JP6099346B2 - N型iii族窒化物半導体層を有する積層体及びその製造方法 - Google Patents

N型iii族窒化物半導体層を有する積層体及びその製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、新規なN型III族窒化物半導体層を有する積層体及びその製造方法に関する。具体的には、紫外線発光素子(発光ダイオードやレーザーダイオード)、紫外線センサーなどに利用可能なAl含有量が高い(III族元素の60原子%以上がAlである)N型III族窒化物半導体層を有する積層体およびその製造方法に関する。
窒化ガリウム(GaN)に代表されるIII族窒化物半導体は、可視領域から紫外領域に相当するエネルギー帯の全領域で直接遷移型のバンド構造を持ち、高効率な発光デバイスの作製が可能である。そのため、III族窒化物半導体を使用した発光ダイオード及びレーザーダイオードの研究が活発に行われている。そして、現在では、可視領域から近紫外領域までの発光ダイオード、青色レーザーダイオードなどが製品化されている。そのようなデバイスの作製には低抵抗なN型III族窒化物半導体層を製造する技術が非常に重要となる。例えば、GaNについては電子濃度1020cm−3という非常に低抵抗なN型導電特性が実現されている。
一方、300nm以下の深紫外領域で発光する発光ダイオード及びレーザーダイオードを実現するためには、Al組成が高いIII族窒化物半導体を用いる必要があり、このような紫外線発光素子において良好な発光効率を得るためには、良好なN型導電性を実現する必要がある。例えば、AlGaInN(但し、X、Y、およびZはX+Y+Z=1を満足する有理数である。)で示され、0.6≦X≦0.8であるIII族窒化物半導体において、良好なN型導電性を実現する必要がある。
しかしながら、Al組成の増加に伴い、次のような理由により、良好なN型導電性を実現することは困難であると考えられている。即ち、AlGaInN系のIII族窒化物半導体では、結晶成長中の結晶表面上における各種III族原子や窒素原子の移動距離がAl含有量の増加に伴って大幅に減少するため、理想的な2次元成長を維持することが困難となる。その結果、キャリアの補償中心となる不純物が混入する、また、転位などの結晶欠陥が形成されるため、N型導電性を高くすることが困難であると考えられている。さらに、Al含有量の増加、およびIII族窒化物半導体にドープされるドーパント量(ドナー不純物原子濃度)が増加すると、結晶中の電気中性が損なわれることに起因して、アクセプター性欠陥の形成エネルギーが低下し、アクセプター性欠陥の導入量が増大し、やはりある程度以上のN型導電性を得ることは困難であると考えられている(非特許文献1および2参照)。
このような状況下、特許文献1には、Al組成が高いIII族窒化物半導体において、有機気相成長法(MOCVD法)における成長温度や成長圧力を調整することにより、不可避的に混入する酸素原子と炭素原子の量を低減した場合には、導電性の高い(抵抗値の低い)N型III族窒化物半導体が得られることが記載されている。より具体的には、Al組成が60%であり、Si濃度が1×1019(cm−3)であるN型III族窒化物半導体において、成長温度を1100〜1200℃の範囲とすると共に成長圧力を10〜50Torrとして成長を行うことにより、半導体中の酸素及び炭素の総濃度のSi濃度に対する比{(O+C)/Si}が0.8〜0.2程度となり、抵抗値が0.1〜2(Ωcm)程度と比較的低い値となることが記載されている。上記特許文献1では、成長圧力も比抵抗に影響を与えること、および比抵抗に及ぼす成長温度や成長圧力の影響が比抵抗に及ぼす炭素原子や酸素原子の濃度と一致してないことを指摘している。このことは、N型特性に影響を与える因子として、成長温度や炭素濃度の影響を受けるアクセプター性欠陥の形成以外の因子が存在することを示唆しているといえる。
なお、MOCVD法とは、内部の圧力を制御可能な反応容器内で、所定の温度に保持された基板上に、トリメチルアルミニウムやトリメチルガリウムなどのIII族原料ガス、アンモニアなどのV族原料ガスおよび水素などのキャリアガスを供給してIII族窒化物半導体結晶を成長させる方法である。そして、原料ガスにモノシランなどのSi原料ガスを混合して供給することにより、SiがドープされたN型III族窒化物半導体を製造することができる。
特開2007−227494号
Appl.Phys.Lett.72(1998)459 J.Crystal Growth 189(1998)505
前記特許文献1に開示される技術は、高Al組成のAlGaInN系のIII族窒化物半導体の成長において、アクセプター性欠陥の形成の原因ともなる炭素原子の混入量を低減していると共に、成長温度を含めた成長条件を最適化している点で、ある意味、高Al組成AlGaInN系N型III族窒化物半導体における抵抗値の限界(下限)を示しているともいえる。
しかしながら、特許文献1で達成されているレベルの抵抗値は十分とは言えず、より発光効率の高い発光素子を得るためには更なる低抵抗化を実現する必要がある。
また、N型III族窒化物半導体は、これを発光素子のN型III族窒化物半導体層として使用するためには、当該層の表面平滑性が良好であることが好ましい。
そこで、本発明は、Al組成が60%以上(X≧0.6)のAlGaInNで示される組成を有し、SiがドープされたN型III族窒化物半導体において、良好なN型特性(具体的には、Si濃度に対する電子濃度及び移動度が高く、比抵抗が低いという性質など)を有し、更には、転位置密度が小さいN型III族窒化物半導体を提供することを目的とする。また、本発明は、このような優れた特性を有するN型III族窒化物半導体、および該N型III族窒化物半導体からなる、半導体素子を形成し易い表面平滑性のよいN型III族窒化物半導体層を製造する方法を提供することを目的とする。
本発明者等は、特許文献1の示唆に従い、半導体中の酸素及び炭素の総濃度のSi濃度に対する比{(O+C)/Si}を更に低減すれば上記目的が達成できるのではないかと考え、装置部材や雰囲気から混入する炭素及び酸素の量を可級的に低減する対策を講じ、炭素濃度および酸素濃度を、夫々、特許文献1の1/100程度まで低減することに成功した。
そして、このような酸素および炭素のコンタミネーションが非常に少ない条件下において、MOCVD法により高Al組成のSiドープN型III族窒化物半導体を製造し、製造条件と得られたN型III族窒化物半導体の特性について種々検討を行った。
その結果、(O+C)/Si比が非常に小さい場合には、驚くべきことに、これまで知られていたよりも遥かに良好なN型半導体特性を示すことがあることを見出した。このような優れたN型半導体特性を示す高Al組成AlGaInN系N型III族窒化物半導体は、これまで知られておらず、不純物を考慮した組成や微視的な構造的の面で従来のものとは異なる何らかの新規な特徴を有しているものと考えられる。しかしながら、このような優れた特性を有するSiドープN型III族窒化物半導体を安定して製造することは非常に困難であり、製造条件の僅かな違いにより得られるN型半導体の特性は大きく異なってしまい、再現性の点で大きな問題があることが判明した。
そこで、本発明者等は、炭素濃度或いは(O+C)/Si比が非常に小さい場合において、製造条件(成長条件または反応条件と言われることもある。)のN型半導体特性に及ぼす影響について詳細な検討を行った。その結果、N型半導体特性は、製造条件の中でも、III族原料ガスに対するV族原料ガスの供給モル比(V/III比)、実際にドープされるSi濃度、および結晶成長用基板の保持温度(一般に、成長温度或いは反応温度と言われることもある)に影響を受け、特に実際にドープされるSi濃度、および成長温度の関係に極めて敏感に影響を受けることを見出した。そして、これら条件項目について更に検討を行った結果、再現性よく良好な特性を有する、SiがドープされたN型III族窒化物半導体を製造できる条件を見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、第一の本発明は、AlN単結晶基板と、該基板上に、
ドナー不純物原子としてSiを含む、AlInGaN(但し、X、Y、Zは、0.6≦X≦0.8、0≦Y≦0.01、0.2≦Z≦0.4、およびX+Y+Z=1.0の関係を満足する有理数である。)で示される組成を有するIII族窒化物単結晶からなるN型III族窒化物半導体層を有する積層体であって、
前記AlN単結晶基板の(002)面および(102)面のX線ロッキングカーブの半値幅が共に10〜100arcsecであり、
該N型III族窒化物半導体中のSi濃度が1×1018〜5×1019(cm−3)の範囲であり、
該N型III族窒化物半導体に含まれる酸素原子と炭素原子の合計濃度とSi濃度との比{(O+C)/Si}が0.05以下であり
N型III族窒化物半導体中の300Kにおける電子濃度とSi濃度との比(e/Si)が0.3〜0.8であり、
且つ該N型III族窒化物半導体層の転位密度が10 (cm −2 )以下であ積層体である。
また、第二の本発明は、上記第一の本発明であるN型III族窒化物半導体層を有する積層体を製造する方法であって、
内部の圧力を制御可能な反応容器を有し、該反応容器内で、所定の温度に保持された結晶成長用基板上に、III族原料ガス、V族原料ガス、Si原料ガス、およびキャリアガスを供給してN型III族窒化物半導体を成長させる有機気相成長装置であって、該反応容器内におけるSi原料ガスの供給流量以外の成長条件を一定にして、Si原料ガスの供給流量のみを変化させて前記成長を行ったときに、得られるN型III族窒化物半導体中のSi濃度(原子/cm)がSi原料ガスの供給流量の変化に伴って、一定割合で、且つ誤差範囲内(誤差範囲は、同じSi原料ガスの供給量で複数回実験を行い、得られるN型III族窒化物半導体に含まれるSi濃度の平均値に対して±50%程度である。)変化できる特性を有し、
更に、反応容器内がN型III族窒化物半導体中のSi濃度が1×1018〜5×1019(cm−3)の範囲となるようにして前記成長を行ったときに、当該N型III族窒化物半導体中に混入する酸素原子及び炭素原子の量を、Si濃度に対するこれら両原子の合計濃度との比{(O+C)/Si}で表して、当該比が0.05以下とすることが可能な部材で構成され、且つ、窒素ガスなどで置換されたグローブボックス内に設置された有機気相成長装置を用い、
製造しようとするN型III族窒化物半導体におけるIII族窒化物単結晶の目標組成と目標Si濃度{C(cm−3)}を決定する工程、
前記目標組成と目標Si濃度に基づき、少なくとも、III族原料ガスの供給流量、V族原料ガスの供給流量、Si原料ガスの供給流量、これら原料ガスおよびキャリアガスの総供給流量、結晶成長用基板の保持温度、並びに反応容器内の圧力からなる成長条件を決定する条件決定工程、及び
前記有機気相成長装置の反応容器内で、前記条件決定工程で決定された成長条件でN型III族窒化物半導体の成長を行う工程を有し、
前記条件決定において前記成長条件を決定するに際し、III族原料ガスに対するV族原料ガスの供給モル比(V/III比)を800以上4000以下とし、
更に、結晶長用基板の保持温度{T(℃)}が下記式(1)で示される関係を満足するようにすることを特徴とする方法である。
-115×log10+3210 <T(℃)<-115×log10+3300 (1)
{但し、上記式中、Cは目標Si濃度(cm−3)を意味する。}。
なお、結晶成長用基板の保持温度(基板温度)は、N型III族窒化物半導体を成長する際の結晶成長用基板の温度(成長温度)である。
更に、第三の本発明は、前記第一の本発明である積層体を含む半導体素子である。
なお、前記式(1)は、後述する図2に示されるように、多数の実験結果を基板温度と得られたN型III族窒化物半導体中のSi濃度とでプロットしたところ、夫々、特定の式で表される2つの直線を境界線として、両直線に挟まれる領域(Si濃度と基板温度の領域)でのみ特異的に良好なN型半導体特性を有するN型III族窒化物半導体が得られたという、経験則に基づいて導出されたものである。同じSi濃度でも上記両境界線を境にして基板温度が上限、および下限から外れると、N型半導体特性は急激に低下する。そのため、上記式(1)は、後で詳述するように、N型半導体特性向上に関するメカニズムを反映していると言える。
前記第一の本発明のN型III族窒化物半導体層を有する積層体は、従来のAl組成が高いN型III族窒化物半導体と比べて、N型半導体特性、具体的には電子濃度、移動度、Si濃度に対する電子濃度(e/Si)及び比抵抗の点で優れたものであり、深紫外発光素子のN型半導体層として好適である。
また、前記第二の本発明の製造方法によれば、上記本発明のN型III族窒化物半導体層を有する積層体を再現性よく製造できるばかりでなく、該N型III族窒化物半導体を表面平滑性に優れる層状物として製造することができる。
さらに、第三の本発明の半導体素子は、上記の優れたN型半導体特性及びN型III族窒化物半導体層の優れた表面平滑性に起因して、優れた素子特性を発揮し、例えば発光ダイオードやレーザーダイオードなどの半導体デバイスに用いることにより、半導体デバイスの効率を向上させることが可能となる。
前記第一の本発明のN型III族窒化物半導体層を有する積層体は、従来の高Al組成AlGaInN系SiドープN型III族窒化物半導体と比べて、組成的には炭素濃度、C/Si比、或いは{(C+O)/Si}が非常に小さいという特徴を有する。そして、その特徴ばかりでなく、組成が同一でもN型特性が大きく異なることがあることからも容易に理解できるように、その製造条件を反映して従来の上記SiドープN型III族窒化物半導体には見られない何らかの構造的特徴を有するものと考えられる。そして、このような優れた高Al組成AlGaInN系SiドープN型III族窒化物半導体を得ることができるようになった作用機構は、必ずしも明確ではないが、本発明者等は次のようなものであると推定している。
すなわち、MOCVD法で高Al組成AlGaInN系SiドープN型III族窒化物半導体を製造するに際し、供給する原料ガスにおけるV/III比を特定の範囲とした場合には、結晶成長用基板の保持温度(基板温度)が比較的低い場合でも、良好な結晶成長を行うことが可能となって欠陥ができ難い状態となる(このことは、表面平滑性が向上することからも窺える)。これに加えて、酸素不純物や炭素不純物の混入量が非常に少ない場合には、成長時に導入されるアクセプター性欠陥(補償欠陥)の量が、実質的に、成長時に結晶中に導入されるSi濃度、および基板温度によって決まるようになると推定している。更に、アクセプター性欠陥濃度以外のN型半導体特性に悪影響を与える因子が排除されたことにより、本発明の効果が得られたものと推定している。
また、アクセプター性欠陥としては、3価のものと2価のものの2種類があり、3価のアクセプター性欠陥は基板温度が低い方が形成され難い反面、基板温度を低くしすぎると2価のアクセプター性欠陥が形成され易くなる。このことから、Si濃度に応じて変化する非常に狭い温度範囲内において特異的に良好なN型半導体特性を有する高Al組成AlGaInN系SiドープN型III族窒化物半導体が得られたものと推定している。
そして、前記式(1)に示す関係は、このような推定機構を反映しているものであると考えている。以下にその点を説明する。
先ず3価のアクセプター性欠陥形成に及ぼすSi濃度および基板温度の影響を考えた場合、3価のアクセプター性欠陥はIII族元素欠陥であり、その形成の活性化エネルギーは結晶中に含まれるドナーであるSi濃度の対数(logCSi)に比例して減少すると考えられる。したがって、Si濃度の異なるN型半導体(例えば、高濃度、中濃度、低濃度の3種のN型半導体)についてアレニウスプロット{縦軸に3価のアクセプター性欠陥濃度の対数(logCA3)、横軸を基板温度(絶対温度)の逆数(1/T)でプロットしたグラフ}を作成すると図3のグラフに示すようになる。このグラフに示した通り、ある一定の欠陥濃度(CAcr)を与える基板温度Tcr(前記3種のN型半導体におけるTcrを夫々、高濃度:Tcr−H、中濃度:Tcr−M、及び低濃度:Tcr−Lで表す。)は、Si濃度が高いほど低くなって、Tcr−H、<Tcr−M<Tcr−Lとなる。一方、前記アレニウスプロットにおける各グラフの傾きは前記活性化エネルギーEに相当し、それはlogCSiに反比例するのであるから、上記Tcrは、logCSiに反比例することになる。
そして、上記CAcrがN型半導体性(例えば比抵抗)の観点である種の敷居値的な意味合いを持つ場合には、その臨界的効果(敷居値を境とした物性の変化の度合い)が僅かなものであったとしても、各N型半導体において基板温度がTcr(Tcr−H、Tcr−MおよびTcr−L)以上となりそれを僅かにでも越えて高くなると、欠陥濃度の実際の値(対数ではない実際の値)CA3は急激に増大するため、該温度Tcrは、非常に大きな臨界的効果をもつことになる。
なお、上記したように本来、TcrはlogCSiに反比例(1/logCSiに比例)するものと考えられるが、実際に適用可能なlogCSiの範囲は広くとも18〜20程度と非常に狭い。これに対して、基板温度は、通常、千度〜千数百度の広い範囲をとるため、狭いlog CSiの範囲内では(部分的には)、Tcr=1/logCSiのグラフは負の傾き示す直線で近似できる。寧ろ、この近似直線の方がTcrに及ぼすlogCSiの僅かな影響を表すことができると考えられる(図4参照)。
このような理由から、基板温度が後述する図2においてTcrを与える(実験的に求められた直線(T=-115×log10+3300 )以上となる温度領域ではN型特性は急激に低下するものと考えられる。
次に、2価のアクセプター性欠陥形成に及ぼすSi濃度、および基板温度の影響を考察する。該2価のアクセプター性欠陥は、3価のアクセプター性欠陥形成過程において一旦形成された3価のアクセプター性欠陥が酸素原子を取込み安定化した(別言すれば、3価のアクセプター性欠陥が酸素を取込むことのより)ものであると考えられている。したがって、基板温度が低温であるほど酸素取込による安定化が起こり易く、ある敷居値的な基板温度T´cr{当該T´crは、実験的に求められた(-115×log10+3210)で表すことができると考えている。}以下となった場合には、基板温度から予測される3価のアクセプター性欠陥濃度を越えて、N型特性に悪影響を与えるレベル以上の濃度で結晶中に残存することになる。このため、当該温度T´cr以下の温度領域では、やはりN型特性が低下するものと考えてられる。
以上説明した推定メカニズムから分かるように、本発明のN型III族窒化物半導体を再現性よく製造するためには、酸素原子および炭素原子の混入を可級的に防止でき、更に、結晶中に導入するSi濃度をSi原料ガスの供給流量で制御できるMOCVD装置を使用する。そして、結晶成長時におけるV/III比を制御し、更に、基板温度を特定の上限値および下限値の間となるように精密に制御する必要がある。しかも、その基板温度の上限値および下限値は、特許文献1の場合のように、Si濃度の変化に依らない一定の値ではなく、Si濃度に応じて変化し、その絶対値(具体的な温度範囲)も、特許文献1に示される範囲(1150℃〜1200℃)から大部分が外れている。
更に、本発明において、N型半導体特性および製造の再現性の点で、上記基板温度の上限値および下限値の持つ臨界的意義は極めて大きいものである。したがって、本発明の方法は、非常に優れたN型半導体特性を有する高Al組成AlGaInN系SiドープN型III族窒化物半導体を、再現性よく確実に製造できるようにしたという点で、その工業的意義は極めて大きいといえる。
本図は、バッファ層を有する基板上に本発明の製造方法により本発明のN型III族窒化物半導体からなる層を形成したときに得られる積層体の模式図である。 本図は、実施例及び比較例における基板温度(成長温度)と得られたN型III族窒化物半導体中のSi濃度との関係を示した図である。(図中、実施例1〜6は参考例1〜6である。) Si濃度の異なるN型半導体(高濃度、中濃度、低濃度の3種のN型半導体)のアレニウスプロット{縦軸に3価のアクセプター性欠陥濃度の対数(logCA3)、横軸を基板温度(絶対温度)の逆数(1/T)でプロットしたグラフ}。(アクセプター性欠陥濃度と基板温度の逆数との相関を示す概念図) 一定の欠陥濃度を与える基板温度TcrとSi濃度の対数(logCSi)との関係を示す近似グラフ。 TESi(テトラエチルシラン)ガス供給流量と得られたN型III族窒化物半導体中のSi濃度の関係性の一例(予備実験の例)を示す図である。
本発明は、ドナー不純物原子としてSiを含む、AlInGaN(但し、X、Y、Zは、0.6≦X≦0.8、0≦Y≦0.01、0.2≦Z≦0.4、およびX+Y+Z=1.0の関係を満足する有理数である。)で示される組成を有するIII族窒化物単結晶からなるN型III族窒化物半導体である。そして、該N型III族窒化物半導体中のSi濃度が1×1018〜5×1019(cm−3)の範囲であり、該N型III族窒化物半導体に含まれる酸素濃度と炭素原子の合計濃度とSi濃度との比{(C+O)/Si}が0.05以下であり、かつ、該N型III族窒化物半導体中の300Kにおける電子濃度とSi濃度との比(e/Si)が0.3〜0.8である。次に、このN型窒化物半導体の特性について説明する。
(N型窒化物半導体の特性)
前記N型III族窒化物半導体を形成するIII族窒化物単結晶は、AlInGaNで示される組成よりなる。そして、本発明は、Al含有量が高いIII族窒化物単結晶からなる場合に適用される。そのため、前記組成において、X、Y、Zは、0.6≦X≦0.8、0≦Y≦0.01、0.2≦Z≦0.4、およびX+Y+Z=1.0の関係を満足する有利数である。なお、Al、In、Gaの含有量は、2次イオン質量分析法(SIMS)、X線光電子分光法、X線回折法などにより測定することができる。
本発明において、N型III族窒化物半導体中のSi濃度は1×1018〜5×1019cm−3である。この範囲を満足することにより紫外発光ダイオードに好適に使用できる。中でも、より高い導電特性が要求される紫外発光ダイオードに、本発明のN型III族窒化物半導体を適用する場合には、Si濃度は、好ましくは5×1018〜5×1019cm−3であり、さらに好ましくは1×1019〜4×1019cm−3である。
前記の通り、紫外発光ダイオードの用途に使用する場合には、高い導電特性が要求される。本発明のN型III族窒化物半導体は、Si濃度が1×1018〜5×1019cm−3であり、さらに、電気伝導に寄与するドナー濃度が十分であって、かつアクセプター性欠陥が抑制されたものである。そのため、本発明のN型III族窒化物半導体は、高い導電特性を有する。このN型導電特性は、公知のホール効果測定、CV測定などにより測定することができる。
本発明のN型窒化物半導体は、酸素原子と炭素原子の合計濃度とSi濃度との比{(C+O)/Si}が0.05以下でなければならない。(C+O)/Siが0.05を超えると、基板温度が低い領域においてN型導電性の悪化が顕著になってしまうため、好ましくない。工業的な生産安定性を考慮すると、(C+O)/Siは、0.04以下であることが好ましく、さらに、0.02以下であることが好ましい。なお、(C+O)/Siの下限は、0であることが最も好ましいが、(C+O)の分析検出下限を考慮すると0.001である。この炭素原子は2次イオン質量分析(SIMS)装置により測定することができる。
本発明のN型III族窒化物半導体は、300Kにおける電子濃度とSi濃度との比(e/Si)が0.3〜0.8である。e/Siが0.3以上であることにより、高いN型導電性を実現できる。アクセプター性欠陥やその他の欠陥の抑制という観点から、e/Siは0.4以上であることが好ましく、さらに0.5以上であることが好ましい。一方、e/Siの上限値は、工業的な生産を考慮すると0.8である。このe/Siは、公知のホール効果測定、CV測定などにより測定することができる。
また、本発明のN型III族窒化物半導体は、300Kの比抵抗が0.15Ωcm以下であることが好ましい。比抵抗が0.15Ωcm以下であることにより、LEDに本発明のN型III族窒化物半導体を適用した場合、高い性能を得ることが可能となる。さらに、デバイス動作電圧や、N層でのジュール熱の発生を考慮すると、比抵抗は0.005〜0.05Ωcmであることがより好ましい。
また、N型III族窒化物半導体は、特に制限されるものではないが、特に優れたN型特性を発揮するためには、転位密度が10cm−2以下であることが好ましい。この転位密度は、N型III族窒化物半導体からなる層(結晶成長用基板上に成長したN型III族窒化物半導体層)の最表面の転位密度を指す。転位密度の測定は、透過型電子顕微鏡による観察(TEM)、又は簡易的にアルカリ溶液に浸漬した後のエッチピット密度の観察によりおこなうことができる。転位密度の好適な下限値は0cm−2であるが、工業的な生産を考慮すると10cm−2である。
N型III族窒化物半導体層中の転位は、N型導電キャリアである電子の散乱要因となる。N型III族窒化物半導体層中に転位が多く存在することにより、電子の移動度が低下し、その結果、N型導電特性が低下する傾向にある。そのため、N型III族窒化物半導体層中の転位密度が10cm−2以下であることにより、転位による移動度の低下の影響が小さくなるため、良好なN型導電特性を得ることが出来る。また、本発明のN型III族窒化物半導体を半導体素子、特に紫外発光ダイオードに適用した場合、転位は素子の効率を低下させる要因ともなる。そのため、該N型III族窒化物半導体層の転位密度は、10cm−2以下であることが好ましく、10cm−2以下であることが特に好ましい。
なお、転位密度が10cm−2以下であるN型III族窒化物半導体層を製造するには、下記の製造方法において詳細に説明するが、以下の調整方法を採用すればよい。例えば、該N型III族窒化物半導体層をその上に成長させる結晶成長用基板の結晶性を調整する方法、該結晶成長用基板上に形成するバッファ層の結晶性と厚みを調整する方法、成長させるN型III族窒化物半導体層の厚みを調整する方法等が挙げられる。
さらに、本発明のN型III族窒化物半導体からなる層(N型III族窒化物半導体層)は、以下に詳述する製造方法を採用すれば、成長後(研磨なし)の露出表面の2乗平均粗さ(RMS)が0.05〜0.25nmとすることもできる。さらに製造条件を調整すれば、成長後(研磨なし)の露出表面の2乗平均粗さ(RMS)が0.05〜0.15nmとすることも可能である。
また、このN型III族窒化物半導体層の厚みは、特に制限されるものではなく、所望の用途、下記に詳述する製造方法に応じて適宜決定すればよい。通常は、0.5〜5μmである。
次に、N型III族窒化物半導体層を有する積層体の製造方法について説明する。
(製造方法:有機気相成長装置(MOCVD装置))
本発明においては、内部の圧力を制御可能な反応容器を有し、該反応容器内で、所定の温度に保持された結晶成長用基板上に、III族原料ガス、V族原料ガス、Si原料ガス、およびキャリアガスを供給して、該結晶成長用基板上にN型III族窒化物半導体を成長させる有機気相成長装置を使用する。
なお、内部の圧力を制御可能とは、MOCVD反応容器内の圧力を任意で設定し、制御できることを指す。そして、圧力を制御するには、MOCVD反応容器の下流に設けた真空ポンプで減圧すると共に、MOCVD反応容器と真空ポンプの間に設けた圧力調整弁によって、MOCVD反応容器内を任意の圧力に制御すればよい。
この有機気相成長装置は、該反応容器内におけるSi原料ガスの供給流量以外の成長条件を一定にして、Si原料ガスの供給流量のみを変化させて前記成長を行ったときに、得られるN型III族窒化物半導体中のSi濃度(原子/cm)がSi原料ガスの供給流量により誤差範囲内で一義的に決定される特性を有するものでなければならない。
誤差範囲で一義的に決定される特性とは、Si供給流量とSi濃度との関係が一式で表される状態のことを指す。例えば、図4に、今回の実施例、比較例で使用した装置におけるSi供給流量とSi濃度との関係を示した。なお、誤差範囲は、同じSi原料ガスの供給量で複数回実験を行い、得られるN型III族窒化物半導体に含まれるSi濃度の平均値に対して±50%程度であればよく、より好ましくはSi濃度の平均値に対して±30%程度である。
本発明で使用する有機気相成長装置は、製造するN型III族窒化物半導体に炭素原子が含まれないような構造とすることが好ましい。このような形態とするためには、結晶成長用基板を保持するサセプタとして、高純度であり、高温での水素、およびアンモニアに対する耐性を有する材料で全面がコーティングされたものを用いればよい。一般的にサセプタは高純度の炭素で製造されるが、上述のような高純度の材料で炭素製のサセプタをコーティングすることによって、該サセプタから起因する炭素のコンタミを低減することができる。コーティング材料としては、パイロリティック窒化ボロン(PBN)、炭化珪素(SiC)、炭化タンタル(TaC)などを用いることができる。なお、コーティング材料としてSiCを使用する場合は、基板温度が1350℃以上になると、SiCが劣化するため、1300℃以下で使用する必要がある。
さらに、上述のサセプタの材料の選定に加えて、炭素不純物量を低減させるためには、反応容器内は、コンタミの要因となる、炭素部材を使用しないほうが好ましい。また、反応容器は、窒素ガスなどで置換されたグローブボックス内に設置することが好ましい。このようにすることで、基板搬送などに伴う反応容器の開放時に、大気との接触を避けることが可能となり、反応容器内の汚染を防ぐことができる。その結果、N型III族窒化物半導体中の炭素、酸素の不純物量を低減することが可能となる。グローブボックス内の水分、および酸素濃度は、特に限定されるものではないが、常時1ppm以下にすることによって、十分な効果を得ることができる。
このような対応とすることにより、N型III族窒化物半導体に含まれる炭素原子を低減することができる。次に、原料ガス、およびキャリアガスについて説明する。
(原料ガス、及びキャリアガス)
本発明において、MOCVD法で使用するIII族原料ガス、V族原料ガス、ドープするSiの原料ガス(Si原料ガス)は、N型III族窒化物半導体の形成に使用できる公知の原料が特に制限なく使用できる。例えば、III族原料ガスとしては、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリメチルガリウム、トリエチルガリウム、トリメチルインジウム等のガスを使用することが好ましい。また、V族原料ガスとしては、アンモニアを使用することが好ましい。ドープするSiの原料ガス(Si原料ガス)は、モノシラン、又はテトラエチルシラン等のシラン系ガスを使用することが好ましい。
キャリアガスとしては、公知のガスを使用することができ、通常、水素、窒素およびその混合ガスが挙げられる。
本発明においては、これらの原料ガスを特定の割合で結晶成長用基板上に供給して、N型III族窒化物半導体からなる層を形成すればよいが、次に、結晶成長用基板について説明する。
(結晶成長用基板)
結晶成長用基板としては、N型III族窒化物半導体を成長する際、成膜工程での温度履歴に耐える耐熱性材料、具体的には少なくとも1000℃以上の融点、もしくは分解温度を持つ耐熱性材料を使用するのが好ましい。具体的には、例えば、サファイア、SiC、AlN、AlGaN等が挙げられる。また、結晶成長用基板の厚みは、特に制限されるものではないが、通常、0.1〜1.0mm程度である。
これら結晶成長用基板は、III族窒化物以外のもの(異種基板、例えばサファイア、SiC等)からなる基板、またはIII族窒化物からなる基板を使用できる。先ず、III族窒化物以外ものからなる基板を使用する場合について説明する。
(III族窒化物以外(異種基板)の結晶用成長基板)
(バッファ層の形成)
結晶用成長基板として、サファイア、SiCなどの、III族窒化物以外の基板を用いる場合には、その基板上に直接、N型III窒化物半導体層を形成することもできるが、以下の方法を採用することが好ましい。すなわち、該結晶用成長基板上に予めバッファ層を形成しておくことが好ましい。バッファ層(III族窒化物単結晶膜からなるバッファ層、例えば、単結晶AlN膜)の材料や層構造は、バッファ層上に成長させる本発明のN型III族窒化物半導体層の転位密度を10cm−2以下に抑制できるような構造とすることが好ましい。
この異種基板上に、例えば、サファイア基板上に、III族窒化物単結晶膜からなるバッファ層をMOCVD法により形成する。(図1参照)。
先ず、サファイア基板1をMOCVD装置内に設置した後、該基板を1100℃以上、さらに好ましくは1200℃以上に加熱し、水素雰囲気中で保持することにより、サファイア基板表面のクリーニングを行う。次に、1050℃以上、さらに好ましくは1150℃以上で、III族原料ガス及びV族原料ガスをキャリアガス(水素及び/又は窒素)と共にサファイア基板表面に供給し、III族窒化物単結晶膜からなるバッファ層2を形成する。また、このバッファ層は、WO2011/058968号パンフレットに記載されているように、酸素源ガスをクリーニング時に供給した後、原料ガスと共に酸素源ガスを供給して成長させた初期単結晶層、及び酸素源ガスを供給せずに成長させた第二のIII族窒化物単結晶層のような積層構造としてもよい。
該バッファ層2は、結晶性のよい層であることが望ましい。バッファ層2の結晶性が良好であることにより、バッファ層上に積層されるN型III族窒化物半導体3の転位密度を、好ましくは10cm−2以下、より好ましくは転位密度が10cm−2以下、さらに好ましくは10cm−2以下に容易にすることができる。具体的には、バッファ層2の(002)面におけるX線ロッキングカーブの半値幅が10〜200arcsecであって、(102)面におけるX線ロッキングカーブの半値幅が10〜1500arcsecであることが好ましい。さらに、該バッファ層2は、(002)面におけるX線ロッキングカーブの半値幅が10〜100arcsecであって、(102)面におけるX線ロッキングカーブの半値幅が10〜450arcsecであることが好ましい。
また、10cm−2以下の転位密度のN型III族窒化物半導体3を容易に製造するためには、該バッファ層2の厚みは、1〜5μmであることが好ましく、さらに2〜3μmであることが好ましい。
バッファ層を有する異種基板上に、本発明のN型III族窒化物半導体からなる層(N型III族窒化物半導体層)を形成する場合には、該N型III族窒化物半導体層の転位密度を10cm−2以下とするためには、結晶性のよいバッファ層を用いると共に、該N型III族窒化物半導体層の厚みを1〜3μmとすることが好ましい。
本発明においては、以上のように作製した基板を結晶成長用基板として使用することができる。
(III族窒化物単結晶からなる結晶成長用基板)
また、結晶成長用基板としては、III族窒化物単結晶からなる基板を使用することもできる。この結晶成長用基板も結晶品質のよいものが好適である。この結晶成長用基板も結晶品質のよいものが好適である。このIII族窒化物単結晶からなる結晶成長用基板(例えば、AlN基板)は、(002)面および(102)面におけるX線ロッキングカーブの半値幅が、共に10〜100arcsecであることが好ましい。このような結晶成長用基板は、例えば、Appl.Phys.Exp.5(2012)055504に記載された、HVPE法で製造されたIII族窒化物単結晶基板(AlN基板)を挙げることができる。
このような結晶成長用基板を使用した場合には、前記バッファ層を形成した後、N型III族窒化物半導体を形成することもできる。また、結晶成長用基板上に、直接、N型III族窒化物半導体を形成することもできる。結晶性の良好なIII族窒化物単結晶からなる結晶成長用基板を使用した場合には、バッファ層を形成しなくても、結晶品質の良好なN型III族窒化物半導体を形成することができる。
X線ロッキングカーブの半値幅が10〜100arcsecのIII族窒化物単結晶からなる結晶成長用基板上にバッファ層を形成し、該バッファ層上にN型III族窒化物半導体層を形成する場合、該バッファ層の厚みは、0.01〜0.5μmとすることが好ましい。以上のような条件を満足することにより、該N型III族窒化物半導体の転位密度を容易に10cm−2以下とすることができる。バッファ層を積層するには、異種基板上に成長させた方法と同様の方法が採用できる。ただし、X線ロッキングカーブの半値幅が10〜100arcsecのIII族窒化物単結晶からなる結晶成長用基板であれば、バッファ層を形成しなくても、十分、結晶品質の良好なN型III族窒化物半導体を形成することができる。
また、X線ロッキングカーブの半値幅が10〜100arcsecのIII族窒化物単結晶からなる結晶成長用基板上に、直接、N型III族窒化物半導体層を形成する場合、N型III族窒化物半導体層の厚みは0.5〜2μmとすることが好ましい。以上のような条件を満足することにより、該N型III族窒化物半導体層の転位密度を容易に10cm−2以下とすることができる。
(N型III族窒化物半導体の製造条件)
本発明においては、以上のような条件の装置、原料ガス、結晶成長用基板を用いて、N型III族窒化物半導体を製造する。次に、このN型III族窒化物半導体の詳細な製造条件について説明する。なお、バッファ層を有する異種基板、またはIII族窒化物単結晶からなる結晶成長用基板のいずれを用いた場合も、以下に説明する方法を採用すればよい。図1には、バッファ層を有する異種基板上に、N型III族窒化物半導体からなる層(N型III族窒化物半導体層)を形成した場合の模式図を示した。
先ず、本発明においては、製造しようとするN型III族窒化物半導体のIII族窒化物単結晶の目標組成、および目標Si濃度{C(cm−3)}を決定する。この目標値は、組成がAlInGaN(但し、X、Y、Zは、0.6≦X≦0.8、0≦Y≦0.01、0.2≦Z≦0.4、およびX+Y+Z=1.0の関係を満足する有理数である。)となる範囲で決定すればよく、Si濃度が1×1018〜5×1019cm−3となる範囲で決定すればよい。使用するN型III族窒化物半導体の用途に応じて、適宜決定すればよい。
そして、この目標値を達成するために、III族原料ガスの供給流量、V族原料ガスの供給流量、Si原料ガスの供給流量、これら原料ガスおよびキャリアガスの総供給流量、結晶成長用基板の保持温度、並びに反応容器内の圧力からなる成長条件を決定する(条件決定工程)。
この条件決定工程おいて、決定する事項、すなわち、III族原料ガスの供給流量、V族原料ガスの供給流量、Si原料ガスの供給流量、これら原料ガスおよびキャリアガスの総供給流量、結晶成長用基板の保持温度、並びに反応容器内の圧力からなる成長条件は、予備実験を行い、決定することができる。
具体的には、III族原料ガスとV族原料ガスの供給モル比(V/III比)を800以上4000以下の範囲とし、各成長条件を変えて予め実験を行い、得られるN型III族窒化物半導体の組成、Si濃度を確認しておけばよい。そして、様々な実験を行い、Si原料ガスの供給流量以外の成長条件を一定にして、Si原料ガス供給流量のみを変化させてN型III族窒化物半導体を製造することにより、Si原料ガスの供給流量に対する、N型窒化物半導体に含まれるSi濃度との関係を予め求める。ただし、この時、V/III比と成長温度は前記範囲を満足するものとし、その他の成長条件は、予め実験で求めたものと同じ条件とする。
このような予備実験をもとに、各成長条件を決定する。そして、この成長条件をもとに、予備実験と同じ装置を使用して、V/III比を800以上4000以下とし、基板温度{T(℃)}が下記式(1)の関係を満足するように、N型III族窒化物半導体を成長させればよい。
-115×log10+3210 <T(℃)< -115×log10+3300 (1)
{但し、上記式(1)中、Cは目標Si濃度(cm−3)を意味する。}。
N型III族窒化物半導体の製造は、図1の通り、バッファ層2(異種基板を結晶成長用基板とした場合)上に、III族原料ガスおよびV族原料ガスをキャリアガスと共に供給し、さらに、Si原料ガスを供給して、SiをドーピングしたAlInGaN層3をバッファ層2上に形成する。
式(1)における目標Si濃度(cm−3)は、Si原料ガスの供給流量以外の成長条件を一定にして、Si原料ガス供給流量のみを変化させてN型III族窒化物半導体を製造することにより予め求めた、Si原料ガスの供給流量に対する、N型窒化物半導体に含まれるSi濃度との関係から、Si原料ガスの供給流量を決定してやればよい。
N型III族窒化物半導体層を成長する際のIII族原料(ガス)に対するV族原料ガスの供給モル比(V/III比)は、800以上4000以下に設定しなければならない。V/III比を上記範囲内に設定することにより、表面平滑性の良好なSiをドーピングしたAlInGaN層(N型III族窒化物半導体層)を得ることができる。V/III比が800未満の場合は、微小な起伏を有する表面状態となり、表面平滑性が低下する。一方、4000を超える場合は、気相中でのIII族原料とV族原料の反応が顕著となり、供給原料に対する成長速度が低下する、またはN型III族窒化物半導体層の結晶成長表面に多結晶質核が形成されるなどの問題が生じる。表面平滑性、成長速度、多結晶質核の低減を考慮すると、V/III比は、1000以上3800以下であることが好ましく、さらに1200以上3500以下であることが好ましい。
非特許文献1および2では、ドナー不純物濃度(ドーパント)の増加に伴い、アクセプター性欠陥が結晶中に多く導入され、形成エネルギーが低下し、その結果、N型導電特性が低下することが示唆されている。これに対して、本発明は、成長温度(基板温度)を、前記式(1)を満足するように制御することにより、アクセプター性欠陥の形成を抑制することができる。成長温度(基板温度)が前記式(1)を満足しない場合には、アクセプター性欠陥に起因する発光強度が増大し、それに伴ってN型半導体特性も低下する。なお、アクセプター性欠陥は、成長後のフォトルミネセンス測定における、アセプター性欠陥に起因する発光強度を測定することによって評価できる(例えば、Appl.Phys.Lett.89(2006)0921073参照)。また、このアクセプター性欠陥の形成の有無は、電子濃度とSi濃度との比(e/Si)で概算できる。本発明の方法によれば、このe/Siを0.3〜0.8とすることができる。
なお、基板温度の絶対値は、1000〜1200℃であることが好ましい。基板温度がこの範囲であることにより、結晶品質の良好なN型III族窒化物半導体を得ることができる。より結晶品質を高めるためには、基板温度の絶対値は、より好ましくは1000℃以上1150℃未満であり、さらに好ましくは1000〜1140℃である。
また、N型III族窒化物半導体層を成長する際の成長速度は、0.3〜1.5μm/hrの範囲とすることが好ましい。成長速度は、V族原料ガス、III族原料ガスの供給量により調整できる。成長速度を上記範囲に設定することにより、前記式(1)の関係を満足させることが容易となる。さらに、得られたN型III族窒化物半導体層において、不純物(Si)に起因する発光を小さくすることもできる。
なお、III族原料ガスの供給流量、V族原料ガスの供給流量、Si原料ガスの供給流量、これら原料ガスおよびキャリアガスの総供給流量、反応容器内の圧力の成長条件は、実際に使用する装置を用いた予備実験により決定できる。ただし、通常、以下の範囲から適宜決定すればよい。例えば、III族原料ガスの供給流量は3×10−5〜6×10−5mol/minの範囲、V族原料ガスの供給流量は0.025〜0.12mol/minの範囲、Si原料ガスの供給流量は1×10−9〜1×10−7mol/minの範囲、これら原料ガスおよびキャリアガスの総供給流量は5〜30L/minの範囲、反応容器内の圧力は25〜200Torrの範囲で適宜決定すればよい。その他、得られるN型III族窒化物半導体含まれる酸素原子と炭素原子の合計濃度とSi濃度との比{(O+C)/Si}が0.05以下とできる条件を採用し、その条件を達成できる有機気相成長装置を使用すればよい。
以上のような条件を採用することにより、本発明のN型III族窒化物半導体からなる層を結晶成長用基板上に容易に製造できる。
(N型III族窒化物半導体層を有する積層体の使用)
本発明の方法で製造されたN型III族窒化物半導体層を有する積層体は、非常に優れた特性を有する。そのため、この層上に、活性層、p型半導体層を形成し、さらに、電極を設けたものは、優れた発光効率を発揮する発光素子とすることができる。
以下、実施例および比較例をあげて本発明について詳しく説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
(予備実験)
予備実験の一例として、結晶成長用基板の保持温度(基板温度)を1050℃とした場合の例を説明する。Si原料ガス供給流量に対して、得られるIII族窒化物半導体中のSi濃度との関係性を以下の手順で求めた。結晶成長用基板にはサファイアC面単結晶基板(Φ2インチ×厚み430μm)を用いた。このサファイアからなる結晶成長用基板上に、バッファ層として単結晶AlN膜を1μm形成した。次いで、バッファ層を積層した結晶成長用基板の温度を1050℃に設定し、トリメチルガリウム流量が11μmol/min、トリメチルアルミニウムが35μmol/min、アンモニア流量が1.5slm(V/III比=1450)、全流量が10slm、圧力が50Torrの条件で、テトラエチルシラン流量を1.4〜43.6nmol/minで変化させて、N型Al0.7Ga0.3N層を1.0μm形成した。
N型Al0.7Ga0.3N層が形成された積層基板をMOCVD装置から取り出した後、各サンプルについて、セシウムイオンを1次イオンに用いたSIMSによりSiの定量分析を行った。Si濃度は、AlN標準試料の窒素2次イオン強度に基づき定量した。得られた結果を図5(テトラエチルシラン(TESi)流量とSi濃度の関係を示すグラフ)に示す。
参考例1
結晶成長用基板にはサファイアC面単結晶基板(Φ2インチ×厚み430μm)を用いた。このサファイアからなる結晶成長用基板上に、バッファ層として単結晶AlN膜を2.2μm形成した。このバッファ層の単結晶AlN膜のX線ロッキングカーブの半値幅は、(002)面:40arcsec、(102)面:460arcsecであった。
次いで、バッファ層を積層した結晶成長用基板の保持温度(基板温度)を1050℃に設定し、トリメチルガリウム流量が11μmol/min、トリメチルアルミニウムが35μmol/min、テトラエチルシラン流量が43.6nmol/min、アンモニア流量が1.5slm(V/III比=1450)、全流量が10slm、圧力が50Torrの条件でN型Al0.7Ga0.3N層を1.0μm形成した。
N型Al0.7Ga0.3N層が形成された積層基板をMOCVD装置から取り出した後、以下の分析を行った。先ず、高分解能X線回折装置(スペクトリス社パナリティカル事業部製X‘Pert)により、加速電圧45kV、加速電流40mAの条件で、N型Al0.7Ga0.3N層のX線ロッキングカーブ測定をおこなった。
その後、基板を複数個の5mm角程度の正方形に切断した。切断後の基板の一つについてはセシウムイオンを1次イオンに用いたSIMSによりSi、C、Oの定量分析を行った。Si、C、O濃度は、AlN標準試料の窒素2次イオン強度に基づき定量した。また、切断後の別の基板の一つについては、原子間力電子顕微鏡(東陽テクニカ製Nano−R)で、2μm×2μmの表面形状の観察を行い、そこから2乗平均粗さ(RMS)を測定した。さらに、切断後の別の基板の一つについては、加速電圧300kV、観察倍率50000倍の条件で平面TEM観察を行い、転位密度を測定した。
他の基板については、40℃に加熱した塩酸中で表面を洗浄した。次いで、該表面に、真空蒸着法によりTi(20nm)/Al(100nm)/Ti(20nm)/Au(50nm)電極を形成し、窒素雰囲気中800℃の条件で熱処理を行った。電極形成後、ホール効果測定装置(東陽テクニカ製Resitest8300)により、電流値1×10−4A、周波数100mHz、磁場0.38Tの条件で、室温でのホール効果測定(N型導電性評価)を行った。
上記の評価によって得られたX線ロッキングカーブ測定結果、Si濃度、転位密度、N型導電性を表1〜3に示した。
参考例2
参考例1において、N型Al0.7Ga0.3N層の成長温度(基板温度)を1070℃、テトラエチルシラン流量を21.8nmol/minとした以外は、参考例1と同様の条件でN型AlGaNを作製し、同じ評価を行った。なお、X線ロッキングカーブ測定の結果が実施例1と同程度であったため、転位密度は参考例1と同一とみなした。得られた結果を表1〜3に示した。なお、この場合も予備実験を行い、参考例2の条件が前記式(1)の範囲を満足することを確認して、N型III族窒化物半導体を成長した。
参考例3
参考例1において、N型Al0.7Ga0.3N層の成長温度(基板温度)を1100℃、テトラエチルシラン流量を10.9nmol/minとした以外は、参考例1と同様の条件でN型AlGaNを作製し、同じ評価を行った。なお、X線ロッキングカーブ測定の結果が参考例1と同程度であったため、転位密度は実施例1と同一とみなした。得られた結果を表1〜3に示した。なお、この場合も予備実験を行い、参考例3の条件が前記式(1)の範囲を満足することを確認して、N型III族窒化物半導体を成長した。
参考例4
参考例3において、N型Al0.7Ga0.3N層の成長温度(基板温度)を1110℃、テトラエチルシラン流量を5.4nmol/minとした以外は、参考例3と同様の条件でN型AlGaNを作製し、同じ評価を行った。なお、X線ロッキングカーブ測定の結果が参考例1と同程度であったため、転位密度は参考例1と同一とみなした。得られた結果を表1〜3に示した。なお、この場合も予備実験を行い、実施例4の条件が前記式(1)の範囲を満足することを確認して、N型III族窒化物半導体を成長した。
参考例5
参考例4において、テトラエチルシラン流量を2.7nmol/minとした以外は、参考例3と同様の条件でN型AlGaNを作製し、同じ評価を行った。なお、X線ロッキングカーブ測定の結果が参考例1と同程度であったため、転位密度は参考例1と同一とみなした。得られた結果を表1〜3に示した。なお、この場合も予備実験を行い、参考例5の条件が前記式(1)の範囲を満足することを確認して、N型III族窒化物半導体を成長した。
参考例6
参考例2において、N型Al0.7Ga0.3N層の成長温度(基板温度)を1050℃とした以外は、参考例2と同様の条件でN型AlGaNを作製し、同じ評価を行った。なお、転位密度に関しては、X線ロッキングカーブ測定の結果が同程度であったため参考例2と同一とみなした。得られた結果を表1〜3に示した。なお、この場合も予備実験を行い、参考例6の条件が前記式(1)の範囲を満足することを確認して、N型III族窒化物半導体を成長した。
参考例7
参考例2において、N型Al0.7Ga0.3N層の成長温度(基板温度)を1040℃とした以外は、参考例2と同様の条件でN型AlGaNを作製し、同じ評価を行った。なお、転位密度に関しては、X線ロッキングカーブ測定の結果が同程度であったため参考例2と同一とみなした。得られた結果を表1〜3に示した。なお、この場合も予備実験を行い、参考例2の条件が前記式(1)の範囲を満足することを確認して、N型III族窒化物半導体を成長した。
参考例8
参考例1において、N型Al0.7Ga0.3N層のアンモニア流量を2.5slm(V/III比=2420)とした以外は、同様の条件でN型AlGaNを作製し、同じ評価を行った。なお、X線ロッキングカーブ測定の結果が参考例1と同程度であったため、転位密度は参考例1と同一とみなした。得られた結果を表1〜3に示した。なお、この場合も予備実験を行い、参考例8の条件が前記式(1)の範囲を満足することを確認して、N型III族窒化物半導体を成長した。
比較例1
参考例1において、N型Al0.7Ga0.3N層の成長温度(基板温度)を1100℃とした以外は、実施例1と同様の条件でN型AlGaNを作製し、同じ評価を行った。なお、X線ロッキングカーブ測定の結果が参考例1と同程度であったため、転位密度は参考例1と同一とみなした。得られた結果を表1〜3に示した。
比較例2
参考例2において、N型Al0.7Ga0.3N層の成長温度(基板温度)を1120℃とした以外は、参考例2と同様の条件でN型AlGaNを作製し、同じ評価を行った。なお、転位密度に関しては、X線ロッキングカーブ測定の結果が同程度であったため参考例2と同一とみなした。得られた結果を表1〜3に示した。
比較例3
参考例3において、N型Al0.7Ga0.3N層の成長温度(基板温度)を1140℃とした以外は、参考例3と同様の条件でN型AlGaNを作製し、同じ評価を行った。なお、転位密度に関しては、X線ロッキングカーブ測定の結果が同程度であったため参考例2と同一とみなした。得られた結果を表1〜3に示した。
比較例4
参考例4において、N型Al0.7Ga0.3N層の成長温度(基板温度)を1040℃とした以外は、参考例4と同様の条件でN型AlGaNを作製し、同じ評価を行った。なお、転位密度に関しては、X線ロッキングカーブ測定の結果が同程度であったため参考例2と同一とみなした。得られた結果を表1〜3に示した。
比較例5
参考例5において、N型Al0.7Ga0.3N層の成長温度(基板温度)を1060℃とした以外は、参考例5と同様の条件でN型AlGaNを作製し、同じ評価を行った。なお、転位密度に関しては、X線ロッキングカーブ測定の結果が同程度であったため参考例2と同一とみなした。得られた結果を表1〜3に示した。
実施例
結晶成長用基板として、(002)面および(102)面のX線ロッキングカーブの半値幅が共に30arcsec以下であって、5mm角、板厚150μmのAlN基板を4枚準備した。この結晶成長用基板上に、AlN薄膜層(バッファ層)を形成しない以外は、参考例1と同様の条件でN型AlGaNを作製し、同じ評価を行った。得られた結果を表1〜3に示した。なお、この場合も予備実験を行い、実施例の条件が前記式(1)の範囲を満足することを確認して、N型III族窒化物半導体を成長した。
参考
参考例1において、単結晶AlN膜からなるバッファ層の厚みを0.2μmとした以外は、参考例1と同様の条件でN型AlGaNを作製し、同じ評価を行った。このバッファ層は、X線ロッキングカーブの半値幅が(002)面:28arcsec、(102)面:1020arcsecであった。得られたN型AlGaNの特性を表1〜3に示した。なお、この場合も予備実験を行い、参考の条件が前記式(1)の範囲を満足することを確認して、N型III族窒化物半導体を成長した。
比較例6
参考例1において、N型Al0.7Ga0.3N層の成長時のアンモニア流量を0.5slm(V/III比=484)とした以外は、参考例1と同様の条件でN型AlGaNを作製し、同じ評価を行った。なお、X線ロッキングカーブ測定の結果が参考例1と同程度であったため、転位密度は参考例1と同一とみなした。得られた結果を表1〜3に示した。
比較例7
参考例1において、N型Al0.7Ga0.3N層の成長時のアンモニア流量を0.8slm(V/III比=774)とした以外は、参考例1と同様の条件でN型AlGaNを作製し、同じ評価を行った。なお、X線ロッキングカーブ測定の結果が参考例1と同程度であったため、転位密度は参考例1と同一とみなした。得られた結果を表1〜3に示した。
Figure 0006099346
Figure 0006099346
Figure 0006099346
表1〜3に示した通り、実施例で得られたN型III族窒化物半導体層は、優れたN型導電性特性を有し、かつ表面平滑性のよいものとなる。参考で得られたN型III族窒化物半導体層は、転位密度が3×10cm−2と高くなっているにも拘らず、表面平滑性がよく、比抵抗が低いN型導電特性のよいものとなった。

1 異種基板
2 バッファ層
3 N型III族窒化物半導体(層)

Claims (6)

  1. AlN単結晶基板と、該基板上に、
    ドナー不純物原子としてSiを含む、AlInGaN(但し、X、Y、Zは、0.6≦X≦0.8、0≦Y≦0.01、0.2≦Z≦0.4、およびX+Y+Z=1.0の関係を満足する有理数である。)で示される組成を有するIII族窒化物単結晶からなるN型III族窒化物半導体層を有する積層体であって、
    前記AlN単結晶基板の(002)面および(102)面のX線ロッキングカーブの半値幅が共に10〜100arcsecであり、
    該N型III族窒化物半導体層中のSi濃度が1×1018〜5×1019(cm−3)の範囲であり、
    該N型III族窒化物半導体層に含まれる酸素原子と炭素原子の合計濃度とSi濃度との比{(O+C)/Si}が0.05以下であり、
    該N型III族窒化物半導体層中の300Kにおける電子濃度とSi濃度との比(e/Si)が0.3〜0.8であり、
    且つ該N型III族窒化物半導体層の転位密度が10(cm−2)以下である積層体。
  2. AlN単結晶基板と、N型III族窒化物半導体層の間に(002)面におけるX線ロッキングカーブの半値幅が10〜200arcsecであって、(102)面におけるX線ロッキングカーブの半値幅が10〜1500arcsecであるバッファ層を有する請求項に記載の積層体。
  3. N型III族窒化物半導体の300Kにおける比抵抗が0.005〜0.15(Ωcm)である請求項1又は2に記載の積層体。
  4. 請求項1乃至3の何れか1項に記載の積層体であって、前記N型III族窒化物半導体の2乗平均粗さ(RMS)が0.05〜0.25nmであることを特徴とする積層体。
  5. 請求項1乃至4の何れか1項に記載のN型III族窒化物半導体層を有する積層体を製造する方法であって、
    内部の圧力を制御可能な反応容器を有し、該反応容器内で、所定の温度に保持された結晶成長用基板上に、III族原料ガス、V族原料ガス、Si原料ガス、およびキャリアガスを供給してN型III族窒化物半導体を成長させる有機気相成長装置であって、該反応容器内におけるSi原料ガスの供給流量以外の成長条件を一定にして、Si原料ガスの供給流量のみを変化させて前記成長を行ったときに、得られるN型III族窒化物半導体中のSi濃度(原子/cm)がSi原料ガスの供給流量の変化に伴って、一定割合で、且つ誤差範囲内(誤差範囲は、同じSi原料ガスの供給量で複数回実験を行い、得られるN型III族窒化物半導体に含まれるSi濃度の平均値に対して±50%程度である。)で変化できる特性を有し、
    更に、反応容器内がN型III族窒化物半導体中のSi濃度が1×1018〜5×1019(cm−3)の範囲となるようにして前記成長を行ったときに、当該N型III族窒化物半導体中に混入する酸素原子及び炭素原子の量を、Si濃度に対するこれら両原子の合計濃度との比{(O+C)/Si}で表して、当該比が0.05以下とすることが可能な部材で構成され、且つ、窒素ガスなどで置換されたグローブボックス内に設置された有機気相成長装置を用い、
    製造しようとするN型III族窒化物半導体におけるIII族窒化物単結晶の目標組成と目標Si濃度{C(cm−3)}を決定する工程、
    前記目標組成と目標Si濃度に基づき、少なくとも、III族原料ガスの供給流量、V族原料ガスの供給流量、Si原料ガスの供給流量、これら原料ガスおよびキャリアガスの総供給流量、結晶成長用基板の保持温度、並びに反応容器内の圧力からなる成長条件を決定する条件決定工程、及び
    前記有機気相成長装置の反応容器内で、前記条件決定工程で決定された成長条件でN型III族窒化物半導体の成長を行う工程を有し、
    前記条件決定において前記成長条件を決定するに際し、III族原料ガスに対するV族原料ガスの供給モル比(V/III比)を800以上4000以下とし、
    更に、結晶成長用基板の保持温度{T(℃)}が下記式(1)で示される関係を満足するようにすることを特徴とする方法。
    -115×log10+3210 <T(℃)<-115×log10+3300 (1)
    {但し、上記式中、Cは目標Si濃度(cm−3)を意味する。}
  6. 請求項4に記載の積層体を含む半導体素子。
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