JP3820899B2 - 刷版、刷版作製方法、及びそれを用いた印刷装置 - Google Patents

刷版、刷版作製方法、及びそれを用いた印刷装置 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、印刷装置、及びその装置に用いる刷版、刷版に潜像を形成するための潜像形成物質に関する。
【0002】
【従来の技術】
印刷装置(本発明ではグラビア、又はオフセット方式の印刷装置を示す)は広告紙や本等のように同じ画像のものを高速で大量印刷することができる。しかし少量多品種の画像に対しては、版の形成に多くの時間を必要とする、コストがかかること及び版が可逆再生できない等の問題がある。
【0003】
一方、オフィス・家庭向けの少量印刷にはレーザープリンターやインクジェットプリンターが用いられている。しかし、レーザープリンターはインクにあたるトナーの粒子径を小さくするには限界(約4μm)があり、トナーの形状もまちまちである。そのため解像度に限界がある。また印刷速度の高速化を図ろうとすると解像度は著しく低下する。インクジェットプリンターは液体のインクを用いるためレーザープリンターに比べて解像度は高められるが、インクの詰まりを防ぐためインク吐出ノズルのサイズを小さくできず印刷装置並みの高解像度化は難しい。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
版の問題から現在は少部数(数百部〜数千部程度)対応の印刷装置は実用上皆無の状態である。数百部〜数千部程度の部数としては例えば自動車、住宅等の営業所で顧客に配布するカタログ等の資料、あるいはダイレクトメール等が挙げられる。印刷装置がこの部数の分野に進出するには、従来の印刷機並みの解像度を維持し、版を作製するのに用いる時間とコストの課題を克服するために版の再生が可能な印刷方法の革新的な技術の創出が必要であり、そのような新しい画像形成方法、及び印刷装置の登場が切望されてきた。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者は種々の印刷方式を検討した結果、一度使った刷版から版を再生でき、更に版形成プロセスを短く、版形成を容易にするため、水性インクを使用し、且つ超撥インク性を示す版を用い、潜像形成に潜像形成物質を用いることにより上記課題を解決する装置を製作できることを見出した。
【0006】
本発明の要旨は以下のとおりである。
【0007】
(1)少なくとも、版に潜像を形成して刷版とする機構、刷版の潜像に水性インクを付着させ現像を行う機構、現像された画像を紙に転写する機構を備えた印刷装置用の刷版において、該刷版上の該潜像を光照射工程、水洗工程浄及び乾燥工程により消去し、新たな潜像を形成できる版に変換可能である刷版に関する。
また、前記の刷版における潜像のインク付着部分が親インク性であり、インクを付着しない部分が超撥インク性であり、且つ現像、転写の工程終了後、該刷版上の該潜像を光照射工程、水洗浄工程及び乾燥工程により消去し、新たな潜像を形成できる版に変換可能である刷版である。
【0008】
本発明において超撥インク性とは用いるインクが印刷時における最小ドット以上の大きさのインク滴を付着しないことを示す。本発明における印刷装置の最小ドットは10μm以上のインク滴を接触させてもインクが付着せず、弾いてしまう表面のことを超撥インク性を示す表面と定義する。
【0009】
また、本発明の版は潜像形成操作を行うことで刷版を作製可能な物品を示す。更に刷版は版に潜像が形成されたものである。
【0010】
(2)水性インクを用いる印刷装置用刷版において、該刷版における潜像のインク付着部分が親インク性であり、インクを付着しない部分が超撥インク性であり、該潜像の形成のために光照射により親水性に変化する潜像形成物質を付着させることで現像、転写の工程終了後、該刷版上の該潜像を光照射工程、水洗浄工程及び乾燥工程により消去でき、再び該潜像形成物質を付着させることで新たな潜像を有する刷版に変換可能である刷版に関する。
【0011】
(3)水性インクを用いる印刷装置用刷版作製方法において、該刷版作製のための版は潜像を形成する表面が用いるインクに対しては超撥インク性を示し、且つ光照射されることで光照射前に比べて親水性に変化する潜像形成物質を付着させることによる潜像形成によって該刷版を作製する刷版作製方法である。
【0012】
(4)少なくとも版、及び該版に潜像を形成して刷版とする機構、刷版の潜像にインクを付着させ現像を行う機構、現像された画像を紙に転写する機構を備え、且つ該インクが水性インクである印刷装置において、版の潜像形成前は表面が、用いるインクに対しては超撥インク性を示し且つ潜像形成物質を付着させることができ、且つ該版表面に該潜像形成物質を付着させることで潜像を形成でき、引き続く現像、転写の工程終了後、該刷版に光照射工程、水洗浄工程及び乾燥工程により該版を新たな潜像が形成可能な状態に再生する機構を有している印刷装置である。また、前記洗浄で発生した廃液を加熱し蒸気を発生させる機構が付加されている印刷装置である。
【0013】
(5)水性インクを用いる印刷装置用刷版において、該刷版上の潜像のインク付着部分が親インク性であり、潜像のインクを付着しない部分が超撥インク性であり、該潜像が光照射により親水性に変化する潜像形成物質の層を形成後、該層のインクを付着させたくない部分に光照射し洗浄、乾燥することで形成され、現像、転写の工程終了後、該潜像が光照射工程、水洗浄工程及び乾燥工程により消去でき、更に新たな潜像を形成するため該潜像形成物質の層を形成後、該層のインクを付着させたくない部分に光照射し洗浄、乾燥することで新たな潜像を有する刷版に変換可能である刷版である。
【0014】
(6)水性インクを用いる印刷装置用刷版作製方法において、該刷版を作製するための版は表面に光を照射されることで光照射前に比べて親水性に変化する潜像形成物質の層及びその下に用いるインクに対しては超撥インク性を示し且つ該潜像形成物質を付着させることができる層が形成されており、且つ潜像形成の際は版のインクを付着させたくない部分に光照射した後該版を洗浄し乾燥後に潜像を形成することで該刷版を作製する刷版作製方法である。
【0015】
(7)少なくとも版、及び該版に潜像を形成して刷版とする機構、刷版の潜像にインクを付着させ現像を行う機構、該現像された画像を紙に転写する機構を備え、且つ該インクが水性インクである印刷装置において、版の潜像形成前は表面に光を照射されることで光照射前に比べて親水性に変化する化合物を含む層及びその下に用いるインクに対しては超撥インク性を示し且つ潜像形成物質を付着させることができる層が形成されており、且つ潜像形成の際は版のインクを付着させたくない部分に光照射した後該版を洗浄し乾燥することで潜像を形成して刷版となし、引き続く現像、転写の工程終了後、該刷版に光照射工程、水洗浄工程及び乾燥工程後、新たに該光を照射されることで光照射前に比べて親水性に変化する化合物を含む層を形成することで新たな潜像を形成可能な状態に再生する機構を有している印刷装置である。また、前記洗浄で発生した廃液を加熱し蒸気を発生させる機構が付加されている印刷装置である。
【0016】
本発明において、上記の潜像形成物質が分子内に繰り返し単位がオキシエチレン鎖からなる部分を有するホトクロミック化合物を含むことが好ましい。
【0017】
【発明の実施の形態】
本発明は、少なくとも、版に潜像を形成して刷版とする機構、刷版の潜像に水性インクを付着させ現像を行う機構、現像された画像を紙に転写する機構を備えた印刷装置用の刷版において、前記の該刷版上の潜像のインク付着部分が親インク性であり、インクを付着しない部分が超撥インク性であり、且つ現像、転写の工程終了後、該刷版上の該潜像を光照射工程、水洗浄工程及び乾燥工程により消去し、新たな潜像を形成できる版に変換可能である刷版である。
【0018】
本発明は[1]潜像形成物質を超撥インク性の版表面に付着させる方法と、[2]潜像形成物質を超撥インク性表面の全面に塗布後光照射工程、水洗浄工程及び乾燥工程により消去し、新たな潜像をさせる方法、について説明する。
【0019】
前記の[1]と [2]はいずれも潜像形成物質が用いる水性インクに対しては難溶性であるが、光照射を受けると親水性の高い物質(構造)に変化する。そのため印刷時は潜像が用いるインクに溶解し消失することを抑制でき、しかも版の再生の際は光照射により親水性の構造に変化させて洗浄できるため容易に潜像を除去できる。
【0020】
[1] 版に潜像形成物質を付着させて潜像を形成する方法
図1に本発明の[1]の刷版を用いた画像形成方法、及び可逆再生方法を示す。
工程は版への(A)潜像形成→(B)現像→(C)転写→(D)光照射、洗浄→(E)乾燥の順で行われる。また版の可逆再生を行う工程を設けることでレーザープリンターの感光体のように可逆再生可能な版を提供できる。
【0021】
(A)の版1に潜像を形成する表面は用いるインクに対して超撥インク性を示す。潜像形成はこの表面のインクを塗布したい部分に潜像形成物質2を付着させる操作である。版表面は用いる潜像形成物質2を付着することができる。この図で潜像形成物質2は吐出法により潜像形成物質吐出器3のノズルから版表面に付着する。なお潜像形成物質2の付着方法は特に限定されず、刷毛塗り等を用いることもできる。
【0022】
(B)の現像は版1を水性インク4に接触させる。すると版1表面の潜像形成物質の付着した部分のみに水性インクが付着する。
【0023】
(C)の転写ではインクにより形成された版上の画像を紙5に移す。これにより印刷を完了する。同じ画像の印刷物を複数印刷する場合は、2枚目以降はすでに版1に潜像が形成されているので現像と転写の工程を繰り返す。
【0024】
また版1の可逆再生の工程を設けることでレーザープリンターの感光体のように可逆再生可能な版も提供できる。必要な部数の印刷が終わった後の版にはインクと潜像形成物質が付着している。
【0025】
そこで再生は版表面のインクと潜像形成物質の除去と、超撥インク性の回復を行う工程となる。この工程は光照射工程、水洗浄工程及び乾燥工程である。
【0026】
(D)の光照射工程は潜像形成物質を親水性の高い物質(構造)に変化させる操作である。光照射は光源6から発せられた光を版1に照射する。洗浄は版表面に残ったインクと潜像形成物質を除去する。光照射された潜像形成物質は水に溶解しやすい構造に変化している。そこで洗浄器7では水を版1に向かって吹き出し、版1上のインクと潜像形成物質を洗浄する。光照射と洗浄は同時でも別々に行ってもかまわない。光照射と洗浄を別々に行う場合は数回繰り返す方が洗浄効果が高い。
【0027】
(E)の乾燥は版1表面に残った水滴8を除去する。これはドライヤー9からの熱風で行う。これにより版表面の超撥インク性が復活し新たな画像の印刷工程に移ることができる。
【0028】
図2に本発明の印刷機(装置)の模式図を示す。
【0029】
この印刷装置の印刷工程は版1への潜像形成→現像→転写で行われる。また版1の可逆再生を行う機構を設けることでレーザープリンターの感光体のように可逆再生可能な版も提供できる。この印刷装置は潜像形成機構も含んだ形を示しているが潜像形成を専用の装置、即ち刷版機で行ってもかまわない。また、版1の可逆再生を専用の装置、即ち版1の再生装置で行ってもかまわない。このように、工程によって専用の装置に分けることで装置の構成の単純化が図られ、メンテナンスの容易さや装置としての長期信頼性が高まる。
【0030】
版10の潜像を形成する表面は超撥インク性を示す。
潜像形成はこの表面のインクを塗布したい部分に潜像形成物質を付着させる操作である。潜像形成物質は吐出法により潜像形成物質吐出器3のノズルから版表面に付着させられる。これにより潜像形成物質の付着部分は表面エネルギーが大きくなるため次の現像の工程で水性インクが付着するようになる。
【0031】
現像では版のうち潜像形成物質の付着した部分のみに水性インクを塗布する。水性インク11はインクタンク12からインク搬送ロール13とインク塗布ロール14を介して版に塗布される。
【0032】
転写ではインクにより形成された版上の画像を紙に移す。用紙15は用紙搬送ロール16により版と転写ロール17の間に搬送される。ここで転写が行われた後用紙搬送ロール16により運ばれる。これにより印刷を完了する。同じ画像の印刷物を複数印刷するときは、2枚目以降はすでに版に潜像が形成されているので現像と転写の工程を繰り返す。
【0033】
また版の可逆再生を行う機構を設けることでレーザープリンターの感光体のように可逆再生可能な版も提供できる。必要な部数の印刷が終わった後の版には潜像形成物質と少量のインクが付着している。また潜像形成物質付着部分と少量のインク付着部分は超撥インク性が失われている。つまり再生は潜像形成物質と少量のインクの除去と超撥インク性の回復を行う工程となる。この工程は光照射・洗浄→乾燥という工程で行われる。
【0034】
光照射では潜像形成物質の親水性の高い構造に変化させる。光照射は光源18から発せられた光を版に照射する。
【0035】
洗浄は版表面に残ったインクと潜像形成物質に水をかけることにより除去する。光照射された潜像形成物質は水に溶解しやすい物質(構造)に変化している。そこで洗浄器19では水を版に向かって吹き出し、版上のインクを洗浄する。洗浄によって出た廃液は廃液受け20でトラップする。
【0036】
乾燥は版表面に残った水を除去する。これはドライヤー21の熱風で行う。これにより版表面の超撥インク性が復活し新たな画像の印刷工程に移ることができる。なお、頻繁に版の再生を行うと版が熱くなるおそれがあるので、冷却ファン22により版を冷却することもある。またドライヤーの熱風と冷却ファンの冷風をお互い遮るための防風塀23を設置することもある。
【0037】
ところで版の可逆再生は印刷装置内で行ってもよいが、刷版として使用した複数枚の版を集めて一度に処理した方が再生にかかる水の使用量や光熱費のコストを削減でき、環境に対する負荷も減らせるメリットがある。
【0038】
以下にそれぞれの工程で用いられる部材、機器とその機構について説明する。(1)版
(1−1)版材料等の概要
版の形状は図1は板状(扱いやすいように持ち手が付いている)、図2はドラム状を示したが、ベルト状であってもかまわない。版は下地の基材の上に超撥インク性の表面が形成された構造である。超撥インク性の表面を形成する際、基材との密着性を向上するための層を設けることは特に制限を受けない。
【0039】
板状の場合はアルミニウムやステンレス、銅等の金属がたわみにくく、ガラス等に比べて破損しにくいので好ましい。ドラム状の場合、基材は耐食性、密度の点でアルミニウムが好ましい。ステンレスは腐食に対しては問題無いが密度がアルミに比べて大きいので薄板のものを用いるかトルクの大きなモーターを必要とする。ベルト状の場合、基材は長期間の印刷装置稼動によりたわみのでにくいものが要求される。またある程度の可とう性がないと、ベルトを駆動させるローラーとフィットしなくなるためローラーの径を大きくする必要がある。
【0040】
また、この他の基材の材質としてはポリエチレンテレフタレート(PET)やポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等が挙げられる。厚さはベルトを駆動するローラーの直径が5cmのときは20〜200μmが好ましい。これより厚くする場合はローラーの直径を大きくすることで対処する。
【0041】
超撥インク性の表面を形成する方法は板状、ドラム状、又はベルト状等の基材の上に超撥インク性を示す表面を形成する塗料(以下、超撥インク塗料という)を塗布する方法が挙げられる。また基材表面を粗化した後に超撥インク塗料を塗布し形成する方法も挙げられる。更に基材をPTFE、テトラフルオロエチレン−エチレン共重合体(ETFE)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)等のフッ素系樹脂製にしてこの表面を粗化し形成する方法も挙げられる。
【0042】
超撥インク塗料を用いると塗布・加熱という簡単な作業で超撥インク性の表面が形成できる利点がある。
次に超撥インク塗料による超撥インク性の表面の形成方法を説明する。
【0043】
(1−2)超撥インク塗料
超撥インク塗料の内容と作製方法について説明する。超撥インク塗料は少なくとも撥インク性を付与する撥インク材料、超撥インク性の表面に凹凸を与える微粒子、撥インク材料と微粒子を保持するための樹脂、これらを溶解・分散するための有機溶媒の4種類からなる。これらの材料は少なくとも塗布面が超撥インク性を示せば特に限定は無い。
以下にそれぞれの材料を説明する。
【0044】
(1−2−1)樹脂
樹脂としてはエポキシ系の樹脂、メラミン樹脂、ポリイミド、グラスレジン、スチレン/アクリル樹脂、ポリエステル等があり、特に限定はない。これらの中では耐刷性の面からエポキシ系樹脂、メラミン樹脂、グラスレジン等の熱等で硬化、或いは架橋する樹脂を用いることが好ましい。
【0045】
(1−2−2)微粒子
微粒子としては超撥インク塗料に用いる溶媒に部分的、又は完全に溶解するものは超撥インク性の表面に必要な凹凸を形成できなくなる恐れがあるので好ましくない。溶媒に溶解しにくい微粒子が好ましい。このようなものとしてはSiO2、Al23、TiO2等の無機の化合物(酸化物)が挙げられる。
【0046】
また複写機やプリンター内の現像機中でキャリアとして用いられるフェライト、吸着剤等で用いられるカーボンブラック等も挙げられる。
【0047】
微粒子の大きさは平均粒径で0.01〜3μmが好ましい。0.01μmより小さいと表面凹凸形成にほとんど寄与しなくなる。また3μmより大きいと超撥インク塗膜の物理的強度が低下する。特に超撥インク性を向上させるには平均粒径の異なるものを用いることが好ましい。更に云えば、大きい微粒子と小さい微粒子の平均粒径の比が20:1〜1000:1の範囲である場合、その表面の超撥インク性が良好であった。
【0048】
(1−2−3)撥インク材料
撥インク材料としては長鎖のアルキル基を有する化合物や分子内にフッ素原子を含んだ含フッ素化合物が挙げられる。これらの中では含フッ素化合物が撥インク性を向上させやすく好ましい。
【0049】
含フッ素化合物としてはパーフルオロアルキル鎖を有する化合物、パーフルオロポリエーテル鎖を有する化合物、芳香環にフルオロ基を有する化合物等が挙げられる。このうち撥インク性を向上させるためにはパーフルオロアルキル鎖を有する化合物、パーフルオロポリエーテル鎖を有する化合物が効果的である。
【0050】
樹脂等と混ぜ合わせて超撥インク塗料を調製する際、用いる溶媒に溶解或いは混和している方が塗膜形成の際は均一に分布するので好ましい。ところがパーフルオロアルキル鎖を有する化合物、パーフルオロポリエーテル鎖を有する化合物で分子量の大きなものは樹脂と相溶性の良好な有機溶媒(アセトン、エチルメチルケトン、ジクロルメタン、N,N-ジメチルホルムアミド、N-メチルピロリドン、イソホロン等)への溶解性が低い。そのため末端に適当な残基を結合させることでこれら有機溶媒への溶解性を確保することが望ましい。
【0051】
その方法としてはパーフルオロアルキル鎖、或いはパーフルオロポリエーテル鎖の末端がCH2IかCH2Br(但しCH2Brの材料の方がCH2Iの材料より反応性が低い)といったハロゲン化アルキルの材料は、直鎖或いは分岐のヘキサノール、オクタノール、シス或いはトランスシクロヘキサノール、カテコール誘導体等の水酸基をONaやOKと言ったアルコラートに変換した材料と反応させエーテル結合を介して結合させることによって有機溶媒への溶解性を向上させることができる。また末端にアミノ基を有する材料(例えばアニリン、直鎖或いは分岐のヘキシルアミン、オクチルアミン、デシルアミン等)と前述のハロゲン化アルキルとを反応させアミン結合を介して結合させることによって有機溶媒への溶解性を向上させることができる。
【0052】
パーフルオロアルキル鎖の末端がハロゲン化アルキルの材料としては2-(パーフルオロブチル)エチルイオダイド、2-(パーフルオロヘキシル)エチルイオダイド、2-(パーフルオロオクチル)エチルイオダイド、2-(パーフルオロデシル)エチルイオダイド、2-(パーフルオロ-5-メチルヘキシル)エチルイオダイド、2-(パーフルオロ-5-メチルオクチル)エチルイオダイド、2-(パーフルオロ-5-メチルデシル)エチルイオダイド、2,2,3,3-テトラフルオロプロピルイオダイド、1H,1H,7H-デカフルオロヘプチルイオダイド等が挙げられる。
【0053】
また、その他の有機溶媒への溶解性を確保する方法はパーフルオロアルキル鎖、或いはパーフルオロポリエーテル鎖の末端がCH2OHの材料を、末端がハロゲン化アルキルの材料(例えばベンジルブロマイド、直鎖或いは分岐のヘキシルブロマイド、オクチルブロマイド、デシルブロマイド等)と反応させエーテル結合を介して結合させることによるものが挙げられる。また末端にカルボキシル基を有する材料(例えば安息香酸、直鎖或いは分岐のヘキシル酸、オクチル酸、デシル酸等)等とパーフルオロアルキル鎖、或いはパーフルオロポリエーテル末端がCH2OHの材料とを反応させ、エステル結合を介して結合させることによって有機溶媒への溶解性を向上させることもできる。
【0054】
パーフルオロアルキル鎖、或いはパーフルオロポリエーテル鎖の末端がCH2OHの材料としては、2-(パーフルオロヘキシル)エタノール、2-(パーフルオロオクチル)エタノール、2-(パーフルオロデシル)エタノール、3-(パーフルオロヘキシル)プロパノール、3-(パーフルオロオクチル)プロパノール、3-(パーフルオロデシル)プロパノール、ダイキン工業株式会社製デムナムSA、アウジモント株式会社製フォンブリンZ−DOL等が挙げられる。
【0055】
デュポン株式会社製クライトックス157FS系の材料は末端がカルボキシル基のパーフルオロポリエーテルである。この末端は水素化アルミニウムリチウムによって還元しCH2OHの形に変換できる。そのためこの還元された材料も上記の末端がCH2OHの材料として使用できる。
【0056】
パーフルオロアルキル鎖、或いはパーフルオロポリエーテル鎖の末端がCO2Hの材料は、末端にアミノ基を有する材料(例えばアニリン、直鎖或いは分岐のヘキシルアミン、オクチルアミン、デシルアミン等)と反応させアミド結合を介して結合させることによって有機溶媒への溶解性を向上させることができる。また末端に水酸基を有する材料(例えば直鎖或いは分岐のヘキサノール、オクタノール、シス或いはトランスシクロヘキサノール、カテコール誘導体等)とパーフルオロアルキル鎖、或いはパーフルオロポリエーテル鎖の末端がCO2Hの材料とを反応させエステル結合を介して結合させることによって有機溶媒への溶解性を向上させることができる。
【0057】
パーフルオロアルキル鎖、或いはパーフルオロポリエーテル鎖の末端がCO2Hの材料としては、パーフルオロヘキサン酸、パーフルオロオクタン酸、パーフルオロデカン酸、7H-ドデカフルオロヘプタン酸、9H-ヘキサデカフルオロノナン酸、パーフルオロアゼライン酸、ダイキン工業株式会社製デムナムSH、アウジモント株式会社製フォンブリンZ―DIAC、デュポン株式会社製クライトックス157FS―L、同じく157FS―M、同じく157FS−H等が挙げられる。
【0058】
パーフルオロアルキル鎖、或いはパーフルオロポリエーテル鎖の末端がエポキシ基の材料は末端にアミノ基を有する材料、水酸基を有する材料等と反応させ種々の結合を介して結合させることによって有機溶媒への溶解性を向上させることができる。
【0059】
パーフルオロアルキル鎖、或いはパーフルオロポリエーテル鎖の末端がエポキシ基の材料としては、3-パーフルオロヘキシル-1,2-エポキシプロパン、3-パーフルオロオクチル-1,2-エポキシプロパン、3-パーフルオロデシル-1,2-エポキシプロパン、3-(パーフルオロ-5-メチルヘキシル)-1,2-エポキシプロパン、3-(パーフルオロ-5-メチルオクチル)-1,2-エポキシプロパン、3-(パーフルオロ-5-メチルデシル)-1,2-エポキシプロパン、3-(1H,1H,7H-デカフルオロヘプチルオキシ)-1,2-エポキシプロパン、3-(1H,1H,9H-ヘキサデカフルオロノニルオキシ)-1,2-エポキシプロパン等が挙げられる。
【0060】
上記含フッ素化合物のうち有機溶媒に溶解しやすく、超撥インク表面を形成する際に用いられる樹脂の一つであるエポキシ樹脂のモノマーとの相溶性も良好で、且つ超撥インク表面を形成しやすいものとしては下記に示す化合物が挙げられる。
【0061】
【化1】
Figure 0003820899
【0062】
これらの化合物のうち以下に示す化合物1〜11のものがエポキシ樹脂の他グラスレジン等への相溶性も良好であるので特に好ましい。
【0063】
【化2】
Figure 0003820899
【0064】
【化3】
Figure 0003820899
【0065】
【化4】
Figure 0003820899
【0066】
【化5】
Figure 0003820899
【0067】
【化6】
Figure 0003820899
【0068】
【化7】
Figure 0003820899
【0069】
【化8】
Figure 0003820899
【0070】
【化9】
Figure 0003820899
【0071】
【化10】
Figure 0003820899
【0072】
【化11】
Figure 0003820899
【0073】
【化12】
Figure 0003820899
【0074】
パーフルオロポリエーテル鎖の平均分子量は化合物1〜8のものが1500〜5000、化合物9、10のものが2000〜9000、化合物11は2000〜5000のものがモノマーとの相溶性が良好であるので好適である。
【0075】
なおパーフルオロポリエーテル鎖のうち繰り返し単位が-CF(CF3)-CF2o-のものは原料としてデュポン株式会社製クライトックス157FS―L、クライトックス157FS―M、或いはクライトックス157FS―Hを用いたものである。繰り返し単位が-CF2CF2CF2O-のものは原料としてダイキン工業株式会社製デムナムSHを用いたものである。繰り返し単位が-CF2CF2O-と-(CF2O)-とからなるものは原料としてアウジモント株式会社製フォンブリンZ―DIACを用いたものである。
【0076】
含フッ素化合物の合成方法を以下に示す。
(化合物1の合成)
デュポン株式会社製クライトックス157FS―L(平均分子量2500)(25重量部)を3M株式会社製FC―72(100重量部)に溶解し、これに塩化チオニル(2重量部)とジクロルメタン(20重量部)を加え、撹拌しながら48時間還流する。塩化チオニルとFC―72をエバポレーターで揮発させクライトックス157FS―Lの酸クロライド(25重量部)を得る。
【0077】
三井東圧株式会社製1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン(29重量部)、トリエチルアミン(25重量部)をジクロルメタン(300重量部)に溶解し撹拌中、これにベンゾイルクロライド(14重量部)をジクロルメタン(100重量部)に溶解したものを2時間かけて滴下し、その後も20時間撹拌する。反応液をろ紙でろ過し、ろ液をエバポレーターで濃縮後カラムクロマトグラフィ(和光純薬株式会社製ワコーゲルC―200)で分離・精製し、アミノ基の片方にベンゼン環を有する化合物12(20重量部)を得る。
【0078】
【化13】
Figure 0003820899
【0079】
クライトックス157FS―Lの酸クロライド(25重量部)、化合物12(4重量部)、トリエチルアミン(2重量部)、及びジクロルメタン(20重量部)をFC―72(100重量部)に加え、撹拌しながら48時間還流する。反応液をろ紙でろ過し、ろ液を12時間静置する。上層のジクロルメタン層を除き、新たにジクロルメタン(20重量部)を加え1時間撹拌した後12時間静置する。上層のジクロルメタン層を除き、下層のFC―72層中のFC―72をエバポレーター、真空ポンプで揮発させ、目的の化合物1(25重量部)を得た。
【0080】
(化合物2の合成)
デュポン株式会社製クライトックス157FS―L(平均分子量2500)(25重量部)の代わりにダイキン工業株式会社製デムナムSH(平均分子量3500)(35重量部)を用いる以外は化合物1の合成と同様にして化合物2(35重量部)が得られた。
【0081】
(化合物3の合成)
ベンゾイルクロライド(14重量部)の代わりに4-フェノキシ安息香酸クロライド(23重量部)を用いる以外は化合物12の合成と同様にして化合物13(25重量部)を得る。
【0082】
【化14】
Figure 0003820899
【0083】
次に化合物12(4重量部)の代わりに化合物13(5重量部を)用いる以外は化合物1の合成と同様にして化合物3(25重量部)が得られた。
【0084】
(化合物4の合成)
デュポン株式会社製クライトックス157FS―L(平均分子量2500)(25重両部)の代わりにダイキン工業株式会社製デムナムSH(平均分子量3500)(35重量部)を用いる以外は化合物3の合成と同様にして化合物4(35重量部)が得られた。
【0085】
(化合物5の合成)
1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン(29重量部)の代わりに三井東圧株式会社製1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン(29重量部)を用いる以外は化合物12の合成と同様にして化合物14(20重量部)を得る。
【0086】
【化15】
Figure 0003820899
【0087】
次に化合物12(4重量部)の代わりに化合物14(4重量部を)用いる以外は化合物1の合成と同様にして化合物5(25重量部)が得られた。
【0088】
(化合物6の合成)
上記の157FS―L(平均分子量2500)(25重量部)の代わりに上記のデムナムSH(平均分子量3500)(35重量部)を用いる以外は化合物5の合成と同様にして化合物6(35重量部)が得られた。
【0089】
(化合物7の合成)
ベンゾイルクロライド(14重量部)の代わりに4-フェノキシベンゼンスルホン酸クロライド(18重量部)を用いる以外は化合物12の合成と同様にして化合物15(21重量部)を得る。
【0090】
【化16】
Figure 0003820899
【0091】
次に化合物12(4重量部)の代わりに化合物15(5重量部を)用いる以外は化合物1の合成と同様にして化合物7(25重量部)が得られた。
【0092】
(化合物8の合成)
上記のクライトックス157FS―L(平均分子量2500)(25重量部)の代わりに上記のデムナムSH(平均分子量3500)(35重量部)を用いる以外は化合物7の合成と同様にして化合物8(35重量部)が得られた。
【0093】
(化合物9の合成)
1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン(29重量部)の代わりに三井東圧株式会社製2,2-ビス[(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン(41重量部)を用いる以外は化合物12の合成と同様にして化合物16(30重量部)を得る。
【0094】
【化17】
Figure 0003820899
【0095】
次に化合物12(4重量部)の代わりに化合物16(7重量部を)用いる以外は化合物1の合成と同様にして化合物9(25重量部)が得られた。
【0096】
(化合物10の合成)
上記のクライトックス157FS―L(平均分子量2500)(25重量部)の代わりに上記のデムナムSH(平均分子量3500)(35重量部)を用いる以外は化合物9の合成と同様にして化合物10(35重量部)が得られた。
【0097】
(化合物11の合成)
アウジモント株式会社製(平均分子量4000)(40重量部)をFC―72(200重量部)に溶解し、これにジシクロヘキシルカルボジイミド(5重量部)、化合物16(13重量部)、ジクロルメタン(100重量部)を加え、120時間撹拌する。反応液をろ過後、ろ液を12時間静置する。上層のジクロルメタン層を除き、下層のFC―72層中のFC―72をエバポレーター、及び真空ポンプで揮発させ、目的の化合物11(40重量部)を得た。
【0098】
(1−2−4)超撥インク塗料の作製方法
超撥インク塗料は有機溶媒と上記撥インク材料、微粒子、樹脂の4種類の材料を十分混合して作製する。混合方法は特に限定は無く、攪拌子、攪拌棒、攪拌機、超音波洗浄器を用いる方法等の中から適切な方法を選べばよい。なお攪拌機を用いた場合、塗料中に空気が大量に取り込まれることがある。この状態で版の基材表面に塗布すると塗膜表面に気泡が残る。このまま乾燥すると表面に0.1mm程度の凹凸が生じ、これが画像の形成において解像度を低下させる。その場合、塗料を超音波洗浄器等で振動を与えて脱気することが好ましい。
【0099】
(1−3)基材表面を粗化後に撥インク材料を塗布する方法
次に基材表面を粗化後、撥インク材料を塗布することによって超撥インク性の表面を形成する方法を説明する。
【0100】
粗化する方法は基材表面を紙ヤスリで削ったり、サンドブラスト法を用いる方法が挙げられる。また適切な大きさの微粒子を分散させた塗料を塗布してもよい。この微粒子の分散性が低い場合は界面活性剤を併用することもできる。具体的にはイオン性界面活性剤よりは非イオン性界面活性剤の方が有機溶媒に対する相溶性の高く好ましい。
粗化後塗布する撥インク材料は長鎖のアルキル基を有する化合物や分子内にフッ素原子を含んだ含フッ素化合物が挙げられる。この中では含フッ素化合物が撥インク性の向上効果が高く好ましい。また単に塗布するだけでなく基材表面と化学結合する材料を用いることで耐久性も向上するので更に好ましい。本発明において、好ましい化合物としては以下に示すものが挙げられる。
【0101】
【化18】
Figure 0003820899
【0102】
具体的には化合物17〜25が挙げられる。
【0103】
【化19】
Figure 0003820899
【0104】
【化20】
Figure 0003820899
【0105】
【化21】
Figure 0003820899
【0106】
【化22】
Figure 0003820899
【0107】
【化23】
Figure 0003820899
【0108】
【化24】
Figure 0003820899
【0109】
【化25】
Figure 0003820899
【0110】
【化26】
Figure 0003820899
【0111】
【化27】
Figure 0003820899
【0112】
一般に含フッ素化合物としてはパーフルオロアルキル鎖を有する化合物、パーフルオロポリエーテル鎖を有する化合物、芳香環にフルオロ基やトリフルオロメチル基を有する化合物等が挙げられる。このうち撥水性を向上させるためには上記のパーフルオロアルキル鎖を有する化合物、パーフルオロポリエーテル鎖を有する化合物が効果が大きい。またパーフルオロアルキレン鎖の片方の末端に水素を含むものも効果がある。
【0113】
パーフルオロアルキル鎖のqは少なすぎると撥水性が低く3以上が好ましい。パーフルオロアルキレン鎖の片方の末端に水素を含む場合もrは少なすぎると撥水性が低く6以上が好ましい。
【0114】
パーフルオロポリエーテル鎖を有する化合物の場合、分子量は少なすぎると撥水性が低いので800以上が好ましい。パーフルオロアルキル鎖、或いはパーフルオロポリエーテル鎖等の末端は粗化した基材表面との化学結合を形成するための残基であるトリメトキシシリル基、トリエトキシシリル基等のトリアルコキシシリル基を有している。これらの残基は加熱により基材表面の水酸基等と反応し、酸素原子を介して基材表面に固定される。
【0115】
これらの化合物は温度が高く水分の多い状態では末端のトリアルコキシシリル基が加水分解を受けやすい。特に末端がトリメトキシシリル基の方がトリエトキシシリル基よりも加水分解を受けやすいので保存安定性を考慮するならば末端はトリエトキシシリル基が好ましい。
【0116】
これら化合物の粗化した基材表面への塗布方法はスピンコート、ディップコートのどちらでもかまわない。用いる溶媒は化合物が溶解するものの方が扱いやすい。フッ素系の溶媒は水分が溶解し難いので好適である。加えてフッ素系溶媒は表面張力が小さいので塗布液が極めて薄く塗布面に広がり薄膜化できる利点もある。フッ素系の溶媒としては3M株式会社製FC―72、FC―77、PF―5080,HFE―7100,HFE―7200,デュポン株式会社製バートレルXF等が挙げられる.
本発明で示した含フッ素化合物のうち化合物20〜25はヒドラス化学株式会社、ダイキン工業株式会社等の化学会社から製品として販売されている。
【0117】
含フッ素化合物17〜19の合成方法を以下に示す。
【0118】
(化合物17の合成)
上記のクライトックス157FS―L(平均分子量2500)(25重量部)を3M株式会社製PF―5080(100重量部)に溶解し、これに塩化チオニル(20重量部)を加え、撹拌しながら48時間還流する。塩化チオニルとPF―5080をエバポレーターで揮発させクライトックス157FS―Lの酸クロライド(25重量部)を得る。これにPF―5080(100重量部)、チッソ株式会社製サイラエースS330(3重量部)、トリエチルアミン(3重量部)を加え、室温で20時間撹拌する。反応液を昭和化学工業株式会社製ラジオライト ファインフローAでろ過し、ろ液中のPF―5080をエバポレーターで揮発させ、化合物17(20重量部)を得た。
【0119】
(化合物18の合成)
上記のクライトックス157FS―L(平均分子量2500)(25重量部)の代わりにダイキン工業社製デムナムSH(平均分子量3500)(35重量部)を用いる以外は化合物17の合成と同様にして化合物18(30重量部)を得た。
【0120】
(化合物19の合成)
チッソ株式会社製サイラエースS330(3重量部)の代わりに同社製サイラエースS320(3重量部)を用いる以外は化合物17の合成と同様にして化合物19(20重量部)を得た。
【0121】
(2)潜像形成機構
(2−1)概要
版の最表面は撥インク性の材料によって低表面エネルギー化されている。ここに撥インク性を示さない潜像形成物質を付着させると最表面の表面エネルギーが大きくなるため、ここに水性インクが付着し画像が形成される。つまり潜像形成物質を付着させる操作は版表面に潜像を形成することである。
【0122】
そこで潜像形成物質は版に付着させる際には液体である必要がある。固体の場合には溶媒に溶解或いは分散させて版表面に付着させることができる。また、固体を加熱熔融することで版表面に付着させることができる。潜像形成物質を版に付着させる機構は解像度を考慮するとノズルから吐出させる方法(以下吐出法という)が挙げられる。これは吐出する液滴の大きさや形状によって解像度を制御できるので好ましい。
【0123】
またフェルト、はけ、筆、綿等にしみ込ませ、それで版をなぞることによっても形成できる。
【0124】
また潜像形成物質を溶媒に溶解或いは分散させ版に付着させた場合、溶媒を揮発させる操作を追加する。但し潜像形成から現像までのインターバルにもよる溶媒が揮発しやすい場合は揮発操作を必要としない場合もある。溶媒の揮発操作はエアを吹き付けたり加熱する等の方法が挙げられる。
【0125】
(2−2)吐出法
図3に吐出法で用いる装置(潜像形成物質吐出器)の模式図を示す。
【0126】
潜像形成物質は圧電素子29により圧力を受け、小さな内径のノズルから吐出される。圧電素子29は電気信号により潜像形成物質に直接圧力をかけられるため吐出の応答性を高く設計でき、また吐出量の制御も容易となる。具体的な動作を以下に示す。
【0127】
版10のインクを塗布させたい部分に向かって潜像形成物質吐出器3のノズル24から潜像形成物質を吐出させる。潜像形成物質吐出器3は潜像形成物質2を収容したタンク25を有し、このタンク25の側面の一つにはスポンジ26が貼りつけてある。タンク25の中の潜像形成物質2はこのスポンジ26を通して少しづつノズル24の方に浸透してくる。
【0128】
そしてノズル24のある面とダイヤフラム27の間で薄膜状に広がる(図3では潜像形成物質28の薄膜)。ただノズル24の大きさは潜像形成物質2の表面張力を勘案してダイヤフラム27からの圧力が加わらないかぎり出てこない大きさであって、100μm以下が好ましい。ノズル24からの吐出は圧電素子29によりダイヤフラム27がノズルの側に凸状態に変形する。ダイヤフラム27が潜像形成物質の薄膜28をノズル側に押す。これに伴いノズルから潜像形成物質が吐出される。圧電素子29の動きは圧電素子制御系30でコントロールされる。潜像形成物質吐出器はプーリー31がついており、プーリー31に付いたベルト32により動く。なお版の回転する方向をy軸とするとベルトにより動かされる方向はx軸方向となる。x軸方向の動きに安定性を持たせるため潜像形成物質吐出器にはガイドレール33が付いている。
【0129】
なお潜像形成物質吐出器構成の際、インク吐出の応答性を高めるため圧電素子29がダイヤフラム27に圧力を与える位置はなるべくノズルの吐出部分近傍に配置することが好ましい。
【0130】
ところで吐出される潜像形成物質の量と形状はノズルの内径、形状、版とノズルの間の距離によっても変化するので圧電素子とこれらの因子を調整しながら装置を作製する必要がある。
【0131】
本発明によれば、解像度を高めるには吐出量は少ない方が好ましい。具体的には解像度2400dpiを達成するには1ドットを形成するための潜像形成物質の吐出量は1×10-9cm3程度が必要であった。
【0132】
また吐出の際、ノズルとその近傍に潜像形成物質が付着する場合がある。この対策はノズルの液切れを良好にすること、本発明の含フッ素化合物17〜25をノズル及びその近傍に塗布後加熱することが好ましい。
【0133】
(2−3)潜像形成物質
潜像形成物質は版表面に付着可能なことが必要になる。そのため潜像形成物質の表面張力は50mN/m以下が好ましい。潜像形成物質の表面張力の下限は用いる水性インクを弾くことがない領域である。
【0134】
潜像形成物質が液体の場合はそのものを版表面に付着することができる。固体の場合や粘性の高いものの場合は溶媒に溶解、或いは分散した状態で版表面に付着させることが好ましい。
【0135】
また潜像形成物質は同じ画像を多くの枚数印刷する際は水性インクと接する時間が長くなる。そのため潜像形成物質が水溶性の場合、潜像がすこしづつインクに溶解し、最終的に潜像が消去してしまう可能性がある。そこで潜像形成物質は版の可逆再生の操作まではインクに溶解し難いことが必要がある。
【0136】
版の可逆再生の操作では潜像形成物質に光を照射し、水溶性の構造に変化させる。続いて版を水で洗浄することで版から親水性の高い構造になった潜像形成物質と若干の水性インクを除去する。即ち潜像形成物質は光照射により紫外光を照射前に比べて親水性に変化する必要である。このような化合物としてはホトクロミック化合物や、光酸発生剤・光塩基発生剤が挙げられる。
【0137】
ホトクロミック化合物は光照射によって親水性の構造に変化しても別の波長の光を照射したり、加熱することで元の親水性の低い構造に戻すことができる。
【0138】
光酸発生剤や光塩基発生剤は光による構造変化が別の波長の光を照射したり、加熱することでは不可逆であるが、目的と用途に応じて適宜用いることができる。
【0139】
これら潜像形成物質は有機溶媒に溶解、分散し、版に向けて吐出させて潜像を形成するのが一般的な使用方法である。この有機溶媒の引火性が高い場合は引火点の高いものに変更するか、若干の水を共存させる等の対策で安全性が向上する。但し水を共存させる場合は水と無限希釈可能な溶媒(例えばメタノール、エタノール、テトラヒドロフラン等)の方が潜像形成物質の含有液としての保存安定性を高めることができるので好ましい。
【0140】
(2−3−1)ホトクロミック化合物
ホトクロミック化合物としてはスピロピラン誘導体、トリフェニルメタン誘導体、4,5-エポキシ-2-シクロペンテン誘導体等があり、光を照射されると分子内で電荷が発生するタイプが水溶性が増大するので好適である。
【0141】
スピロピラン誘導体としては、例えば1,3,3-トリメチルインドリノベンゾピリロスピラン、1,3,3-トリメチルインドリノ-6'-ニトロベンゾピリロスピラン、1,3,3-トリメチルインドリノ-6'-ブロモベンゾピリロスピラン、1-エチル-3,3-ジメチルインドリノ-6'-ニトロベンゾピリロスピラン、1-n-プロピル-3,3-ジメチルインドリノ-6'-ニトロベンゾピリロスピラン、1-イソプロピル-3,3-ジメチルインドリノ-6'-ニトロベンゾピリロスピラン、3',3'-ジメチル-6-ニトロ-1'-[2-(フェニルカルバモイル)エチル]スピロ[2H-1-ベンゾピラン-2,2'-インドリン]、1,3,3-トリメチルインドリノ-8'-メトキシベンゾピリロスピラン、1,3,3-トリメチルインドリノ-b-ナフトピリロスピラン等が挙げられる。
【0142】
このほかスピロナフトピラン誘導体、スピロオキサジン誘導体等も挙げられる。
【0143】
トリフェニルメタン誘導体としてはマラカイトグリーン系の化合物が挙げられる。例えば、ビス[4−(ジメチルアミノ)フェニル]フェニルメタノール、ビス[4−(ジエチルアミノ)フェニル]フェニルメタノール、ビス[4−(ジメチルアミノ)フェニル]フェニルメタン、ビス[4−(ジエチルアミノ)フェニル]フェニルメタン等が挙げられる。
【0144】
4,5-エポキシ-2-シクロペンテン誘導体としては2,3-ジフェニル−1ーインデノンオキシド、2,3-ジメチル−1ーインデノンオキシド等が挙げられる。
【0145】
図4に、本発明に用いるホトクロミック化合物の光照射による構造変化の例を示す。
【0146】
化学式中のR1〜R12はそれぞれの誘導体に結合している置換基を示し、アルキル基、ニトロ基、メトキシ基、ブロム基、フェニル基等である。
【0147】
(2−3−2)光酸発生剤
光酸発生剤は光を照射されると分子の一部が切断し切断部分の1個所或いは数箇所がカルボキシル基等の親水性残基になる。そのため洗浄には水酸化ナトリウム水溶液、水酸化カリウム水溶液、トリエチルアミン水溶液のような塩基性水溶液が洗浄し易い。これらで洗浄した後は水で洗浄する必要がある。これを行わないと、版の表面に塩基性の物質が付着しその部分の撥インク性が低下し、版の再生が不完全になる。
【0148】
光酸発生剤は感光性樹脂組成物に用いる公知のオニウム塩系、ハロゲン化合物系、スルホン酸エステル系、スルホニル化合物系、ジアゾナフトキノン系等が挙げられる。
【0149】
オニウム塩系としてはジフェニルヨードニウムトリフルオロメタンスルホネート、トリフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート等が挙げられる。
【0150】
ハロゲン化合物系としては2,6-ビス(トリクロロメチル)-4-(メトキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、1,3,5-トリス(2,3-ジブロモプロピル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6-(1H,3H,5H)トリオン等が挙げられる。
【0151】
スルホン酸エステル系としてはトリス(メタンスルホニルオキシ)ベンゼン、トリス(エタンスルホニルオキシ)ベンゼン、a-ヒドロキシメチルベンゾインスルホン酸メチル、p-ニトロベンジルスルホン酸ベンゾエート、p-ニトロベンジルスルホン酸ナフタレート、p-ニトロベンジルスルホン酸アンスレート、p-ニトロベンジルスルホン酸-9',10'-アンスレート、トリフルオロメタンスルホニルオキシナフタルイミド、トリフルオロメタンスルホニルオキシベンズイミド等が挙げられる。
【0152】
スルホニル化合物系としてはジスルホニルジアゾメタン、ジスルホン等が挙げられる。
【0153】
ジアゾナフトキノン系としては3,4,4'-トリス(ジアゾナフトキノンスルホニルオキシ)-2-ヒドロキシベンゾフェノン、2,3,4,4'-テトラ(ジアゾナフトキノンスルホニルオキシ)ベンゾフェノン等が挙げられる。
【0154】
(2−3−3)光塩基発生剤
光塩基発生剤は光を照射されると分子の一部が切断し切断部分の1個所或いは数箇所がアミノ基等の親水性残基になる。そのため洗浄は希塩酸、希硫酸、希硝酸のような酸性水溶液が洗浄し易い。これらで洗浄した後は水で洗浄する必要がある。これを行わないと、版の表面に酸性の物質が付着しその部分の撥インク性が低下し、版としての再生が不完全になる。また、塩酸、硝酸のように揮発するものでも版の指示体の金属部分を腐食することがあるので水で洗浄するこのが好ましい。
【0155】
光塩基発生剤も感光性樹脂組成物に用いる公知のトシルアミドやカルバメートが挙げられる。例えばN-シクロヘキシルパラトルエンスルホニルアミド、N-[1-(3,5-ジメトキシフェニル)-1-メチルエトキシカルボニル]シクロヘキシルアミド、N-[(2,6-ジニトロフェニル)メトキシカルボニル]シクロヘキシルアミド、N-[1-(2,6-ジニトロフェニル)エトキシカルボニル]シクロヘキシルアミド、N-[ビス(2,6-ジニトロフェニル)メトキシカルボニル]シクロヘキシルアミド、N-[ビス(2-ニトロフェニル)メトキシカルボニル]オクタデシルアミド、N-[(2-ニトロフェニル)メトキシカルボニル]オクタデシルアミド、N-[1-(2-ニトロフェニル)エトキシカルボニル]オクタデシルアミド、N-[1-(4,5-ジメチル-2-ニトロフェニル)エトキシカルボニル]オクタデシルアミド、N-[1-(4-メチル-2-ニトロフェニル)エトキシカルボニル]オクタデシルアミド等が挙げられる。これらの化合物についてはジャーナル オブ ザ アメリカン ケミカル ソサイアティ, 1991年, 第113巻, 4303―4313頁などを参考にすれば合成できる。
【0156】
(2−3−4)オキシエチレン鎖を有する潜像形成物質について
潜像形成物質(化合物)は分子内にオキシエチレン鎖(OCH2CH2)を繰り返し単位とする残基を導入することで水溶性が高くなる傾向がある。これはオキシエチレン鎖が親水性の高いため、疎水性の上記化合物の水溶性を向上させる効果が得られる。そのため洗浄の際に版からの除去が容易になる。
【0157】
分子内にオキシエチレン鎖を有するホトクロミック化合物について説明する。
【0158】
スピロピラン誘導体については以下の一般式が挙げられる。
【0159】
【化28】
Figure 0003820899
【0160】
【化29】
Figure 0003820899
【0161】
具体的には以下の化合物26〜43が挙げられる。
【0162】
【化30】
Figure 0003820899
【0163】
【化31】
Figure 0003820899
【0164】
【化32】
Figure 0003820899
【0165】
【化33】
Figure 0003820899
【0166】
【化34】
Figure 0003820899
【0167】
【化35】
Figure 0003820899
【0168】
【化36】
Figure 0003820899
【0169】
【化37】
Figure 0003820899
【0170】
【化38】
Figure 0003820899
【0171】
【化39】
Figure 0003820899
【0172】
【化40】
Figure 0003820899
【0173】
【化41】
Figure 0003820899
【0174】
【化42】
Figure 0003820899
【0175】
【化43】
Figure 0003820899
【0176】
【化44】
Figure 0003820899
【0177】
【化45】
Figure 0003820899
【0178】
【化46】
Figure 0003820899
【0179】
【化47】
Figure 0003820899
【0180】
トリフェニルメタン誘導体については以下の一般式が挙げられる。
【0181】
【化48】
Figure 0003820899
【0182】
具体的には以下の化合物44〜57が挙げられる。
【0183】
【化49】
Figure 0003820899
【0184】
【化50】
Figure 0003820899
【0185】
【化51】
Figure 0003820899
【0186】
【化52】
Figure 0003820899
【0187】
【化53】
Figure 0003820899
【0188】
【化54】
Figure 0003820899
【0189】
【化55】
Figure 0003820899
【0190】
【化56】
Figure 0003820899
【0191】
【化57】
Figure 0003820899
【0192】
【化58】
Figure 0003820899
【0193】
【化59】
Figure 0003820899
【0194】
【化60】
Figure 0003820899
【0195】
【化61】
Figure 0003820899
【0196】
【化62】
Figure 0003820899
【0197】
光酸発生剤、光塩基発生剤としては以下に示す化合物58〜60が挙げられる。
【0198】
【化63】
Figure 0003820899
【0199】
【化64】
Figure 0003820899
【0200】
【化65】
Figure 0003820899
【0201】
(2−3−5)オキシエチレン鎖を有する潜像形成物質の合成方法
以下にオキシエチレン鎖を有する化合物26〜60の合成方法を示す。
【0202】
(化合物26の合成)
2、3、3-トリメチルインドレニン(318重量部)と2-ヨードプロピオン酸(400重量部)を混合後、80℃で3時間加熱する。生成した深紫色の固体をメチルエチルケトンとエタノールで再結晶し化合物61(520重量部)を得る。
【0203】
【化66】
Figure 0003820899
【0204】
化合物61(360重量部)をメチルエチルケトン(1500重量部)に懸濁させ、これにピペリジン(86重量部)を加え攪拌しながら還流する。還流を始めて5分間経過後、5−ニトロサリチルアルデヒド(166重量部)をメチルエチルケトン(1000重量部)に溶解したものを約5分間かけて滴下する。更に還流を20分間行う。その後12時間攪拌を続ける。反応液をろ過し、得られる固体をジエチルエーテルで数回洗った後、メタノールで再結晶し化合物62(300重量部)を得る。
【0205】
【化67】
Figure 0003820899
【0206】
フェノール(94重量部)をn-ブタノール(2000重量部)に溶解後、窒素ガスのバブリングを開始する。これに水酸化ナトリウム(40重量部)を水(160重量部)に溶解したものを加えた後、還流を開始する。還流を始めて5分間経過後、2−ブロモエチルエーテル(150重量部)を約1時間かけて滴下し、更に還流を8時間行う。反応液が室温まで冷えてから10重量%の塩酸で酸性にした後、エバポレーターでn-ブタノールと水を揮発させる。残さを熱n-ヘキサン(温度は約60℃)(500重量部)で数回抽出し、この抽出液を0℃中に放置すると固体(120重量部)が析出する。これは化合物63である。
【0207】
【化68】
Figure 0003820899
【0208】
化合物63(120重量部)をクロロホルム(1100重量部)と酢酸(900重量部)の混合溶媒に溶解し、これに70%硝酸(250重量部)を約1時間かけて滴下し、更に24時間攪拌する。反応液を飽和炭酸ナトリウム水溶液で中和し、分液ロートに移し、下層(クロロホルム層)を分取する。このクロロホルム溶液を洗浄液が中和するまで飽和食塩水で洗い、無水硫酸マグネシウムで乾燥後、エバポレーターでクロロホルムを揮発させ、得られる固体をエタノールで再結晶して化合物64(110重量部)を得る。
【0209】
【化69】
Figure 0003820899
【0210】
化合物64(110重量部)をN,N-ジメチルホルムアミド(以後DMFと略記する)(1000重量部)に溶解し、これに10%パラジウム−活性炭素(10重量部)を加え、反応容器内を水素で置換した後、反応液を激しく3時間攪拌する。反応後反応液をろ過し、ろ液に水(1000重量部)とクロロホルム(1000重量部)を加え、攪拌後、下層(クロロホルム層)を分取し、これを無水硫酸ナトリウムで乾燥後、エバポレーターでクロロホルムを揮発させる。こうして得られる固体(80重量部)が化合物65である。
【0211】
【化70】
Figure 0003820899
【0212】
化合物62(182重量部)と化合物65(80重量部)をクロロホルム:DMF=9:1の混合溶媒(600重量部)に溶解後、この溶液を0℃に冷却する。これにN,N-ジシクロヘキシルカルボジイミド(100重量部)を加えた後、溶液の温度を0〜-5℃になるよう制御しながら12時間攪拌する。反応液を-5〜-10℃に冷却してからろ過後、ろ液中の有機溶媒をエバポレーターで揮発させる。得られる固体をシリカゲルカラムクロマトグラフィ(溶媒はジクロルメタン:エタノール=20:1)で精製し目的の化合物26(120重両部)を得る。
【0213】
化合物26〜60の同定は赤外線吸収(IR)スペクトルにより行った。IRスペクトルでは反応の最終段階で生じる結合由来の吸収に注目した結果、化合物26はアミドのCO伸縮振動由来の吸収(1640 cm-1)とNH変角振動由来の吸収(1550 cm-1)が観測された。なお以下に合成方法を示す化合物27〜35、37、38、40〜43も化合物26と同様にアミドのCO伸縮振動由来の吸収(1640〜1620 cm-1)とNH変角振動由来の吸収(1560〜1530 cm-1)が観測された。化合物39はアミドのCO伸縮振動由来の吸収(1630 cm-1)のみ観測された。化合物36はCOCの伸縮振動由来の吸収(1300、及び1100 cm-1)が観測された。化合物44〜57は水酸基のOH伸縮振動由来の吸収(3300 cm-1)が観測された。化合物58〜60はSOの伸縮振動由来の吸収(1380〜1360 cm-1)が観測された。
【0214】
(化合物27の合成)
2−ブロモエチルエーテル(150重量部)の代わりに化合物66(300重量部)を用いる以外は化合物63と同様にして化合物67(130重両部)を得る。
【0215】
【化71】
Figure 0003820899
【0216】
【化72】
Figure 0003820899
【0217】
次に化合物63の代わりに化合物67(130重量部)を用いる以外は化合物64と同様にして化合物68(120重量部)を得る。
【0218】
【化73】
Figure 0003820899
【0219】
ついで化合物64の代わりに化合物68(120重量部)を用いる以外は化合物65と同様にして化合物69(90重量部)を得る。
【0220】
【化74】
Figure 0003820899
【0221】
更に化合物65の代わりに化合物69(90重量部)を用いる以外は化合物26と同様にして化合物27(125重量部)を得る。
【0222】
化合物66の合成は以下の通りである。
【0223】
エチレングリコール−モノ−n−ブチルエーテル(236重量部)をジクロルメタン(1000重量部)に溶解し、ピリジン(400重量部)を加えた後、p−トルエンスルホニルクロライド(400重量部)を加え0℃で1時間、引き続き40℃で6時間攪拌する。10%塩酸で反応液を酸性にした後、下層(ジクロルメタン層)を分取する。洗液が中性になるまで飽和食塩水で洗った後、無水硫酸ナトリウムで乾燥する。シリカゲルカラムクロマトグラフィ(溶媒はn−ヘキサン:酢酸エチル=3:1)で精製し化合物66(400重量部)を得る。
【0224】
(化合物28の合成)
2−ブロモエチルエーテル(150重量部)の代わりに化合物70(350重量部)を用いる以外は化合物63と同様にして化合物71(140重量部)を得る。
【0225】
【化75】
Figure 0003820899
【0226】
【化76】
Figure 0003820899
【0227】
次に化合物63の代わりに化合物71(140重量部)を用いる以外は化合物64と同様にして化合物72(130重量部)を得る。
【0228】
【化77】
Figure 0003820899
【0229】
ついで化合物64の代わりに化合物72(130重量部)を用いる以外は化合物65と同様にして化合物73(100重量部)を得る。
【0230】
【化78】
Figure 0003820899
【0231】
更に化合物65の代わりに化合物73(100重量部)を用いる以外は化合物26と同様にして化合物28(130重量部)を得る。
【0232】
なお化合物70はエチレングリコール−モノ−n−ブチルエーテル(236重量部)の代わりにジエチレングリコール−モノ−n−ブチルエーテル(324重量部)を用いる以外は化合物66と同様にして(440重量部)合成される。
(化合物29の合成)
2−ブロモエチルエーテル(150重量部)の代わりに化合物74(400重量部)を用いる以外は化合物63と同様にして化合物75(200重量部)を得る。
【0233】
【化79】
Figure 0003820899
【0234】
【化80】
Figure 0003820899
【0235】
次に化合物63の代わりに化合物75(200重量部)を用いる以外は化合物64と同様にして化合物76(165重量部)を得る。
【0236】
【化81】
Figure 0003820899
【0237】
ついで化合物64の代わりに化合物76(165重量部)を用いる以外は化合物65と同様にして化合物77(120重量部)を得る。
【0238】
【化82】
Figure 0003820899
【0239】
更に化合物65の代わりに化合物77(142重量部)を用いる以外は化合物26と同様にして化合物29(130重量部)を得る。
【0240】
化合物74はエチレングリコール−モノ−n−ブチルエーテル(236重量部)の代わりにトリエチレングリコール−モノ−n−ブチルエーテル(412重量部)を用いる以外は化合物66と同様にして(460重量部)合成される。
【0241】
(化合物30の合成)
2−ブロモエチルエーテル(150重量部)の代わりに化合物78(450重量部)を用いる以外は化合物63と同様にして化合物79(250重量部)を得る。
【0242】
【化83】
Figure 0003820899
【0243】
【化84】
Figure 0003820899
【0244】
次に化合物63の代わりに化合物79(250重量部)を用いる以外は化合物64と同様にして化合物80(205重量部)を得る。
【0245】
【化85】
Figure 0003820899
【0246】
ついで化合物64の代わりに化合物80(205重量部)を用いる以外は化合物65と同様にして化合物81(165重量部)を得る。
【0247】
【化86】
Figure 0003820899
【0248】
更に化合物65の代わりに化合物81(165重量部)を用いる以外は化合物26と同様にして化合物30(160重量部)を得る。
なお化合物78はエチレングリコール−モノ−n−ブチルエーテル(236重量部)の代わりにテトラエチレングリコール−モノ−n−ブチルエーテル(500重量部)を用いる以外は化合物66と同様にして(550重量部)合成される。
【0249】
(化合物31の合成)
2−ブロモエチルエーテル(150重量部)の代わりに化合物82(560重量部)を用いる以外は化合物63と同様にして化合物83(350重量部)を得る。
【0250】
【化87】
Figure 0003820899
【0251】
【化88】
Figure 0003820899
【0252】
次に化合物63の代わりに化合物83(350重量部)を用いる以外は化合物64と同様にして化合物84(270重量部)を得る。
【0253】
【化89】
Figure 0003820899
【0254】
ついで化合物64の代わりに化合物84(270重量部)を用いる以外は化合物65と同様にして化合物85(220重量部)を得る。
【0255】
【化90】
Figure 0003820899
【0256】
更に化合物65の代わりに化合物85(220重量部)を用いる以外は化合物26と同様にして化合物31(185重量部)を得る。
【0257】
化合物82はエチレングリコール−モノ−n−ブチルエーテル(236重量部)の代わりにテトラエチレングリコール−モノ−n−ドデシルエーテル(725重量部)を用いる以外は化合物66と同様にして(700重量部)合成される。
【0258】
(化合物32の合成)
フェノール(94重量部)の代わりにオルトカテコール(110重量部)を用い、2−ブロモエチルエーテル(150重量部)の代わりに化合物66(600重量部)用いる以外は化合物63と同様にして化合物86(250重量部)を得る。
【0259】
【化91】
Figure 0003820899
【0260】
次に化合物63の代わりに化合物86(250重量部)を用いる以外は化合物64と同様にして化合物87(200重量部)を得る。
【0261】
【化92】
Figure 0003820899
【0262】
ついで化合物64の代わりに化合物87(200重量部)を用いる以外は化合物65と同様にして化合物88(155重量部)を得る。
【0263】
【化93】
Figure 0003820899
【0264】
更に化合物65の代わりに化合物88(155重量部)を用いる以外は化合物26と同様にして化合物32(160重量部)を得る。
【0265】
(化合物33の合成)
フェノール(94重量部)の代わりにオルトカテコール(110重量部)を用い、2−ブロモエチルエーテル(150重量部)の代わりに化合物88(1250重量部)用いる以外は化合物63と同様にして化合物89(630重量部)を得る。
【0266】
【化94】
Figure 0003820899
【0267】
次に化合物63の代わりに化合物89(630重量部)を用いる以外は化合物64と同様にして化合物90(500重量部)を得る。
【0268】
【化95】
Figure 0003820899
【0269】
次に化合物64の代わりに化合物90(500重量部)を用いる以外は化合物65と同様にして化合物91(390重量部)を得る。
【0270】
【化96】
Figure 0003820899
【0271】
更に化合物65の代わりに化合物91(390重量部)を用いる以外は化合物26と同様にして化合物33(270重量部)を得る。
【0272】
(化合物34の合成)
フェノール(94重量部)の代わりにピロガロール(126重量部)を用い、2−ブロモエチルエーテル(150重量部)の代わりに化合物66(900重量部)用いる以外は化合物63と同様にして化合物92(350重量部)を得る。
【0273】
【化97】
Figure 0003820899
【0274】
次に化合物63の代わりに化合物92(350重量部)を用いる以外は化合物64と同様にして化合物93(270重量部)を得る。
【0275】
【化98】
Figure 0003820899
【0276】
次に化合物64の代わりに化合物93(270重量部)を用いる以外は化合物65と同様にして化合物94(220重量部)を得る。
【0277】
【化99】
Figure 0003820899
【0278】
更に化合物65の代わりに化合物94(220重量部)を用いる以外は化合物26と同様にして化合物34(180重量部)を得る。
【0279】
(化合物35の合成)
2-ヨードプロピオン酸(400重量部)の代わりに3-ブロモブタン酸(324重量部)を用いる以外は化合物61と同様にして化合物95(430重量部)を得る。
【0280】
【化100】
Figure 0003820899
【0281】
次に化合物61(360重量部)の代わりに化合物95(300重量部)を用いる以外は化合物62と同様にして化合物96(320重量部)を得る。
【0282】
【化101】
Figure 0003820899
【0283】
次に化合物62(182重量部)の代わりに化合物96(188重量部)を用いる以外は化合物28と同様にして化合物35(140重量部)を得る。
【0284】
(化合物36の合成)
2-ヨードプロピオン酸(400重量部)の代わりに3-ブロモエチルエーテル(276重量部)を用いる以外は化合物61と同様にして化合物97(430重量部)を得る。
【0285】
【化102】
Figure 0003820899
【0286】
次に化合物61(360重量部)の代わりに化合物97(300重量部)を用いる以外は化合物62と同様にして化合物36(170重量部)を得る。
【0287】
(化合物37の合成)
化合物65(80重量部)の代わりにクラウンエーテルの一種である4'-アミノベンゾ-18-クラウン-6(以下、化合物98という)(157重量部)を用いる以外は化合物26と同様にして化合物37(150重量部)を得る。
【0288】
【化103】
Figure 0003820899
【0289】
(化合物38の合成)
化合物65(80重量部)の代わりにクラウンエーテルの一種である1-アザ-15-クラウン-5(以下、化合物99という)(105重量部)を用いる以外は化合物26と同様にして化合物38(130重量部)を得る。
【0290】
【化104】
Figure 0003820899
【0291】
(化合物39の合成)
5-ニトロサリチルアルデヒド(166重量部)の代わりにチオサリチルアルデヒド(138重量部)を用いる以外は化合物62と同様にして化合物100(200重量部)を得る。
【0292】
【化105】
Figure 0003820899
【0293】
次に化合物62(182重量部)の代わりに化合物100 (168重量部)を用いる以外は化合物28と同様にして化合物39(120重量部)を得る。
【0294】
(化合物40の合成)
5-ニトロサリチルアルデヒド(166重量部)の代わりに5-メトキシサリチルアルデヒド(152重量部)を用いる以外は化合物62と同様にして化合物101(290重量部)を得る。
【0295】
【化106】
Figure 0003820899
【0296】
次に化合物62(182重量部)の代わりに化合物101(173重量部)を用いる以外は化合物28と同様にして化合物40(140重量部)を得る。
【0297】
(化合物41の合成)
5-ニトロサリチルアルデヒド(166重量部)の代わりに4-メトキシサリチルアルデヒド(152重量部)を用いる以外は化合物62と同様にして化合物102(290重量部)を得る。
【0298】
【化107】
Figure 0003820899
【0299】
次に化合物62(182重量部)の代わりに化合物102(173重量部)を用いる以外は化合物28と同様にして化合物41(140重量部)を得る。
【0300】
(化合物42の合成)
5-ニトロサリチルアルデヒド(166重量部)の代わりに5-ブロモサリチルアルデヒド(201重量部)を用いる以外は化合物62と同様にして化合物103(330重量部)を得る。
【0301】
【化108】
Figure 0003820899
【0302】
次に化合物62(182重量部)の代わりに化合物103(200重量部)を用いる以外は化合物28と同様にして化合物42(150重量部)を得る。
【0303】
(化合物43の合成)
5-ニトロサリチルアルデヒド(166重量部)の代わりに2-ハイドロキシ-1-ナフトアルデヒド(172重量部)を用いる以外は化合物62と同様にして化合物104(310重量部)を得る。
【0304】
【化109】
Figure 0003820899
【0305】
次に化合物62(182重量部)の代わりに化合物104(200重量部)を用いる以外は化合物28と同様にして化合物43(145重量部)を得る。
【0306】
(化合物44の合成)
アニリン(465重量部)をエタノール(3000重量部)に溶解し、これに炭酸カリウム(1200重量部)と2‐ブロモエチルメチルエーテル(1300重量部)を加え、窒素雰囲気下、3時間還流する。反応液を室温まで冷却後、ろ過し、ろ液中のエタノールと2‐ブロモエチルメチルエーテルをエバポレーターで揮発させる。アルミナクロマトグラフィ(溶媒はn-ヘキサン)で精製して化合物105(660重量部)を得る。
【0307】
【化110】
Figure 0003820899
【0308】
次にベンズアルデヒド(106重量部)と化合物105(660重量部)をエタノール(1000重量部)と35重量%塩酸(200重量部)の混合溶媒に溶解し12時間還流する。反応液が室温まで冷えた後、更に35重量%塩酸(200重量部)を加え、12時間還流する。反応液が常温まで冷えた後、塩基性になるまで10重量%水酸化ナトリウムを加える。次にジクロルメタンで抽出する。抽出によって得られたジクロルメタン溶液を無水炭酸カリウムで乾燥後、エバポレーターでジクロルメタンを揮発させる。アルミナクロマトグラフィ(溶媒はn-ヘキサン:ジエチルエーテル=50:1)で精製して化合物44(300重量部)を得る。
【0309】
(化合物45の合成)
2‐ブロモエチルメチルエーテル(1300重量部)の代わりに5-クロロエチルエチルエーテル(1000重量部)を用いる以外は化合物105と同様にして化合物106(700重量部)を得る。
【0310】
【化111】
Figure 0003820899
【0311】
次に化合物105(660重量部)の代わりに化合物106(700重量部)を用いる以外は化合物44と同様にして化合物45(320重量部)を得る。
【0312】
(化合物46の合成)
化合物105(660重量部)の代わりにN,N-ジメチルアニリン(400重量部)を用い、ベンズアルデヒド(106重量部)の代わりに化合物107(266重量部)以外は化合物44と同様にして化合物46(280重量部)を得る。
【0313】
【化112】
Figure 0003820899
【0314】
化合物107の合成は以下の通りである。2‐ハイドロキシベンズアルデヒド(732重量部)をn-ブタノール(3000重量部)に溶解後、窒素ガスのバブリングを開始する。これに水酸化ナトリウム(240重量部)を水(1200重量部)に溶解したものを加えた後、還流を開始する。還流を始めて5分間経過後、化合物70(1900重量部)を約1時間かけて滴下し、更に還流を8時間行う。反応液が室温まで冷えてから10重量%の塩酸で酸性にした後、エバポレーターでn-ブタノールと水を揮発させる。残さを熱n-ヘキサン(温度は約60℃)(2000重量部)で数回抽出し、この抽出液を0℃中に放置すると固体(800重量部)が析出する。これは化合物107である。
【0315】
(化合物47の合成)
化合物105(660重量部)の代わりにN,N-ジメチルアニリン(400重量部)を用い、ベンズアルデヒド(106重量部)の代わりに化合物108(266重量部)を用いる以外は化合物44と同様にして化合物47(280重量部)を得る。
【0316】
【化113】
Figure 0003820899
【0317】
なお化合物108は2‐ハイドロキシベンズアルデヒド(732重量部)の代わりに3‐ハイドロキシベンズアルデヒド(732重量部)を用いる以外は化合物107と同様の方法で(800重量部)得られる。
【0318】
(化合物48の合成)
化合物105(660重量部)の代わりにN,N-ジメチルアニリン(400重量部)を用い、ベンズアルデヒド(106重量部)の代わりに化合物109(266重量部)を用いる以外は化合物44と同様にして化合物48(280重量部)を得る。
【0319】
【化114】
Figure 0003820899
【0320】
なお化合物109は2‐ハイドロキシベンズアルデヒド(732重量部)の代わりに4‐ハイドロキシベンズアルデヒド(732重量部)を用いる以外は化合物107と同様の方法で(800重量部)得られる。
【0321】
(化合物49の合成)
化合物105(660重量部)の代わりにN,N-ジメチルアニリン(400重量部)を用い、ベンズアルデヒド(106重量部)の代わりに化合物110(426重量部)を用いる以外は化合物44と同様にして化合物49(360重量部)を得る。
【0322】
【化115】
Figure 0003820899
【0323】
化合物110は2‐ハイドロキシベンズアルデヒド(732重量部)の代わりに2,3-ジヒドロキシベンズアルデヒド(414重量部)を用いる以外は化合物107と同様の方法で(800重量部)得られる。
【0324】
(化合物50の合成)
化合物105(660重量部)の代わりにN,N-ジメチルアニリン(400重量部)を用い、ベンズアルデヒド(106重量部)の代わりに化合物111(426重量部)を用いる以外は化合物44と同様にして化合物50(360重量部)を得る。
【0325】
【化116】
Figure 0003820899
【0326】
化合物111は2‐ハイドロキシベンズアルデヒド(732重量部)の代わりに2,4-ジヒドロキシベンズアルデヒド(414重量部)を用いる以外は化合物107と同様の方法で(800重量部)得られる。
【0327】
(化合物51の合成)
化合物105(660重量部)の代わりにN,N-ジメチルアニリン(400重量部)を用い、ベンズアルデヒド(106重量部)の代わりに化合物112(426重量部)を用いる以外は化合物44と同様にして化合物51(360重量部)を得る。
【0328】
【化117】
Figure 0003820899
【0329】
なお化合物112は2‐ハイドロキシベンズアルデヒド(732重量部)の代わりに3,4-ジヒドロキシベンズアルデヒド(414重量部)を用いる以外は化合物107と同様の方法で(800重量部)得られる。
【0330】
(化合物52の合成)
化合物105(660重量部)の代わりにN,N-ジメチルアニリン(400重量部)を用い、ベンズアルデヒド(106重量部)の代わりに化合物113(426重量部)を用いる以外は化合物44と同様にして化合物52(360重量部)を得る。
【0331】
【化118】
Figure 0003820899
【0332】
なお化合物113は2‐ハイドロキシベンズアルデヒド(732重量部)の代わりに2,5-ジヒドロキシベンズアルデヒド(414重量部)を用いる以外は化合物107と同様の方法で(800重量部)得られる。
【0333】
(化合物53の合成)
化合物105(660重量部)の代わりにN,N-ジメチルアニリン(400重量部)を用い、ベンズアルデヒド(106重量部)の代わりに化合物114(586重量部)を用いる以外は化合物44と同様にして化合物53(440重量部)を得る。
【0334】
【化119】
Figure 0003820899
【0335】
化合物114は2‐ハイドロキシベンズアルデヒド(732重量部)の代わりに2,4,5-トリヒドロキシベンズアルデヒド(308重量部)を用いる以外は化合物107と同様の方法で(800重量部)得られる。
(化合物54の合成)
化合物105(660重量部)の代わりにN,N-ジメチルアニリン(400重量部)を用い、ベンズアルデヒド(106重量部)の代わりに4-メチルベンズアルデヒド(120重量部)を用いる以外は化合物44と同様にして化合物54(280重量部)を得る。
【0336】
(化合物55の合成)
化合物105(660重量部)の代わりにN,N-ジメチルアニリン(400重量部)を用い、ベンズアルデヒド(106重量部)の代わりに4-エチルベンズアルデヒド(134重量部)を用いる以外は化合物44と同様にして化合物55(290重量部)を得る。
【0337】
(化合物56の合成)
化合物105(660重量部)の代わりにN,N-ジメチルアニリン(400重量部)を用い、ベンズアルデヒド(106重量部)の代わりに4-(n-ブチル)ベンズアルデヒド(162重量部)を用いる以外は化合物44と同様にして化合物56(300重量部)を得る。
【0338】
(化合物57の合成)
化合物105(660重量部)の代わりにN,N-ジメチルアニリン(400重量部)を用い、ベンズアルデヒド(106重量部)の代わりに4-(tert-ブチル)ベンズアルデヒド(162重量部)を用いる以外は化合物44と同様にして化合物57(300重量部)を得る。
【0339】
(化合物58の合成)
ピロガロール(252重量部)をn-ブタノール(3000重量部)に溶解後、窒素ガスのバブリングを開始する。これに水酸化ナトリウム(80重量部)を水(400重量部)に溶解したものを加えた後、還流を開始する。還流を始めて5分間経過後、化合物74(730重量部)を約1時間かけて滴下し、更に還流を8時間行う。反応液が室温まで冷えてから10重量%の塩酸で酸性にした後、エバポレーターでn-ブタノールと水を揮発させる。シリカゲルクロマトグラフィ(溶媒はクロロホルム:メタノール=10:1)で精製して化合物115(350重両部)を得る。
【0340】
【化120】
Figure 0003820899
【0341】
次に化合物115(350重量部)、ピリジン(400重量部)をクロロホルム(1000重量部)に加えた後、攪拌を開始する。-5℃に冷却し、トリフルオロメタンスルホニルクロライド(340重量部)を約1時間かけて滴下する。その後は冷却温度を0℃にして引き続き5時間攪拌する。反応液を10重量%塩酸で酸性にした後、下層のクロロホルム層を分取する。洗液が中性になるまで飽和食塩水で洗った後、無水硫酸ナトリウムで乾燥する。クロロホルムをエバポレーターで揮発させた後、シリカゲルクロマトグラフィ(溶媒はクロロホルム:メタノール=20:1)で精製して化合物58(320重量部)を得る。
【0342】
(化合物59の合成)
エタノールアミン(61重量部)、ピリジン(500重量部)をクロロホルム(1000重両部)に加えた後、攪拌を開始する。-5℃に冷却し、パラトルエンスルホニルクロライド(420重量部)を加える。その後は温度を常温にして1時間、ついで温度を40℃に上げて引き続き5時間攪拌する。反応液が常温まで冷えた後、10重量%塩酸で酸性にし、下層のクロロホルム層を分取する。洗液が中性になるまで飽和食塩水で洗った後、無水硫酸ナトリウムで乾燥する。クロロホルムをエバポレーターで揮発させた後、シリカゲルクロマトグラフィ(溶媒はクロロホルム:メタノール=20:1)で精製して化合物59(200重量部)を得る。
【0343】
(化合物60の合成)
ジエタノールアミン(105重量部)、ピリジン(600重量部)をクロロホルム(1000重量部)に加えた後、攪拌を開始する。-5℃に冷却し、パラトルエンスルホニルクロライド(630重量部)を加える。その後は温度を常温にして1時間、ついで温度を40℃に上げて引き続き5時間攪拌する。反応液が常温まで冷えた後、10重量%塩酸で酸性にし、下層のクロロホルム層を分取する。洗液が中性になるまで飽和食塩水で洗った後、無水硫酸ナトリウムで乾燥する。クロロホルムをエバポレーターで揮発させた後、シリカゲルクロマトグラフィ(溶媒はクロロホルム:メタノール=20:1)で精製して化合物60(300重量部)を得る。
【0344】
(3)現像
現像はインクを版上の潜像形成物質に付着させる工程である。インクは版上の潜像形成物質付着部分に付着するよう設計する。これを達成するために必要なインクの特性とそのインクを版に付着する機構について説明する。
【0345】
(3−1)インクの特性
インクは版の潜像形成物質が付着していない部分には付着しない程度に表面エネルギーの高いものを用いる。そのためインクにはできる限り界面活性剤は用いないようにする。必要な表面エネルギーは版の撥インク性によって異なり、版の撥インク性が高いほど表面エネルギーの低いインクを用いることが好ましい。
【0346】
また版の可逆再生を行う場合、洗浄工程で版上からインクが除去される必要がある。そのためインクは水性であることが必要となる。また洗浄を円滑にするためインクの粘度は低い方が好ましい。ただ版を高速で駆動させた場合、インクの粘性が低いと版からインクが飛散し装置内を汚染することがある。
【0347】
(3−2)付着機構
版へのインクの付着機構はインクタンクのインクを版の潜像形成物質付着部分に付着させることにある。高解像度の潜像に対応するためにインクの塗布量の制御は重要である。
【0348】
インクは図2ではインクタンク12からインク搬送ローラー13を介してインク塗布ローラー14に送られる。これはインク搬送ローラー13によるインクの搬送量を制御することによっても高解像度化を図れるからである。
【0349】
インク塗布ローラーは潜像形成物質からなる潜像を破壊しないように版と接触する際の圧力を小さくすることが好ましい。また潜像を破壊することがないようにインク塗布ローラー14と版の周速度を合わせることが好ましい。
【0350】
なおインクの粘性が低い場合は版1をインクタンク12に直接浸すことで版1に適切な量のインクを付着させることができる。この例を図1に示す。
【0351】
(4)転写
転写は版に現像されたインク画像を紙に移すことである。この場合版の周速度と用紙搬送ロール16の速度は同じに合わせることで版と紙のすべりを抑え、結果として画像の乱れを防ぐことができる。
なお転写された画像表面に樹脂をラミネートすることで、たとえ水性インクを用いた画像でも耐水性が飛躍的に向上する。
【0352】
画像転写後はインクがある程度紙の中に浸透するか、表面で乾燥しないと先に印刷した紙の裏にインクが付着する場合がある。そのためインクの転写量を制御するほか厚さ方向にインクの浸透しやすい紙を用いることもできる。紙としてはインクジェットプリンター用の用紙は印刷面に対して垂直方向に浸透しやすいので好適である。またインクの乾燥を早めるため転写ロールや版表面を加熱する機構を併用することも挙げられる。具体的には版あるいは転写ロール内部にヒーターを設置し、これにより版あるいは転写ロール表面を加熱する方法がある。ただ表面の温度は高すぎるとインクや潜像形成物質が版上で速やかに乾燥してしまい、結果としてインクが紙に転写できなくなる場合がある。そのため表面温度は水の沸点より若干低い80℃以下で制御することが望ましい。
【0353】
なおインクの表面張力が小さい場合、版上のインクが紙に転写されないことがある。そのときは現像した版を水蒸気に暴露すれば転写しやすくなる。これはインクに水蒸気が溶解し、インクの表面張力が高まることでインクの版に対する付着性が低下するためと思われる。
【0354】
(5)版の再生機構
転写終了後、新しい画像を版に形成する場合、版を新しいものに取り替える、又は以下に示す工程で版を再生する、かの方法が挙げられる。
【0355】
必要な部数の印刷が終わった後の版には潜像形成物質が付着している。また若干のインクも残存している。更に潜像形成物質付着部分は超撥インク性が失われている。つまり再生はインクと潜像形成物質の除去と、超撥インク性の回復を行う工程である。これは光照射工程、洗浄工程及び乾燥工程を含むものである。
【0356】
以下にこれらの内容を説明する。
【0357】
(5−1)光照射
光照射に用いる光源はレーザー、キセノンランプ、水銀ランプ等が挙げられる。照射光が潜像形成物質の構造変化を伴う波長の光を照射できるものであれば、装置には特に限定は無い。
【0358】
キセノンランプ、水銀ランプ等はモノクロメーターやフィルター等で必要な波長の光を表面に照射することで潜像形成物質の構造変化を起こすことが可能となる。照射エネルギーが小さい場合は照射時間を長くすることで対応する。
【0359】
なお光照射は後述の洗浄と併用して行っても良い。但し洗浄の際、照射光が洗浄液に当ると散乱して光照射の効率低下を起こす場合がある。そのため光照射と洗浄は交互に数回行う方が効率的である。
【0360】
(5−2)洗浄
洗浄は版表面に残ったインク、及び潜像形成物質を除去する操作である。インクは水性であるため水で洗い流すことができる。また潜像形成物質が光酸発生剤の場合は塩基性の物質(例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等)を含んだ洗浄水を用いると潜像形成物質の溶解性が向上し版からの除去が容易になる。但し塩基性の物質を用いた場合は潜像形成物質を除いた後、これら塩基性物質を除去するために十分な洗浄を行う必要がある。これら塩基性物質が残存していると版表面の撥インク性が低くなり、場合によっては版として十分な撥インク性が得られないこともある。
【0361】
この原因は塩基性物質(後述の酸性物質も同様である)が一般に親水性であるため、これが付着した撥インク性の表面は親水性が高くなるためである。潜像形成物質が光塩基発生剤の場合は酸性の物質(例えば硫酸、リン酸等)を含んだ洗浄水を用いると潜像形成物質の溶解性が向上し版からの除去が容易になる。この場合も潜像形成物質を除いた後、これら酸性物質を除去するために十分な洗浄を行う必要がある。理由は塩基性物質の場合と同様である。
【0362】
水の出口は版全面に水がかかるように工夫する。水の出口に細かな網をかぶせ、細かな水滴として版にかける方法や、出口をスプレー口にして霧状の水を版にかける方法は有効である。なお可逆再生を行う印刷装置の場合、洗浄で発生した洗浄液を受ける受け皿も必要である。なお受け皿と吸引のファンを併用することで洗浄液の装置内への飛び散りを防止する効果が高まる。洗浄に水を用いた場合、洗浄で発生した廃液はほとんどが水なので蒸留するか、活性炭を通して再生することも可能である。ただ活性炭の場合は潜像形成物質を十分には除去できないので、ある程度使用したら廃棄する必要もある。
【0363】
(5−3)乾燥
洗浄した版は乾燥することで再生できる。乾燥は洗浄により版に付着した水を取り除く工程である。
【0364】
版は元々超撥インク表面である。超撥インク表面は細かな凹凸があるため平板に比べて乾燥しにくい。そこで温風を版表面に吹きつける方法が有効である。温風によって物理的に水滴を飛散させ、かつ残ったわずかな水滴を蒸発させ速やかに乾燥できる。温風は水の蒸発が速やかに進行するよう120℃以上が望まれる。ただ温風の最高温度は超撥インク表面の耐熱温度未満にすることも必要である。その他レーザープリンタや複写機等のトナーの定着で用いるヒートロールを使う方法もある。この場合も超撥インク表面の温度を耐熱温度未満にすることが必要である。
【0365】
その他、コンプレッサーにより高圧の空気を版表面に吹きつけて水をほとんど飛散させることもできる。これを利用するとその後の温風等による版の加熱操作時間の短縮、温風の低温度化による省エネルギー効果も期待できる。
【0366】
ところで乾燥で加熱されすぎると引き続く現像の工程で付着したインクが転写前に乾燥してしまう場合もある。そのため潜像形成前に版を冷却する必要がでてくる場合もある。冷却は版の全面を均等に冷却するにはファンを用いることが好適である。この場合、ドライヤーの熱風の影響を抑制するため防風塀を設けることで、ドライヤーによる版の乾燥と冷却ファンによる版の冷却が効率よく行える。
以上の工程を経ることで版表面の超撥インク性が復活し新たな画像の印刷工程に移ることができるようになる。
[2] 版に潜像形成物質を塗布後、光照射、洗浄及び乾燥により潜像を形成する方法
図5に本発明の画像形成方法及び可逆再生方法を示す。
【0367】
工程は版の作製工程以降は[1]と基本的には同様の流れ(版への潜像形成→現像→転写)で行う。ただ[1]ではインクを付着させたい部分に潜像形成物質を付着させるが、[2]の場合はインクを付着させない部分に光照射する。
【0368】
また[1]と一部方法は異なるものの版の可逆再生を行う工程を設けることでレーザープリンターの感光体のように可逆再生可能な版を提供できる。
【0369】
最初に版を作製する。版34の基材の潜像形成面側は表面は用いるインクに対して超撥インク性を示す。この上に潜像形成物質形成層35を作製する。
【0370】
図5は版作製の工程を示す。
【0371】
図5(A)ではスプレー36で潜像形成物質37を含む液体を吹き付けることで潜像形成層を作製しているが、スプレー以外にディップ法やスピンコート法といった方法を用いてもよい。また潜像形成物質を含む液体に溶媒が含まれている場合はこれを揮発させる工程を追加する。揮発させる方法にはエア吹き付けや加熱等がある。
【0372】
次に現像の際、版のインクを付着させたくない部分に光を照射する。すると潜像形成物質層38の光照射された部分は水への溶解性が高まる。
【0373】
図5(B)では光源39から出力される光の方向をミラー40で制御している。次に図5(C)では洗浄槽41の洗浄液42に版を浸すと潜像形成物質層の光照射を受けた部分が溶解していく。洗浄は潜像形成物質層の光照射を受けた部分が溶解していく方法であれば良く、洗浄槽による洗浄以外にも洗浄液をスプレーで吹き付ける等でもよい。図5(D)では版を洗浄槽から引き上げ、付着した洗浄液滴43をドライヤー44等で乾燥することで版に潜像が形成した刷版が得られる。
【0374】
図5(E)ではこの刷版を水性インク45に浸すと潜像形成物質の残った部分にのみインクが付着する。図5(F)ではこれを用紙46に転写することで印刷工程は終了する。同じ画像の印刷物を複数印刷するときは、2枚目以降はすでに版に潜像が形成されているので現像と転写の工程を繰り返す。
【0375】
次に版の可逆再生は版への光照射、洗浄図5(G)及び乾燥 図5(H)により行われる。まず光源47による光照射により潜像形成物質の親水性が高まる。これを洗浄器48による洗浄で版表面から除去する。更に表面に残った水滴49をドライヤー50等で除去することができる。
【0376】
次に、図6に本発明の[2]の印刷装置で用いる版作製装置の構成を示す。
【0377】
また、図7に本発明の[2]の印刷装置で用いる刷版機の構成を示す。
【0378】
更に、図8に本発明の[2]の印刷装置の模式図を示す。
【0379】
この印刷装置の工程も図5で説明した版作製→版への潜像形成→現像→転写の流れで行われる。また版の可逆再生を行う機構を設けることでレーザープリンターの感光体のように可逆再生可能な版も提供できる。ここでは印刷装置の構成が図6〜8に分かれてあるが、これらは同じ筐体に組み込まれていてもよい。
【0380】
図6の装置では版の可逆再生の一部である洗浄の機構が組み込まれている。これを組み込むことで機密事項を印刷した際に発生する刷版の情報を消去できる利点がある。また洗浄機構を組み込まない場合は印刷装置の構成が簡素化され、しかも装置内に洗浄に伴う配管を設ける必要が無く洗浄液や廃液の漏洩の心配が無い。
【0381】
最初に図6に示す装置での版の作製を説明する。 版51の基材の潜像形成面側は表面は用いるインクに対して超撥インク性を示す。これを潜像形成物質52を含む溶液の入った塗布漕53に浸漬する。版の基材を引き上げた後、ドライヤー54で加熱して潜像形成物質を含む溶液中の溶媒を揮発させる。こうして図7の刷版機で使用する版55が作製される。
【0382】
次に図7に示す刷版機について説明する。まず版の潜像形成面に現像の際、版のインクを付着させたくない部分に光56を照射する。光は光源57よりミラー58を介して照射される。版の表面の光照射部分にある潜像形成物質は親水性が向上する。光照射後この版を洗浄液59が入った洗浄槽60に浸漬する。ここではスターラー、超音波等により洗浄液を攪拌することで、光照射を受けた潜像形成物質の除去効率が高まる。版を引き上げた後、ドライヤー61で加熱して洗浄液を除去する。こうして図8の印刷装置で使用する刷版62が作製される。
【0383】
この刷版を図8の印刷装置にセット後、この装置で現像→転写→潜像消去を行う。 まず現像では刷版に水性インク63を付着させる。水性インクはインクタンク64に入っており、ここからインク搬送ロール65とインク塗布ロール66を介して刷版に運ばれる。こうして現像が完了する。続く転写では刷版から用紙にインク67を転写する。用紙は用紙搬送ロール68によって搬送され、転写の際の刷版と用紙の圧力は転写ロール69で制御される。同じ画像の印刷物を複数印刷するときは、現像と転写の工程を繰り返す。
【0384】
次に刷版の潜像を消去する操作では光源70を刷版全面に露光しながら洗浄器71で刷版表面を洗浄して刷版上の潜像形成物質をすべて除去し潜像の消去が完了する。洗浄で発生した廃液は廃液受け72でトラップする。最後にドライヤー73で版上に残った洗浄液を除去する。こうして版の基材が再生される。そこで次に図6の版作製機で再び版を作製することで版の可逆再生が可能になる。
【0385】
以下にそれぞれの工程で用いる部材、機器とその機構について説明する。
(1)版作製
版の基材は[1]の(1−1)の版と同様の材質、形態のものが挙げられる。また潜像形成物質表面は超撥インク性である必要があるが、これは[1]の(1−2)の超撥インク塗料の塗膜を形成する方法や(1−3)の基材表面を粗化した後に撥インク材料を塗布する方法等によって形成できる。
【0386】
こうして形成された超撥インク性表面に潜像形成物質層を形成する。潜像形成物質は[1]の(2−3)に記述されている化合物が対応する。潜像形成物質層は潜像形成物質を含む液体をディップ、スプレー、スピンコート等の塗布方法により作製する。潜像形成物質が固体の際は、その固体が溶解或いは分散するような溶媒に溶解或いは分散させ、版の基材に塗布する。
【0387】
溶媒は潜像形成物質を分散するものより溶解するものの方が平坦な版を形成しやすいという点で望ましい。[1]の(2−3)に記述されている化合物を溶解させる溶媒は主に有機溶媒である。揮発性が高い場合は塗布溶液の濃度が変化しやすく、またスプレーの場合はノズルの詰まりが生じやすい。揮発性が低い場合(沸点や極性の高い溶媒)は装置の構成、工程時間等の影響を考慮して溶媒選定がなされる。
【0388】
(2)潜像形成
潜像形成は版のインクを付着させない部分に光照射して潜像形成物質を親水性にした後、水で洗浄し、光照射部分を除去する操作である。その後版を乾燥し、潜像形成が完了する。これにより潜像形成物質が除去された部分は超撥インク性となる。
【0389】
(2−1)光照射
光照射に用いる光源としてはレーザー、キセノンランプ、水銀ランプ等が挙げられる。照射光が潜像形成物質の構造変化を伴う波長の光を照射するのであれば装置には特に限定は無い。キセノンランプ、水銀ランプ等はモノクロメーターやフィルター等で必要な波長の光を表面に照射することで潜像形成物質の親水性の構造への変化を起こすことができる。照射エネルギーが小さい場合は照射時間を長くすることで対応する。微少な潜像はミラー、レンズ等を用いて精密に光照射することで対応する。
【0390】
(2−2)洗浄
洗浄は親水性の構造へ変化した潜像形成物質を除去する操作である。洗浄液は水を基本とするが、光照射により酸性の構造になるものは若干塩基性の水で、また光照射により塩基性の構造になるものは若干酸性の水で洗浄する方が洗浄効率が向上する。また潜像形成物質の構造によっては水の代わりにアルコールを用いる場合もある。
【0391】
図4では洗浄槽で洗浄しているが目的の洗浄が行われるのであれば流水等での洗浄でもよい。
【0392】
(2−3)乾燥
洗浄後、ドライヤー等で版を乾燥し刷版が作製される。
【0393】
(3)現像・転写
現像は[1]の(3)の現像と同様である。また転写も[1]の(4)の転写と同様である。
【0394】
(4)版再生機構
版の再生は光照射・洗浄→乾燥→版作製というプロセスにより行われる。このうち光照射・洗浄と乾燥は[1]の(5)版再生機構と同様である。これにより版の基材が作製される。版の作製は前述の(1)版作製と同様である。
【0395】
【作用】
本発明の画像形成方法、及び印刷装置は超撥インク性を示す版表面のインクを付着させたい部分に潜像形成物質を存在させることで潜像を形成している。次の現像工程で水性インクは潜像形成物質の付着部分にのみ付着し、潜像形成物質の付着していない部分には水性インクは付着しない。次に現像された画像を紙に転写することで印刷が完了する。
【0396】
以下同一画像を複数部作製する場合は上記潜像工程を省き現像・転写工程を行う。
【0397】
版の再生は[1]の方式では光照射・洗浄による潜像形成物質とインクの洗浄、および版の乾燥により行うことができる。
【0398】
[2]の方式ではこの後潜像形成物質層を形成する操作が加わる。これにより容易に版が形成でき、しかも版の可逆再生が可能で、更に水性インクを使用する画像形成方法、及び印刷装置を提供できる。
【0399】
本発明を実施例により更に具体的に説明する。本発明の範囲は以下に記載の実施例に限定されるものではない。
【0400】
本発明の[1]については実施例1〜9で、[2]については実施例10〜15で説明する。
[実施例1]
版の形成に用いる超撥インク塗料の作製方法を示す。油化シェル株式会社製エポキシ樹脂(EP1004)(44重量部)、丸善石油化学株式会社製フェノール樹脂(マルカリンカーM)(30重量部)、北興化学株式会社製の硬化促進剤(TEA‐K)(1重量部)をエチルメチルケトン(950重量部)と酢酸エチレングリコールモノ-n-ブチルエーテル(50重量部)の混合溶媒に溶解し、これに含フッ素化合物として化合物1(2重量部)を加え良く攪拌する。
【0401】
次に日本アエロジル株式会社製アエロジル130(平均粒径は16nm) (8重量部)と日本シリカ工業株式会社製Nipsil E―220A(平均粒径は1.5μm)(8重量部)を加え十分に攪拌する。こうして超撥インク塗料が作製される。
【0402】
次に版の作製方法を説明する。図1の1に示すL字状の持ち手(斜線の部分)の付いた厚さ1mm、寸法20×20mmのアルミニウム製の板を上記超撥インク塗料中に10秒間浸漬後、速度3cm/秒で引き上げる。この板を120℃で30分間、引き続き180℃で45分間加熱して版が作製された。版が常温まで冷えた後、版の超撥インク塗料付着部分は超撥インク性を示した。
【0403】
この版に図1の(A)に示すように潜像形成物質吐出器3から潜像形成物質2として化合物116の20wt%クロロホルム溶液を吐出させることによりこの版の上に潜像を形成する。また潜像形成物質吐出器の吐出ヘッドは内径10μm、吐出量は1×10-9cm3である。こうして水性インクを用いた印刷装置用の刷版が作製できた。なお潜像の最小ドットの大きさは直径12μmであった。
【0404】
次にこの版が刷版として機能するか否かを調べるため現像、及び紙への転写を行った。版を図1のバット中4の水性インクに浸したところ、インクは潜像形成物質の付着した部分にのみ付着し、潜像がインクにより現像された。次に現像された画像を紙5に接触させて版の上のインクを紙に転写できた。転写された画像の最小ドットの大きさは14μmであった。
【0405】
以上の本実施例より刷版は水性インクを用いて画像を形成する印刷装置の刷版として機能することを確かめた。同じ画像を複数枚作成する場合、2枚目以降は潜像形成工程を省き現像と転写だけで画像形成ができた。
【0406】
次に転写後、図1の(D)に示すように光源6で光照射しながら洗浄器7で水を版表面に吹きかけた。吹きかける水量は10g/秒で、吹きかけた時間は60分間である。すると潜像を形成している化合物116の光異性化した物質とその上に残ったインクが除去された。
【0407】
光源6は500Wキセノンランプであり、その光路に東芝ガラス株式会社製色ガラスフィルターUV―D―35を設置し、版には300〜400nmの紫外光を照射した。
【0408】
その後(E)に示すようにドライヤー8(消費電力は1000W)で熱風を30秒間あてて版を乾燥した。乾燥後の版は再び超撥インク性を示した。
【0409】
この版を用いて再び図1の(A)〜(C)の工程を行ったところ上記と同様の画像が得られた。
【0410】
以上より本実施例の刷版は洗浄・乾燥により刷版用の版に再生可能となった。これによって版を繰り返し使用でき印刷に占める版のコストを低減できる。
【0411】
[比較例1]
潜像形成物質として化合物116の20wt%クロロホルム溶液の代わりに、ポリスチレンの10wt%THF溶液を用いる以外は実施例1と同様に図1の(A)〜(E)に示す画像形成・版再生を試みた。
【化121】
Figure 0003820899
【0412】
潜像形成、現像、転写は実施例1と同様に終了した。次いで、版再生のため光照射・洗浄を行ったがポリスチレンは除去できず版の再生は不可能であった。
【0413】
本発明の刷版による画像形成には潜像形成物質が光照射によって親水性を向上する性質を持つことが必要であることが示された。
【0414】
[実施例2]
潜像形成物質として化合物116の20wt%クロロホルム溶液の代わりに、化合物117の20wt%クロロホルム溶液を用いる以外は実施例1と同様に図1の(A)〜(E)に示す画像形成・版再生を行った。その結果、化合物116を用いたときと同様な画像形成・版再生を行うことができた。
【化122】
Figure 0003820899
化合物117の20wt%クロロホルム溶液の代わりに、化合物118〜120のいずれかの化合物の20wt%クロロホルム溶液を用いる以外は実施例1と同様に図1の(A)〜(E)に示す画像形成・版再生を行った。その結果、化合物116を用いたときと同様な画像形成・版再生を行うことができた。
【化123】
Figure 0003820899
【化124】
Figure 0003820899
【化125】
Figure 0003820899
[実施例3]
潜像形成物質として化合物116の20wt%クロロホルム溶液の代わりに、化合物26の20wt%クロロホルム溶液を用いる以外は実施例1と同様に図1の(A)〜(E)に示す画像形成を行なった。潜像形成、現像、転写は実施例1と同様に終了した。その後、版再生のための光照射・洗浄を1分間行った結果、版から化合物26は除去できた。化合物26の代わりに化合物27〜60のいずれかの化合物を用いた場合も光照射・洗浄を1分間行うことで版からこれら化合物を除去できた。
【0415】
なお化合物116を用いた場合、光照射・洗浄を1分間行っただけでは版から除去できなかった。そこで光照射・洗浄の時間を10分間にしたが化合物116は版に若干残った。同様に化合物117〜120のいずれかの化合物を用いた場合も、光照射・洗浄を1分間行ったが除去できなかった。また光照射・洗浄の時間を10分間にしたがこれら化合物は版上に若干残った。
【0416】
化合物26〜60は分子内にオキシエチレン鎖を有するが、化合物116〜120は分子内にオキシエチレン鎖を有しない。このことからオキシエチレン鎖を有する化合物の方が洗浄能力が大きく潜像形成物質として好ましい。
【0417】
潜像形成物質のうちホトクロミック化合物は親水性の構造に変化しても別の波長の光を照射されたり、加熱することで紫外光照射前の構造に戻すことができる。その点で光酸発生剤・光塩基発生剤等に比べると保存の際有利である。
【0418】
本発明の印刷方法においては、刷版からの潜像形成物質の除去が容易な潜像形成物質としてその分子内にオキシエチレン鎖を有するホトクロミック化合物が好ましい。
【0419】
また、刷版も潜像形成に分子内にオキシエチレン鎖を有するホトクロミック化合物を用いることが好ましい。
【0420】
[実施例4]
刷版機構を組み込んだ印刷装置について説明する。
用いる版の作製方法は、外径20cm、長さ22cmのアルミニウム製の筒を実施例1で作製した超撥インク塗料に10秒間浸漬後、速度3cm/秒で引き上げる。このアルミニウム筒を120℃で30分間+180℃で45分間加熱する。アルミニウム筒が常温まで冷えた後、アルミニウム筒の超撥インク塗料付着部分は超撥インク性を示した。前記によりアルミニウム筒を基材とする版が作製された。
【0421】
次にこの版を図2に示す装置へ装着後、装置を印刷装置として稼動させた。
【0422】
まず、版10に潜像を形成し、これを現像し、最後に転写させる稼動の工程を説明する。
【0423】
潜像形成工程:
版のインクを付着させたい部分に向かって潜像形成物質吐出器3から潜像形成物質の一種である化合物116の20wt%クロロホルム溶液を吐出させる。なお潜像形成物質吐出器3の吐出ヘッドは内径10μm、吐出量は1×10-9cm3である。また版上に形成された潜像の最小ドットの大きさは直径12μmであった。
【0424】
現像工程:
潜像形成後、版をインク11に接触させる。インクは潜像形成物質の付着部分にのみ付着する。インクはインクタンク12にあり、インク搬送ロール13によってインク塗布ロール14に送られる。その後、インク塗布ロール14から版に塗布する。インク塗布ロール表面は目の細かいスポンジを巻いた構造になっている。
【0425】
転写工程:
インクを塗布された版からインクを用紙15に移し転写する工程である。用紙は用紙搬送ロール16を介して転写ロール17と版の間に送られる。用紙と版の距離は用紙転写ロールで適正に調整する。転写後の用紙は用紙搬送ロールで版から外される。
【0426】
本実施例の印刷装置は以上の工程を行うことで水性インクを用いた画像を形成できた。転写された画像の最小ドットの大きさは10μmであった。
【0427】
同じ画像を複数枚作成する場合、2枚目以降は潜像形成工程を省き現像と転写だけで画像形成を行うことができた。
【0428】
次に本実施例の印刷装置に用いられる刷版の版への再生について説明する。これは洗浄工程と乾燥工程からなる。
【0429】
洗浄工程:
これは版表面の潜像形成物質と水性インクを除去する工程である。これは光照射・洗浄→乾燥という工程で行われる。
【0430】
光源18から光照射された潜像形成物質は親水性の高い構造に変化する。光照射しながら洗浄器19で水を版に向かって吹き出し、版上の親水性の高い構造に変化した潜像形成物質と水性インクを洗浄する。吹きかける水量は10g/秒で時間は60分間であった。この洗浄によって潜像を形成している化合物116とその上に残ったインクが除去された。
【0431】
洗浄によって出た廃液は廃液受け20でトラップした。
【0432】
乾燥は版表面に残った水をドライヤー21の熱風で除去する。熱風はドライヤー(消費電力は1000W)で発生させ、30秒間あてて版を乾燥した。これにより版表面の超撥インク性が復活し新たな画像の印刷工程に移ることができる。なお頻繁に版の再生を行うと版が熱くなるおそれがあるので、その場合は版を冷却する個とが好ましく、このため冷却ファン22を用いることができる。 ドライヤーの熱風と冷却ファンの冷風をお互い遮るための防風塀23を設置することもできる。
以上の工程を行うことで版の再生を終了する。再生した版を用い再び潜像形成、現像、転写の工程を行ったところ再び所望の画像を紙に印刷することができた。
【0433】
本実施例の装置が版の再生機構を有する印刷装置であることを確認した。
版が再生可能になると版を繰り返し使用できるため印刷に占める版のコストを低減できる。
【0434】
[比較例2]
潜像形成物質として化合物116の20wt%クロロホルム溶液の代わりに、ポリスチレンの10wt%THF溶液を用いる以外は実施例3と同様に図2の印刷装置で画像形成・版再生を試みた。
【0435】
潜像形成、現像、転写は実施例4と同様に終了した。しかしその後、版再生のため光照射、洗浄を行ったがポリスチレンは除去できず版の再生は不可能であった。
【0436】
このことから本発明の印刷装置による画像形成には潜像形成物質が光照射によって親水性が向上する性質を持つことが必要であることが示された。
【0437】
[実施例5]
潜像形成物質として化合物116の20wt%クロロホルム溶液の代わりに、化合物117の20wt%クロロホルム溶液を用いる以外は実施例4と同様に図2の印刷装置で画像形成、版再生を行った。その結果、化合物116を用いた場合と同様な画像形成・版再生ができた。
【0438】
化合物117の20wt%クロロホルム溶液の代わりに、化合物118〜120のいずれかの化合物の20wt%クロロホルム溶液を用いる以外は実施例4と同様に図2の印刷装置で画像形成、版再生を行った。その結果、化合物116を用いたときと同様な画像形成・版再生をできた。
【0439】
[実施例6]
潜像形成物質として化合物116の20wt%クロロホルム溶液の代わりに、化合物26の20wt%クロロホルム溶液を用いる以外は実施例4と同様に図2の印刷装置で画像形成を行った。潜像形成、現像、転写は実施例4と同様に終了した。その後、版再生のため光照射・洗浄を1分間行うことにより版から化合物26を除去できた。
【0440】
化合物26の代わりに化合物27〜60のいずれかの化合物を用いた場合も、光照射、洗浄を1分間行い版からこれら化合物を除去できた。
【0441】
なお化合物116を用いた場合、光照射、洗浄を1分間行っただけでは版から除去できなかった。そこで光照射、洗浄の時間を10分間にしたが化合物116は版に若干残った。
【0442】
同様に化合物117〜120のいずれかの化合物を用いた場合も、光照射、洗浄を1分間行ったが除去できなかった。また光照射、洗浄の時間を10分間にしたがこれら化合物は版上に若干残った。
【0443】
上記の化合物26〜60は分子内にオキシエチレン鎖を有するが化合物116〜120は分子内にオキシエチレン鎖を有していない。このことからオキシエチレン鎖を有する化合物の方が洗浄能力が高い。
【0444】
潜像形成物質のうちホトクロミック化合物は親水性の構造に変化しても別の波長の光を照射されたり、加熱することで紫外光照射前の構造に戻すことができる。その点で光酸発生剤・光塩基発生剤等に比べると保存の際有利である。
【0445】
以上より本発明の印刷装置においては、潜像形成物質として分子内にオキシエチレン鎖を有するホトクロミック化合物が好ましい。
【0446】
[実施例7]
実施例4で作製した版10を図9に示す装置へ装着後、以下の工程に従い印刷装置として稼動させた。
【0447】
潜像形成工程:
版のインクを付着させたい部分に向かって3の潜像形成物質吐出器から潜像形成物質の一種である化合物116の20wt%クロロホルム溶液を吐出させる。なお潜像形成物質吐出器の吐出ヘッドは内径10μm、吐出量は1×10-9cm3である。また版上に形成された潜像の最小ドットの大きさは直径12μmであった。
【0448】
現像工程:
潜像形成後、版をインク74に接触させる。インクは潜像形成物質の付着部分にのみ付着する。インクはインクタンク75にあり、インク搬送ロール76によってインク塗布ロール77に送られる。その後、インク塗布ロールから版に塗布する。インク塗布ロール表面は目の細かいスポンジを巻いた構造になっている。
【0449】
転写工程:
インクを塗布された版からインクを用紙78に移し、転写する工程である。用紙は用紙搬送ロール79を介して転写ロール80と版の間に送られる。用紙と版の距離は用紙転写ロールで適正に調整する。転写後の用紙は用紙搬送ロールで版から外される。
【0450】
本実施例の印刷装置は以上の工程を行うことで実施例4と同様に水性インクを用いた画像を形成できた。転写された画像の最小ドットの大きさは10μmであった。
【0451】
同じ画像を複数枚作成する場合、実施例4と同様に2枚目以降は潜像形成工程を省き現像と転写だけで画像形成を行うことができた。
【0452】
次に本実施例の印刷装置における刷版から版の再生について記述する。これは洗浄工程と乾燥工程からなる。実施例4との違いは洗浄に蒸気を用いる点である。
【0453】
洗浄工程:
これは刷版表面の潜像形成物質と水性インクを除去する工程である。これは光照射・洗浄→乾燥という工程で行われる。光源81から光照射された潜像形成物質は親水性の高い構造に変化する。光照射しながら蒸気噴出口82より蒸気を版に向かって吹き出し、版上の親水性の高い構造に変化した潜像形成物質と水性インクを洗浄する。吹きかける蒸気量は1g/秒で、時間は10分間である。すると潜像を形成している化合物116の光異性化した物質とその上に残ったインクが除去された。
【0454】
洗浄した廃液は廃液受け83でトラップする。廃液は配管84を通って廃液加熱槽85に導かれる。ここではヒーター86で廃液が加熱され蒸気となる。こうして発生した蒸気のうち洗浄に用いられるものは蒸気導入管87を通って蒸気噴出口より噴出される。
【0455】
残りは蒸気放出管88を通って装置外へ放出される。この蒸気量の制御は蒸気制御弁89で行われる。
【0456】
乾燥はドライヤー90からの熱風で行う。これにより版表面の超撥インク性が復活し新たな画像の印刷工程に移ることができる。頻繁に版の再生を行うと版が熱くなる場合があるので、版を冷却するため冷却ファン91を用いる。またドライヤーの熱風と冷却ファンの冷風をお互い遮るための防風塀92を設置している。
【0457】
本実施例の印刷装置は以上の工程を行うことで版の再生を終了する。再生した版を用い再び潜像形成、現像、転写の工程を行ったところ再び所望の画像を紙に印刷できた。
【0458】
実施例4との比較から、洗浄に用いる水量は蒸気を用いれば低減できる。また用いる蒸気も水として回収することで廃液を少なくすることができる。
【0459】
[実施例8]
潜像形成物質として化合物116の20wt%クロロホルム溶液の代わりに、化合物117の20wt%クロロホルム溶液を用いる以外は実施例7と同様に図9の印刷装置で画像形成・版再生を行った。その結果、化合物116を用いたときと同様な画像形成・版再生を行うことができた。
【0460】
化合物117の20wt%クロロホルム溶液の代わりに、化合物118〜120のいずれかの化合物の20wt%クロロホルム溶液を用いる以外は実施例5と同様に図9の印刷装置で画像形成・版再生を行った。その結果、化合物116を用いたときと同様な画像形成・版再生を行うことができた。
【0461】
[実施例9]
潜像形成物質として化合物116の20wt%クロロホルム溶液の代わりに、化合物26の20wt%クロロホルム溶液を用いる以外は実施例7と同様に図9の印刷装置で画像形成を行った。潜像形成、現像、転写は実施例7と同様に終了した。その後、版再生のため光照射、蒸気洗浄を20秒間行うことで版から化合物26は除去できた。
【0462】
化合物26の代わりに化合物27〜60のいずれかの化合物を用いた場合も、光照射・蒸気洗浄を20秒間行うことで版からこれら化合物を除去できた。
【0463】
なお化合物116を用いた場合、光照射・洗浄を20秒間行っただけでは版から除去できなかった。そこで光照射・洗浄の時間を1分間にしたが化合物116は版に若干残った。同様に化合物117〜120のいずれかの化合物を用いた場合も、光照射・蒸気洗浄を20秒間行ったが除去できなかった。また光照射・蒸気洗浄の時間を1分間にしたがこれら化合物は版上に若干残った。
【0464】
上記の化合物26〜60は分子内にオキシエチレン鎖を有するが、化合物116〜120は分子内にオキシエチレン鎖を有していない。このことからオキシエチレン鎖を有する化合物の方が洗浄能力が高く好ましい。
【0465】
潜像形成物質のうちホトクロミック化合物は親水性の構造に変化しても別の波長の光を照射されたり、加熱することで紫外光照射前の構造に戻すことが可能である。その点で光酸発生剤、光塩基発生剤等に比べると保存の際有利である。
【0466】
以上より本発明の印刷装置においては、蒸気洗浄を用いた場合でも潜像形成物質としては分子内にオキシエチレン鎖を有するホトクロミック化合物の方が好ましい。
【0467】
[実施例10]
図5を用いて本発明の[2]の画像形成方法について説明する。
【0468】
始めに版の作製方法を説明する。実施例1の版が本実施例の版の基材となる。この上に潜像形成物質形成層を作製する。スプレーで潜像形成物質(本実施例では化合物116の20wt%クロロホルム溶液)を含む液体を吹き付けた後、1分間放置してクロロホルムを揮発させ、潜像形成物質形成層を作製する。
【0469】
次に現像の際、版のインクを付着させたくない部分に光を照射する。工程は光源として500Wキセノンランプを用い、ここから出力される光を東芝ガラス株式会社製色ガラスフィルターUV―D―35を通して凹面鏡に導き、直径1mmに集光させた後ポリゴンミラーで版のインクを付着させたい部分に照射するというものである。照射光量は10 mW/cm2である。
【0470】
次に洗浄槽の洗浄液に版を浸すと潜像形成物質層の光照射を受けた部分が溶解していく。なお版を浸漬中(浸漬時間は3時間)は洗浄槽は超音波洗浄機で攪拌しておく。版を洗浄槽から引き上げ、付着した洗浄液滴をドライヤー(消費電力は1000W)で乾燥することで版に潜像が形成した刷版が完成する。
【0471】
この刷版を水性インクに浸すと潜像形成物質の残った部分にのみインクが付着する。これを用紙に転写したところ画像が用紙に転写された。同じ画像の印刷物を複数印刷するときは、2枚目以降はすでに版に潜像が形成されているので現像と転写の工程を繰り返すことで必要な枚数の画像を形成した用紙を作製できる。
【0472】
次に刷版の版への再生を行う。まず光源として500Wキセノンランプを用い、ここから出力される光を上記の色ガラスフィルターUV―D―35を通して使用済みの版に光を照射する。光照射中、洗浄器により版に水をかけ、潜像形成物質層と版に残ったインクを除去した。なお光照射、洗浄に要した時間は60分間で水量は10g/秒であった。更に表面に残った水滴を1000Wのドライヤーで加熱除去して版の基材を再生ができた。再生した版の基材は再び潜像形成物質を塗布して版として用いることができることを確認した。版が再生できると版を繰り返し使用できるため印刷に占める版のコストを低減できる。
【0473】
[比較例3]
潜像形成物質として化合物116の20wt%クロロホルム溶液の代わりに、ポリスチレンの10wt%THF溶液を用いる以外は実施例10と同様に図5の(A)〜(H)に示す画像形成・版再生を試みた。
【0474】
しかし潜像形成のため光を照射後、洗浄液で洗浄を行ったが光照射部分のポリスチレンを除去できなかった。光照射量を10倍にしたもポリスチレンを除去できなかった。
以上の結果より、本発明の刷版による画像形成には潜像形成物質が光照射によって親水性を向上する性質を持つことが好ましい。
【0475】
[実施例11]
潜像形成物質として化合物116の20wt%クロロホルム溶液の代わりに、化合物117の20wt%クロロホルム溶液を用いる以外は実施例10と同様に図5の(A)〜(H)に示す画像形成・版再生を行った。その結果、化合物116を用いたときと同様な画像形成・版再生を行うことができた。
【0476】
化合物117の20wt%クロロホルム溶液の代わりに、化合物118〜120のいずれかの化合物の20wt%クロロホルム溶液を用いる以外は実施例10と同様に図5の(A)〜(H)に示す画像形成・版再生を行った。その結果、化合物116を用いたときと同様な画像形成・版再生を行うことができた。
【0477】
[実施例12]
潜像形成物質として化合物116の20wt%クロロホルム溶液の代わりに、化合物26の20wt%クロロホルム溶液を用いる以外は実施例10と同様に図5の(A)〜(H)に示す画像形成・版再生を行った。
【0478】
ここで潜像形成の際、光照射の後、洗浄液に3分間浸漬しただけで潜像形成物質層の光照射部分を除去できた。化合物26の代わりに化合物27〜60のいずれかの化合物を用いた場合も、浸漬時間が3分間で光照射部分を除去できた。
【0479】
なお化合物116を用いた場合、浸漬を3分間行っただけでは版から除去できなかった。浸漬時間を30分間にしたが化合物116は版に若干残った。
【0480】
同様に化合物117〜120のいずれかの化合物を用いた場合も、浸漬を1分間行ったが除去できなかった。また浸漬時間を10分間にしたがこれら化合物は版上に若干残った。
【0481】
続いて画像形成の操作を行ったが化合物116の代わりに化合物26〜60のいずれかの化合物を用いた場合でも、化合物116を用いた場合と同様の画像形成が可能であった。
【0482】
次に化合物116の代わりに化合物26〜60のいずれかの化合物を用いた場合の版の再生を行った。その際、吹きかける水量は10g/秒で、光照射、洗浄時間に要する時間はいずれの化合物を用いた場合でも1分間以下であった。
【0483】
なお化合物116を用いた場合、光照射、洗浄を1分間行っただけでは版から除去できなかった。そこで光照射・洗浄時間を10分間にしたが化合物116は版に若干残った。
【0484】
同様に化合物117〜120のいずれかの化合物を用いた場合も、光照射、洗浄を1分間行ったが除去できなかった。また光照射と洗浄の時間をそれぞれ10分間にしたが、これら化合物は版上に若干残った。
【0485】
化合物26〜60は分子内にオキシエチレン鎖を有するが化合物116〜120は分子内にオキシエチレン鎖を有していない。このことからオキシエチレン鎖を有する化合物の方が浸漬時、及び光照射、洗浄時の除去が容易である。
【0486】
なお潜像形成物質のうちホトクロミック化合物は親水性の構造に変化しても別の波長の光を照射されたり、加熱することで紫外光照射前の構造に戻すことができる。
【0487】
以上より本発明の印刷方法において、潜像形成物質として分子内にオキシエチレン鎖を有するホトクロミック化合物が適することが示された。
また刷版としても潜像形成に分子内にオキシエチレン鎖を有するホトクロミック化合物を用いることが有効であることが示された。
【0488】
[実施例13]
刷版機構を組み込んだ印刷装置について以下に説明する。
最初に図6に示す装置での版の作製を説明する。実施例4の版が本実施例の版の基材になる。これを潜像形成物質を含む溶液(化合物116の20wt%クロロホルム溶液)の入った塗布漕に10秒間浸漬する。版の基材を引き上げた後、1000Wドライヤーで加熱して潜像形成物質を含む溶液中の溶媒を揮発させる。こうして図7の刷版機で使用する版が作製された。
【0489】
次に図7で刷版機について説明する。まず版の潜像形成面に現像の際、版のインクを付着させたくない部分に光を照射する。光は光源よりミラーを介して照射される。光照射条件は実施例10の(B)の工程と同様である。
【0490】
光照射後この版を洗浄液が入った洗浄槽60に浸漬する。なお版を浸漬中は洗浄槽は超音波洗浄機で攪拌しておく。浸漬時間は3時間である。版を引き上げた後、1000Wのドライヤーで加熱して洗浄液を除去する。この操作条件は実施例10の(C)の工程と同様である。こうして図8の印刷装置で使用する刷版が作製される。
【0491】
この刷版を図8の印刷装置にセット後、この装置で現像→転写→潜像消去を行う。まず現像では刷版に水性インクを付着させる。水性インクはインクタンクに入っており、ここからインク搬送ロールとインク塗布ロールを介して刷版に運ばれる。こうして現像が完了する。続く転写では刷版から用紙にインクを転写する。用紙は用紙搬送ロールによって搬送され、転写の際の刷版と用紙の圧力は転写ロールで制御される。同じ画像の印刷物を複数印刷するときは、現像と転写の工程を繰り返す。
【0492】
次に刷版の潜像を消去する操作では光源を刷版全面に露光しながら洗浄器で刷版表面を洗浄する。なお光照射・洗浄に要した時間は60分間であり、吹きかける水量は10g/秒であった。
【0493】
こうして刷版上の潜像形成物質をすべて除去する。この操作条件は実施例10の(G)の工程と同様である。この工程を経ることで潜像の消去が完了する。洗浄で発生した廃液は廃液受けでトラップする。最後に1000Wドライヤーで版上に残った洗浄液を除去する。こうして版の基材が再生される。そこで次に図6の版作製機で再び版を作製した。
再生した版を用い再び潜像形成、現像、転写の工程を行ったところ再び所望の画像を紙に印刷することができた。
【0494】
この結果より本実施例の装置が版の再生機構を有する印刷装置であることが確認された。
【0495】
版が再生できることは版を繰り返し使用できるため印刷に占める版のコストを低減できる。
【0496】
[比較例4]
潜像形成物質として化合物116の20wt%クロロホルム溶液の代わりに、ポリスチレンの10wt%THF溶液を用いる以外は実施例13と同様に図6〜8の印刷装置で画像形成、版再生を試みた。しかし光照射後洗浄を行うと光を照射している部分は除去できなかった。そこで光照射量を10倍にしたがポリスチレンを除去できなかった。
【0497】
このことから本発明の刷版による画像形成には潜像形成物質が光照射によって親水性が向上する性質を持つことが必要でありことが示された。
【0498】
[実施例14]
潜像形成物質として化合物116の20wt%クロロホルム溶液の代わりに、化合物117の20wt%クロロホルム溶液を用いる以外は実施例13と同様に図6〜8の印刷装置で画像形成・版再生を行った。その結果、化合物116を用いたときと同様な画像形成・版再生を行うことができた。
【0499】
化合物117の20wt%クロロホルム溶液の代わりに、化合物118〜120のいずれかの化合物の20wt%クロロホルム溶液を用いる以外は実施例13と同様に図6〜8の印刷装置で画像形成、版再生を行った。その結果、化合物116を用いたときと同様な画像形成・版再生ができた。
【0500】
[実施例15]
潜像形成物質として化合物116の20wt%クロロホルム溶液の代わりに、化合物26の20wt%クロロホルム溶液を用いる以外は実施例13と同様に図6〜8の印刷装置で画像形成、版再生を行った。
【0501】
ここで潜像形成の際、光照射の後、洗浄液に3分間浸漬しただけで潜像形成物質層の光照射部分を除去できた。化合物26の代わりに化合物27〜60のいずれかの化合物を用いた場合も、浸漬時間が3分間で光照射部分を除去できた。
【0502】
なお化合物116を用いた場合、浸漬を3分間行っただけでは版から除去できなかった。そこで浸漬時間を30分間に変更したが化合物116は版に若干残った。同様に化合物117〜120のいずれかの化合物を用いた場合も、浸漬を1分間行ったが除去できなかった。また浸漬時間を10分間にしたがこれら化合物は版上に若干残った。
【0503】
続いて画像形成の操作を行ったが化合物116の代わりに化合物26〜60のいずれかの化合物を用いた場合でも、化合物116を用いた場合と同様の画像形成が可能であった。
【0504】
次に化合物116の代わりに化合物26〜60のいずれかの化合物を用いた場合の版の再生を行った。その際、吹きかける水量は10g/秒で、光照射、洗浄時間に要する時間はいずれの化合物を用いた場合でも1分間以下であった。
【0505】
なお化合物116を用いた場合、光照射、洗浄を1分間行っただけでは版から除去できなかった。そこで光照射と洗浄時間をそれぞれ10分間に変更したが、化合物116は版に若干残った。同様に化合物117〜120のいずれかの化合物を用いた場合も、光照射、洗浄を1分間行ったが除去できなかった。また光照射、洗浄の時間を10分間にしたがこれら化合物は版上に若干残った。
【0506】
化合物26〜60は分子内にオキシエチレン鎖を有するが化合物116〜120は分子内にオキシエチレン鎖を有していない。このことからオキシエチレン鎖を有する化合物の方が浸漬時、及び光照射、洗浄時の除去が容易である。
【0507】
なお潜像形成物質のうちホトクロミック化合物は親水性の構造に変化しても別の波長の光を照射されたり、加熱することで紫外光照射前の構造に戻すことができる。
【0508】
以上より本発明の印刷装置においては潜像形成物質として分子内にオキシエチレン鎖を有するホトクロミック化合物が好ましい。
【0509】
【発明の効果】
本発明により、版の形成が容易に行え、形成される潜像が安定であり、しかもその版を可逆再生できる印刷装置、及び刷版を提供することが可能となった。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の[1]の画像形成方法を示す模式図である。
【図2】本発明の[1]の印刷装置の構成を示す模式図である。
【図3】本発明の印刷装置に装着される潜像形成物質吐出器の模式図である。
【図4】本発明の潜像形成物質に用いるホトクロミック化合物の構造変化例である。
【図5】本発明の[2]の画像形成方法を示す模式図である。
【図6】本発明の[2]の印刷装置で用いる版作製装置の構成図である。
【図7】本発明の[2]の印刷装置で用いる刷版機の構成図である。
【図8】本発明の[2]の印刷装置の模式図である。
【図9】本発明の蒸気洗浄機構を有する印刷機の構成図である。
【符号の説明】
1…版、2…潜像形成物質、3…潜像形成物質吐出器、4…水性インク、5…紙、6…光源、7…洗浄器、8…水滴、9…ドライヤー、10…版、11…インク、12…インクタンク、13…インク搬送ロール、14…インク塗布ロール、15…用紙、16…用紙搬送ロール、17…転写ロール、18…光源、19…洗浄器、20…廃液受け、21…ドライヤー、22…冷却ファン、23…防風塀、24…ノズル、25…タンク、26…スポンジ、27…ダイヤフラム、28…薄膜、29…圧電素子、30…圧電素子制御系、31…プーリー、32…ベルト、33…ガイドレール、34…版の基材、35…潜像形成物質形成層、36…スプレー、37…潜像形成物質を含む液体、38…潜像形成物質層の光照射された部分、39…光源、40…ミラー、41…洗浄槽、42…洗浄液、43…洗浄液滴、44…ドライヤー、45…水性インク、46…用紙、47…光源、48…洗浄器、49…水滴、50…ドライヤー、51…版の基材、52…潜像形成物質を含む溶液、53…塗布漕、54…ドライヤー、55…版、56…光、57…光源、58…ミラー、59…洗浄液、60…洗浄槽、61…ドライヤー、62…刷版、63…水性インク、64…インクタンク、65…インク搬送ロール、66…インク塗布ロール、67…用紙、68…用紙搬送ロール、69…転写ロール、70…光源、71…洗浄器、72…廃液受け、73…ドライヤー、74…インク、75…インクタンク、76…インク搬送ロール、77…インク塗布ロール、78 …用紙、79…用紙搬送ロール、80…転写ロール、81…光源、82…蒸気噴出口、83…廃液受け、84…配管、85…廃液加熱漕、86…ヒーター、87…蒸気導入管、88…蒸気放出管、89…蒸気制御弁、90…ドライヤー、91…冷却ファン、92…防風塀。

Claims (10)

  1. 基材上に超撥インク性の表面を形成した版に親インク性であり、且つ光照射によって親水性に変化する潜像形成物質を付着させることにより潜像を形成して刷版とし、前記刷版の潜像に水性インクを付着させて転写する工程を繰り返すように使用し、その後、前記刷版上の潜像を光照射、水洗浄及び乾燥することによって消去することができ、再び潜像形成物質を付着させて新たな潜像を形成することによって新たな刷版に変換可能な印刷装置用刷版において、
    前記版に付着して潜像を形成する前記潜像形成物質が分子内に繰り返し単位がオキシエチレン鎖からなる部分を有するホトクロミック化合物を含むことを特徴とする刷版。
  2. 水性インクを用いる印刷装置用刷版の作製方法において、
    基材上に超撥インク性の表面を形成した版の該表面上に、光照射されることによって光照射前に比べて親水性に変化する潜像形成物質を付着させて潜像を形成して刷版とする作製方法であって、前記潜像形成物質が分子内に繰り返し単位がオキシエチレン鎖からなる部分を有するホトクロミック化合物を含むことを特徴とする刷版作製方法。
  3. 基材上に超撥インク性の表面を形成した版と、前記版の超撥インク性の表面に潜像形成物質を付着させて潜像を形成して刷版とする機構と、前記刷版の潜像に水性インクを付着させ現像する機構と、現像された画像を紙に転写する機構と、現像と転写の工程終了後した後に前記刷版に体して光照射工程と水洗浄工程及び乾燥工程により新たな潜像が形成可能な版を再生する機構を備えた印刷装置において、
    前記潜像形成物質が分子内に繰り返し単位がオキシエチレン鎖からなる部分を有するホトクロミック化合物を含むことを特徴とする印刷装置。
  4. 水性インクを用いる印刷装置用刷版において、
    前記刷版上の潜像のインク付着部分が親インク性であり、潜像のインクを付着しない部分が超撥インク性であり、該潜像が光照射により親水性に変化する潜像形成物質の層を形成後、該層のインクを付着させたくない部分に光照射し、洗浄及び乾燥により形成され、現像、転写の工程終了後、該潜像が光照射工程、水洗浄工程及び乾燥工程により消去でき、更に新たな潜像を形成するため該潜像形成物質の層を形成後、該層のインクを付着させたくない部分に光照射し洗浄、乾燥することで新たな潜像を有する刷版に変換可能であることを特徴とする刷版。
  5. 請求項において、前記潜像形成物質が分子内に繰り返し単位がオキシエチレン鎖からなる部分を有するホトクロミック化合物を含むことを特徴とする刷版。
  6. 水性インクを用いる印刷装置用刷版作製方法において、該刷版を作製するための版は表面に光を照射されることで光照射前に比べて親水性に変化する潜像形成物質の層及びその下に用いるインクに対しては超撥インク性を示し且つ該潜像形成物質を付着させることができる層が形成されており、且つ潜像形成の際は版のインクを付着させたくない部分に光照射した後、該版を洗浄し乾燥後に潜像を形成することで該刷版を作製することを特徴とする刷版作製方法。
  7. 請求項において、潜像形成物質が分子内に繰り返し単位がオキシエチレン鎖からなる部分を有するホトクロミック化合物を含むことを特徴とする刷版作製方法。
  8. 少なくとも版と、該版に潜像を形成して刷版とする機構と、該刷版にインクを付着させ現像を行う機構と、該現像された画像を紙に転写する機構を備え、且つ該インクが水性インクである印刷装置において、版の潜像形成前は表面に光を照射されることで光照射前に比べて親水性に変化する化合物を含む層及びその下に用いるインクに対しては超撥インク性を示し且つ潜像形成物質を付着させることができる層が形成されており、且つ潜像形成の際は版のインクを付着させたくない部分に光照射した後該版を洗浄し乾燥することで潜像を形成し、引き続く現像、転写の工程終了後、該刷版に光照射、及び水で洗浄し乾燥後、新たに該光を照射されることで光照射前に比べて親水性に変化する化合物を含む層を形成することで新たな潜像を形成可能な状態に再生する機構を有していることを特徴とする印刷装置。
  9. 請求項において、潜像形成物質が分子内に繰り返し単位がオキシエチレン鎖からなる部分を有するホトクロミック化合物を含むことを特徴とする印刷装置。
  10. 請求項において、前記洗浄で発生した廃液を加熱し蒸気を発生させる機構が付加されていることを特徴とする印刷装置。
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