JP4032444B2 - 光制御可能な超撥水表面を有する物品、並びにそれを用いた印刷機 - Google Patents

光制御可能な超撥水表面を有する物品、並びにそれを用いた印刷機 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は超撥水表面を有する物品、その物品を原版、或いは感光体の部材として用いた印刷機に関する。
【0002】
【従来の技術】
水を撥く撥水表面を作成するには通常水を良く撥く材料、例えば長鎖脂肪酸,含フッ素の長鎖脂肪酸,ワックス等を表面に塗布や蒸着といった処理をすることが行われる。これにより処理する表面が平滑の場合、水との接触角は80〜 120°程度にすることができる。このような水を撥く性質を利用して現在、傘,自動車の窓ガラス,屋根,パラボラアンテナ等の幅広い分野に撥水技術が用いられている。
【0003】
更に接触角を高めるためには上記材料を塗布する面に適当な凹凸を持たせることによってそれ以上の接触角を持たせることが可能となる。このような方法によりその表面の水との接触角を150°以上にすることが可能となる。
【0004】
一般に水との接触角が150°以上の場合その表面は超撥水であると言われている。この表面では水は真球に近くなるため、その面がわずかに傾くとビー玉のようにころがるようになる。また超撥水性を示す表面を持つ物品を水に入れると観察する角度によっては超撥水性を示す表面が鏡面となる。超撥水を示す例としては例えば植物の葉が挙げられる。多くの植物の葉は表面のワックス成分の凹凸によって水との接触角を150°以上に保っており、朝露等の水滴が葉から転がっていく光景は多くの人々が目にするところである。
【0005】
これを利用してエアコンの凝縮器のフィンや無線用のアンテナ等の超撥水化の検討が行われている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
ところでこの超撥水表面を部分的に形成、或いは解消することができれば、即ち表面の超撥水性を制御できれば水性インキによる印刷の高画質化やレジストの微細加工技術への適応範囲の拡大という点で重要である。このことが可能になれば、例えば超撥水性を示す表面に光を部分的に照射して撥水性を低下させると、超撥水性を示す部分との間で水性インクの付着性に差が生じる。即ち撥水性の差異による潜像が形成されることになる。そこでこれを感光体とする印刷機が構成可能となる。また上記潜像に水性の樹脂を付着させ、乾燥させることでその部分が樹脂が付着した分だけ盛り上がり、印刷機の原版とすることができる。このように光で超撥水性を制御することは、上記のような新規の印刷技術開発において重要である。また、この原理は撥油性の制御にも応用でき、油性インクの使用も可能となる。
【0007】
本発明の目的は光によって超撥水性を示す表面を有する物品の超撥水性を制御することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
発明者らは超撥水性を示す表面を形成する際にフォトクロミック化合物や光により酸や塩基を発生させる材料、即ち何らかの光感応性の材料を用いることによってその物品の表面の超撥水性を制御できることを見出した。
【0009】
前記目的を達成する本発明の要旨は下記の通りである。
【0010】
(1)
少なくとも水に対する接触角が150°以上の表面を有する物品において該表面に光を照射することによって該表面の水との接触角が150°未満になることを特徴とする物品。
【0011】
(2)
(1)において、前記物品の接触角を変化させる照射光が400nm未満の波長の紫外光であることを特徴とする物品。
【0012】
(3)
(1)、或いは(2)において、前記物品の光を照射することによって該表面の水との接触角が150°未満になる該表面上にフォトクロミック化合物が塗布されていることを特徴とする物品。
【0013】
(4)
(3)において、前記フォトクロミック化合物がトリフェニルメタン誘導体であることを特徴とする物品。
【0014】
(5)
(1)から(4)において、前記物品の光を照射することによって該表面の水との接触角が150°未満になる該表面上に光照射を受けて酸、或いは塩基を発生する化合物が塗布されていることを特徴とする物品。
【0015】
(6)
(1)、或いは(2)において、前記物品の光を照射することによって該表面の水との接触角が150°未満になる該表面を形成する部材中にフォトクロミック化合物が含有されていることを特徴とする物品。
【0016】
(7)
(6)において、前記フォトクロミック化合物がアゾベンゼン誘導体であることを特徴とする物品。
【0017】
(8)
(1)から(7)において、前記物品の光を照射することによって該表面の水との接触角が150°未満になる該表面を形成する部材中に2種類以上の微粒子が分散されており、そのうち最も小さなものの平均粒径が最も大きなものの平均粒径の1/50〜1/1000であることを特徴とする物品。
【0018】
(9)
(8)において平均粒径の小さい方の微粒子の材質が酸化珪素,酸化アルミニウム、或いは酸化チタンであることを特徴とする物品。
【0019】
(10)
(1)から(9)において、前記物品の光を照射することによって該表面の水との接触角が150°未満になる該表面を形成する部材中に下式で示される含フッ素化合物が含有されていることを特徴とする物品。
【0020】
【化3】
Figure 0004032444
【0021】
(11)
(1)から(10)において、光を照射されることにより水との接触角が150°未満になる前記物品の該表面が、該光を照射されることにより水との接触角が 150°未満になった後、100℃以上の加熱を加えられることによって、該表面の水との接触角が150°以上になることを特徴とする物品。
【0022】
(12)
(11)において、光を照射されることにより水との接触角が150°未満になる前記物品の該表面が、該光を照射されることにより水との接触角が150°未満になった後、該表面に400nm以上の波長の可視光を照射した後、100℃以上の加熱を加えられることによって、該表面の水との接触角が150°以上になることを特徴とする物品。
【0023】
(13)
(11)において、光を照射されることにより水との接触角が150°未満になる前記物品の該表面が、該光を照射されることにより水との接触角が150°未満になった後、該表面にpH13以上の水溶液を接触させた後、100℃以上の加熱を加えられることによって、該表面の水との接触角が150°以上になることを特徴とする物品。
【0024】
(14)
少なくとも光照射前の水に対する接触角が150°以上であって、光照射によって水との接触角が150°未満になる表面を有する部材を原版、或いは感光体として用いることを特徴とする印刷機。
【0025】
(15)
(14)において、前記印刷機の原版、或いは感光体の該表面の接触角を変化させる照射光が400nm未満の波長の紫外光であることを特徴とする印刷機。
(16)
(14)、或いは(15)において、前記印刷機の原版、或いは感光体上にフォトクロミック化合物が塗布されていることを特徴とする印刷機。
【0026】
(17)
(16)記載のフォトクロミック化合物がトリフェニルメタン誘導体であることを特徴とする印刷機。
【0027】
(18)
(14)、或いは(15)において、前記印刷機の原版、或いは感光体上に光照射を受けて酸、或いは塩基を発生する化合物が塗布されていることを特徴とする印刷機。
【0028】
(19)
(14)、或いは(15)において、前記印刷機の原版、或いは感光体を形成する部材中にフォトクロミック化合物が含有されていることを特徴とする印刷機。
【0029】
(20)
(19)において、前記フォトクロミック化合物がアゾベンゼン誘導体であることを特徴とする印刷機。
【0030】
(21)
(14)から(20)において、前記印刷機の原版、或いは感光体を形成する部材中に2種類以上の微粒子が分散されており、そのうち最も小さなものの平均粒径が最も大きなものの平均粒径の1/50〜1/1000であることを特徴とする印刷機。
【0031】
(22)
(21)において平均粒径の小さい方の微粒子の材質が酸化珪素,酸化アルミニウム、或いは酸化チタンであることを特徴とする印刷機。
【0032】
(23)
(14)から(22)において、前記印刷機の原版、或いは感光体を形成する部材中に下式で示される含フッ素化合物が含有されていることを特徴とする印刷機。
【0033】
【化4】
Figure 0004032444
【0034】
(24)
(14)から(23)において、前記印刷機の原版、或いは感光体の該表面が、光を照射されることにより水との接触角が150°未満になった後、100℃以上の加熱を加えられることによって、該表面の水との接触角が150°以上になることを特徴とする印刷機。
【0035】
(25)
(24)において、光を照射されることにより水との接触角が150°未満になる前記印刷機の原版、或いは感光体の該表面が、該光を照射されることにより水との接触角が150°未満になった後、該表面に400nm以上の波長の可視光を照射した後、100℃以上の加熱を加えられることによって、該表面の水との接触角が150°以上になることを特徴とする印刷機。
【0036】
(26)
(24)において、光を照射されることにより水との接触角が150°未満になる前記印刷機の原版、或いは感光体の該表面が、該光を照射されることにより水との接触角が150°未満になった後、該表面にpH13以上の水溶液を接触させた後、100℃以上の加熱を加えられることによって、該表面の水との接触角が150°以上になることを特徴とする印刷機。
【0037】
【発明の実施の形態】
1.本発明の概念・構成について
本発明の物品において光によって超撥水性が制御される表面の形成方法は種々考えられるが、ここではそのうち2つの例(下記▲1▼と▲2▼)を示し、本発明の概念・構成を説明する。
【0038】
▲1▼超撥水表面上に光感応材料の層を形成させる方法
まず表面に凹凸を形成させるための微粉末,表面の撥水性を向上させるための含フッ素化合物、そしてこれらの保持体である樹脂を溶剤に懸濁させる。この際微粉末の分散を高めるために界面活性剤を少量加える。この懸濁液を物品の超撥水性を示させたい表面に塗布後、加熱、或いは減圧等の方法により溶剤を揮発させる。樹脂として熱硬化性のものを用いる場合は硬化に必要な温度で必要時間加熱する。微粉末の粒径・配合量,含フッ素化合物の種類・配合量,樹脂の種類と配合量,用いる溶剤の種類等を適正化することにより上記表面が超撥水性を示すようになる。適正化の例としては後述の材料や実施例に示すものが挙げられる。なお材料によっては含フッ素化合物を混ぜない懸濁液を用いて凹凸のある表面を作製した後、含フッ素化合物を塗布する方法でも良い。
【0039】
次にフォトクロミック化合物,酸発生剤、或いは塩基発生剤といった光感応性の材料の層を塗布、或いは蒸着によって上記超撥水表面に形成する。塗布により上記の層を形成した場合は加熱や減圧等の方法によって溶剤を揮発させる必要がある。この際も塗布濃度,塗布溶剤、或いは蒸着量を制御する必要がある。塗布濃度が高すぎると、或いは蒸着量が多すぎると塗布後の表面は超撥水性を示さなくなる。こうして目的の光によって超撥水性が制御される表面が形成される。
【0040】
▲2▼超撥水表面形成材料に光感応材料を含有させる方法
▲1▼の方法で超撥水性を示す表面を形成する際、微粉末,含フッ素化合物,樹脂を含有する懸濁液中に光感応性の材料を一緒に混ぜ込み、それを物品表面に塗布し乾燥することによっても、目的の光によって超撥水性が制御される表面が形成できる。
【0041】
▲1▼、及び▲2▼の方法で形成した表面が光照射によって撥水性が低下する理由は以下のように推定される。なお▲1▼、及び▲2▼は推定例の一例であり、本発明はこれらに限定されない。
【0042】
まず図1は▲1▼の方法で形成した表面推定図である。
【0043】
これは光感応性の材料としてトリフェニルメタン系の誘導体の1つとしてであるマラカイトグリーン系化合物の中のビス[4−(ジメチルアミノ)フェニル]フェニルメタノールを用いた例である。またここでは含フッ素化合物として末端にアルキル鎖を有するパーフルオロポリエーテルを、樹脂はエポキシ樹脂を用いている。
【0044】
超撥水性を示す表面は微粉末を含有する樹脂によって形成されており、表面は平滑ではなく凹凸がある。またパーフルオロポリエーテルはアルキル鎖をエポキシ樹脂中に、パーフルオロポリエーテル鎖は表面上に露出して撥水性を発現しているものと思われる。この上にビス[4−(ジメチルアミノ)フェニル]フェニルメタノールを塗布した場合、パーフルオロポリエーテル鎖は撥油性もあるために均一な膜とはならず、斑に塗布される。ビス[4−(ジメチルアミノ)フェニル]フェニルメタノールは300〜400nmの紫外光を照射されると図に示すように水酸基が解離しアミノ基が4級化し塩構造を形成する。これによりこの化合物は親水性が高まる。これにより表面の親水性が高まり撥水性が低下すると考えられる。
【0045】
図2は▲2▼の方法で形成した表面推定図である。
【0046】
これは光感応性の材料としてポリビニルアルコールの水酸基に4−カルボキシアゾベンゼンをエステル結合したものを用いた例である。またここでも含フッ素化合物として末端にアルキル鎖を有するパーフルオロポリエーテルを、樹脂はエポキシ樹脂を用いている。上記アゾベンゼンを有する高分子は300〜400 nmの紫外光を照射されると図に示すようにアゾベンゼン残基がシス体に異性化する。これに伴い体積が膨脹し、表面の凹凸の状態が変化して(おそらく若干平坦化するものと思われる)その変化が総じて表面の撥水性が低下するものと考えられる。またアゾベンゼンはトランス体よりシス体の方が親水性が高くなるので、この影響も撥水性の低下に寄与しているものと推定される。
【0047】
▲1▼,▲2▼以外にも樹脂をエポキシ樹脂の代わりに光に感応する残基を有する高分子にしたり、パーフルオロポリエーテル末端に光に感応する残基を有する含フッ素化合物を用いることによって、その他のフォトクロミック化合物を混ぜたり塗布したりせずに目的の表面を形成すること等も可能と考えられる。
【0048】
2.本発明の物品の表面形成材料について
次に本発明の物品の表面を形成するための材料について記述する。
【0049】
始めに光で感応する材料について記述する。
【0050】
照射する光の波長は用いる光感応材料の感受性のある領域のものを照射する。一般環境下では昼間は400〜900nmの可視光・近赤外光が強い。このような領域の光に感受性があるものを含む超撥水性を示す表面を放置した場合、超撥水性が失われる可能性がある。そのためこのような材料を用いた場合は遮光する等の対策が必要となる。また400〜900nmの領域に感受性を持たない材料を使うと上記対策の必要性が緩和される。スピロピラン,トリフェニルメタン等のフォトクロミック材料の多くは異性化するのに必要な波長が400nm未満にあるので上記対策の必要性が緩和される。フォトクロミック材料のうちアゾベンゼン誘導体やスピロピラン誘導体等の幾つかの材料は、紫外光照射されることによって生成する異性体が400nm以上の波長の可視光を照射されることによって、紫外光照射前の構造に変化するという特徴を持つ。そのためこのようなフォトクロミック材料を用いて超撥水性の表面を作製した場合、その表面は紫外光照射によって撥水性が低下した後でも可視光を照射し、更に加熱等の操作により表面の水を除くことで超撥水性を回復することが可能となる。またフォトクロミック材料の大部分は光照射によって生じる異性体が加熱によって光照射前の構造に戻る性質がある。そのため撥水性の低下した表面を加熱することで表面の水を除くと同時にフォトクロミック材料を光照射前の構造に戻すことが可能となる。
【0051】
なお加熱温度は100℃以下であっても時間をかければ表面の水分を除去できる。しかし通常(1気圧)の場合水の沸点である100℃以上で加熱した方が敏速な水分の除去が可能となる。更に加熱温度を高めた場合、より敏速な水分除去が可能となる。
【0052】
またトリフェニルメタン系のフォトクロミック材料は紫外光照射によって水酸基等が外れる。しかし水酸化ナトリウムや水酸化カリウム等の塩基性の水溶液に触れると紫外光照射前の状態に戻すことができる。ただトリフェニルメタン系の誘導体のうちビス[4−(ジメチルアミノ)フェニル]フェニルメタンのように水素のアニオンが外れる構造の化合物は上記塩基性の水溶液に触れると水素のアニオンの代わりに水酸基が導入される。その結果上記材料はビス[4−(ジメチルアミノ)フェニル]フェニルメタノールに変化する。塩基性の水溶液のpHは25℃で13以上のものが望まれる。これより小さいと上記反応が超撥水性を回復するのに十分なほど進まない恐れがある。
【0053】
フォトクロミック化合物としてはスピロピラン系の誘導体,トリフェニルメタン系の誘導体、4,5−エポキシ−2−シクロペンテン系の誘導体,アゾベンゼン系の誘導体,フルギド系の誘導体,チオインジゴ系の誘導体,ジアリルエテン系の誘導体,アントラセン系の誘導体等がある。このうち塗布や蒸着によって超撥水表面の上にフォトクロミック化合物の層を形成する場合、光照射によって分子内にイオンを生成する化合物を用いた方が接触角の低下が大きい傾向がある。この種の化合物としてはスピロピラン系の誘導体,トリフェニルメタン系の誘導体、4,5−エポキシ−2−シクロペンテン系の誘導体等が挙げられる。これらの中ではトリフェニルメタン系の誘導体が特に大きな接触角の低下を起こす傾向があった。またどちらかと言えば結晶化しにくいもの、即ち長いアルキル鎖を有する材料の方が超撥水性を示す表面への付着量が多い傾向がある。ところで超撥水表面を形成する際に樹脂等といっしょに混ぜ込む場合は大きな分子構造変化を伴う化合物を用いた方が接触角の低下が大きい傾向がある。この種の化合物としてはアゾベンゼン系の誘導体,フルギド系の誘導体,チオインジゴ系の誘導体,ジアリルエテン系の誘導体,アントラセン系の誘導体等が挙げられる。
【0054】
スピロピラン系の誘導体として具体的には1,3,3−トリメチルインドリノベンゾピリロスピラン、1,3,3−トリメチルインドリノ−6′−ニトロベンゾピリロスピラン、1,3,3−トリメチルインドリノ−6′−ブロモベンゾピリロスピラン、1−n−デシル−3,3−ジメチルインドリノ−6′−ニトロベンゾピリロスピラン、1−n−オクタデシル−3,3−ジメチルインドリノ− 6′−ニトロベンゾピリロスピラン、3′,3′−ジメチル−6−ニトロ−1′−[2−(フェニルカルバモイル)エチル]スピロ[2H−1−ベンゾピラン−2,2′−インドリン]、1,3,3−トリメチルインドリノ−8′−メトキシベンゾピリロスピラン、1,3,3−トリメチルインドリノ−β−ナフトピリロスピラン等が挙げられる。分子内のアルキル鎖を長くすることで超撥水性を示す表面への塗布量が増大する傾向がある。スピロピラン系の化合物は1,3,3トリメチルインドレニンとハロゲン化アルキルを反応させ、インドレニン環の窒素原子とハロゲン化アルキルのアルキル基が結合して窒素原子が4級化しハロゲンが対アニオンとなった形を作り、これにベンズアルデヒド誘導体を反応させるのが一般的合成である。そこでハロゲン化アルキルのアルキル基を長くすることによって複素環の窒素原子に結合している残基のアルキル鎖を容易に長くすることができ、そうすることで低濃度の塗布液を用いた場合でも超撥水性を示す表面への塗布量を増やすことができる。
【0055】
この他に光により開環する環の酸素原子が硫黄原子に置き換わったスピロチオピラン系化合物、光により開環する環のメチンが窒素原子に置き換わったスピロオキサジン系化合物等も挙げられる。
【0056】
トリフェニルメタン系の誘導体としてはマラカイトグリーン系化合物が挙げられる。具体的には、ビス[4−(ジメチルアミノ)フェニル]フェニルメタノール、ビス[4−(ジエチルアミノ)フェニル]フェニルメタノール、ビス[4−(ジブチルアミノ)フェニル]フェニルメタノール、ビス[4−(ジエチルアミノ)フェニル]フェニルメタン等が挙げられる。
【0057】
4,5−エポキシ−2−シクロペンテン系の誘導体としては2,3−ジフェニル−1−インデノンオキシド、2′,3′−ジメチル−2,3−ジフェニル−1−インデノンオキシド等が挙げられる。
【0058】
アゾベンゼン系の誘導体として本発明では分子内にアゾベンゼン残基を有する高分子が超撥水性を大きく低下させるので効果的である。このような化合物として具体的にはポリビニルアルコールの水酸基に4−カルボキシアゾベンゼンをエステル結合したものや、ポリアリルアミンのアミノ基に4−カルボキシアゾベンゼンをアミド結合したもののように側鎖にアゾベンゼン残基を架橋させたものが挙げられる。これらは300〜400nmの光を照射することによりアゾベンゼン残基がシスに異性化する。これに伴い体積が増加する傾向がある。またビス (4−ヒドロキシフェニル)ジメチルメタン(別名ビスフェノールA)と4, 4′−ジカルボキシアゾベンゼンをエステル結合したものや、エチレングリコールと4,4′−ジカルボキシアゾベンゼンをエステル結合したもののように主鎖内にアゾベンゼン残基を有するものも挙げられる。これらも300〜400nmの光を照射することによりアゾベンゼン残基がシスに異性化する。これに伴い今度は体積が減少する傾向がある。チオインジゴ系の誘導体の場合もアゾベンゼン系の誘導体と同様に分子内にチオインジゴ構造を有する高分子が超撥水性を大きく低下させるので効果的である。アントラセン系の誘導体の場合もアゾベンゼン系の誘導体と同様に分子内にアントラセン構造を有する高分子が超撥水性を大きく低下させるので効果的である。
【0059】
フルギド系の誘導体として具体的にはイソプロピリデンフルギド,アダマンチリデンフルギド等が挙げられる。
【0060】
ジアリルエテン系の誘導体として具体的には1,2−ジシアノ−1,2−ビス(2,3,5−トリメチル−4−チエニル)エテン、2,3−ビス(2,3,5−トリメチル−4−チエニル)マレイン酸無水物、1,2−ジシアノ−1,2−ビス(2,3,5−トリメチル−4−セレニル)エテン、2,3−ビス(2,3,5−トリメチル−4−セレニル)マレイン酸無水物、1,2−ジシアノ−1,2−ビス(2−メチル−3−N−メチルインドール)エテン等が挙げられる。
【0061】
酸発生剤としては通常の感光性樹脂組成物に用いるものが挙げられる。これらの基本構造はオニウム塩系,ハロゲン化合物系,スルホン酸エステル系,スルホニル化合物系,ジアゾナフトキノン系といったものが挙げられる。具体的には以下のようなものが挙げられる。オニウム塩系としてはジフェニルヨードニウムトリフルオロメタンスルホネート,トリフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート等が挙げられる。ハロゲン化合物系としては2,6−ビス(トリクロロメチル)−4−(メトキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、1,3,5−トリス(2,3−ジブロモプロピル)−1,3,5−トリアジン−2,4,6−(1H,3H,5H)トリオン等が挙げられる。スルホン酸エステル系としてはトリス(メタンスルホニルオキシ)ベンゼン,トリス(エタンスルホニルオキシ)ベンゼン,α−ヒドロキシメチルベンゾインスルホン酸メチル,α−ヒドロキシメチルベンゾインスルホン酸エチル,p−ニトロベンジルスルホン酸ベンゾエート,p−ニトロベンジルスルホン酸ナフタレート,p−ニトロベンジルスルホン酸アンスレート,p−ニトロベンジルスルホン酸−9′,10′−アンスレート,トリフルオロメタンスルホニルオキシナフタルイミド,トリフルオロメタンスルホニルオキシベンズイミド等が挙げられる。スルホニル化合物系としてはジスルホニルジアゾメタン,ジスルホン等が挙げられる。ジアゾナフトキノン系としては3,4,4′−トリス(ジアゾナフトキノンスルホニルオキシ)−2−ヒドロキシベンゾフェノン、2,3,4,4′−テトラ(ジアゾナフトキノンスルホニルオキシ)ベンゾフェノン等が挙げられる。これら化合物は光照射されることにより分解して酸を発生する。
【0062】
塩基発生剤としても通常の感光性樹脂組成物に用いるものが挙げられる。これらの基本構造はトシルアミドやカルバメートといったものが多い。具体的にはN−シクロヘキシルパラトルエンスルホニルアミド、N−[1−(3,5−ジメトキシフェニル)−1−メチルエトキシカルボニル]シクロヘキシルアミド、N−[(2,6−ジニトロフェニル)メトキシカルボニル]シクロヘキシルアミド、N−[1−(2,6−ジニトロフェニル)エトキシカルボニル]シクロヘキシルアミド、N−[ビス(2,6−ジニトロフェニル)メトキシカルボニル]シクロヘキシルアミド、N−[ビス(2−ニトロフェニル)メトキシカルボニル]オクタデシルアミド、N−[(2−ニトロフェニル)メトキシカルボニル]オクタデシルアミド、N−[1−(2−ニトロフェニル)エトキシカルボニル]オクタデシルアミド、N−[1−(4,5−ジメチル−2−ニトロフェニル)エトキシカルボニル]オクタデシルアミド、N−[1−(4−メチル−2−ニトロフェニル)エトキシカルボニル]オクタデシルアミド等が挙げられる。これらの化合物についてはジャーナル オブ ザ アメリカン ケミカル ソサイエティ,1991年,第113巻,4303−4313頁等の記載を参考にすれば合成できる。これら化合物は光照射されることにより分解して塩基を発生する。
【0063】
次に超撥水性を示す表面を形成するため用いる材料について記述する。
【0064】
樹脂としては特に制限はない。耐久性を考えるとエポキシ樹脂,ポリイミド等の熱硬化性樹脂が好適である。ただポリイミドは下地との密着性が低い傾向がある。グラスレジン(ラダーシリコンとも呼ばれる。)も耐熱性は高い。またエポキシ樹脂,ポリイミド等に比べて透明性も高い傾向がある。またグラスレジンは後述する微粉末のうちシリカを用いる場合は他の樹脂に比べて分散性が良好である傾向がある。エポキシ樹脂,ポリイミド,グラスレジン等の熱硬化性樹脂は硬化すると前述の超撥水性の表面に光感応性の材料を塗布する際に塗布溶剤によって表面が溶解する等の心配がほとんどないという点でも好適である。
【0065】
樹脂としてポリエステルやスチレン−アクリル樹脂等を用いる場合は熱による硬化を行う必要がないので熱によっても変化してしまうような光感応性の材料を混ぜ込む際には好適である。スチレン−アクリル樹脂やメタクリル酸−アクリル共重合体等は水性懸濁液(ラテックスとも呼ばれる)を用いることもできる。これを用いることにより通常の有機溶媒で侵されやすい樹脂製の物品表面にも超撥水性を示す表面を形成することが可能となる。なおラテックスに含フッ素化合物を混ぜる際はラテックス作製の際用いるモノマーに混ぜ込んだ後に重合することにより混合することができる。
【0066】
微粉末は超撥水性を示す表面に凹凸を形成するため添加する。そのため微粉末は樹脂等と混ぜ合わせる際用いる溶剤に溶解しなければ特に制限はない。例えば酸化珪素の粒子(通常シリカビーズ等と呼ばれている),カーボンの粒子等は有機溶剤に不溶であるため好適である。その他複写機やプリンター等の現像機に用いられている金属性の粉末(通常キャリアと呼ばれる、材質は主にフェライト)も有機溶剤に不溶であるため好適である。複写機やプリンター等に用いられるトナーは樹脂が主成分のため樹脂等と混ぜ合わせる際用いる溶剤が塩化メチレンやアセトン等の有機溶剤の場合はトナー同士が凝集してしまったり、溶剤に溶解してしまうために粒子としての形状が保てなくなる。そのため溶剤が揮発した後の表面に超撥水性を発現させるための凹凸が作れなくなってしまうので適当ではない。なお微粒子は溶剤に添加すると凝集することがあるので分散剤を添加する。分散剤は用いる溶剤に溶解する物が望ましい。
【0067】
粒子の大きさは平均粒子径が数nm〜数十μm程度の物を用いる。表面の凹凸が大きいものと小さいものが混在している方が撥水性が高い傾向がある。そのため粒子径の異なるものを混合して用いた方が良好な超撥水性を示すようである。この場合平均粒子径の小さなものは数nm〜数十nmのものを、大きなものは数μm〜数十μmのものが好適である。この点を具体的に検討したところ、小さいものの平均粒径が大きなものの平均粒径の1/50〜1/1000の範囲である場合、その表面の超撥水性が良好であった。
【0068】
微粒子は粒径が小さいほど凝集しやすい。一方粒子の材質が酸化珪素,酸化アルミニウム,酸化チタンの物は他の材料(フェライトや鉄粉等)に比べて分散性が良い傾向がある。そのため平均粒径の異なる2種類の微粒子を混合して用いる場合、粒径の小さいものの材質としては酸化珪素,酸化アルミニウム,酸化チタンが望ましい。
【0069】
また樹脂としてグラスレジンを用い、微粒子として酸化珪素を用い、物品としてガラス板を用い、ガラス板表面に超撥水性を示す表面を形成した場合、その表面は不透明な摺りガラスのようになるが、ある程度は光が通るようになる。なお超撥水性を示す表面を形成している膜の厚さは薄い方が良く光は通る。樹脂とグラスレジンの重量比が5:1で、厚さが約10μmの場合、400nmの透過率は約30%ぐらいになる。この物品の場合、撥水性を低下させる光を超撥水性を示す表面側からでなくその表面を形成したガラスの裏側から照射しても撥水性は低下させることができる。ただ照射量は透過率が低い分だけ多く必要になる。
【0070】
なお物品としては撥水性を低下させる光を透過するものであればガラスに限定されることはない。具体的にはガラス以外に岩塩板,石英板等も挙げられる。
【0071】
物品をガラス板にして他の材料は別の組合せ(樹脂としてはグラスレジンの他にエポキシ,スチレン−アクリル,ポリエステル等、微粒子としては酸化珪素の他にフェライト,酸化アルミニウム,酸化チタン等)にして形成した表面は光がほとんど透過しない。このことからグラスレジンと酸化珪素の組合せがある程度光を透過する理由は、グラスレジンと酸化珪素の屈折率の値が近いためと推定される。
【0072】
含フッ素化合物としてはパーフルオロアルキル鎖を有する化合物,パーフルオロポリエーテル鎖を有する化合物,芳香環にフルオロ基やトリフルオロメチル基を有する化合物等が挙げられる。このうち撥水性を向上させるためにはパーフルオロアルキル鎖を有する化合物やパーフルオロポリエーテル鎖を有する化合物の方が効果的である。なお樹脂等と混ぜ合わせる場合、用いる溶剤に溶解、或いは溶解まではいかなくとも混和している方が膜形成の際は均一に分布するので好ましい。その際パーフルオロアルキル鎖を有する化合物,パーフルオロポリエーテル鎖を有する化合物で分子量の大きなものは樹脂等を良く溶解する有機溶剤(アセトン,エチルメチルケトン,塩化メチレン、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン等)への溶解性が低い。そのため末端に適当な残基を結合させることでこれら有機溶剤への溶解性を確保することが望ましい。
【0073】
その方法としてはパーフルオロアルキル鎖、或いはパーフルオロポリエーテル鎖の末端がCH2IかCH2Br(但しCH2Brの材料は反応性が低い)といったハロゲン化アルキルの材料は、直鎖或いは分岐のヘキサノール,オクタノール,シス或いはトランスシクロヘキサノール,カテコール誘導体等の水酸基をONaやOKといった、即ちアルコラートに変換した材料と反応させエーテル結合を介して結合させることによって有機溶剤への溶解性を向上させることが可能となる。また末端にアミノ基を有する材料(例えばアニリン、直鎖或いは分岐のヘキシルアミン,オクチルアミン,デシルアミン等)と反応させアミン結合を介して結合させることによって有機溶剤への溶解性を向上させることが可能となる。パーフルオロアルキル鎖の末端がハロゲン化アルキルの材料としては2−(パーフルオロブチル)エチルイオダイド、2−(パーフルオロヘキシル)エチルイオダイド、2−(パーフルオロオクチル)エチルイオダイド、2−(パーフルオロデシル)エチルイオダイド、2−(パーフルオロ−5−メチルヘキシル)エチルイオダイド、2−(パーフルオロ−5−メチルオクチル)エチルイオダイド、2− (パーフルオロ−5−メチルデシル)エチルイオダイド、2,2,3,3−テトラフルオロプロピルイオダイド、1H,1H,7H−ドデカフルオロヘプチルイオダイド等が挙げられる。
【0074】
パーフルオロアルキル鎖、或いはパーフルオロポリエーテル鎖の末端がCH2OHの材料は、末端がハロゲン化アルキルの材料(例えばベンジルブロマイド、直鎖或いは分岐のヘキシルブロマイド,オクチルブロマイド,デシルブロマイド等)と反応させエーテル結合を介して結合させることによって有機溶剤への溶解性を向上させることが可能となる。また末端にカルボキシル基を有する材料(例えば安息香酸、直鎖或いは分岐のヘキシル酸,オクチル酸,デシル酸等)等と反応させエステル結合を介して結合させることによって有機溶剤への溶解性を向上させることが可能となる。パーフルオロアルキル鎖、或いはパーフルオロポリエーテル鎖の末端がCH2OH の材料としては、2−(パーフルオロヘキシル)エタノール、2−(パーフルオロオクチル)エタノール、2−(パーフルオロデシル)エタノール、3−(パーフルオロヘキシル)プロパノール、3−(パーフルオロオクチル)プロパノール、3−(パーフルオロデシル)プロパノール、ダイキン工業製デムナムSA,アウジモント社製フォンブリンZ−Dol等が挙げられる。デュポン社製クライトックス157FS系材料は末端がカルボキシル基のパーフルオロポリエーテルである。この末端はリチウムアルミニウムハイドライドによって還元しCH2OH の形に変換できる。そのためこの還元された材料も上記末端がCH2OHの材料として使用できる。
【0075】
パーフルオロアルキル鎖、或いはパーフルオロポリエーテル鎖の末端がCO2Hの材料は、末端にアミノ基を有する材料(例えばアニリン,直鎖或いは分岐のヘキシルアミン,オクチルアミン,デシルアミン等)と反応させアミド結合を介して結合させることによって有機溶剤への溶解性を向上させることが可能となる。また末端に水酸基を有する材料(例えば直鎖或いは分岐のヘキサノール,オクタノール,シス或いはトランスシクロヘキサノール,カテコール誘導体等)と反応させエステル結合を介して結合させることによって有機溶剤への溶解性を向上させることが可能となる。パーフルオロアルキル鎖、或いはパーフルオロポリエーテル鎖の末端がCO2H の材料としては、パーフルオロヘキサン酸,パーフルオロオクタン酸,パーフルオロデカン酸,7H−ドデカフルオロヘプタン酸,9H−ヘキサデカフルオロノナン酸,パーフルオロアゼライン酸、ダイキン工業製デムナムSH,アウジモント社製フォンブリンZ−DIAC,デュポン社製クライトックス157FS−L,同じく157FS−M,同じく157FS−H等が挙げられる。
【0076】
パーフルオロアルキル鎖、或いはパーフルオロポリエーテル鎖の末端がエポキシ基の材料は、末端にアミノ基を有する材料,水酸基を有する材料等と反応させ種々の結合を介して結合させることによって有機溶剤への溶解性を向上させることが可能となる。パーフルオロアルキル鎖、或いはパーフルオロポリエーテル鎖の末端がエポキシ基の材料としては、3−パーフルオロヘキシル−1,2−エポキシプロパン、3−パーフルオロオクチル−1,2−エポキシプロパン、3−パーフルオロデシル−1,2−エポキシプロパン、3−(パーフルオロ−5−メチルヘキシル)−1,2−エポキシプロパン、3−(パーフルオロ−5−メチルオクチル)−1,2−エポキシプロパン、3−(パーフルオロ−5−メチルデシル)−1,2−エポキシプロパン、3−(1H,1H,7H−ドデカフルオロヘプチルオキシ)−1,2−エポキシプロパン、3−(1H,1H,9H−ヘキサデカフルオロノニルオキシ)−1,2−エポキシプロパン等が挙げられる。
【0077】
パーフルオロアルキル鎖、或いはパーフルオロポリエーテル鎖の末端にCH=CH2基を有する材料は、スチレン,アルキルメタクリレート等のCH2=CH残基を有する材料と重合させることによって有機溶剤への溶解性を向上させることが可能となる。ただ1分子あたりの反応点が2点以上になるので重合しすぎると分子量が大きくなり溶解性が低下する可能性もある。パーフルオロアルキル鎖の末端にCH=CH2 基を有する材料としては、(パーフルオロヘキシル)エチレン,(パーフルオロオクチル)エチレン,(パーフルオロデシル)エチレン、1,6−ジビニルドデカフルオロヘキサン、1,8−ジビニルヘキサデカフルオロオクタン等が挙げられる。
【0078】
上記含フッ素化合物のうち有機溶剤に溶解しやすく、エポキシ樹脂のモノマーとの相溶性も良好で、且つ超撥水表面を形成しやすいものとしては下記に示す化合物が挙げられる。これらの化合物のうちパーフルオロアルキレン鎖の平均分子量は、化合物1〜8のものが1500〜5000,化合物9,10のものが2000〜9000,化合物11は2000〜5000のものがモノマーとの相溶性が良好であるので好適である。
【0079】
なおパーフルオロポリエーテル鎖のうち繰り返し単位が−CF(CF3)−CF2−O−のものは原料としてデュポン社製クライトックス157FS−L,FS−M、或いはFS−Hを用いたものである。繰り返し単位が−CF2− CF2 − CF2 −O−のものは原料としてダイキン工業製デムナムSHを用いたものである。繰り返し単位が−{CF2−CF2−O−)x−(CF2−O−)y}−のものは原料としてアウジモント社製Z−DIACを用いたものである。
【0080】
【化5】
Figure 0004032444
【0081】
【化6】
Figure 0004032444
【0082】
【化7】
Figure 0004032444
【0083】
【化8】
Figure 0004032444
【0084】
【化9】
Figure 0004032444
【0085】
【化10】
Figure 0004032444
【0086】
【化11】
Figure 0004032444
【0087】
【化12】
Figure 0004032444
【0088】
【化13】
Figure 0004032444
【0089】
【化14】
Figure 0004032444
【0090】
【化15】
Figure 0004032444
【0091】
なお上記含フッ素化合物の合成は以下に示すとおりである。
【0092】
(化合物1の合成)
デュポン社製クライトックス157FS−L(平均分子量2500)(25重量部)を3M社製FC−72(100重量部)に溶解し、これに塩化チオニル (2重量部)と塩化メチレン(20重量部)を加え、撹拌しながら48時間還流する。塩化チオニルや溶媒のFC−72等をエバポレータで揮発させクライトックス157FS−Lの酸クロライド(25重量部)を得る。
【0093】
三井東圧社製1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン(29重量部),トリエチルアミン(25重量部)を塩化メチレン(300重量部)に溶解し撹拌中、これにベンゾイルクロライド(14重量部)を塩化メチレン(100重量部)に溶解したものを2時間かけて滴下し、その後も20時間撹拌する。反応液を濾紙で濾過し、濾液をエバポレータで濃縮後カラムクロマトグラフィ(和光純薬社製ワコーゲルC−200使用)で分離・精製し、アミノ基の片方にベンゼン環を有する化合物12(20重量部)を得る。
【0094】
【化16】
Figure 0004032444
【0095】
クライトックス157FS−Lの酸クロライド(25重量部),化合物12 (4重量部),トリエチルアミン(2重量部)、及び塩化メチレン(20重量部)をFC−72(100重量部)に加え、撹拌しながら48時間還流する。反応液を濾紙で濾過し、濾液を12時間静置する。上層の塩化メチレン層を除き、新たに塩化メチレン(20重量部)を加え、1時間撹拌した後12時間静置する。上層の塩化メチレン層を除き、下層のFC−72層中のFC−72をエバポレータ、及び真空ポンプで揮発させ、目的の化合物1(25重量部)を得た。
【0096】
(化合物2の合成)
デュポン社製クライトックス157FS−L(平均分子量2500)(25重量部)の代わりにダイキン工業社製デムナムSH(平均分子量3500)(35重量部)を用いる以外は化合物1の合成と同様にして化合物2が(35重量部)得られた。
【0097】
(化合物3の合成)
ベンゾイルクロライド(14重量部)の代わりにフェノキシ安息香酸クロライド(23重量部)を用いる以外は化合物12の合成と同様にして化合物13(25重量部)を得る。
【0098】
【化17】
Figure 0004032444
【0099】
次に化合物12(4重量部)の代わりに化合物13(5重量部)を用いる以外は化合物1の合成と同様にして化合物3が(25重量部)得られた。
【0100】
(化合物4の合成)
デュポン社製クライトックス157FS−L(平均分子量2500)(25重量部)の代わりにダイキン工業社製デムナムSH(平均分子量3500)(35重量部)を用いる以外は化合物3の合成と同様にして化合物4が(35重量部)得られた。
【0101】
(化合物5の合成)
1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン(29重量部)の代わりに三井東圧社製1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン(29重量部)を用いる以外は化合物12の合成と同様にして化合物14(20重量部)を得る。
【0102】
【化18】
Figure 0004032444
【0103】
次に化合物12(4重量部)の代わりに化合物14(4重量部)を用いる以外は化合物1の合成と同様にして化合物5が(25重量部)得られた。
【0104】
(化合物6の合成)
デュポン社製クライトックス157FS−L(平均分子量2500)(25重量部)の代わりにダイキン工業社製デムナムSH(平均分子量3500)(35重量部)を用いる以外は化合物5の合成と同様にして化合物6が(35重量部)得られた。
【0105】
(化合物7の合成)
ベンゾイルクロライド(14重量部)の代わりにベンゼンスルホン酸クロライド(18重量部)を用いる以外は化合物12の合成と同様にして化合物15(21重量部)を得る。
【0106】
【化19】
Figure 0004032444
【0107】
次に化合物12(4重量部)の代わりに化合物15(5重量部)を用いる以外は化合物1の合成と同様にして化合物7が(25重量部)得られた。
【0108】
(化合物8の合成)
デュポン社製クライトックス157FS−L(平均分子量2500)(25重量部)の代わりにダイキン工業社製デムナムSH(平均分子量3500)(35重量部)を用いる以外は化合物7の合成と同様にして化合物8が(35重量部)得られた。
【0109】
(化合物9の合成)
1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン(29重量部)の代わりに三井東圧社製2,2−ビス[4−(アミノフェノキシ)フェニル]プロパン(41重量部)を用いる以外は化合物12の合成と同様にして化合物16(30重量部)を得る。
【0110】
【化20】
Figure 0004032444
【0111】
次に化合物12(4重量部)の代わりに化合物14(7重量部)を用いる以外は化合物1の合成と同様にして化合物9が(25重量部)得られた。
【0112】
(化合物10の合成)
デュポン社製クライトックス157FS−L(平均分子量2500)(25重量部)の代わりにダイキン工業社製デムナムSH(平均分子量3500)(35重量部)を用いる以外は化合物9の合成と同様にして化合物10が(35重量部)得られた。
【0113】
(化合物11の合成)
アウジモント社製フォンブリンのZ−DIAC(平均分子量4000)(40重量部)をFC−72(200重量部)に溶解し、これにジシクロヘキシルカルボジイミド(5重量部),化合物16(13重量部),塩化メチレン(100重量部)を加え、120時間撹拌する。反応液を濾紙で濾過後、濾液を12時間静置する。上層の塩化メチレン層を除き、新たに塩化メチレン(20重量部)を加え、1時間撹拌した後12時間静置する。上層の塩化メチレン層を除き、下層のFC−72層中のFC−72をエバポレータ、及び真空ポンプで揮発させ、目的の化合物11(40重量部)を得た。
【0114】
化合物1〜11、或いはこれらに類する材料を用いた場合、これら自身250nm近傍の光によって構造の変化する光感応性の材料なので、光照射の波長によっては別に光感応性の材料を用いなくとも本発明の目的の物品となりうる。これら材料は250nm近傍の光を照射することによってアミド結合等が切断し、カルボキシル基等の親水性の残基ができる。超撥水性を示す表面の近傍でこの反応が起こると表面、或いはその近傍にカルボキシル基等ができるため、切断前に比べてその周りの親水性が高くなる。そのため表面の撥水性が低下するものと考えられる。
【0115】
また凹凸のある表面を形成した後含フッ素化合物を塗布する場合、塗布する溶剤に溶解するものの方が均一塗布には操作が簡便である。また塗布したものが表面に固定される方が超撥水性を長時間保ちやすい。この場合パーフルオロアルキル鎖、或いはパーフルオロポリエーテル鎖の末端がSiR3(RはCH3,C25,OCH3 、或いはOC25)の物は塗布後加熱することにより表面と化学的に結合するので好ましい。このような材料は例えばチッソ株式会社製のサイラエース(片末端がSiR3 、もう一方の末端がアミノ基やエポキシ基)とパーフルオロアルキル鎖、或いはパーフルオロポリエーテル鎖の末端が水酸基やアミノ基の材料を縮合させることによって得られる。
【0116】
3.本発明の物品の用途
本発明の物品の用途としては水性インキによる印刷の高画質化やレジストの微細加工技術への適応が考えられる。例えば超撥水性を示す表面に光を部分的に照射して撥水性を低下させると、超撥水性を示す部分との間で水性インクの付着性に差が生じる。即ち撥水性の差異による潜像が形成されることになる。そこでこれを感光体とする印刷機が構成可能となる。また上記潜像に超撥水性を示す表面を腐食、或いは溶解させることによってその表面を掘るような水性材料を付着させるとその部分が他の部分より低くなる。これを原版とすると凹版、或いは凸版の印刷が可能になる。このように光で超撥水性を制御することで、上記のような新規の印刷技術開発が可能になると考えられる。
【0117】
このほか水溶性レジストによるパターン形成,部分塗装等も本発明の物品を形成する際用いる方法を利用することで、即ち光で超撥水部分とそうでない部分を明確に分けることで可能になると考えられる。
【0118】
本発明を実施例により説明する。
【0119】
(実施例1)
始めに超撥水性を示す表面を形成するための塗料の作製方法を示す。油化シェル・エポキシ(株)製のエポキシ樹脂(EP1004)(44重量部),丸善石油化学(株)製フェノール樹脂であるマルカリンカーM(30重量部),北興化学(株)製の硬化促進剤であるトリエチルアンモニウムカリボール塩(商品名 TEA−K)(1重量部)をエチルメチルケトン(950重量部)と酢酸エチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル(50重量部)の混合溶剤に溶解し、これに含フッ素化合物として化合物1(2重量部)を加え良く撹拌する。次に日本アエロジル(株)製アエロジル130(平均粒径は約16nm)(8重量部)と日本シリカ工業(株)製Nipsil E−220A(平均粒径は約1.5μm)(8重量部)を加え十分に撹拌する。こうして超撥水性を示す表面を形成するための塗料が作製される。なおアエロジル130はNipsil E−220A の約1/94の粒径である。
【0120】
この塗料に長さ3cm,幅2cm,厚さ約1mmのガラス板を10秒間浸漬した後、速度3cm/秒で引き上げる。このガラス板を120℃で30分間、引き続き 200℃で45分間加熱することで、水との接触角が150°以上の表面、即ち超撥水性の表面を有するガラス板が作製される。
【0121】
次にこのガラス板表面に光感応性の材料を塗布する。マラカイトグリーン系のフォトクロミック化合物であるビス[4−(ジメチルアミノ)フェニル]フェニルメタン(以後化合物12と記述)(2重量部)を塩化メチレン(98重量部)に溶解する。
【0122】
【化21】
Figure 0004032444
【0123】
こうして2wt%の化合物12の塩化メチレン溶液を調製する。この溶液に先のガラス板を10秒間浸漬した後、速度3cm/秒で引き上げる。このガラス板を40℃で30分間乾燥する。こうして超撥水性を持つ表面上に化合物12が塗布される。なおこの材料を塗布後も表面は超撥水性を示しており、この表面に滴下した水滴はビー玉のように表面を転がり落ちた。
【0124】
この表面に東芝硝子(株)製色ガラスフィルターUV−D36Bを介してウシオ電機(株)製500Wキセノンランプで光を2分間照射する。光の強度は6.6mW/cm2 である。すると表面の水との接触角が90°まで低下した。なおUV−D36Bは300〜400nmの波長の光を透過する。
【0125】
光照射により表面の撥水性が低下したガラス板をpH13の水酸化ナトリウム水溶液に10秒間浸した後、水で表面に付いた水酸化ナトリウム水溶液を洗い落す。その後このガラス板を120℃で2時間加熱する。ガラス板を常温まで冷却後、その表面に水滴を滴下するとその表面は超撥水性を示した。
【0126】
(実施例2)
実施例1で作製した超撥水性を示す表面形成のための塗布液を塗布したガラス板を120℃で30分間、引き続き180℃で30分間乾燥した後、化合物12を塗布する工程を行わずに、東芝硝子(株)製色ガラスフィルターUV−D33Sを介してウシオ電機(株)製500Wキセノンランプで光を2分間照射する。光の強度は64mW/cm2 である。すると光照射前は超撥水性を示していた表面は水との接触角が90°まで低下した。UV−D33Sは230〜430nmの波長の光を透過する。
【0127】
なお180℃30分間の加熱を200℃45分間に代えると光照射後であっても接触角は低下せず超撥水のままであった。
【0128】
(実施例3)
化合物12の溶液の濃度を0.5wt% にする以外は実施例1と同様にして光を照射したところ光照射前は超撥水性を示していた表面は水との接触角が85°まで低下した。
【0129】
なお光照射により表面の撥水性の低下したガラス板を実施例1と同様の方法で水酸化ナトリウム水溶液に浸し、引き続き洗浄し、加熱,冷却後その表面に水滴を滴下するとその表面は超撥水性を示した。
【0130】
(実施例4)
化合物12の溶液の濃度を0.2wt% にする以外は実施例1と同様にして光を照射したところ光照射前は超撥水性を示していた表面は水との接触角が105°まで低下した。
【0131】
なお光照射により表面の撥水性の低下したガラス板を実施例1と同様の方法で水酸化ナトリウム水溶液に浸し、引き続き洗浄し、加熱,冷却後その表面に水滴を滴下するとその表面は超撥水性を示した。
【0132】
(実施例5)
アエロジル130(平均粒径は約16nm)(8重量部)の代わりに日本アエロジル(株)製アエロジルMOX80(平均粒径は約30nm)(8重量部)を用いる以外は実施例1と同様にして超撥水性を示す表面を有するガラス板を作製した。これに実施例1と同様に2wt%の化合物12の塩化メチレン溶液を塗布し、乾燥させた表面は超撥水性を示した。なおアエロジルMOX80はNipsil E−220Aの約1/50の粒径である。
【0133】
次に実施例1と同様にして光を照射したところ光照射前は超撥水性を示していた表面は水との接触角が85°まで低下した。
【0134】
なお光照射により表面の撥水性の低下したガラス板を実施例1と同様の方法で水酸化ナトリウム水溶液に浸し、引き続き洗浄し、加熱,冷却後その表面に水滴を滴下するとその表面は超撥水性を示した。
【0135】
(比較例1)
アエロジルMOX80(平均粒径は約30nm)(8重量部)の代わりに日本アエロジル(株)製アエロジルOX50(平均粒径は約40nm)(8重量部)を用いる以外は実施例1と同様にして超撥水性を示す表面を有するガラス板を作製した。これに実施例1と同様に2wt%の化合物12の塩化メチレン溶液を塗布し、乾燥させた表面は超撥水性を示さなかった。しかし0.5wt%、或いは0.2wt%の溶液を塗布し、乾燥させた表面は超撥水性を示した。なおアエロジル OX50はNipsil E−220Aの約1/38の粒径である。
【0136】
次に化合物12の0.5wt%、或いは0.2wt%の溶液を塗布した表面を実施例1と同様にして光を照射したところ光照射前は超撥水性を示していた表面は水との接触角が85°(化合物12の0.5wt%を塗布した表面)、及び100°(化合物12の0.2wt%を塗布した表面)まで低下した。
【0137】
なお光照射により表面の撥水性の低下したガラス板を実施例1と同様の方法で水酸化ナトリウム水溶液に浸し、引き続き洗浄し、加熱,冷却後その表面に水滴を滴下するとその表面は超撥水性を示した。
【0138】
(実施例6)
Nipsil E−220A(平均粒径は約1.5μm)(8重量部)の代わりに和光純薬社製ワコーシル7SIL−120(平均粒径は約7μm)(8重量部)を用い、アエロジル130(平均粒径は約16nm)(8重量部)の代わりに日本アエロジル(株)製アエロジルR812(平均粒径は約7nm)(8重量部)を用いる以外は実施例1と同様にして超撥水性を示す表面を有するガラス板を作製した。これに実施例1と同様に2wt%の化合物12の塩化メチレン溶液を塗布し、乾燥させた表面は超撥水性を示した。なおアエロジルR812はワコーシル7SIL−120の約1/1000の粒径である。
【0139】
次に実施例1と同様にして光を照射したところ光照射前は超撥水性を示していた表面は水との接触角が85°まで低下した。
【0140】
なお光照射により表面の撥水性の低下したガラス板を実施例1と同様の方法で水酸化ナトリウム水溶液に浸し、引き続き洗浄し、加熱,冷却後その表面に水滴を滴下するとその表面は超撥水性を示した。
【0141】
(比較例2)
ワコーシル7SIL−120(平均粒径は約7μm)(8重量部)の代わりに和光純薬社製ワコーシル10SIL−120(平均粒径は約10μm)(8重量部)を用いる以外は実施例1と同様にして超撥水性を示す表面を有するガラス板を作製した。これに実施例1と同様に2wt%の化合物12の塩化メチレン溶液を塗布し、乾燥させた表面は超撥水性を示さなかった。しかし0.5wt% 、或いは0.2wt% の溶液を塗布し、乾燥させた表面は超撥水性を示した。なおアエロジルR812はワコーシル10SIL−120の約1/1400の粒径である。
次に化合物12の0.5wt%、或いは0.2wt%の溶液を塗布した表面を実施例1と同様にして光を照射したところ光照射前は超撥水性を示していた表面は水との接触角が85°(化合物12の0.5wt%を塗布した表面)、及び100°(化合物12の0.2wt%を塗布した表面)まで低下した。
【0142】
なお光照射により表面の撥水性の低下したガラス板を実施例1と同様の方法で水酸化ナトリウム水溶液に浸し、引き続き洗浄し、加熱,冷却後その表面に水滴を滴下するとその表面は超撥水性を示した。
【0143】
(実施例7)
化合物12の代わりに0.5wt%のビス[4−(ジブチルアミノ)フェニル] フェニルメタノール(以後化合物13と記述)の塩化メチレン溶液を用いる以外は実施例1と同様にして光を照射したところ光照射前は超撥水性を示していた表面は水との接触角が80°まで低下した。
【0144】
【化22】
Figure 0004032444
【0145】
なおビス[4−(ジブチルアミノ)フェニル]フェニルメタノールの合成はブルチン オブ ザ ケミカル ソサイエティ オブ ジャパン,1988年,第61巻,2321頁記載の方法で行った。
【0146】
なお光照射により表面の撥水性の低下したガラス板を実施例1と同様の方法で水酸化ナトリウム水溶液に浸し、引き続き洗浄し、加熱,冷却後その表面に水滴を滴下するとその表面は超撥水性を示した。
【0147】
(実施例8)
化合物12の代わりに0.5wt% の1−n−オクタデシル−3,3−ジメチルインドリノ−6′−ニトロベンゾスピラン(以後化合物14と記述)の塩化メチレン溶液を用いる以外は実施例1と同様にして光を照射したところ光照射前は超撥水性を示していた表面は水との接触角が110°まで低下した。
【0148】
【化23】
Figure 0004032444
【0149】
なお1−n−オクタデシル−3,3−ジメチルインドリノ−6′−ニトロベンゾスピランの合成はケミストリー レターズ,1990年,555頁記載の方法で行った。
【0150】
(実施例9)
化合物12の代わりに0.5wt% の2,3−ジフェニル−1−インデノンオキシド(以後化合物15と記述)の塩化メチレン溶液を用いる以外は実施例1と同様にして光を照射したところ光照射前は超撥水性を示していた表面は水との接触角が130°まで低下した。
【0151】
【化24】
Figure 0004032444
【0152】
なお2,3−ジフェニル−1−インデノンオキシドの合成はジャーナル オブザ ケミカル エデュケーション,1971年,第48巻,554頁記載の方法で行った。
【0153】
(実施例10)
化合物12の代わりに2wt%のトリフルオロメタンスルホニルオキシベンズイミド(以後化合物16と記述)の塩化メチレン溶液を用い、色ガラスフィルターをUV−D33Sに代える以外は実施例1と同様にして光を照射したところ光照射前は超撥水性を示していた表面は水との接触角が100°まで低下した。
【0154】
【化25】
Figure 0004032444
【0155】
(実施例11)
化合物16の代わりに2wt%のトリス(ベンゼンスルホニルオキシ)ベンゼン(以後化合物17と記述)の塩化メチレン溶液を用いる以外は実施例10と同様にして光を照射したところ光照射前は超撥水性を示していた表面は水との接触角が100°まで低下した。
【0156】
【化26】
Figure 0004032444
【0157】
(実施例12)
化合物16の代わりに2wt%のN−シクロヘキシルパラトルエンスルホニルアミド(以後化合物18と記述)の塩化メチレン溶液を用いる以外は実施例10と同様にして光を照射したところ光照射前は超撥水性を示していた表面は水との接触角が130°まで低下した。
【0158】
【化27】
Figure 0004032444
【0159】
(実施例13)
昭和電工(株)製グラスレジンGR650(50重量部)をエチルメチルケトン(950重量部)と酢酸エチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル(50重量部)の混合溶剤に溶解し、これに含フッ素化合物として化合物1(2重量部)を加え良く撹拌する。次に日本アエロジル(株)製アエロジル130(平均粒径は約16nm)(8重量部)と日本シリカ工業(株)製Nipsil E−220A(平均粒径は約1.5μm)(8重量部)を加え十分に撹拌する。こうして超撥水性を示す表面を形成するための塗料が作製される。これを実施例1と同様にガラス板に塗布し加熱することで超撥水性を示す表面が形成される。
【0160】
これに実施例1と同様に2wt%のビス[4−(ジメチルアミノ)フェニル]フェニルメタンの溶液を塗布後乾燥する。これに実施例1と同様の方法で光を照射するとその表面の水との接触角は90°に低下した。なおアエロジル130はNipsil E−220Aの約1/94の粒径である。
【0161】
なお光照射により表面の撥水性の低下したガラス板を実施例1と同様の方法で水酸化ナトリウム水溶液に浸し、引き続き洗浄し、加熱,冷却後その表面に水滴を滴下するとその表面は超撥水性を示した。
【0162】
(実施例14)
日立化成工業(株)製スチレン−アクリル樹脂パーフェクター9155(50重量部)をエチルメチルケトン(950重量部)と酢酸エチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル(50重量部)の混合溶剤に溶解し、これに含フッ素化合物として化合物1(2重量部)を加え良く撹拌する。次に日本アエロジル(株)製アエロジル130(平均粒径は約16nm)(8重量部)と日本シリカ工業(株)製Nipsil E−220A(平均粒径は約1.5μm)(8重量部)を加え十分に撹拌する。こうして超撥水性を示す表面を形成するための塗料が作製される。これを実施例1と同様にガラス板に塗布後100℃で30分間加熱することで超撥水性を示す表面が形成される。なおアエロジル130はNipsil E−220A の約1/94の粒径である。
【0163】
これに2wt%の化合物12のエタノ−ル溶液を実施例1と同様に塗布後乾燥する。これに実施例1と同様の方法で光を照射するとその表面の水との接触角は90°に低下した。
【0164】
(実施例15)
化合物1を化合物2(2重量部)に代える以外は実施例1と同様にして超撥水性を示す表面を形成し、その上に化合物12を実施例1と同様に塗布し、更に光を照射したところ光照射前は超撥水性を示していた表面の水との接触角は90°に低下した。
【0165】
なお光照射により表面の撥水性の低下したガラス板を実施例1と同様の方法で水酸化ナトリウム水溶液に浸し、引き続き洗浄し、加熱,冷却後その表面に水滴を滴下するとその表面は超撥水性を示した。
【0166】
(実施例16)
化合物1を化合物3(2重量部)に代える以外は実施例1と同様にして超撥水性を示す表面を形成し、その上に化合物12を実施例1と同様に塗布し、更に光を照射したところ光照射前は超撥水性を示していた表面の水との接触角は90°に低下した。
【0167】
なお光照射により表面の撥水性の低下したガラス板を実施例1と同様の方法で水酸化ナトリウム水溶液に浸し、引き続き洗浄し、加熱,冷却後その表面に水滴を滴下するとその表面は超撥水性を示した。
【0168】
(実施例17)
化合物1を化合物5(2重量部)に代える以外は実施例1と同様にして超撥水性を示す表面を形成し、その上に化合物12を実施例1と同様に塗布し、更に光を照射したところ光照射前は超撥水性を示していた表面の水との接触角は90°に低下した。
【0169】
なお光照射により表面の撥水性の低下したガラス板を実施例1と同様の方法で水酸化ナトリウム水溶液に浸し、引き続き洗浄し、加熱,冷却後その表面に水滴を滴下するとその表面は超撥水性を示した。
【0170】
(実施例18)
化合物1を化合物7(2重量部)に代える以外は実施例1と同様にして超撥水性を示す表面を形成し、その上に化合物12を実施例1と同様に塗布し、更に光を照射したところ光照射前は超撥水性を示していた表面の水との接触角は90°に低下した。
【0171】
なお光照射により表面の撥水性の低下したガラス板を実施例1と同様の方法で水酸化ナトリウム水溶液に浸し、引き続き洗浄し、加熱,冷却後その表面に水滴を滴下するとその表面は超撥水性を示した。
【0172】
(実施例19)
化合物1を化合物9(2重量部)に代える以外は実施例1と同様にして超撥水性を示す表面を形成し、その上に化合物12を実施例1と同様に塗布し、更に光を照射したところ光照射前は超撥水性を示していた表面の水との接触角は90°に低下した。
【0173】
なお光照射により表面の撥水性の低下したガラス板を実施例1と同様の方法で水酸化ナトリウム水溶液に浸し、引き続き洗浄し、加熱,冷却後その表面に水滴を滴下するとその表面は超撥水性を示した。
【0174】
(実施例20)
化合物1を化合物11(2重量部)に代える以外は実施例1と同様にして超撥水性を示す表面を形成し、その上に化合物12を実施例1と同様に塗布し、更に光を照射したところ光照射前は超撥水性を示していた表面の水との接触角は90°に低下した。
【0175】
なお光照射により表面の撥水性の低下したガラス板を実施例1と同様の方法で水酸化ナトリウム水溶液に浸し、引き続き洗浄し、加熱,冷却後その表面に水滴を滴下するとその表面は超撥水性を示した。
【0176】
(実施例21)
実施例14で用いた超撥水性を示す表面を形成するための塗料を作製する際にパーフェクター9155(50重量部)の代わりに下記構造のアゾベンゼン残基を有する高分子(以後化合物19と記述)(50重量部)を用いる以外は同様にして超撥水性を示す表面を形成するための塗料を作製した。
【0177】
【化28】
Figure 0004032444
【0178】
これを実施例1と同様にガラス板に塗布後100℃で30分間加熱することで超撥水性を示す表面が形成される。これに照射時間を2分間から10分間に代える以外は実施例1と同様にして光を照射したところ、表面の水との接触角が 120°まで低下した。
【0179】
次にガラスフィルターを東芝硝子(株)製Y−45に代える以外は同様の方法で光を照射後、この物品を120℃で2時間乾燥する。すると水との接触角が 120°まで低下した表面が150°以上の超撥水性を示す表面に戻っていた。なおY−45は430nm以上の波長の光を透過する。
【0180】
加熱温度を120℃から100℃に、加熱時間を2時間から6時間に代える以外は上記と同様にすることで水との接触角が120°まで低下した表面を150°以上の超撥水性を示す表面に戻すことができた。
【0181】
またY−45を用いた光照射を行わなくとも、加熱温度を120℃から150℃に、加熱時間を2時間から3時間に代えることで水との接触角が120°まで低下した表面を150°以上の超撥水性を示す表面に戻すことができた。
【0182】
化合物19の合成方法は以下の通りである。
【0183】
ポリビニルアルコール(繰り返し単位は約1500)(44重量部)を水(3000重量部)に加温しながら溶解し、完全に溶解した後室温まで冷却する。これに水酸化ナトリウム(160重量部)を水(2000重量部)に溶解したものを加える。この溶液をA液とする。4−アゾベンゼンカルボン酸クロライド(270重量部)をエチルメチルケトン(5000重量部)に溶解する。この溶液をB液とする。A,B両液を−2℃まで冷却した後混ぜ合わせ、速やかに激しく撹拌する。撹拌中は反応液の温度が−5〜0℃の間になるように調節する。5時間撹拌した後、反応液を静置する。下層の水溶液層を除去し、上層と析出している固体を洗液が中性になるまで5%塩化ナトリウム水溶液で良く洗う。メタノール(5000重量部)を加え固体を十分析出させた後濾過し、得られる固体を減圧で乾燥する。固体をなるべく少量のテトラヒドロフラン(以後THFと略記する)に溶解し、その液を濾紙で濾過後濾液を透析チューブに入れ、末端を漏れないようにチャックした後、そのチューブを濾液の10倍量のTHFに2日間浸漬する。透析チューブを引き上げ、中の溶液を取り出した後、この溶液の100倍の重量のメタノール中に滴下する。なお滴下中、メタノールは良く撹拌する。析出する固体を濾取し良く乾燥させ目的の化合物19(120重量部)を得る。元素分析の結果ポリビニルアルコールの水酸基の92%にアゾベンゼンが結合していることがわかった。
【0184】
(実施例22)
光感応性の材料を塗布した後含フッ素化合物を塗布し、光照射した実施例を記述する。
【0185】
始めに用いる含フッ素化合物(化合物20)の合成方法を記述する。
【0186】
【化29】
Figure 0004032444
【0187】
デュポン社製クライトックス157FS−L(平均分子量2500)(25重量部)をFC−72(100重量部)に溶解し、これに塩化チオニル(2重量部)と塩化メチレン(20重量部)を加え、撹拌しながら48時間還流する。反応液中の塩化チオニルやFC−72等をエバポレータで揮発させる。残渣を再びFC−72(100重量部)に溶解し、これにチッソ(株)製サイラエースS330(構造は3−アミノプロピルトリエトキシシラン)(3重量部),塩化メチレン (20重量部)を加え12時間撹拌後、12時間静置する。上層の塩化メチレン層を除き、FC−72を室温でエバポレータ、及び真空ポンプを用いて揮発させ、化合物20を得る。
【0188】
化合物1を加えない以外は実施例1の超撥水性を示す表面を形成するための塗料作製と同様の方法で塗料を作製する。これを実施例1と同様の方法でガラス板に塗布し加熱後、化合物12を塗布し乾燥する。次にこれを化合物20の0.1wt%FC−72溶液に10秒間浸漬後、速度3cm/秒で引き上げる。その後この板を120℃で20分間加熱する。こうして超撥水性を示す表面が得られる。これに実施例1と同様に光を照射すると超撥水性を示していた表面の水との接触角は120°まで低下した。
【0189】
(実施例23)
化合物20の代わりに化合物21を用いる以外は実施例22と同様の方法で超撥水性を示す表面が得、これに実施例1と同様に光を照射すると超撥水性を示していた表面の水との接触角は120°まで低下した。
【0190】
【化30】
Figure 0004032444
【0191】
なお化合物21はデュポン社製クライトックス157FS−L(平均分子量 2500)(25重量部)の代わりにダイキン工業(株)製デムナムSH(平均分子量3500)(35重量部)を用いる以外は実施例22記載の化合物20の合成と同様の方法で行った。
【0192】
(実施例24)
光感応性部位を有する含フッ素化合物を用いて超撥水性表面を形成し、それに光照射した実施例を記述する。
【0193】
始めに光感応性部位を有する含フッ素化合物(化合物22)の合成方法を記述する。
【0194】
【化31】
Figure 0004032444
【0195】
デュポン社製クライトックス157FS−L(平均分子量2500)(25重量部)をFC−72(100重量部)に溶解し、これに塩化チオニル(2重量部)と塩化メチレン(20重量部)を加え、撹拌しながら48時間還流する。反応液中の塩化チオニルやFC−72等をエバポレータで揮発させる。残渣を再びFC−72(100重量部)に溶解し、これにパラアミノアゾベンゼン(3重量部),塩化メチレン(50重量部),ピリジン(1重量部)を加え、48時間撹拌後、12時間静置する。上層の塩化メチレン層を除き、FC−72を濾紙で濾過後、FC−72をエバポレータ、及び真空ポンプを用いて揮発させ、化合物22を得る。
【0196】
次に超撥水性を示す表面を形成するための塗料の作製方法を示す。
【0197】
油化シェル・エポキシ(株)製のエポキシ樹脂(EP1004)(44重量部),丸善石油化学(株)製フェノール樹脂であるマルカリンカーM(30重量部),北興化学(株)製の硬化促進剤であるトリエチルアンモニウムカリボール塩(商品名TEA−K)(1重量部)をエチルメチルケトン(950重量部)と酢酸エチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル(50重量部)の混合溶剤に溶解し、これに含フッ素化合物として化合物22(3重量部)と花王(株)製界面活性剤ホモゲノールL−95(0.1重量部)を加え良く撹拌する。次に日本アエロジル(株)製アエロジル130(平均粒径は約16nm)(8重量部)と日本シリカ工業(株)製Nipsil E−220A(平均粒径は約1.5μm)(8重量部)を加え十分に撹拌する。こうして超撥水性を示す表面を形成するための塗料が作製される。なおアエロジル130はNipsil E−220A の約1/94の粒径である。
この塗料に長さ3cm,幅2cm,厚さ約1mmのガラス板を10秒間浸漬した後、速度3cm/秒で引き上げる。このガラス板を120℃で30分間、引き続き200℃で45分間加熱することで、水との接触角が150°以上の表面、即ち超撥水性の表面を有するガラス板が作製される。
【0198】
この表面に東芝硝子(株)製色ガラスフィルターUV−D36Bを介してウシオ電機(株)製500Wキセノンランプで光を2分間照射する。光の強度は6.6mW/cm2 である。すると表面の水との接触角が120°まで低下した。
【0199】
次にガラスフィルターをUV−D36Bから東芝硝子(株)Y−45に代える以外は上記と同様に光を照射後、この物品を120℃で2時間乾燥する。すると水との接触角が120゜まで低下した上記表面が150゜以上の超撥水性を示す表面に戻っていた。
【0200】
加熱温度を120℃から100℃に、加熱時間を2時間から6時間に代える以外は上記と同様に処理することで水との接触角が120゜まで低下した上記表面を150゜以上の超撥水性を示す表面に戻すことができた。
【0201】
またY−45を用いた光照射を行わなくとも、加熱温度を120℃から150℃に、加熱時間を2時間から3時間に代えることで水との接触角が120゜まで低下した上記表面を150゜以上の超撥水性を示す表面に戻すことができた。
【0202】
(実施例25)
実施例1で作製した超撥水性の表面を有するガラス板に化合物12を塗布したものを用意する。この8のガラス板の超撥水性の表面上に図3に示すようにガラス面の約半分がかぶさるように9のマスクを置く。
【0203】
このマスクは400nm未満の波長の光は透過しない。マスクを置いた後これに実施例1と同様の方法で光を照射する。マスクを取り、ガラス板に0.1wt%のメチルオレンジと0.1wt%のエタノール水溶液で湿らしたスポンジを接触させる。するとマスクした部分にはこの溶液は付着しなかったが、光を照射された部分にはその溶液が付着した。図3で付着した溶液は10である。これに通常のインクジェットプリンタ用の用紙を接触させることにより、ガラス板上のメチルオレンジの溶液がこの用紙に移った。
【0204】
(実施例26)
図4に示す印刷機によって印刷の実験をした。その結果この方法で印刷できることを確認した。
【0205】
この印刷機の原理は次の通りである。11の光源、及び12のミラーを用いて13のドラム状の感光体に光を照射する。感光体の作製方法は後述する。
【0206】
これにより感光体表面に超撥水性を示す部分とそうでない部分からなる一種の潜像が形成される。次にこのドラムは14のインクドラムに接触する。インクドラムは感光体と接触する部分がスポンジ状になっており、そこはインクで湿っている。インクドラムとの接触で感光体の光を照射された部分にインクが付着する。しかし照射されない部分は超撥水性を示すのでインクは付着しない。これが 18の紙と接触し紙にインクが移ることによって印刷できる。
【0207】
紙にインクを移した後、感光体は19のクリーニング用スポンジで拭かれる。更に感光体は20のドライヤーで表面を150℃に加熱される。加熱時間は3時間である。加熱温度を100℃とする場合は加熱時間を24時間とする。その後感光体は21の送風機で常温まで冷却される。
【0208】
なおこの感光体は直径約10cmのアルミニウム製円筒に実施例21で作製した超撥水性を示す表面を形成するための塗料を実施例21と同様の方法で塗布後乾燥させたものである。その表面は超撥水性を示したが、実施例21と同様に400nm未満の光を照射すると撥水性が低下し、水との接触角が110°になった。
【0209】
【発明の効果】
本発明により光によって超撥水性を示す表面を有する物品の超撥水性を制御することが可能となった。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の物品表面の撥水性が変化する機構の推定図である。
【図2】本発明の物品表面の撥水性が変化する機構の推定図である。
【図3】本発明の物品表面の1つである印刷用原版を用いた印刷例である。
【図4】本発明の印刷機の模式図である。
【符号の説明】
1…物品、2…超撥水性を示す表面を形成する膜、3…パーフルオロポリエーテル、4…[4−(ジアミノ)フェニル]フェニルメタノール、5…4の異性体、6…ポリビニルアルコールと4−カルボキシアゾベンゼンのエステル化物(アゾベンゼンはトランス体)、7…6のシス体、8…超撥水性を示す表面を有するガラス板、9…マスク、10…メチルオレンジ溶液、11…光源(レーザー,ランプ等)、12…ミラー、13…感光体、14…インクドラム、15…インクを入れたバット、16…用紙搬送ベルト、17…用紙搬送ベルト用ロール、18…用紙、19…感光体クリーニング用のスポンジ、20…ドライヤー、21…送風機、22…送風機用の空気の取り入れ口。

Claims (13)

  1. 微粉末を含有する樹脂により形成され、水に対する接触角が150゜以上の表面層と、
    該表面層上に形成された光感応材料とを有し、前記光感応性材料はフォトクロミック化合物、光酸発生剤、又は光塩基発生剤からなり、400nm未満の波長の光を照射することにより、前記表面層の水に対する接触角が150゜未満になることを特徴とする物品。
  2. 請求項1において、前記フォトクロミック化合物がトリフェニルメタン誘導体又はアゾベンゼン誘導体であることを特徴とする物品。
  3. 請求項1又は2のいずれかにおいて、前記物品の光を照射することによって上記表面の水との接触角が150゜未満になる上記表面を形成する部材中に2種類以上の微粒子が分散されており、そのうち最も小さなものの平均粒径が最も大きなものの平均粒径の1/50〜1/1000であることを特徴とする物品。
  4. 請求項3において、平均粒径の小さい方の微粒子の材質が酸化珪素,酸化アルミニウム、或いは酸化チタンであることを特徴とする物品。
  5. 請求項1から4のいずれかにおいて、前記表面層を形成する部材中に下式で示される含フッ素化合物が含有されていることを特徴とする物品。
    Figure 0004032444
    (m,m′は12以上30以下の整数、nは18以上43以下の整数、n′は31以上75以下の整数を表す。)
  6. 請求項1から5のいずれかにおいて、前記表面層の水との接触角は、光の照射により150゜未満になった後、100℃以上の加熱を加えられることによって、再度150゜以上になることを特徴とする物品。
  7. 感光体と、該感光体にインクを供給するインクドラムと、前記感光体に光を照射する光源とを有し、前記感光体は、微粉末を含有する樹脂により形成された表面層と、該表面層上に形成された光感応材料とを有し、前記光感応性材料は、フォトクロミック化合物、光 酸発生剤、又は光塩基発生剤からなり、400nm未満の波長の光を照射することにより、前記表面層の水に対する接触角が150゜未満になることを特徴とする印刷機。
  8. 請求項7において、前記フォトクロミック化合物がトリフェニルメタン誘導体又はアゾベンゼン誘導体であることを特徴とする印刷機。
  9. 請求項7又は8のいずれかにおいて、前記物品の光を照射することによって上記表面の水との接触角が150゜未満になる上記表面を形成する部材中に2種類以上の微粒子が分散されており、そのうち最も小さなものの平均粒径が最も大きなものの平均粒径の1/50〜1/1000であることを特徴とする印刷機。
  10. 請求項9において平均粒径の小さい方の微粒子の材質が酸化珪素,酸化アルミニウム、或いは酸化チタンであることを特徴とする印刷機。
  11. 請求項7から10のいずれかにおいて、前記表面層を形成する部材中に下式で示される含フッ素化合物が含有されていることを特徴とする印刷機。
    Figure 0004032444
    (m,m′は12以上30以下の整数、nは18以上43以下の整数、n′は31以上75以下の整数を表す。)
  12. 請求項7から11のいずれかにおいて、前記表面層の水との接触角は、光の照射により150゜未満になった後、100℃以上の加熱を加えられることによって、再度150゜以上になることを特徴とする印刷機。
  13. 請求項7から12のいずれかにおいて、前記感光体の表面層は、水に対する接触角が150°以上の部分と、150°未満の部分とを有することを特徴とする印刷機。
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