JP6094910B2 - 円筒型電池の製造方法 - Google Patents
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Description
本発明は、円筒型電池の製造方法に関し、特に、電池の高容量化を容易にする円筒型電池の製造方法に関する。
近年、電子機器のコードレス化が急速に進む中、これらの電源として小型かつ軽量で高エネルギ密度を有する二次電池への要望が高まりつつある。従来、そのような電池は、正極と負極とを、両者間にセパレータを介在させて、渦巻状に捲回して構成した電極群を、金属製の電池缶(電池ケース)に収納し、その電池ケースに電解液を所定量注入した後、電池ケースの上部を正極および負極のいずれかの端子を兼ねた封口板で密閉して構成される。
一方、電極群の電池缶への挿入を容易として生産性を向上させるために、電極群の外径を電池缶の内径に対してある程度小さくし、両者の間に隙間を生じさせることが行われる。この場合に、その隙間をそのまま放置すると、捲回した電極群に緩みが生じ、電池性能が低下することがある。このため、電極群を電池缶に挿入した後に、電池缶の径を縮径することが行われる(特許文献1および2参照)。
特許文献1では、内径が、電池缶の初期外径よりも小さい円筒状のダイスに、電池缶を下側(底部側)から挿入することで、電池缶を所望外径まで縮径している。このため、電池缶の側壁の下部とダイスとが接触し、電池缶の縮径が開始されると、電池缶が縮径されるときの歪みにより、底部外面が外側に膨らむように電池缶が変形することがある。その結果、電池形状を所望形状に形成することができなくなるとともに、電池高さを所望高さに管理することも困難となる。
特許文献2は、リング状のダイスを使用して、特許文献1と同様の方法で電池缶を縮径するとともに、電池缶の底部に下側から受型を押し当てることで、縮径の際の電池缶の望ましくない変形を防止しようとしている。
特許文献2では、電池缶の底部の周縁部に受型を押し当てているので(特許文献2の図2参照)、その部分が外側(下側)に膨らむのを抑えることができる。しかしながら、縮径の際に電池缶の底部に作用する変形力が大きいような場合には、底部の中央部が外側に膨らむのを抑えることはできない。
上記の問題点に対して、底部の全体に下側から受型を押し当てることで、底部の中央部が外側に膨らむのを抑えることも考えられる。ところが、底部の全体に下側から受型を押し当てると、縮径の歪みが、底部が外側に膨らむ方向に作用せず、底部が内側に凹む方向に作用することがある。その結果、底部が外側に膨らむ場合と同様に、電池の外観不良が発生するとともに、電池を所定機器に装着した場合の接点不良などの課題が生ずる。
さらに、底部に生じた変形を後で矯正することも考えられる。しかしながら、一旦、生じた変形を後で矯正しても、精度の高い平面を得ることは困難である。
本発明は、正極、負極およびセパレータを含む電極群と、前記電極群を収容する電池缶とを具備した円筒型電池を製造する方法であって、
前記電池缶は、円形の底部、開口端部を有する円筒状の側壁、および前記底部と前記側壁との接続部を含み、
前記電極群を前記電池缶に挿入した後、前記側壁の外径Dcを初期外径D1から縮径する工程(a)を備え、
前記工程(a)が、内径Ddが前記初期外径D1よりも小さいリング状のダイスの中に、前記電池缶を前記底部側から挿入する工程(a1)、および、前記ダイスを前記開口端部の方向に相対的に移動させることで、前記電池缶に縮径力を印加する工程(a2)を含み、
前記ダイスと前記電池缶とが接触して、前記縮径力の印加が開始されるときの接触開始部分が、前記接続部の中で、前記底部の周縁部の内側面よりも、前記電池缶の軸方向の前記開口端部側の位置にあり、
前記工程(a)に供される前記電池缶の前記接続部が、前記電池缶の外側面に前記電池缶の軸方向に沿った曲率半径R2を有する唯一の屈曲部を有している、円筒型電池の製造方法に関する。
前記電池缶は、円形の底部、開口端部を有する円筒状の側壁、および前記底部と前記側壁との接続部を含み、
前記電極群を前記電池缶に挿入した後、前記側壁の外径Dcを初期外径D1から縮径する工程(a)を備え、
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前記ダイスと前記電池缶とが接触して、前記縮径力の印加が開始されるときの接触開始部分が、前記接続部の中で、前記底部の周縁部の内側面よりも、前記電池缶の軸方向の前記開口端部側の位置にあり、
前記工程(a)に供される前記電池缶の前記接続部が、前記電池缶の外側面に前記電池缶の軸方向に沿った曲率半径R2を有する唯一の屈曲部を有している、円筒型電池の製造方法に関する。
本発明によれば、電池缶を縮径するときの底部の変形を簡易かつ効果的に抑えることができる円筒型電池の製造方法を提供することができる。
本発明の新規な特徴を添付の請求の範囲に記述するが、本発明は、構成及び内容の両方に関し、本発明の他の目的及び特徴と併せ、図面を照合した以下の詳細な説明によりさらによく理解されるであろう。
本発明は、正極、負極およびセパレータを含む電極群と、その電極群を収容する電池缶とを具備した電池を製造する方法に関する。ここで、電池缶は、円形の底部、開口端部を有する円筒状の側壁、および、底部と側壁との接続部を含む。接続部は、電池缶の底部との境界の曲がり始めの位置から、側壁との境界の曲がり終わりの位置までを構成している。そして、本発明の製造方法は、電極群を電池缶に挿入した後、側壁の外径Dcを初期外径D1から、例えば所望外径D2まで縮径する工程(a)を備える。
上記工程(a)は、内径Ddが初期外径D1よりも小さいリング状のダイスの中に、電池缶を底部側から挿入する工程(a1)、および、ダイスを、電池缶の側壁の開口端部の方向に相対的に移動させることで、電池缶に縮径力を印加する工程(a2)を含む。
図3Aに示すように、ダイスと電池缶とが接触して、縮径力の印加が開始されるときの接触開始部分P1は、接続部(22)の中で、底部の周縁部(19)の内側面SA1よりも、電池缶の軸方向の開口端部側の位置にある。本発明によれば、接触開始部分P1が、そのような位置にあることで、電池缶の側壁を縮径するための縮径力F1の電池缶の径方向の分力F2により、電池缶の側壁を効果的に縮径できるとともに、底部が撓むように変形するのを抑えることができる。その結果、底部が外側(下側)に膨らんだり、内側に凹んだりするのを防止することができる。さらに、縮径力F1の電池缶の軸方向の分力F3も容易に小さくすることができるので、電池缶の側壁が内側に倒れるように回転するのを抑制することができ、その回転力により底部が外側に膨れるのを防止することができる。このとき、接続部の曲率半径をR2(図3B参照)とし、底部の周縁部の厚みをt1とすると、曲率半径R2は、厚みt1の2倍以上であることが好ましい。
以上の点をより詳しく説明する。図3Aに示すように、接触開始部分P1が内側面SA1よりも上側にあると、縮径の開始時点から、ダイスによる縮径力F1の、電池缶の径方向の分力F2が、電池缶の底部とは重ならず、効果的に電池缶の側壁を縮径するように作用する。これにより、分力F2が、円形である底部を外周側から押圧することが抑えられる。したがって、底部が撓んで、電池缶の外側に膨らんだり、内側に凹んだりするように変形するのを防止することができる。
また、縮径力F1の、電池缶の軸方向に平行な分力F3と、F1との間の角度θ1を大きくすることが容易となるので、分力F3を分力F2よりも小さくすることが容易となる。その結果、電池缶の側壁が内側に倒れる方向(図3Aで反時計回りの方向)に、側壁を回転させる回転力を小さくすることができる。これにより、その回転力で電池缶の底部が外側に膨らむように変形するのを防止することができる。
なお、底部を下側から受型により抑えることで、底部が膨らむのを防止する方法は、缶壁の厚み、缶壁材料の硬度、およびダイスと缶表面との間の摩擦力等の他の要因の影響を受けやすい。これらの要因に変動があると、縮径の際に底部を膨らませようとする力も大きくなり得る。そして、そのような変形力が想定以上に大きくなると、受型で押さえるだけでは、底部が膨らむのを抑制できないか、または、底部が外側に膨らむ代わり内側に凹むように変形することがある。
接触開始部分P1が内側面SA1よりも上側にあることで、縮径力F1自体が想定以上に大きくなり、それに応じて、電池缶の径方向の分力F2が大きくなっても、分力F2は電池缶の底部とは重ならない位置で作用する。このため、上記の他の要因によらず、底部の膨れを抑えながら、効果的、かつ安定的に電池缶の側壁を縮径することができる。その結果、良好な外観形状をした円筒型電池を安定的に製造することができる。
ここで、電池缶の縮径は、内径Ddが異なる複数個のダイスを使用し、徐々に小さな内径Ddのダイスに電池缶を挿入することで、電池缶を、段階的に縮径することができる。これにより、ダイス1個当たりによって電池缶に印加される縮径力を小さくすることができる。よって、より効果的に底部の変形を防止することができ、缶底部の変形がない良好な外観形状をした円筒型電池を製造することができる。
以下、図面を参照して、本発明の一実施形態について説明する。図1Aに、本発明の一実施形態に係る円筒型電池の製造方法が適用される円筒型電池の一例を斜視図により示す。図1Bに、電池缶の構造を、簡略化した断面図により示す。図1Aにおいては、電池の内部構造の理解を容易とするために、電池の一部分を断面図により示している。図1Bにおいては、電池缶は、溝入れする前の状態を示している。また、図1B中の破線は、底部と接続部との境界X、および側壁と接続部との境界Yを示している。
図示例の電池100は、概念図であり、例えば単3形ニッケル水素蓄電池であり、円形の底部18、開口端部20aを有する円筒状の側壁20および底部18と側壁20とを接続する接続部22を含む電池缶1を備えている。電池缶1は導電性材料(例えば、SPCCおよびSPCD等の冷間圧延鋼板、またはニッケルメッキ鋼板等の金属)から形成されている。電池缶1の内部には、アルカリ電解液(図示せず)とともに、正極12、負極13及びセパレータ14を含む略円柱状の電極群11が収容されている。電極群11は、正極12および負極13を、間にセパレータ14を挟んで渦巻き状に捲回して形成されている。電極群11の最外周部には、負極13が配置されており、その負極13が、電池缶1の内周壁に直接接触している。
以上の構成により、電池缶1は電池100の負極外部端子としての機能を有している。電池缶1の開口端部の内側には、リング状の絶縁材(例えば樹脂)から形成されたガスケット2が配置されている。電池缶1の開口端部は、導電性材料(例えば金属)から形成された蓋板(封口板)3により塞がれている。封口板3は、ガスケット2により電池缶1とは電気的に絶縁されている。封口板3の上には、突起10aを有する正極端子板10が配置されている。正極端子板10は、封口板3と電気的に接続されている。
電池缶1の側壁の開口端部の近傍には、ガスケット2を確実に固定するために、開口端部に沿って、溝部4が設けられている。溝部4は、電池缶1の側壁を内側に凹ませて形成されている。封口板3は、周縁部をガスケット2により上下から挟まれ、そのガスケット2が、溝部4を形成する電池缶1の側壁(溝部形成壁)と、電池缶1の開口端部を内側に曲げたカール部1aとにより挟持されることで、電池缶1の開口端部に固定されている。なお、図示例の溝4は、電池缶1の軸方向に圧縮されている。
封口板3は、中央部にガス抜き孔8を有している。そのガス抜き孔8を封口板3の外面側から塞ぐように、ゴム製の円柱状の弁体9が配置されている。弁体9は、正極端子板10に形成された突起の内部に収容されており、その突起の頂部の内側面により、所定の圧力で、封口板3に向かって押圧されている。これにより、通常時には、ガス抜き孔8は、弁体9により気密に閉塞されている。一方、電池缶1内でガスが発生してその内圧が高まった場合には弁体9がガス圧により圧縮され、ガス抜き孔8が開いて、電池缶1の内部からガスが放出される。このように、封口板3、弁体9及び正極端子板10は、安全弁を形成している。
電極群11の一端部(封口板3側端部)と封口板3との間には、円形のスリット付きの絶縁部材16が配置され、正極12に接続された正極リード15が、そのスリットを通して、正極12と封口板3とを接続している。これにより、正極端子板10と正極12とが電気的に接続されている。電極群11の他端部(電池缶1の底部側端部)と電池缶1の底部との間にも円形の絶縁部材17が配置されている。そして、電池缶1の外側面は、底部を除いて、絶縁性の外装ラベル6で被覆されている。更に、カール部1aと外装ラベル6との間には、ドーナツ状の絶縁板(漏液防止板)7を配置してもよい。
次に、電池缶の縮径について説明する。図2Aに、縮径装置の一例を示す。図2Bに、縮径装置の他の一例を示す。図2Aに示す縮径装置30Aは、電池100を電池缶1の軸方向に沿って移動させる移動機構31と、移動機構31により移動される電池が挿入される、リング状の縮径用のダイス32Aとを備えている。
移動機構31は、例えば、垂直部材31a、およびその両端に対向配置された2つの水平部材31bを有する枠体31cと、枠体31cに固定されたエアシリンダ33と、エアシリンダ33と接続され、電池の底部と当接して、電池を一定の支持力で下側(底部側)から支持する下側支持部材34と、枠体31cに固定された上側支持部材36とを有する。電池100は、下側支持部材34と上側支持部材36とに挟まれて支持されている。下側支持部材34の電池の底部と当接する部分(以下、受型という)は筒状とし、縮径前の底部の周縁部とだけ当接させることができる。あるいは、受型は、縮径前の底部の全体と当接するように形成することもできる。
そして、移動機構31は、下側支持部材34および上側支持部材36を介して枠体31cにより支持された電池を、下側に向かって押し動かすための駆動力を発生する電動機35と、その出力軸(図示せず)に接続された例えばボールねじ37とを含んでいる。電動機35が発生する回転駆動力は、ボールねじ37により、直線的な下向きの駆動力に変換される。その下向きの駆動力により、電池を支持した枠体31cが下向きに移動され、電池が、底部側からダイス32Aの中に挿入され、ダイス32Aの中を下に向かって移動する。ここで、電池缶1(側壁20)の外径(直径)Dcの初期値(初期外径)をD1とし、ダイス32Aの内径(最小径)をDdaとすると、Dda<D1である。これにより、径Dcが縮径される。なお、電池缶1を縮径した後の所望外径をD2とすると、D2=Ddaである。
図2Bに示す縮径装置30Bは、2つのリング状の縮径用のダイス32Bおよび32Cを備える点が、図2Aの縮径装置30Aと異なっている。縮径装置30Bの移動機構31は、縮径装置30Aのものと同様である。ダイス32Bおよび32Cは、電池100が、初めにダイス32Bの中に挿入され、その後で、ダイス32Cの中に挿入されるように、電池の移動方向に同軸に並べて配置されている。なお、ダイス32B、32Cには、内径が異なり得ること以外、ダイス32Aと同じ形状のダイスを使用することができる。
ダイス32Bの内径をDdb(Ddb<D1)とし、ダイス32Cの内径をDdc(Ddc<D1)とすると、Ddc<Ddbである。また、Ddc=Dda=D2とすることができる。2つのダイス32Bおよび32Cに電池100を順次挿入することで、電池缶1が段階的に縮径される。これにより、1個のダイスにより電池缶に印加される縮径力を小さくすることができる。よって、電池缶の底部が外側に膨出するような変形を、より効果的に抑制することができる。
図3Aに、電池缶の接続部の近傍の部分を、電池缶の中心軸を含む平面により切断した断面図により示す。図3Bに、接続部を断面図により示す。図3Cに、ダイスを、中心軸を含む平面により切断した断面図により示す。
図3Cに示すように、ダイス32は、内周側の面に、電池缶1と当接する当接部38を有している。当接部38が電池缶1の接続部22と当接することで、電池缶1の縮径が開始される。当接部38との当接により電池缶1に縮径力F1が作用し始めるときの電池缶1の外側面の部分(接触開始部分)P1は、電池缶1の軸方向において、底部18の周縁部19の内側面SA1よりも上側(開口端部側)にある。縮径力F1と、電池缶1の軸方向上向きの分力F3との間の角度θ1は、50°以上、さらには60°以上であることが好ましい。これにより、縮径力F1の、電池缶1の径方向の分力F2を大きくする一方で、軸方向の分力F3を小さくすることができる。
当接部38は、軸方向における中央部がダイス32の内側に向かって円弧状に突出するような断面形状を有している。その頂部38aの断面形状の曲率半径をR1とする。また、ダイス32の基部39と当接部38の頂部38aとをつなぐ斜部38bと、ダイス32の軸方向とがなす角度をθ2とする。曲率半径R1は、電池缶1の底部18の周縁部19の厚みt1の1〜5倍であるのが好ましい。角度θ2は、3〜15°であるのが好ましい。
一方、電池缶1の接続部22も、円弧状の輪郭線を有する断面形状を有しており、その曲率半径をR2とする。より具体的には、電池缶1を電池缶1の中心軸を含む平面で切断した断面図において、曲率半径R2は、接続部22における電池缶1の外側の輪郭線の曲率半径である。曲率半径R2は、底部18の周縁部19の厚みt1の2倍以上、さらには、2〜5倍であるのが好ましい。
電池缶1は、内部に電極群および電解液を収容した状態で、その軸心をダイス32の軸心と一致させて、ダイス32の中空部に底部18側から挿入される。これにより、電池缶1の接続部22と、ダイス32の当接部38とが接触開始部分P1で当接し、縮径装置30A(30B)による電池缶1の縮径が開始される。
以下に、本発明の実施例を説明する。なお、本発明は、以下の実施例に限定されない。
(実施例1)
トランスファープレスを使用して、厚みが0.5mmである冷延鋼板を深絞り加工することにより電池缶を形成した。そして、電池缶の側壁の開口端部の近傍に、側壁を一周するように幅が1mm、深さが1mmの溝を形成した。電池缶の全体にニッケルメッキを施した。電池缶(側壁)の初期外径(直径)D1は、14.2mmであり、底部および側壁の厚みは0.3mmであった。底部と側壁との接続部の外側面の曲率半径R2は、0.7mmであった。また、縮径前の底部の外径(底部と接続部との境界Xが描く円の直径)は、12.8mmであった。
(実施例1)
トランスファープレスを使用して、厚みが0.5mmである冷延鋼板を深絞り加工することにより電池缶を形成した。そして、電池缶の側壁の開口端部の近傍に、側壁を一周するように幅が1mm、深さが1mmの溝を形成した。電池缶の全体にニッケルメッキを施した。電池缶(側壁)の初期外径(直径)D1は、14.2mmであり、底部および側壁の厚みは0.3mmであった。底部と側壁との接続部の外側面の曲率半径R2は、0.7mmであった。また、縮径前の底部の外径(底部と接続部との境界Xが描く円の直径)は、12.8mmであった。
正極と負極との間にセパレータを挟んで積層したものを、渦巻状に捲回して、電極群を構成した。これを、電池缶に挿入し、アルカリ電解液を注入した。その後、正極端子を兼ねた封口板を、周縁部にガスケットを配して電池缶の開口端部に装着し、電池缶の開口縁を内側にカールさせて、開口端部を封口した。以上のようにして、試験用電池を10個作製した。
図2Aに示したような、1つのダイス(32A)により電池缶を縮径する縮径装置を使用して、10個の試験用電池の電池缶を順次縮径した。このとき、下側支持部材34の、電池缶の底部と接する部分(以下、受型という)には、筒状の部材を使用し、その外径は、13.5mmとした。受型の内径は、それよりも4mmだけ小さくした。底部の中央部は、受型と接触しないようにした。ダイスの当接部の内径Ddは、14mmであり、曲率半径R1は、0.3mmであった。縮径後の電池缶の外径Dcは、所望外径D2である14mmになり、電池缶は、0.2mm縮径された。接触開始部分P1は、電池缶の軸方向において、内側面SA1(基準面)よりも上にあった。そして、縮径後に、試験用電池を縮径装置から取り外し、10個の試験用電池について、電池缶の底部が縮径により外側(下側)に膨らんだ変形量を測定した。
変形量の測定には、接触式形状測定器を使用した。より具体的には、測定器の接触端子(25μmの針)を電池缶の底部の外側面に接触させて、底部中央から周縁部まで、送り速度0.5mm/秒で移動させることで、縮径前と縮径後の底部形状を得た。そして、縮径前の底部形状と縮径後の底部形状とを重ね合わせ、形状の最大の差異(通常は底部中央の変位量)により変形量を測定した。そして、10個の試験用電池の変形量の平均値を算出することで底部膨出量を得た。
(実施例2)
内径が14.1mmである第1ダイス(32B)、および内径が14mmである、実施例1のダイス(32A)と同じ第2ダイス(32C)、の2つを使用し、試験用電池を第1ダイス(32B)に挿入した後、第2ダイス(32C)に挿入する順序で縮径した。それ以外は、実施例1と同様にして、10個の試験用電池を縮径し、底部膨出量を得た。第1ダイス(32B)の当接部の曲率半径は第2ダイス(32C)の当接部の曲率半径R1と同じである。
内径が14.1mmである第1ダイス(32B)、および内径が14mmである、実施例1のダイス(32A)と同じ第2ダイス(32C)、の2つを使用し、試験用電池を第1ダイス(32B)に挿入した後、第2ダイス(32C)に挿入する順序で縮径した。それ以外は、実施例1と同様にして、10個の試験用電池を縮径し、底部膨出量を得た。第1ダイス(32B)の当接部の曲率半径は第2ダイス(32C)の当接部の曲率半径R1と同じである。
(比較例1)
図4に示すように、電池缶の側壁20Aの初期外径D1が14.5mmであり、縮径前の底部18Aの外径が13.1mmである試験用電池を使用したこと、並びに、接触開始部分P1が、電池缶の軸方向において、底部の周縁部の内側面SA1よりも下側であったこと、以外は、実施例1と同様にして、10個の試験用電池を縮径し、底部膨出量を得た。
図4に示すように、電池缶の側壁20Aの初期外径D1が14.5mmであり、縮径前の底部18Aの外径が13.1mmである試験用電池を使用したこと、並びに、接触開始部分P1が、電池缶の軸方向において、底部の周縁部の内側面SA1よりも下側であったこと、以外は、実施例1と同様にして、10個の試験用電池を縮径し、底部膨出量を得た。
(比較例2)
図5に示すように、接続部22Bの曲率半径(R2)が0.4mmであること、並びに、接触開始部分P1が、電池缶の軸方向において、底部の周縁部の内側面SA1よりも下側であったこと、以外は、実施例1と同様にして、10個の試験用電池を縮径し、底部膨出量を得た。
図5に示すように、接続部22Bの曲率半径(R2)が0.4mmであること、並びに、接触開始部分P1が、電池缶の軸方向において、底部の周縁部の内側面SA1よりも下側であったこと、以外は、実施例1と同様にして、10個の試験用電池を縮径し、底部膨出量を得た。
(比較例3)
図6に示すように、接続部22Cの曲率半径が一様ではなく、接続部22Cと側壁20Cとは正接しておらず、境界で缶壁が折れ曲がっている電池缶を使用した。接続部22Cの曲率が一様な部分の曲率半径(R2)は1.2mmとした。また、接触開始部分P1は、電池缶の軸方向において、底部の周縁部の内側面SA1よりも下側であった。上記以外は、実施例1と同様にして、10個の試験用電池を縮径し、底部膨出量を得た。比較例3においては、接続部の中心は、水平距離で、側壁の外側面から0.7mmの位置にあった。側壁と底部とが正接している場合には、上記の距離は1.2mmである。したがって、比較例3においては、側壁と底部とが正接している場合よりも、接続部の中心は、水平距離で0.5mmだけ側壁寄りの位置にあった。このような比較例3は、深絞り加工により電池缶を製作する際に、深絞り加工の工法、および、使用する金型によっては、接続部の中心が側壁側に偏る場合があることと対応する。
図6に示すように、接続部22Cの曲率半径が一様ではなく、接続部22Cと側壁20Cとは正接しておらず、境界で缶壁が折れ曲がっている電池缶を使用した。接続部22Cの曲率が一様な部分の曲率半径(R2)は1.2mmとした。また、接触開始部分P1は、電池缶の軸方向において、底部の周縁部の内側面SA1よりも下側であった。上記以外は、実施例1と同様にして、10個の試験用電池を縮径し、底部膨出量を得た。比較例3においては、接続部の中心は、水平距離で、側壁の外側面から0.7mmの位置にあった。側壁と底部とが正接している場合には、上記の距離は1.2mmである。したがって、比較例3においては、側壁と底部とが正接している場合よりも、接続部の中心は、水平距離で0.5mmだけ側壁寄りの位置にあった。このような比較例3は、深絞り加工により電池缶を製作する際に、深絞り加工の工法、および、使用する金型によっては、接続部の中心が側壁側に偏る場合があることと対応する。
以上の結果を表1および表2に示す。
表1および2に示すように、実施例1および2は、底部膨出量が0.04mm以下であり、目視では、電池缶の底面の膨れはほとんど確認できなかった。これに対して、比較例1〜3は、底部膨出量が0.22mm以上であり、目視でも、電池缶の底面の膨れを確認することができた。これは、比較例1〜3では、接触開始部分P1が電池缶の軸方向において、底部の周縁部の内側面SA1よりも下側であったために、縮径開始時において、縮径力F1の電池缶の径方向の分力F2が底部を撓むように変形させたためと考えられる。また、縮径力F1自体も、比較例1〜3は、実施例1および2よりも大きくなるために、縮径力F1の電池缶の軸方向の分力F3も実施例1および2と比べて、大きくなったものと考えられる。その結果、電池缶の側壁を内側に倒させるような回転力(図3等で反時計方向の回転力)が缶壁に作用するために、底部膨出量が大きくなったものと考えられる。
作図により、縮径力F1の電池缶の軸方向からの傾きθ1(F3とF1との間の角度)を求めたところ、実施例1および2では、θ1は、50°以上であったのに対して、比較例1〜3では、θ1は、40°以下であった。その結果、実施例1および2では、分力F3が、分力F2と比べて小さくなる。よって、電池缶の缶壁が図3等で反時計方向に回転しないために、電池缶の底部の膨れが防止できたものと考えられる。なお、θ1は、60°以上であるのがより好ましいと考えられる。
また、2つのダイスを使用して電池缶を0.1mmずつ段階的に縮径した実施例2は、1つのダイスだけを使用して、0.2mmを1回の加工で縮径した実施例1よりも底部膨出量は小さかった。これは、ダイスを複数個使用して、段階的に縮径した方が、ダイス1個当たりから電池缶が受ける外力が小さくなるので、より効果的に電池缶の底面の膨れを防止することができたものと考えられる。しかしながら、目視によっては、両者の間に差異は認められなかった。以上のように、接触開始部分P1を、電池缶の軸方向において、底部の周縁部の内側面SA1よりも上側にすることで、円筒型電池を縮径したときに、電池缶の底部が外側に膨出するように変形せず、良好な外観形状の電池が得られることが確かめられた。
比較例1では、縮径前の電池缶の外径(直径)は14.5mmであり、実施例1等よりも大きいので、電池缶の底部近傍の空間が広がり、電極群を電池缶に容易に挿入することができた。特に、電極群の最外周にある電極は、電池缶の底部近傍の空間が広くないと、電極が折れ曲がり、その結果、短絡不良や活物質の脱落による容量低下が発生する。電池缶の外径を14.5mmとすることで、そのような不都合は回避できた。また、電解液を電池缶に注入したときにも、電極群と電池缶との隙間が大きいために、電解液を電極群に容易に浸透させることができた。また、電解液が電池缶の外に漏れることも容易に防止できた。また、比較例2では、接続部の曲率半径R2を小さくすることで、電池缶の底部近傍の空間を拡げることができたため、電極群を電池缶に容易に挿入できた。
本発明によれば、接触開始部分が、電池缶の底部の周縁部の内側面よりも、電池缶の軸方向で、電池缶の開口端部側の位置にあるという条件を少なくとも満たすことで、電池缶を縮径するときの、電池缶の底部の変形を抑えることができる。これにより、所望形状および寸法の円筒型電池を安定的に製造することができる。なお、内径が異なる複数個のダイスを使用して、電池缶を段階的に縮径するときには、各々のダイスが実際に電池缶と接触するときに、上記の条件が満たされていればよい。
本発明を現時点での好ましい実施態様に関して説明したが、そのような開示を限定的に解釈してはならない。種々の変形及び改変は、上記開示を読むことによって本発明に属する技術分野における当業者には間違いなく明らかになるであろう。したがって、添付の請求の範囲は、本発明の真の精神及び範囲から逸脱することなく、すべての変形及び改変を包含する、と解釈されるべきものである。
1…電池缶、2…ガスケット、3…封口板、4…溝部、6…外装ラベル、8…孔、9…弁体、10…正極端子板、100…電池、10a…突起、11…電極群、12…正極、13…負極、14…セパレータ、15…正極リード、16…絶縁部材、17…絶縁部材、18,18A,18B,18C…底部、19…周縁部、20,20A,20B,20C…側壁、20a…開口端部、22,22A,22B,22C…接続部、30A,30B…縮径装置、31…移動機構、32,32A,32B,32C…ダイス、33…エアシリンダ、35…電動機、38…当接部、R1、R2…曲率半径、D1…初期外径、P1…接触開始部分、SA1…内側面、F1…縮径力、F2、F3…分力
Claims (3)
- 正極、負極およびセパレータを含む電極群と、前記電極群を収容する電池缶とを具備した円筒型電池を製造する方法であって、
前記電池缶は、円形の底部、開口端部を有する円筒状の側壁、および前記底部と前記側壁との接続部を含み、
前記電極群を前記電池缶に挿入した後、前記側壁の外径Dcを初期外径D1から縮径する工程(a)を備え、
前記工程(a)が、内径Ddが前記初期外径D1よりも小さいリング状のダイスの中に、前記電池缶を前記底部側から挿入する工程(a1)、および、前記ダイスを前記開口端部の方向に相対的に移動させることで、前記電池缶に縮径力を印加する工程(a2)を含み、
前記ダイスと前記電池缶とが接触して、前記縮径力の印加が開始されるときの接触開始部分が、前記接続部の中で、前記底部の周縁部の内側面よりも、前記電池缶の軸方向の前記開口端部側の位置にあり、
前記工程(a)に供される前記電池缶の前記接続部が、前記電池缶の外側面に前記電池缶の軸方向に沿った曲率半径R2を有する唯一の屈曲部を有している、円筒型電池の製造方法。 - 前記内径Ddが異なる複数個の前記ダイスを使用して、段階的に、前記側壁の前記外径Dcを縮径する、請求項1記載の円筒型電池の製造方法。
- 前記曲率半径R2が前記底部の前記周縁部の厚みの2〜5倍である、請求項1または2記載の円筒型電池の製造方法。
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