以下、本発明の実施の形態1を図面に基づいて説明する。
[実施の形態1]
実施の形態1では、種々の記録方式により、例えば、親水性を有する画像形成材料で形成された画像及び/又は署名欄を有する被記録媒体に対し、この画像形成材料の除去及び被記録媒体の再生に適用できる。
また、実施の形態1は、例えば、インクジェット記録方式による画像及び/又は署名欄を有する被記録媒体に対し、この画像形成材料の除去及び被記録媒体の再生に適している。よって、以下、記録方式として、インクジェット記録方式を例にして実施の形態1を説明する。まず、被記録媒体1の構成について説明する。
<被記録媒体>
図1は、実施の形態1における被記録媒体1の一例を示す断面図である。図1に示す被記録媒体1は、耐水性を有する基質(支持体)10の一方の面上に剥離層20が設けられ、基質10側の面とは異なる剥離層20の面上に画像形成材料40を形成する。
(基質)
実施の形態1における基質(支持体)10は、後述する画像形成材料の除去液(以下、単に除去液ともいう)の供給により変質しない耐水性があるものが好ましい。また、基質10は、記憶媒体50を含んでもよい。記憶媒体50は、例えば、RFID(Radio Frequency IDentification)タグなどの無線ICチップである。以下、記憶媒体50は、RFIDタグを例にして説明する。
基質10にRFIDタグ50が埋め込まれている場合は、除去液の供給によっても、RFIDタグ50の性能が損なわれない基質10が好ましい。
また、基質10としては、高級印刷用紙、電子写真用記録用紙、及び感熱記録紙等を用いることができる。特に可逆性感熱記録紙は記録層がサーマルヘッドによる繰返し画像形成と画像消去に耐えられるように表面に硬化樹脂層を有するものが多く、このような可逆性感熱記録紙は、基質10として好ましく用いることができる。
基質10としては、透明支持体、不透明支持体のいずれも使用することができる。また、基質10は、所望により下塗層等、その余の層を有していてもよい。
基質10の厚さは、使途等によっても異なるが、30μm〜1000μmであることが好ましく、60μm〜800μmであることがより好ましい。厚さは使途やシートサイズ、材質等によっても異なる。例えば、基質10に電池が内蔵されていないパッシブRFIDタグ50を埋め込む場合は、通常600μm〜800μmと比較的厚くなる。
さらに、基質10に電池が内蔵されているセミアクティブRFIDタグ50を埋め込む場合は、通常1〜10mmと比較的厚くなる。さらに、基質10にRFIDタグ50を保持するホルダーケースを埋め込む場合も、通常1〜10mmと比較的厚くなる。
なお、基質10は、上記の通り、感熱記録媒体や熱転写記録媒体などを用いることもでき、この種の基質10のうち典型例としての可逆性感熱記録媒体は、同出願人の特開2012−051321号を参照されたい。
(剥離層)
インクジェット用の被記録媒体1の場合、基質10に剥離層20を設けるとすると、例えば、ラテックスと称する親水性高分子材料又は本来疎水性高分子材料の水系エマルジョン塗工液が用いられてきた。多量の強力な乳化剤として、界面活性による本来水不溶性樹脂の強制的な乳化物がある。
これにより、基質10表面との強固な接着性を得て、また、印字されたインクによるビーデイング防止、ブリーデイング防止を図ることができる。一方で、多量の強力な乳化剤の使用による弊害は既に知られている。水溶性樹脂塗工液を稀に用いたときには、構成する樹脂と化学結合可能な官能基を有する架橋剤で架橋反応処理されてきた。従来技術においては、主に、強固な接着性出現が考慮され、水又は水系液体を付与することによる剥離層の削除を志向したものでないから当然ではある。
これに対し、実施の形態1における剥離層20は、除去液の供給により溶解又は膨潤する未硬化水溶性高分子材料又は水溶性樹脂を主成分として含有するものである。ここで、「主成分」とは、乾燥重量で60%以上であることを意味する。実施の形態1における被記録媒体1の剥離層20は、本発明の目的を損なわない範囲で、無機微粒子、有機微粒子、少量の界面活性剤、酸化防止剤、レベリング剤等々の各種副成分を所望により含有することができる。
実施の形態1における被記録媒体1の剥離層20に用いる水溶性高分子材料は、それ自体成膜性があり、基質10の接着性に優れるが、除去液の供給により、溶解又は膨潤して基質10との接着性を減少するものである。
また、剥離層20としては、水溶性ポリエステルが好適である。水溶性ポリエステルは、例えば主鎖にアリーレン基とアルキレン基及び/又はポリオキシアルキレン基とを有し、金属スルホネート基がペンダントした水溶性ポリエステルである。これにより、水溶性ポリエステルの剥離層20は、靭性と柔軟性とを併せ持ち、常温(20℃〜25℃)より20℃高い温度の水に対する溶解度が、常温での水に対する溶解度の1.5倍以上となる。
また、水溶性ポリエステルとしては、次の式(1)で表される水溶性ポリエステルであることが好ましい。
式(1)中、Arはフェニル基、ナフチル基を表し、Rは分岐を有してもよい炭素数1〜10の炭化水素基、炭素数1〜10のポリオキシアルキレンを表し、Mはアルカリ金属を表し、m、nは整数を表し、m/nは、10/90〜40/60である。
水溶性ポリエステルは、金属スルホネート基により優れた親水性が付与され、かつポリエステル,塩ビ,ポリカーボネート等の樹脂材質およびやアルミニウム板,鋼板等の金属材料に対して優れた密着性を示す。
また、水溶性ポリエステルは、二重結合を有さない飽和ポリエステルであるため、耐性に優れる。金属スルホネート基の含有量としては、少なすぎると得られるポリエステル樹脂の水溶性が不十分となり、再生時に剥離しにくくなる。逆に金属スルホネート基の含有量が多すぎても、水溶性ポリエステル樹脂の耐水性が不十分となることがあるため、m/nは10/90〜40/60であり、15/85〜35/65であることが好ましく、20/80〜30/70であることがより好ましい。
また水溶性ポリエステルの分子量は、10000〜30000であることが好ましい。分子量が10000未満では、機械的強度が低下することがある。
水溶性ポリエステルは、ジカルボン酸成分と、ジオ−ル成分と、金属スルホネート基を有する水溶性付与成分とを、原料主成分とし、これらを縮合反応させることにより得られる。なお、水溶性ポリエステル樹脂の原料を、ジカルボン酸成分、グリコール成分、金属スルホネート基を有する水溶性付与成分と分けた場合における、ジカルボン酸成分及びグリコール成分には、水溶性付与成分に該当するものも含まれる。
また、上記水溶性ポリエステルとしては、市販品を用いてもよい。例えば、互応化学工業者から市販されているテレフタル酸、エチレングリコール、5−ナトリウムスルホイソフタル酸からなる共重合体(「プラスコートZ−221」「プラスコートZ−446」「プラスコートZ−561」等)が用いられてもよい。
なお、剥離層20に用いられる水溶性ポリエステルの詳細については、同出願人の特願2012−029044号を参照されたい。
また、剥離層20は、画像のチリ防止、滲み防止のため、かつ乾燥時の皮膜硬度を保持させるためにシリカ、酸化チタン、アルミナ、酸化亜鉛、炭酸カルシウム等の無機微粒子やアクリル、スチレン等の樹脂微粒子を添加してもよい。かかる無機微粒子を添加する場合、水溶性樹脂100重量部に対して1〜50重量部、好ましくは1〜20重量部添加することができる。
また剥離層20は、通水性を上げるために必要に応じてカチオン性界面活性剤等の帯電防止処理を施してもよい。剥離層20を形成した後に、適当な溶媒に溶解・分散させたものを塗布するようにしてもよい。さらに、剥離層20の劣化防止のため、紫外線吸収剤や酸価防止剤を含有させてもよい。紫外線吸収剤や酸価防止剤の添加量は、5重量%以下であることが好ましい。
以上のように、再生可能な被記録媒体1は、上記構成を有することで、例えば、インクジェット記録に対応することができ、フルカラー化にも対応できる。フルカラーとは、例えば、RGB(青、緑、赤)の各色を8ビット(32階調)で表現する。
例えば、被記録媒体1は、耐水性を有する基質10と、この基質10の少なくとも1方の面に、水又は水性液又は水分粒子により溶解又は膨潤する水溶性ポリエステルを含む剥離層20とを有する。
<画像形成材料>
実施の形態1における画像形成材料40は、着色料及び所望により添加される他の補助材料を含むものである。着色料は、例えば、通常のインクジェットインクに含まれる各種染料及び顔料である。
なお、耐水性を有する基質、例えば金属や樹脂、ガラスへの印刷に好適な画像形成材料として一般的に油性インクが用いられる。具体的には加熱して溶融状態で塗布するソリッドインクなども存在する。ソリッドインク組成物については、例えば特開平10−315457号公報などに記載されている。
また、インク着弾時に紫外線や電子線など電磁波を照射してインクを固まらせるUV硬化インクなども存在する。UV硬化インクの組成物については、例えば特開2010−13506号公報などに記載されている。
また、屋外広告など特に耐候性が求められる分野ではソルベントインクなどの有機溶剤系インクが用いられる場合もある。ソルベントインクの組成物については、例えば特開2009−178979号公報などに記載されている。
さらに、耐水性を有する基質、例えば金属や樹脂、ガラスへの印刷に好適な画像形成材料として、例えば特開2010−116459号公報に記載のように、水性インクが用いられる場合もある。
画像形成材料40は、例えば、上記のような材料を用いることで、基質10に浸透せずに基質10の表面や剥離層20に定着可能となる。
<被記録媒体の用途>
以下、上述した被記録媒体1を、工程管理用に用いる場合の実施の形態1について説明する。図2は、実施の形態1における被記録媒体1の一例を示す図である。図2に示す被記録媒体1は、画像形成材料40により、画像70や署名欄60が形成されている。画像70は、工程名「A−1」を示す。画像は、他にも生産機種や工場名、組立チェックシートなどが形成されているが、工程名「A−1」70を例にして説明する。以降では、画像形成材料40により形成されるものを画像と呼ぶ。
図2に示す被記録媒体1の例では、RFIDタグ50が被記録媒体1に埋め込まれている。RFIDタグ50は、データを記録、消去可能な構成になっている。なお、RFIDタグ50は、必ずしも被記録媒体1に必要なものではない。
<システム>
図3は、図2の被記録媒体1を用いて工程管理を行うシステムの一例を示す図である。図3に示す例では、工程管理を行うシステムは、情報処理装置(例えば、ホストコンピュータ)100、プリンタ(例えば、インクジェットプリンタ)200、被記録媒体1、筆記ペン300、RFIDリーダーライター400を有する。RFIDリーダーライター400は、作業現場に設置される。RFIDリーダーライター400は、RFIDアンテナを有する。
情報処理装置100と、プリンタ200と、RFIDリーダーライター400とは、それぞれネットワークを介してデータの送受信が可能となっている。また、プリンタ200は、RFIDタグへのデータの書き込み及び読み込みが可能なRFIDリーダーライター201が内蔵されている。RFIDリーダーライター201は、RFIDアンテナを有する。
図3に示す実施の形態1における工程管理システムでは、被記録媒体1は、「GX3300」という機種の工程「A−1」という工程管理用に使用される。以下、この工程「A−1」を作業する人が、「XXX」さんの場合について説明する。
RFIDタグ50には、例えば、固有の識別情報(固有ID)と、組み立てる機種「GX3300」を認識するデータと、「XXX」さんが作業する工程「A−1」を認識するデータとが記憶される。これらのデータは、情報処理装置100からプリンタ200に送られ、プリンタ200は、被記録媒体1のRFIDタグ50に、RFIDリーダーライター201を用いて書き込む。
プリンタ200は、情報処理装置100から被記録媒体1に印刷するデータを取得すると、図2に示すように、作業工程を表す文字、写真等の画像等を印刷する。なお、画像は、バーコードなどであってもよい。また、プリンタ200は、記録ヘッドからインク(画像形成材料)を吐出して、署名欄60を被記録媒体1の表面の一部に印刷する。
(作業内容)
ここで、作業内容について説明する。「XXX」さんが、作業「GX3300」という機種の工程「A−1」の作業をする場合、被記録媒体1をRFIDリーダーライター400にかざす。RFIDリーダーライター400は、被記録媒体1のRFIDタグ50に記憶された組み立てる機種「GX3300」を認識するデータを読み取る。
読み取られたデータは、情報処理装置100に送信され、情報処理装置100は、「GX3300」に対応する作業指示を、表示画面に表示する。
「XXX」さんは、表示画面に表示された作業指示に従い組立を行い、作業を終えると、被記録媒体1上のチェックシートに従い、作業を確認する。「XXX」さんは、チェックシートの確認が終わると、印刷された署名欄60に、筆記ペン300を用いて手書きで作業者名をサインする。上述した作業が作業標準になっている。
筆記ペン300は、油性ペン、水性ペン、鉛筆など筆記データを可視化できるものであれば何でもよい。
ここで、図3に示す被記録媒体1には、作業中に油などの汚れ80が付着しているとする。上述したような作業を終えた被記録媒体1は、印刷された画像、手書きされた筆記データ、油などの汚れ80を含む。次に、この被記録媒体1を再生する再生システムについて説明する。
<再生システム>
再生システムは、画像、筆記データ、汚れなどを除去する画像消去手段(除去手段)と、記憶媒体50のデータを消去する情報消去手段と、被記録媒体1を元の状態に戻す再生コーティング手段とを備える。以下、画像消去手段、情報消去手段に対応する画像消去装置500、再生コーティング手段に対応する再生コーティング装置600について、順に説明する。
なお、情報消去手段は、画像消去装置500とは独立して設けられても、再生コーティング装置600内に設けられてもよく、また、画像消去手段、情報消去手段、再生コーティング手段を1つの装置に設けてもよい。
(画像消去装置)
被記録媒体1を初期化する場合、被記録媒体1に印刷された画像、署名欄60、筆記データ、汚れ80などを消去する必要がある。また、RFIDタグ50に書き込まれたデータ情報を一度消去し、初期化する必要がある。
図4は、画像消去装置500の構成の一例を示す図である。図4に示す画像消去装置500は、実施の形態1における被記録媒体1の画像、署名欄60及びRFIDタグ50のデータを消去するのに適している。画像消去装置500は、除去装置とも称す。
実施の形態1における被記録媒体1の画像消去方法は、被記録媒体1の画像保持面(剥離層20)に水又は水性液を有する除去液(画像形成材料の除去液)を供給する除去液供給処理と、被記録媒体1の画像保持面を擦掃する擦掃処理を含む。これらの処理は同時に進行してもよいが、図4に示す例の画像消去装置500においては逐次遂行される。
図4に示される画像消去装置500において、被記録媒体1は、搬送ローラ対501により装置内に搬送され、除去液の付与箇所で画像材料除去液槽502内の除去液が加圧され液噴射ノズル503(供給手段)から被記録媒体1表面に噴射(供給)される。
液噴射ノズル503は、複数のノズルヘッドからなるノズルアレイであってもよく、また、スリット式の噴射ヘッドであってもよい。除去液が画像形成材料を有する剥離層20面に付与され、剥離層20が溶解又は膨潤される。除去液は、冷たくても温かくてもよく、剥離層20の材料に応じて温度が適切に変えられればよい。
次に被記録媒体1は、擦掃処理に導かれ、保持ローラ対506と保持ローラ対507で保持された状態で、ブラシローラ508(擦掃手段)によりブラッシングされる。これにより、溶解又は膨潤した剥離層20が除去される。
しかし、実施の形態1においては、ブラッシングに代え、織布(擦掃手段)等による拭払であってもよい。図4に示すブラシクリーニングベルト509は、ブラシローラ508に付いたペースト状の屑を除去する。
その後、図4に示す例では、被記録媒体1は、残った剥離層20の材料をより完全に除去するため、バックアップローラ510の助けのもとで、表面掃掻ブレ−ド511(擦掃手段)により屑材料が掻き取られる。その後、被記録媒体1は、トレー513上に排出されるが、このような表面掃掻ブレ−ド511は、実施の形態1において必ずしも必要なものではない。
さらに、画像消去装置500内には、RFIDタグ50へのデータの書き込みが可能なRFIDリーダーライター512が内蔵されている。
RFIDリーダーライター512は、画像消去装置500により画像や筆記データ、汚れなどが消去された被記録媒体1内のRFIDタグのデータを消去する。この場合、被記録媒体1は、画像や筆記データ及びRFIDタグ50のデータが無い状態でトレー513に排出される。このように、画像除去処理後の被記録媒体1は、基質10のみになっている。この例では、基質10には、RFIDタグ50が内蔵されるが、必ずしも必要ではない。
(再生コーティング装置)
次に、被記録媒体1の再生について説明する。図5は、再生コーティング装置600の一例を示す図である。再生コーティング装置600は、剥離層コーティング手段610を備え、被記録媒体1を再生することができる。
剥離層コーティング手段610は、剥離層20が除去された被記録媒体1の基質10上に画像形成材料40を浸透させるための剥離層20を再生コーティングする。
また、再生コーティング装置600は、剥離層コーティング手段610の工程を一定速度で、被記録媒体1を保持し、搬送するシート搬送装置611を有する。
剥離層コーティング手段610は、剥離層20の材料を塗布するスプレーガン612を有し、ある一定の厚みに塗布するためにスプレーガン612のエアーを制御するスプレーエア制御装置613を有する。
剥離層コーティング手段610は、剥離層20の塗布後の乾燥工程として、温風を発生させるヒータ615、温風を被記録媒体1に当てるファン614を有する。これにより、剥離層20を塗布後に、剥離層20の材料に温風を当て、材料を乾燥、結晶化して、定着させることができるようになる。
再生コーティング装置600は、被記録媒体1を搬送させながら指定量の剥離層20の材料をそれぞれ塗布、定着可能な機構になっている。これにより、被記録媒体1の再生が完了する。
<具体例>
ここで、被記録媒体1の画像消去、情報消去、再生の一連の動作の具体例について説明する。生産する機種や各工程により、作業工程を表す文字、バーコード、写真等の画像等が代わり、被記録媒体1は、書き換えられる。
また、作業者も異なるため、署名欄にボールペンやマジックなどで書かれた筆記データも消去が必要となる。また、被記録媒体1に印刷されるレイアウトも機種や各工程により変更されるため、署名欄60の位置や大きさも、必要に応じて変更される。
図6は、画像消去、情報消去、再生の一連の動作の具体例を示す図である。図6に示すように、被記録媒体1は、(1)〜(5)の状態に変化する。なお、各状態は、被記録媒体1の表面と、被記録媒体1の断面とを用いて説明する。
(1)の状態は、作業が終了した被記録媒体1の状態を示す。被記録媒体1は、まず、プリンタ200により画像(画像70を含む)、署名欄60を画像形成材料40により形成される。例えば、インクジェットのインクにより、画像70、署名欄60などが被記録媒体1に印刷される。
このとき、プリンタ200のRFIDリーダーライター201は、例えば、RFIDタグ50の固有ID「a」を、印刷時などにRFIDタグ50に書き込む。また、作業が終わると、作業者は、署名欄60に筆記データ(作業者名)を手書きする。また、被記録媒体1には、作業中に汚れ80が発生したとする。
(2)の状態は、(1)の状態の被記録媒体1に対して、画像消去処理を施した後の状態を示す。(1)の状態の被記録媒体1に対し、被記録媒体1を再利用するための画像消去が行われる。被記録媒体1は、画像消去装置500により画像消去処理が行われ、画像70、署名欄60、汚れ80などが消去される。
(3)の状態は、(2)の状態の被記録媒体1に対し、RFIDタグ50の情報を消去した状態を示す。RFIDリーダーライター512は、被記録媒体1内のRFIDタグ50に記憶されたデータを消去する。例えば、RFIDリーダーライター512は、固有IDなどを消去する。なお、固有IDにアクセスできない場合は、固有ID以外をRFIDリーダーライター512により消去してもよい。このとき、被記録媒体1は、基質10のみである。
(4)の状態は、画像及び情報消去後に、再生コーティング処理を施した状態を示す。(4)の状態の被記録媒体1は、再生コーティング処理により、基質10の上に、剥離層20が再生されている。
詳しく説明すると、(3)の状態の被記録媒体1は、シート搬送装置611により、一定速度で剥離層コーティング工程に搬送される。
剥離層コーティング工程では、スプレーのエアーを制御するスプレーエア制御装置613により、剥離層20の材料をある所定厚みにエアーをコントロールし、スプレーガン612にて基質10の上面に塗布する。
塗布された一定厚みの剥離層20の材料を有する被記録媒体1はさらに搬送され、ヒータ615及びファン614により温風が当てられ、基質10の上面に剥離層20の材料が乾燥、結晶化して、定着する。
再生コーティング装置600の一連の再生工程により、被記録媒体1の印刷が可能な初期化状態(4)となる。これにより、被記録媒体1は、再生初期化され、再利用される。
(5)の状態は、(1)の状態の作業とは異なる作業を行う場合の、画像、署名欄が印刷された状態を示す。(5)の被記録媒体1は、工程「A−2」の場合の画像70や署名欄60などが印刷されている。(5)の被記録媒体1は、署名欄60のサイズ、位置、画像70の位置が(1)の状態の被記録媒体1とは異なる。これにより、被記録媒体1は、機種や工程内容などに応じて、形成される画像を変更したりすることができる。
なお、(5)の記録媒体1には、RFIDタグ50には、例えば固有ID「b」が記憶されている。
<動作>
次に、再生システムの動作について説明する。図7は、画像消去装置500の処理の一例を示すフローチャートである。図7に示すステップS101で、画像消去装置500は、液噴射ノズル503を用いて、除去液を被記録媒体1の画像などが形成された表面に供給する。
ステップS102で、画像消去装置500は、ブラシローラ508などを用いて、剥離層20を除去する。
ステップS103で、画像消去装置500は、RFIDリーダーライター512を用いて、RFIDタグ50に記憶されたデータを消去する。
これにより、被記録媒体1にインクで形成された画像や、手書きの筆記データや、油などの汚れがあったとしても、特別な洗浄液などを必要とせず、汚れなどを簡単な工程できれいに除去することができる。
図8は、再生コーティング装置600の処理の一例を示すフローチャートである。図8に示すステップS201で、再生コーティング装置600は、スプレーガン612などを用いて、被記録媒体1に剥離層20の材料を塗布する。
ステップS202で、再生コーティング装置600は、ヒータ615やファン614を用いて、剥離層20の材料を乾燥する。
これにより、被記録媒体1を再生することができる。
<販売システム>
次に、上述した被記録媒体1の再生システムを用いて、被記録媒体を販売するシステムについて説明する。図9は、被記録媒体1の販売システムの一例を示す図である。
図9に示すように、実施の形態1では、ユーザーが使用した被記録媒体1をメーカーが回収し、メーカー側で第一の処理700(画像消去手段、情報消去手段、及び再生コーティング手段による処理)により被記録媒体1を再生する。
この第一の処理により、被記録媒体1は、画像や油等汚れがなく、かつ、RFIDタグ50の保護されているデータ以外の全てのデータが消去された状態になる。
よって、メーカーは、この再生初期化済の被記録媒体1を再びユーザーに販売する。ユーザーは、購入した被記録媒体1に対し、第二の処理800(情報書き込み手段、及び画像形成手段による処理)により、被記録媒体1を利用する。メーカーは、このような第二の処理800をユーザーに提供する。
なお、画像消去手段、情報消去手段は、例えば画像消去装置500により実現され、再生コーティング手段は、例えば再生コーティング装置600により実現されうる。また、情報書き込み手段は、例えばRFIDリーダーライター201により実現され、画像形成手段は、例えばプリンタ200により実現されうる。
上述した販売システムの場合、メーカーは、ユーザーに対し、再生品を販売しているが、有る期間決まった数量の再生品である被記録媒体1を所定の料金でレンタルするシステムでもよい。このレンタルシステムの場合、再生品である被記録媒体1だけでなく、新品の被記録媒体1を含めて、レンタルしてもよい。
以上、実施の形態1によれば、画像形成材料の定着性が良く、除去可能な層が基質に接着された被記録媒体を生成することができる。また実施の形態1によれば、この被記録媒体の再生に関する処理を適切に行うことができる。
また、実施の形態1によれば、フルカラーにも対応可能な被記録媒体を再生することができ、油などの汚れを容易に除去することができる。
また、実施の形態1における再生システムは、署名欄上に手書きで筆記されたとしても、この筆記データを消去することができる。
また、実施の形態1における被記録媒体は、高解像度が可能なインクジェットプリンタによる印刷が可能であり、フルカラーにも対応することができる。
また、実施の形態1における被記録媒体は、無線ICチップなどの記憶媒体を含んでもよく、作業効率を上げることができるようになる。
[実施の形態2]
次に、実施の形態2における再生システムについて説明する。実施の形態2では、実施の形態1とは画像消去手段の構成が異なる。なお、画像消去手段の構成以外については、実施の形態1と同様であるため、以下では、実施の形態2における画像消去手段について説明する。実施の形態2における画像消去手段は、例えば、乾式クリーニング筐体又は乾式クリーニング装置である。
まず、実施の形態2以降で用いる用語の定義を行う。実施の形態2以降における「筐体」とは、内側に旋回空気流を発生させやすい形状の空間を備えた容器状の構造物を示す。
旋回空気流を発生させやすい形状とは、気流が筐体の内壁を沿って流れて循環する、連続した内壁を持つ形状であり、より望ましくは回転体形状の内壁または内部空間を備える形状である。
「通気路」とは、気流を一定の方向に流れやすくする手段のことであり、滑らかな内面を備える管形状であることが一般的である。しかしながら、たとえば滑らかな面を持つ、板状の流路制御板などを用いても、気体を面に沿った方向に流れやすくする、整流効果が発現するため、このような形態も含めて通気路とする。
また、気流が直線的に流れる形状が一般的であるが、流路抵抗をあまり生じない緩やかなカーブを備えていても整流効果を得ることができる。ただし、特に記載がない場合、通気路の方向とは空気流入口において噴出する気流の方向のことを意味する。
直線の管形状を備え、一方の端部が筐体内壁の空気流入口に接続し、もう一方の端部が筐体外の大気に開放されている空気取り入れ口である通気路を、本発明では「インレット」と呼称する。インレットは、一般的に流体抵抗が低く、滑らかな内面を持ち、管の断面は円形、長方形、スリット形状などが用いられる。
「旋回気流」とは、空気流入口からの流入気流により加速された気流が、筐体の内壁に沿って方向を変えつつ流れ、空気流入口の位置に、循環して戻り、流入気流と合流する気流である。気流を形成する流体が空気の場合には「旋回空気流」と同義である。一般的には、内壁が連続している閉空間内で、内壁の接線方向に向けて気流を流入させることにより発生する。
なお、各実施の形態において、「水分」とは、水と、水に水以外の洗浄液を混合したものなどを含む概念をいう。
図10は、実施の形態2における乾式クリーニング装置902の基本構成の一例を示す概要断面図である。図10(A)は、A−A線での横断面図、図10(B)は、B−B線での縦断面図である。
乾式クリーニング装置902は、内部に洗浄媒体905の飛翔空間を有する乾式クリーニング筐体(以下、単に「筐体」という)904と、筐体904内を負圧化する吸気手段906とを備える。
筐体904は、筐体本体部としての円筒形状の上部筐体904Aと、逆円錐形状の下部筐体904Bとから一体として構成されている。ここでの上部、下部は図面上の便宜的呼称であって、実機上の上下とは必ずしも関係はない。
下部筐体904Bは、その円錐頂部に吸気口908を一体に備えており、吸引ダクトとして機能する。
吸気手段906は、吸気口908に一端を接続されたフレキシブルな吸引ホース910と、この吸引ホース910の他端に接続された吸引装置912とを有している。吸引装置912としては、家庭用掃除機、真空モータや真空ポンプ、あるいは流体の圧送により間接的に低圧化ないし負圧化を生じさせる装置などを適宜用いることができる。なお、部材の上面、底面等の上下の位置関係は図面上の基準にすぎない。吸気手段906は、気流発生手段に相当する。
上部筐体904Aの底面部は、下部筐体904Bの上端部を結合する嵌合凹部904A−1となっており、上部筐体904Aと下部筐体904Bは分離可能となっている。上部筐体904Aの上面904A−2は密閉されている。
上部筐体904Aの底面部における下部筐体904Bとの境界部分には、多孔手段としての多孔性の分離板914が設けられている。分離板914は、パンチングメタルのような穴が空いた板状の部材である。分離板914は、吸引されたときの洗浄媒体905の下部筐体904B側への移動を阻止するものである。図10(A)では分離板914の表示を一部省略している。なお、洗浄媒体905は分かり易くするためにその大きさを誇張表示している。
多孔手段としては、洗浄媒体905を通さずに空気及び粉塵(洗浄対象物から除去された除去物)を通過させる大きさの細孔を多く備える多孔形状であればよい。また多孔手段としては、スリット板や網などを用いてもよく、材質も滑らかな面を備えていれば、樹脂や金属などを自由に選択して良い。
多孔手段は、旋回空気流の中心軸と直交する面として配置されている。旋回空気流の中心軸と直交することによって、多孔手段に沿う方向に気流が流れることにより、洗浄媒体905の滞留を防ぐ効果がある。
旋回空気流の減衰を抑えるために、筐体内面は段差、凹凸がなく平滑であることが望ましい。
多孔手段は、旋回空気流に沿った面に配置されることにより、表面に吸着した洗浄媒体を再飛翔させることができる。
筐体904の材質は特に限定されないが、異物の付着や洗浄媒体との摩擦による消耗を防ぐために、例えばアルミ二ウムやステンレスなどの金属製が好適であるが、樹脂製のものを用いることもできる。
上部筐体904Aの内部中心には、上部筐体904Aの円筒軸を共通の軸とするように、円筒状の流路制限部材916が筐体の一部として設けられ、流路制限部材916の下端は分離板914に固定されている。
流路制限部材916は、旋回空気流の流路断面積を絞って流速を向上させる目的で設けられている。流路制限部材916により上部筐体904A内には、滑らかな壁面を有するリング状の旋回空気流移動空間(洗浄媒体の飛翔空間)が形成されている。
上部筐体904Aの形状によっては、流路制限部材916の中心軸と上部筐体904Aの中心軸を必ずしも共通にする必要はなく、リング状の空間が確保できていれば偏芯していても良い。
上部筐体904Aの側面の一部には、旋回空気流で飛翔する洗浄媒体905を洗浄対象物に接触ないし衝突させるための開口部918が形成されている。
上部筐体904Aは、直径に対して高さが極めて小さい円筒形状であり、その高さを形成する側面の一部に開口部918を設ける。これにより、筐体904全体としては、図10(B)に示すように、開口部918以外の外周部分が洗浄対象物(例えば被記録媒体1)から大きく逃げる(離れる)レイアウトとなる。よって、洗浄対象物に対する局所的当接、換言すればピンポイントクリーニングの自由度が高められている。
開口部918は、上部筐体904Aの側面を円筒軸に平行な平断面により切断した形状であり、円筒軸と直交する方向から見て矩形形状をなしている。
上部筐体904Aの側面には、空気流入口922が形成されており、空気流入口922には、旋回空気流発生手段で且つ通気路としてのインレット924が上部筐体904Aの外方から接続されて上部筐体904Aに一体に固定されている。
インレット924は、分離板914に略平行に設定されており、その通気方向は、上部筐体904Aの半径方向に対して傾き、その通気路中心の延長線が開口部918に達するように位置している。
インレット924は、上部筐体904Aの高さ方向に延びる幅を有している。インレット924は、上部筐体904Aの高さよりも径又は幅が小さいものを1つ配置してもよく、単体のインレットを高さ方向に複数配置する構成としてもよい。
図10に示すように、開口部918が洗浄対象物に当接して塞がれると、筐体904内が閉空間となる。よって、インレット924から外気が高速で流入し、この高速気流は洗浄媒体905を開口部918へ向けて加速させるとともに旋回気流としての旋回空気流930を生成する。
閉空間が形成された時に生じる旋回空気流は、分離板914上に吸着した洗浄媒体を吹き払い、再飛翔させる効果を有する。
開口部918は、開放されたときに、空気流入口922における内圧を、大気圧もしくはその近傍にするために十分な大きさの面積を備える。また、空気流入口922も、開口部918の開放時に大気圧もしくはその近傍になりやすい位置に配置される。
このような構成を備えることにより、乾式クリーニング装置902を洗浄対象物に当てていない間は、空気流入口922が大気圧に近づくことによって、外部との差圧が低下し、その結果流入する気流が劇的に低減する。一方、開口部918から流入する気流は多くなるため、洗浄媒体905が筐体904内から漏れ出ることを防ぐことができる。
また、開口部918が開放されている状態では、閉塞されている場合に比べて流入する気流の総量が2〜3倍になるため、とくに薄片状の洗浄媒体では多孔手段上に吸着されるため、再飛翔せず筐体の外に漏れることがない。これを開口部開放時における洗浄媒体吸着効果という。
洗浄媒体905は、薄片状の洗浄片の集合であるが、ここでは薄片状の洗浄片単体としての意味でも用いている。
薄片状の洗浄媒体とは、例えば面積が1mm2以上200mm2以下の薄片である。また、洗浄媒体の材質はポリカーボネイト、ポリエチレンテレフタラート、アクリル、セルロース樹脂などの耐久性のある素材からなるフィルムであり、厚みは0.02mm以上1.0mm以下である。
但し、洗浄対象物によっては洗浄媒体の厚みやサイズや材質を変えることが効果的な場合もあり、これらの洗浄媒体を使用する場合も本発明の範囲に含まれるため、上記の洗浄媒体条件にはとらわれないものとする。
洗浄媒体の材質に関しては、樹脂だけにとどまらず、紙、布などの薄片や、あるいは、雲母などの鉱物、セラミックやガラス、金属箔であっても、薄く軽量で飛翔しやすい形状にすることで使用することができる。
上部筐体904Aのリング状の内部空間926は、旋回空気流によって洗浄媒体905を飛翔させて開口部918に対向する洗浄対象物に接触させる機能を担う空間である。
流路制限部材916の内部空間934は、旋回空気流が作用しない空間である。以下、上記構成を有する乾式クリーニング筐体の使用状態について説明する。
図11は、実施の形態2における乾式クリーニング筐体の使用状態を示す概要側面図である。図11に示す例では、乾式クリーニング筐体としての筐体904は、通気路としてのインレット924内に図1に示す剥離層20を膨潤又は溶解する水又は洗浄液をミスト状に噴霧する加湿手段としての噴霧手段950を備える。この加湿手段は、洗浄媒体905の摩擦帯電を抑制する効果もある。ここでの洗浄対象物は、図1に示す被記録媒体1とする。
噴霧手段950は、インレット924の側面に固定された噴霧ノズル952と、図示しない洗浄液タンク及びポンプと、該ポンプと噴霧ノズル952とを接続する液供給チューブ954と、液供給チューブ954の途中に配置されたバルブ956とを有している。
開口部918が洗浄対象物(例えば被記録媒体1の剥離層20)で塞がれると上記のメカニズムで旋回空気流930が発生し、洗浄媒体905が飛翔して洗浄対象物に衝突する。
筐体内の負圧化に伴って、オペレータがバルブ956を開くと噴霧ノズル952の洗浄液がインレット924内にミスト状に噴霧される。噴霧されたミストは、インレット924から流入する気流により旋回空気流930に気液混合流として合流し、筐体内に拡散する。ミストは、水分粒子を含んで構成される。
拡散したミストは、洗浄媒体905に付着し、あるいは洗浄媒体905を湿らせ、洗浄媒体905の摩擦による帯電を抑制する。
洗浄媒体905の帯電が抑制されるため、洗浄媒体905は後述する分離板914や筐体内壁に密着しにくく、洗浄媒体の滞りない循環を実現することができる。これにより、洗浄媒体905が分離板914に密着して負圧が低下することが防止される。
また、筐体内に投入された洗浄媒体905の「旋回空気流930により飛翔する数量」が減らないため、「洗浄対象物の汚れの除去に適正な飛翔数量」が一定に保たれ、良好な洗浄能力が維持される。
ここでは、図示しないポンプの圧力で噴霧する構成としたが、インレット924内を流れる高速気流の負圧作用で霧化するようにしてもよい。噴霧ノズル952からの噴霧は、スイッチ等でコントロールできるようにしてもよい。
上記のように、筐体開口部を洗浄対象物に当て、吸引装置912を作動させた状態で、噴霧ノズルから微細化した洗浄液粒子を噴出させると、筐体外の空気は通気路を通り、気液混合流となって筐体内に流入する。微細化した洗浄液粒子は、洗浄媒体に付着・浸透して洗浄媒体905を湿らせる。
吸引装置912を作動させた状態で筐体開口部を洗浄対象物に当てると、洗浄媒体905が筐体内部で旋回気流に乗って洗浄対象物に繰り返し衝突するのは、前述のとおりである。適度に湿った洗浄媒体905は、乾燥した洗浄媒体に比べて汚れを吸着する能力が高く、微細粒子や油性汚れを効率的に除去することができる。
洗浄液の供給量を適切にコントロールすることで、図1に示す被記録媒体1のうち、溶解又は膨潤した剥離層20、及び画像形成材料40が除去される。
なお、実施の形態2における乾式クリーニング筐体904の詳細については、同出願人の特願2011−226069を参照されたい。
実施の形態2における乾式クリーニング筐体は、例えば、実施の形態1の供給手段及び擦掃手段に対応する。また、剥離層20を水分粒子により溶解又は膨潤させた状態で、擦掃手段により擦掃して、剥離層20、画像形成材料40を除去するようにしてもよい。
つまり、実施の形態2における画像消去手段は、被記録媒体1が当接される開口部918と、外部からの空気を通す通気路924を介して導気された空気が吸引され、開口部918に被記録媒体1が当接されることで生じる旋回気流930により洗浄媒体905が飛翔する内部空間926と、洗浄媒体が飛翔する領域に水分粒子を噴霧する噴霧手段950と、を有する筐体904である。また、この筐体904は、噴霧された水分粒子を含んだ洗浄媒体905が、開口部918に当接された被記録媒体1に衝突することで、剥離層20を除去することができる。
以上、実施の形態2における画像消去手段によれば、剥離層を擦掃した廃液が少なくなり、環境に優しい再生システムを提供することができる。
[実施の形態3]
次に、実施の形態3における画像消去手段について説明する。実施の形態3では、実施の形態2における乾式クリーニング装置の別例を説明する。なお、その他の構成については、実施の形態1と同様であるため、その説明を省略する。
また、実施の形態3の構成で、実施の形態2における構成と同様のものは同じ符号を付し、その説明を省略する。
図12は、実施の形態3における乾式クリーニング筐体の使用状態を示す概要側面図である。図12に示す例では、乾式クリーニング装置955は、装置本体としての筐体904とは別体であるミスト生成手段958を有している。実施の形態3では、霧状の水分粒子を含むミストを生成するミスト生成手段958として、例えば、超音波加湿器KNCタイプ「霧太郎」(Wetmaster社製)を用いることができる。
「ミスト」とは、例えば、ドライフォグ(登録商標)、ドライミスト(登録商標)と呼ばれる水分粒子のことである。
ミスト生成手段958は、筐体904と一体に構成されてもよい。この場合、ミスト生成手段から発生したミストは、筐体内に導く流路で接続されればよい。
ミスト生成手段958が筐体904と分離して設けられる場合には、乾式クリーニング装置955は「乾式クリーニングシステム」と称することもできる。
図示しない電源に接続されたミスト生成手段958のスイッチをオンすると、図12(A)に示すように、そのミスト噴出口958aからミストMが噴出し、クラウド状に拡がる。
筐体904の開口部918が洗浄対象物で塞がれると、インレット924から外部空気が高速で筐体内に流入して上述したメカニズムで旋回空気流930が発生し、洗浄媒体905が飛翔して洗浄対象物に衝突する。
ミスト生成手段958が筐体の近傍に配置されていると、図12(B)に示すように、クラウド状に拡がったミストMは、インレット924から外部空気が高速で筐体内に流入する負圧作用でインレット924に吸い込まれる。よって、ミストMは、筐体内で旋回空気流930に混ざり、旋回空気流930は気液混合流として旋回する。
ミストMが供給されている間は、旋回空気流930は気液混合流となる。拡散したミストMは、洗浄媒体905に付着し、あるいは洗浄媒体905を湿らせ、あるいは洗浄対象物に接触する。
洗浄対象物を被記録媒体1とすれば、被記録媒体1は、図12に示すように、ミストMを含んだ洗浄媒体905により、溶解又は膨潤した剥離層20、及び画像形成材料40が除去される。
つまり、実施の形態3における画像消去手段は、被記録媒体1が当接される開口部918と、外部からの空気を通す通気路を介して導気された空気が吸引され、開口部918に被記録媒体1が当接されることで生じる旋回気流930により洗浄媒体905が飛翔する内部空間926と、を有する筐体904と、霧状の水分粒子を含むミストを生成するミスト生成手段958と、を備えるクリーニング装置955である。このクリーニング装置955は、生成されたミストが内部空間926に導入されることで、水分粒子を含んだ洗浄媒体905が、開口部918に当接された被記録媒体1に衝突して剥離層20を除去することができる。
以上、実施の形態3における画像消去手段によれば、剥離層を擦掃した廃液が少なくなり、環境に優しい再生システムを提供することができる。
なお、本発明は、上記実施の形態1−3そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化することができる。また、開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成することができる。例えば、実施の形態1−3に示される全構成要素からいくつかの構成要素を削除してもよい。
[実施の形態4]
次に、実施の形態4における再生システムについて説明する。システム構成などは実施の形態1と同様である。以降では、上記実施の形態と異なる部分について説明する。
実施の形態4では、剥離層20に対し、親水性を有する画像形成材料を受容可能とする材料を混合し、この層を剥離層20'とする。また、画像は、記録ヘッドにより吐出される親水性を有する画像形成材料40'により形成される。
実施の形態4では、上記図面や説明の剥離層20を剥離層20'に、画像形成材料40を画像形成材料40'に置き換えればよい。
<被記録媒体>
基質10は、例えば、表面に感熱可逆記録層(ロイコ染料)を有し、裏面にPETシートを貼付してなる可逆性感熱記録媒体((株)リコー製RECO−View)とする。
基質10の裏面(PETシート側)に剥離層20'は、次のようにして生成される。水溶性ポリエステル樹脂、互応化学製プラコートZ−221に、「RY−2」活性剤 添加量1000ppm(0.1%)を添加した溶液が生成される。この溶液と、プロテインパウダー(出光テクノファイン製水溶性材料 WR−452)の吸水性を活かした水溶性インク受容材料がそれぞれ50%、50%で混合(不揮発成分比67:33)される。混合溶液は、ワイヤーバーを用いて、ウエット膜厚80μm(ドライ膜厚25μm)で塗布される。
被記録媒体1は、上記剥離層20'を基質10に塗工し、ドライヤーにて溶液が固化するまで乾燥させて得られる。
<画像形成材料>
画像形成材料40'は、水性インクを用い、例えば、高粘度顔料インクのGELJETビスカスインクを用いる。
剥離層20に対し、親水性を有する画像形成材料を受容可能とする材料を混合した構成、画像形成材料を受容可能な材料、及び親水性を有する画像形成材料組成物については、同出願人の特願2011−059083号公報を参照されたい。
[実施の形態5]
次に、実施の形態5における再生システムについて説明する。システム構成などは実施の形態1と同様である。以降では、上記実施の形態と異なる部分について説明する。
実施の形態1では、剥離層20は、水溶性ポリエステルが主成分であるのに対し、実施の形態5では、剥離層20は、ポリビニルアルコールを含んで形成される。
ポリビニルアルコールは、酢酸ビニルを重合して得られるポリ酢酸ビニルを鹸化させて得ることができ、下記式(2)で表されるポリビニルアルコールが挙げられる。
一般式m+nは重合度を表し、400〜4000、〔m/(m+n)〕×100は鹸化度を表し、70モル%〜99モル%の範囲の鹸化度が好ましく、70モル%〜90モル%の範囲の鹸化度を有するポリビニルアルコールを使用することがより好ましい。また、ポリオキシレン基などの変性基を有する変性ポリビニルアルコールも使用できる。
前記鹸化度が70モル%〜90モル%のポリビニルアルコールとしては、具体的には日本合成化学工業(株)製ゴーセノールGH−17、KH−17、NK−05R等が使用可能ある。また、変性ポリビニルアルコールとしては、日本合成化学工業(株)製エコマティWO−320R等が使用可能である。
以上、実施の形態5によれば、実施の形態1同様、画像形成材料の定着性が良く、除去可能な層が基質に接着された被記録媒体を生成することができる。
[実施の形態6]
次に、実施の形態6における再生システムについて説明する。システム構成などは実施の形態1と同様である。以降では、上記実施の形態と異なる部分について説明する。
実施の形態1では、剥離層20は、水溶性ポリエステルが主成分であるのに対し、実施の形態6では、剥離層20は、粒子の芯(コア)と外殻(シェル)とで組成の異なるコア・シェル型粒子構造を有する樹脂を含んで形成される。例えば、コアが塩化ビニル、シェルが水溶性アクリルである水溶性樹脂を含んで剥離層20が形成される。
実施の形態6における剥離層20としては、例えば、特表2005−522578号公報に示されるような製造方法で得られる塩ビ−アクリル樹脂エマルションを使用でき、星光PMC株式会社製:ハイロス−X:BE−7650等を用いることができる。
以上、実施の形態6によれば、実施の形態1同様、画像形成材料の定着性が良く、除去可能な層が基質に接着された被記録媒体を生成することができる。
[実施の形態7]
次に、実施の形態7における再生システムについて説明する。システム構成などは実施の形態1と同様である。以降では、上記実施の形態と異なる部分について説明する。
実施の形態1では、剥離層20は、水溶性ポリエステルが主成分であるのに対し、実施の形態7では、剥離層20は、水溶性を有するデンプン誘導体を含んで形成される。水溶性を有するデンプン誘導体は、冷水又は温水に可溶となる水溶性デンプンを含む。水溶性を有するデンプン誘導体としては、例えば、フタムラ化学株式会社製エフスマッシュなどが挙げられる。
以上、実施の形態7によれば、実施の形態1同様、画像形成材料の定着性が良く、除去可能な層が基質に接着された被記録媒体を生成することができる。
[実施の形態8]
次に、実施の形態8における再生システムについて説明する。システム構成などは実施の形態1と同様である。以降では、上記実施の形態と異なる部分について説明する。
実施の形態1では、画像形成材料40は、インクジェットインクであるのに対し、実施の形態8では、画像形成材料40は、熱転写プリンタのインクリボンより転写されたインクにより形成される。
また、実施の形態1では、プリンタ200がインクジェットプリンタであるのに対し、実施の形態8では、プリンタ200が熱転写プリンタである。
実施の形態8における画像形成材料40のうち、典型例としての熱転写プリンタのインクリボンにより加熱転写されるインクの組成物については、例えば、特許第2621738号などに記載されている。
以上、実施の形態8によれば、実施の形態1同様、この被記録媒体の再生に関する処理を適切に行うことができる。
[実施の形態9]
次に、実施の形態9における再生システムについて説明する。システム構成などは実施の形態1と同様である。以降では、上記実施の形態と異なる部分について説明する。
実施の形態1では、画像形成材料40がインクジェットインクであるのに対し、実施の形態9では、画像形成材料40は、ロイコ染料41により形成される。
<被記録媒体>
図13は、実施の形態9における被記録媒体1の一例を示す断面図である。図13に示す被記録媒体1は、耐水性を有する基質(支持体)10の一方の面上に剥離層20が設けられ、基質10側の面とは異なる剥離層20の面上に画像形成材料としてロイコ染料層41を均一に塗布し形成する。
実施の形態9における画像形成材料40のうち、典型例としてのロイコ染料は、同出願人の特開平5−112068、特開2000−79763号などを参照されたい。
また、実施の形態1では、プリンタ200がインクジェットプリンタであるのに対し、実施の形態9では、プリンタ200がサーマルプリンタである。
サーマルプリンタのサーマルヘッドにより、図13に示す被記録媒体1の発色させたい部分(発色部分)42に加熱した場合、被記録媒体1の表面が発色し、印字される。
(画像消去装置)
実施の形態9における画像消去装置は、実施例1と同様である。つまり、図4に示される画像消去装置500において、被記録媒体1は、搬送ローラ対501により装置内に搬送される。次に、被記録媒体1は、除去液の付与箇所で画像材料除去液槽502内の除去液が加圧され液噴射ノズル503(供給手段)から被記録媒体1表面に噴射(供給)される。
液噴射ノズル503は、複数のノズルヘッドを含むノズルアレイであってもよく、また、スリット式の噴射ヘッドであってもよい。除去液は、画像形成材料を有する剥離層20面の上面のロイコ染料層41に付与され、剥離層20が溶解又は膨潤される。
次に、被記録媒体1は、擦掃処理に導かれ、保持ローラ対506と保持ローラ対507で保持された状態で、ブラシローラ508(擦掃手段)によりブラッシングされる。これにより、溶解又は膨潤した剥離層20および剥離層20面の上面のロイコ染料層41全体が除去される。
なお、実施の形態9における画像消去装置は、実施の形態2,3の乾式クリーニング装置であってもよい。実施の形態1と実施の形態9とでは、剥離層20面の上面にロイコ染料層41が付与されていることが異なる。よって、実施の形態9においても、実施の形態2,3と同様、剥離層20面及び画像形成材料であるロイコ染料層41全体が除去される。
(再生コーティング装置)
次に、被記録媒体1の再生について説明する。実施の形態9における再生コーディング装置は、実施の形態1と同様であるため、同じ符号を用いて説明する。
実施の形態9における再生コーティング装置600は、剥離層20およびロイコ染料層41をコーディングする剥離層コーティング手段610を備え、被記録媒体1を再生することができる。
剥離層コーティング手段610は、剥離層20およびロイコ染料層41が除去された被記録媒体1の基質10上にロイコ染料層41を浸透させるための剥離層20を再生コーティングする。
再生コーティング装置600は、被記録媒体1を搬送させながら指定量の剥離層20の材料をそれぞれ塗布、乾燥、結晶化して、定着させることができるような機構になっている。
剥離層20の材料を塗布、乾燥、結晶化して、定着後、その上面に再度同様の工程でロイコ染料層41の材料を塗布、乾燥、結晶化して、定着により、被記録媒体1の再生が完了する。
また、ロイコ染料層41の材料を塗布する方法として、ワイヤーバーなどの別の塗布方法を用いてもよい。
<動作>
次に、実施の形態9における再生コーディング装置の動作について説明する。図14は、実施の形態9における再生コーティング装置600の処理の一例を示すフローチャートである。
図14に示すステップS301で、再生コーティング装置600は、スプレーガン612などを用いて、被記録媒体1に剥離層20の材料を塗布する。
ステップS302で、再生コーティング装置600は、ヒータ615やファン614を用いて、剥離層20の材料を乾燥する。
ステップS303で、再生コーティング装置600は、スプレーガン612などを用いて、被記録媒体1にロイコ染料層41の材料を塗布する。
ステップS304で、再生コーティング装置600は、ヒータ615やファン614を用いて、ロイコ染料層41の材料を乾燥する。
以上、実施の形態9によれば、実施の形態1と同様、被記録媒体1を適切に再生することができる。
[変形例]
変形例として、上記の再生システムを1つの装置(再生装置)で処理するようにしてもよい。例えば、再生装置は、形成された画像の除去、剥離層の再生、画像形成材料により新たに画像を形成、などの処理を行う。
また、上記の各装置は、上記各実施の形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化することができる。また、上記各実施の形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成することができる。