載の製造方法。
  8. 前記ロジンアルコールが、その原料ロジンとして精製ロジン、不均化ロジン、水素化ロジンおよび酸変性ロジンからなる群より選ばれる少なくとも1種を用いてなるものである請求項4〜7のいずれかに記載の製造方法。
  9. 前記触媒がルイス酸、第3級アミン塩および第4級アンモニウム塩から選ばれる少なくとも1種である請求項4〜8のいずれかに記載の製造方法。
  10. 脱ハロゲン化水素を、アルカリ金属水酸化物を用いて行う請求項4〜9のいずれかに記載の製造方法。
  11. 前記層間移動触媒が第3級アミン塩および第4級アンモニウム塩類から選ばれる少なくとも1種である請求項6に記載の製造方法。
  12. 更に金属触媒を用いてなる請求項11に記載の製造方法。
  13. 請求項1〜3のいずれかに記載のロジン系エポキシ組成物を含有することを特徴とする硬化性エポキシ樹脂組成物。
  14. 更に、溶剤、顔料、エポキシ樹脂用硬化剤、およびエポキシ樹脂のうちのいずれか少なくとも1種を含有する請求項13に記載の硬化性エポキシ樹脂組成物。
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